説明

免疫細胞活性化を調節する作用剤およびその使用方法

【課題】免疫応答を調節する作用剤を同定する方法
【解決手段】B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を阻害する方法。該方法は、PD−1リガンドをもつ免疫細胞またはB7ポリペプチドをもつ免疫細胞を、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤と接触させることを含む。B7ポリペプチドとPD−1リガンドポリペプチドの間の相互作用は、PD−1リガンドがPD−1に結合するのを妨げ、したがって、阻害免疫シグナルの伝達を阻害する。PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をブロックする作用剤は、阻害シグナル伝達を阻止することができる。PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、PD−1リガンドがPD−1に結合するのを可能にし、免疫細胞に阻害シグナルを提供して、シグナル伝達阻害を強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府財源)
【0002】
本明細書に開示される発明は、国立衛生研究所により授与されたAI39671、CA84500およびAI41584下にサポートされた。合衆国政府は、それゆえ、本発明の所定の権利を有し得る。
(関連出願)
【0003】
本発明は、2001年11月13日に提出されたU.S.S.N.60/337,817について優先権を主張する。この出願は、本明細書中に、その全体が引用により組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
T細胞が外来ポリペプチドに応答するためには、抗原提示細胞(APCs)により休止Tリンパ球に2つのシグナルが提供されなくてはならない(Jenkins, M.およびSchwartz, R. (1987) J. Exp. Med. 165:302-319; Mueller, D.L.ら(1990) J. Immunol. 144:3701-3709)。最初のシグナルは、免疫応答に特異性を付与するものであり、主要組織適合抗原系において提示された外来抗原の認識後にT細胞受容体を介して伝達される。次のシグナルは、共刺激と呼ばれるものであり、T細胞が増殖し、機能的となることを誘導する(Lenschowら(1996) Annu. Rev. Immunol. 14:233)。共刺激は、抗原特異的でもなく、MHCにより制限されず、APCsにより発現される1またはそれ以上の異なる表面ポリペプチドにより提供されると考えられている(Jenkins, M.K.ら(1988) J. Immunol. 140:3324-3330; Linsley, P.S.ら(1991) J. Exp. Med. 173:721-730; Gimmi, C.D.ら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:6575-6579; Young, J.W.ら(1992) J. Clin. Invest. 90:229-237; Koulova, L.ら(1991) J. Exp. Med. 173:759-762; Reiser, H.ら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:271-275; van-Seventer, G.A.ら(1990) J. Immunol. 144:4579-4586; LaSalle, J.M.ら(1991) J. Immunol. 147:774-80; Dustin, M.I.ら(1989) J. Exp. Med. 169:503; Armitage, R.J.ら(1992) Nature 357:80-82; Liu, Y.ら(1992) J. Exp. Med. 175:437-445)。
【0005】
APCs上に発現されるCD80(B7−1)およびCD86(B7−2)タンパク質は、重要な共刺激ポリペプチドである(Freemanら(1991) J. Exp. Med. 174:625; Freemanら(1989) J. Immunol. 143:2714; Azumaら(1993) Nature 366:76; Freemanら(1993) Science 262:909)。B7−2は、一次免疫応答において主な役割を果たしていると思われ、B7−1は、免疫応答の後期にアップレギュレーションされるものであり、一次T細胞応答の延長あるいは二次T細胞応答の共刺激に重要である可能性がある(Bluestone (1995) Immunity 2:555)。
【0006】
B7−1およびB7−2が結合する1つのリガンドであるCD28は、休止T細胞上に構成的に発現され、活性化後の発現において増加する。T細胞受容体を介するシグナリング後、CD28と同時シグナルの伝達との連結により、T細胞の増殖およびIL−2分泌が誘導される(Linsley, P.S.ら(1991) J. Exp. Med. 173:721-730; Gimmi, C.D.ら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:6575-6579; June, C.H.ら(1990) Immunol. Today 11:211-6; Harding, F.A.ら(1992) Nature 356:607-609)。CTLA4(CD152)と呼ばれる第2のリガンドは、CD28と相同的であるが、休止T細胞上には発現されず、T細胞活性化後に出現する(Brunet, J.F.ら(1987) Nature 328:267-270)。CTLA4は、T細胞応答の負の調節に重要であると思われている(Waterhouseら(1995) Science 270:985)。CTLA4のブロックは、阻害シグナルを除去することがわかっているが、CTLA4の凝集は、T細胞応答をダウンレギュレーションする阻害シグナルを提供することがわかっている(Allison and Krummel (1995) Science 270:932)。B7分子は、CD28よりもCTLA4に対して高いアフィニティーを有し(Linsley, P.S.ら(1991) J. Exp. Med. 174:561-569)、B7−1およびB7−2は、CTLA4分子の異なる領域に結合し、CTLA4への結合に関して異なるキネティクスを有することがわかっている(Linsleyら(1994) Immunity 1:793)。CD28およびCTLA4に関連している新たな分子ICOSが、そのリガンドを有するものとして同定されており(Hutloffら(1999) Nature 397:263; WO 98/38216)、ICOSは、B7ファミリーの新たなメンバーである(Aicher A.ら(2000) J. Immunol. 164:4689-96; Mages H.W.ら(2000) Eur. J. Immunol. 30:1040-7; Brodie D.ら(2000) Curr. Biol. 10:333-6; Ling V.ら(2000) J. Immunol. 164:1653-7; Yoshinaga S.K.ら(1999) Nature 402:827-32)。T細胞が、さらなる共刺激シグナルを受け取ることなくT細胞受容体を介して刺激されるだけならば、それらは、無応答性で、アネルギー性となり、あるいは死滅して免疫応答のダウンレギュレーションを引き起こすようになる。
【0007】
B7:CD28/CTLA4共刺激経路の重要性は、インビトロといくつかのインビボモデルシステムにおいて証明されている。この共刺激経路をブロックすると、マウスおよびヒト系において抗原特異的な寛容が発生する(Harding,F.A.ら(1992)Nature356:607-609;Lenschow,D.J.ら(1992)Science257:789-792;Turka,L.A.ら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:11102-11105;Gimmi,C.D.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6586-6590;Boussiotis,V.ら(1993)J.Exp.Med.178:1753-1763)。反対に、B7ネガティブなマウス腫瘍細胞によるB7の発現は、腫瘍拒絶および腫瘍攻撃に対する長期間持続する防御を伴うT細胞により媒介される特異的免疫を誘導する(Chen,L.ら(1992)Cell71:1093-1102;Townsend,S.E.およびAllison,J.P.(1993)Science259:368-370;Baskar,S.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci90:5687-5690)。
【0008】
共刺激ポリペプチドに結合する阻害受容体も免疫細胞上において同定されている。たとえば、CTLA4の活性化は、T細胞に負のシグナルを伝達する。CTLA4を用いることは、IL−2産生を阻害し、細胞周期停止を誘導することができる(KrummelおよびAllison (1996) J. Exp. Med. 183:2533)。さらに、CTLA4欠損マウスは、リンパ球増殖性の疾病を発症する(Tivolら(1995) Immunity 3:541; Waterhouseら(1995) Science 270:985)。抗体でのCTLA4のブロックは、阻害シグナルを除去する可能性があり、抗体とのCTLA4の凝集は、阻害シグナルを伝達する。それゆえ、共刺激ポリペプチドが結合する受容体に応じて(すなわち、CD28などの共刺激受容体またはCTLA4などの阻害受容体)、B7−4を包含するB7ポリペプチドは、T細胞共刺激または阻害を促進することができる。
【0009】
PD−1は、PD−L1およびPD−L2に結合する受容体として同定されている。PD−1は、免疫グロブリン遺伝スーパーファミリーのメンバーである。PD−1(Ishidaら(1992) EMBO J. 11:3887; Shinoharaら(1994) Genomics 23:704; U.S. Patent 5,698,520)は、免疫グロブリンスーパーファミリードメイン、膜貫通ドメインを含む細胞外領域、ならびに免疫受容体チロシンキナーゼに基づく阻害モチーフ(ITIM)を含む細胞内領域を有している(Ishidaら(1992) supra; Shinoharaら(1994) supra; US Patent 5,698,520)。これらの特徴は、免疫阻害受容体と呼ばれるポリペプチドのより大きなファミリーも定義し、該ファミリーは、gp49B、PIR−Bおよびキラー阻害受容体(KIRs)をも包含する(Vivier and Daeron (1997) Immunology Today 18:286)。これらの受容体のチロシルリン酸化ITIMモチーフが、阻害シグナルを誘導するSH2ドメイン含有ホスファターゼと相互作用すると仮定されることが多い。これらの免疫阻害受容体の一部のものは、MHCポリペプチド、たとえばKIRsに結合し、CTLA4は、B7−1およびB7−2に結合する。MHCとB7遺伝子との間に系統発生的関連性があると提案されている(Henryら(1999) Immunology Today 20:285-8)。
【0010】
PD−1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、Ishidaら(1992) EMBO J. 11:3887; Shinoharaら(1994) Genomics 23:704; およびU.S. Patent 5,698,520にて公開されている。PD−1は、以前、アポトーシス性細胞死に関与するタンパク質に対する選択のためのアプローチに基づく引き算クローニングを用いて同定された。本明細書において、PD−1は、CD28/CTLA−4ファミリーのポリペプチドのメンバーとして同定される。CTLA4のように、PD−1は、抗CD3に応答して、T細胞の表面において迅速に誘発される(Agataら(1996) Int. Immunol. 8:765)。しかし、CTLA4とは逆に、PD−1は、B細胞の表面においても誘発される(抗IgMに応答して)。PD−1は、一部の胸腺細胞および骨髄細胞においても発現する(Agataら(1996) 前記; Nishimuraら(1996) Int. Immunol. 8:773)。
【0011】
2つのタイプのヒトPD−1リガンドポリペプチドが同定されている。PD−1リガンドタンパク質は、シグナル配列、およびIgVドメイン、IgCドメイン、膜貫通ドメインならびに短い細胞質尾部を含む。PD−L1(配列データについては、Freemanら(2000) J. Exp. Med. 192:1027を参照)およびPD−L2(配列データについては、 Latchmanら(2001) Nat. Immunol. 2:261を参照)の両方は、B7ファミリーのポリペプチドのメンバーである。PD−L1およびPD−L2の両方が、胎盤、脾臓、リンパ節、胸腺および心臓で発現する。PD−L2のみが、膵臓、肺および肝臓で発現し、一方、PD−L1のみが胎児肝臓で発現する。両方のPD−1リガンドが、活性化された単球および樹状細胞においてアップレギュレートされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
PD−1がPD−L1およびPD−L2に結合するという事実から、PD−1がCTLA4をもつ阻害受容体のファミリーに置かれる。共刺激受容体を用いることにより、免疫細胞において共刺激シグナルがもたらされるが、たとえば、CTLA4またはPD−1などの阻害受容体を用いることにより(架橋または凝集によるなど)、免疫細胞において阻害シグナルの伝達が行われ、免疫細胞応答の下方調節(downmodulation)および/または免疫細胞アネルギーがもたらされる。阻害シグナルの伝達は、免疫細胞応答における下方調節を導く(そして、すべての免疫応答における下方調節がもたらされる)が、免疫細胞における阻害シグナルの阻止(PD−1に対する非活性化抗体の使用によるなど)は、免疫細胞応答の上方調節を導く(そして、免疫応答の上方調節がもたらされる)。免疫応答の調節に有用なさらなる作用剤の同定は、おおいなる利点となるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要約)
本発明は、少なくとも一部は、PD−1リガンドが、PD−1を結合することに加えて、B7−1に結合するという発見に基づく。PD−1は、CTLA4と同様に負のシグナルを免疫細胞に伝達する。PD−1リガンドポリペプチドは、抗原提示細胞の表面上に発現され、共刺激シグナルを免疫細胞に提供するか、またはこれらが結合するポリペプチドに応じて、免疫細胞に下方調節シグナルを伝達することができる。たとえば、PD−1に結合するPD−1リガンドは、負のシグナルを伝達するが、B7ポリペプチドに結合するPD−1リガンドは、伝達しない。したがって、PD−1とPD−1リガンドの間またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用の調節の結果、免疫応答が調節される。
【0014】
したがって、本発明の1つの態様は、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を阻害する方法に関する。該方法は、PD−1リガンドをもつ免疫細胞またはB7ポリペプチドをもつ免疫細胞を、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤と接触させることを含む。1つの態様において、B7ポリペプチドとPD−1リガンドポリペプチドの間の相互作用は、PD−1リガンドがPD−1に結合するのを妨げ、したがって、阻害免疫シグナルの伝達を阻害する。1つの態様において、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をブロックする作用剤は、阻害シグナル伝達を阻止することができる。1つの態様において、PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、PD−1リガンドがPD−1に結合するのを可能にし、免疫細胞に阻害シグナルを提供して、シグナル伝達阻害を強化する。
【0015】
B7ポリペプチドに結合することによって、PD−L1は、阻害受容体CTLA4へのB7ポリペプチドの結合も低下させる。1つの態様において、PD−1リガンドポリペプチドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCTLA4に結合するのを可能にして、免疫細胞に阻害シグナルを提供し、PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合を促進する作用剤は、CTLA4へのB7ポリペプチドの結合を阻害し、したがって、負のシグナルを阻害する。
【0016】
1つの態様において、B7ポリペプチドに結合することによって、PD−1リガンドは、共刺激受容体CD28へのB7ポリペプチドの結合も低下させる。したがって、1つの態様において、PD−1リガンドポリペプチドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCD28に結合するのを可能にして、免疫細胞に共刺激シグナルを提供し、PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合を促進する作用剤は、CD28へのB7ポリペプチドの結合を阻害し、したがって、共刺激シグナルを阻害する。
【0017】
したがって、本発明の1つの態様は、PD−1リガンドをもつ免疫細胞またはB7ポリペプチドをもつ免疫細胞を、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節(阻害または刺激)する作用剤と接触させることによって、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節(阻害または刺激)することを含む、免疫応答を調節(阻害または刺激)する方法に関する。
1つの態様において、作用剤は、抗PD−1リガンド抗体である。
1つの態様において、作用剤は、抗B7―1抗体である。
1つの態様において、作用剤は、小分子である。
1つの態様において、作用剤は、ペプチドである。
1つの態様において、作用剤は、融合タンパク質である。
【0018】
別の態様において、本発明は、PD−1リガンドをもつ免疫細胞またはPD−1をもつ免疫細胞を、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害せずに、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を阻害する作用剤と接触させることによって、免疫応答を調節することを含む、免疫応答を調節する方法に関する。
1つの態様において、作用剤は、抗PD−1リガンド抗体、抗PD−1抗体、ペプチドまたは小分子であり、ここで、作用剤は、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用を阻害し、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害しない。
1つの態様において、PD−1リガンドは、PD−L1である。
1つの態様において、PD−1リガンドは、PD−L2である。
1つの態様において、B7ポリペプチドは、B7−1である。
【0019】
本発明の別の態様は、第1または第2免疫細胞をPD−1リガンドと接触させることによって免疫応答を調節することを含む、第1免疫細胞上のB7ポリペプチドと第2免疫細胞上のCTLA4の間の相互作用を阻害することによって、免疫応答を調節する方法に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、B7ポリペプチドをもつ免疫細胞またはCTLA4ポリペプチドをもつ免疫細胞を、B7ポリペプチドとCTLA4ポリペプチドの間の相互作用を阻害するが、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を阻害しない作用剤と接触させることによって、免疫応答を調節することを含む、免疫応答を調節する方法に関する。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、第1または第2免疫細胞をPD−1リガンドと接触させることによって免疫応答を調節することを含む、第1免疫細胞上のB7ポリペプチドと第2免疫細胞上のCD28の間の相互作用を阻害することによって、免疫応答を調節する方法に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、B7ポリペプチドをもつ免疫細胞またはCD28をもつ免疫細胞を、B7ポリペプチドとCD28の間の相互作用を阻害するが、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を阻害しない作用剤と接触させることによって、免疫応答を調節することを含む、免疫応答を調節する方法に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤をスクリーニングし、スクリーニングにおいて同定された作用剤がPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害するかどうかを決定することを含む、免疫応答を調節する作用剤を同定する方法に関する[ここで、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用に影響を及ぼさない(たとえば、阻害しない)ことが決定される、スクリーニングにおいて同定される作用剤は、免疫応答を調節する作用剤として同定される]。
【0024】
本発明の別の態様は、B7ポリペプチドとCTLA4の間の相互作用を阻害する作用剤をスクリーニングし、スクリーニングにおいて同定された作用剤がPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害するかどうかを決定することを含む、免疫応答を調節する作用剤を同定する方法に関する[ここで、B7ポリペプチドとCTLA4の間の相互作用に影響を及ぼさない(たとえば、阻害しない)ことが決定されるが、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を阻害しない、スクリーニングにおいて同定される作用剤は、免疫応答を調節する作用剤として同定される]。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤をスクリーニングし、スクリーニングにおいて同定された作用剤がPD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害するかどうかを決定することを含む、免疫応答を調節する作用剤を同定する方法に関する[ここで、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用に影響を及ぼさない(たとえば、阻害しない)ことが決定される、スクリーニングにおいて同定される作用剤は、免疫応答を調節する作用剤として同定される]。
【0026】
(発明の詳細な記載)
I.定義
本明細書で用いる用語「調節する」は、たとえば、応答を増強または阻害するといったようなアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションを包含する。
本明細書で用いる用語「阻害する」は、特定の作用、機能または相互作用などの減少、制限または封鎖を包含する。
本明細書で用いる用語「免疫細胞」は、免疫応答において役割を演じる細胞を意味する。免疫細胞は、造血起源のものであり、B細胞およびT細胞などのリンパ球;ナチュラルキラー細胞;単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および顆粒球などの骨髄細胞を包含する。
本明細書で用いる用語「T細胞」は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞を包含する。用語「T細胞」はさらに、ヘルパーT細胞1タイプおよびヘルパーT細胞2タイプの両方を包含する。用語「抗原提示細胞」は、プロフェッショナル抗原提示細胞(たとえば、Bリンパ球、単球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞)ならびに他の抗原提示細胞(たとえば、ケラチン生成細胞、内皮細胞、星状細胞、繊維芽細胞、乏突起膠細胞)を包含する。
【0027】
本明細書で用いる用語「免疫応答」は、T細胞共刺激の調節により影響を受けるT細胞性および/またはB細胞性免疫応答を包含する。免疫応答の例は、T細胞応答、たとえば、サイトカイン産生および細胞毒性を包含する。加えて、免疫応答は、抗体産生(液性応答)などのT細胞活性化およびマクロファージの活性化などのサイトカイン反応性細胞の活性化により間接的に影響を受ける免疫応答を包含する。
【0028】
本明細書で用いる用語「共刺激受容体」は、免疫細胞に共刺激シグナルを伝達する受容体、たとえばCD28を包含する。本明細書で用いる用語「阻害受容体」は、負のシグナルを免疫細胞に伝達する受容体(たとえば、CTLA4またはPD−1)を包含する。阻害受容体により変換される阻害シグナルは、共刺激受容体(たとえばCD28)が免疫細胞上に存在しなくても、したがって阻害受容体と共刺激受容体の間の共刺激ポリペプチドの結合に関する競合の関係でなくとも生じ得る(Fallarinoら(1998)J.Exp.Med.188:205)。阻害シグナルの免疫細胞への伝達は、免疫細胞における不応答性またはアネルギーまたはプログラムされた死をもたらし得る。好ましくは、阻害シグナルの伝達は、アポトーシスに関与しないメカニズムにより作動する。本明細書で用いる用語「アポトーシス」は、当業界において公知の技術を用いて特徴づけることができるプログラムされた細胞死を包含する。アポトーシス細胞死は、たとえば、細胞収縮、膜水疱および細胞断片化において最高に達しているクロマチン凝縮により特徴づけることができる。アポトーシスを受ける細胞は、ヌクレオソーム間DNA開裂の特徴的なパターンも示す。
【0029】
受容体と結合するPD−1リガンドポリペプチドの形態に応じて、たとえば受容体への結合について活性化型のPD−1リガンドポリペプチドと競合することによって、シグナルが伝達され得るか(たとえば、PD−1リガンドポリペプチドの多価型または受容体の架橋をもたらすFc受容体に結合するPD−1リガンドポリペプチドの形態)、またはシグナルが阻害され得るか(たとえば、PD−1リガンドポリペプチドの可溶性多価型またはFc受容体を欠失しているPD−1リガンドポリペプチドの形態により)のいずれかである。しかしながら、可溶性ポリペプチドが刺激性であり得る例もある。調節作用剤の効果は、本明細書に記載するような慣例的なスクリーニングアッセイを用いて容易に証明することができる。
【0030】
本明細書で用いる用語、活性化された免疫細胞に関する「共刺激」は、共刺激ポリペプチドが、増殖またはエフェクター機能を誘発する第二の非活性化受容体性シグナル(「共刺激シグナル」)を提供する能力を包含する。たとえば、共刺激シグナルの結果として、サイトカインがたとえばT細胞受容体性シグナルを受容したT細胞において分泌され得る。細胞−受容体性シグナルを、たとえば活性化受容体を介して、受容した免疫細胞は、本明細書において「活性化免疫細胞」と称する。
【0031】
本明細書で用いる用語「活性化受容体」は、抗原、複合化抗原(たとえばMHCポリペプチドに関連して)を結合するか、または抗体と結合する免疫細胞受容体を包含する。かかる活性化受容体は、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、サイトカイン受容体、LPS受容体、補体受容体、およびFc受容体を包含する。
T細胞受容体はT細胞上に存在し、CD3ポリペプチドと関連する。T細胞受容体は、MHCポリペプチドに関連する抗原により(ならびにポリクローナルT細胞活性化試薬により)刺激される。TCRを介したT細胞活性化の結果、タンパク質リン酸化、膜脂質変化、イオン流入、環状ヌクレオチド変化、RNA転写変化、タンパク質合成変化および細胞体積変化などの種々の変化が生じる。
【0032】
B細胞受容体は、B細胞上に存在する。B細胞抗原受容体は膜Ig(mIg)と他の膜貫通ポリペプチド(たとえば、IgαおよびIgβ)間の複合体である。mIgのシグナルトランスダクション機能は、オリゴマーまたはマルチマー抗原による受容体ポリペプチドの架橋により引き起こされる。B細胞は、抗免疫グロブリン抗体によっても活性化されうる。BCR活性化により、B細胞においてチロシンリン酸化を含む多くの変化が起こる。
Fc受容体は、免疫応答に関与する多くの細胞上で見いだされる。Fc受容体(FcR)は免疫グロブリンポリペプチド(Ig)のFc部分の細胞表面受容体である。現在のところ同定されているヒトFcRには、IgG(FcγRと称する)、IgE(FcεR1)、IgA(Fcα)、および重合IgM/A(FcμαR)を認識するものが含まれる。FcRは次の細胞タイプにおいて見いだされる:FcεRI(肥満細胞)、FcεR.II(多くのリンパ球)、FcαR(好中球)、およびFcμαR(腺上皮、肝細胞)(Hogg,N.(1988)Immunol.Today9:185-86)。広く研究されているFcγRは細胞性免疫防御の中心であり、炎症のメディエーターおよび自己免疫疾患の発生機序に関与する加水分解酵素の放出の刺激の原因である(Unkeless,J.C.ら(1988)Annu.Rev.Immunol.6:251-81)。マクロファージ/単球、多形核白血球、およびナチュラルキラー(NK)細胞FcγRはIgGにより媒介される特異的認識の要素を賦与するので、FcγRはエフェクター細胞とIgを放出するリンパ球間の非常に重要な結合を提供する。ヒト白血球はIgG:hFcγRI(単球/マクロファージ上に見いだされる)、hFcγRII(単球、好中球、好酸球、血小板、おそらくはB細胞、およびK562細胞系上)、およびFcγIII(NK細胞、好中球、好酸球、およびマクロファージ上)の少なくとも3つの異なる受容体を有する。
【0033】
T細胞に関して、T細胞に対する共刺激シグナルの伝達は、シクロスポリンAにより阻害されないシグナリング経路を含む。加えて、共刺激シグナルはT細胞においてサイトカイン分泌(たとえば、IL−2および/またはIL−10)および/または抗原に対する不応答性の誘発、アネルギーの誘発、T細胞における細胞死の誘発を防止することができる。
【0034】
本明細書で用いる用語「阻害シグナル」は、免疫細胞上のポリペプチドについて阻害受容体(たとえばCTLA4またはPD−1)により伝達されるシグナルを意味する。かかるシグナルは、活性化受容体(たとえば、TCR、CD3、BCR、またはFcポリペプチドによる)を介するシグナルを拮抗し、その結果、たとえば第二のメッセンジャー生成の阻害;増殖の阻害;免疫細胞におけるエフェクター機能の阻害、たとえば食作用の低下、抗体産生の低下、細胞毒性の低下、免疫細胞がメディエーター(たとえば、サイトカイン(たとえばIL−2)および/またはアレルギー反応のメディエーター)を産生できないこと;またはアネルギーの発生が起こる。
【0035】
本明細書で用いる用語「不応答性」は、刺激、たとえば活性化受容体またはサイトカインによる刺激に対する免疫細胞の不応性を包含する。不応答性はたとえば、免疫抑制剤への暴露または高用量の抗原への暴露のために起こり得る。本明細書で用いる用語「アネルギー」または「寛容」は、活性化受容体媒介性刺激に対する不応性を包含する。かかる不応性は、一般に抗原特異的であり、寛容化している抗原への暴露が終わった後にも存続する。たとえば、T細胞におけるアネルギー(不応答性に対して)はサイトカイン、たとえばIL−2がないことにより特徴づけられる。T細胞アネルギーは、T細胞が抗原に暴露され、第二シグナル(共刺激シグナル)の不在下で第一シグナル(T細胞受容体またはCD−3媒介性シグナル)を受容する場合に起こる。これらの条件下で、細胞を同じ抗原に再暴露すると(暴露が共刺激ポリペプチドの存在下で起こる場合でも)、結果としてサイトカインが産生されず、したがって増殖しない。しかしながら、アネルギーT細胞は、関連しない抗原に対する応答を起こし、サイトカイン(たとえば、IL−2)とともに培養するならば増殖し得る。たとえば、T細胞アネルギーは、ELISAにより測定されるようなTリンパ球によるIL−2産生がないこと、あるいはインジケーター細胞系を用いる増殖分析によりを観察できる。別法として、レポーター遺伝子構築物を用いることができる。たとえば、アネルギーT細胞は、5’IL−2遺伝子エンハンサーの制御下でヘテロローガスなプロモーターによるか、またはエンハンサー内に見いだすことができるAP1配列のマルチマーにより誘発されるIL−2遺伝子転写を開始しない(Kangら、(1992)Science257:1134)。
【0036】
PD−1リガンドおよびB7ポリペプチドは、ある種の保存された構造的および機能的特徴を有するポリペプチドのファミリーを含む。同様に、PD−1タンパク質は、保存された構造的および機能的特徴を有するポリペプチドのファミリーのメンバーである。「ファミリー」は、タンパク質または核酸分子についていう場合、共通の構造的ドメインまたはモチーフを有し、本明細書において定義するような十分なアミノ酸またはヌクレオチド配列相同性を有する2以上のタンパク質または核酸分子を意味することを意図される。このようなファミリーメンバーは、天然に存在するかまたは天然に存在せず、同じまたは異なる種のいずれかから得ることができる。たとえば、ファミリーはヒト起源の第一のタンパク質、ならびに他のヒト起源の異なるタンパク質を含むことができるか、あるいは別に、ヒト以外の起源の相同物を含むことができる。ファミリーのメンバーはさらに共通の機能的特徴を有し得る。本明細書において記載するPD−1リガンドポリペプチドはポリペプチドのB7ファミリーのメンバーである。本明細書で用いる用語「B7ファミリー」または「B7ポリペプチド」は、B7ポリペプチド、たとえば、B7−1、B7−2、B7h(Swallowら(1999)Immunity11:423)、および/またはPD−1リガンド(たとえば、PD−L1またはPD−L2)と配列相同性を共有する共刺激ポリペプチドを含む。たとえば、デフォルトのパラメータを用いてNCBIのBLASTプログラム(ギャップペナルティーが存在11および拡張1に設定されたBlosurm62マトリックス(NCBIウェブサイトを参照))を用いて比較した場合に、ヒトB7−1およびB7−2は約26%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0037】
好ましいB7ポリペプチドは、免疫細胞に共刺激または阻害シグナルを提供でき、これにより免疫細胞応答を促進または阻害できる。たとえば、共刺激受容体と結合するB7ファミリーメンバーは、T細胞活性化を増加させるが、阻害受容体と結合するB7ファミリーメンバーは、共刺激を減少させる。さらに、同じB7ファミリーメンバーは、T細胞共刺激を増加または減少させる。たとえば、共刺激受容体に結合する場合、PD−1リガンドは、免疫細胞の共刺激を誘発するか、またはたとえば溶解型において存在する場合に免疫細胞共刺激を阻害することができる。阻害受容体と結合する場合、PD−1リガンドポリペプチドは阻害シグナルを免疫細胞に伝達することができる。好ましいB7ファミリーのメンバーには、B7−1、B7−2、B7h、PD−L1またはPD−L2およびその可溶性フラグメントもしくは誘導体が含まれる。1つの態様において、B7ファミリーメンバーは、たとえば、CTLA4、CD28、ICOS、PD−1および/または他の受容体などの免疫細胞上の1つ以上の受容体に結合し、受容体に応じて、免疫細胞、好ましくはT細胞に阻害シグナルまたは共刺激シグナルを伝達する能力を有する。
【0038】
PD−1ポリペプチドは、免疫細胞に阻害シグナルを伝達することによって、免疫細胞エフェクター機能を阻害する能力をもつか、またはたとえば、可溶性モノマー型で存在する場合に、免疫細胞の共刺激を促進する(たとえば、競合的阻害によって)能力をもつ阻害受容体である。好ましいPD−1ファミリーメンバーは、PD−1と配列同一性を共有し、たとえば、B7−1、B7−2、PD−1リガンドおよび/または抗原提示細胞上の他のポリペプチドなどの1つ以上のB7ファミリーメンバーに結合する。
【0039】
本明細書で用いるたとえば、PD−1リガンド、PD−1、CTLA4、CD28またはB7ポリペプチドなどのポリペプチドに関する用語「活性」は、このタンパク質の構造に固有の活性を包含する。PD−1リガンドに関して、用語「活性」は、免疫細胞共刺激を調節する能力(たとえば活性化免疫細胞において共刺激シグナルを調節することにより)、または免疫細胞における阻害シグナルを調節する能力(たとえば免疫細胞上のナチュラル受容体を用いることにより)を包含する。当業者であれば、PD−1リガンドポリペプチドの活性化型が、共刺激受容体に結合する場合、免疫細胞内に共刺激シグナルが生成することを理解するであろう。PD−1リガンドポリペプチドの活性化型が、阻害受容体に結合する場合、免疫細胞内に阻害シグナルが生成する。PD−1リガンドがB7ポリペプチドに結合する場合、PD−1に結合しているPD−1リガンドの阻害シグナルが阻害されるので、共刺激シグナルが生成する。
【0040】
本明細書で用いる用語「PD−1リガンド」は、PD−L1(Freemanら(2000) J. Exp. Med. 192:1027)およびPD−L2(Latchmanら(2001) Nat. Immunol. 2:261)の両方を包含する。
共刺激シグナルを調節すると、免疫細胞のエフェクター機能が調節される。したがって、「PD−1リガンド活性」なる用語は、PD−1リガンドポリペプチドがその天然の受容体(たとえば、PD−1またはB7−1など)と結合する能力、免疫細胞共刺激または阻害シグナルを調節する能力および免疫細胞応答を調節する能力を包含する。
【0041】
PD−1に関して、用語「活性」は、PD−1ポリペプチドが、活性化免疫細胞において、たとえば抗原提示細胞上の天然のPD−1リガンドを用いることにより阻害シグナルを調節する能力を包含する。PD−1は阻害シグナルをCTLA4と同様の方法で免疫細胞に伝達する。免疫細胞において阻害シグナルを調節すると、免疫細胞の増殖および/または免疫細胞によるサイトカイン分泌が調節される。したがって、用語「PD−1活性」は、PD−1ポリペプチドがその天然のリガンドと結合する能力、免疫細胞共刺激または阻害シグナルを調節する能力、および免疫応答を調節する能力を包含する。
【0042】
本明細書で用いる用語「相互作用」は、2つの分子間の相互作用を言う場合、1つの分子と他方の分子との物理的接触(たとえば、結合)を意味する。一般に、このような相互作用の結果として、その分子の一方または両方の活性(生物的効果を酸性する)が得られる。活性は、一方または両方の分子の直接的な活性である(たとえば、シグナルトランスダクション)。それとは別に、相互作用における一方または両方の分子をそれらのリガンドとの結合から阻止することができ、したがって、リガンド結合活性に関して不活性であることを保つことができる(たとえば、そのリガンドを結合し、共刺激を引き起こすか阻害する)。このような相互作用を阻害する結果として、一方または両方の分子の活性が破壊される。このような相互作用を増強することとは、物理的接触の可能性を延長または増強すること、あるいは活性の可能性を延長または増強することである。
【0043】
本明細書で用いる「天然に存在する」核酸ポリペプチドは、天然に存在するヌクレオチド配列を有する(たとえば、天然のタンパク質をコードする)RNAまたはDNA分ポリペプチドを意味する。
本明細書で用いる「アンチセンス」核酸ポリペプチドは、タンパク質をコードする「センス」核酸配列と相補性、たとえば二本鎖cDNAポリペプチドのコーティング鎖と相補性、mRNA配列と相補性、または遺伝子のコーティング鎖と相補性であるヌクレオチド配列を含む。したがって、アンチセンス核酸ポリペプチドは、センス核酸ポリペプチドと水素結合できる。
【0044】
本明細書で用いる用語「コーティング領域」とは、アミノ酸残基中に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を意味し、一方、用語「非コーディング領域」は、アミノ酸中に翻訳されないヌクレオチド配列の領域(たとえば、5’および3’非翻訳領域)を意味する。
【0045】
本明細書で用いる用語「ベクター」は、これが結合しているもう1つの核酸を輸送できる核酸を意味する。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これはその中に別のDNAセグメントをライゲートできる環状二本鎖DNAループを意味する。もう1つ別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここにおいては別のDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲートできる。ある種のベクターはこれらが導入される宿主細胞において自己複製できる(たとえば、細菌性複製起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(たとえば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は宿主細胞中へ導入されると宿主細胞のベクター中に組み入れられ、これにより宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは操作可能に結合される遺伝子の発現を行うことができる。さらに、かかるベクターは本明細書において「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書において、プラスミドが最も一般的に用いられるベクターの形態であるので、「プラスミド」および「ベクター」は交換可能に用いられる。しかしながら、本発明はかかる他の発現ベクターの形態、たとえばウイルスベクター(たとえば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)を包含し、これらは同等の機能を果たす。
【0046】
本明細書で用いる用語「宿主細胞」は、本発明の組換え発現ベクターなどの本発明の核酸がその中に導入されている細胞を意味する。「宿主細胞」または「組換え宿主細胞」なる用語は本明細書において交換可能に用いられる。かかる用語は特定の対象細胞のみでなく、かかる細胞の子孫または可能性のある子孫も意味すると理解されるべきである。ある種の修飾が突然変異または環境的影響のために次の世代において起こり得るので、かかる子孫は実際には親細胞と同一でないが、それでも本明細書で用いる用語の範囲内に含まれる。
本明細書で用いる用語「単離されたタンパク質」は、細胞から単離されるかあるいは組換えDNA技術により産生される場合は、他のタンパク質、細胞物質および培地、あるいは化学的に合成される場合には化学的前駆体または他の化学物質が実質的にないタンパク質を意味する。「単離された」または「精製された」タンパク質または生物学的に活性なタンパク質それ自体は、抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質が由来する細胞または組織源から得られる細胞物質または他の汚染タンパク質が実質的にないか、または化学的に合成される場合には化学的前駆体または他の化学物質が実質的にない。「細胞物質が実質的にない」なる用語には、タンパク質が、それが単離または組換え産生される細胞の細胞成分から分離される、PD−1リガンド、PD−1またはB7ポリペプチドの調製物が含まれる。1つの態様において、「細胞物質が実質的にない」とは、約30%(乾燥重量)未満の非PD−1リガンド、PD−1またはB7融合タンパク質(「汚染されているタンパク質」ともいう)、さらに好ましくは約20%未満の非PD−1リガンド、PD−1またはB7融合タンパク質、なおさらに好ましくは約10%未満の非PD−1リガンド、PD−1またはB7融合タンパク質、最も好ましくは約5%未満の非PD−1リガンド、PD−1またはB7融合タンパク質を有する非PD−1リガンド、PD−1またはB7融合タンパク質の調製物を包含する。抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質もしくはその生物学的に活性なタンパク質が組換え的に産生される場合、これは好ましくは実質的に培地がない、すなわち、培地がタンパク質調製物の体積の約20%未満であり、さらに好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満である。
【0047】
「化学前駆体または他の化学物質が実質的にない」なる表現は、タンパク質が、該タンパク質の合成に関与する化学前駆体または他の化学物質から分離される抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質の調製物を包含する。1つの態様において、「化学前駆体または他の化学物質が実質的にない」なる表現は、約30%(乾燥重量)未満の化学前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質化学物質、さらに好ましくは約20%未満の化学前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質化学物質、さらに好ましくは約10%未満の化学前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質化学物質、最も好ましくは約5%未満の化学前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質化学物質を有する抗体、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質の調製物を包含する。
【0048】
本明細書において用いる用語「抗体」は、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)も包含する。本明細書で用いる「抗原結合部分」は、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを意味する(たとえば、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチド)。抗体の抗原結合機能は完全長抗体により実施され得ることが証明されている。抗体の「抗原結合タンパク質」なる用語に含まれる結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント);(ii)F(ab’)2フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィドブリッジにより結合された2のFabフラグメントからなる二価フラグメント);(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)VLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;抗体の1つの腕のVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら(1989)Nature341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を包含する。さらに、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされるが、これらは組換え法を用いて、VLおよびVH領域対が一価ポリペプチド(一本鎖Fv(scFv)とも呼ばれる;たとえば、Birdら(1988)Science242:423-426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883;およびOsbournら(1998)Natl.Biotechnol.16:778)を形成する1つのタンパク質鎖として調製することができる合成リンカーにより結合できる。このような一本鎖抗体はさらに抗体の「抗体結合部分」なる用語に含まれることを意図される。完全IgGポリペプチドまたは他のイソタイプをコードする発現ベクターを生じるために、特異的scFvの任意のVHおよびVL配列はヒト免疫グロブリン定常領域cDNAまたはゲノム配列と結合できる。VHおよびV1は、タンパク質化学または組換えDNA技術のいずれかを用いてFab、Fvまたは免疫グロブリンの他のフラグメントの生成において用いることができる。一本鎖抗体の他の形態、たとえば、二重特異性抗体(diabody)も含まれる。二重特異性抗体は、二価、二重特異性抗体であり、ここにおいてVHおよびVLドメインは一本鎖ポリペプチド上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間で対合するには短すぎ、そのために該ドメインは別の鎖の相補性ドメインと対になり、2つの抗原結合部位を形成する(たとえば、Holliger,P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448;Poljak,R.J.ら(1994)Structure2:1121-1123参照)。
【0049】
さらに、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有結合により形成される、より大きな免疫グロブリン分子の一部である。かかる免疫接着(immunoadhesion)ポリペプチドの例は、四量体scFvポリペプチドを作るためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.ら(1995)Human Antibodies and Hybridomas6:93-101)および二価およびビオチニル化scFvポリペプチドを作るためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC−末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.Mら(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)を包含する。抗体部分、たとえば、FabおよびF(ab’)2フラグメントは、慣例の技術、たとえば、それぞれ完全抗体のパパインまたはペプシン消化を用いて、完全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着ポリペプチドは、本明細書に記載するような標準的組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0050】
抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル;外因性、同種異系または同系;あるいはその修飾された形態、たとえばヒト化、キメラなどであってもよい。抗体は、完全にヒトであってもよい。好ましくは、本発明の抗体は、PD−1リガンド、PD−1またはB7ポリペプチドと特異的または実質的に特異的に結合する。本明細書で用いる「モノクローナル抗体」および「モノクローナル抗体組成物」は、抗原の特定のエピトープと免疫応答できる抗原結合部位の1種のみを含む抗体ポリペプチドの集団を意味し、一方、「ポリクローナル抗体」および「ポリクローナル抗体組成物」は、特定の抗原と相互作用できる抗原結合部位の複数腫を含む抗体ポリペプチドの集団を意味する。モノクローナル抗体組成物は、典型的には、これが免疫応答する特定の抗原に対する単一の結合親和性を示す。
【0051】
本明細書で用いる「ヒト化抗体」は、ヒト細胞により製造される抗体にさらによく似た抗体に変更された可変および定常領域を有するヒト以外の細胞により製造される抗体を包含することを意図する。たとえば、非ヒト抗体アミノ酸配列を、ヒト生殖細胞系配列において見いだされるアミノ酸を組み入れるように変更することによる。本発明のヒト化抗体は、たとえばCDRにおいて、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列(たとえば、インビトロでの部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)によりコードされないアミノ酸残基を含み得る。本明細書で用いる用語「ヒト化抗体」はさらに、マウスなどの別の哺乳動物種から誘発されるCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体も包含する。
【0052】
本明細書で用いる「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体を意味することを意図する(たとえば、PD−1と特異的に結合する単離された抗体は、PD−1リガンド以外と特異的に結合する抗体が実質的にない)。さらに、単離された抗体は他の細胞物質および/または化学物質が実質的にない。
特定のタンパク質のアミノ酸配列と該タンパク質をコードすることができるヌクレオチド配列間には、遺伝コード(後記)により決められる公知の明確な対応が存在する。同様に、特定の核酸のヌクレオチド配列と該核酸によりコードされるアミノ酸配列の間には、遺伝コードにより決定されるような公知の明確な対応が存在する。
【0053】
遺伝コード
アラニン (Ala, A) GCA, GCC, GCG, GCT
アルギニン (Arg, R) AGA, ACG, CGA, CGC, CGG, CGT
アスパラギン (Asn, N) AAC, AAT
アスパラギン酸 (Asp, D) GAC, GAT
システイン (Cys, C) TGC, TGT
グルタミン酸 (Glu, E) GAA, GAG
グルタミン (Gln, Q) CAA, CAG
グリシン (Gly, G) GGA, GGC, GGG, GGT
ヒスチジン (His, H) CAC, CAT
イソロイシン (Ile, I) ATA, ATC, ATT
ロイシン (Leu, L) CTA, CTC, CTG, CTT, TTA, TTG
リジン (Lys, K) AAA, AAG
メチオニン (Met, M) ATG
フェニルアラニン (Phe, F) TTC, TTT
プロリン (Pro, P) CCA, CCC, CCG, CCT
セリン (Ser, S) AGC, AGT, TCA, TCC, TCG, TCT
トレオニン (Thr, T) ACA, ACC, ACG, ACT
トリプトファン (Trp, W) TGG
チロシン (Tyr, Y) TAC, TAT
バリン (Val, V) GTA, GTC, GTG, GTT
終結シグナル (end) TAA, TAG, TGA
【0054】
遺伝コードの重要でよく知られた特性は、その重複性(redundancy)であり、これにより、タンパク質を製造するために用いられるほとんどのアミノ酸に関して、1つ以上のコーディングヌクレオチドトリプレットを用いることができる(前記)。したがって、多くの異なるヌクレオチド配列が所定のアミノ酸配列についてコードすることができる。かかるヌクレオチド配列は、結果として全ての生物において同じアミノ酸配列を産生するので、機能的に等価であると考えられる(ある生物はあるアミノ酸配列を他のものよりも有効に翻訳することができるが)。さらに、時折、プリンまたはピリミジンのメチル化変異体を所定のヌクレオチド配列中に見いだすことができる。かかるメチル化は、トリヌクレオチドコドンと対応するアミノ酸間のコーディング関係に影響を及ぼさない。
【0055】
前記事項を考慮すると、本発明の融合タンパク質またはポリペプチドをコードするDNAまたはRNAのヌクレオチド配列(またはその任意の部分)は、DNAまたはRNAをアミノ酸配列に翻訳するために遺伝コードを用いて、融合タンパク質またはポリペプチドアミノ酸配列を誘発するために用いることができる。同様に、融合タンパク質またはポリペプチドに関して、融合タンパク質またはポリペプチドをコードすることができる対応するヌクレオチド配列を遺伝コード(その重複性のために、所定のアミノ酸配列について複数の核酸配列を産生するであろう)から推測できる。かくして、融合タンパク質またはポリペプチド配列の本明細書における記載および/または開示は、該ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の記載および/または開示も包含すると考えられるべきである。同様に、本明細書における融合タンパク質またはポリペプチド配列の記載および/または開示も、アミノ酸配列をコードすることができるあらゆる可能なヌクレオチド配列の記載および/開示も包含すると考えるべきである。
【0056】
II.免疫細胞活性化を調節する作用剤
本発明の作用剤は、免疫系をアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることができ、それによって免疫応答をアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることができる。たとえば、PD−1とPD−1リガンドまたはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節することにより、免疫応答の調節がもたらされる。B7ポリペプチドとPD−1リガンドポリペプチドの間の相互作用は、PD−1リガンドがPD−1に結合するのを阻止し、したがって、阻害免疫シグナルの送達が阻害される。したがって、1つの態様において、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をブロックする作用剤は、阻害シグナル伝達を阻止することができる。1つの態様において、PD−1リガンドポリペプチドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、PD−1リガンドがPD−1に結合するのを可能にし、免疫細胞に阻害シグナルを提供する。PD−1リガンドは、B7ポリペプチドに結合することによって、阻害受容体CTLA4へのB7ポリペプチドの結合も減少させる。1つの態様において、PD−1リガンドポリペプチドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCTLA4に結合するのを可能にし、免疫細胞に阻害シグナルを提供する。別の態様において、PD−L1は、B7ポリペプチドに結合することによって、共刺激受容体CD28へのB7ポリペプチドの結合も減少させる。したがって、1つの態様において、PD−1リガンドポリペプチドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCD28に結合するのを可能にし、免疫細胞に共刺激シグナルを提供する。
【0057】
たとえば、1つの態様において、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を増大させる作用剤は、免疫応答を増強することができるが、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を減少させる作用剤は、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用および/またはB7ポリペプチドとCTLA4の間の相互作用を増強することによって、免疫応答を減少させることができる。1つの態様において、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節する作用剤は、PD−1リガンドとPD−1の間および/またはB7ポリペプチドとCTLA4の間の相互作用の阻害を生じない。別の態様において、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を増大させる作用剤はまた、PD−1リガンドとPD−1の間および/またはB7ポリペプチドとCTLA4の間の相互作用を減少させる。さらに別の態様において、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を減少させる作用剤は、PD−1リガンドとPD−1の間および/またはB7ポリペプチドとCTLA4の間の相互作用を増強または増大させる。例示的な調節(たとえば、免疫応答の低減化など)をするための作用剤として、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を阻害するPD−1リガンドまたはB7ポリペプチドに対する抗体;PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を阻害する小分子またはペプチド;およびB7ポリペプチドまたはPD−1リガンドにそれぞれ結合し、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻止する融合タンパク質(たとえば、抗体のFc部分に融合したPD−1リガンドまたはB7ポリペプチドの細胞外部分)が挙げられる。
【0058】
別の態様において、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を増大させる作用剤は、B7ポリペプチドのCD28に結合する能力を減少させることによって、免疫応答を減少させる。また別の態様において、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を減少させる作用剤は、B7ポリペプチドとCD28の間の相互作用を増大させることによって、免疫応答を増大させることができる。
【0059】
PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を調節する作用剤はまた、免疫応答をアップレギュレートまたはダウンレギュレートするのに用いることができる。たとえば、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を増大させる作用剤は、免疫応答を減少させることができるが、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を減少させる作用剤は、免疫応答を増大させることができる。PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を調節する作用剤が、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節しない(直接的影響をもたない)のが好ましい。別の態様において、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を増大させる作用剤は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を減少させる。さらに別の態様において、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を減少させる作用剤は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を増大させる。例示的な調節(たとえば、免疫応答の増強など)をするための作用剤として、PD−1とPD−1リガンドの相互作用をブロックするPD−1またはPD−1リガンドに対する抗体;およびPD−1またはPD−1リガンドに結合し、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を阻止する融合タンパク質(たとえば、抗体のFc部分に融合したPD−1リガンドまたはPD−1の細胞外部分)が挙げられる。
【0060】
別の態様において、B7ポリペプチドに結合する少なくとも一部のPD−1リガンドまたはこのような部分の模倣物を用いて、B7ポリペプチドに結合し、第1免疫細胞上のB7ポリペプチドおよび第2免疫細胞上のCTLA4の間の相互作用を阻害することによって、免疫応答を増強することができる。
別の態様において、B7ポリペプチドに結合する少なくとも一部のPD−1リガンドまたはこのような部分の模倣物を用いて、B7ポリペプチドに結合し、第1免疫細胞上のB7ポリペプチドおよび第2免疫細胞上のCD28の間の相互作用を阻害することによって、免疫応答を増強することができる。
【0061】
単離されたPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28もしくはその部分またはフラグメント(またはこのようなポリペプチドをコードする核酸)は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体製造のための標準的技術を用いて、それぞれPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28に結合する抗体を産生するための免疫原として用いることができる。全長PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28を用いることができるが、あるいは別法として、本発明は、免疫原として用いるためのPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28ポリペプチドの抗原ペプチドフラグメントに関する。PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の抗原ペプチドは、少なくとも8つのアミノ酸残基を含み、ペプチドに対して生じた抗体が、それぞれの全長分子と特異的免疫複合体を形成するように、それぞれの全長分子に存在するエピトープを包含する。抗原ペプチドは、好ましくは少なくとも10個のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15個のアミノ酸残基、さらに好ましくは少なくとも20個のアミノ酸残基および最も好ましくは少なくとも30個のアミノ酸残基を含む。抗原ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、親水性領域などのタンパク質の表面にあるPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の領域である。ポリペプチド分子の標準的疎水性分析を行って、親水性領域を同定することができる。抗原ペプチドに含まれる非常に好ましいエピトープは、細胞外ドメインにあり、したがって、結合に関与するポリペプチドの領域である。1つの態様において、このようなエピトープは、マウスまたはヒトといったような1つの種から得られたポリペプチドに対して特異的でありうる(すなわち、種を交差して保存されていないポリペプチド分子の領域に広がる抗原ペプチドは、免疫原として用いられる;このような非保存的残基は、本明細書に記載のアラインメントを用いて決定することができる)。
【0062】
1つの態様において、抗体は、B7ポリペプチドまたはPD−1リガンドに結合することなく、PD−1に実質的に特異的に結合する。別の態様において、抗体は、PD−1リガンドに実質的に特異的に結合する。別の態様において、抗体はB7ポリペプチドに実質的に特異的に結合する。好ましい態様において、抗体は、PD−1リガンドに結合し、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をブロックする。別の好ましい態様において、抗体は、B7ポリペプチドに結合し、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をブロックする。別の好ましい態様において、抗体は、PD−1リガンドに結合し、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をブロックすることなく、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をブロックする。
【0063】
免疫原PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28は、典型的には、該免疫原で適当な対象(たとえば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他のほ乳類)を免疫感作することによって抗体を製造するのに用いられる。適当な免疫原調製物には、たとえば、それに対する免疫応答が生じることになる、組換えにより発現された分子または化学的に合成された分子もしくはそのフラグメントを含むことができる。さらに調製物として、フロイント完全もしくは不完全アジュバント、または類似の免疫刺激剤が挙げられる。免疫原調製物による適当な対象の免疫感作は、それに含まれる抗原ペプチドに対するポリクローナル抗体応答を誘発する。
【0064】
ポリクローナル抗体は、前述したように、適当な対象をポリペプチド免疫原で免疫感作することによって製造することができる。免疫感作された対象におけるポリペプチド抗体力価は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの標準的技術によって、モニターすることができる。所望であれば、抗原に対する抗体を哺乳類(たとえば血液など)から単離し、プロテインAクロマトグラフィー公知の技術によってさらに精製して、IgGフラクションを得ることができる。免疫感作後の適当な時点、たとえば、抗体力価が最高になる時点で、対象から抗体産生細胞を得て、最初、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495-497)によって記載されたハイブリドーマ技術(Brownら(1981) J. Immunol. 127:539-46; Brownら(1980) J. Biol. Chem. 255:4980-83; Yehら(1976) Proc. Natl. Acad. Sci. 76:2927-31; and Yehら(1982) Int. J. Cancer 29:269-75も参照)、より近年ではヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Coleら(1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)またはトリオーマ技術などの標準的技術によるモノクローナル抗体の製造に用いることができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを産生するテクノロジーは、公知である(一般に、Kenneth, R. H. in Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, New York (1980); Lerner, E. A. (1981) Yale J. Biol. Med. 54:387 402; Gefter, M. L.ら(1977) Somatic Cell Genet. 3:231 36)を参照。簡単に述べると、上述の免疫原で免疫感作した哺乳類由来のリンパ球(典型的には、脾細胞)に不死細胞系(典型的には、骨髄腫)を融合させ、得られるハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングして、ポリペプチド抗原に好ましくは特異的に結合するモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマを同定する。
【0065】
リンパ球と不死細胞系を融合させるのに用いる多くの公知のプロトコルのいずれもが、抗PD−1、抗PD−1リガンドまたは抗B7ポリペプチドモノクローナル抗体の産生のために適用することができる(たとえば、Galfre, G.ら(1977) Nature 266:55052; Gefterら(1977) 前述; Lerner (1981) 前述; Kenneth (1980) 前述を参照)。さらに、有用であるこのような方法の多くのバリエーションがあることは、当業者にば当然のことである。典型的には、不死化細胞系(たとえば、骨髄腫細胞系)は、リンパ球と同じ哺乳類の種から誘発される。たとえば、マウスハイブリドーマは、本発明の免疫原調製物で免疫感作されたマウスのリンパ球と不死化マウス細胞系とを融合させることによって、作製することができる。好ましい不死細胞系は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン含有培養培地(「HAT培地」)に感受性があるマウス骨髄腫細胞系である。たとえば、P3-NS1/1-Ag4-1、P3-x63-Ag8.653またはSp2/O-Ag14骨髄腫系といったような多くの骨髄腫細胞系のいずれもが、標準的技術にしたがって融合パートナーとして用いることができる。これらの骨髄腫系は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC), Rockville, Mdから入手可能である。典型的には、ポリエチレングリコール(「PEG」)を用いて、HAT感受性マウス骨髄腫細胞をマウス脾細胞に融合させる。次いで、未融合細胞および非生産的に融合した骨髄腫細胞を殺すHAT培地を用いて、融合から得られるハイブリドーマ細胞を選択する(未融合脾細胞は、形質転換されないので、数日後に死ぬ)。本発明のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞は、たとえば、標準的ELISAアッセイなどを用いて、所定のポリペプチドを結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって検出される。
【0066】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するための別法として、組換えコノビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(たとえば、抗体ファージディスプレーライブラリー)を適当なポリペプチドでスクリーニングすることにより、該ポリペプチドを結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離することによって、上述のポリペプチドの1つに対して特異的なモノクローナル抗体を同定し、単離することができる。ファージディスプレーライブラリーを作製し、スクリーニングするためのキットが市販されている(たとえば、ファルマシアの組換えファージ抗体システム, Catalog No. 27-9400-01;およびストラタジーンのSurfZAPTM ファージディスプレーキット, Catalog No. 240612など)。さらに、抗体ディスプレーライブラリーの作製およびスクリーニングにとって特に受け入れられる方法および試薬の例は、たとえば、LadnerらU.S. Patent No. 5,223,409; KangらInternational Publication No. WO 92/18619; DowerらInternational Publication No. WO 91/17271; WinterらInternational Publication WO 92/20791; MarklandらInternational Publication No. WO 92/15679; BreitlingらInternational Publication WO 93/01288; McCaffertyらInternational Publication No. WO 92/01047; GarrardらInternational Publication No. WO 92/09690; LadnerらInternational Publication No. WO 90/02809; Fuchsら(1991) Biotechnology (NY) 9:1369-1372; Hayら(1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85; Huseら(1989) Science 246:1275-1281; Griffithsら(1993) EMBO J. 12:725-734; Hawkinsら(1992) J. Mol. Biol. 226:889-896; Clarksonら(1991) Nature 352:624-628; Gramら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576-3580; Garrardら(1991) Biotechnology (NY) 9:1373-1377; Hoogenboomら(1991) Nucleic Acids Res. 19:4133-4137; Barbasら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7978-7982; およびMcCaffertyら(1990) Nature 348:552-554に見出すことができる。
【0067】
さらに、標準的組換えDNA技術を用いて作製することができるヒトおよび非ヒト部分の両方を含んでいるキメラおよびヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗PD−1、抗PD−1リガンドまたは抗B7ポリペプチド抗体は、本発明の範囲に含まれる。このようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、たとえば、RobinsonらInternational Patent Publication PCT/US86/02269; AkiraらEuropean Patent Application 184,187; Taniguchi, M. European Patent Application 171,496; MorrisonらEuropean Patent Application 173,494; NeubergerらPCT Application WO 86/01533; CabillyらU.S. Patent No. 4,816,567; CabillyらEuropean Patent Application 125,023; Betterら(1988) Science 240:1041-1043; Liuら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443; Liuら(1987) J. Immunol. 139:3521-3526; Sunら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. 84:214-218; Nishimuraら(1987) Cancer Res. 47:999-1005; Woodら(1985) Nature 314:446-449; and Shawら(1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559); Morrison, S. L. (1985) Science 229:1202-1207; Oiら(1986) Biotechniques 4:214; Winter U.S. Patent 5,225,539; Jonesら(1986) Nature 321:552-525; Verhoeyanら(1988) Science 239:1534; およびBeidlerら(1988) J. Immunol. 141:4053-4060に記載されている方法を用いる当業界で公知の組換えDNA技術によって作製することができる。
【0068】
さらに、ヒト化抗体は、US patent 5,565,332に開示されたような標準的プロトコルにしたがって作製することができる。別の態様において、たとえば、US patents 5,565,332, 5,871,907または5,733,743に記載されているような当業界で公知の技術を用いて、特異的結合ペアメンバーのポリペプチド鎖と複製可能な一般的ディスプレーパッケージの成分の融合をコードする核酸分子を含むベクターと単一の結合ペアメンバーの第2のポリペプチド鎖をコードする核酸分子を含むベクターとの間の組換えによって、抗体鎖または特異的結合ペアのメンバーを作製することができる。細胞内のタンパク質の機能を阻害するための細胞内抗体の使用も当業界で公知である(たとえば、Carlson, J. R. (1988) Mol. Cell. Biol. 8:2638-2646; Biocca, S.ら(1990) EMBO J. 9:101-108; Werge, T. M.ら(1990) FEBS Lett. 274:193-198; Carlson, J. R. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7427-7428; Marasco, W. A.ら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7889-7893; Biocca, S.ら(1994) Biotechnology (NY) 12:396-399; Chen, S-Y.ら(1994) Hum. Gene Ther. 5:595-601; Duan, Lら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5075-5079; Chen, S-Y.ら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5932-5936; Beerli, R. R.ら(1994) J. Biol. Chem. 269:23931-23936; Beerli, R. R.ら(1994) Biochem. Biophys. Res. Commun. 204:666-672; Mhashilkar, A. M.ら(1995) EMBO J. 14:1542-1551; Richardson, J. H.ら(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:3137-3141; PCT Publication No. WO 94/02610 by Marasco et al.;およびPCT Publication No. WO 95/03832 by Duan らを参照)。
【0069】
さらに、PD−1リガンド、PD−1またはB7ポリペプチドに対する完全ヒト抗体が作製された。たとえば、Hoganら, 「Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manuel,」 Cold Spring Harbor Laboratoryにしたがって、完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるマウスにおいて作製することができる。簡単に述べると、トランスジェニックマウスを精製PD−1リガンド、PD−1またはB7ポリペプチドで免疫感作する。脾細胞を採集し、骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを作製する。ハイブリドーマを、それらのPD−1リガンド、PD−1またはB7ポリペプチドに結合する抗体産生能力に基づいて選択する。完全ヒト抗体は、ヒトにおけるこのような抗体の免疫原性を低下させる。
【0070】
1つの態様において、本発明において使用する抗体は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、単一の抗体ポリペプチド内に2つの異なる抗原に対する結合部位をもつ。抗原結合は、同時または逐次で起こる。トリオーマおよびハイブリッドハイブリドーマは、二重特異性抗体を分泌しうる細胞系の2つの例である。ハイブリッドハイブリドーマまたはトリオーマによって産生される二重特異性抗体の例は、U.S. Pat. 4,474,893に開示されている。二重特異性抗体は、化学的手段(Staerzら(1985) Nature 314:628, and Perezら(1985) Nature 316:354)およびハイブリドーマテクノロジー(Staerz and Bevan (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:1453, and Staerz and Bevan (1986) Immunol. Today 7:241)によって構築されている。二重特異性抗体は、U.S. patent 5,959,084にも記載されている。二重特異性抗体のフラグメントが、US patent 5,798,229に記載されている。二重特異性作用剤は、異なる抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞を融合させ、次いで、両方の抗体を産生し、共構築(co-assembling)するクローンを同定することによりヘテロハイブリドーマを作製することによって作製することもできる。それらは、完全免疫グロブリン鎖またはFabまたはFv配列などのその部分の化学的または遺伝的コンジュゲーションによって作製することもできる。抗体成分は、PD−1、PD−1リガンド、B7、CTLA4またはCD28ポリペプチドに結合することができる。1つの態様において、二重特異性抗体は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの両方に特異的に結合することができる。
【0071】
本発明のさらに別の態様は、免疫原PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28またはPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28に特有のその免疫原性部分で動物を免疫感作し、次いで、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体を動物から単離することを含む工程によって入手しうる抗PD−1、抗PD−1リガンドまたは抗B7ポリペプチド抗体に関する。
【0072】
本発明の別の態様において、ペプチドまたはペプチド模倣物を用いて、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用またはPD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をアンタゴナイズまたは促進することができる(たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を妨害することなく)。1つの態様において、各全長タンパク質の調節作用剤として機能するPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の変異体を、たとえば、トランケーション突然変異体などの突然変異体のコンビナトリアル・ライブラリーをアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって同定することができる。1つの態様において、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の変異体の変化に富んだライブラリーが、核酸レベルにおけるコンビナトリアル突然変異誘発によって作成され、該ライブラリーは、変化に富んだ遺伝子ライブラリーをコードする。PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の変異体の変化に富んだライブラリーは、たとえば、潜在的ポリペプチド配列の縮重セットが、その中にポリペプチドのセットを含んでいる個々のポリペプチドとして発現されるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることによって作成することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列からポリペプチド変異体のライブラリーを作成するのに用いることができる種々の方法がある。縮重遺伝子配列の化学的合成は、自動DNA合成機で行うことができ、次いで、合成遺伝子を適当な発現ベクターにライゲートする。遺伝子の縮重セットの使用により、1つの混合物において、潜在的ポリペプチド配列の所望のセットをコードするすべての配列を提供することができる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当業界で公知である(たとえば、Narang, S. A. (1983) Tetrahedron 39:3; Itakuraら(1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakuraら(1984) Science 198:1056; Ikeら(1983) Nucleic Acid Res. 11:477などを参照)。
【0073】
さらに、ポリペプチドコーティング配列のフラグメントのライブラリーを用いて、所定のポリペプチドの変異体のスクリーニングおよびそれに続く選択のためのポリペプチドフラグメントの変化に富んだ集団を作製することができる。1つの具体例において、ポリペプチド当たり約1のみニッキングが起こる条件下でポリペプチドコーティング配列の二本鎖PCRフラグメントをヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性し、DNAを再生して異なるニッキング産物からセンス/アンチセンス対を含みうる二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼにより再形成された二本鎖物から一本鎖部分を除去し、次いで、得られるフラグメントライブラリーを発現ベクターにライゲートすることによって、コーティン配列フラグメントのライブラリーを作成することができる。この方法によって、N−末端、C−末端および種々のサイズのポリペプチドの内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを誘導することができる。
【0074】
点突然変異またはトランケーションによって作成されたコンビナトリアル・ライブラリーの遺伝子産物のスクリーニング用および選択された特性を有する遺伝子産物のためのcDNAライブラリーのスクリーニング用の幾つかの技術は、当業界で公知である。このような技術は、ポリペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発によって作成される遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適している。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするためのハイスループット分析にしやすい最も広範に用いられる技術として、典型的には、複製可能な発現ベクターへの遺伝子ライブラリーのクローニング、得られるベクターのライブラリーによる適当な細胞の形質転換および所望の活性の検出により遺伝子の産物が検出される遺伝子をコードするベクターの単離が促進される条件下でのコンビナトリアル遺伝子の発現が挙げられる。ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を増加させる技術である再帰的集団突然変異(Recursive ensemble mutagenesis (REM))を、スクリーニングアッセイと組み合わせて用いて、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の変異体を同定することができる(Arkin and Youvan (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7811-7815; Delagraveら(1993) Protein Eng. 6(3):327-331)。1つの態様において、細胞系アッセイを利用して、変化に富んだポリペプチドライブラリーを分析することができる。たとえば、通常PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28を合成する細胞系に、発現ベクターのライブラリーを形質移入することができる。次いで、全長ポリペプチドおよび特定の突然変異ポリペプチドが産生されるように形質移入された細胞を培養し、たとえば、多くの機能アッセイのいずれかによって細胞上清における全長ポリペプチド上の突然変異体の発現を検出することができる。次いで、全長ポリペプチド活性の阻害あるいは潜在化およびさらに特徴づけられた個々のクローンについて評価する細胞からプラスミドDNAを回収することができる。
【0075】
同じタイプのD−アミノ酸によるポリペプチドアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸の系統的置換(たとえば、L−リシンの代わりにD−リシンなど)を用いて、より安定なペプチドを作製することができる。さらに、対象となるポリペプチドアミノ酸配列または実質的に同一である配列バリエーションを含む拘束された(constrained)ペプチドは、当業界で公知の方法(RizoおよびGierasch (1992) Annu. Rev. Biochem. 61:387, これは全体を参考文献として本発明に援用される);たとえば、ペプチドを環化する分子間ジスルフィド橋を形成しうる内部システイン残基を付加することによって作製することができる。
【0076】
本明細書に開示したアミノ酸配列は、ペプチド配列およびその変異体に対応するポリペプチドを当業者が作製することを可能にする。このようなポリペプチドは、多くはより大きいポリペプチドの一部として、ペプチド配列をコードするポリヌクレオチドの発現によって、原核または真核宿主細胞において産生させることができる。別法として、このようなペプチドは、化学的方法によって合成することができる。組換え宿主における異種タンパク質の発現方法、ポリペプチドの化学的合成およびインビトロ翻訳は、当業界で公知であり、ManiatisらMolecular Cloning: A Laboratory Manual (1989), 2nd Ed., Cold Spring Harbor, N.Y.; Berger and Kimmel, Methods in Enzymology, Volume 152, Guide to Molecular Cloning Techniques (1987), Academic Press, Inc., San Diego, Calif.; Merrifield, J. (1969) J. Am. Chem. Soc. 91:501; Chaiken I. M. (1981) CRC Crit. Rev. Biochem. 11: 255; Kaiserら(1989) Science 243:187; Merrifield, B. (1986) Science 232:342; Kent, S. B. H. (1988) Annu. Rev. Biochem. 57:957; およびOfford, R. E. (1980) Semisynthetic Proteins, Wiley Publishing(これらは全体を参考文献として本発明に援用される)にさらに記載されている。
【0077】
1つの態様において、ペプチドは、PD−1リガンドポリペプチドのB7結合部位と同一または類似のアミノ酸配列をもつ。別の態様において、ペプチドは、B7ポリペプチドのPD−L1結合部位と同一または類似のアミノ酸配列をもつ。1つの態様において、ペプチドは、B7ポリペプチドに対する結合についてPD−1リガンドと競合するか、またはペプチドは、PD−1リガンドに対する結合についてB7ポリペプチドと競合する。好ましい態様において、ペプチドは、B7ポリペプチドへのPD−1リガンドの結合について競合するが、PD−1とPD−1リガンドの間の結合については競合しない。別の態様において、ペプチドは、PD−1とPD−1リガンドの間の結合について競合するが、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間については競合しない。
【0078】
ペプチドは、典型的には、直接的化学合成によって作製し、たとえば、PD−1とPD−1リガンドの間またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用のアンタゴニストとして用いることができる。ペプチドは、N末端および/またはC末端への共有結合によって結合した非ペプチド部分を含む修飾ペプチドとして作製することができる。ある好ましい態様において、カルボキシ末端もしくはアミノ末端または両方を化学的に修飾する。末端アミノおよびカルボキシル基の最も一般的な修飾は、それぞれアセチル化とアミド化である。アシル化(アセチル化など)またはアルキル化(メチル化など)などのアミノ末端修飾およびアミド化などのカルボキシ末端修飾ならびに環化などの他の末端修飾を種々の本発明の態様に組み込むことができる。あるアミノ末端および/またはカルボキシ末端修飾および/またはコア配列へのペプチド伸長により、安定性の増大、効能および/または効力の増加、血清プロテアーゼに対する耐性、所望の薬物動態特性などの有利な物理的、化学的および薬理学的特性が提供される。本明細書に開示するペプチドを治療的に用いて、たとえば、患者における共刺激を変更することによって疾病を治療することができる。
【0079】
ペプチド模倣体は、通常、コンピューター処理による分子モデリングを用いて創り出される(Fauchere, J. (1986) Adv. Drug Res. 15:29; VeberおよびFreidinger (1985) TINS p.392; およびEvansら(1987) J. Med. Chem. 30:1229,これらは全体を参考文献として本発明に援用される)。治療上有用なペプチドに構造的に類似するペプチド模倣体を用いて、等価の治療または予防効果を生み出すことができる。一般に、ペプチド模倣体は、ヒトPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的活性のあるポリペプチド)に構造的に類似するが、必要に応じて、当業界で周知の方法により、-CH2NH-, -CH2S-, -CH2-CH2-, -CH=CH- (シスおよびトランス), -COCH2-, -CH(OH)CH2-および -CH2SO-から選ばれる結合で置換された1つ以上のペプチド結合を有し、さらに、次の参考文献に記載されている:Spatola, A. F. in 「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins」 Weinstein, B., ed., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983); Spatola, A. F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, 「Peptide Backbone Modifications」 (general review); Morley, J. S. (1980) Trends Pharm. Sci. pp. 463-468 (general review); Hudson, D.ら(1979) Int. J. Pept. Prot. Res. 14:177-185 (-CH2NH-, CH2CH2-); Spatola, A. F.ら(1986) Life Sci. 38:1243-1249 (-CH2-S); Hann, M. M. (1982) J. Chem. Soc. Perkin Trans. I. 307-314 (-CH-CH-, cis and trans); Almquist, R. G.ら(190) J. Med. Chem. 23:1392-1398 (-COCH2-); Jennings-White, C.ら(1982) Tetrahedron Lett. 23:2533 (-COCH2-); Szelke, M.らEuropean Appln. EP 45665 (1982) CA: 97:39405 (1982)(-CH(OH)CH2-); Holladay, M. W.ら(1983) Tetrahedron Lett. (1983) 24:4401-4404 (-C(OH)CH2-);および Hruby, V. J. (1982) Life Sci. (1982) 31:189-199 (-CH2-S-);これらは全体を参考文献として本発明に援用される。特に好ましい非ペプチド結合は、-CH2NH-である。このようなペプチド模倣体は、たとえば、より経済的な製造、より大きい化学的安定性、増進された薬理学的特性(半減期、吸収、効能、効力など)、変更された特異性(広範な生物学的活性など)、低減化された免疫原性などのポリペプチド形態全体にわたる重大な利点を有する。ペプチド模倣体の標識は、通常、定量的構造−活性データおよび/または分子モデリングによって予測されるペプチド模倣体上の非妨害位置への1つ以上の標識の直接的あるいはスペーサー(アミド基など)を介した共有結合を含む。このような非妨害位置とは一般に、ペプチド模倣体が治療的効果を生み出すために結合する、マクロポリペプチドと直接接触しない位置である。ペプチド模倣体の誘導体化(標識など)は、ペプチド模倣体の所望の生物学的または薬理学的活性を実質的に妨害すべきではない。
【0080】
本発明には、たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間またはPD−1とPD−1リガンドの間の相互作用などの相互作用を調節(増強または阻害)することができる小分子も含まれる。本発明の小分子は、空間的にアドレス可能なパラレル固相または溶液相ライブラリー;デコンヴォルーションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ・1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法といったような当業界で周知のコンビナトリアル・ライブラリー法における多くのアプローチのいずれかを用いて得ることができる(Lam, K. S. (1997) Anticancer Drug Des. 12:145)。
【0081】
分子らの合成法の例は、たとえば、DeWittら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909; Erbら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422; Zuckermannら(1994) J. Med. Chem. 37:2678; Choら(1993) Science 261:1303; Carrellら(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carellら(1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;およびGallopら(1994) J. Med. Chem. 37:1233など、当業界で見出すことができる。
【0082】
化合物のライブラリーは、溶液中(e.g., Houghten (1992) Biotechniques 13:412-421)またはビーズ(Lam (1991) Nature 354:82-84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364:555-556)、細菌(Ladner USP 5,223,409)、胞子(Ladner USP ’409)、プラスミド(Cullら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869)もしくはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249:386-390); (Devlin (1990) Science 249:404-406); (Cwirlaら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382); (Felici (1991) J. Mol. Biol. 222:301-310); (Ladner 前述)においても存在することができる。化合物は、細胞ベースまたは非細胞系アッセイにおいてスクリーニングすることができる。化合物は、集合(たとえば、各試験サンプルにおける複数の化合物)または個々の化合物としてスクリーニングすることができる。
【0083】
1つの態様において、小分子は、PD−1リガンド/B7ポリペプチド相互作用に関与する結合部位またはD−1/PD−1リガンド相互作用に関与する結合部位に結合する。1つの態様において、小分子は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をアンタゴナイズする。好ましい態様において、小分子は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をアンタゴナイズするが、PD−1とPD−1リガンドまたはB7とCTLA4の間の相互作用はアンタゴナイズしない。別の態様において、小分子は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をアンタゴナイズすることなく、PD−1とPD−1リガンドの間またはB7とCTLA4の間の相互作用をアンタゴナイズする。
【0084】
本発明は、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28キメラもしくは融合タンパク質に関する。本明細書で用いるPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28「キメラタンパク質」もしくは「融合タンパク質」は、非PD−1、非PD−1リガンド、非CTLA4、非CD28または非B7ポリペプチド分子に作動可能に結合したPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28分子を含む。「PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28分子」は、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味するが、「非PD−1、非PD−1リガンド、非B7ポリペプチド、非CTLA4または非CD28分子」は、たとえば、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28分子とは相異し、同じもしくは相異する微生物から誘導されるタンパク質などの各PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28分子に実質的に相同でないタンパク質に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28融合タンパク質のうち、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28部分は、全長PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28分子の全部または一部に対応することができる。好ましい態様において、融合タンパク質は、細胞外ドメインなどの、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28分子の少なくとも1つの生物学的活性部分を含む。融合タンパク質のうち、用語「作動可能に結合した」は、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28アミノ酸配列および非PD−1、非PD−1リガンドまたは非B7ポリペプチド配列が、独立して融合タンパク質に発現する場合に示される機能を保存するような様式で互いにインフレーム融合することを示すことを異図する。非PD−1、非PD−1リガンド、非B7ポリペプチド、非CTLA4または非CD28分子は、それぞれPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28配列のN末端またはC末端に融合することができる。
【0085】
このような融合タンパク質は、第1ペプチドをコードするヌクレオチド配列と第2ペプチドをコードするヌクレオチド配列の組換え発現によって作製することができる。第2ペプチドは、必要に応じて、たとえば、免疫グロブリン定常領域などの第1ペプチドの溶解度、親和性、安定性または結合価を変更する部分に対応してもよい。好ましくは、第1ペプチドは、活性化した免疫細胞の共刺激または阻害を調節するのに十分なPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の部分からなる。別の態様において、第1ペプチドは、生物学的活性分子の部分(たとえば、ポリペプチドの細胞外部分またはリガンド結合部分など)からなる。第2ペプチドは、たとえば、ヒトCγ1ドメインまたはCγ4ドメイン(たとえば、ヒトIgCγ1またはヒトIgCγ4のヒンジ、CH2およびCH3領域;CaponらUS patent 5,116,964; 5,580,756; 5,844,095などを参照;これらは全体を参考文献として本発明に援用される)などの免疫グロブリン定常領域を含むことができる。このような定常領域は、エフェクター機能(Fc受容体結合など)を媒介する領域を保持するか、またはエフェクター機能を低下させるように変更する。得られる融合タンパク質は、独立して発現された第1ペプチドに比べて、安定性、結合親和性、安定性および/または結合価(すなわち、ポリペプチド当たりの利用可能な結合部位の数)を変更することができており、タンパク質精製の効率を増加することができる。組換え技術によって作製された融合タンパク質およびペプチドを、タンパク質またはペプチドを含む細胞および培地の混合物から分泌し、単離することができる。別法として、タンパク質またはペプチドを細胞質内に保持し、細胞を採集し、溶解し、タンパク質を単離することができる。細胞培養は、典型的には、宿主細胞、培地および他の副生成物を含む。細胞培養のための適当な培地は、当業界で周知である。タンパク質およびペプチドは、タンパク質およびペプチド精製用の当業界で周知の技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞またはその両方から単離することができる。宿主細胞に形質移入し、タンパク質およびペプチドを精製するための技術は当業界で周知である。
【0086】
特に好ましいIg融合タンパク質として、免疫グロブリン定常領域(Fc領域など)に結合する、ヒトPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の細胞外ドメイン部分または可変領域様ドメインが挙げられる。免疫グロブリンの定常領域は、免疫グロブリン構造に固有のエフェクター活性を減少あるいは削除する遺伝子修飾を含むこともできる。たとえば、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の細胞外部分をコードするDNAを、たとえば、WO 97/28267に教示されているような特定部位突然変異誘発によっ修飾されたヒトIgGγ1またはIgGγ4のヒンジ、CH2およびCH3領域をコードするDNAに結合させることができる。
本発明の融合タンパク質は、標準的組換えDNA技術によって作製されるのが好ましい。たとえば、ライゲーションのための平滑末端またはねじれ末端、適当な末端を得るための制限酵素切断、必要に応じて粘着末端の充填、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理および酵素ライゲーションを用いる慣例の技術にしたがって、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントを一緒にインフレームライゲーションさせる。別の態様において、自動DNA合成機などの慣例の技術によって融合遺伝子を合成することができる。別法として、続いてアニーリングされ、再増幅されてキメラ遺伝子配列を生じる、2つの連続した遺伝子フラグメントの間に相補的オーバーハングを生じさせる2つのアンカープライマーを用いる遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うことができる(たとえば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. AusubelらJohn Wiley & Sons: 1992を参照)。融合部分がPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28をコードする配列にインフレーム結合するように、発現ベクターに核酸をコードするポリペプチドをクローニングする。
【0087】
別の態様において、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含む。ある宿主細胞(たとえば、哺乳動物宿主細胞)において、異種シグナル配列の使用により、ポリペプチドの発現および/または分泌を増加させることができる。
【0088】
好ましい態様において、融合タンパク質は、PD−1またはPD−1リガンドに結合し、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をブロックすることなく、PD−1とPD−1リガンドの相互作用をブロックする。別の好ましい態様において、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチド融合タンパク質は、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチドに結合し、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用をブロックする。
PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28融合タンパク質の使用は、たとえば、自己免疫疾患などの免疫疾患の治療にとって、または移植片拒絶反応の阻止において、治療的に有用である。
【0089】
本発明の融合タンパク質は、被験者において抗体を産生するための免疫原として用いることができる。このような抗体は、融合タンパク質が作製された各天然のポリペプチドの精製、あるいはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用またはPD−1とPD−1リガンドの相互作用を阻害するポリペプチドを同定するためのスクリーニングアッセイに用いることができる。
本明細書に記載する調節的作用剤(たとえば、抗体、小分子、ペプチドまたは融合タンパク質など)は、医薬組成物に組み入れて、患者にインビボで投与することができる。組成物は、本明細書に記載した単一のそのような分子または作用剤または調節的作用剤のいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【0090】
III.免疫細胞活性を調節する作用剤の選択方法
本発明の別の態様は、共刺激を調節すること(PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用またはPD−1とPD−1リガンドの相互作用を阻害する作用剤など)によって免疫応答を調節する作用剤(たとえば、抗体、融合タンパク質、ペプチドまたは小分子)の選択方法に関する。このような方法は、細胞ベースおよび非細胞系アッセイなどのスクリーニングアッセイを利用する。1つの態様において、アッセイは、(たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を阻害しながら、あるいは阻害することなく)PD−1リガンドとPD−1の相互作用を阻害する作用剤を同定する方法を提供する。別の態様において、アッセイは、(たとえば、PD−1リガンドとPD−1の相互作用;B7ポリペプチドとCTLA4の相互作用;および/またはB7ポリペプチドとCD28の相互作用を阻害しながら、あるいは阻害することなく)PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節する作用剤を同定する方法を提供する。
【0091】
1つの態様において、本発明は、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28に結合するか、または、たとえば、その同族の結合パートナーと相互作用する(結合するなど)PD−1リガンドまたはPD−1の能力を調節するといったような、その活性を調節する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイに関する。1つの態様において、免疫応答を調節する作用剤を同定する方法は、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をたとえば増強または阻害するといったような調節する作用剤の能力の決定およびさらに作用剤のPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節する能力の決定を含む。1つの態様において、(たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節することなく)PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を調節する作用剤が選択される。別の態様において、(たとえば、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を調節することなく)PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節する作用剤が選択される。
このような作用剤として、抗体、タンパク質、融合タンパク質および小分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
1つの態様において、免疫応答を増強する作用剤を同定する方法は、(たとえば、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を調節することなく、あるいは阻害しながら)PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を増強する候補作用剤の能力の決定を伴う。別の態様において、方法は、(たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を増強調節することなく、あるいは増強しながら)PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を阻害する候補作用剤の能力の決定を含む。
【0093】
別の態様において、免疫応答を減少させる作用剤を同定する方法は、(たとえば、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を調節することなく、あるいは増強しながら)PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害する候補作用剤の能力の決定およびPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤の選択を含む。別の態様において、免疫応答を減少させる作用剤を同定する方法は、(たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節しない、あるいは阻害する)PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を増強する候補作用剤の能力の決定およびPD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を増強する作用剤の選択を含む。好ましい態様において、免疫応答を減少させるために選ばれた作用剤は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害するが、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を阻害しない。
【0094】
1つの態様において、アッセイは、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28を発現している細胞を試験化合物と接触させ、試験化合物のPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28のその結合パートナーへの結合を調節(たとえば、刺激または阻害)する能力を決定することを含む細胞系アッセイである。結合パートナーへ結合するPD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチドの能力または結合パートナーと相互作用するPD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチドの能力の決定は、たとえば、直接結合を測定することによって、あるいは免疫細胞の活性化のパラメーターを測定することによって達成することができる。
【0095】
たとえば、直接結合アッセイにおいて、PD−1またはB7ポリペプチドへのPD−1リガンドの結合が複合体として標識されたタンパク質を検出することによって決定することができるように、PD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチドタンパク質(またはそれぞれの標的ポリペプチド)を放射性同位体または酵素標識と結合させることができる。たとえば、125I、35S、14CまたはHで、直接的または間接的にPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28を標識し、放射線放出を直接カウントすることによって、あるいはシンチレーションカウントすることによって、放射性同位体を検出することができる。別法として、たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28を酵素的に標識し、適当な基質の産物への変換を決定することによって酵素標識を検出することができる。
【0096】
相互作用体のいずれかを標識することなく、PD−1とPD−1リガンドの間またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節する化合物の能力を決定することも本発明の範囲内にある。たとえば、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチドまたは標的ポリペプチドのいずれかを標識することなく、マイクロフィジオメーターを用いて、PD−1とPD−1リガンドまたはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を検出することができる(McConnell, H. M.ら(1992) Science 257:1906-1912)。本明細書で用いる「マイクロフィジオメーター」(たとえば、サイトセンサー)は、光アドレス可能電位計測法(light-addressable potentiometric sensor (LAPS))を用いて細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。酸性化速度の変化を、化合物と受容体の間の相互作用の指標として用いることができる。
【0097】
好ましい態様において、ポリペプチドの所定のセットをアンタゴナイズするブロッキング剤(たとえば、抗体、融合タンパク質、ペプチドまたは小分子など)の能力の決定は、ポリペプチドのセットの1つ以上のメンバーの活性を決定することによって達成することができる。たとえば、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28の活性は、細胞の第2メッセンジャー(たとえば、チロシンキナーゼ活性)の誘発を検出すること、適当な基質の触媒/酵素活性を検出すること、リポーター遺伝子(検出可能なマーカー、たとえば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、をコードする核酸に作動可能に結合した標的応答性調節エレメントを含む)の誘発を検出すること、またはPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28によって調節される細胞応答を検出することによって決定することができる。該ポリペプチドに結合する、あるいはポリペプチドと相互作用するブロッキング剤の能力の決定は、たとえば、免疫細胞共刺激または増殖アッセイにおける阻害を調節する化合物の能力を測定するか、または該ポリペプチドの部分を認識する抗体に結合する該ポリペプチドの能力を妨害することによって達成することができる。
【0098】
PD−1リガンドと共刺激受容体の相互作用をブロックまたは阻害する作用剤(たとえば、可溶性型のPD−1リガンドまたはPD−1リガンドに対するブロッキング抗体など)ならびにPD−1リガンド媒介性阻害シグナルを促進する作用剤(たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用をブロックする作用剤など)は、免疫細胞増殖および/またはエフェクター機能を阻害するその能力もしくはインビトロアッセイに加えた場合にアネルギーを誘発するその能力によって同定することができる。たとえば、活性化受容体を介してシグナルトランスダクションを刺激する作用剤の存在下に細胞を培養することができる。多くの認識された細胞活性化の読み出しを利用して、活性化剤の存在下に細胞増殖またはエフェクター機能(たとえば、抗体産生、サイトカイン産生、食作用)を測定することができる。この活性化をブロックする試験作用剤の能力は、当業界で周知の技術を用いて測定される増殖またはエフェクター機能における低下をもたらすその作用剤の能力を測定することによって容易に決定することができる。
【0099】
たとえば、本発明の作用剤を、Freemanら(2000) J. Exp. Med. 192:1027 and Latchmanら(2001) Nat. Immunol. 2:261に記載されているように、T細胞アッセイにおいて、共刺激を阻害または増強する能力について試験することができる。CD4+T細胞をヒトPBMCから単離し、活性化抗CD3抗体で刺激することができる。T細胞の増殖は、Hチミジン取り込みによって測定することができる。アッセイは、CD28共刺激があってもなくても行うことができる。類似のアッセイをPBMC由来のジャーカットT細胞およびPHA幼若化細胞を用いて行うことができる。
【0100】
さらに別の態様において、本発明のアッセイは、PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28もしくはその生物活性部分を試験化合物と接触させ、ポリペプチドもしくはその生物活性部分に結合する試験化合物の能力を決定する無細胞アッセイである。PD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28への試験化合物の結語は、上述したように直接的または間接的のいずれかにおいて決定することができる。好ましい態様において、アッセイは、ポリペプチドまたはその生物活性部分をその結合パートナーと接触させて、アッセイ混合物を形成し、該アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、次いで、アッセイ混合物中のポリペプチドと相互作用する試験化合物の能力を決定することを含む;ここで、ポリペプチドと相互作用する試験化合物の能力を決定することは、結合パートナーと比較して、ポリペプチドまたはその生物活性部分に優先的に結合する試験化合物の能力を決定することを含む。
【0101】
たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドを用いて、アッセイ混合物を形成し、上述の方法のうちの1つまたは直接結合を決定することにより、PD−1リガンドを結合するPD−1の能力を決定することおよびB7ポリペプチドを結合するPD−1リガンドの能力を決定することによって、この相互作用をブロックするポリペプチドの能力を試験することができる。PD−1リガンドを結合するPD−1の能力を決定することおよびB7を結合するPD−1リガンドの能力の決定は、リアルタイム生体分子相互作用分析(Biomolecular Interaction Analysis:BIA)を用いても達成することができる(Sjolander, S.およびUrbaniczky, C. (1991) Anal. Chem. 63:2338-2345およびSzaboら(1995) Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705)。本明細書で用いる「BIA」は、相互作用体のいずれも標識することなく、リアルタイムにおいて生体特異的相互作用を研究するためのテクノロジーである(たとえば、BIAcore)。表面プラズモン共鳴(SPR)という工学的現象における変化を、生体ポリペプチドの間のリアルタイム反応の指標として用いることができる。PD−1、PD−1リガンドおよびB7ポリペプチドをBIAcoreチップ上に固定し、多数の作用剤(ブロッキング抗体、融合タンパク質、ペプチドまたは小分子)をPD−1、PD−1リガンドおよびB7ポリペプチドへの結合について試験することができる。BIAテクノロジーを用いる例は、Fitzら(1997) Oncogene 15:613に記載されている。
【0102】
本発明の無細胞アッセイは、タンパク質の可溶性および/または膜結合型の両方(たとえば、PD−1リガンドもしくはPD−1タンパク質またはその生物活性部分またはPD−1リガンドもしくはPD−1が結合する結合パートナー)に敏感に反応する。膜結合型タンパク質(たとえば、細胞表面PD−1リガンドまたはPD−1受容体など)を用いる無細胞アッセイの場合、膜結合型のタンパク質が溶液中に維持されるように、可溶化剤を利用するのが望ましい。可溶化剤の例として、n−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、トリトン(登録商標) X-100、トリトン(登録商標) X-114、Thesit(登録商標)、イソトリデイシポリ(エチレングリコールエーテル)n、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモオ]−1−プロパン・スルホネート(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパン・スルホネート(CHAPSO)またはN−ドデシル=N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパン・スルホネートなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0103】
上述したアッセイ方法のうち1つ以上の態様において、一方または両方のタンパク質の未複合体からの複合体の分離を促進し、アッセイの自動化に適応させるために、PD−1、PD−1リガンドおよびB7ポリペプチドまたは適当な標的ポリペプチドを固定化するのが望ましい。PD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチドへの試験化合物の結合は、反応物を入れるのに適したいずれかの容器内で行うことができる。このような容器の例として、マイクロタイタープレート、試験管およびマイクロ遠心分離管が挙げられる。1つの態様において、一方または両方のタンパク質がマトリックスに結合できるようにするドメインを加える融合タンパク質を提供することができる。たとえば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/PD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチド融合タンパク質、あるいはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン被覆マイクロタイタープレートに吸着させることができ、次いで、試験化合物と合わせ、複合体形成をもたらす条件下(たとえば、塩およびpHについて生理的条件など)で混合物をインキュベートする。インキュベーションに続いて、ビーズまたはマイクロタイタープレートウエルを洗浄して、未結合の成分、ビーズの場合固定化されたマトリックスを除去し、たとえば、上述したように直接的または間接的に複合体を決定する。別法として、複合体をマトリックス〜解離させ、PD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチド結合のレベルまたは活性を標準的技術を用いて決定することができる。
【0104】
別の態様において、PD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチドの活性を調節する試験化合物の能力の決定は、PD−1、PD−1リガンドまたはB7ポリペプチドの下流で機能するポリペプチド、たとえば、PD−1リガンドと相互作用するポリペプチド、または、たとえば、PD−1の細胞質ドメインと相互作用することによって、PD−1の下流で機能するポリペプチドの活性を調節する試験化合物の能力を決定することによって達成することができる。たとえば、前述したように、第2メッセンジャーのレベルを決定することができ、適当な標的上のインタラクターポリペプチドの活性を決定することができ、または適当な標的に対するインタラクターの活性を決定することができる。
【0105】
本発明はさらに、上述のスクリーニングアッセイによって同定された新規な作用剤に関する。したがって、本明細に記載の適当な動物モデルにおいて同定された作用剤の使用も本発明の範囲に包含される。たとえば、本明細書に記載の同定された作用剤を動物モデルにおいて用いて、このような作用剤による処置の効力、毒性または副作用を決定することができる。別の態様として、本明細書に記載の同定された作用剤を動物モデルにおいて用いて、このような作用剤の作用のメカニズムを決定することができる。さらに、本発明は、本明細書に記載の処置のための上述のスクリーニングアッセイによって同定された新規な作用剤の使用に関する。
【0106】
IV.医薬組成物
本発明のPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28調節作用剤(たとえば、ブロッキング抗体、ペプチド、融合タンパク質または小分子といったような、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用をブロックすることなくPD−1とPD−1リガンドの相互作用を阻害または促進する作用剤またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用をブロックする作用剤など)は、患者への投与に適した医薬組成物に組み入れることができる。このような組成物は、典型的には抗体、ペプチド、融合タンパク質または小分子および医薬的に許容しうる担体を含む。本明細書で用いる語句「医薬的に許容しうる担体」は、医薬投与に適合したあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などをすべて包含するものとする。医薬活性剤に関するこのような媒質および薬剤の使用については当該分野では周知である。慣用的媒質または薬剤が活性化合物と不適合性である場合を除いて、組成物中におけるその使用が考えられる。補足的な活性化合物を組成物中に含有させることもできる。
【0107】
本発明医薬組成物は、意図されたその投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口、たとえば静脈内、皮内、皮下、経口(例、吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与がある。非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、次の成分:滅菌希釈剤、たとえば注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒、抗菌剤、たとえばベンジルアルコールまたはメチルパラベン、酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム、キレート剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸、緩衝液、たとえばアセテート、シトレートまたはホスフェートおよび等張性調節剤、たとえば塩化ナトリウムまたはデキストロースを含み得る。酸または塩基、たとえば塩酸または水酸化ナトリウムによりpHを調節することができる。非経口製剤を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器またはマルチプルドーズバイアル(multiple dose vial)に封入することができる。
【0108】
注射可能用途に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射可能溶液または分散液をその場で製造するための滅菌粉末が含まれ得る。静脈内投与の場合、適当な担体には、生理食塩水、静菌水、クレモフォーEL(商標)(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)がある。どの場合も、組成物は無菌状態でなくてはならず、容易に注射できる程度には流動性であるべきである。組成物は、製造および貯蔵条件下で安定していなくてはならず、微生物、たとえば細菌および真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含む溶媒または分散液媒質およびその適当な混合物であり得る。たとえば、レシチンのごときコーティングの使用により、分散液の場合に必要とされる粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持され得る。微生物作用の阻止は、様々な抗菌および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、たとえば糖類、ポリアルコール類、たとえばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むのが好ましい。注射可能組成物の長期間吸収は、吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含ませることにより達成され得る。
必要ならば上記成分の1つまたは組み合わせとともに所望量の適当な溶媒に活性化合物(たとえば、該分子のPD−1、PD−1リガンド、B7ポリペプチド、CTLA4またはCD28フラグメントに対する抗体;または該ポリペプチドの相互作用をブロックする小分子)を含ませて、次いで、濾過滅菌することにより、滅菌注射可能溶液を調製することができる。一般的には、塩基性分散媒質および上記で列挙されたものから必要とされる他の成分を含む滅菌賦形剤中に活性化合物を含ませることにより分散液を製造する。滅菌注射可能溶液製造用滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、予め滅菌濾過しておいたその溶液から有効成分に加えて所望の追加的成分からなる粉末を得ることができる。
【0109】
一般的には、経口組成物は不活性希釈剤または可食性担体を含む。それらをゼラチンカプセル中に封入、あるいは錠剤に圧縮成型することができる。経口治療投与を目的とする場合、活性化合物は賦形剤と混合され、錠剤、トローチまたはカプセル形態で使用され得る。口内洗浄剤として使用される流動担体を用いて経口組成物を製造することもでき、流動担体中の化合物は経口適用され、スイッシュ(swish)され、吐き出されるかまたは嚥下される。医薬的に適合し得る結合剤、および/またはアジュバント剤は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、下記成分のいずれか、または似た性質の化合物:結合剤、たとえば微晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン、賦形剤、たとえば澱粉または乳糖、崩壊剤、たとえばアルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ、滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)、滑沢剤、たとえばコロイド状二酸化珪素、甘味剤、たとえばしょ糖またはサッカリン、または香味料、たとえばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料を含み得る。
【0110】
吸入投与の場合、化合物は、適当な推進剤、たとえば気体、たとえば二酸化炭素を含む加圧容器またはディスペンサーからのエアゾールスプレー、またはネブライザーの形態でデリバリーされる。
【0111】
全身投与を経粘膜または経皮手段で行なってもよい。経粘膜または経皮投与の場合、浸透させるべきバリアーに適した浸透剤を製剤中に使用する。このような浸透剤は一般的に当業界では公知であり、たとえば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を包含する。鼻用スプレーまたは坐薬の使用により経粘膜投与を行なうことができる。経皮投与の場合、当業界で一般的に知られているように、活性化合物を軟膏、膏薬、ゲルまたはクリームとして製剤化する。
化合物を直腸デリバリー用の坐薬(例、慣用的坐薬基剤、たとえばカカオバターおよび他のグリセリド類による)または停留浣腸形態として調合することもできる。
【0112】
1つの態様において、活性化合物は、体内からの急速な排出から化合物を保護する担体とともに調合され、たとえばインプラントおよびマイクロカプセル封入デリバリー系を包含する除放性製剤がある。生物分解性、生物適合性ポリマー、たとえばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤の製造方法は、当業者に明らかであろう。これらの材料を、アルザ・コーポレーションおよびノヴァ・ファーマシューティカルズ、インコーポレイテッドから購入することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染した細胞に標的化されたリポソームを含む)を医薬的に許容され得る担体として使用することもできる。たとえば米国特許第4522811号に記載されたような当業者に公知の方法にしたがってこれらを調合することができる。
投与し易く用量を均一にするために単位用量形態で経口または非経口組成物を製剤するのは特に有利である。本明細書で使用されている単位用量形態とは、処置される対象にとって単位用量として適する物理的に独立した単位を包含しており、各単位は必要とされる医薬用担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された予め定められた量の活性化合物を含むものをいう。本発明の単位用量形態に関する詳細は、活性化合物特有の特徴および達成すべき特定治療効果、および個体の処置を目的としたかかる活性化合物調合の当業界における制限に直接的に左右される。
【0113】
このような化合物の毒性および治療効率を細胞培養物または実験動物における標準製薬方法により測定して、たとえば、LD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%における治療有効量)を決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表され得る。大きな治療指数を呈する化合物が好ましい。毒性副作用を呈する化合物を使用してもよい場合、かかる化合物を罹病組織の部位に標的化させるデリバリーシステムを設計して、未感染細胞に対する潜在的ダメージを最小化し、そのことにより副作用を減らすように注意を払うべきである。
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトで使用するための範囲の用量を製剤化するために用いることができる。好ましくは、かかる化合物の用量は、毒性を全くまたはほとんど伴わないED50値を包含する循環濃度の範囲内である。使用される用量形態および使用される投与経路に応じて用量をこの範囲内で変化させてもよい。本発明方法で使用される化合物の場合、先ず、細胞培養アッセイから治療有効量を評価することができる。用量を動物モデルで製剤化することにより、細胞培養で測定されたIC50(すなわち、徴候の半−最大阻害を達成する試験化合物の濃度)をを包含する循環血漿濃度範囲が得られる。このような情報を使用することにより、ヒトにおける有用な用量をより正確に測定することができる。血漿レベルを、たとえば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0114】
上記調節作用剤は、作用剤をコードする発現可能な核酸の形体で投与してもよい。このような核酸およびそれらを含有する組成物もまた、本発明に包含される。たとえば、本発明の核酸分子をベクターに挿入して、遺伝子療法ベクターとして用いることができる。遺伝子療法ベクターは、たとえば、静脈内注射、局所投与(U.S. Patent 5,328,470を参照)または定位注射(たとえば、Chenら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057を参照)によって被験者にデリバリーすることができる。遺伝子療法ベクターの医薬製剤は、許容しうる希釈液中に遺伝子療法ベクターを含んでいてもよく、あるいは遺伝子デリバリービヒクルが包埋される遅延放出マトリックスを含んでいてもよい。別法として、完全な遺伝子デリバリーベクターを組換え細胞から無傷で製造できる場合(たとえば、レトロウイルスベクター)、医薬製剤は遺伝子デリバリー系を生産する1個またはそれ以上の細胞を含んでいてもよい。
医薬組成物を投与に関する使用説明書と一緒に容器、パックまたはディスペンサー中に入れることができる。
【0115】
V.本発明の用途および方法
本明細書に記載の調節作用剤は、治療方法に用いることができる(たとえば、免疫応答を上方調節または下方調節することにより)。たとえば、PD−1に結合しているPD−1リガンドは、負のシグナルを伝達するが、B7−1などのB7ポリペプチドに結合しているPD−1リガンドはしない。したがって、PD−1とPD−1リガンドの間またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用の調節の結果として、免疫応答の調節が得られる。B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用はまた、PD−1リガンドがPD−1に結合するのを妨げ、したがって、阻害免疫シグナルのデリバリーを阻害する。したがって、1つの態様において、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をブロックする作用剤は、阻害シグナル伝達を妨げることができる。1つの態様において、PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、PD−1リガンドがPD−1を結合しうるようにして、免疫細胞に対する阻害シグナルを提供する。PD−1リガンドは、B7ポリペプチドへ結合することによって、阻害受容体CTLA4に結合するB7も減少させる。1つの態様において、PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCTLA4を結合しうるようにして、免疫細胞に対する阻害シグナルを提供する。別の態様において、PD−1リガンドは、B7ポリペプチドへ結合することによって、共刺激受容体CD28に結合するB7ポリペプチドの結合も減少させる。したがって、1つの態様において、PD−1リガンドポリペプチドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCD28を結合しうるようにして、免疫細胞に対する共刺激シグナルを提供する。
【0116】
1.予防方法
1つの態様において、本発明は、不必要あるいは決して望ましくない免疫応答に関連する疾患または身体状態を被験者において予防する方法に関する。本発明の作用剤または方法を処置することによって利益を得ることができる、疾患に対するリスクをもつ被験者を、たとえば、当業界で周知の診断または予知アッセイのいずれかまたは組み合わせによって同定することができる。予防薬の投与は、不必要あるいは決して望ましくない免疫応答に関連する症状の出現前に行う。治療に用いる適当な作用剤(たとえば、抗体、ペプチド、融合タンパク質または小分子)は、臨床的兆候によって決定することができ、たとえば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイを用いて同定することができる。
【0117】
2.治療方法
本発明の別の態様は、たとえば、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節することによって、免疫応答を調節する治療方法に関する。たとえば、PD−1とPD−1リガンドの間またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用の調節の結果として、免疫応答の調節が得られる。B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用は、PD−1リガンドがPD−1に結合するのも妨げ、したがって、阻害免疫シグナルのデリバリーを阻害する。したがって、1つの態様において、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用をブロックする作用剤は、阻害シグナル伝達を妨げることができる。1つの態様において、PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、PD−1リガンドがPD−1を結合しうるようにして、免疫細胞に対する阻害シグナルを提供する。PD−1リガンドは、B7ポリペプチドへ結合することによって、阻害受容体CTLA4に結合するB7も減少させる。1つの態様において、PD−1リガンドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCTLA4を結合しうるようにして、免疫細胞に対する阻害シグナルを提供する。別の態様において、PD−1リガンドは、B7ポリペプチドへ結合することによって、共刺激受容体CD28に結合するB7ポリペプチドの結合も減少させる。したがって、1つの態様において、PD−1リガンドポリペプチドへのB7ポリペプチドの結合をブロックする作用剤は、B7ポリペプチドがCD28を結合しうるようにして、免疫細胞に対する共刺激シグナルを提供する。
【0118】
PD−1リガンドとPD−1、B7ポリペプチドとCTLA4、B7ポリペプチドとCD28またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節する作用剤の例として、たとえば、PD−1、PD−1リガンド、CTLA4、CD28またはB7ポリペプチドに対する抗体;PD−1、PD−1リガンド、CTLA4、CD28またはB7ポリペプチドに由来するフラグメントまたはペプチド;PD−1、PD−1リガンド、CTLA4、CD28またはB7ポリペプチドの融合タンパク質;およびPD−1とPD−1リガンド、B7ポリペプチドとCD28、B7ポリペプチドとCTLA4またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を調節する小分子などの本明細書に記載したような作用剤が挙げられる。
【0119】
これらの調節作用剤は、インビトロで(たとえば、細胞を作用剤と接触させることによって)、あるいは別法として、インビボで(たとえば、作用剤を被験者に投与することによって)投与することができる。そのようなものとして、本発明は、たとえば、PD−1リガンドとPD−1またはB7ポリペプチドの間の相互作用の調節によるといったような免疫応答の調節が有益である疾患または障害に罹患した個体の治療方法に関する。
【0120】
3.免疫応答のダウンレギュレーション
PD−1リガンドの阻害性機能をアップレギュレーションするか、または共刺激をダウンレギュレーションすることによって免疫応答を調節するための本発明の態様が多く存在する。ダウンレギュレーションは、すでに進行している免疫応答を阻害またはブロックする形態であってもよく、あるいは免疫応答の誘発を妨害することを含むものであってもよい。免疫細胞応答をダウンレギュレーションすることにより、あるいは免疫細胞における特異的アネルギーを誘発することにより、あるいはそれら両方により、活性化された免疫細胞の機能を阻害することができる。活性化免疫細胞の機能は、免疫細胞応答をダウンレギュレーションすること、あるいは免疫細胞における特異的アネルギーを誘発すること、またはその両方によって阻害することができる。
【0121】
たとえば、PD−1リガンドポリペプチド(たとえば、PD−1リガンド−IgなどのPD−1リガンドポリペプチドの可溶性モノマー体)および/またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用をブロックする(たとえば、PD−L1とPD−1の間の相互作用に影響を及ぼさずに、または増強しながら)またはPD−1リガンドとPD−1の結合を促進する(B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用に影響を及ぼさずに、あるいは阻害しながら)抗PD−1リガンド抗体を用いて、免疫応答を下方調節することができる。これらの相互作用をブロックする作用剤の他の例として、抗B7ポリペプチド、B7ポリペプチドまたはブロック性小分子が挙げられる。
【0122】
B7ポリペプチドへのPD−1リガンドの結合に影響を及ぼさずに、あるいは減少させながら、PD−1へのPD−1リガンドの結合またはCTLA4へのB7ポリペプチドの結合を促進する作用剤を用いて、免疫応答をダウンレギュレートすることもできる。作用剤の例として、本明細書に記載の方法によって同定されるPD−1ペプチド模倣体が挙げられる。
本発明の1つの態様において、抗原およびPD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用ををブロックする作用剤(たとえば、抗体、ペプチド、融合タンパク質または小分子)の併用投与によって、特異的抗原に対する寛容が誘発される。たとえば、特異的的タンパク質に寛容を誘発することができる。1つの態様において、アレルゲンまたは免疫応答が望ましくない外来タンパク質に対する免疫応答を阻害することができる。たとえば、第VIII因子を投与される患者は、この血液凝固因子に対する抗体を産生することが多い。PD−1リガンド媒介性共刺激シグナルをブロックする作用剤またはPD−1媒介性阻害シグナルを刺激する作用剤と組換え第VIII因子との併用投与(またはたとえば架橋により、物理的に第VIII因子に結合する)の結果として、ダウンレギュレーションが起こりうる。
【0123】
1つの態様において、第2ペプチドに融合した第1PD−1リガンドペプチドを含む融合タンパク質を用いて、免疫細胞上のPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用をブロックして、免疫応答をダウンレギュレートすることができる。1つの態様において、第2ペプチドは、別のBリンパ球抗原(たとえば、B7−1、B7−2またはB7−3など)の活性をブロックして、さらに免疫応答をダウンレギュレートする。別法として、免疫応答をダウンレギュレートする2つの別々の作用剤を単一の組成物として組み合わせるか、あるいは別々に(同時または逐次)投与して、より効果的に被験者における免疫細胞媒介性免疫応答をダウンレギュレートことができる。たとえば、PD−1リガンドをB7ポリペプチドと、あるいはブロッキング抗体の組み合わせ(たとえば、PD−1リガンドポリペプチドに対する抗体と抗B7−1および/または抗B7−2モノクローナル抗体などd)と組み合わせることができる。さらに、医薬的有効量の1つ以上の対象作用剤を他のダウンレギュレーション試薬と組み合わせて用いて、免疫応答に影響を及ぼすことができる。他の免疫調節試薬の例として、共刺激シグナルをブロックする抗体(たとえば、CD28またはICOSに対する抗体など)、CTLA4のアゴニストとして働く抗体および/または他の免疫細胞マーカーに対する抗体(たとえば、CD40、CD4リガンドまたはサイトカインに対する抗体など)、融合タンパク質(たとえば、CTLA4−Fcなど)および免疫抑制剤(たとえば、ラパマイシン、シクロスポリンAまたはFK506など)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用のダウンレギュレーションまたは妨害、あるいはPD−1リガンドとPD−1の相互作用の促進(たとえば、調節することなく、またはさらに増強することによる)にとって、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用(たとえば、PD−1の負のシグナル伝達の刺激による)が、たとえば、組織、皮膚および臓器移植という状況、移植片対宿主病(GVHD)または紅斑性狼瘡もしくは多発性硬化症などの自己免疫疾患における免疫応答をダウンレギュレートするのに有用である。たとえば、免疫細胞機能を遮断する結果として、組織いしょくにおける組織破壊が減少する。典型的には、組織移植片において、移植片の拒絶は、免疫細胞によるその外来物としての認識を介して開始され、続いて、移植片を破壊する免疫反応が起こる。移植前または移植時におけるPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を阻害またはブロックするポリペプチド(PD−1リガンドまたはPD−1の可溶性モノマー体など)の単独またはもう一つのダウンレギュレーション作用剤と併用での投与は、阻害シグナルの精製を促進することができる。さらに、PD−1リガンド共刺激シグナルの阻害、またはPD−1リガンドもしくはPD−1阻害シグナルの促進は、免疫細胞をアネルギー化して、被験者に寛容を誘発するのも十分可能である。PD−1リガンド媒介性共刺激シグナルのブロックによる長期寛容の誘発により、これらのブロッキング試薬の繰り返し投与の必要性を回避することができる。
【0125】
被験者において十分な免疫抑制または寛容を達成するために、他のポリペプチドの共刺激機能をブロックすることも望ましい。たとえば、移植前または移植時に、B7−1、B7−2またはB7−1およびB7−2それぞれの活性を有する一組の可溶性型のペプチドを投与し、これらの抗原に対する抗体をブロックまたは小分子をブロックすることによって、これらの抗原の機能をブロックするのが望ましい(シグナル組成において別々または一緒に)。別法として、PD−1リガンドまたはPD−1の阻害活性を促進し、B7−1および/またはB7−2の共刺激活性を阻害するのが望ましい。本発明のダウンレギュレーション方法と組み合わせて用いうる他のダウンレギュレーション作用剤として、たとえば、CTLA4を介して阻害シグナルを伝達する作用剤、CTLA4を介して阻害シグナルを活性化する抗体、他の免疫細胞マーカーまたは可溶性型の他の受容体リガンドペアに対する抗体(たとえば、CD40とCD40リガンドの相互作用を妨害する作用剤など(たとえば、抗CD40リガンド抗体))、サイトカインに対する抗体または免疫抑制剤が挙げられる。
【0126】
免疫応答のダウンレギュレーションは、自己免疫疾患の治療にも有用である。多くの自己免疫疾患は、自己組織に対して反応性があり、疾患の病理に関与するサイトカインおよび自己抗体の産生を促進する免疫細胞の不適切な活性化の結果である。自己反応性免疫細胞の活性化を妨げることにより、疾患の症状を軽減または排除することができる。PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を調節することなく、あるいはダウンレギュレーションしながら、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を破壊することまたはPD−1リガンドとPD−1の間の相互作用を促進することによって免疫細胞の共刺激をブロックする試薬の投与は、免疫細胞活性化の阻害および疾患プロセスに関与しうる自己抗体またはサイトカインの産生の妨害に有用である。さらに、PD−1リガンドまたはPD−1の阻害機能を促進する作用剤は、自己反応性免疫細胞の抗原特異的寛容を誘発することができ、疾病からの長期救済を導くことができる。自己免疫疾患を予防または緩和する試薬の効力は、多くのヒト自己免疫疾患の十分に特徴付けられた動物モデルを用いて決定することができる。例として、マウス実験用自己免疫脳炎、MRL/lpr/lprマウスにおける全身紅斑性狼瘡、マウス自己免疫コラーゲン関節炎、NODマウスならびにBBラットにおける糖尿病およびマウス重症筋無力症が挙げられる(たとえば、Paul ed., Fundamental Immunology, Raven Press, New York, Third Edition 1993, chapter 30を参照)。
【0127】
免疫細胞活性化の阻害は、たとえば、IgE産生の阻害によるアレルギーおよびアレルギー反応の治療において治療的に有用である。PD−1リガンドまたはPD−1阻害機能を促進する作用剤は、患者における免疫細胞によるアレルギー反応を阻害するためにアレルギーの患者に投与することができる。免疫細胞のPD−1リガンド共刺激の阻害あるいはPD−リガンドまたはPD−1阻害経路の刺激は、適当なMHCポリペプチドと組み合わせたアレルゲンへの暴露を伴う。アレルギー反応は、アレルギーの侵入経路および肥満細胞または好塩基球上のIgEの沈着パターンによって、自然において、全身性または局所性である。したがって、免疫細胞によるアレルギー反応は、PD−1リガンドと共刺激レセプターとの相互作用を阻害する作用剤、あるいはPD−1リガンドまたはPD−1の阻害機能を促進する作用剤の阻害形態の投与により、局所性または全身性である。
【0128】
PD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を調節することなく、あるいはダウンレギュレートしながらのPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用のブロックまたはPD−1リガンドとPD−1の相互作用の促進による免疫細胞活性化の阻害は、免疫細胞のウイルス感染においても治療的に重要である。たとえば、後天性免疫不全症候群(AIDS)において、ウイルス複製は免疫細胞活性化により刺激される。これらの相互作用の調節の結果、ウイルス複製が阻害され、それによってAIDSの進行が改善される。これらの調節は、妊娠の持続を促進するのにも有用である。PD−1リガンドは、通常、母親と胎児の間の接合部分を形成し、胎児の母性拒絶の防止において役割を果たすと考えられる細胞の層である胎盤栄養膜において高度に発現される。胚または胎児の免疫拒絶のために自然流産の危険のある女性(たとえば、以前に自然流産したことがある女性または妊娠が困難である女性)は、このような相互作用を調節する作用剤で治療することができる。
【0129】
PD−1リガンド/B7ポリペプチド結合の調節によるか、あるいはPD−1リガンド/PD−1結合の調節による免疫応答のダウンレギュレーションは、自家組織の自己免疫攻撃の治療においても有用である。たとえば、PD−1リガンドは、通常、心臓において高度に発現され、心臓を自己免疫攻撃から防御する。これは、Balb/cPD−1ノックアウトマウスが、血栓症の心臓に対して重い自己免疫攻撃を示すという事実により明らかにされる。したがって、自己免疫攻撃により引き起こされるかまたは悪化する状態(たとえば、この例においては、心臓病、心筋梗塞またはアテローム性動脈硬化症)は、これらの相互作用の調節によって緩和または改善される。したがって、自己免疫疾患などの自己免疫攻撃によって悪化する状態(ならびに心臓病、心筋梗塞、およびアテローム性動脈硬化症)を調節することは本発明の範囲内である。
【0130】
4.免疫応答のアップレギュレーション
免疫応答のアップレギュレーションの手段として、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節することなく、あるいはアップレギュレートしながら、またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を促進すること(たとえば、PD−1リガンドとPD−1の間の相互作用に影響を及ぼすことなく、あるいは阻害しながら)により、PD−1リガンドとPD−1および/またはB7ポリペプチドとCTLA4の相互作用をブロックすることもまた治療的に有用である。B7ポリペプチドとCD28の間の相互作用を増強するためにB7ポリペプチドトPD−1リガンドの間の相互作用をブロックすることもまた免疫応答のアップレギュレーションに有用である。免疫応答のアップレギュレーションは、存在する免疫応答の増強または最初の免疫応答の顕在化という形態をとることができる。たとえば、本発明の組成物および方法を用いる免疫応答の増強は、微生物(たとえば、細菌、ウイルスまたは寄生虫)に対する感染の場合に有用である。1つの態様において、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節することなく、あるいはアップレギュレートしながら、またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を促進することによって、PD−1リガンドとPD−1の相互作用をブロックする作用剤は、免疫応答の増強に用いられる。このような作用剤(たとえば、PD−1へのPD−L1の結合をブロックする非活性化抗体)は、抗体のアップレギュレーションおよび細胞媒介性応答が有益である状況において治療的に有用である。好ましい態様において、このような作用剤は、PD−1リガンドとB7ポリペプチドの間の相互作用を阻害することなく、PD−1とPD−1リガンドの間の相互作用を阻害する(たとえば、PD−L1がPD−1に結合するのを妨げる相互作用)。疾患の例として、疱疹または帯状疱疹などのウイルス性皮膚疾患が挙げられ、このような場合、作用剤は皮膚に局所適用することができる。さらに、インフルエンザ、風邪および脳炎などの全身ウイルス性疾患は、このような作用剤の全身投与によって軽減される。
【0131】
別法として、免疫応答は、エキソビボアプローチ、たとえば、免疫細胞を患者から取りだし、免疫細胞をインビトロで、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節することなく、あるいはアップレギュレートしながら、またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を促進することによって、PD−1リガンドとPD−1の相互作用をブロックする作用剤と接触させ、次いでインビとロ刺激免疫細胞を患者へ再度導入することにより、感染した患者において高めることができる。
所定の例において、免疫応答をアップレギュレートする他の作用剤、たとえば、免疫応答をさらに高めるように共刺激レセプターを経てシグナルを伝達する他のB7ファミリーのメンバーの形態をさらに投与することが望ましい。
【0132】
PD−1リガンドとPD−1の相互作用をブロックする作用剤(たとえば、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節することなく、あるいはアップレギュレートしながら、またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を増強することによって)は、種々のポリペプチド(たとえば、病原体由来のポリペプチド)に対するワクチンにおいて予防的に用いることができる。
病原体(たとえば、ウイルス)に対する免疫性を、適当なアジュバント中、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節することなく、あるいはアップレギュレートしながら、またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を促進することによって、PD−1リガンドとPD−1の相互作用をブロックする作用剤と共にウイルスタンパク質でワクチン予防接種することにより誘導することができる。
【0133】
他の態様において、本明細書に記載するように、免疫応答機能のアップレギュレーションまたは増強は、腫瘍免疫原性の誘発に有用である。
他の態様において、免疫応答を、本明細書に記載の方法によって刺激して、先在している寛容に打ち勝つことができる。たとえば、被験者が有意な免疫応答を構築することができない抗原、たとえば、腫瘍特異的抗原などの自己抗原に対する免疫応答は、PD−1リガンドとPD−1の相互作用をブロックする作用剤(たとえば、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節することなく、あるいはアップレギュレートしながら、またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を増強することによって)を投与することにより、誘導することができる。1つの態様において、B7ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を調節することなく、あるいはアップレギュレートしながら、またはPD−1リガンドとB7ポリペプチドの相互作用を促進することによって、PD−1リガンドとPD−1の相互作用をブロックする可溶性PD−1または可溶性PD−1リガンドを用いて、たとえば腫瘍細胞に対する免疫応答を高めることができる。1つの態様において、腫瘍特異的抗原などの自己抗原を、併用投与することができる。他の態様において、免疫応答を抗原(たとえば、自己抗原)に対して刺激して、神経疾患を治療することができる。別の態様において、本発明作用剤をアジュバントとして用いて、活性免疫化のプロセスにおいて外来抗原への反応をブーストすることができる。
ることができる。
【0134】
1つの態様において、免疫細胞を被験者から得、エキソビボで、本明細書に記載の作用剤の存在下で培養して、免疫細胞集団を増殖させるか、または免疫細胞活性化を増強する。さらなる態様において、次いで、免疫細胞を被験者へ投与する。たとえば、免疫細胞へ一次活性化シグナルおよび共刺激シグナルを当該分野で周知のごとく提供することにより、免疫細胞をインビトロで刺激することができる。種々の作用剤を用いて、免疫細胞の増殖を共刺激することもできる。1つの態様において、免疫細胞をPCT出願WO94/29436に記載の方法に従いエキソビボで培養する。共刺激ポリペプチドは可溶性であり、細胞膜結合へ結合、またはビーズなどの固体表面へ結合することができる。
【0135】
VI.作用剤の投与
本発明の免疫調節作用剤は、免疫細胞による免疫応答を増強させるかまたは抑制するかのいずれかのために、インビボの医薬的投与に適した生物学的に適合性の形態において被験者に投与される。「インビボ投与に適した生物学的に適合性の形態」とは、任意の有毒な影響よりもタンパク質の治療効果の方が重きをなす、投与されるタンパク質の形態を意味する。「被験者」なる用語は、免疫応答を惹起できる生きている生物、たとえば、哺乳動物を包含することを意図する。被験者の例は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそのトランスジェニック種を包含する。本明細書に記載の作用剤の投与は、治療有効量の作用剤単独または医薬的に許容しうる担体との組み合わせを包含する薬理学的形態のいずれであってもよい。
【0136】
治療有効量の本発明の治療用組成物の投与は、所望の結果を達成するために必要な用量および時間で有効な量として定義される。たとえば、抗PD−1リガンド調節作用剤の治療有効量は、個体の疾病の状態、年齢、性別、および体重ならびにペプチドが個体において所望の反応を惹起する能力によって変わり得る。投薬計画は、最適の治療反応を提供するように調節できる。たとえば、いくつかに分割された用量を毎日投与することができ、または治療状況の緊急性により、比例して減少させることができる。
【0137】
本明細書に記載した作用剤は、都合のよい様式、たとえば、注射(皮下、静脈内など)、経口投与、吸入、経皮適用または直腸投与により投与することができる。投与経路に応じて、活性化合物は、化合物を酵素、酸および化合物を不活化し得る他の自然条件の作用から化合物を保護するために物質中でコーティングすることができる。たとえば、経口投与以外によって作用剤を投与するためには、ペプチドをその不活化を防止する作用剤でコーティングするか、またはペプチドを該作用剤と共に同時投与するのが望ましい。
【0138】
作用剤は、個体に、適当な担体、希釈剤またはアジュバント中で投与することができ、酵素阻害剤と同時投与することができ、またはリポソームなどの適当な担体中で投与することができる。医薬的に許容しうる希釈剤は、塩溶液および水性緩衝溶液を包含する。アジュバントはその最も広い意味で用いられ、任意の免疫刺激化合物、たとえばインターフェロンを包含する。本発明において意図されるアジュバントは、レゾルシノール、非イオン性界面活性剤、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn−ヘキサデシルポリエチレンエーテルを包含する。酵素阻害剤は、膵トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DEEP)およびトラシロールを包含する。リポソームは、水中油中水エマルジョンならびに慣用のリポソームを包含する(Sternaら(1984)J.Neuroimmunol.7:27)。
【0139】
作用剤は、非経口または腹腔内投与することができる。分散液は、グリセロール、液状ポリエチレングリコールおよびその混合物ならびに油中においても調製できる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を防止するための保存料を含んでもよい。
注射可能な用途に適した医薬組成物は、滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射溶液または分散液の即席調製用滅菌粉末を包含する。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易に注射針を通過する程度まで流動性でなければならない。製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、ポリエチレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適当な混合物を含む溶媒または分散媒体である。適当な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持できる。微生物の活動の防止は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成できる。多くの場合において、等張剤、たとえば、糖、ポリアルコール、たとえば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含めるのが好ましい。組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、たとえばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを含めることにより、注射可能な組成物の長期にわたる吸収がもたらされる。
【0140】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、前記の成分の一つまたは組み合わせと共に必要な量の本発明作用剤(たとえば、抗体、ペプチド、融合タンパク質または小分子)を適当な溶媒中に組み入れることにより調製でき、続いて濾過滅菌する。一般に、活性化合物を、塩基性分散媒体および前記のものから必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み入れることにより、分散液を調製する。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合において、好ましい調製法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより活性成分(たとえば、ペプチド)の粉末とあらかじめ濾過滅菌された溶液から得られる追加の所望の成分が得られる。
【0141】
前記のように、作用剤が適当に保護される場合、タンパク質を、たとえば不活性希釈剤または同化できる可食担体と共に経口投与できる。本明細書において使用する「医薬的に許容しうる担体」とは、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。医薬的活性な作用剤についてのこのような媒体および作用剤の使用は、当業界において周知である。任意の慣用の媒体または作用剤が活性化合物と不適合性である場合を除いて、治療組成物におけるその使用を意図する。補足的活性化合物も組成物中に組み入れることができる。
【0142】
投与の簡便性および投与量の均一性のために、単位投与剤形の非経口組成物に製剤するのが特に有用である。本発明において使用される「単位投与剤形」とは、処置される哺乳動物被験者の単位投与量として適した物理的に独立した単位を意味し;各単位は所望の治療効果を生じるために計算されたあらかじめ決められた量の活性化合物を必要とされる医薬担体と組み合わせて含む。本発明の単位投与剤形の明細は、(a)活性化合物の独自の特性および達成されるべき特定の治療効果、および(b)個体における感受性を治療するためのかかる活性化合物を配合する分野に固有の制限により決定され、直接従属する。
【0143】
本発明の1つの態様において、本発明の作用剤は抗体である。本明細書において定義するとおり、治療有効量(すなわち、有効量)の抗体は、約0.001〜30mg/体重kg、好ましくは約0.01〜25mg/体重kg、さらに好ましくは約0.1〜20m/体重kg、なおいっそう好ましくは約1〜10mg/体重kg、2〜9mg/体重kg、3〜8mg/体重kg、4〜7mg/体重kg、または5〜6mg/体重kgの範囲である。当業者らは、疾患または障害の重篤度、以前の治療、被験者の全般的健康状態および/または年齢、および存在する他の疾患を包含するが、これらに限定されないある因子が、被験者を有効に治療するために必要な用量に影響を及ぼし得ることを理解するであろう。さらに、治療有効量の抗体での被験者の治療は、1回の処置を包含するか、または好ましくは一連の処置を包含しうる。好ましい例において、被験者は、約0.1〜20mg/体重kgの範囲の抗体で、1週間に1回約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、さらに好ましくは約3〜7週間、なおいっそう好ましくは約4、5、または6週間処置される。当然のことながら、処置に使用される抗体の有効量は、特定の治療の過程にわたって増加または減少されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】1G10(抗B7−1)抗体、10F.9G2(抗PD−1)抗体、10F.2H11(抗PD−1)抗体およびPD−1 Igポリペプチドの存在または不在下において、PD−L1を発現している細胞のB7−1 Igへの結合を表すデータの棒グラフである。
【図2】10F.9G2抗体の存在または不在下において、PD−L1を発現している細胞のPD−1 Igへの結合を表すデータの棒グラフである。データは、10F.9G2抗体が、この相互作用を阻害することを示す。
【図3】PD−L1を発現している細胞のB7−1およびB7−2への結合を表すデータの棒グラフである。PD−L1を発現している細胞へのB7―1およびB7−2の結合能力の比較を表す。
【図4】FACS分析によって得られたデータのグラフ表示であり、マウスPD−L1およびPD−L2へのマウスPD−1結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0145】
本発明を以下の限定的と考えるべきでない実施例によりさらに説明する。本出願全体にわたって引用される全ての文献、特許および公開特許出願ならびに図面は、全体を参考文献として本発明に援用される。
【実施例1】
【0146】
結合パートナーとしてのPD−1リガンドおよびB7ポリペプチドの同定
CD28およびCTLA4以外の新規B7−1結合パートナーを同定するために、CD28/CTLA4欠損マウス由来のcDNAライブラリーをスクリーニングした。pAXEF哺乳類発現ベクターにおけるマウスcDNAライブラリーを、CD28欠損、CTLA4欠損129株マウスのCD4+T細胞から調製したRNAから作製した。MACSによって、フローサイトメトリーで確認される純度95%以上までCD4+T細胞を精製した。抗CD3mAb+抗原提示細胞(APC)で、T細胞を活性化した。CD28欠損、CTLA4欠損129株マウスのT−枯渇脾細胞からのAPCを、5μg/mlの抗CD40mAb3/23で一夜刺激し、次いで、マイトマイシンCで処理し(50μg/ml、37℃にて40分間)、洗浄して、T細胞の刺激に用いた。16、24および40時間後、RNAを調製し、cDNAライブラリーの製造のために合わせた。
【0147】
選択の第1ラウンドのために、80プレートのCOS細胞をDEAE−デキストラン操作により、100mmディッシュ当たり0.2gのプラスミドライブラリーDNAでトランスフェクトした。細胞をトリプシン処理し、翌日リプレートし、45時間後にPBS中の0.5mM EDTA、0.02%アジ化ナトリウムで細胞を採集した。Tris50mM、pH9.5中の10mlの10μg/mlヤギ抗マウスIgG2a抗体を入れた100mmのペトリ皿を室温にて1.5時間インキュベートすることによって、パニングプレートを調製した。プレートをPBSで3回洗浄し、PBS+5mg/mlBSA中で一夜ブロックした。次いで、プレートを3mlの10μg/mlマウスB7−1−IgG2a融合タンパク質とともに1時間インキュベートし、PBS、2%FCSで3回洗浄した。80プレートからのトランスフェクトしたCOS細胞を8パニングプレート上でインキュベートした。室温にて2時間後、プレートをPBS中の0.5mM EDTA、0.02%アジ化ナトリウム、2%FCSで3回洗浄し、0.15M NaCl中の0.5mM EDTA、10mM HEPES、pH7.4、1%FCSで2回洗浄した。付着細胞からエピソームDNAを調製し、電気穿孔によって大腸菌DH10B/P3に再導入し、スフェロプラストのポリエチレングリコールによる融合によってCOS細胞にトランスフェクトさせ、パニングを繰り返す。付着細胞からエピソームDNAを調製し、電気穿孔によって大腸菌DH10B/P3に再導入し、スフェロプラストのポリエチレングリコールによる融合によってCOS細胞にトランスフェクトさせ、3回目のパニングを繰り返す。個々のプラスミドDNAを調製し、配列決定した。すべてのプラスミド(配列決定された6個)は、マウスPD−L1をコードするcDNAを含むことが見出された。cDNAクローンは、5’非翻訳領域の長さにおいてわずかに異なり、PD−L1遺伝子が独立して複数回単離されたことを示し、したがって、先に実験室で生成されたクローンの偶発的な単離の可能性が排除された。これらのマウスPD−L1 cDNAクローンを、DEAE−デキストラン操作(4μg/100mmディッシュ)によってCOS細胞にトランスフェクトし、72時間後に間接的免疫蛍光法およびフローサイトメトリーによってマウスB7−1−IgG2a融合タンパク質の細胞表面結合を分析した
【実施例2】
【0148】
PD−1リガンド分子のB7分子への結合
マウスプレB細胞(300.19)を、DNA(pcDNAI)ベクター、またはpAXEFベクターにマウスPD−L1 cDNAを含む発現プラスミドのいずれかで、プロマイシン耐性をコードするプラスミドとともにトランスフェクトした。10μg/mlのプロマイシンを含む培地中で細胞を選択し、PD−1−IgG2a融合タンパク質で染色し、分別し、サブクローニングした。さらなる分析のために、PD−L1を高レベルで発現しているクローンを選択した。
300.19トランスフェクト体(2.5mlの培地中、5X10細胞)を2.5μlのBCECF−AM(分子プローブ、DMSO中5mg/ml、2’,7’−(ビス−2−カルボキシエチル)−5−(および−6)−カルボキシフルオレセイン))で37℃にて5分間標識した。細胞を2回洗浄し、ウエル当たり50000細胞/50μlを用いた。
【0149】
Linbro96ウエルマイクロタイタープレート(組織培養処置をしていない)を、100μlのPBS中10μg/mlヤギ抗マウスIgG2a抗体で、4℃にて一夜コーティングした。プレートを吸引し、PBS中の1%BSAで2時間ブロックした。次いで、10μg/mlのコントロールIg、B7−1Ig、B7−2IgまたはPD−1Ig0.1mlとともにウエルをインキュベートした。50000BCECF−A標識トランスフェクト細胞を、ブロッカーの存在または不在下に加えた。テストしたブロッカーは、10μg/mlのコントロールIg、CTLA4Ig、PD−1Ig、1G10抗体(マウスB7−1に結合し、CTLA4との相互作用をブロックする)、16−10A1抗体(マウスB7−1に結合し、CTLA4との相互作用をブロックする)、10F.9G2抗体(マウスPD−L1に結合し、PD−1との相互作用をブロックする)および10F.2H11抗体(マウスPD−L1に結合し、PD−1との相互作用をブロックする)であった。プレートを700rpmで10秒間遠心分離し、室温で30分間インキュベートした。各ウエルにおける蛍光(細胞数を示す)を蛍光プレートリーダーで測定した。プレートをディッシュに入れた大量の1%BSA/PBSに浸し、プレートをゆるやかに反転させ、次いで、室温にて30分間1gで付着細胞を落とすことによって、プレートを1回洗浄した。次いで、洗浄を繰り返した。次いで、プレートをもとどおりにし、各ウエルにおける蛍光(細胞数を示す)を蛍光プレートリーダーで測定した。プレートに結合した細胞のパーセントを決定した。PD−L1発現細胞は、B7―1Igプレートに結合したが、B7―2Igプレートには結合しなかった。コントロールIgもCTLA4Igも、この結合相互反応に競合しなかった(図1)。対照的に、1G10、10F.9G2および10F.2H11抗体ならびに各PD−1Igは、PD−L1/B7―1Ig相互作用の結合に競合し、細胞結合を減少させた(図2)。コントロール実験において、PD−L1発現細胞は、PD−1Igコーティングしたプレートへの結合を示した(図2)。コントロールIg、PD−1Igおよび10F.2H11抗体はすべて、このアッセイにおいて結合に対して競合できなかった(図2)。10F.9G2抗体のみが、PD−L1/PD−1相互作用に対して競合し、細胞結合を減少させた(図2)。
【実施例3】
【0150】
PD−1リガンド分子のFACS分析
300.19細胞を、DNA(pcDNAI)ベクターまたはICOSリガンド、mPD−L1またはmPD−L2cDNAを含む発現プラスミドのいずれかでトランスフェクトした。
細胞をmIgG2a、mCTLA4−IgG2a、mB7−1−IgG2a、mB7−2−IgG2aまたはmPD−1−IgG2a(0.1ml、10μg/ml)とともに4℃にて30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液(PBS+0.02%アジ化ナトリウムおよび2%FBS)で洗浄し、PE標識ヤギ抗mIgG2a抗体(0.1ml、10μg/ml)(Southern Biotech Associates)とともにインキュベートした。FACS分析を用いて免疫蛍光について細胞を分析し、結果を図4に示した(図4における数は、平均蛍光強度を示す)。ICOSリガンドまたはコントロール細胞への結合はなかった。PD−L1細胞は、mPD−1−IgG2aおよびmB7−1−IgG2aに結合したが、mCTLA4−IgG2aまたはmB7−2−IgG2aには結合しなかった。PD−L2細胞はmPD−1−IgG2aおよびmB7−1−IgG2aに結合した(弱く)が、mCTLA4−IgG2aまたはmB7−2−IgG2aには結合しなかった(図4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害せずに、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤を同定する方法であって、
a)PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤を同定し;次いで、
b)ステップaにおいて同定した作用剤が、PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害するかどうかを決定する;
[ここで、PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害しないステップbの作用剤が同定される]
ことを含む方法。
【請求項2】
PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害せずに、PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤を同定する方法であって、
a)PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害する作用剤を同定し;次いで、
b)ステップaにおいて同定した作用剤が、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害するかどうかを決定する;
[ここで、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害しないステップbの作用剤が同定される]
ことを含む方法。
【請求項3】
B7−1ポリペプチドとPD−1リガンドの間の相互作用を阻害する方法であって、
PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの相互作用を阻害する作用剤と
a)PD−1リガンドをもつ免疫細胞を接触させるか;または、
b)B7−1ポリペプチドをもつ免疫細胞を接触させる;
ことを含む方法。
【請求項4】
作用剤が、抗PD−1リガンド抗体である請求項3記載の方法。
【請求項5】
作用剤が、小分子である請求項3記載の方法。
【請求項6】
PD−1リガンドが、PD−L1である請求項3記載の方法。
【請求項7】
PD−1リガンドが、PD−L2である請求項3記載の方法。
【請求項8】
作用剤が、抗B7−1抗体である請求項3記載の方法。
【請求項9】
PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害せずに、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害する方法であって、
PD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害することなく、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの相互作用を阻害する作用剤と
a)PD−1リガンドをもつ免疫細胞を接触させるか;または、
b)PD−1ポリペプチドをもつ免疫細胞を接触させ;
それによってPD−1リガンドとB7−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害せずに、PD−1リガンドとPD−1ポリペプチドの間の相互作用を阻害することを含む方法。
【請求項10】
作用剤が、抗PD−1リガンド抗体である請求項9記載の方法。
【請求項11】
作用剤が、小分子である請求項9記載の方法。
【請求項12】
PD−1リガンドが、PD−L1である請求項9記載の方法。
【請求項13】
PD−1リガンドが、PD−L2である請求項9記載の方法。
【請求項14】
作用剤が、抗B7−1抗体である請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−78606(P2010−78606A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230411(P2009−230411)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2003−544216(P2003−544216)の分割
【原出願日】平成14年11月12日(2002.11.12)
【出願人】(591183991)ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】DANA−FARBER CANCER INSTITUTE, INCORPORATED
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】