説明

入力処理装置

【課題】 行単位のスクロールとページ単位のスクロールとを簡単な操作で円滑に切り換えることのできる入力処理装置を提供する。
【解決手段】 入力パッド7上で移動する指を検出するとともにその移動速度を判定するスクロール用アプリケーションソフト25が設けられている。スクロール用アプリケーションソフト25は、指の移動速度が「低速」であると判定するとページ単位のスクロールに設定し、「高速」であると判定すると行単位のスクロールに設定する。指の速度を変えるだけで行単位のスクロールとページ単位のスクロールとを簡単且つ円滑に切り換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータなどの電子機器に搭載される入力処理装置に係わり、特にスクロール機能を備えた入力処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどの電子機器では、表示画面上に表示された文字情報や画像情報などの表示内容を上下左右方向に移動させ、表示しきれなかった新たな表示内容を表示させるスクロール操作が頻繁に行われている。
【0003】
このような、スクロール操作を行うための手段の一つとして、従来よりタッチパッドが使用されており、以下の特許文献1にはタッチパッドを使用して表示内容をスクロールさせる機能を備えた携帯電話機が記載されている。
【0004】
特許文献1では、タッチパッドの下端部に、指のスライド操作が停止しても継続してカーソルが移動できる継続動作領域(スクロール領域)が設定されており、指が継続動作領域をタッチしている間、表示画面上の表示内容がスクロールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−66031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載のものでは、タッチパッドにおける指のスライド操作の移動量と、表示装置に表示されるカーソルの移動量の割合は、操作者によって予め設定される構成であり、行単位のスクロール機能を備えているもののページ単位のスクロール機能は備えたものではない。
【0007】
このため、例えば最初のページから最後のページに移動する場合のように、複数のページを飛ばして目的のページに移動しようとする場合には、目的のページが現れるまでスクロール領域を押し続ける必要があり、多大な操作時間を操作者に強いるものであった。
【0008】
また例えば行単位のスクロール機能とページ単位のスクロール機能の双方を備えていたとしても、行単位のスクロールとページ単位のスクロールとを簡単な操作で円滑に切り換えることができず、スクロール操作を効率的に行うことができなかった。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、行単位のスクロールとページ単位のスクロールとを簡単な操作で円滑に切り換えることのできる入力処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入力面を備えた入力パッドと、前記入力面に触れた指示体の検知を行う検知部と、前記検知部から得られる入力信号に基づいて表示装置に表示内容を表示する制御部と、が設けられた入力処理装置において、
前記制御部には、入力信号に基づいて前記表示内容をスクロールさせる処理部と、前記指示体の移動速度を検出して予め設定した閾値と比較して判定する判定部が設けられており、
前記処理部が、前記表示内容をスクロールさせる第1の動作処置及び第2の動作処置を有しており、前記判定部での判定結果に基づいて、前記表示内容が前記第1の動作処置と前記第2の動作処理の一方を用いてスクロールさせられることを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、指の操作に応じて異なるスクロールを選択することができる。このため、より効率的かつスムーズにスクロール操作を行うことができる。
【0012】
上記において、前記入力面にスクロール領域が設けられており、前記指示体からの操作が、前記スクロール領域に与えらた場合に、前記表示内容がスクロールさせられるものが好ましい。
【0013】
上記手段では、操作者から与えられた操作がスクロールであることを検知し易くできる。
【0014】
また前記入力面にスクロール領域が設けられており、前記指示体からの操作が前記入力面のいずれかである場合には前記第1の動作処理を用いたスクロールが行われ、前記指示体からの操作が前記スクロール領域のみに与えらた場合に前記第2の動作処理を用いたスクロールが行われるものである。
【0015】
上記手段では、操作者から与えられた操作が、第1の動作処理に基づくスクロールであるか、第2の動作処理に基づくスクロールであるかを明確に区別することができる。
【0016】
また前記判定部の判定結果が「低速」の場合に、前記表示内容が前記第1の動作処理を用いてスクロールさせられ、前記判定結果が「高速」または、指が払うようにスクロール領域に接触した場合に、前記表示内容が前記第2の動作処理を用いてスクロールさせられるものが好ましい。
【0017】
上記のように、操作者が行う操作に応じてスクロールの動作処理を選択することができるため、操作者に与える負担が軽減され、より使い易いスクロール機能とすることができる。
【0018】
例えば、前記第1の動作処理が行単位でのスクロールであり、前記第2の動作処理がページ単位でのスクロールである。
【0019】
また前記処理部は、パーソナルコンピュータの制御部に格納されるソフトウエアによって実行され、前記判定部は前記処理部に含まれるソフトウエアによって実行されるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、行単位のスクロールとページ単位のスクロールとを簡単な操作、例えば、指を払うような接触操作で切り換えることができる。このため、スクロール作業を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の入力処理装置を搭載したノートブック型のパーソナルコンピュータ(PC)を示す斜視図、
【図2】平面型の入力処理装置の平面図、
【図3】入力処理装置の回路ブロック図、
【図4】本発明の実施の形態として入力処理装置の動作処理を示すフローチャート、
【図5】図4のフローチャート内に設けられたスクロール検知ルーチンの動作処理を示すフローチャート、
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の入力処理装置を搭載したノートブック型のパーソナルコンピュータ(PC)を示す斜視図、図2は平面型の入力処理装置の平面図である。図3は、入力処理装置の回路ブロック図である。
【0023】
図1に示すパーソナルコンピュータ1は、本体部2と蓋体部3とが折り畳み可能に連結されている。本体部2の表面の操作盤には、キーボード装置4と、平面型の入力処理装置5が設けられている。前記蓋体部3の手前側の面には、液晶表示パネルで形成された表示装置6が設けられている。
【0024】
図2に拡大して示すように、平面型の入力処理装置5は、入力パッド(タッチパッド)7と、その右下に位置している右ボタン8と、左下に位置する左ボタン9を有している。なお、右ボタン8および左ボタン9は、本発明を構成する上において必須の部材ではない。
【0025】
入力パッド7は平坦な面からなる入力面7aを有している。入力パッド7は、X方向に延びる複数のX電極と、Y方向に延びる複数のY電極とが、絶縁層を挟んで対向しており、また、隣り合うX電極の間にそれぞれ検出電極が設けられている。これら電極の表面に薄い絶縁シートが設けられており、その絶縁シートの表面が前記入力面7aである。
【0026】
図3に示すように、入力処理装置5に設けられた駆動回路11により、X電極に順番に所定の電圧が印加され、これとは異なるタイミングでY電極に順番に所定の電圧が印加される。入力面7aにほぼ接地電位の導電体の指示体である指が触れると、指と各電極との間に静電容量が形成されるために、指が接近している部分で検出電極とX電極との間の静電容量が変化し、また検出電極とY電極との間の静電容量が変化する。
【0027】
この静電容量の変化により、X電極やY電極に与えるパルス状の電圧の立ち上がり時間が遅延する。このときの電圧の立ち上がり時間の遅延が検出電極を介してパッド検知部12で検知される。パッド検知部12で、検出電極から前記電圧の立ち上がりの遅れを検出したときに、そのときにどのX電極やY電極に電圧を印加しているかのタイミング情報を得ることで、指が接触している場所をX−Y座標上で検出できる。
【0028】
したがって、入力面7aに触れている指を動かすと、その指の移動軌跡をX−Y座標上で検出できる。また、指を入力面7aに素早く接近させて素早く離反させるいわゆるタップ操作を行ったときには、短時間で電極間の静電容量が変化するため、これをパッド検知部12で検知できる。
【0029】
図2に示すように、入力パッド7では入力面7aが複数の領域に予め区分されており、それぞれの領域に各種の操作機能が割り当てられている。それぞれの領域の区分数や領域の広さをどのように設定するか、またはそれぞれの領域にどの機能を割り当てるかは、後述するパッド用ドライバーソフト24の設定メニューを操作することで設定し変更することが可能である。図2に示す実施の形態では、入力面7aの右端に帯状からなるスクロール領域18が設定されている。なお、スクロール領域18の位置は入力面7aの右端に限られるものではなく、操作者の選択により自由に設定できる構成が好ましい。一般に、スクロールの方向が表示画面上で垂直方向(図1のY方向)となる場合には、スクロール領域18は右端又は左端に設定され、スクロールの方向が左右方向(図1のX方向)となる場合には、スクロール領域18は上端又は下端に設定される。
【0030】
図3に示す平面型の入力処理装置5は、前述のように前記入力パッド7のX電極とY電極に順番にパルス状の電圧を与える駆動回路11と、入力パッド7に設けられた検出電極での電圧の立ち上がりの変化を検出するパッド検知部12を有している。パッド検知部12で、入力面7a上での指の接触位置をX−Y座標上で特定できる。さらに、右ボタン8と左ボタン9の操作信号もパッド検知部12で検出される。
【0031】
入力処理装置5には、パッド入力信号生成部13が設けられている。パッド入力信号生成部13では、パッド検知部12で検出された入力パッド7の操作信号であるX−Y座標情報と、右ボタン8のスイッチ入力情報および左ボタン9のスイッチ入力情報とが、所定のバイト数のフォーマットデータとされて、出力インターフェイス14から出力される。出力インターフェイス14から出力される操作信号は、パーソナルコンピュータの制御部20に設けられた入力インターフェイス21に与えられる。出力インターフェイス14と入力インターフェイス21はUSBインターフェイスなどである。
【0032】
パーソナルコンピュータ1の制御部20には、各種ソフトウエアが格納されている。制御部20にはオペレーティングシステム(OS)22が格納されている。このオペレーティングシステム22により表示ドライバー23が制御されて、表示装置6に各種情報が表示される。
【0033】
制御部20には、パッド用ドライバーソフト24がインストールされており、前記入力インターフェイス21で受けられた操作信号は、パッド用ドライバーソフト24に与えられる。パッド用ドライバーソフト24では、パッド入力信号生成部13から送られた所定のフォーマットの操作信号に基づいて、座標データ信号などが生成されて、オペレーティングシステム22に通知される。
【0034】
また制御部20には処理部として機能するスクロール用アプリケーションソフト25がインストールされている。
【0035】
スクロール用アプリケーションソフト25は、行単位スクロールとページ単位スクロールを選択するためのものであり、座標データ信号から操作者が行った操作が行単位スクロールとページ単位スクロールのいずれに該当するかを判定し、それらの情報をオペレーティングシステム22に通知する。
【0036】
以下、入力処理装置の動作について説明する。
図4は本発明の実施の形態として入力処理装置の動作処理を示すフローチャート、図5は図4のフローチャート内に設けられたスクロール検知ルーチンの動作処理を示すフローチャートである。なお、以下の説明においては動作処理の各ステップを「ST」として説明する。
【0037】
制御部20では、オペレーティングシステム(OS)22が、パッド用ドライバーソフト24およびスクロール用アプリケーションソフト25を制御するとともに、所定の時間間隔でポーリングすることによって座標データ信号の監視を行っている。
【0038】
図4に示すように、座標データ信号が入力されると、スクロール用アプリケーションソフト25が動作処理を開始し(ST0)、まずST1においてWheelをWheel=0に設定する(ST1)。Wheelとは、マウスの機能におけるホイル操作を示し、ホイルの回転操作により画面のスクロール等を行うことになる。ホイル操作を行う場合にはWheel=1に、行わない場合にはWheel=0に設定する。本発明はホイル操作を伴うものではないため、ここではWheel=0に設定している。
【0039】
次に、直近のポーリングの際に、入力パッド7の入力面7aに対して新たな入力が検出されたか否かのチェックを行い(ST2)、新たな入力が検出されたyの場合にはST3へ進み、検出されなかったnの場合にはST11へ進む。
【0040】
(新たな入力が検出された場合)
ST3では、累積Xバッファ及び累積Yバッファの値をリセットする。累積Xバッファ及び累積Yバッファに格納される値は、入力面7a上を移動する指の移動量のX方向の累積値及びY方向の累積値である。
【0041】
パッド用ドライバーソフト24は、後述するように、動作処理中に指が入力面7aに触れたことが検出されると、指の累積の移動量をX方向及びY方向ごとに算出し、累積Xバッファ及び累積Yバッファの内容の更新を行う。
【0042】
さらにST4に進んで、スクローリングユニットフラグの設定をリセット(0に設定)する。なお、スクローリングユニットフラグは、後述するST19においてスクロール検知ルーチン(ST20〜ST27)を実行させるための判定用のフラグである。
【0043】
次に、ST5に進んで、指が触れた位置はスクロール領域18であるか否かのチェックを行う。このチェックは、座標データ信号に基づき行われる。このとき、指の接触位置がスクロール領域18内であるyの場合にはST6に進み、それ以外のnの場合にはST16に進む。
【0044】
ST6では、各値がキャンセルされてスクロール設定がセットされる。例えば、ST7では指が現在接触している入力面7a上の座標の位置がX=0、Y=0され、ST8ではスクロール操作フラグを「有効」に、ST9ではページスクロールフラグを「行単位」にそれぞれ設定する。
【0045】
なお、スクロール操作フラグは「有効」又は「無効」に設定することができ、「有効」とはスクロール処理を行える状態を意味し、「無効」とはスクロール処理を行わない状態を意味する。またページスクロールフラグは「行単位」又は「ページ単位」に設定することができ、「行単位」とは行単位で行うスクロール動作処理(第1の動作処理)を意味し、「ページ単位」とはページ単位で行うスクロール動作処理(第2の動作処理)を意味している。
【0046】
そして、スクロール設定のセットが終了すると、各フラグの設定状態、接触位置X、Y値及びWheelの設定状態などの情報をオペレーティングシステム22に通知し(ST10)、スクロール用アプリケーションソフト25の動作処理が終了する。
【0047】
なお、ST5において指が触れた位置がスクロール領域18以外のnの場合には、ST16でスクロール操作フラグが「無効」に、ST17でページスクロールフラグが形式的に「行単位」にそれぞれ設定され、これらの内容がST10においてオペレーティングシステム22に通知される。この場合、スクロール操作フラグが「無効」であるため、表示装置上でのスクロール処理は行われない。
【0048】
(新たな入力が検出されなかった場合)
上記ST2において、直近のポーリングでは新たな入力が検出されなかったnの場合には、ST11に進む。ST11では、直近のポーリングでは新たな入力は検出されなかったが、前回のポーリングの際に入力が検知されていたか否かのチェックを行う。そして、前回のポーリングの際に入力が検知されていたyの場合にはST12に進み、検知されていないnの場合にはST16に進む。ST12では、ST11で前回入力時の指の接触位置がスクロール領域18内であるか否かのチェックを行い、スクロール領域18内であるyの場合にはST13に進み、スクロール領域18以外のnの場合にはST16に進む。ST13ではスクロール操作フラグのチェックを行い、「有効」のyの場合にはST14に進み、有効でない、すなわち「無効」のnの場合にはST16に進む。
【0049】
ST14ではスクロール操作フラグが「有効」の場合に、累積Xバッファ及び累積Yバッファに対し、前回のポーリングの際に検知された指の接触位置のX方向の移動量及びY方向の移動量をそれぞれ加算してその内容を更新する。
【0050】
次のST15では、累積Xバッファ及び累積Yバッファに格納されている各値が、スクロールのキャンセル条件を満たすか否かのチェックを行い、条件を満たすyの場合にはST16に進み、条件を満たさないnの場合にはST18以下に進む。
【0051】
ここで、スクロールのキャンセル条件を満たさないとは、例えばX方向の移動量及びY方向の移動量の加算量(累積値)が所定量を超えない時が該当するが、その他例えば指の接触時間が所定時間に達し無い時にスクロールのキャンセル条件を満たさない場合として判定するものであってもよい。
【0052】
上記ST11、ST12、ST13及びST15においていずれもnの場合にはST16に進むが、ST16ではスクロール操作フラグを「無効」に、ST17ではページスクロールフラグが「行単位」にそれぞれ設定され、さらにST10に進んで、各フラグの設定状態、接触位置X、Yの値及びWheelの設定状態などの情報がオペレーティングシステム22に通知される。
【0053】
上記ST15において、スクロールのキャンセル条件を満たさない場合にはST18に進むが、ST18では入力面7a上に置かれた指の接触位置の座標がX=0、Y=0にセットされる。なお、このときタイマーによる計測も開始される。
【0054】
ST19ではスクローリングユニットフラグが、「0」と「1」のいずれに設定されているかのチェックを行う。スクローリングユニットフラグの設定が「0」に設定されているyの場合にはST20ないしST27のスクロール検知ルーチンに進み、「1」に設定されているnの場合にはST30以下に進む。
【0055】
図5に示すST20ないしST27のスクロール検知ルーチンは、指定時間T内に検出される指の移動量から移動速度が速いか、遅いかを検出し、その結果に基づいて行単位のスクロールとするか、ページ単位のスクロールとするかについての判定を行う判定部として機能する。
【0056】
まずST21では、ページ単位スクロールが「有効」に設定されているか否かのチェックを行い、「有効」であるyの場合にはST22に進み、「無効」であるnの場合にはST26に進んで、このスクロール検知ルーチンを抜け(ST27)、ST30以下へと進む。
【0057】
ST22では、ST18で計測を開始したタイマーの経過時間t、すなわち指が入力面7aに触れた時刻からの経過時間tが、所定の指定時間Tを超過していないか否かがチェックされる。そして、経過時間tが指定時間T内のyの場合(t≦Tの場合)にはST23に進んで移動速度の判定を行う。一方、経過時間tが指定時間Tを超過したnの場合には、移動速度の判定を行わずに、このスクロール検知ルーチンを抜け(ST27)、ST30以下へと進む。
【0058】
なお、指定時間Tは、操作者がスクロール用アプリケーションソフトの設定メニューから自由に設定しまたは変更することが可能である。
【0059】
ST23では、指の累積の移動量と所定の閾値Aとが比較される。指の累積の移動量が所定の閾値Aよりも大きいyの場合には、指の移動速度が「高速」であると判断され、ST24に進んでページスクロールフラグが「行単位」に設定され、次のST26に進む。一方、指の累積の移動量が所定の閾値Aよりも小さいnの場合には,指の移動速度が「低速」であると判断され、ST25に進んでページスクロールフラグが「ページ単位」に設定され、次のST26に進む。なお、指の累積の移動量は、累積Xバッファに格納されている値の2乗と累積Yバッファに格納されている値の2乗の和の平方根に相当する。
【0060】
なお、閾値Aは、操作者がスクロール用アプリケーションソフトの設定メニューから自由に設定しまたは変更することが可能である。
【0061】
ST26では、スクローリングユニットフラグを「1」に設定し、このスクロール検知ルーチンを抜け(ST27)、ST30以下へと進む。
【0062】
図4に示すように、ST30では、ページスクロールフラグがチェックされ、「行単位」に設定されているyの場合にはST31に進み、nの場合、すなわち「ページ単位」に設定されている場合にはST33に進む。
【0063】
ST31では累積Xバッファ及び累積Yバッファの各値が、行単位のスクロール条件を満たすか否かがチェックされる。
【0064】
そして、条件を満たすyの場合にはST32に進んで、行単位スクロールがイベント有りにセットされ、累積Xバッファ及び累積YバッファなどがリセットされてST10へ進む。また条件を満たさないnの場合には、そのままST10に進む。
【0065】
一方、ST33では、累積Xバッファ及び累積Yバッファの各値が、ページ単位のスクロール条件を満たすか否かがチェックされる。
【0066】
そして、条件を満たすyの場合にはST34に進んで、ページ単位スクロールがイベント有りにセットされ、累積Xバッファ及び累積YバッファなどがリセットされてST10へ進む。また条件を満たさないnの場合には、そのままST10に進む。
【0067】
そして、ST10では、各フラグの設定状態、接触位置X、Yの値及びWheelの設定状態などの情報をオペレーティングシステム22に通知し、スクロール用アプリケーションソフト25の動作処理を終了する。
【0068】
オペレーティングシステム22は、スクロール用アプリケーションソフト25から、ページスクロールフラグとして「行単位」が通知された場合(ST9及びST32の場合)には表示ドライバーを「行単位」でスクロールする動作処理に設定し、「ページ単位」が通知された場合(ST34)には表示ドライバーを「ページ単位」でスクロールする動作処理に設定する。表示ドライバー23は、このような設定に従い、表示装置6に表示される文字情報や画像情報などの表示内容を指の移動量や移動方向に応じて行単位又はページ単位でスクロールさせる。
【0069】
例えば、指の操作方向が上から下へ向かう方向である場合には、行単位で後方の行へスクロールされ、またはページ単位で後方のページへスクロールされる。また指の操作方向が下から上へ向かう方向である場合には、行単位で前方の行へスクロールされ、またはページ単位で前方のページへスクロールされる。
【0070】
以上のように、所定の指定時間T以内に移動した指の累積の移動量が、所定の閾値Aを超えた場合にはスクロール設定を「行単位」とし、所定の閾値Aを超えない場合にはスクロール設定を「ページ単位」とすることにより、指の移動速度を変えるという簡単な操作で行単位のスクロール又はページ単位のスクロールに設定することができる。しかも、異なるスクロールを選択するに場合であっても、指の操作は同じスクロール領域18に対して行うものであるため、行単位のスクロールとページ単位のスクロールとを円滑に切り換えることができる。このためスクロール操作および切り替え操作を効率良く行うことが可能となる。
【0071】
ところで、行単位のスクロールとページ単位のスクロールを検知するための要素は、上記のような指の移動量以外に、指と入力面7aとの接触面積を用いることもできる。指と入力面7aとの接触面積は、座標データ信号に基づいて算出することが可能である。そして、例えば検出された接触面積が、所定の閾値面積を超えた場合をページ単位のスクロールであると検知し、所定の閾値面積を超えなかった場合を行単位のスクロールであると検知することで、上記同様に行単位のスクロール又はページ単位のスクロールに設定することができる。
【0072】
また行単位のスクロール又はページ単位のスクロールに設定する場合に、上記のような移動量に基づく設定方法に、接触面積に基づく設定方法を加えるようにしてもよい。
【0073】
この場合、行単位のスクロールとページ単位のスクロールの判定を異なる基準で行うことが可能となるため、操作者が行った操作が、行単位のスクロールを意図するものであるのか、ページ単位のスクロールを意図するものであるかの検出精度を高めることが可能となる。
【0074】
また上記においては、行単位のスクロールとページ単位のスクロールとの検出を、同じスクロール領域18で操作した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものでない。例えば、行単位のスクロールの検出については入力面7aの全領域で検出し、ページ単位のスクロールの検出についてはスクロール領域18のみで検出する構成としてもよい。またこの逆の構成であってもよい。
【0075】
あるいは、行単位のスクロールのためのスクロール領域とページ単位のためのスクロール領域とを別々に設定し、各スクロール領域ごとに検知するようにしてもよい。このようにスクロール領域を分けたものでは、操作者が行った操作が行単位のスクロールを意図するものであるのか、ページ単位のスクロールを意図するものであるかを確実に検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 パーソナルコンピュータ
6 表示装置
7 入力パッド
7a 入力面
8 右ボタン
9 左ボタン
12 パッド検知部
13 パッド入力信号生成部
18 スクロール領域
22 オペレーティングシステム
23 表示ドライバー
24 パッド用ドライバーソフト
25 スクロール用アプリケーション(処理部)
A 閾値
T 指定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力面を備えた入力パッドと、前記入力面に触れた指示体の検知を行う検知部と、前記検知部から得られる入力信号に基づいて表示装置に表示内容を表示する制御部と、が設けられた入力処理装置において、
前記制御部には、入力信号に基づいて前記表示内容をスクロールさせる処理部と、前記指示体の移動速度を検出して予め設定した閾値と比較して判定する判定部が設けられており、
前記処理部が、前記表示内容をスクロールさせる第1の動作処置及び第2の動作処置を有しており、前記判定部での判定結果に基づいて、前記表示内容が前記第1の動作処置と前記第2の動作処理の一方を用いてスクロールさせられることを特徴とする入力処理装置。
【請求項2】
前記入力面にスクロール領域が設けられており、前記指示体からの操作が、前記スクロール領域に与えらた場合に、前記表示内容がスクロールさせられる請求項1記載の入力処理装置。
【請求項3】
前記入力面にスクロール領域が設けられており、前記指示体からの操作が前記入力面のいずれかである場合には前記第1の動作処理を用いたスクロールが行われ、前記指示体からの操作が前記スクロール領域のみに与えらた場合に前記第2の動作処理を用いたスクロールが行われる請求項1記載の入力処理装置。
【請求項4】
前記判定部の判定結果が「低速」の場合に、前記表示内容が前記第1の動作処理を用いてスクロールさせられ、前記判定結果が「高速」の場合に、前記表示内容が前記第2の動作処理を用いてスクロールさせられる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の入力処理装置。
【請求項5】
前記第1の動作処理が行単位でのスクロールであり、前記第2の動作処理がページ単位でのスクロールである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の入力処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、パーソナルコンピュータの制御部に格納されるソフトウエアによって実行され、前記判定部は前記処理部に含まれるソフトウエアによって実行される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の入力処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−262525(P2010−262525A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113696(P2009−113696)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】