説明

入力操作装置

【課題】 プッシュボタンと回転操作体とが配置されている入力操作装置において、プッシュスイッチとスライドスイッチとを平面状の一基板上に配置可能にすることで、製造コストを低減する。
【解決手段】 入力操作装置1は、プッシュスイッチ5を押圧するためのプッシュボタン4と、プッシュボタン4の操作面11側から回転操作可能な回転操作体3と直線方向にスライドするスライドスイッチ6と、運動変換部材7とを備える。運動変換部材7は、回転操作体3の回転運動をプッシュスイッチ5の押圧方向に垂直な面上に沿う直線運動に変換し、スライドスイッチ6をスライドさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチと回転操作体とを備える入力操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プッシュスイッチと、プッシュスイッチを押圧するためのプッシュボタンと、プッシュボタンの操作面側から回転操作可能な回転操作体とを備える入力操作装置が知られている(特許文献1)。この入力操作装置は、回転操作体の回転中心軸線に垂直な面がプッシュボタンの押圧方向に垂直な面に対して直交するように、プッシュボタンと回転操作体とが配置されている。
【0003】
入力操作装置は、回転操作体の回転が伝達されるコード板を備え、このコード板は、周縁部に4つの切欠きを有する十字状に形成されている。更に、入力操作装置は第1基板を備え、第1基板には、凹溝に対向配置された発光素子と受光素子とを有するフォトインタラプタが配置されている。この入力操作装置は、コード板の周縁部が、凹溝内を回転することによって、回転操作体の回転量や回転方向を検出している。すなわち、コード板及びフォトインタラプタによって回転を検出する回転検出部を構成している。また、入力操作装置は、プッシュスイッチを配置する第2基板を備えており、回転検出部用の基板(第1基板)とプッシュスイッチ用の基板(第2基板)との2つの基板を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−98044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の入力操作装置のように、プッシュスイッチ用と回転検出部用に2つの基板を設けると、電気信号の通信のためのハーネス等で基板間を接続する必要が生じて構造及び組立が複雑になり、製造コストが増加する。
【0006】
また、複数入力型の操作装置においては、製品の販売戦略などの理由により、入力部としてスライドレバーと回転操作体のいずれを用いるかをユーザの好みによって選択可能にすることも考えられる。このような場合において、回転検出部とスライドスイッチのいずれにするかによって基板の構成を変更することは、設計、部品の調達及び製造ラインに影響を与え、製造コスト増加の一因となる。このため、部品を共通化することで製造コストを抑制することが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、回転操作体の回転中心軸線に垂直な面がプッシュボタンの押圧方向に垂直な面に対して直交するようにプッシュボタンと回転操作体とが配置された入力操作装置において、プッシュスイッチとスライドスイッチとを平面状の一基板上に配置可能として製造コストを低減できる入力操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プッシュスイッチを押圧するためのプッシュボタンと、該プッシュボタンの操作面側から回転操作可能な回転操作体とを備え、回転操作体の回転中心軸線に垂直な面がプッシュボタンの押圧方向に垂直な面に対して直交するようにプッシュボタンと回転操作体とを配置した入力操作装置であって、回転操作体の回転運動をプッシュスイッチの押圧方向に垂直な面に沿う直線運動に変換する運動変換部材と、変換された直線運動によってスライドするスライドスイッチとを備え、運動変換部材は、プッシュスイッチとスライドスイッチとを平面状の一基板上に配置するように設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、運動変換部材によって、回転操作体の回転運動がプッシュスイッチの押圧方向に垂直な面上に沿う直線運動に変換される。このため、プッシュスイッチとスライドスイッチは共に平面状の一基板上に配置できる。従って、入力操作装置の製造コストを抑制できる。更に、基板の数を一つにすることで基板を取り付けるスペースを減らすことができ、各部材の配置の自由度が増えて製品を小型化しやすくなる。なお、本発明において、「直交」とは正確に90度である必要はなく、90度の近傍の角度であってもよい。
【0010】
更に、回転操作体の回転操作によってスライドスイッチをスライドできるので、回転操作体に代えて、所謂スライドレバーを用いる入力操作装置と同じ構成の基板を用いることができる。このため、スライドレバーと回転操作体のいずれを用いるかをユーザが好みによって選択可能とした場合でも、設計、部品の調達及び製造ラインに対する影響を抑えて製造コストを低減することができる。
【0011】
本発明において、回転操作体は板状に形成され、この板状の平面に、回転操作体が回転するときスライドスイッチのスライド方向に移動可能な突部が設けられる。運動変換部材は、この突部が挿入される長孔を有することが好ましい。この場合、回転操作体が回転するとき、長孔に挿入された突部が、スライドスイッチのスライド方向に直交する軸方向に摺動自在とする。この構成によれば、運動変換部材の長孔に挿入された突部は、回転操作体の回転によりスライドスイッチをスライドさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の入力操作装置の正面図。
【図2】(a)は図1のA−A線断面図、(b)は図1のB−B線断面図。
【図3】回転操作体及び運動変換部材の位置を示す図で、(a)は回転操作体が正面に位置しているとき、(b)は回転操作体が正面から見て左側に回転操作されたとき、(c)は回転操作体が正面から見て右側に回転操作されたときの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態の入力操作装置の構成を説明する。
【0014】
本実施形態の入力操作装置1は、車両に搭載される空調装置の作動を設定する装置である。入力操作装置1は、基板2と、回転操作体3と、複数のプッシュボタン4と、複数のプッシュスイッチ5と、スライドスイッチ6と、運動変換部材7とを備える。
【0015】
入力操作装置1は、合成樹脂製の直方体形状の外郭を有し、入力操作装置1の外郭の1つの面(正面)を操作面11としている。入力操作装置1は、車両のインストルメントパネル内に、操作面11のみが露出するように埋め込まれている。操作面11には、回転操作体3と複数のプッシュボタン4とが配置されている。プッシュボタン4は、操作面11側から操作面11とは反対側の面(以下、「背面」という)12側に向かって押圧可能に配置されている。回転操作体3は、回転操作体3の回転中心軸線Xに垂直な面がプッシュボタン4の押圧方向に垂直な面に対して直交するように配置されている。
【0016】
操作者は、回転操作体3を回転操作することで、空調装置の設定温度を調整でき、プッシュボタン4を操作することで、フロントガラスの霜取りを行なうか否か、リアガラスの霜取りを行なうか否か等を空調装置に設定できる。
【0017】
基板2は、平面状に形成されており、入力操作装置1内の背面12側に、操作面11に平行になるように固定されている。基板2には、プッシュスイッチ5の押圧方向(操作面11側から背面12側に向かう方向)に垂直な面が基板2の面に平行になるように半田付け等によって実装(配置)されている。
【0018】
プッシュスイッチ5は、操作者がプッシュボタン4を操作面11側から背面12側に向かって押動することで、同じ方向に向かって押動し、操作者がプッシュボタン4の押動を止め、プッシュボタン4から指などを離すことで押動前の位置に戻る。このように、操作者は、プッシュボタン4の押動操作によりプッシュスイッチ5を操作できる。
【0019】
また、基板2には、回転操作体3を保持するための細長い板状の支持部21が、支持部21の長手方向が基板2の面に垂直になるように固定されている。支持部21は、長手方向の基板2とは反対側の端部すなわち操作面11側の端部の両面に円形の突起21a,21bを有する。更に、基板2には、スライドスイッチ6が半田付け等によって実装(配置)されている。
【0020】
スライドスイッチ6は、金属製の端子(図示省略)を有し直線方向に移動(スライド)するスライド部61と、金属製の端子(図示省略)を複数有し基板2に固定された固定部62とで構成されている。スライドスイッチ6は、スライドする方向が基板2に平行且つ上面及び下面に平行になるように、すなわちプッシュスイッチ5の押圧方向に垂直な面上に沿うように基板2に実装(配置)されている(スライド方向は、図2(a)の左右方向となる)。スライドスイッチ6は、スライド部61がスライドした位置に応じてスライド部61の端子が固定部の複数の端子のいずれか1つの端子と導通可能になる。すなわち、スライド部61の位置に応じてスライド部61の端子と導通する固定部62の端子が変わる。
【0021】
このため、固定部62の各端子に機能又は状態を予め割り当てておくことで、導通した端子すなわちスライド部61のスライド位置に応じて入力操作装置1の作動を変更することができる。本実施形態では、各端子に空調装置の設定温度を段階的に割り当てており、スライド部61のスライド位置に応じて空調装置の設定温度を変更できるようにしている。
【0022】
回転操作体3は、入力操作装置1の上面13及び下面14に平行になるように入力操作装置1内に配置される。回転操作体3は、合成樹脂で中空の扇形板に形成されている。回転操作体3は、扇形の円弧側の側面の一部分が操作面11から突出するように配置されており、操作者がこの突出した部分を回転操作可能にしている。回転操作体3は、扇形の円弧側とは反対側の側面が開口している。この開口部から基板2に固定された支持部21の操作面11側の端部(突起21a,21bを有する側の端部)が挿入されている。
【0023】
回転操作体3は、上面13及び下面14との平行を保ったまま、入力操作装置1の正面から見て左右方向に回転操作可能となるように回転中心が設定されている。回転操作体3の上面及び下面には、この回転中心を中心にすると共に、挿入された支持部21の突起21a,21bが嵌合可能な円形の回転中心孔31a,31bが両面に穿設されており、これらの回転中心孔31a,31bに突起21a,21bが回転自在に嵌合されている。回転操作体3には、スライドスイッチ6側の面且つ扇形の径方向の中程に、扇形に平行な円形の接続部32が一体に形成されている。接続部32の中心部には、スライドスイッチ6に向かって突出する円形の突部32aが接続部32と一体に形成されている。
【0024】
運動変換部材7は、第1接続部71と第2接続部72とが合成樹脂で一体に構成されている。第1接続部71は、スライドスイッチ6のスライド部61と接続されており、運動変換部材7がスライドすることでスライド部61をスライドすることができる。第2接続部72は、回転操作体3の接続部32の突部32aが基板2に垂直な方向に摺動自在な長孔72aが設けられており、長孔72aに突部32aが挿入されている。長孔72aは突部32aが基板2に垂直な方向に摺動するように、長孔の短手方向の長さは突部32aの直径にほぼ等しくなるように形成されている。また、長孔72aは、長手方向の操作面11側の一端が開口している。
【0025】
次に、以上のように構成された入力操作装置1の作動について説明する。図3は、回転操作体3と運動変換部材7の位置関係を例示する図であり、図3(a)は回転操作体3が正面(操作面11)に位置しているときを示し、図3(b)は回転操作体3が入力操作装置1を正面から見て左側に回転操作されたときを示し、図3(c)は回転操作体3が入力操作装置1を正面から見て右側に回転操作されたときを示す。
【0026】
回転操作体3の回転に応じて突部32aも弧を描くように移動する。従って、回転操作体3が回転していない状態(図3(a)の状態)に比べ、回転操作体3が入力操作装置1を正面から見て左右方向のいずれかに回転操作された状態(図3(b)又は(c))では、基板2に対して水平すなわちプッシュスイッチ5の押圧方向に垂直な方向に移動すると共に、基板2に対して垂直な方向にも移動するため、突部32aと基板2との距離が短くなる。
【0027】
回転操作体3が回転することで、突部32aが長孔72aの側面をプッシュスイッチ5の押圧方向に垂直な面上に沿うように押動し、運動変換部材7が押動された方向にスライドする。このとき、突部32aは、回転することで基板2との距離が変化するが、長孔72aの長手方向側面に沿うように、すなわち基板2に垂直な方向に長孔72a内を摺動する。このように、運動変換部材7、長孔72a及び突部32aによって、回転操作体3の回転運動を、プッシュスイッチ5の押圧方向に垂直な面上に沿う直線運動に変換される。従って、回転操作体3の回転操作に応じて、運動変換部材7がプッシュスイッチ5の押圧方向に垂直な面上に沿うように直線移動し、スライドスイッチ6がスライドされる。
【0028】
以上のように、本実施形態の入力操作装置1は、回転操作体3が回転すると、運動変換部材7によって回転運動がプッシュスイッチ5の押圧方向に垂直な面上に沿うように直線運動に変換され、スライドスイッチ6をこの直線運動と同一方向にスライドすることができる。従って、回転操作体3の回転中心軸線Xに垂直な面がプッシュボタン4の押圧方向に垂直な面に対して直交するように、プッシュボタン4と回転操作体3とが配置された入力操作装置1において、プッシュスイッチ5とスライドスイッチ6とを基板2上すなわち平面形状の一基板上に配置することができ、入力操作装置1の構造及び組立を容易にできる。更に、基板の数を一つにすることで基板を取り付けるスペースを減らすことができ、各部材のレイアウトの自由度が向上し、製品を小型化しやすくなる。
【0029】
また、回転操作体3の回転操作によってスライドスイッチ6をスライドできるため、回転操作体3の代わりに所謂スライドレバーを用いる入力操作装置と同じ構成の基板2を用いることができる。このため、スライドレバー及び回転操作体のいずれを用いるかをユーザーが好みによって選択可能にした場合であっても、設計、部品の調達、及び製造ラインに与える影響を抑えて製造コストが抑制できる。ここで、スライドレバーとは、例えば、棒状又は板状に形成され、一端を操作面11から突出させ、この突出した一端を入力操作装置1を正面から見て左右方向にスライド操作可能な操作体を指す。この場合には、スライドレバーの他端がスライドスイッチ6に接続されており、スライドレバーのスライド操作に応じてスライドスイッチ6がスライドするように構成される。
【0030】
なお、本実施形態の長孔72aは、長手方向の操作面11側の一端が開口しているが開口していなくてもよい。長孔72aは、回転操作体3の回転による突部32aの基板2に垂直な方向の移動を妨げないように設けられていればよい。
【符号の説明】
【0031】
1…入力操作装置、2…基板、3…回転操作体、4…プッシュボタン、5…プッシュスイッチ、6…スライドスイッチ、7…運動変換部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュスイッチ(5)と、該プッシュスイッチ(5)を押圧するためのプッシュボタン(4)と、前記プッシュボタン(4)の操作面(11)側から回転操作可能な回転操作体(3)とを備え、前記回転操作体(3)の回転中心軸線(X)に垂直な面が前記プッシュボタン(4)の押圧方向に垂直な面に対して直交になるように前記プッシュボタン(4)と前記回転操作体(3)とが配置された入力操作装置であって、
前記回転操作体(3)の回転運動を前記プッシュスイッチ(5)の押圧方向に垂直な面上に沿う直線運動に変換するための運動変換部材(7)と、
前記運動変換部材(7)に変換された直線運動によってスライドするスライドスイッチ(6)とを備え、
前記運動変換部材(7)は、前記プッシュスイッチ(5)と前記スライドスイッチ(6)とを平面状の一基板上(2)に配置可能に設けられていることを特徴とする入力操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力操作装置において、
前記回転操作体(3)は板状に形成され、該板状の平面に突部(32a)を備え、
前記突部(32a)は、前記回転操作体(3)が回転するときに、前記スライドスイッチ(6)のスライド方向に沿って移動するように設けられ、
前記運動変換部材(7)は、前記突部(32a)が挿入される長孔(72a)を有し、前記回転操作体(3)が回転したときに、該長孔(72a)に挿入された突部(32a)が前記スライドスイッチ(6)のスライド方向に直交する軸方向に摺動自在であることを特徴とする入力操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169229(P2012−169229A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31334(P2011−31334)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】