説明

入力システム

【課題】表示部の並び替えや順番の入れ替えに対応であってマルチ画像を表示可能な入力システムを提供する。
【解決手段】複数の表示装置4,5と、表示装置4,5の各々の表示面4a,5a上の座標位置を表す位置情報パターン10を含む位置情報パターン層6,7と、位置情報パターン層6,7の位置情報パターン10を光学的に読み取ることで表示装置4,5の種類を識別する識別可能情報及び座標位置を取得し、表示装置4,5の表示面4a,5aに手書きによる筆跡に関する情報を入力する位置情報入力部3と、を備え、位置情報パターン層6,7は、位置情報パターン10の配列パターンが表示装置4,5のそれぞれで異なる入力システム1に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォーンやタブレットのようなタッチパネル入力付きの電子機器が増えている。この入力方式は指やペンで表示に触れることで、表示と動作に応じ様々な入力処理ができ、マンマシンインターフェイスとして電子機器の重要な機能となっている。特に電子ペーパーのような薄型の機器に向いており、パーソナルからオフィスの省力化用途まで幅広い応用、効果が期待されている。
【0003】
ペンで手書き表示等を行うペン入力付き電子機器には、抵抗検出方式、圧力検出方式、静電容量検出方式、超音波による位置測定方式、光の遮る位置を検出する光学方式、電磁アンテナによる電磁方式等がある。また、下記特許文献1、2には、位置情報パターンと撮像素子を用いた光学式の入力装置が提案されている。
【0004】
ところで、表示サイズが小さい携帯機器では、地図のように大きく全体を見たい場合でも、部分的なウインドウ表示になってしまい、必要な場所を探すまでに何回もページ送りやズームアップを繰り返さなければならない。そこで、複数台の機器を並べてマルチ表示すれば、面倒な入力操作せずに細部から全体まで表示でき便利である。このような背景の下、入力機能付きの電子機器を複数台同時に使用することで表示機能及び入出力機能を更に拡張させることが望まれている。下記特許文献3には、所定の順序で入力を行なうことで画像表示装置とマルチ画面表示エリアの対応付けを行なうマルチ画面設定方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−196875号公報
【特許文献2】特公平5−80010号公報
【特許文献3】特開2003−271118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3に開示の技術では、マルチ画面を表示する際、予め選択した順番に従って対応しなければならず、装置を並び替えたり、順番の入れ替えといった操作をすると、マルチ画面の表示を行うことができない。また、並び替えや順番の入れ替えを行うには、複数の機器間と入力装置との間でID等の対応付けを取るための初期設定が必要となり、煩わしいといった問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、表示部の並び替えや順番の入れ替えに対応であってマルチ画像を表示可能な入力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の入力システムは、複数の表示装置と、前記表示装置の各々の表示面上の座標位置を表す位置情報パターンを含む位置情報パターン層と、前記位置情報パターン層の前記位置情報パターンを光学的に読み取ることで前記表示装置の種類を識別する識別可能情報及び前記座標位置を取得し、前記表示装置の前記表示面に手書きによる筆跡に関する情報を入力する位置情報入力部と、を備え、前記位置情報パターン層は、前記位置情報パターンの配列パターンが前記表示装置のそれぞれで異なることを特徴とする。
【0009】
本発明の入力システムによれば、位置情報パターンの配列パターンが表示装置のそれぞれで異なっているので、位置情報入力部が位置情報パターンを光学的に読み取ることで表示装置を識別する識別可能情報及び前記座標位置を取得することができる。よって、位置情報入力部は、複数の表示装置のうちのいずれの装置のどの場所であるかといった情報を確実に取得できる。よって、表示装置から別の表示装置へと位置情報入力部を移動させるときに一々位置情報入力部を変えたり、ID情報を入れ直したりする必要がない。従って、複数の表示装置によるマルチ画像表示を行う場合において、例えば表示装置の並べ替えや順番の入れ替えといった動作を行ったとしてもマルチ画像表示を行う各表示装置に筆跡情報を確実に入力可能な入力システムを提供することができる。
【0010】
また、上記入力システムにおいては、前記位置情報入力部は、前記筆跡に関する情報を無線方式で前記表示装置へと送信するのが好ましい。
この構成によれば、無線方式により筆跡に関する情報が表示装置側に送信できるので、位置情報入力部及び表示装置間にて情報送信を行うための配線で接続する必要を無くすことができる。よって、位置情報入力部と表示装置との位置的な制約が無くなり、操作性に優れた入力システムを提供することができる。
【0011】
また、上記入力システムにおいては、前記表示装置が電気泳動表示装置であるのが好ましい。
この構成によれば、外部からの給電を停止しても表示内容を維持することができるので、消費電力を抑えた入力システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電子ペーパーシステムの概略構成を示す図である。
【図2】入力用ペンの構成を示す図である。
【図3】第一表示装置の概略構成を示す図。
【図4】表示体の概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。図1は本発明の入力システムに係る構成を示す図である。図1は、入力システムの一例としての電子ペーパーシステムの概略構成を示すものである。
【0014】
本実施形態に係る電子ペーパーシステム1は、図1に示すように複数(本実施形態では例えば2つ)の表示装置2と、各表示装置2に所定情報を入力する入力用ペン(入力装置)3と、を有する。表示装置2は、第一表示装置4及び第二表示装置5を含む。電子ペーパーシステム1は、後述のように入力用ペン(位置情報入力部)3を用いてユーザーが表示装置2に対して手書きによる筆跡を入力すると、該筆跡に対応した画像が表示装置2に表示されるものである。
【0015】
第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5aの各々には、後述のように入力用ペン3に光学的に読み取られる位置情報パターン層6、7が設けられている。位置情報パターン層6,7は、表示領域4a,5aの表示光を透過するように可視光を略透過する性質を有するべく、シートもしくは板状の透明樹脂を基材として構成されており、かつ、所定の情報図形を描画するとともに少なくとも赤外線波長帯域の光を吸収可能な位置情報パターン10(図2参照)が略全面に形成された層である。
【0016】
位置情報パターン層6,7は、規則的に配置された複数の位置情報パターン10により構成されるものである。位置情報パターン10は、表示領域4a,5aの長辺方向に設定されるX方向へ所定ピッチで配列された複数の仮想ラスター線11Aと、表示領域4a,5aの短辺方向に設定されるY方向へ所定ピッチで配列された複数の仮想ラスター線11Bとの交点に任意に設けられた上記ドット12によって座標値を示すことで、表示領域4a,5a内での位置情報を得るためのパターンである。
【0017】
ドット12は符号「1」を示す位置情報パターン10で、ラスター線の交点にドットがあることを示す。また、ドット12が設けられていないラスター線の交点13は符号「0」を示す位置情報パターン10である。位置情報パターン10は、第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5aを全体座標として、15×17ドットからなる8次のM平面(全体平面)を構成している。また、各ラスター線の交点が各座標位置であり、例えば第一表示装置4は(0,0)から(7,16)まで、第二表示装置5は(8,0)から(14,16)の座標を有している。また、各仮想ラスター線11A,11Bの交点の位置は表示装置2の座標(各画素)と一致している。
【0018】
すなわち、本実施形態においては、位置情報パターン層6,7における位置情報パターン10の配置パターン(ドット12の配置位置)がそれぞれ異なるものとなっている。なお、本実施形態では、位置情報パターン層6,7が連続座標を有することで位置情報パターン10の配置パターンが異なる場合を例に説明したが、両パターン層6,7は必ずしも連続性を有している必要は無く、位置情報パターン10が異なる配列パターンとなっていればよい。
【0019】
また、図1に示すように、M平面では微小単位領域A毎に4×2ビットの部分パターン14が付与されており、該部分パターン14は入力用ペン3における撮像領域(ペン先の位置)に対応している。本実施形態では第一表示装置4及び第二表示装置5の各表示領域4a,5aの座標情報が割り当てられている。座標情報は、表示領域4a,5aでの微小単位領域A内に散在させた複数のドット12に符号化して割り当てられており、これら複数のドット12からなる部分パターン14を入力用ペン3(図2参照)で光学的に読み取ることで、任意の座標位置情報を得ることができる。M平面の全体において、各部分パターン14はそれぞれが異なるドットパターン(ドット12のそれぞれの数、配置位置等)を有している。そのため、部分パターン14内のドットパターンを検出することで表示領域4a,5a上での座標位置を算出できるようになっている。
【0020】
このような構成に基づき、本実施形態では微小単位領域A内に散在する複数のドット12からなる部分パターン14を入力用ペン3で光学的に読み取ることで、微小単位領域Aにおけるドット12の数や配置状態によって得られる2次元コードを取得し、その2次元位置を一意的に定義することができる。すなわち、M平面の微小単位領域Aにおける部分パターン14から取得されるコード、つまりドット12の数や配置位置等によって決定される電気信号によって、入力用ペン3による指定位置(入力位置)が位置情報パターン10上のいずれの位置であるかを一意的に決定することができる。
【0021】
これにより、入力用ペン3が光学的に読み取った部分パターン14内のドットパターン(座標位置情報)に基づいて、現在のペン先が第一表示装置4及び第二表示装置5のいずれの表示領域4a,5aにおける、どの位置に配置されているか否かを検出できるようになっている。したがって、入力用ペン3は位置情報パターン層6,7の位置情報パターン10を光学的に読み取ることで表示装置(第一表示装置4又は第二表示装置5)を識別する識別可能情報及び前記座標位置を取得可能となっている。すなわち、入力用ペン3は、ペン先が第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5aのどちらの上にあり、どの座標位置に位置しているか否かに関する情報を取得することができるようになっている。
【0022】
図2は電子ペーパーシステム1の入力用ペン3の構成を示す図である。図3は第一表示装置4及び第二表示装置5の概略構成を示す図である。なお、第一表示装置4及び第二表示装置5は同一の構成を有していることから、図3では第一表示装置4の構成を例に挙げて図示している。
【0023】
図2に示すように入力用ペン3は、細棒状のペン型ケース41の内部にコリメータレンズ42、発光素子43、撮像素子44、電池45、電子回路部品46等を具備して構成されている。発光素子43としては、発光ダイオード(LED)あるいはレーザーダイオード(半導体レーザー)が適する。
【0024】
撮像素子44としては、位置情報パターン10の微小単位領域Aの部分パターン14を撮像して記録することのできるCCDカメラあるいはCMOSセンサーが用いられる。これら半導体センサーの光感度は600nm付近にピークがあり、外光や表示画像の光の影響を抑えるために赤外領域の発光素子43を使用してもよい。この場合は、赤外光線を透過して可視光線を遮光する赤外光透過フィルタをコリメータレンズ42とともに配置することにより、位置情報パターン10以外の背景光(表示画像)を除去することができる。その結果、第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5a上での入力用ペン3による正確な位置情報を得ることができる。また、焦電効果によって赤外線を含む光を検出する焦電素子を使用しても良い。
【0025】
電子回路部品46は、発光、撮像および検出演算処理を実行するCPUなどの画像処理手段、検出データを本体に送信する無線回路等を備える。電子回路部品46は無線回路により座標位置データを第一表示装置4及び第二表示装置5側へと送信する。無線通信の方式としては、電磁、超音波、光等の任意のものを適用可能であり、本実施形態では例えば赤外線光通信を用いている。また、入力用ペン3の電源は、ペン型ケース41内に取り付けられる電池45から供給されるようになっている。
【0026】
なお、発光素子43は常に点灯させておく必要はなく、入力用ペン3の走査スピードや撮像素子44による撮像タイミングなどから、第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5aに向けてパルス的に照明し、第一表示装置4及び第二表示装置5の照明(背景輝度)に応じて発光時間や消費電力を制御する。ここで、前回の照明時における撮像素子44によって得た情報を次回の照明時にフィードバックすれば、さらにSN比を改善することができる。
【0027】
また、図3に示すように、第一表示装置4は、表示体34と、無線通信部36と、表示体34を駆動するための制御部37と、を含む。表示体34は、上記位置情報パターン10と、後述する電気泳動装置から構成される表示部35と、を含む。無線通信部36は、入力用ペン3から送信される所定情報を受信し、該所定情報を制御部37へと送信するためのものである。制御部37は、表示部35の全般の駆動を制御するためのものである。なお、第二表示装置5についても第一表示装置4と同一の構成(表示体34、無線通信部36、制御部37)を有している。
【0028】
このように入力用ペン3は、ユーザーによる表示装置2に対する手書き入力等の入力操作を検出するためのものである。入力用ペン3は、タッチペンやスタイラスと同様、ユーザーが手で把持することで使用される態様とされている。すなわち、入力用ペン3は表示装置2と物理的に分離した形態とされている。
【0029】
また、位置情報パターン10を光学的に読み取る位置検出方式は、入力用ペン3と第一表示装置4及び第二表示装置5とを分離することで、第一表示装置4及び第二表示装置5の構成要素部品を減らし、軽量、薄型化することができるため、電子ペーパーシステム1に適した表示装置2の形態を実現することができる。
【0030】
入力用ペン3は、ユーザーに把持された状態で先端部が第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5aを指示した状態で、撮像素子44が位置情報パターン10による反射光を撮像するようになっている。入力用ペン3は撮像素子44で撮像した画像情報を処理することで該入力用ペン3の先端部における第一表示装置4及び第二表示装置5の上面での位置を検出可能となっている。
【0031】
このような構成に基づき、入力用ペン3は、第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5aに関する情報(表示装置の識別情報或いは位置座標等)を位置情報パターン10に基づいて検出し、検出した識別情報及び位置座標情報を電子回路部品46の無線回路を介して対応する第一表示装置4及び第二表示装置5側に出力することができる。
【0032】
一方、第一表示装置4及び第二表示装置5は、入力用ペン3で検出された識別情報及び位置座標情報を無線通信部36で取得し、該情報に基づいて制御部37を介し表示部35の表示状態を制御することができる。
【0033】
したがって、本実施形態に係る電子ペーパーシステム1においては、入力用ペン3が表示装置2に接触しながら移動した際の軌跡を該表示装置2に表示し、手書き入力の様子等を表示装置2に随時表示できるようになっている。
【0034】
図4は表示体34の構成を示す断面図である。図4に示すように、表示部35は、画素電極23、及び透明電極24からなる1対の電極間に設けられたマイクロカプセル65と、このマイクロカプセル65を前記電極23,24間に固定するバインダ層61と、を備えている。マイクロカプセル65は、液相分散媒26と電気泳動粒子25とを含む電気泳動分散液60を収容している。
【0035】
本実施形態においては、電気泳動装置が電気泳動分散液60をマイクロカプセル65化することにより、その取り扱いが容易になり、製造工程を簡略化することが出来るほか、電気泳動粒子25の偏在による表示の不均一性を防止するようになっている。
【0036】
液相分散媒26としては、比較的高い絶縁性を有する有機溶媒を用いることができる。この有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、シリコン系オイル、フッ素系オイル、オリーブ油等の種々の鉱物油および植物油類、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。
【0037】
前記電気泳動粒子25としては、有機または無機の顔料粒子、または、これらを含む複合体を用いることができる。本実施形態では、電気泳動粒子25として白色及び黒色の表示を可能とする二種類の粒子を用いた。
【0038】
上記画素電極23は第1基板31上に形成され、透明電極24は第2基板32上に形成されている。すなわち、第1基板31と第2基板32とは、互いに対向していて、マイクロカプセル65、バインダ層61、画素電極23、及び透明電極24を挟持している。
【0039】
第1基板31としては、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する第1基板31を用いることにより、可撓性を備えた表示部35となる。これにより、可撓性を有する電子ペーパーシステム1を構築する上で有用な電気泳動装置を得ることができる。また、第1基板31は、絶縁材料で構成されたものあり、このような絶縁材料としては、例えばポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
第1基板31の一方の内面(図4中、上側の面)には、複数の画素電極23が設けられている。各画素電極23は、マイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に電圧を印加する一方の電極として機能するものである。画素電極23の構成材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属、または、これらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
一方、第1基板31に対向して設けられる第2基板32の下面(図4中、下側の面)には、上記透明電極24が配置されている。第2基板32は、前記第1基板31と同様にして、可撓性を有するのが好ましく、その構成材料としては、例えば、各種セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
第2基板32、及び透明電極24は、いずれも光透過性を有するもの、好ましくは実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)なものとされる。これにより、後述のように電気泳動分散液60中における電気泳動粒子25の状態を、すなわち、表示部35が表示する情報を、目視により容易に認識することが可能となる。
【0043】
透明電極24の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープした酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(IO)、酸化スズ(SnO)のような導電性金属酸化物の他、ポリアセチレンのような導電性樹脂、導電性金属微粒子を含有する導電性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前述した画素電極23も、このような材料を用いて構成することができる。
【0044】
前記バインダ層61を構成するバインダ材料としては、例えばポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレン、ABS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール−塩化ビニル共重合体、プロピレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアリレート、グラフト化ポリフィニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の高分子、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化エチレンプロピレン、四フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化塩化エチレン、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等の珪素樹脂、その他として、メタクリル酸−スチレン共重合体、ポリブチレン、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
このような構成に基づき、表示部35はマイクロカプセル65中の電気泳動分散液60に、前記電極23,24により電圧を印加することで、電気泳動粒子25の分布状態を変化させることにより表示手段として機能するようになっている。具体的に本実施形態では、黒色及び白色の電気泳動粒子25を第1基板31及び第2基板32側にそれぞれ移動させることでマイクロカプセル65内における電気泳動粒子25の分布状態を変化させることで画素毎に黒色又は白色表示ができるようになっている。また、表示部35として電気泳動表示装置を採用することで可撓性を有し、取り扱い性に優れた表示装置2を提供できる。
【0046】
続いて、本実施形態の電子ペーパーシステム1の動作について説明する。なお、本説明では、本発明の特徴であるマルチ画面表示を行う第一表示装置4及び第二表示装置5の表示領域4a,5aに入力用ペン3を用いて手書き入力を行う動作を中心に説明する。
【0047】
本実施形態では、第一表示装置4及び第二表示装置5が縦方向或いは横方向に沿って並べられた状態で使用され、第一表示装置4及び第二表示装置5は各表示領域4a,5aにそれぞれ表示される画像を合わせることで1つの全体画像を表示するマルチ表示を行うものとする。
【0048】
ユーザーが把持した入力用ペン3を表示領域4a,5a上で移動すると、入力用ペン3の先端部に設けられた発光素子43から光が表示領域4a,5aに対して照射される。このとき、発光素子43から照射された光は表示領域4a,5a上に設けられた位置情報パターン層6,7の位置情報パターン10で反射されて入力用ペン3の撮像素子44により撮像される。
【0049】
撮像素子44は光学的に読み取った部分パターン14内のドットパターン(座標位置情報)に基づいて、現在のペン先が第一表示装置4及び第二表示装置5のいずれの表示領域4a,5aにおける、どの位置に配置されているかを検出できる。すなわち、入力用ペン3は、表示領域4a,4bにおいて該入力用ペン3の先端部が接触した位置に関する情報(座標位置)及び先端部が接触している装置4,5の識別情報を検出することができる。そして、撮像素子44は、電子回路部品46の無線回路を介して検出結果を対応する第一表示装置4又は第二表示装置5に対して送信する。このとき、第一表示装置4及び第二表示装置5側では、無線通信部36が入力用ペン3で検出された位置座標情報を取得し、該位置情報に基づいて制御部37を介して表示部35の表示状態を制御する。すなわち、撮像素子44は、入力用ペン3の先端部が接触している側の表示装置に対し、座標位置に関する情報を送信している。
【0050】
具体的に、制御部37は、取得した位置座標情報に対応する画素電極23及び透明電極24間に印加する電圧を制御し、マイクロカプセル65内の電気泳動粒子25を移動させることで、ユーザーが入力用ペン3を用いて入力した手書きによる筆跡を表示部35上に表示することができる。
【0051】
このように本実施形態では、無線方式により表示装置2側に入力用ペン3による入力情報を出力できるので、入力用ペン3と表示装置2とを配線で接続する必要が無い。よって、表示装置2に手書き入力を行う際に配線が絡まるといった不具合の発生が防止され、高い操作性を得ることができる。
【0052】
以上述べたように、本実施形態に係る電子ペーパーシステム1によれば、入力用ペン3が位置情報パターン10を光学的に読み取ることで表示装置2を識別する識別可能情報及び座標位置を取得することができる。よって、入力用ペン3は、ペン先が第一表示装置4及び第二表示装置5のいずれにおける表示領域4a,5aのどの位置に位置するといった情報を確実に取得できる。よって、第一表示装置4から別の第二表示装置5へと入力用ペン3を移動させるときに一々ペンを変えたり、ID情報を入れ直したりする必要がない。したがって、マルチ画像表示を行う場合において、例えば第一表示装置4及び第二表示装置5の並べ替えといった動作を行ったとしても、入力用ペン3側と表示装置2側とでID認識を行うといった初期設定を行う事無く、各表示装置4,5に筆跡情報を確実に入力することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、表示装置2が第一表示装置4及び第二表示装置5のみを含む場合について説明したが、本発明は3個以上の表示装置を含む場合についても適用可能であり、多数の表示装置を用いてマルチ画像表示を行う場合において特に顕著な効果を得ることができる。
【0054】
また、本発明は入力用ペン3により識別情報及び位置情報を取得可能な位置情報パターンを表示装置だけでなく、紙等にも印刷しておけば、電子ペーパーシステム1と紙との混在したシステムを構築することができる。例えば、紙の伝票に位置情報パターン10を印刷しておき、伝票のチェックされた箇所をペンで読み取ってデジタル情報として転送するといった処理を容易に行うことができる。
【0055】
また、本発明の電子ペーパーシステム1は、マルチ画像を表示する場合だけでなく、以下の用途として使用することも可能である。例えば、無線送信が届く範囲なら、一人の操作だけでなく、複数のユーザーによる手書きシステムの構築も可能である。例えば生徒が描いた手書き表示を先生の表示手段に反映させることで、先生は各生徒が入力した情報をそれぞれ確認できる(あるいはこの逆)等の応用分野が考えられる。さらには、複数ユーザー間で、全てのペン入力操作を表示させることもできる。例えば、対戦ゲームでは、ペン入力結果を全表示上に反映させたり、機器ごとの違いを表示色で識別させることも容易である。また、例えば、複数の表示装置がネットワークに接続されている場合、夫々の表示装置の入力座標データをネットワーク上にアップロードすることで、現在どの表示装置がペン入力しているか検出することができる。これにより、ネットワークシステムのクライアント管理に応用することができる。さらに、全ての表示装置に異なる位置情報パターン10の配置とすることで、位置情報パターン10を読み取るだけで製品のトレースが可能であり、製造管理やアフターサービス上有効な手段として利用することもできる。
【0056】
また、上記実施例では、位置情報パターン10として仮想ラスター線の交点のドットを「1」を、ドットが無い交点を「0」としたが、このドットの数、形状、色、材質(反射、透過、吸収、拡散)等は固執しない。また、入力用ペン3による検出性を向上させるために表面に偏光や反射、拡散等の光学的加工を加えたり、赤外フィルタを設けても構わない。
【0057】
また、本実施形態では、15×17ドットからなるM平面を例示したが、1ドットの大きさが径50μm前後、ラスター間隔(ドットピッチ)が0.1〜0.5mm程度、6×6ドット以上のウインドウ、M平面256×256ドット以上とするのが実用上はより好ましい。また、本実施形態では、便宜上、電子ペーパーシステム1の最小限構成として2つの表示装置(第一表示装置4及び第二表示装置5)を用いる場合を例示したが、より多くの台数を用いることで、より大きなマルチ表示画面、入力エリアを実現することができる。この場合、表示装置の数や表示面積が更に大きくなっても、より高次のM平面を選択すれば良く、設計は容易である。
【0058】
また、上記実施形態では、表示装置2の表示部35として電気泳動表示装置を備える場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、表示部35としては有機エレクトロルミネッセンス装置又は液晶表示装置を用いても構わない。
【符号の説明】
【0059】
1…電子ペーパーシステム(入力システム)、2…表示装置2…入力用ペン(位置情報入力部)、4…第一表示装置、5…第二表示装置、4a,5a…表示領域(表示面)、6、7…位置情報パターン層、10…位置情報パターン、35…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示装置と、
前記表示装置の各々の表示面上の座標位置を表す位置情報パターンを含む位置情報パターン層と、
前記位置情報パターン層の前記位置情報パターンを光学的に読み取ることで前記表示装置の種類を識別する識別可能情報及び前記座標位置を取得し、前記表示装置の前記表示面に手書きによる筆跡に関する情報を入力する位置情報入力部と、を備え、
前記位置情報パターン層は、前記位置情報パターンの配列パターンが前記表示装置のそれぞれで異なることを特徴とする入力システム。
【請求項2】
前記位置情報入力部は、前記筆跡に関する情報を無線方式で前記表示装置へと送信することを特徴とする請求項1に記載の入力システム。
【請求項3】
前記表示装置が電気泳動表示装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37535(P2013−37535A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173152(P2011−173152)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】