説明

入力システム、指示装置および入力システムの制御プログラム

【課題】タブレットや枠、あるいは感圧シートなどのハード構成や部品を別途用意することなく、表示装置の表示画面上に設定した仮想の絶対座標上の特定位置を指定して、表示画面上の前記特定位置に入力を行う入力システム、指示装置および入力システムの制御プログラムを提供する。
【解決手段】画像表示用の表示装置20と、表示画面上の特定位置を指示する指示装置30と、表示装置20および指示装置30を制御する制御部10と、を備え、指示装置30で表示装置20の画面上を指示することにより、データ入力を行う入力システム1であり、記制御部10は、絶対座標を有する発光パターンを生成して、表示装置20に表示させ、指示装置30は、表示装置20の画面に表示される絶対座標を有する発光パターンの一部の符号ブロックを撮像する撮像部を備え、さらに、撮像部が撮像した絶対座標を有する発光パターンに基づいて絶対位置の座標に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の表示画面上に設定した仮想の絶対座標上の特定位置を指定して、表示画面上の前記特定位置に画像データの描画入力を行ったり、前記特定位置に対して入力データやコマンド等のデータの入力を行う入力システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表示画面に電子ペンと呼ばれる指示装置を接触および移動させることによって、文字の筆跡やイラスト等をその表示装置の表示画面に書き込み可能にする入力システムが種々提案されている。
【0003】
これらのうち、感圧型と呼ばれる入力システムは、電子ペンによりデータ入力可能なタブレット部と、前記ペンの前記タブレット上の平面位置を検出する平面位置検出部と、前記ペンの前記タブレット面と垂直方向の変化を検出する垂直方向変化検出部と、前記ペンの垂直方向の変化により前記タブレット上の選択範囲を変更する選択範囲変更手段とから構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、遮光型と呼ばれる入力システムは、水平方向および垂直方向で所定の間隔を以って配列された発光素子およびこれらに対向する受光素子を用い、各発光素子と受光素子との間に構成される光路が遮光物体により遮断されることにより前記遮光物体の座標位置を検出する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、エリアイメージ感圧センサ型と呼ばれる入力システムは、感光素子を二次元的に配列したエリアイメージ感圧センサと結像レンズを有し、検出面の側方2箇所から検出面上を、ある視野で撮像して画像信号を出力する一対の撮像部と、画像信号を入力とし、ある視野の内の特定の視野に対応する特定画素を感光素子から選択する選択手段と、選択手段により選択された特定画素に対応する特定画像信号を入力として画像処理を行い、指示体が指示する検出面上の指示位置の座標を出力する画像処理手段とから構成される(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平05−019951号公報
【特許文献2】特許第3810981号公報
【特許文献3】特許第3898706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感圧型の入力システムにあっては、表示装置の表示画面上の座標を認識させるために、表示装置とは別のタブレットや、電子ペンの平面位置検出部、垂直位置検出部などを別途用意する必要がある。
また、遮光型の入力システムにあっては、表示装置の枠に沿って多数所の発光素子および受光素子を密に配置する必要がある。さらに、エリアイメージ感圧センサ型の入力システムにあっては、一対の撮像部や再帰反射枠などの部品を別途用意する必要がある。このため、いずれの型の入力システムにあってもハード構成が複雑になるとともに、厚みが大きくなり、高価かつ重量になっている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、タブレットや枠、あるいは感圧シートなどのハード構成や部品を別途用意することなく、表示装置の表示画面上に設定した仮想の絶対座標上の特定位置を指定して、表示画面上の前記特定位置に入力を行う入力システム、指示装置および入力システムの制御プログラムを提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の入力システムは、画像表示用の表示装置と、表示画面上の特定位置を指示する指示装置と、前記表示装置および指示装置を制御する制御部と、を備え、前記指示装置で前記表示装置の画面上を指示することにより、データ入力を行う入力システムであって、
前記制御部は、前記表示装置の表示画面を構成する複数の表示セルが、所定範囲の所定数のセルからなる符号ブロック単位で表示画面上の座標に対応してその発光パターンが異なるように発光させる絶対座標を有する発光パターンを生成して、前記表示装置に表示させ、
前記指示装置は、前記表示装置の画面に表示される前記絶対座標を有する発光パターンの一部の符号ブロックを撮像する撮像部を備え、
さらに、前記制御部は、前記撮像部が撮像した絶対座標を有する発光パターンの一部の符号ブロックの発光パターンに基づいて表示装置の画面における絶対位置の座標に変換することを特徴とする。
【0009】
また、請求項6記載の指示装置は、表示装置の画面上を指示することにより、データ入力を行う指示装置であって、
前記表示装置の画面に表示される絶対座標を有する発光パターンの発光タイミングに同期して当該パターンの一部を撮像する撮像部と、
前記絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示するとともに、撮像された前記パターンの一部から取得した座標位置に対して指示動作を作動させるスイッチ手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項7記載の入力システムの制御プログラムは、指示装置で表示装置の画面上を指示することによりデータ入力を行う入力システムのコンピュータに、
前記指示装置からの絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示する信号を受けて、前記絶対座標を有する発光パターンを通常画像のフレーム間に挿入するタイミングの同期信号を生成する手順と、
前記絶対座標を有する発光パターンを生成する手順と、
通常表示時の画像データを、生成した前記絶対座標を有する発光パターンの画像データに、前記同期信号に同期したタイミングで切り換えて前記表示装置へ出力する手順と、
前記同期信号を前記指示装置に対して送信する手順と、
前記指示装置が、画面上の絶対座標を有する発光パターンの表示に同期したタイミングで、所定の撮像範囲内で前記表示装置の画面の一部を撮像した発光パターンを受けて、該発光パターンに対応する座標位置を取得する手順と、
を実行させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る入力システム、指示装置およびその制御プログラムの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る入力システムの構成の一例を示す外観図である。図2は、本実施の形態に係る入力システムのブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の入力システム1は、コンピュータ(パーソナルコンピュータなど)に制御プログラムをインストールして構成される制御部10と、表示装置20(例えばモニタディスプレイ等)と、指示装置30(例えば電子ペン等)とによって構成される。
【0013】
図2に示すように、上記制御部10は主に、画像入力部11と、発光パターン生成部12と、同期信号生成部13と、画像切換部14と、画像出力部15と、通信部16と、座標取得部17と、を有している。
【0014】
画像入力部11は、動画や静止画の画像ファイルやアプリケーションプログラムの作業画面などの通常画像を、通常表示の画像データとして入力する。
また、画像入力部11は、所定のアプリケーションソフトを実行する機能も備えている。前記所定のアプリケーションソフトは、ペン描画(手書き入力)を可能とするホワイトボード機能、あるいは、所定の入力欄を表示し、マウス操作等によって所望の入力欄を選択する機能を有している。
また、画像入力部11は、後述の座標取得部17で得られた座標に基づいて、その時点で前記所定のアプリケーションソフトが要求している入力を実行する。例えば手書き入力モードであれば、順次得られた座標に対応する画面上の位置を連ねたようにペン描画され、データやコマンドの入力待ちであれば、検出された座標に対応する画面上の入力欄やデータを選択したり、コマンドを選択して実行する。
発光パターン生成部12は、絶対座標を有する発光パターンの画像データを生成する。この絶対座標を有する発光パターンとは、表示装置20の表示画面を構成する複数の表示セル21が所定範囲の所定数のセルからなるブロック単位で表示画面上の座標に対応してその発光パターンが異なるように発光させるパターンである。以下、このブロック単位を符号ブロックと言う。
また、表示装置20の画面に表示される絶対座標を有する発光パターンは、符号ブロック同士が所定範囲の重なりを許してなお符号ブロック単位で表示画面上の座標に対応してその発光パターンが異なる。これにより、検出すべき絶対位置の座標の分解能を符号ブロックのサイズより小さくできる。
【0015】
同期信号生成部13は、前記絶対座標を有する発光パターンを通常画像のフレーム間に挿入するタイミングの同期信号を生成する。
画像切換部14は、通常表示時の画像データを前記絶対座標を有する発光パターンの画像データに上記同期信号に同期したタイミングで切り換えて、画像出力部15へ送信する。
【0016】
画像出力部15は、画像切換部17から送信された通常表示の画像データあるいは前記絶対座標を有する発光パターンの画像データを表示装置20へ出力する。
通信部16は、指示装置30との間でデータの送受信を行う。
座標取得部17は、撮像した絶対座標を有する発光パターンを表示装置20の画面における絶対位置の座標に変換する。また、座標取得部17は、発光パターン生成部12が保持する、発光パターンにおける符号ブロック毎の絶対座標を記述したテーブルを参照して、認識された符号ブロックの座標を取得する。あるいは、発光パターンを生成したアルゴリズムや関数に基づいた演算により、認識された符号ブロックの座標を取得する。
【0017】
表示装置20は、制御部10の画像出力部15から送信された通常表示の画像データに基づいて、画像入力部11から入力された動画、静止画、アプリケーションプログラムの作業画面などの通常画面を画面に表示する。また、絶対座標を有する発光パターンを、通常画面のフレーム中に所定のタイミングで表示する。例えば、通常の表示画像を1秒間に60フレーム表示する表示装置において、この通常の表示画像とは別に、任意のフレーム間に上記絶対座標を有する発光パターンを、作業者に違和感を覚えさせない程度に、所定のタイミング(例えば0.1秒に1回のタイミング、つまり6フレーム毎に1回)で挿入して表示させる。あるいは、通常の表示画像の内、任意のフレームを上記絶対座標を有する発光パターンに、作業者に違和感を覚えさせない程度に、所定のタイミング(例えば0.1秒に1回のタイミング、つまり6フレーム毎に1フレーム)で置換して表示させる。なお、上記発光パターンを所定のタイミングで挿入・置換することは、画像切換部14による画像データの切換機能で実現される。
【0018】
指示装置30は、画面上の発光パターンを撮像する撮像部31(例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ等)と表示装置の画面における指示動作を作動させるスイッチ手段である感圧センサ32及びペンボタン33とを備える。
【0019】
そして、指示装置30は、制御部10から送信された同期信号に基づいて、撮像部31が表示装置20に表示された絶対座標を有する発光パターンを、この発光パターンの表示タイミングに同期したタイミングで撮像する。
【0020】
また、感圧センサ32又はペンボタン33は、表示装置の画面における指示動作を作動させると共に、絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示する。
【0021】
次に、本実施の形態の入力システム及び指示装置の動作について一例を挙げて説明する。
図3は、本実施の形態の入力システム及び指示装置の動作を説明するフローチャートである。図4は、表示装置の画面に指示装置の先端を接触させたとき、通常の表示画像が表示されている状態を示す説明図である。図5は、表示装置の画面に指示装置の先端を接触させたとき、絶対座標を有する発光パターンが表示され、撮像部による撮像が行われている状態を示す説明図である。
【0022】
まず、図4に示すように、通常表示が行われている表示装置20の画面に指示装置30の先端(感圧センサ32)を接触させる、あるいは、ペンボタン33を押下する。
すると、感圧センサ32による圧力の検知、あるいは、ペンボタン33の押下を検知したら(ステップS1:YES)、指示装置30は、絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示する信号を制御部10へ送信する(ステップS2)。
【0023】
制御部10は、その通信部16で上記信号を受信し、同期信号生成部13へ絶対座標を有する発光パターンを通常画像のフレーム間に挿入または置換するタイミングの同期信号を生成するするように指示する。同期信号生成部13は、上記タイミングの同期信号を生成し(ステップS3)、該同期信号を画像切換部14へ送信する。
【0024】
画像切換部14は、画像入力部11から入力された通常表示時の画像データを、発光パターン生成部12が生成した絶対座標を有する発光パターンの画像データに、同期信号に同期したタイミングで切り換えて画像出力部15へ送信する(ステップS4)。
【0025】
画像出力部15は、画像切換部14から送信された画像データを表示装置20へ出力する。
一方、同期信号生成部13は、上記同期信号を通信部16に対しても送信する。通信部16は、この同期信号を指示装置30に対して送信する(ステップS5)。
【0026】
指示装置30は、図5に示すように、受信した上記同期信号により、指示装置30の撮像部31が画面上の絶対座標を有する発光パターンの表示に同期したタイミングで、所定の撮像範囲内で表示装置20の画面の一部を撮像する(ステップS6)。即ち、通常の表示画像が表示されている間(図4)は、撮像部31は動作せず、絶対座標を有する発光パターンが表示されたタイミング(図5)で撮像を行うように動作する。なお、図5では撮像部31は指示装置30のペン先からずれた位置を撮像している(図5中の一点鎖線部分)が、撮像した符号ブロックの基準点の座標からペン先の座標が求められればよい。
【0027】
撮像した発光パターンは、指示装置30から通信部16を介して、座標取得部17に送られる(ステップS7)。座標取得部17は、撮像した発光パターンを解析して、該発光パターンに対応する座標位置を取得する(ステップS8)。これにより、表示装置20の画面のどの位置に指示装置30があるかがわかる。なお、撮像部31は動作させたままで、絶対座標を有する発光パターンが表示されたタイミング(図5)でそのとき撮像した発光パターンを送信するようにしてもよい。
さらに、座標の取得を繰り返すか否かを判断して、座標の取得を繰り返す場合(ステップS9:YES)は、ステップS3に戻る。即ち、実行中のアプリケーションが手書き入力のような場合は、その操作が終るまで繰り返す。一方、入力位置やデータの選択、コマンドの選択・実行などの場合は、座標は1回取得できればよい。(ステップS9:NO)
【0028】
そして、指示装置30は前記取得した座標位置に対する指示動作を作動させる。手書き入力モードであれば、表示装置20の表示画面上を指示装置30を作動させながら移動させることで、その移動した位置の画面上に軌跡として文字や図形を描画することができる。また、入力箇所や項目の選択入力待ちであれば、表示装置20の表示画面上の所望の位置において指示装置30を作動させることで、マウスによるクリック操作と同様の指示操作を行ったりすることができる。
【0029】
次に、絶対座標を有する発光パターンが表示された表示画面について図6を参照して説明する。図6は、表示装置に絶対座標を有する発光パターンが表示された表示画面の一部を示す説明図である。
表示装置20の表示画面は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の表示セル21を所定の順序で平面配置したものからなる。これらの3色(色相)の飽和度(色の濃さ)および輝度(明るさ)を調整することでカラー画像を表示する。通常表示時には、表示装置20の表示画面上に1秒間に例えば60フレーム表示され、視覚上ちらつきがない画像として看取される。
【0030】
本実施の形態では、表示装置20に絶対座標を有する発光パターンを上記通常の表示画像とは別に、フレーム間に所定のタイミングで表示させる。例えば、図6に示すように、各表示セル21を表示画面上の絶対座標に対応したパターンで発光させる。
この絶対座標に対応した発光パターンは、例えば、赤(R)の表示セル21の中心を縦方向に通る破線と、縦方向の4個ごとの表示セル21の中心を水平方向に通る破線とが交差する仮想の格子の交点Kを中心として、9個の表示セルのブロックを1単位の情報ブロックとして作成する。
【0031】
図6の例においては、隣接する4つの情報ブロックA、B、C、Dのうち、情報ブロックAでは交点の左の表示セル21aのみが発光し、情報ブロックBでは上の表示セル21bのみが発光し、情報ブロックCでは右の表示セル21cのみが発光し、情報ブロックDでは下の表示セル21dのみが発光するというように、異なった4通りの発光パターンが表示できる。つまり、1つの格子に対応する情報ブロックに、4種類の情報を持たせることができる。これらの4通りの発光パターンを有する情報ブロックを表示画面の全体に亘って適切に分布させることで、表示画面全体における絶対座標上のいずれの位置をも特定することが可能になる。
【0032】
なお、撮像部31はモノクロ撮像用の光学手段でもよく、前記格子に対してどちらの表示セル21が光っているかのみを検出できればよい。カラー撮像装置を使用する場合には、得られる色情報を用いて位置の判定に利用するようにしてもよい。
【0033】
ここで、前記各情報ブロックA、B,C、Dは、図7に示すように、RGB各セルが3行で1画素分であり、これが縦に3画素分で1格子分、つまり1情報ブロックとされる。1格子の寸法は、各セルの縦方向の長さが、例えば0.7ミリ、横方向の長さが0.3ミリとすると、縦方向の長さが0.7ミリ×3画素=2.1ミリ、横方向の長さが0.3ミリ×3画素=0.9ミリとなる。
【0034】
なお、図面上では、図6において、絶対座標上に発光パターンを表示する期間では、格子の交点Kおよび交点Kを中心として斜め4方向のセル21が発光することがない。本実施の形態では、所定の撮像範囲において撮像された画像に基づいて、画像認識により、このような発光しないセルを識別することで、格子位置を特定することができる。これにより、各情報ブロックが識別でき、各情報ブロックが有する情報を取得することができる。
【0035】
ここで、縦方向に768個の画素、横方向に1024個の画素がある表示装置の表示画面を想定し、格子単位(縦方向に3画素、横方向に1画素)の位置の検出分解能を得るものとして、いくつの格子を使えばよいかについて検討する。格子数は768/3×1024=262144=2^18(^はベキ乗)で、1格子で4=2^2の意味を持つから、(2^18)/(2^2)=2^16となる。よって、16個の格子が必要になる。この一組の格子に対応する一組の情報ブロックを符号ブロックと呼ぶことにする。ただし、符号ブロックを表示画面の全体に亘って縦横に1格子ずつずらせて読み取ったときに、各符号ブロックのパターンを全て異ならせることが前提である。
【0036】
この16個の格子の配置については、横一列に16個でもよいし、縦方向に2個、横方向に8個としてもよい。今、縦方向に4個、横方向に4個とした場合の符号ブロックを図6中に鎖線枠Lで示す。この場合には、縦768/3−(4−1)×3=247、横1024−(4−1)=1021、247×1021=2521187個の格子の位置が識別可能になる。図面上の位置検出分解能は、1格子であるから上記の通り縦2.1ミリ、横0.9ミリである。必要となる撮像範囲は,鎖線枠L内の範囲であるから、縦方向の4格子分=2.1ミリ×4=8.4ミリ、横方向の4格子分=0.9×4=3.6ミリとなる。
【0037】
次に、各符号ブロックの発光パターンについて説明する。
表示画面上の位置はそれぞれ特異なパターンによって検出できればよい。このため、表示画面を構成する複数の表示セルのうち所定個数の表示セルで1つのパターンを表示することにし、各パターンの各表示セルの発光有無の組み合わせによって、各パターンの位置を示すバーコードやQRコードなどを表示することが考えられる。
【0038】
しかし、これらのコードは一定の範囲を占有することと、コードの一つ一つを識別するために、コード同士が重ならないように配置しなければならない。すると、表示画面上での位置検出の分解能は、これらのコードのサイズ以下にすることができない。
【0039】
本実施の形態では、表示画面上のどこを符号ブロックとして取っても、つまり、符号ブロック同士が所定範囲の重なりを許して特異となるように、発光パターンを適切に設定することによって、分解能を上げるようにしている。
【0040】
続いて、その発光パターンの設定原理を説明する。
図8は、発光パターンの設定原理を説明する図である。図8において、小さな正方形が表示画面の各セルであり、セルの発光色は問わない。また、図8において、小さい一点鎖線の枠は情報ブロック、大きい一点鎖線の枠は符号ブロックを示す。
図9は、図8の発光パターンにおける情報ブロックのデジタル情報を示す説明図である。図10〜図12は、図8のバターンにおける符号ブロックを示す説明図である。図9〜12において、1マスはセルであり、1セルが1情報ブロックである。図10〜12において、太い枠は符号ブロックを示す。
図13は、図8のバターンにおける各符号ブロックのデジタル情報を10進法の数値で表した説明図である。
【0041】
図8においては、表示画面上に設定された座標、つまり仮想の格子の交点を基準にして、「発光点がその格子の交点に対してどちら方向にずれているか」を、所定の座標情報とする。例えば、図8に示すような5×5=25の交点Kを考える。縦横の破線が仮想の格子Jである。また、左右斜線を施した部分Sが発光しているセルであり、白抜きの部分が発光していないセルである。発光部は交点Kの左側か右側のいずれかである。つまり、交点Kのセルを含め、左右1個ずつ計3個のセルで1つの情報ブロックをなす。
【0042】
なお、画像認識する場合、常に光らない部分T(斜線部)は、先ずこの光らない部分Tのパターンをパターンマッチング等の画像処理によって検出し、続いて各交点について、交点Kの右側のセルが発光しているか、左側のセルが発光しているかを検出する。
【0043】
なお、縦方向に空きの行を設けているが、これを設けなくても発光パターンの相関関係により識別することができる。また、各セル21の境界には物理的にある幅を持った隔壁があるので、その形状を認識して各格子Kを識別することもできる。
【0044】
左側が光っている交点Kの情報を2進法で「1」、右側が光っている交点Kの情報を2進法で「0」とすると、図8の情報は図9に示すように表される。そして、一点鎖線で囲んだ縦2行×横2行=4つの交点を1符号ブロックとして、その中で左上→右上→左下→右下の順に読んでコード(符号)を定義する。図10の例では、「1000」となる。これを2進法の数と考えて、10進法で表わすと「8」となる。また、図11に示すように、右に1セル分ずれた範囲を符号ブロックとして読めば「0001」=1であり、図12に示すような範囲を符号ブロックとして読めば「1100」=12となる。このようにして(5−1)の2乗=16通りの符号ブロックについて、それぞれ異なる情報を持つことになる。
【0045】
4つの交点Kのうち、左上を基準点としてみたとき、この16個の符号ブロックが示す情報(数値)は図13に示すようになる。ここでは10進法で表された数値は16通りの異なる数値である。つまり、この数値を判定すれば、どの2×2=4個の交点であるかが識別できる。
【0046】
上記の例では、各交点に対応する情報ブロックについてそれぞれ2種類の情報を持たせ、4つの情報を一組として符号ブロックとした。従って、一つの符号ブロックが表現できる情報の種類は4の2乗の16となる。これを縦4×横4=16個の符号ブロックの位置の識別に利用した。ただし、交点の数は縦横とも1個ずつ余分に必要であるため、(4+1)の2乗の25個必要になる。
【0047】
前記図6で示した実施例においては、一つの交点Kに対応する情報ブロックに対して上下左右の4通りの情報を持たせたことになる。そして、縦方向は仮想的な格子Jの間隔が3画素(3セル)分であり、横方向は1画素(RGBの3セル)分である。例えば、1画素のサイズを縦横とも1ミリとすると、符号ブロックの位置認識の分解能は縦3ミリ、横1ミリとなる。
【0048】
図14は、絶対座標を有する発光パターンを4K2Kの表示装置に適用した場合の説明図である。図14において、最上段はセルの発光色を示し、それ以下の各段のセルはその発光状態を示している。この場合の仮想の格子の交点は、各セルの中央となる。また、図14において、小さい一点鎖線の枠は情報ブロックであり、大きい一点鎖線の枠は符号ブロックである。
一方、次世代の表示装置として開発中の4K2Kの高解像度表示装置では、画素が縦2160×横4096≒800万≒2^23乗個である。因みに、1画素(RGBの3セル)の寸法を縦1ミリ、横1ミリとすれば、画面のサイズは縦約2メートル×横約4メートルとなる。図14に示すように、1情報ブロックを横方向に3セル即ち1画素分使用することにする。また、縦方向には光らない行は設けないことにすると、仮想の格子の間隔は、縦方向が1画素分、横方向が1画素分となる。
【0049】
そして、縦方向に5画素(5セル)×横方向に5画素=25画素を1符号ブロックとする。すると、1符号ブロックの情報量は2の25乗個になる。よって、前記の4K2Kの表示装置を使用した場合の、約800万=約2の23乗個の位置情報に十分な情報量となる。この場合の符号ブロックの位置の分解能は、縦1セル分=1ミリ、横1セル分=1ミリとなり、電子ホワイトボードとして文字等を手書き入力するのに十分な分解能が得られる。
【0050】
また、指示装置30の撮像部31の撮像範囲は、前記1符号ブロックが十分に撮像できる範囲とすればよい。前記の例では、最低縦5ミリ、横5ミリでよく、指示装置30が傾いて使用されたり、軸に対して回転したりすることを考慮して、例えば直径10ミリの範囲を撮像できるように設定する。
【0051】
画素のサイズは表示装置の表示画面のサイズにもよるから、撮像範囲は画素のサイズに応じて設定すればよい。なお、図14においては、縦の格子が色(R)の列にあるため、このセルRの発光はないことになる。前記説明では、符号ブロックの左上の格子を基準としたが、実際に描画する位置は、符号ブロックの基準の格子の位置ではなく、指示装置30のペン先となるように補正する。
【0052】
以上の説明では、発光パターンを二次元のパターンとしたものについて述べたが、一次元のパターンとしてもよい。図15に、横1列分のセルを示す。図15において、中段がセルであり、その発光状態を示す。上段はセルの発光色を示す。下段は各情報ブロックが示す情報である。図15においては、仮想の格子の交点は、各セルの中央となる。また、図15において、小さい一点鎖線の枠は情報ブロックであり、大きい一点鎖線の枠は符号ブロックである。
ここでは、RGBの区別なく、各セルを発光=1(図中斜線部)、不発光=0の情報として用いる。従って、1セルが1情報ブロックである。例えば、4個のセル(4個の情報ブロック)を1符号ブロックとすると、2^4=16通りの情報が表現できる。同図は、1セルずつずらせて読み出した16通りの情報ブロックに、それぞれ異なる16通りの情報を表現した例である。必要なセル21の数は、16+(4−1)=19個である。つまり、横方向に1セルの幅の分解能で、位置が検出できる。縦方向には1セル(=1画素)である。
【0053】
次に、この手法を前記4K2Kの表示装置に用いる場合に必要な符号ブロックのサイズ、分解能と撮像範囲について述べる。
4K2Kの表示装置では、画素が縦2160個×4096個≒800万個≒2の23乗個である。セル数は縦2160個×4096個×3≒2400万個>約2の24乗個で、2の25乗個より小さいから、符号ブロックの情報量としては2の25乗通り可能なようにする。従って、単純に横に連続する25個のセルを1符号ブロックとすればよい。分解能は、縦が1画素分(=1セル)=1ミリ、横が1/3画素分(セル1色分)=0.33ミリとなる。また、必要な撮像範囲は縦が1ミリ、横が1/3ミリ×25=8.3ミリとなる。
【0054】
なお、指示装置30はペンのように手で持つので、指示装置30が中心軸に対して回転したり、表示画面に対する垂直方向から傾いたりする。このような場合は、撮像されたパターンが回転したり、歪みを起こしたりする。このような場合には、回転角や歪みの状態により、特定すべき符号ブロックの基準点の座標を補正すると共に、指示装置30のペン先の座標を正しく補正する。
【0055】
以上、詳述したように、本実施の形態に係る入力システムは、画像表示用の表示装置20と、表示画面上の特定位置を指示する指示装置30と、表示装置20および指示装置30を制御する制御部10と、を備え、指示装置30で表示装置20の画面上を指示することにより、データ入力を行う入力システム1であり、制御部10は、表示装置20の表示画面を構成する複数の表示セル21が、所定範囲の所定数のセルからなる符号ブロック単位で表示画面上の座標に対応してその発光パターンが異なるように発光させる絶対座標を有する発光パターンを生成して、表示装置20に表示させ、指示装置30は、表示装置20の画面に表示される絶対座標を有する発光パターンの一部の符号ブロックを撮像する撮像部31を備え、さらに、制御部10は、撮像部31が撮像した絶対座標を有する発光パターンの一部の符号ブロックの発光パターンに基づいて表示装置20の画面における絶対位置の座標に変換する。
これにより、タブレットや枠、あるいは感圧シートなどのハード構成や部品を別途用意することなく、ハード構成としては比較的簡素に入力システム1を構成でき、表示装置20の表示画面上に設定した仮想の絶対座標上の特定位置を指定して、表示画面上の特定位置に入力を行うことができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る指示装置は、表示装置20の画面上を指示することにより、データ入力を行う指示装置30であり、表示装置20の画面に表示される絶対座標を有する発光パターンの発光タイミングに同期して当該パターンの一部を撮像する撮像部31と、絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示するとともに、撮像された前記パターンの一部から取得した座標位置に対して指示動作を作動させるスイッチ手段(感圧センサ32、ペンボタン33)と、を備える。
これにより、タブレットや枠、あるいは感圧シートなどのハード構成や部品を別途用意することなく、表示装置20の表示画面上に設定した仮想の絶対座標上の特定位置を指定して、表示画面上の前記特定位置に入力を行う指示装置30を得ることができる。
【0057】
また、本実施の形態に係る入力システムの制御プログラムは、指示装置30で表示装置20の画面上を指示することによりデータ入力を行う入力システム1のコンピュータ(制御部10)に、指示装置30からの絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示する信号を受けて、絶対座標を有する発光パターンを通常画像のフレーム間に挿入するタイミングの同期信号を生成する手順と、絶対座標を有する発光パターンを生成する手順と、通常表示時の画像データを、生成した絶対座標を有する発光パターンの画像データに、同期信号に同期したタイミングで切り換えて前記表示装置へ出力する手順と、同期信号を指示装置に対して送信する手順と、指示装置が、画面上の絶対座標を有する発光パターンの表示に同期したタイミングで、所定の撮像範囲内で前記表示装置の画面の一部を撮像した発光パターンを受けて、該発光パターンに対応する座標位置を取得する手順と、を実行させるプログラムである。
これにより、指示装置30を用意し、本実施の形態に係る入力システム1の上記制御プログラムを制御部10であるコンピュータ等にインストールすることにより入力システムを実現可能である。
従って、タブレットや枠、あるいは感圧シートなどのハード構成や部品を別途用意することなく、本入力システム1をハード構成としては比較的簡素に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態に係る入力システムの構成の一例を示す外観図である。
【図2】本実施の形態に係る入力システムのブロック図である。
【図3】本実施の形態の入力システム及び指示装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】表示装置の画面に指示装置の先端を接触させたとき、通常の表示画像が表示されている状態を示す説明図である。
【図5】表示装置の画面に指示装置の先端を接触させたとき、絶対座標を有する発光パターンが表示され、撮像部による撮像が行われている状態を示す説明図である。
【図6】表示装置に絶対座標を有する発光パターンが表示された表示画面の一部を示す説明図である。
【図7】図6の発光パターンにおける画素およびブロックのサイズを示す説明図である。
【図8】本実施の形態の入力システムの絶対座標を有する発光パターンにおいて仮想格子の交点と発光点との関係を示す説明図である。
【図9】図8の発光パターンにおける情報ブロックのデジタル情報を示す説明図である。
【図10】図8のバターンにおける符号ブロックを示す説明図である。
【図11】図8のバターンにおける符号ブロックを示す説明図である。
【図12】図8のバターンにおける符号ブロックを示す説明図である。
【図13】図8のバターンにおける符号ブロックのデジタル情報を10進法の数値で表した説明図である。
【図14】絶対座標を有する発光パターンを4K2Kの表示装置に適用した場合の説明図である。
【図15】発光パターンを一次元配置した例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 入力システム
10 制御部
11 画像入力部
12 発光パターン生成部
13 同期信号生成部
14 画像切換部
15 画像出力部
16 通信部
17 座標取得部
20 表示装置
21 表示セル
30 指示装置
31 撮像部
32 感圧センサ
33 ペンボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示用の表示装置と、表示画面上の特定位置を指示する指示装置と、前記表示装置および指示装置を制御する制御部と、を備え、前記指示装置で前記表示装置の画面上を指示することにより、データ入力を行う入力システムであって、
前記制御部は、前記表示装置の表示画面を構成する複数の表示セルが、所定範囲の所定数のセルからなる符号ブロック単位で表示画面上の座標に対応してその発光パターンが異なるように発光させる絶対座標を有する発光パターンを生成して、前記表示装置に表示させ、
前記指示装置は、前記表示装置の画面に表示される前記絶対座標を有する発光パターンの一部の符号ブロックを撮像する撮像部を備え、
さらに、前記制御部は、前記撮像部が撮像した絶対座標を有する発光パターンの一部の符号ブロックの発光パターンに基づいて表示装置の画面における絶対位置の座標に変換することを特徴とする入力システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記絶対座標を有する発光パターンを通常画像のフレーム間に挿入するタイミングの同期信号を生成して、該同期信号に同期させて前記絶対座標を有する発光パターンを前記表示装置の画面に表示させ、
前記指示装置の撮像部は、前記表示装置の画面に表示される絶対座標を有する発光パターンの発光タイミングに同期して当該パターンの一部を撮像することを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項3】
前記指示装置は、前記絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示するとともに、撮像された前記パターンの一部から取得した座標位置に対して指示動作を作動させるスイッチ手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の入力システム。
【請求項4】
前記表示装置の画面に表示される前記絶対座標を有する発光パターンは、前記表示装置の画面上に設定された仮想の格子の交点を基準点とする複数個の表示セルを1情報ブロックとして、複数の情報ブロックを配置して前記符号ブロックとしたものであり、該符号ブロック単位における表示セルの発光パターンが異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の入力システム。
【請求項5】
前記表示装置の画面に表示される前記絶対座標を有する発光パターンは、符号ブロック同士が所定範囲の重なりを許してなお符号ブロック単位で表示画面上の座標に対応してその発光パターンが異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の入力システム。
【請求項6】
表示装置の画面上を指示することにより、データ入力を行う指示装置であって、
前記表示装置の画面に表示される絶対座標を有する発光パターンの発光タイミングに同期して当該パターンの一部を撮像する撮像部と、
前記絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示するとともに、撮像された前記パターンの一部から取得した座標位置に対して指示動作を作動させるスイッチ手段と、
を備えることを特徴とする指示装置。
【請求項7】
指示装置で表示装置の画面上を指示することによりデータ入力を行う入力システムのコンピュータに、
前記指示装置からの絶対座標を有する発光パターンの表示開始を指示する信号を受けて、前記絶対座標を有する発光パターンを通常画像のフレーム間に挿入するタイミングの同期信号を生成する手順と、
前記絶対座標を有する発光パターンを生成する手順と、
通常表示時の画像データを、生成した前記絶対座標を有する発光パターンの画像データに、前記同期信号に同期したタイミングで切り換えて前記表示装置へ出力する手順と、
前記同期信号を前記指示装置に対して送信する手順と、
前記指示装置が、画面上の絶対座標を有する発光パターンの表示に同期したタイミングで、所定の撮像範囲内で前記表示装置の画面の一部を撮像した発光パターンを受けて、該発光パターンに対応する座標位置を取得する手順と、
を実行させることを特徴とする入力システムの制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−245366(P2009−245366A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93759(P2008−93759)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(505440789)パイオニアソリューションズ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】