説明

入力デバイス

【課題】耐久性に優れる上に、透明性及び導電性の低下が防止されている入力デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の入力デバイス10は、透明基材11,21の片面に透明導電膜12,22が形成された一対の電極基材10,20を具備し、一対の電極基材10,20の透明導電膜12,22同士が対向するように離間して配置され、一方の電極基材10の透明導電膜12の少なくとも最表層が有機導電層であり、他方の電極基材20の透明導電膜22の少なくとも最表層が無機導電層であり、無機導電層の平均面粗さが0.1〜10nmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル等の入力デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等の入力デバイスとして、透明基材の片面に透明導電膜が形成された一対の電極基材を具備し、一対の電極基材の透明導電膜同士が対向するように配置されたものが知られている。この入力デバイスでは、入力者側の電極基材が指やタッチペン(スタイラス)等によって押圧された際に、一対の電極基材の透明導電膜同士が接触して電気的に導通することを利用して、押圧部分の位置を検出するようになっている。
ところで、上記のような入力デバイスにおいては、一対の透明導電膜同士が繰り返し接触するため、透明導電膜の変形や傷付きが起こりやすかった。そのため、長期間使用すると、位置検出の精度が低下する傾向にあった。
【0003】
そこで、入力デバイスにおいては、透明導電膜自体を改善する方法として、特許文献1では、透明導電膜を形成する金属酸化物として特定の結晶粒径のものを用いる方法が提案されている。
特許文献2では、マイクロ波により透明導電膜を結晶化させる方法が提案されている。
特許文献3では、透明導電膜を加熱処理して膜表面に針状突起を設ける方法が提案されている。
【0004】
また、透明基材と透明導電膜との間に別の層を設けて耐久性を向上させる方法として、特許文献4では、透明基材と透明導電膜との間に金属薄膜または金属酸化物薄膜を設ける方法が開示されている。
特許文献5では、透明基材の上に粗面化アンダーコート層が設けられ、その上に透明導電膜層が形成され、表面の中心線平均粗さが100〜300nmかつ凹凸の平均間隔が20〜100μm、十点平均粗さが0.6〜7.0μmである表面層を有するタッチパネル用基板が提案されている。
【特許文献1】特開2005−183310号公報
【特許文献2】特開2005−141981号公報
【特許文献3】特開2005−205903号公報
【特許文献4】特開2005−235678号公報
【特許文献5】特開2003−316505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜5に記載の方法では、耐久性は向上するものの、透明性または導電性が損なわれることがあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、耐久性に優れる上に、透明性及び導電性の低下が防止されている入力デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 透明基材の片面に透明導電膜が形成された一対の電極基材を具備し、一対の電極基材の透明導電膜同士が対向するように離間して配置された入力デバイスであって、
一方の電極基材の透明導電膜の少なくとも最表層が有機導電層であり、他方の電極基材の透明導電膜の少なくとも最表層が無機導電層であり、
無機導電層の平均面粗さが0.1〜10nmであることを特徴とする入力デバイス。
[2] 無機導電層は、錫ドープ酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物で構成されていることを特徴とする[1]に記載の入力デバイス。
[3] 有機導電層は、π共役系導電性高分子とポリアニオンを含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の入力デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明の入力デバイスは、耐久性に優れる上に、透明性及び導電性の低下が防止されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の入力デバイスの一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例の入力デバイスを示す。この入力デバイス1は、第1の透明基材11の片面に第1の透明導電膜12が形成された第1の電極基材10と、第2の透明基材21の片面に第2の透明導電膜22が形成された第2の電極基材20とを具備する。また、第1の電極基材10と第2の電極基材20は、第1の透明導電膜12と第2の透明導電膜22とが対向するように離間して配置されている。さらに、第1の電極基材10は入力者側に配置され、第2の電極基材20は画像表示装置側に配置されている。
【0009】
(第1の電極基材)
第1の電極基材10には高い可撓性が求められるため、第1の電極基材10を構成する第1の透明基材11の材質としては、透明樹脂が好ましく用いられる。透明樹脂としては、例えば、透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
第1の透明基材11の厚さは10〜2,000μmであることが好ましい。第1の透明基材11の厚さが10μm以上であれば、破断しにくく、2,000μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0010】
第1の電極基材10における第1の透明導電膜12は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含有する有機導電層からなる。
【0011】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性及び相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0012】
π共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。その中でも、導電性、耐熱性から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0013】
[ポリアニオン]
ポリアニオンとしては、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
【0014】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)が1個含まれる構成単位からなる高分子である。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0015】
上記ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。有機溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
【0016】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。
ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
【0017】
置換基を有するポリアルキレンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等を例示できる。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体を例示できる。
【0018】
ポリアニオンのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。
すなわち、ポリアニオンは、スルホ基及び/又はカルボキシ基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。
また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0019】
上記ポリアニオンの中でも、溶媒溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0020】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0021】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0022】
ポリアニオンは、π共役系導電性高分子に配位している。そのため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとは複合体を形成している。
第1の透明導電膜12におけるπ共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量は0.05〜5.0質量%であり、0.5〜4.0質量%であることが好ましい。π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量が0.05質量%未満であると、充分な導電性が得られないことがあり、5.0質量%を超えると、均一な膜が得られないことがある。
【0023】
[アクリル化合物の重合体]
第1の透明導電膜12は、強度が向上することから、アクリル化合物の重合体を含有することが好ましい。ここで、アクリル化合物の重合体とは、アクリル化合物のポリマー及びアクリル化合物の架橋体のことである。また、アクリル化合物は、下記(a)の化合物、(b)の化合物及び多官能アクリル化合物である。
【0024】
(a)グリシジル基を有するアクリル化合物(以下、化合物(a)という。)。
(b)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシ基とを有するアクリル化合物(以下、化合物(b)という。)。
【0025】
さらに、化合物(a)としては、下記(a−1)〜(a−3)のアクリル化合物が挙げられる。
(a−1):グリシジル基と、アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とを有するアクリル化合物(以下、化合物(a−1)という。)。
(a−2):グリシジル基を2つ以上有するアクリル化合物(以下、化合物(a−2)という。)。
(a−3):グリシジル基を1つ有するアクリル化合物であって、化合物(a−1)以外の化合物(以下、化合物(a−3)という。)。
【0026】
化合物(a−1)のうち、グリシジル基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
グリシジル基とアリル基を有する化合物として、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とを有する化合物として、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とアリル基とを有する化合物として、3−アリル−1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
なお、グリシジル基とヒドロキシ基とを有する化合物、グリシジル基とヒドロキシ基とアリル基とを有する化合物は化合物(b)でもある。
【0027】
化合物(a−2)としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルテトラフタレート等が挙げられ1種類または2種類以上の混合として用いることができる。
【0028】
化合物(a−3)としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0029】
化合物(b)のうち、例えば、ヒドロキシ基とビニルエーテル基とを有する化合物として、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(メタクリレート)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ジペンタエリストリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリルアミド(メタクリルアミド)基を有する化合物として、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミドが挙げられる。
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物を重合させた重合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体との相溶性が良い上に導電性をより向上させることができる。
【0030】
上記化合物(a)では、そのグリシジル基がポリアニオンの残存アニオン基(例えば、スルホ基、カルボキシ基など)と反応して、エステル(例えば、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルなど)を形成する。その反応の際には、塩基性触媒、加圧、加熱によって反応を促進させてもよい。エステル形成の際、グリシジル基は開環してヒドロキシ基を形成する。このヒドロキシ基が、導電性高分子との塩もしくはエステルを形成しなかった残存アニオン基と脱水反応を起して、新たにエステル(例えば、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルなど)を形成する。このようなエステルの形成によって、ポリアニオンと導電性高分子との複合体同士が架橋する。
さらに、化合物(a−1)においては、ポリアニオンの残存アニオン基と、化合物(a−1)のグリシジル基とが結合した後、化合物(a−1)のアリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基同士が重合して複合体同士がさらに架橋する。
【0031】
また、上記化合物(b)では、そのヒドロキシ基がポリアニオンの残存アニオン基と脱水反応して、エステルを形成する。その脱水反応の際には、酸性触媒によって反応を促進させてもよい。その後、化合物(b)のアリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基同士が重合する。この重合によって、ポリアニオンと導電性高分子との複合体同士が架橋する。
【0032】
多官能アクリル化合物は、不飽和二重結合を2つ以上有するアクリル化合物である。多官能アクリル化合物は、第1の透明導電膜12形成時にπ共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体を架橋させやすく、導電性及び塗膜強度が向上する。
多官能アクリル化合物の具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する。)400ジ(メタ)アクリレート、PEG300ジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等の2官能アクリルモノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等の3官能アクリルモノマー、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のアクリルモノマー、ソルビトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の5官能以上のアクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、アルキレンオキサイド変性ヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能以上のアクリルモノマー、2官能以上のウレタンアクリレートが挙げられる。
【0033】
多官能アクリル化合物のうち、多官能アクリルモノマーは、分子量が3000以下であることが好ましい。分子量が3000を超える多官能アクリルモノマーでは、溶媒溶解性が低くなる。また、不飽和二重結合当量が少なくなるため、複合体を架橋させにくく、第1の透明導電膜12形成後に充分な強度が得られない傾向にある。
また、多官能アクリル化合物のうち、多官能ウレタンアクリレートは、溶媒溶解性、耐摩耗性、低収縮の点で、分子量1000以下であることが好ましい。分子量が1000を超える多官能ウレタンアクリレートでは、イソシアネート基とポリオール(水酸基)により形成されるウレタン基の導入率が減少して、溶媒に対する溶解性が低くなる傾向にある。
【0034】
アクリル化合物の重合体の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.05〜50質量%であることが好ましく、0.3〜30質量%であることがより好ましい。アクリル化合物の重合体の含有量が0.05質量%未満であると、第1の透明導電膜12の強度が不足することがあり、50質量%より多くなると、第1の透明導電膜12中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、充分な導電性が得られないことがある。
【0035】
[2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物]
また、第1の透明導電膜12は、導電性がより高くなることから、2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物を含有することが好ましい。
2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物としては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等が挙げられる。
なお、これら芳香族化合物の一部は還元剤としても機能する。したがって、2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物を還元剤として兼用することで、導電性をより高めることもできる。
【0036】
2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜50モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性が高くならないことがある。また、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して50モルより多くなると、第1の透明導電膜12中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られないことがある。
【0037】
[添加剤]
第1の透明導電膜12は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤と紫外線吸収剤とは併用することが好ましい。
【0038】
[厚さ]
第1の透明導電膜12の厚さは0.001〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましい。第1の透明導電膜12の厚さが0.001μm以上であれば、導電性がより高くなり、10μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0039】
(第2の電極基材)
第2の電極基材20における第2の透明基材21としては、第1の透明基材11と同様の透明樹脂製の基材、ガラス基板、フィルムとガラス基板との積層体が挙げられる。中でも、固定しやすいことから、ガラス基板が好ましい。
第2の透明基材21の厚さは0.8〜2.5mmであることが好ましい。第2の透明基材21の厚さが0.8mm以上であれば、充分な強度を確保でき、2.5mm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。
【0040】
第2の電極基材20における第2の透明導電膜22は無機導電層からなる。
ここで、無機導電層は、例えば、金属酸化物等から構成される。金属酸化物としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化錫、フッ素ドープ酸化錫(FTO)などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び導電性に優れることから、錫ドープ酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫からなる群から選ばれる1種以上のものが好ましく、錫ドープ酸化インジウムがより好ましい。
【0041】
第2の透明導電膜22の平均面粗さ(Ra)は0.1〜10nmであり、0.2〜7.0nmであることが好ましい。ここで、平均面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)により測定された値である。
第2の透明導電膜22の平均面粗さが0.1nm未満であると、第1の透明導電膜12と接触した際の接触抵抗値が高くなり、10nmを超えると、耐久性が損なわれる上に、透明性も低下する。
また、第2の透明導電膜22の自乗平均面粗さ(RMS)は1.5〜7.5nmであることが好ましく、最大高低差(P−V)は15〜100nmであることが好ましい。
【0042】
[厚さ]
第2の透明導電膜22の厚さは0.01〜1.0μmであることが好ましい。第2の透明導電膜22の厚さが0.01μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、1.0μm以下であれば、薄くすることができる。
【0043】
[中間層]
第2の透明基材21と第2の透明導電膜22との間には、1層以上の中間層が形成されていてもよい。中間層としては、例えば、酸化ケイ素膜、酸化マグネシウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化ゲルマニウム膜、反射防止膜、カラーフィルター、配向膜、液晶膜などが挙げられる。
中間層の厚さは10〜500nmが好ましく、30〜300nmがより好ましい。中間層の厚さが10nm以上であれば、中間層の機能が充分に発揮され、500nm以下であれば、第2の電極基材20の柔軟性低下を防止できる。
【0044】
[電極基材の配置]
第1の電極基材10と第2の電極基材20とは、それらの間に配置されたドットスペーサ24によって離間するようになっている。
第1の電極基材10と第2の電極基材20の非押圧時の間隔は20〜100μmであることが好ましい。第1の電極基材10と第2の電極基材20の非押圧時の間隔は20μm以上であれば、非押圧時に第1の電極基材10と第2の電極基材20とを確実に接触させないようにすることができ、100μm以下であれば、押圧時に第1の電極基材10と第2の電極基材20とを確実に接触させることができる。前記間隔になるようにするためには、ドットスペーサ24の大きさを適宜選択すればよい。
【0045】
[用途]
この入力デバイス1では、指またはスタイラスにより第1の電極基材10を押した際に、第1の電極基材10の第1の透明導電膜12と第2の電極基材20の第2の透明導電膜22とが接触して導通する。そして、その際の電圧を取り込んで、位置を検出するようになっている。
入力デバイス1の用途としては、例えば、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、PHS、現金自動預け払い機(ATM)、自動販売機、販売時点情報管理(POS)用レジスタなどが挙げられる。
【0046】
(入力デバイスの製造方法)
入力デバイス1の製造方法は、第1の透明基材11の片面に導電性高分子溶液を塗布し、有機導電層からなる第1の透明導電膜12を形成して第1の電極基材10を得る工程(以下、第1の工程という。)と、第2の透明基材21の片面に無機導電層からなる第2の透明導電膜22を形成して第2の電極基材20を得る工程(以下、第2の工程という。)と、第1の電極基材10と第2の電極基材20とを組み立てる工程(以下、第3の工程という。)とを有する。
【0047】
<第1の工程>
第1の工程における導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含有するものである。
【0048】
溶媒としては特に制限されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、ジメチルイミダゾリン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン酸等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
前記溶媒の中でも、取り扱い性の点から、水、アルコール類が好ましい。
【0049】
導電性高分子溶液の調製方法としては、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを化学酸化重合して導電性高分子水溶液を調製することで調製できる。
導電性高分子溶液の塗布方法として、例えば、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等を適用することができる。
【0050】
導電性高分子溶液塗布後には、硬化処理を施すことが好ましい。
硬化方法としては、加熱または光照射が適用される。加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光照射により硬化する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。紫外線照射における照度は100mW/cm以上が好ましい。照度が100mW/cm未満であると、充分に架橋せず、導電膜の耐摺動性(耐久性)が低くなる傾向にある。なお、本発明における照度は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300〜390nm、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【0051】
<第2の工程>
無機導電層からなる第2の透明導電膜22の形成方法としては、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成膜法(CVD法)、パイロゾル法等の成膜方法を適用することができる。
平均面粗さを0.1〜10nmにするためには、例えば、スパッタ法において、印加電圧4kW以上、アルゴンガス(流量:120〜200sccm)及び酸素ガス(流量:1〜10sccm)を混合ガスとして導入し、真空度0.5Pa以下に調整すればよい。
化学気相成膜法、パイロゾル法等で用いる蒸気物中の有機溶媒溶液としては、成膜を妨げない限り特に制限はないが、アセトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
第2の透明基材21と第2の透明導電膜22との間に中間層を形成する場合には、その形成方法として、第2の透明導電膜22の形成方法と同様の方法を適用することができる。
【0052】
<第3の工程>
第3の工程では、具体的には、得られた第2の透明導電膜22の表面にドットスペーサ24を設け、第1の透明導電膜12と第2の透明導電膜22とが対向するように第1の電極基材10と第2の電極基材20を配置させて入力デバイス1を得る。
【0053】
上述したように、入力デバイス1は、第1の透明導電膜12が有機導電層であり、第2の透明導電膜が平均面粗さ1〜20nmの無機導電層である。本発明者が調べた結果、このような入力デバイス1では、耐久性に優れる上に、透明性及び導電性の低下が防止されている。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態例に限定されない。
第1の透明導電膜12は、少なくとも最表部が有機導電層であればよく、第1の透明基材11側の部分が無機導電層であってもよい。また、第2の透明導電膜22は、少なくとも最表部が無機導電層であればよく、第2の透明基材21側の部分が有機導電層であってもよい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の調製
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30000
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0056】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水溶液の調製
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得たポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水溶液を得た。
【0057】
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gに、炭酸銀0.5を添加し、撹拌して、炭酸銀を含有したPEDOT−PSS水溶液を調製した。
これとは別に、ガーリック酸3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ペンタエリスリトールトリアクリレート7.2g、エタノール300g、PGM(純正化学株式会社製1−メトキシ−2−プロパノール)100g、グラノール400(共栄社化学株式会社製変性シリコーン)0.5gを混合し、撹拌した。これにより得た溶液に、前記炭酸銀を含有したPEDOT−PSS水溶液を添加し、撹拌して、導電性高分子溶液Aを得た。
導電性高分子溶液Aをポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300、厚さ;188μm)に、グラビアコーターにより塗布し、100℃、2分間、赤外線照射により乾燥した後、紫外線(高圧水銀灯120W、360mJ/cm、178mW/cm)照射し、硬化させて、有機導電層からなる第1の透明導電膜を形成させた。これにより、第1の電極基材を得た。
【0058】
また、厚さ1.0mmのガラス基板の両面に、テトラエトキシシランとエタノールを含有する酸化ケイ素膜形成用溶液をディップコーティング法により塗布し、400℃で焼結して、酸化ケイ素膜を形成した。次いで、チャンバ内に、アルゴンガス(流量;170sccm)及び酸素ガス(流量;5sccm)を導入しながら、真空度を0.5Paに調整した。そして、ターゲットとして、酸化錫を5.0質量%含有する酸化インジウム(ジャパンエナジー社製、密度7.1g/cm)を用いて、印加電圧4kWでDCマグネトロンスパッタ法により、前記酸化ケイ素膜を両面に形成した厚さ1.0mmのガラス基板表面に厚さ20nmのITO膜からなる第2の透明導電膜を形成した。これにより、第2の電極基材を得た。
第2の透明導電膜の平均面粗さ(Ra)、自乗平均面粗さ(RMS)及び最大高低差を、走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー製SPA/NanoNaviステーション、測定モード:原子間力顕微鏡DFMモード、スキャナー:20μmピエゾ)により測定した。測定結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
(接触抵抗測定方法)
次いで、得られた第1の透明導電膜12の表面に電極配線13a,13bを形成した(図2参照)。また、第2の透明導電膜22の表面に電極配線23a,23bを形成した。次いで、第2の透明導電膜22上に、ドットスペーサ用ペースト(藤倉化成社製SN−8400C)をスクリーン印刷し、乾燥し、紫外線照射して、ドットスペーサ24を形成させた。次いで、電極配線23a,23b上に、レジスト用ペースト(藤倉化成社製SN−8800G)をスクリーン印刷し、乾燥し、UV照射して、絶縁層25を形成させた。さらに、絶縁層25上に、接着剤(藤倉化成社製XB−114)をスクリーン印刷し、乾燥させて、第1の電極基材10に貼り合わせるための接着剤層26を形成させた(図3参照)。
次いで、図4に示すように、第1の電極基材10と第2の電極基材20とを、第1の透明導電膜12と第2の透明導電膜22が対向するように配置させ、接着剤層26により貼り合せて、入力デバイスを作製した。また、電極配線23aと精密電源31とを、プルアップ抵抗(82.3kΩ)32、及びプルアップ抵抗32に並列に接続されたプルアップ抵抗32の電圧測定用テスタ33を介して電気的に接続した。また、精密電源31と電極配線13aとを電気的に接続した。また、電極配線13bと電極配線23bとを、電圧測定用テスタ34を介して電気的に接続した。これにより、接触抵抗測定用の電気回路を得た。
接触抵抗は次のように測定した。先端が0.8Rのポリアセタール製スタイラス35で、第1の電極基材10を250gの荷重で押圧し、精密電源31により電圧5Vを印加した際のプルアップ抵抗の電圧と抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧を測定し、これらの測定結果より、接触抵抗を測定した。
具体的には、プルアップ抵抗32に流れる電流値を、測定した電圧値を用いてオームの法則から算出し、その算出した電流値及び抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧値を下記式に代入して接触抵抗を求めた。結果を表1に示す。
接触抵抗(Ω)=[(抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧(V))/(プルアップ抵抗の電圧(V))]×プルアップ抵抗(Ω)
【0061】
(リニアリティ測定方法)
上記接触抵抗の測定とは別に、得られた第2の透明導電膜の表面にドットスペーサを設け、第1の透明導電膜と第2の透明導電膜とが対向するように第1の電極基材と第2の電極基材を配置させて入力デバイスを得た。その入力デバイスについて、初期と摺動試験後のリニアリティを測定して、耐久性を評価した。
【0062】
タッチパネル研究所製電気特性検査機/摺動筆記耐久試験機/単板試験機を用い、筆記摺動試験前後のリニアリティを測定した。なお、測定サイズ85mm×70mm、測定数42点、荷重250g(0.8Rポリアセタールペン)とし、最大値と平均値とを求めた。また、摺動は、図5に示すように、A〜Dの順序でポリアセタールペンを動作させ、その動作を25万回行った。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
(実施例2)
チャンバ内に、アルゴンガス(流量;500sccm)及び酸素ガス(流量;80sccm)を導入しながら、真空度を0.27Paに調整した。そして、ターゲットとして、シリコーンターゲットを用いて、印加電圧4kWでDCマグネトロンスパッタ法により、厚さ1.0mmのガラス基板両面に酸化ケイ素膜を形成した。
次いで、チャンバ内に、アルゴンガス(流量;197sccm)及び酸素ガス(流量;3sccm)を導入しながら、真空度を0.5Paに調整した。そして、ターゲットとして、酸化錫を5.0質量%含有する酸化インジウム(ジャパンエナジー社製、密度7.1g/cm)を用いて、印加電圧4kWでDCマグネトロンスパッタ法により、前記酸化ケイ素膜を両面に形成した厚さ1.0mmのガラス基板表面に厚さ20nmのITO膜からなる第2の透明導電膜を形成した。これにより、第2の電極基材を得た。
このようにスパッタ法により中間層を形成した第2の電極基材を用いた入力デバイスについて、実施例1と同様に接触抵抗を測定した。測定結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
実施例2における第2の透明導電膜の形成において、アルゴンガス流量を150sccm、酸素ガス流量を5sccmにしたこと以外は実施例2と同様にして、第2の電極基材を得た。この第2の電極基材を用いた入力デバイスについて、実施例1と同様に接触抵抗を測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
実施例1における第2の透明導電膜の形成において、アルゴンガス流量を150sccm、酸素ガス流量を5sccmにしたこと以外は実施例1と同様にして、第2の電極基材を得た。この第2の電極基材を用いた入力デバイスについて、実施例1と同様に接触抵抗を測定した。測定結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
実施例1における第2の透明導電膜の形成において、ターゲットとして、酸化錫を30.0質量%含有する酸化インジウム(ジャパンエナジー社製、密度7.1g/cm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、第2の電極基材を得た。この第2の電極基材を用いた入力デバイスについて、実施例1と同様に接触抵抗を測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
比較例1における第1の電極基材として、ハードコート付きITOフィルム(東洋紡績社製300RK)を用いて入力デバイスを得て、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2に示す。なお、表2において示された表面物性はハードコート付きITOフィルムのものである。
【0069】
第2の透明導電膜の平均面粗さが1〜20nmの範囲にあった実施例1〜4の入力デバイスでは、接触抵抗が小さく、導電性に優れていた。また、実施例1の入力デバイスでは、摺動筆記試験後のリニアリティの増加が小さく、耐久性に優れていた。
これに対し、平均面粗さが10nmを超えていた比較例1の入力デバイスでは、接触抵抗が大きく、導電性が低かった。
第1の電極基材としてハードコート付きITOフィルムを用いた比較例2の入力デバイスでは、摺動筆記試験後のリニアリティの増加が大きく、耐久性が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の入力デバイスの一実施形態例を示す断面図である。
【図2】接触抵抗の測定方法における第1の電極基材を示す断面図である。
【図3】接触抵抗の測定方法における第2の電極基材を示す断面図である。
【図4】接触抵抗の測定方法における回路を示す模式図である。
【図5】筆記摺動試験における筆記動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0071】
1 入力デバイス
10 第1の電極基材
11 第1の透明基材
12 第1の透明導電膜
13a,13b 電極配線
20 第2の電極基材
21 第2の透明基材
22 第2の透明導電膜
23a,23b 電極配線
24 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の片面に透明導電膜が形成された一対の電極基材を具備し、一対の電極基材の透明導電膜同士が対向するように離間して配置された入力デバイスであって、
一方の電極基材の透明導電膜の少なくとも最表層が有機導電層であり、他方の電極基材の透明導電膜の少なくとも最表層が無機導電層であり、
無機導電層の平均面粗さが0.1〜10nmであることを特徴とする入力デバイス。
【請求項2】
無機導電層は、錫ドープ酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項3】
有機導電層は、π共役系導電性高分子とポリアニオンを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−223663(P2009−223663A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68055(P2008−68055)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】