説明

免疫磁気MRI造影剤を用いた活性化された血管内皮の画像化

免疫磁性ナノ粒子は、磁気共鳴映像法(MRI)のような向上した医療画像診断のための造影剤として用いられる。本発明は、免疫磁性粒子から標的MRI造影剤を作る方法、このようなMRI造影剤を用いる方法を目的とする。一般的に、このような標的MRI造影剤は向上した緩和能、改善されたシグナル対ノイズ、標的化能力、および、凝集に対する耐性を提供する。このようなMRI造影剤を作る方法は、一般的に、粒子の大きさをより良く制御し、このようなMRI造影剤を用いる方法は、一般的に、向上した血中クリアランス速度および分布を提供する。MRIで造影剤を使用する能力により、様々な疾患状態の診断および治療における道具が提供される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本願は、通常出願であり、2006年11月2日に出願された米国仮出願第60/856,127号を参照により組み入れ、部分的に優先権を主張するものである。
【0002】
〔発明の分野〕
本願は、概して、ナノ粒子の使用によるin vivo画像診断に関する。より具体的には、本発明は、画像診断技術に関し、その画像診断技術において、標的部分を組み込むコーティングプロセスでナノ粒子を機能化することによって形成された標的造影剤を用いて、疾患状態を画像化してもよい。これらの造影剤は、疾患状態を判定し、診断し、治療するために用いられる磁気共鳴映像法に適したものである。この疾患状態は、がん、心血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、自己免疫疾患、および、すべての炎症疾患であるが、これに限定されない。
【0003】
〔発明の背景〕
本発明は、造影剤としての免疫磁性ナノ粒子、および、医療画像診断技術でのそれらの使用に関する。この医療画像診断技術は、磁気共鳴映像法(“MRI”)であるが、これに限定されない。本発明は、懸濁しているが凝集しないままであるこれらの粒子の新規な能力と、粒子凝集を妨げ、それにより、粒子の安定性を改善するそれらのコーティング組成物と、粒子表面の機能化を可能にするそれらの能力と、それらの効率的な製造方法とに基づく。
【0004】
診断医学における造影剤の使用は、急速に成長している。例えば、X線診断では、内臓器官[例えば、腎臓、尿道、消化管、心臓の血管系(血管造影)等]のコントラストを上げるために、周囲の組織、器官、または、空間よりも放射線不透過性である造影剤を投与する。超音波診断では、コントラストを改善するために、血液および他の組織とは異なる音響インピーダンスを有する組成物を投与する。
【0005】
プロトンMRI診断では、内臓器官および組織のコントラストを上げるために、常磁性金属種を含む組成物を投与してもよい。例えば、体の器官および組織の医療画像化を向上させるために、ハイドロキシアパタイト粒子が用いられる。これらの粒子は、化学式Ca5(PO4)3(OH)の鉱物カルシウムアパタイトから構成される。これは骨や歯の無機鉱物成分である。その超磁性金属イオンのために、肝臓や脾臓の磁気共鳴映像法、X線画像法、または、超音波画像法において有用である(米国特許第5,690,908号参照)。
【0006】
概して、効果的な造影剤は、画像化技術で用いられる電磁放射の波長を妨げなければならないし、変化したシグナルを生ずるように組織の物理的特性を変化させなければならないし、もしくは、それ自体が放射源を提供しなければならない。一般に、用いられる材料には、有機分子、金属イオン、塩もしくはキレート剤、粒子(特に、鉄粒子)、または、標識したペプチド、タンパク質、ポリマー、もしくは、リポソームが含まれる。投与後、試薬は、代謝され、および/または、排出される前に、肉体区画全体に非特異的に拡散してもよい。これらの試薬は、概して、非特異的試薬として知られている。あるいは、試薬は、特定の肉体区画、細胞、器官または組織に対して特異的なアフィニティーを有してもよい。これらの試薬を、標的試薬と呼ぶことができる。
【0007】
体内に注射されるか吸収されるかし、血液により分布された試薬は、適当な血中半減期を有することが望ましい(米国特許第7,229,606号参照)。極端に長い半減期(すなわち、数日または数週間)は、臨床画像化状況では必要なく、場合により(毒性およびより毒性のある分子への代謝分解の機会が高まるせいで)危険である一方、短い半減期もまた望ましくない。画像処理(image enhancement)が非常に短期間しか持続しないならば、高品質な患者の画像を得るのは難しい。その上、標的試薬が急速に除去されると、標的部位に結合するために利用可能な試薬量が減少するだろうし、それゆえ、画像上の標的部位の「明度」が減少するだろう。
【0008】
磁気共鳴映像法(MRI)は、体内の構造や器官の精緻な垂直画像、断面画像、および、三次元画像を生み出すために、強力な磁場および無線シグナルを用いる技術である。水分を含む組織および器官(例えば、脳、内臓器官、腺、血管、および、関節)の画像を提供する際に、MRIが最も効果的である。目的の組織で磁気的に並べられた水素原子に向かって、収束無線電波が送信されると、水素原子はプロトン緩和の結果としてのシグナルを返してくる。様々な肉体組織からのシグナルの微妙な差異により、MRIは臓器を識別し、良性組織と悪性組織とを潜在的に対比することができる。そのため、MRIは、腫瘍、出血、動脈瘤、病変、閉塞、感染症、関節損傷等を検出するために有用である。
【0009】
造影剤は、MRIで用いる場合、それらが占める組織の緩和時間を変化させる。MRIのための造影剤は、一般的に、造影剤と水プロトンとの磁気モーメント間の時間依存性磁気双極子相互作用により、近距離での水プロトンの緩和時間を向上させる磁性材料である。MRI造影剤は、それらが占める組織の明度を高める陽性試薬か、組織をより暗くする陰性試薬かのいずれかである。in vivo診断のためには、MRIは良好な解像特性を提供する(およそ2mm)のだが、他の画像化技術と比較すると、感度が低い。造影剤を投与すると、画像化感度が大いに改善する。Gd-DTPA[例えば、OMNISCAN(登録商標)]のような常磁性ガドリニウム(Gd)種は、組織の明度を高め、MRIにおける造影剤として臨床上使用されている。
【0010】
造影剤の特異性は、目的部位でのシグナル対ノイズ比率を高め、画像化を通じて機能情報を提供するための望ましい特性である。造影剤の自然分布は、大きさ、荷電、表面化学、および、投与経路に依存する。造影剤は、健康な組織または病変部位に集中してもよいし、正常組織と病変間のコントラストを高めてもよい。コントラストを高めるために、目的部位での試薬の濃度を高め、緩和能を高めることが必要である。その上、健康な細胞と比較して病的な細胞による試薬の摂取を高めることも望ましい。
【0011】
肝臓または腎臓のいずれかにより排出されるという事実から、ほとんどの造影剤が、幾分か臓器特異的である。レセプターに対する試薬としてガドリニウムキレート剤を用いた初期の研究は、有意に減少された緩和のために、高濃度の造影剤を必要とした(Eur. Radiol. 2001. 11:2319-2331, Y.-X. J. Wang, S. M. Hussain, G. P. Krestin参照)。ガドリニウムキレート剤と比較して、マグネタイト粒子は約2〜3桁大きい磁化率を有する(Eur. Radiol. 2001. 11:2319-2331, Y.-X. J. Wang, S. M. Hussain, G. P. Krestin参照)。したがって、酸化鉄造影剤は、ガドリニウムキレート剤よりも低い用量でより高いシグナルを潜在的に提供する。酸化鉄試薬の感度がより高くなるにつれ、所与の組織で結合するために利用できる限られた数の標的のおかげで、更なる利益が提供される。
【0012】
磁気デンドリマー、磁気リポソーム、および、有機コーティングに埋め込まれた結晶性の超常磁性酸化鉄ナノ粒子からできたポリマーコーティングされたナノ粒子(例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール等)のような、様々な磁性ナノ粒子がある。
【0013】
市販されているほとんどの造影剤が、デキストランまたはデキストラン誘導体を基にしており、ここで、相対的に小さい大きさの粒子が用いられる。しかしながら、デキストランコーティングは、粒子合成のアルカリ性条件下では不安定であることが主張されており、したがって、その化学組成には疑問の余地がある。その上、デキストランにより引き起こされるアナフィラキシー反応は、潜在的な問題である(米国特許第5,492,814号参照)。
【0014】
従来、酸化鉄ナノ粒子は、水溶性有機分子(例えば、デキストラン)存在下のアルカリ水溶液から合成され、沈降される。このようなナノ粒子は、概して、有機コーティングを有する。このような方法により得られたナノ粒子は、常磁性酸化鉄の大きさについて、広範囲のばらつきがある傾向があり、結果的に、コーティングされた粒子も、広範囲の大きさのばらつきを示す。その上、この方法は、コーティングの程度をほとんど制御できず、単剤中に複数の酸化鉄ナノ粒子を含む粒子をもたらす。複数の精製工程およびサイズ分離工程を含む幅広い製造技術が、望ましい粒子の大きさを得るために必要とされている。粒子の大きさは、有機コーティング組成物と同様に、ナノ粒子の薬物動態に直接影響を与えるため、非常に重要である。酸化鉄の大きさは、試薬の常磁性および緩和能に直接関係する。したがって、広範囲の大きさのばらつきは、概して、平均感度へと読み替えられる(translates)。
【0015】
また、従来方法を用いて得たナノ粒子も、低いレベルの結晶化度を有しており、そのことは、造影剤の感度に有意に影響を与える。更に、ナノ粒子は、表面エネルギーが高いために凝集する傾向があり、そのことは、合成工程および精製工程の際に遭遇する重大な問題である。このような凝集により、粒子の大きさが高まり、結果的に、標的化効率が減少するのと同様に、急速な血中クリアランスが生じる。また、緩和能の減少が、結果的に起こるかもしれない。大きさ、血液循環時間、および、有機コーティングは、異なるやり方で標的化効率に影響を及ぼす。大きな粒子を用いると、血液から除去されるのに十分なほど、また、意図した標的に試薬が到達できないほど粒子が大きくなる前に、ほんのわずかな標的化リガンドしか付着しないかもしれない。粒子の大きさがより小さいと、バイオマーカーとリガンドとの間の認識が生じる部位で、非常に「粘着性」かもしれない。コーティングが球状の場合、リガンドの付着が意図された反応部位は、概して阻害され、それにより、接合効率が低下する。その上、一度結合すると、リガンドは球状コーティングの内側に存在し、バイオマーカーへ簡単に接近することができなくなるかもしれない。
【0016】
近年の画像化試薬およびその使用により、主として、解剖学情報が提供される。しかしながら、根本の疾患状態は、肉体的な病徴が外に現れる前に、疾患を広める生化学的なプロセスである。疾患の初期段階における生化学経路またはその経路での特異的マーカーを画像化する能力を有することにより、機能情報が提供されるだろう。
【0017】
重要な化学バイオマーカーの存在の高まりを検出することができ、それにより、特定の疾患状態の初期存在についての生化学情報を提供することができる特有の分子マーカーを標的とした造影剤が必要とされている。疾患の初期診断および初期治療のための医学的な必要性に対処するために、病変部位を標的とすることができる分子造影剤が、必要とされている。分子画像化および造影剤の標的送達における主な開発上の必要性のうちの1つは、バイオマーカーの同定である。しかしながら、造影剤は、標的化効率を制限するような本質的な問題を抱えている。その問題は、例えば、低い感度、低いシグナル対ノイズ比率、大きな粒子サイズ、急速な血中クリアランス、低いリガンド付着効率、および、バイオマーカー標的に対するリガンドの接近性である。
【0018】
造影剤の標的送達のこれまでの例には、架橋デキストランでコーティングされた酸化鉄ナノ粒子を用いること、および、その後、抗体またはペプチドを加えることが伴った(Kelly, K. A., Allport, J. R., Tsourkas, A., Shinde-Patil, V. R., Josephson, L., and Weissleder, R. (2005) Circ Res 96, 327-336;Wunderbaldinger, P., Josephson, L., and Weissleder, R. (2002) Bioconjug Chem 13, 264-268参照)。分子の接合および目的部位への試薬の送達が達成された一方、試薬は生物的接合により非常に大きくなり(65 nm超)、非常に短い血中半減期を示した(50分未満)。このことは、ヒトにおける効率に劇的な影響を及ぼしうる。
【0019】
わずかな常磁性酸化鉄ナノ粒子が、MRI造影剤としての医薬において評価されてきている。これらの産物のうちのいくつかは、市場で入手することができ、例えば、肝臓および脾臓の画像化のための臨床適用で用いられる造影剤として、Feridex IV(登録商標)、Abdoscan(登録商標)、Lumirem(登録商標)がある。
【0020】
ナノ粒子は、大きさに基づいて、大(1.5〜約50ミクロン)、小(0.7〜1.5ミクロン)、または、コロイド(200 nm未満)に分類される。後者は、強磁性流体または強磁性流体様材料としても知られており、本明細書中では時折、コロイド常磁性粒子と呼ばれる。
【0021】
上記のタイプの小さな磁性粒子は、生体機能性ポリマー(例えば、タンパク質)で簡単にコーティングされ、非常に高い表面積を提供し、合理的な反応動態(kinetics)を与えるおかげで、生体特異的アフィニティー反応を伴う分析において、非常に有用であることが示されてきている。0.7〜1.5ミクロンの範囲の磁性粒子は、特許文献に記載されており、その特許文献には、例えば、米国特許第3,970,518号、同第4,018,886号、同第4,230,685号、同第4,267,234号、同第4,452,773号、同第4,554,088号、同第4,659,678号が含まれる。
【0022】
上記のような小さな磁性粒子は、概して、2つの広いカテゴリーに分けられる。第1のカテゴリーには、永久磁性であるか、強磁性である粒子が含まれ、第2のカテゴリーには、磁場にさらした場合にのみ、バルク磁気的挙動(bulk magnetic behavior)を示す粒子が含まれる。後者を磁気反応性粒子と呼ぶ。磁気反応性挙動を示す材料は時折、常磁性と説明される。しかしながら、通常、強磁性と見なされる材料(例えば、磁性酸化鉄)は、約30 nm以下の直径の結晶であるならば、常磁性と特徴づけられるかもしれない。対して、相対的に大きな結晶の強磁性材料は、磁場にさらした後も、永久磁石特性を有するままであるし、その後も強い粒子−粒子相互作用のために凝集する傾向がある。
【0023】
上記の小さな磁性粒子と同様に、大きな磁性粒子(1.5ミクロン超〜約50ミクロン)も、常磁性挙動を示しうる。このような材料の典型は、Ugelstadにより米国特許第4,654,267号で説明され、Dynal(Oslo, Norway)により製造されている。
【0024】
Owenらへの米国特許第4,795,698号は、ポリマーコーティングしたコロイド常磁性粒子に関するものであり、ポリマー存在下でのFe+2/Fe+3塩からのマグネタイトの形成により産生される。Moldayへの米国特許第4,452,773号は、Owenらで説明されたものと同様の特性の材料を説明するものであり、非常に高濃度のデキストラン存在下での塩基添加を通じて、Fe+2/Fe+3からマグネタイトおよびその他の酸化鉄を形成することによって産生される。両方の手法から結果的に生じる粒子は、数ヶ月の長さの観察期間、懸濁液中では安定ではないという感知可能な傾向を示す。このように産生された材料は、コロイド特性を有し、細胞分離において非常に有用であることが証明されている。Moldayの技術は、Miltenyi Biotec(Bergisch Gladbach, Germany)およびTerry Thomas(Vancouver, Canada)により商品化されている。
【0025】
常磁性コロイド粒子を産生するための別の方法が、米国特許第5,597,531号に記載されている。OwenらまたはMoldayの特許に記載された粒子に対して、これらの後者の粒子は、事前形成された超常磁性結晶に生体機能性ポリマーを直接コーティングすることにより産生され、ここで、その事前形成された超磁性結晶は、25〜120 nmの範囲の準安定な結晶性クラスター中への強力な音波エネルギーにより撒き散らされている。結果的に生じた粒子は、本明細書では、直接コーティング粒子と呼ばれるが、MoldayまたはOwenらにより説明されたもののような、同じ全体サイズのコロイド粒子よりも、有意に大きな磁気モーメントを示す。
【0026】
検出の制限を広げること、解像度を高めること、分子レベルでの情報を入手すること、初期段階で疾患を検出すること、および、MRI調査を通じて生理情報を得ることが、大変必要とされている。これらの課題は、造影剤の感度、選択性、血液循環時間、ならびに、バイオマーカーおよび標的化リガンドの特徴づけにおける改善を必要とする。
【0027】
上記の結果のとおり、ナノ粒子が、凝集に対する耐性とともに、また、粒子の大きさ、血中クリアランス速度、および、分布を制御する能力とともに、向上した緩和能、シグナル対ノイズ比率、ならびに、標的化能力を提供する方法、および/または、組成物は、非常に有用であるだろう。
【0028】
〔発明の概要〕
本発明は、改善された医療画像診断のための方法および組成物を提供する。新規の造影剤は、MRIでの使用のために開示される。試薬は、内皮細胞活性化マーカーのマウスアイソフォーム[例えば、抗ICAM(CD54内皮細胞活性化マーカー)のマウスアイソフォームだが、これに限定されない]に対する結合モノクローナル抗体(mAb)から成る。一般的に、標的MRI造影剤は、向上した緩和能、改善されたシグナル対ノイズ、標的化能力、および、凝集に対する耐性を提供する。このようなMRI造影剤を作る方法は、粒子の大きさをより良く制御し、このようなMRI造影剤を用いる方法は、一般的に、向上した血中クリアランス速度および分布を提供する。CD54-FFは、血管内皮細胞を標的としたMRI造影剤として用いられ、それは、モノチオール化(mono-thiolated)抗CD54と結合したBSAコーティング酸化鉄粒子を含む。急冷された複合体はDI水の中で保存される。
【0029】
本発明は、MRIのような画像化技術で標的造影剤を用いるための方法を目的とする。このような使用には、in vitroで細胞に送達すること、および/または、in vivoで哺乳動物患者に送達することを含むことができる。
【0030】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、コーティングされた磁性粒子を利用するものであり、その磁性粒子は、磁性材料のナノ粒子コア、および、その磁性コア上のベースコーティング材料を含む(米国特許第6,365,362号参照)。これらの磁性粒子は、非常に低い非特異的結合により特徴付けられる。記載された粒子の磁性コア材料は、少なくとも1種類の遷移金属酸化物を含んでもよく、適切なベースコーティング材料は、タンパク質を含む。磁性粒子をコーティングするために適切なタンパク質には、ウシ血清アルブミンおよびカゼインが含まれるが、これに限定されない。更なるコーティング材料は、元々のコーティングタンパク質であってもよいし、その磁性コア上のベース材料に結合する特異的結合対の1種であってもよい。特異的結合対の例には、ビオチン−ストレプトアビジン、抗原−抗体、レセプター−ホルモン、レセプター−リガンド、アゴニスト−アンタゴニスト、レクチン−炭水化物、タンパク質A−抗体Fc、および、アビジン−ビオチンが含まれる。特異的結合対の一種は、二官能性連結化合物によりベースコーティング材料と結合してもよい。生体機能性連結化合物の例には、スクシンイミジル−プロピオノ−ジチオピリジン(SPDP)、および、スルフォスクシンイミジル−4−[マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)が含まれる。しかしながら、様々な他の異二官能性連結化合物が、Pierce(Rockford, Ill)から入手可能である。
【0031】
本発明のコーティングされた磁性粒子は、好ましくは、70〜90%の磁気質量を有する。磁性粒子の主要部分は、90〜150 nm、好ましくは、15〜70 nmの範囲の粒子サイズを有する。粒子はより単分散(例えば、15〜30 nmの範囲で)であるように合成されてもよい。本発明の粒子は、一般的には、生体適合性媒体の中に懸濁される。
【0032】
様々な疾患状態(数例を挙げると、がん、心血管疾患、脳血管疾患、および、自己免疫疾患)で生じる血管腔内皮の活性化機能不全および/またはそれらの死を画像化することがしばしば望ましい。結果として、内皮の完全性は危険にさらされるかもしれないし、血管床の1つ以上の領域で、部分的または完全な破壊が、結果的にもたらされるかもしれない。このような損傷のin vivoでの局在および程度を可視化する能力により、潜在的に有用な診断情報および予後情報が提供されうる。このような情報は、内皮標的特異的な治療をもたらし、モニターすることを促進し得るだろう。磁性ナノ粒子との接合により機能化されたモノクローナル抗体(mAb)を、MRI造影剤として本願で用いる。
【0033】
血管腔内皮の活性化機能不全および/または死は、様々な疾患状態(数例を挙げると、がん、心血管疾患、脳血管疾患、および、自己免疫疾患)において生ずる。結果として、内皮の完全性が危険にさらされるかもしれないし、血管床の1つ以上の領域で、部分的または完全な破壊が、結果的にもたらされるかもしれない。このような損傷のin vivoでの局在および程度を可視化する能力により、潜在的に有用な診断情報および予後情報が提供されうる。このような情報は、内皮標的特異的な治療をもたらし、モニターすることを更に促進し得るだろう。本発明は、MRI造影剤として用いるための磁性ナノ粒子と接合されたモノクローナル抗体(mAb)の使用と組み合わされる。ここで、そのMRI造影剤は、内皮細胞表面活性化マーカーを標的とする。
【0034】
抗ICAM(CD54内皮細胞活性化マーカー)のマウスアイソフォームに対するラットmAb(クローンYN1)を、磁性のある強磁性流体(FF)ナノ粒子と接合することにより、造影剤を開発する(結果の粒子は、75 nm未満の直径)(図1)。正常ラットIgGをFFと接合することにより、アイソタイプ対照を作り、IgG-FF(64 nm直径、Fe=11.48 mg/mL)を産生した。ICAM-1発現を高めるためにTNFαで一晩処理したマウスの内皮細胞(EC)と試薬をインキュベーションすることにより、抗CD54-FFのin vitroでの反応性を決定する(図2)。FITC標識した二次抗体で対比染色した後、細胞を蛍光顕微鏡(FM)で観察する。その後、細胞を溶解し、NMRミニスペックT2緩和時間を測定することにより、標的化追跡を行う(図3)。その後、麻酔した近交非反応性マウス(N=3)に、5mg/kgまたは15 mg/kgの抗CD54-FFまたはIgG-FFのいずれかをIV(静脈内)に注射し、注射後1分後、30分後、60分後に血液を収集する(図4および図5)。動物を1時間後に屠殺し、器官を採取し、FMおよびNMRミニスペックにより分析する。最後に、4匹のマウス(2匹はTNFαで前処理し、2匹は処理しなかった)に、5mg/kgをIVに注射する。他の4匹のマウス(TNFα+が2匹、TNFα-が2匹)は、5mg/kg IgG-FFを受けたが、1匹の対照マウスは、全くIV注射を受けなかった。1時間後、動物を屠殺し、4℃で保管する。その後、108/38 mm(O.D./I.D.)クワドラチャ(quadrature)バードケージ画像化RFコイルのある、小動物のための7T 21cm Varian MRI装置を用いて、全部で9匹の死骸を画像化する。胸部および腹部のT2およびT2*画像を実行する。画像化時間は、1時間/動物であり、データ分析のために30分/動物かかる。特異的な標的化を決定するために、T2およびT2*における変化を計算する。
【0035】
抗CD54-FF蛍光追跡(二次mAb染色)およびT2緩和時間は、対照IgG/FFに対する培養マウス内皮細胞の特異的な標的化を示しており、両方とも4℃または37℃で処理され、37℃でより高いシグナルを有している(図2)。抗ICAM/FF対IgG/FFを、15 mg/kgまたは5 mg/kgのいずれかで、IVに注射したマウス(n=3)は、肝臓および脾臓へのCD54-FFの実質的な標的化を示し、腎臓および肺では幾分か低い標的化を示した。また、心臓および脳でも、測定可能な濃度の造影剤を示した。次の9匹の画像化されたマウスのうち、IgG-FF対照処理は、TNFα+/-動物の脾臓および肝臓のみに局在し、一方、CD54-FFを注射した動物は、TNFα-のグループに対して、TNFα+動物の器官では、減少したT2緩和時間を示した(図6および図7)。
【0036】
TNFαサイトカインで前処理した動物における減少した緩和時間により示されるとおり、CD54-FFは、脳を含む複数の器官で活性化された血管内皮細胞を標的とするMRI造影剤として機能する。データは、最も特異的な標的化が、肺に対することを示唆しているが、脾臓および肝臓でも、IgGおよびCD54-FFの両方について濃度が高まっていること示された。これは、網内皮系によるFc介在性摂取による可能性が最も高い。その上、培養細胞株研究の5℃対37℃のデータもまた、これらのナノ粒子が内皮細胞によりエンドサイトーシスされるかもしれないことを示している。
【0037】
本発明の実施例を説明し、上記のとおり具体的に例示してきたが、これは、本発明をこのような実施例に限定することを意図するものではない。様々な修正が、本発明の精神から逸脱することなくなされてもよく、その改善の全範囲が、本願の特許請求の範囲に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】MRIのために調製したFFについての概要。正しいマトリックス中でより小さい大きさの粒子を得るために、また、接合工程のための濃度を得るために、BSAコーティング酸化鉄粒子を、一連の分離工程および濃縮工程にさらした。その後、FFをSMCCと反応させ、モノチオール化抗体と接合させた。結果的に生じたFF-MAb接合物を急冷し、洗浄し、DI水の中で保管した。
【図2】マウス内皮細胞に対する抗ICAM/FF粒子の標的化(蛍光顕微鏡)
【図3】マウス内皮細胞に対する抗ICAM/FF粒子の標的化(NMRミニスペック)
【図4】5mg/kg FF注射後のT2緩和
【図5】15 mg/kg FF注射後のT2緩和
【図6】5mg/kg FFでの60分後の異なる臓器におけるT2緩和
【図7】15 mg/kg FFでの60分後の異なる臓器におけるT2緩和

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像化のための方法において、
(a)in vivo画像化のための対象を入手することと、
(b)前記対象に造影剤を導入することであって、
前記造影剤が、内皮細胞活性化マーカーを実質的に含み、
該内皮細胞活性化マーカーが、生体機能性ポリマーベースコーティングを有する超常磁性ナノ粒子に結合されている、造影剤を導入することと、
(c)前記造影剤を、血管腔と相互作用させることと、
(d)前記相互作用を画像化することであって、
前記画像化が、MRIである、画像化することと、
(e)前記画像化を、特定の標的部位について分析することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記内皮細胞マーカーが、抗ICAMである、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記造影剤が、抗CD54-FFである、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記常磁性ナノ粒子が、そのコアに少なくとも1種類の遷移金属酸化物を有する、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記ベースコーティングが、タンパク質、ウシ血清アルブミン、カゼイン、および、それらの組み合わせから成る群に由来する、方法。
【請求項6】
in vivo画像化のために用いられる標的MRI造影剤において、
(a)少なくとも1種類の遷移金属酸化物を有するコロイドナノ粒子コアと、
(b)生体機能性ポリマーベースコーティングを有する前記ナノ粒子であって、前記ポリマーが、タンパク質、ウシ血清アルブミン、カゼイン、および、それらの組み合わせから成る群に由来する、前記ナノ粒子と、
(c)前記ナノ粒子により機能化されたモノクローナル抗体と、
を含む、造影剤。
【請求項7】
請求項2に記載の造影剤において、
前記モノクローナル抗体が、抗CD54である、造影剤。
【請求項8】
請求項2に記載の造影剤において、
前記ナノ粒子が、75 mm直径未満である、造影剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−508898(P2010−508898A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535312(P2009−535312)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/023048
【国際公開番号】WO2008/063371
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505060347)ベリデックス・エルエルシー (43)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【住所又は居所原語表記】33 Technology Drive,Warren,NJ 07059,U.S.A.
【Fターム(参考)】