説明

入力装置

【課題】薄型化を可能とすると共に、一端を押圧しても、他端側が浮きにくい入力装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも2以上の固定接点8を有する基板7に対向して配置されるキートップ2と、キートップ2と基板7との間に配置される弾性部材3とを備え、弾性部材3は、固定接点8と離間してキートップ2の両側に接続すると共に固定接点8に近づく方向および遠ざかる方向の両方向に弾性変形可能な少なくとも2以上の押圧部4を有し、押圧部4は、その弾性変形によって固定接点8と接離する導電部9を有し、キートップ2と基板7との間の領域における2つの押圧部4の間に、キートップ2から基板7の方向若しくはその方向の逆方向に突出する1以上の凸部6を有し、凸部6は、キートップ2若しくは基板7から、固定接点8と導電部9との間よりも小さい距離の間隙で離間して配置されている入力装置1としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、映像機器あるいは音響機器等の電子機器や、車両等における入力装置として、いわゆるシーソースイッチが用いられている。シーソースイッチは、一方のスイッチをオンにしている状態では、他方のスイッチがオンにならないようなスイッチである。
【0003】
例えば、図12は、従来のシーソースイッチ50の構成を示す断面図である。シーソースイッチ50は、回路基板51に設けられた一対の固定接点52を有する。固定接点52をそれぞれ覆うように、ドーム状のラバースイッチ53が配置されている。ラバースイッチ53の内側であって、固定接点52と対向する位置には、導電部54がそれぞれ設けられている。2つのラバースイッチ53の中間には、支持部55が立設されている。支持部55には、円孔状の軸受け56が形成され、その軸受け56には、揺動部材57の揺動軸58が挿通されている。
【0004】
上述のシーソースイッチ50では、揺動部材57が揺動軸58を中心に揺動可能に形成されている。したがって、図13に示すように、揺動部材57の一端側を押圧することで、揺動部材57の下面に設けられた押圧部59が、押圧部59の下方に配置されたラバースイッチ53を押圧する。すると、押圧されたラバースイッチ53が座屈し、固定接点52と導電部54が電気的に接続される(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−177127公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されるシーソースイッチは、以下のような問題を有している。それは、更なる薄型化が要求されている電子機器において、薄型化しにくいという問題である。なぜなら、特許文献1に開示されるシーソースイッチ50では、軸受け56等の部材が揺動部材57と回路基板51との間に介在するためである。また、軸受け機構を有するために、部品点数が多くなり、かつ、それに起因して製造工程が複雑になるという問題もある。
【0007】
また、特許文献1に開示されるシーソースイッチ50は、一方を太矢印の方向に押圧した際に、他端側が、一方が押圧されていない状態よりも押圧量分(図中のΔの分)だけ浮き上がってしまうという問題を有する。したがって、一方を押圧すると、シーソースイッチを有する電子機器の筐体から他端側の揺動部材が飛び出してしまい、筐体と揺動部材との間に空間が生じて、電子機器の内部が見えてしまう等の問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、薄型化を可能とすると共に、一方を押圧しても他端側が浮きにくい入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る入力装置の一側面は、少なくとも2以上の固定接点を有する基板に対向して配置されるキートップと、キートップと基板との間に配置される弾性部材とを備え、弾性部材は、固定接点と離間してキートップの両側に接続すると共に固定接点に近づく方向および遠ざかる方向の両方向に弾性変形可能な少なくとも2以上の押圧部を有し、押圧部は、その弾性変形によって固定接点と接離する導電部を有し、キートップと基板との間の領域における2つの押圧部の間に、キートップから基板の方向若しくはその方向の逆方向に突出する1または2以上の凸部を有し、その凸部は、キートップ側若しくは基板側から、固定接点と導電部との間よりも小さい距離の間隙で離間して配置されているものとしている。
【0010】
さらに、凸部と、キートップ若しくは基板とは、所定の距離で離間して配置されていると共に、その所定の距離は、キートップの一端側を押し下げてその押し下げられた一端側の固定接点と導電部を電気的に接続させた際に、凸部が、キートップ側若しくは基板側に接する距離であるのが好ましい場合もある。
【0011】
さらに、凸部は、2つの押圧部を結ぶ直線上の中央に配置されると共に、キートップの非操作状態における固定接点と導電部との距離の半分若しくはそれ以上の距離を隔てて、キートップ側若しくは基板側との間で離間して配置されているものとするのが好ましい。
【0012】
さらに、2つの前記押圧部におけるぞれぞれの固定接点とそれぞれの導電部との各距離を異なるものとし、2つの押圧部同士の間に凸部を2つ設け、固定接点と導電部との距離が大きい側の押圧部に近い方の凸部は、もう一方の凸部と比して、キートップ側若しくは基板側とより大きな距離を隔てるようにしているものとするのが好ましい場合もある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薄型化を可能とすると共に、一端を押圧しても、他端側が浮きにくい入力装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る入力装置を操作面側から見た斜視図である。
【図2】図1の入力装置を分解して示す分解斜視図である。
【図3】図1の入力装置を図1のA−A線で切断し矢印方向に見た場合の断面図である。
【図4】図3の入力装置の一端側が押圧された状態を説明する断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る入力装置を操作面側から見た斜視図である。
【図6】本発明の入力装置の変形例を説明する断面図である。
【図7】本発明の入力装置の他の変形例を説明する断面図である。
【図8】本発明の入力装置の他の変形例を説明する断面図である。
【図9】実施例に係る入力装置を説明するための斜視図である。
【図10】図9のB−B線で切断し矢印方向に見た場合の断面図である。
【図11】実施例における荷重試験の測定値を説明するためのグラフである。
【図12】従来のシーソースイッチを説明するための断面図である。
【図13】図12の従来のシーソースイッチの一端側が押圧された場合の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態に係る入力装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1の実施の形態に係る入力装置1の斜視図である。また、図2は、入力装置1の分解斜視図である。図3は、入力装置1を基板7に配置した状態で、図1のA−A線を含む操作面に略垂直な面で切断し、矢印方向に見た場合の断面を拡大して示す断面図である。なお、図を見やすくするため、各層の縮尺は一定ではない。また、図3〜図8および図10において、図の左側を「a端側」といい、図の右側を「b端側」という。以後、操作面側(図1の上側)を「表側」といい、操作面と逆側(図1の下側)を「裏側」という。
【0016】
入力装置1は、たとえば、短辺が1〜3cm、長辺が2〜6cmの平面を有し、基板7からの高さが0.3〜1.5cm程度の装置である。入力装置1の表側には、キートップ2が配置されている。また、キートップ2の裏側の長さ方向略中央には、凸部6が、弾性部材3に向かって突出するように配置されている。弾性部材3には、当該弾性部材3の両端側に設けられるスカート部5a,5b(以後、スカート部5a、5bの両方を指す場合には、スカート部5という。)を介して、キートップ2に向かって突出する2つの押圧部4a,4b(以後、押圧部4a、4bの両方を指す場合には、押圧部4という。)が設けられている。そのため、キートップ2は、スカート部5を介して押圧部4により支持されている。また、弾性部材3の裏側の面は、基板7に固定されている。たとえば、キートップ2は、スカート部5および押圧部4の介在により、基板7の表面から2.5〜10mm程度の高さに配置されている。
【0017】
キートップ2としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂あるいはポリアミド樹脂等の各樹脂、金属あるいはそれらのコンポジット等からなる部材であり、単一成形体であるか複数の層から成る成形体であるかを問わない。キートップ2として特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂である。また、キートップ2には、加飾がなされていてもよい。
【0018】
弾性部材3は、弾性を有する部材から構成される。また、弾性部材3は、押圧部4a,4bおよび押圧部4a,4bの裾部にそれぞれ配置されるスカート部5a,5bを有する。本実施の形態において、押圧部4は、円柱形状であり、スカート部5は、押圧部4の基板側から外側方向に広がる薄肉部である。スカート部5は、キートップ2が表面側から基板7の方向に向かって押しこまれることにより、押圧部4を介して基板7方向へ座屈することができる。キートップ2が押圧されていない場合には、導電部9a,9b(以後、導電部9a,9bの両方を指す場合には、導電部9という。)と固定接点8a,8b(以後、固定接点8a,8bの両方を指す場合には、固定接点8という。)とが離間しているので、電気信号が生じない。
【0019】
弾性部材3としては、具体的には、ショアA硬度が30〜90である材料が好適に用いられる。さらに、弾性部材3のショアA硬度が50〜70である場合には、より好ましい。そのような材料からなる弾性部材3としては、例えば、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムあるいは天然ゴムを好適に用いることができる。なお、本実施の形態では、押圧部4およびスカート部5は、弾性部材3と一体とされているが、弾性部材3と押圧部4若しくはスカート部5とは、別体あるいはそれらを接着若しくは融着して一体とされていてもよい。そのような場合には、それぞれの部材は、異なる材料から構成されていてもよい。しかし、弾性部材3、押圧部4およびスカート部5を一体成形することで、入力装置1の部品点数をより少なくすることができることに加え、それに起因して入力装置1の製造工程が少なくなるため、より好ましい。また、押圧部4の表側の面は、キートップ2に接着されている。
【0020】
凸部6は、キートップ2と弾性部材3との間に配置される。凸部6は、たとえば、直径が1mmの略半球状の部材である。本実施の形態において、凸部6は、その半球の断面がキートップ2の裏側に固着されて、その球面が基板7の方向へ突出している。凸部6は、弾性部材3に当接せず、弾性部材3との間には、距離βの隙間を有するように配置されている。したがって、凸部6は、その距離βの分だけ、押圧方向に移動できるものとなる。また、本実施の形態では、凸部6は、2つのスイッチを直線で結んだ場合のその直線を2等分する位置に設けられている。
【0021】
基板7としては、固定接点8等の配線が形成されているプリント基板を好適に用いることができる。具体的には、絶縁性のある樹脂を含浸した基板7に、銅箔等の導電体にて固定接点8およびそれらを接続する配線(不図示)等が形成されている。固定接点8は、たとえば、めっき等により基板7に形成された導電部分である。また、固定接点8は、スカート部5に覆われている。スカート部5には、固定接点8と対向する位置に導電部9が設けられている。固定接点8と導電部9とは、距離αの間隙を有している。
【0022】
図4は、ユーザが図3の入力装置1のa端側を押圧した場合の各部材の状態を示す断面図である。キートップ2のa端側を押圧すると、押圧された側が押し下げられ、スカート部5aが変形し、基板7方向へ座屈する。すると、押圧部4の裏面側に配置された導電部9aが固定接点8aに触れる。すると、固定接点8aと導電部9aとが短絡することで電気信号を生じる。
【0023】
ここで、凸部6と弾性部材3との距離βが、導電部9と固定接点8との距離αよりも小さい場合には、導電部9aと固定接点8aとが接触している状態において、凸部6が弾性部材3に当接する可能性がある。この場合には、a端側の導電部9aと固定接点8aとが導通状態になると共に、凸部6が障害となってキートップ2のb端側が押し下げられ、あるいは上方に浮き上がるのを防止することができる。さらに、押圧部4aと押圧部4bとの間の中心間距離をLとして、押圧部4と凸部6との距離を(L/2)とした場合には、距離βは、α/2と同じあるいはそれよりも大きく、かつ、αよりも小さい場合にはより好ましい。距離βが、距離αと同じあるいはそれよりも大きい場合には、一端側を押した際に、他端側の導電部9と固定接点8とが接触する、いわゆる両押しの状態になる可能性が高く、誤作動が生じてしまう。
【0024】
上述の入力装置1では、従来のような軸受け構造を採用していない。したがって、キートップ2にがたつきが生じにくく、また、キートップ2の一端側を押した際に、他端側が浮き上がりにくいものとなる。したがって、キートップ2と入力装置1を備える電子機器の筐体との間に隙間が生じにくい。また、キートップ2の一端側を押した際に、他端側が浮き上がりにくいため、キートップ2と接着された弾性部材3に余計な力が加わらない。そのため、キートップ2の一端側を押した際に、他端側が浮き上がる場合に比べて、入力装置1の耐久性が向上する。
【0025】
次に、入力装置1の製造方法について説明する。
【0026】
まず、ウレタンゴム等の弾性体をプレス機で加熱成型し、スカート部5、押圧部4および導電部9を所定の位置に有する弾性部材3を成型する。また、キートップ2の材料となるポリカーボネート等をプレス機等で加熱成型し、凸部6を有するキートップ2を成型する。
【0027】
次に、成形された押圧部4の表側の面を、キートップの裏面に接着剤等で固着あるいは熱融着する。このようにして入力装置1が完成する。得られた入力装置1は、弾性部材3の裏面側に接着剤等を配置し、固定接点8がスカート部5に覆われるように位置合せされた状態で、基板7に接着されて用いられる。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る入力装置10について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図5は、第2の実施の形態に係る入力装置10の断面図である。第2の実施の形態に係る入力装置10は、第1の実施の形態に係る入力装置1とは、凸部6の配置場所において主に異なる。以後、第2の実施の形態に係る入力装置10の凸部を凸部6aと表示する。加えて、スカート部5の周囲に、溝11が形成されている点でも第1の実施の形態に係る入力装置1と異なる。以後の説明において、第1の実施の形態にて用いる要素と同じものには、同じ番号を用いて説明する。
【0030】
第2の実施の形態に係る入力装置10の凸部6aは、キートップ2ではなく基板7側に設けられ、基板7からキートップ2に向かって突出する略半球状の部材である。このように、凸部6aが基板7側に配置されていても、第1の実施の形態に係る入力装置1と同様に機能する。なお、凸部6aは、基板7自体に固定せず、キートップ2と対向する側であれば、基板7上の弾性部材3に固定してもよい。
【0031】
また、スカート部5の周囲には、弾性部材3の厚さ方向に窪む溝11を有する。このような入力装置10では、キートップ2の一端側を押すと、キートップ2は、やや斜め方向(すなわち、キートップ2の長手方向外側から内側に向かう水平方向とキートップ2から基板7に向かう垂直方向の合力方向)に押圧部4を押圧する。その押圧力のうち水平方向の力は、その水平方向の下流側(キートップ2の長手方向内側)にある溝11の幅を小さくするために消費される。したがって、当該水平方向の下流側に位置するスカート部5が立ち上がりにくくなり、当該水平方向の上流側(キートップ2の長手方向外側)のスカート部5が容易には坐屈せず、スカート部5の全体が坐屈しやすくなる。したがって、ユーザに対してより良好な操作感覚を与えることが出来る。溝11は、スカート部5の全周囲に連続的あるいは断続的に設けることができるが、凸部6aに近い側(内側)のみに設けても良い。入力装置10のキートップのa端側あるいはb端側を押圧すると、凸部6aの方向に水平方向の力を及ぼすような斜め押しになりやすい。しかし、スカート部5の外側の溝11が存在しなくても、スカート部5の内側の溝11さえあれば足りる可能性がある。
【0032】
また、スカート部5は、水平方向に対して45度以上90度未満の範囲の角度とするのがより好ましい。なぜなら、水平方向に対して、スカート部5の立設角度が大きい場合には、斜め押しの現象が生じやすいところ、溝11が存在することによって、それを有効に防止できるからである。
【0033】
溝11の幅は、スカート部5の基板7側の開口面積と同一の面積の円に換算したときの直径に対して7%以上とするのがより好ましい。なぜなら、そのような面積比で構成された溝11は、キートップ2を斜めに押した際に、水平方向の力を、溝の幅を小さくするのに有効に作用させることができるからである。
【0034】
以上、各発明の実施の形態に係る入力装置1,10の好適な例について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に何ら限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0035】
例えば、各実施の形態では、好適な直径、硬度あるいは距離等につき言及しているが、これらの値に限らず、他の値を採用しても良い。例えば、入力装置1は、短辺が1〜3cm、長辺が2〜6cmの平面を有し、基板7からの高さが0.3〜1.5cm程度の装置である旨を例示したが、これらの値に限られない。しかし、上述の大きさの入力装置1とした場合には、特に一端側を押圧する際に、親指で押圧しやすいものとなる。また、本明細書に記載した各値は、その値に正確に限定されるものではなく、誤差あるいは公差を含み得るものとする。
【0036】
本実施の形態では、凸部6,6aの形状は、半球であるものとしているが、このような形態に限らない。たとえば、図6に示す入力装置1aのように、キートップ2の裏側に先端が尖った凸部6bを設けてもよい。また、凸部6,6aを円柱状、円錐状、あるいは、先端部の曲率半径が2〜25mm程度の凸状物若しくは突起としてもよい。また、凸部6,6a,6bの硬度、先端形状を適宜調整することで、動作安定性および操作感を調節することができる。
【0037】
上述の各実施の形態では、凸部6,6aは、a端側の固定接点8aとb端側の固定接点8bとを直線で結んだ場合のその直線を2等分する部分に配置されるものとしているが、そのような形態に限らない。たとえば、図7に示す入力装置1bのように、固定接点8aと固定接点8bとを結んだ直線上に凸部6,6aが配置されていれば、a端側の押圧部4aから凸部6までの距離Laと、押圧部4bから凸部6までの距離Lbとが異なるような形態とすることができる。たとえば、図7においてLa>Lb、α>αとする。その場合には、凸部6と弾性部材3との距離βと、導電部9aから固定接点8aまでの距離αとの関係は、距離βが(Lb/L)αと同じあるいはそれよりも大きく、かつ、距離αよりも小さいことが好ましい。同様に、凸部6と弾性部材3との距離βと、導電部9bから固定接点8bまでの距離αとの関係は、距離βが(La/L)αと同じあるいはそれよりも大きく、かつ、距離αよりも小さいことがより好ましい。なぜなら距離βが、(Lb/L)αおよび(La/L)αよりも小さい場合には、導電部9aと固定接点8aあるいは導電部9bと固定接点8bとが接触する前に、凸部6が接触してしまうからである。一方、距離βが、αおよびαよりも大きい場合には、一端側を押圧することで、いわゆる両押しの状態となりやすいものとなるため、誤作動が生じやすい。
【0038】
図8に示す入力装置1cのように、凸部は、複数配置されていてもよい。たとえば、2の凸部6c,6dが、2つの固定接点8a,8bを結んだ直線上に配置されているような形態としてもよい。特に、a端部側の押し込み量(すなわち、導電部9aと固定接点8aとの距離α)とb端部側の押し込み量(すなわち、導電部9bと固定接点8bとの距離α)が異なる場合には、そのαとαの違いにより凸部6cと弾性部材3との距離βと、凸部6dと弾性部材3との距離βとを変化させるのが好ましい。その場合、図8に示すように、α>αのときには、β>βとするのが好ましい。ただし、βは、導電部9aと固定接点8aが接した時あるいはその直前(A)に凸部6cが弾性部材3に接する距離である。また、βは、導電部9bと固定接点8bが接したとき、あるいは、その直前(B)に凸部6dが弾性部材3に接する距離である。しかも、(A)のときに、凸部6dは、弾性部材3に非接触であり、また、(B)のときに、凸部6cは、弾性部材3に非接触である。なお、凸部を配置する位置は、固定接点8aと固定接点8bとを結んだ直線上に限られず、固定接点8aと固定接点8bとを結んだ直線を挟んだ両側に、凸部を配置されていてもよい。
【0039】
また、各実施の形態において、固定接点8およびその固定接点8に対応するスイッチ構造(スカート部5、押圧部4および導電部9)は、キートップ2の長手方向の端部に1つずつ、すなわち計2つ配置されるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、十字型のキートップに対し、上下左右にそれぞれスイッチ構造を設けてもよい。
【0040】
基板7には、キートップ2の長手方向の一方の端部に対向して、2以上の固定接点8が配置され、固定接点8の数に応じたスイッチ構造が配置されてもよい。その場合には、一端側を押圧すると、複数のスイッチ構造に押圧力が加えられる、すなわち、複数のスカート部5が同時に座屈するものとなる。このような形態とすることで、スカート部5が座屈するために必要な押圧力を、スカート部5の設計を変えることなく、スイッチ構造の配置数を増減することで調整できる。
【0041】
各実施の形態では、凸部6,6aは、硬質の部材から形成されるものとしているが、凸部6,6aは、ショアA硬度が50〜80度の弾性体から形成されてもよい。その場合には、キートップ2を基板7に向かって押圧した際に、凸部6,6aも、その押圧に伴い変形できるものとなるので、凸部6,6aと弾性部材3との隙間をより小さく設計してもよい。また、各実施の形態では、凸部6,6aは、一端側の導電部9と固定接点8とが接触する時に、弾性部材3に当接するものとしているが、このような形態に限らない。導電部9aと固定接点8a、あるいは、導電部9bと固定接点8bのどちらか一組が接触する際に、すなわち、一端側の導電部9と固定接点8とが導通する前から、凸部6,6aが、弾性部材3に接するものとしてもよい。また、距離βが距離αよりも小さいものである場合には、一端側の導電部9と固定接点8のみが接触している状態において、凸部6,6aが弾性部材3に接触しないものとしてもよい。距離βが距離αよりも小さいものである場合には、一端側の導電部9と固定接点8のみが接触している際に、凸部6,6aが弾性部材3に接触しなくても、凸部6,6aが、いわゆる両押しの状態を防止できる。一端側の導電部9と固定接点8とが接触する時に、凸部6,6aが弾性部材3に当接する、あるいは、凸部6,6aが弾性部材3に接触しない場合には、凸部6,6aと弾性部材3とが、クリック最中に接触しないので、クリック感がより良好なものとなる。凸部6c,6dについても同様である。
【0042】
各実施の形態において、キートップ2および押圧部4を接着剤により貼り合わせたが、接着剤以外のものを用いて固定してもよい。例えば、両面テープで貼り合わせても良いし、熱融着等により貼り合わせても良い。弾性部材3は、基板7に接着されるものとしたが、全面で接着されていてもよいし、一部で接着されていても良い。
【0043】
凸部6,6a,6b,6c,6dは、キートップ2側と基板7側との間に距離βの間隙を有していればよく、キートップ2と基板7との間に弾性部材3などが介在する場合には、凸部6,6a,6b,6c,6dの先端とキートップ2若しくは基板7との各距離がβ以上の距離であってもよい。すなわち、「キートップ側」は、キートップ2の方向を意味するが、キートップ2自体に限定されない。「基板側」も同様の意味に解釈される。
【0044】
各実施の形態では、入力装置1,10は、長方形のキートップ2を備えているが、キートップ2の形状は、長方形に限らない。例えば、円、十字、直線、三角、四角以上の多角形、曲線、環状あるいは楕円等、どのような形態でもよい。しかし、長手方向の両端にスイッチを配置することで、各端部を押し込みやすいものとなる。さらに、一端側を押した際の他端側のスイッチが誤作動しにくいものとなる。
【0045】
キートップ2として透光性の部材を用いて、キートップ2よりも基板7側にLED等の発光部材を設けることで、操作面を光らせるようにしてもよい。また、弾性部材3として、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)シート(以後、「ELシート」という。)を用いることもできる。ELシートとしては、無機ELシートが好適である。代表的な無機ELシートの構造は、発光体層(例えば、ZnS+Cuを含む層)と誘電体層(例えば、BaTiOの層)を隣接させ、これらの両側を電極層で挟み、さらに、発光面側(発光体層側の電極の外側)に透明樹脂フィルムを貼付した構造である。このように、キートップ2の裏面側にELシートを配置することにより、キートップ2あるいはキートップ2の特定部分(例えば、キートップ2と電子機器の筐体との隙間あるいは、キートップ2に設けられた抜き文字等)を光らせることができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0047】
図9は、実施例で用いた入力装置1dをキートップ2dと弾性部材3dとに分解し、キートップ2dの裏面側と弾性部材3dの表面側を紙面の手前に示す斜視図である。図10は、入力装置1dを、図9のB−B線で切断して矢印方向に見た場合の断面図である。
【0048】
(入力装置1dの構成)
入力装置1dは、短辺が1.6cm、長辺が4cm、高さが7mmの大きさを有する。入力装置1dを作製するために、キートップ2d、および、キートップ2dと対向する弾性部材3dを用意した。
【0049】
キートップ2dの裏面には、凸部6eをキートップ2dと一体として設けた。キートップ2dは、短辺が1.6cm、長辺が4cm、厚さ2mmであり、凸部6eは、直径6mmの円柱を縦に割られたような形状で、凸部6eの曲面が基板7方向に対向し、略半円形状の断面をキートップ2dの短辺方向外側に向けて配置した。凸部6eは、キートップ2dの長さ方向中央、かつ、その短辺方向外側に接する位置に設けられた。また、キートップ2dの面から凸部6eの頂点までの高さを変化させることで、凸部6eと弾性部材3dとの間隙の距離βを変化させた。
【0050】
弾性部材3dは、シリコーンゴムから主に構成され、スカート部5a,5bを介して押圧部4a,4bを有するものとした。また、弾性部材3dは、接着剤を介して押圧部4a,4bの表面でキートップ2dと接着させた。弾性部材3dのスカート部5a,5bおよび押圧部4a,4b以外の部位は、厚さ2mmとした。押圧部4a,4bは、直径4mm、高さ3.5mmの円柱形状とした。押圧部4a,4bの下方側からテーパ環状に押圧部4a,4bに向かって広がるように設けたスカート部5a,5bは、弾性部材3dに設けられた穴部を覆うように形成した。なお、スカート部5a,5bおよび押圧部4a,4bは、a端側およびb端側にそれぞれ2箇所設けた。a端側のスカート部5aと押圧部4aのセットあるいはb端側のスカート部5bと押圧部4bのセットは、入力装置1dの長辺方向の端部から8mm、かつ、短辺方向の端部から4mm離間させて配置した。また、入力装置1dが押圧されていない状態で、スカート部5a,5bの基板7側から突出した導電部9a,9bと基板7に設けられた固定接点8a,8bとが1.0mmの間隙を有するように形成した。上述のように構成された入力装置1dは、押圧部4aと押圧部4bの長辺方向の距離が24mmとなった。
【0051】
距離βを変化させた荷重試験用の入力装置1dを作製し、固定接点8を有する基板7に取り付けた。作製した入力装置1dのキートップ2dを、押圧部4aの中心軸から入力装置1dの長辺方向に2mm内側の位置を加圧することで、後述するピーク荷重、メーク荷重および復帰力の測定を行った。また、両押誤動作の有無として、入力装置1dの一端側のみを押した際に、両端側が押された状態になるような誤動作が生じたか否かを測定した。具体的には、固定電極に電圧12V、電流10mAを印加し、導電部9aと固定接点8a、および、導電部9bと固定接点8bの両方が導通した場合に、誤作動を生じると判定した。さらに、クリック感として、指で押圧した際の感触を測定した。
【0052】
(荷重測定方法)
図11は、押圧荷重と押し込み量の関係を示すグラフである。なお、縦軸が荷重、横軸が変位を示し、押圧時を曲線A、戻り時を曲線Bで表している。荷重と変位の関係は、図11のグラフに示すように、キートップ2dを押し下げた際の荷重変化を示す曲線Aは、押下げをやめて戻る際の荷重の変化を示す曲線Bと一致せず、ヒステリシスを描く。キートップ2dを押圧する荷重は、まず、曲線Aに示すように、押圧とともに徐々に荷重が増加し、極大値P1(ピーク荷重(N))を示す。また、押圧により、スカート部5a,5bが座屈を始めると、荷重は、変位の増加とともに低下する。そして、導電部9a,9bに固定接点8a,8bが接した点で、荷重は、極小値P2(メーク荷重(N))を示す。導電部9a,9bに固定接点8a,8bが接した後も、弾性部材3dが荷重され続けることで圧縮変形を起こし、わずかな変位に対して荷重が急激に上昇する。
【0053】
導電部9a,9bに固定接点8a,8bが接した後で押圧を止めると、荷重の変化を表す曲線Bに示すように、荷重が徐々に低減し弾性部材3dの弾性により変位が戻り、P3の荷重を示す。さらに、P3の荷重を示した後は、スカート部5a,5bが座屈状態から復帰を開始する。スカート部5a,5bの弾性復元力により、曲線Bにおいての荷重極大値P4を示す。P4を示した後、スカート部5a,5bの座屈状態が終了し、スカート部5a,5bの形状がほぼ復元される。スカート部5a,5bの形状が復元されるために必要な力を復帰力R(N)とした。復帰力は、(P4―P3)にて求められる。この後、押圧荷重は、徐々に低減されるとともに、スカート部5a,5bの弾性変形が戻り、キートップ2dの変位が0となる。また、得られたピーク荷重P1およびメーク荷重P2より、ピーク荷重P1に対するピーク荷重P1とメーク荷重P2との差[(P1−P2)/P1]の100分率をクリック率(%)とした。
【0054】
(クリック感の判定基準)
試験片を押圧した感触により以下の基準で評価した。
◎・・・クリック感が特に良好、かつ、ピーク荷重8N以下
○・・・クリック感良好、かつ、ピーク荷重8Nを超える
△・・・小さいがクリック感はある、かつ、ピーク荷重8Nを超える
×・・・クリック感なし、かつ、ピーク荷重8Nを超える
【0055】
(両押誤動作確認)
両押誤動作の有無を以下の基準で評価した。
○・・・誤動作しない
△・・・誤動作することがある
×・・・誤動作することが多い
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1,2
実施例1および実施例2では、凸部6eと弾性部材3dとの間隔の距離βを0.6mmおよび0.5mmに設定した。すなわち、実施例1では、導電部9と固定接点8とが接触した際に、凸部6eが弾性部材3dに接触しない。また、実施例2では、導電部9と固定接点8とが接触した際に、凸部6eが弾性部材3dに接触する。実施例1および実施例2の入力装置1dは、他の実施例に比べて、クリック率が最も大きい、すなわち、スカート部5a,5bの座屈の前後での荷重の変化が大きいので、他の実施例よりも良好なクリック感が得られた。また、誤動作も生じなかった。
【0058】
実施例3,4
距離βが0.4cmの実施例3と、距離βが0.3cmの実施例4を作製した。すなわち、実施例3および実施例4の形態では、導電部9と固定接点8とが接触する前に、凸部6eが弾性部材3dに接触する。実施例3および実施例4の入力装置1dでは、実施例1および実施例2の入力装置に比べて、ピーク荷重がやや大きくなったが、性能上問題とならない程度であり、良好なクリック感が得られた。また、誤動作を生じることもなかった。
【0059】
実施例5
距離βが0.2cmの実施例5を作製した。すなわち、実施例5の形態は、導電部9と固定接点8とが接触する前に、凸部6eが弾性部材3dに接触するような形態である。実施例5の入力装置1dでは、良好なクリック感が得られたが、ピーク荷重が8Nよりも大きくなり、操作感が重いものとなった。実施例5では、誤動作が生じなかった。
【0060】
実施例6
距離βが0.1cmの実施例6を作製した。すなわち、実施例6の形態は、実施例5と同様に、導電部9と固定接点8とが接触する前に、凸部6eが弾性部材3dに接触するような形態である。実施例6の入力装置1dでは、実施例5と比較して、クリック感がやや低下し、ピーク荷重が8Nよりも大きくなった。実用可能ではあるが、操作感にやや劣るものとなった。実施例6では、誤動作生じなかった。
【0061】
実施例7,8
凸部6eと弾性部材3dとの間隙がない実施例7、凸部6eが押圧される前から凸部6eが弾性部材3dに0.1cmの深さでめり込んでいる携帯の実施例8を作製した。実施例7および実施例8の入力装置では、上述の他の実施例と比較してクリック率が大きく低下した。また、ピーク荷重も大きく、実用上満足のいくものではなかった。また、誤動作は生じなかった。
【0062】
比較例
凸部6eと弾性部材3dとの間隙の距離βが、導電部9a,9bと固定接点8a,8bとの間隙の距離に等しい比較例を作製した。比較例1の入力装置では、クリック感が良好であり、ピーク荷重も8Nより小さいものであった。しかし、比較例では、誤作動が生じた。
【符号の説明】
【0063】
1,1a,1b,1c,1d 入力装置
2,2d キートップ
3,3d 弾性部材
4,4a,4b 押圧部(弾性部材)
5,5a,5b スカート部(弾性部材)
6,6a,6b,6c,6d,6e 凸部
7 基板
8,8a,8b 固定接点
9,9a,9b 導電部
10 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2以上の固定接点を有する基板に対向して配置されるキートップと、
上記キートップと上記基板との間に配置される弾性部材とを備え、
上記弾性部材は、上記固定接点と離間して上記キートップの両側に接続すると共に上記固定接点に近づく方向および遠ざかる方向の両方向に弾性変形可能な少なくとも2以上の押圧部を有し、
当該押圧部は、その弾性変形によって上記固定接点と接離する導電部を有し、
上記キートップと上記基板との間の領域における2つの上記押圧部の間に、上記キートップから上記基板の方向若しくは当該方向の逆方向に突出する1または2以上の凸部を有し、
上記凸部は、上記キートップ側若しくは上記基板側から、上記固定接点と上記導電部との間よりも小さい距離の間隙で離間して配置されていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置において、
前記凸部と、前記キートップ若しくは前記基板とは、所定の距離で離間して配置されていると共に、
当該所定の距離は、前記キートップの一端側を押し下げて当該一端側の前記固定接点と前記導電部を電気的に接続させた際に、前記凸部が、前記キートップ側若しくは前記基板側に接する距離であることを特徴とする入力装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の入力装置において、
前記凸部は、2つの前記押圧部を結ぶ直線上の中央に配置されると共に、
前記キートップの非操作状態における前記固定接点と前記導電部との距離の半分若しくはそれ以上の距離を隔てて、前記キートップ側若しくは前記基板側との間で離間して配置されていることを特徴とする入力装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の入力装置において、
2つの前記押圧部におけるぞれぞれの固定接点とそれぞれの導電部との各距離を異なるものとし、
2つの前記押圧部同士の間に前記凸部を2つ設け、
前記固定接点と前記導電部との距離が大きい側の前記押圧部に近い方の前記凸部は、もう一方の前記凸部と比して、前記キートップ側若しくは前記基板側とより大きな距離を隔てるようにしていることを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−262762(P2010−262762A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110881(P2009−110881)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】