説明

入力装置

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される入力装置に関し、簡易な構成で、良好な操作感触が得られるものを提供することを目的とする。
【解決手段】中核部13から複数の突起部14が外周に向けて放射状に突出した磁性体12を、ボール11内に配設すると共に、このボール11の下方部分を収容して取り囲むように略円筒状の磁石18を配置し、さらにその円筒状の磁石18内のボール11下方位置に磁気検出素子19がボール11に対向して配置されたものにすることによって、ローラ等のボールに当接する部品がないため、その当接箇所での塵埃の噛み込みなどが防止されて、長期間使用した場合にも、塵埃や汚れ等により操作感触が損なわれることがなく、簡易な構成で、良好な感触での操作が可能な入力装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作に用いられる入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の各種電子機器の高機能化や小型化が進むに伴い、これらの操作に用いられる入力装置にも、良好な操作感触で確実な操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来の入力装置について、図6を用いて説明する。
【0004】
図6は従来の入力装置の部分正面図であり、同図において、1は絶縁樹脂製のボール、2Aと2Bは円柱状で絶縁樹脂製のローラで、ボール1が絶縁樹脂製のケース(図示せず)に回転可能に装着されると共に、一対のローラ2Aと2Bがボール1外周の直交方向に当接している。
【0005】
また、3Aと3BはS極とN極が所定の角度ピッチで交互に着磁されたリング磁石で、複数のリング磁石3Aと3Bが一対のローラ2Aと2Bの端部に、各々固着されている。
【0006】
さらに、4は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、ボール1の下方に配置されると共に、この上面に実装されたホール素子等の複数の磁気検出素子5Aと5Bが、一対のローラ2Aと2B端部のリング磁石3Aと3Bと所定の間隙を空けて対向配置されて、入力装置が構成されている。
【0007】
そして、このように構成された入力装置が、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の操作部(図示せず)に、ボール1上部を突出させて装着されると共に、複数の磁気検出素子5Aと5Bが配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0008】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子等の表示手段(図示せず)に、氏名や曲名等の複数のメニューやカーソル(図示せず)が表示された状態で、ボール1上部を指で左右方向へ回転操作すると、これに当接したローラ2Aが回転し、端部のリング磁石3Aも回転して、リング磁石3Aの磁気が変化し、これを対向した磁気検出素子5Aが検出して、所定のパルス信号が磁気検出素子5Aから機器の電子回路に出力される。
【0009】
そして、機器の電子回路がこのパルス信号から、ボール1の回転方向と回転角度を検出し、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば左右方向へ移動させる。
【0010】
また、ボール1を上記とは直交方向の前後方向へ回転操作した場合には、ローラ2Bが回転して、リング磁石3Bの磁気が変化し、これを対向した磁気検出素子5Bが検出して、パルス信号が機器の電子回路に出力され、カーソル等が例えば上下方向へ移動する。
【0011】
さらに、ボール1を上記以外の斜め方向に回転操作した場合には、ローラ2Aも2Bも回転して、リング磁石3Aと3Bの磁気が変化し、これを磁気検出素子5Aと5Bが検出して、二つのパルス信号が機器の電子回路に出力され、カーソル等が例えば右上方向や左下方向へ移動する。
【0012】
つまり、機器の表示手段を見ながら、ボール1を所定方向へ回転操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を所定方向へ移動させ、氏名や曲名等の複数のメニューの選択が行えるように構成されているものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2007−26026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来の入力装置においては、ボール1を回転操作することによって、これに直交方向に当接した一対のローラ2Aと2Bが回転する構成となっているため、長期間使用しているうちに、塵埃や汚れ等がボール1に付着し、これらがボール1とローラ2Aや2Bの当接部に溜まると、ボール1の回転操作に引掛り感や擦れ感が生じ、良好な操作感触が得づらくなってしまうという課題があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、良好な操作感触が得られる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0017】
本発明の請求項1に記載の発明は、中核部から複数の突起部が外周に向けて放射状に突出した磁性体を、ボール内に配設すると共に、このボールの一部を収容して取り囲むように略円筒状の磁石を配置し、さらにその円筒状の磁石内のボール下方位置に磁気検出素子をボールに対向配置して入力装置を構成したものであり、ローラ等のボールに当接する部品がないため、その当接箇所への塵埃の噛み込みなどが防止されて、長期間使用した場合にも、塵埃や汚れ等によりボール回転が阻害され難いものにできる。このため操作感触が損なわれることがなく、簡易な構成で、良好な感触での操作が可能な入力装置を得ることができるという作用を有する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、複数の磁気検出素子を所定間隔で並列に配置したものであり、ボールの回転操作によって、複数の磁気検出素子から位相差のある二つの検出信号が出力されるため、ボールの回転方向と回転角度の検出を確実に行うことができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で、良好な操作感触の入力装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0021】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による入力装置の断面図、図2は同部分斜視図であり、同図において、11はABSやポリカーボネート、ウレタン等の絶縁樹脂製のボールで、このボール11内には磁性体12が配設されている。磁性体12の形状としては、略球状の中核部13から略円柱状の複数の、例えば24個の突起部14が外周に向けて放射状に突出して構成されたものとなっている。なお、磁性体12の材質は、パーマロイや鉄、Ni−Fe合金等からなる素材が好ましいが、特に限定はされない。
【0022】
また、15は略箱状でポリスチレンやABS等の絶縁樹脂製の上ケース、16は同じく下ケースで、これらの中央部には内周が逆方向に傾斜した開口孔が各々設けられると共に、この開口孔内にボール11が上部を上ケース15上面から突出させて、回転可能に装着されている。
【0023】
そして、17は紙フェノールやガラス入りエポキシ等の配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、ボール11下方の配線基板17上面には、略円筒状でフェライトやNd−Fe−B合金等の磁石18が、N極を上方向、S極を下方向にして載置されている。ボール11の下方部分は、磁石18内に収容されて周囲は磁石18で取り囲まれている。なお、磁石18は、N極とS極とを上下逆に載置してもよい。
【0024】
さらに、磁石18内の配線基板17上面位置には、複数の磁気検出素子19が実装され、この複数の磁気検出素子19がボール11と所定の間隙を空けて対向配置されている。磁気検出素子19としては、水平方向の磁気を検出するGMR素子や、垂直方向の磁気を検出するホール素子等を用いることができる。
【0025】
また、この複数の磁気検出素子19は、図2に示すように、磁気検出素子19Aと19Bが左右方向に、磁気検出素子19Cと19Dが前後方向に、各々所定間隔で並列に配置されると共に、配線基板17下面には鋼板等のヨーク20が設けられ、これらの上面を下ケース16が覆って、入力装置が構成されている。なお、上記ヨーク20は、例えば磁石18のN極からの磁気が、ボール11内の磁性体12、ヨーク20の順で磁石18のS極に戻る磁気ループが構成されるように配したものである。
【0026】
そして、このように構成された入力装置が、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器の操作部(図示せず)に、ボール11上部を突出させて装着されると共に、複数の磁気検出素子19が配線パターン等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0027】
以上の構成において、例えば機器の液晶表示素子等の表示手段(図示せず)に、氏名や曲名等の複数のメニューやカーソル(図示せず)が表示された状態で、ボール11上部を指で左右方向、例えば図3(a)の部分正面図に示すように、右方向へ回転操作すると、ボール11内に配設された磁性体12の突起部14Aが磁気検出素子19Aに近づく。
【0028】
そして、図3(b)に示すように、突起部14Aが磁気検出素子19Aに最接近した状態では、ボール11の下方部分を収容して取り囲むように配置された略円筒状の磁石18からのN極の磁気を、例えば磁石18に最も近い突起部14Bと14Cとから中核部13,突起部14Aを介して磁気検出素子19Aが検出する。このとき、ボール11の下方部分を磁石18内に収容して取り囲むようにしておくと、N極をボール11に近接させて配置し易くなる上、磁石18におけるN極とS極との間の距離も自然に大きくなるので、上述した磁気ループが安定して得られるものにできて好ましい。
【0029】
また、このままボール11の回転操作を続けた場合には、図3(c)に示すように、突起部14Aは磁気検出素子19Aから離れ、次に突起部14Bが磁気検出素子19Aに近づき、図3(d)に示すように、突起部14Bが磁気検出素子19Aに最接近する。
【0030】
そして、この状態では、磁石18からのN極の磁気を、例えば磁石18に最も近い突起部14Aと14Dとから中核部13,突起部14Bを介して磁気検出素子19Aが検出する。
【0031】
つまり、ボール11が図3(a)から図3(d)の状態まで回転する間に、磁気検出素子19Aは、N極の磁気を突起部14Aが最接近した時に1回検出し、この後、一旦磁気が弱まり、突起部14Bが最接近すると、N極の磁気をさらに1回検出する。
【0032】
そして、この結果、磁気検出素子19Aからは、図4(a)の波形図に示すような、2周期分の検出信号L1が機器の電子回路に出力される。
【0033】
また、この時、磁気検出素子19Aと並列に配置された磁気検出素子19Bも、同様に磁石18からのN極の磁気を検出するが、磁気検出素子19Bは磁気検出素子19Aに対し、所定間隔でややずれた位置に配置されているため、図4(b)に示すように、磁気検出素子19Bから出力される検出信号L2は、上記検出信号L1に対し時間Tだけずれた、いわゆる位相差のあるものとなる。
【0034】
なお、ボール11を上記とは逆に左方向へ回転操作した場合には、上記とは逆に検出信号L2に対し検出信号L1が時間Tだけずれた、位相差のある二つの検出信号が磁気検出素子19Bと19Aから出力される。
【0035】
そして、機器の電子回路がこの位相差のある二つの検出信号から、検出信号L1とL2のどちらが先に立ち上ったかによってボール11の回転方向を、その立ち上がった回数によってボール11の回転角度を各々検出し、機器の表示手段に表示されたメニュー上のカーソル等を、例えば右あるいは左方向へ移動させる。
【0036】
また、ボール11を上記とは直交方向の前後方向へ回転操作した場合には、配線基板17上面に磁気検出素子19Aや19Bとは直交方向の、前後方向に所定間隔で並列に配置された磁気検出素子19Cと19Dが、上記と同様に複数の突起部14から、磁石18からの磁気を検出し、位相差のある二つの検出信号が出力されて、カーソル等が例えば上下方向へ移動する。
【0037】
さらに、ボール11を上記以外の斜め方向に回転操作した場合には、左右方向の磁気検出素子19Aと19B、及びこれらとは直交方向の前後方向の磁気検出素子19Cと19Dから、位相差のある二つの検出信号が各々機器の電子回路に出力され、カーソル等が例えば右上方向や左下方向へ移動する。
【0038】
すなわち、機器の表示手段を見ながら、ボール11を所定方向へ回転操作することによって、表示手段に表示されたカーソル等を所定方向へ移動させ、氏名や曲名等の複数のメニューの選択が行えるように構成されているが、本発明の入力装置においては、中核部13から複数の突起部14が外周に向けて放射状に突出した磁性体12がボール11内に配設され、このボール11と所定の間隙を空けて対向配置された磁気検出素子19が、磁性体12を介して略円筒状の磁石18の磁気を検出して、ボール11の回転方向と回転角度を検出するようになっている。
【0039】
つまり、ボール11は上ケース15と下ケース16の開口孔内に回転可能に装着され、他にローラ等のボール11に当接する部品はないため、塵埃などの噛み込みなどの防止も図れて、例えば長期間使用しているうちに、塵埃や汚れ等がボール11に付着し、これらがボール11と開口孔の隙間から入力装置内に入ったとしても、下ケース16や配線基板17上面に付着するだけで、これらによってボール回転が阻害されることもなく、ボール11の回転操作の感触が損なわれることがないように構成されている。なお、ボール11が回転する限り、上記操作状態の検出は可能である。
【0040】
したがって、主な構成部品は磁性体12が配設されたボール11と、ボール11の下方部分を収容して取り囲むように配置された磁石18と磁気検出素子19という簡易な構成で入力装置が形成されると共に、長期間使用した場合にも、引掛り感や擦れ感のない、滑らかで良好な操作感触を得ることが可能なようになっている。
【0041】
また、ボール11内に配設された磁性体12は、上述したように磁石18の磁気を伝えはするが、それ自体は磁気を帯びてはいないため、例えば、屋外で使用した際に砂鉄等がボール11に付着することはなく、また、入力装置の近傍に磁気カード等を置いた場合にも、これらに影響を及ぼすこともない。
【0042】
さらに、左右方向の磁気検出素子19Aと19B、及びこれらとは直交方向の前後方向の磁気検出素子19Cと19Dが各々所定間隔で並列に配置され、これらの磁気検出素子から位相差のある二つの検出信号L1やL2等が出力されることによって、確実なボール11の回転方向と回転角度の検出を行えるように構成されている。
【0043】
なお、以上の説明では、ボール11の左右方向に磁気検出素子19Aと19Bを、前後方向に磁気検出素子19Cと19Dを、各々並列に配置した構成について説明したが、図5の部分斜視図に示すように、各々の磁気検出素子の間隔を広げ、左右方向に磁気検出素子19Aと19Bを、前後方向に磁気検出素子19Cと19Dを、各々配置した構成としてもよい。
【0044】
このように本実施の形態によれば、中核部13から複数の突起部14が外周に向けて放射状に突出した磁性体12を、ボール11内に配設すると共に、このボール11の下方部分を収容して取り囲むように略円筒状の磁石18を配置し、さらにその円筒状の磁石18内のボール11下方位置に磁気検出素子19をボール11に対向させて配置した構成にすることによって、ローラ等のボールに当接する部品がないため、長期間使用した場合にも、塵埃や汚れ等により操作感触などが損なわれることがなく、簡易な構成で、良好な感触での操作が可能な入力装置を得ることができる。
【0045】
なお、以上の説明では、ボール11内に配設された磁性体12を、略球状の中核部13から略円柱状の複数の突起部14が外周に向けて放射状に突出した構成について説明したが、中核部13を中空とした構成や、あるいは中核部13に代えて、複数の突起部14をボール11の中心方向へ延出させ、中心部で連結した構成等、複数の突起部14を連結するものであれば、中核部を様々な形状に構成しても、本発明の実施は可能である。
【0046】
さらに、磁性体12の複数の突起部14を略円柱状のものとして説明したが、四角柱や多角柱、あるいは円錐状や角錐状のもの等を用いても、本発明の実施を行うことは可能である。
【0047】
なお、以上には、ボール11の下方部分を円筒状の磁石18内に収容して取り囲んだ構成のものを説明した。この構成であれば、各部材を配設し易くて好ましいが、上述した磁気ループが構成されるならば、円筒状の磁石内に収容されて上記磁石で取り囲まれるボール位置は下方部分に限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明による入力装置は、簡易な構成で、良好な操作感触のものを実現できるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態による入力装置の断面図
【図2】同部分斜視図
【図3】同部分正面図
【図4】同波形図
【図5】同部分斜視図
【図6】従来の入力装置の部分正面図
【符号の説明】
【0050】
11 ボール
12 磁性体
13 中核部
14、14A、14B、14C、14D 突起部
15 上ケース
16 下ケース
17 配線基板
18 磁石
19、19A、19B、19C、19D 磁気検出素子
20 ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに回転可能に装着されたボールと、このボール内に配設された磁性体と、上記ボールの一部を収容して取り囲むように配置された略円筒状の磁石と、上記ボールと所定の間隙を空けて対向配置された磁気検出素子からなり、上記磁性体を中核部から複数の突起部を外周に向けて放射状に突出させて形成した入力装置。
【請求項2】
複数の磁気検出素子を所定間隔で並列に配置した請求項1記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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