説明

入力装置

【課題】検出面において、他の領域と異なる触感を与える領域を任意の位置に形成することができる入力装置を提供する。
【解決手段】実施の形態に係る入力装置1は、主に、検出面100に対する接触に基づく検出信号を出力するタッチパネル10と、検出面100に回転中心11が存在するように、第1の方向301と第1の方向301の逆方向である第2の方向302にタッチパネル10を振動させる振動発生部20と、を備える。この入力装置1は、タッチパネル10を振動させることで、検出面100の任意の位置に回転中心11を形成することができるので、他の領域と異なる触感を与える領域を任意の位置に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、触れた点に基づいた信号を出力するタッチパッド部と、タッチパッド部からの信号に基づいて信号の解析を行って座標点を算出し、算出した座標点の情報を含む信号を出力する信号解析部と、を備えたキーボードタッチパッドが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このキーボードタッチパッドのタッチパッド部の下には、キーの位置を表示するシートが設けられ、タッチパッド部を介してキー配列が認識でき、さらに、タッチパッド部には、ホームポジション(タッチパッド部の基準位置)を示す小さな突起物を備えている。操作者は、この突起物を触ることによりホームポジションを認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−254624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のキーボードタッチパッドは、ホームポジションを示す小さな突起物がタッチパッド部に設けられているので、その位置を変更することができない。
【0006】
従って、本発明の目的は、検出面において、他の領域と異なる触感を与える領域を任意の位置に形成することができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、検出面に対する接触に基づく検出信号を出力する検出部と、検出面に回転中心が存在するように、第1の方向と第1の方向の逆方向である第2の方向に検出部を振動させる振動発生部と、を備える入力装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出面において、他の領域と異なる触感を与える領域を任意の位置に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、実施の形態に係る入力装置の斜視図であり、(b)は、入力装置の上面図であり、(c)は、入力装置のブロック図である。
【図2】図2(a)は、実施の形態に係る第1の振動子に供給される駆動信号の時間変化を示すグラフであり、(b)は、第2の振動子に供給される駆動信号の時間変化を示すグラフであり、(c)は、第1の振動子の振幅の時間変化を示すグラフであり、(d)は、第2の振動子の振幅の時間変化を示すグラフであり、(e)は、タッチパネルの検出信号を取得するタイミングを示すグラフである。
【図3】図3(a)〜(d)は、実施の形態に係る入力装置の検出面に形成された回転中心について説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る入力装置は、検出面に対する接触に基づく検出信号を出力する検出部と、検出面に回転中心が存在するように、第1の方向と第1の方向の逆方向である第2の方向に検出部を振動させる振動発生部と、を備える。
【0011】
(入力装置1の構成)
図1(a)は、実施の形態に係る入力装置の斜視図であり、(b)は、入力装置の上面図であり、(c)は、入力装置のブロック図である。図2(a)は、実施の形態に係る第1の振動子に供給される駆動信号の時間変化を示すグラフであり、(b)は、第2の振動子に供給される駆動信号の時間変化を示すグラフであり、(c)は、第1の振動子の振幅の時間変化を示すグラフであり、(d)は、第2の振動子の振幅の時間変化を示すグラフであり、(e)は、タッチパネルの検出信号を取得するタイミングを示すグラフである。図1(a)では、センサワイヤ12の一部を点線で示している。図1(b)では、最大振幅で回転したタッチパネル10を点線で示している。図2(a)及び(b)は、縦軸が電圧V、横軸が時間tである。図2(c)及び(d)は、縦軸が振幅d、横軸が時間tである。図2(e)は、横軸が時間tである。なお、実施の形態に係る各図において、部品と部品との比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1(a)におけるXYZ座標系は、直交座標系であり、X軸がタッチパネル10の長手方向に平行な軸であり、Y軸がタッチパネル10の短手方向に平行な軸であり、Z軸がタッチパネル10の検出面100の法線方向に平行な軸である。XYZ座標系の原点は、例えば、タッチパネル10の左上(図1(b)の紙面左上)である。なお、検出面100は、平坦であるものとする。
【0013】
実施の形態に係る入力装置1は、主に、検出面100に対する接触に基づく検出信号を出力する検出部としてのタッチパネル10と、検出面100に回転中心11が存在するように、第1の方向301と第1の方向301の逆方向である第2の方向302にタッチパネル10を振動させる振動発生部20と、を備える。
【0014】
この入力装置1は、第1の振動子21及び第2の振動子22によって、図1(b)の紙面の時計回り及び反時計回りにタッチパネル10を回転させることで、他の領域と触感が異なる回転中心11を形成する。操作者は、検出面100に触ることにより、他の領域と異なる触感となる回転中心11を認識することが可能となる。
【0015】
また、入力装置1は、例えば、接続された電子機器の操作を行うことができるものである。入力装置1は、例えば、操作者の体の一部(例えば、指)や専用のペンで検出面100に触れることにより、電子機器に表示されたカーソルの移動やカーソルによる選択、表示されたアイコンのドラッグ、ドロップ等の指示を行うことができるように構成されている。本実施の形態では、指による操作について説明する。
【0016】
ここで、操作者は、例えば、入力装置1に対してタッチ操作、タップ操作、スライド(なぞり)操作およびジェスチャ操作等を行うことができる。ここで、タッチ操作とは、例えば、指で検出面100に接触する操作を示す。タップ操作は、タッチ操作よりも短い時間で入力装置1に接触する操作であり、所定の時間内に複数回繰り返すことで、回数に応じた異なる機能を実行させる操作を示す。また、スライド操作とは、例えば、指を検出面100に接触させたまま移動させる操作を示す。ジェスチャ操作とは、例えば、操作指の軌跡が予め定められた形状と相似であるとき、その形状に割り当てられた機能を実行させる操作を示す。ジェスチャ操作の判定は、例えば、パターンマッチングを用いた方法等の周知の方法が用いられる。
【0017】
・タッチパネル10の構成
タッチパネル10は、例えば、周知の抵抗膜方式、静電容量方式等のタッチパネルである。
【0018】
本実施の形態に係るタッチパネル10は、例えば、検出面100に指が近づくことによる、センサワイヤ12と指との距離に反比例した電流の変化を検出する静電容量方式のタッチパネルである。このタッチパネル10は、例えば、上部にガラス平板を備え、そのガラス平板の下に、複数のセンサワイヤ12が設けられている。検出面100は、例えば、このガラス平板の表面である。
【0019】
図1(a)に示すX軸方向には、例えば、m個のセンサワイヤ12が等間隔で並べられている。このmは、例えば、正の整数である。また、図1(a)に示すY軸方向には、例えば、n個のセンサワイヤ12が等間隔で並べられている。このnは、例えば、正の整数である。
【0020】
X軸に沿って並べられたセンサワイヤ12は、例えば、Y軸に沿って並べられたセンサワイヤ12よりも検出面100に近い層に形成されている。また、X軸に沿って並べられたセンサワイヤ12は、例えば、Y軸に沿って並べられたセンサワイヤ12と電気的に絶縁されている。
【0021】
このタッチパネル10は、例えば、図1(c)に示すように、後述する制御部13に接続され、接触が検出された検出面100の位置を示す検出信号を制御部13に出力するように構成されている。
【0022】
また、タッチパネル10は、例えば、入力装置1の筐体(図示せず)に振動が可能となるように、支持されているものとする。具体的には、例えば、第1の振動子21、第2の振動子22、第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32が筐体に支持されている。他の支持としては、例えば、ゴム等の弾性部材をタッチパネル10と筐体との間に介在させ支持する構成であっても良い。また、以下では、第1の振動子21及び第2の振動子22による振動が停止している場合のタッチパネル10の位置を初期位置と呼ぶものとする。タッチパネル10は、振動が停止した後に、初期位置に復帰するように、支持されているものとする。
【0023】
ここで、以下では、図1(b)の紙面においてタッチパネル10の長手方向上部の側面を第1の側面101、長手方向下部の側面を第2の側面102、短手方向右の側面を第3の側面103、及び短手方向左の側面を第4の側面104とする。
【0024】
・振動発生部20の構成
振動発生部20は、例えば、タッチパネル10の一方の側面に配置され、タッチパネル10に振動を与える第1の振動子21と、一方の側面の反対側の他方の側面に配置され、タッチパネル10に振動を与える第2の振動子22と、を備えて概略構成されている。また、振動発生部20は、例えば、さらに、駆動部23を備えている。第1の振動子21及び第2の振動子22は、例えば、ピエゾ効果又は磁気歪効果等により振動を行う振動子である。本実施の形態に係る第1の振動子21及び第2の振動子22は、一例として、ピエゾ効果を用いた振動子であるものとする。
【0025】
第1の振動子21及び第2の振動子22は、電圧を加えると伸び縮みするピエゾ素子(圧電素子)を含んで概略構成され、このピエゾ素子に電圧を加えることで伸び縮みを行って対象物に振動を与える振動子である。この振動の周波数は、数百Hz程度(一例として、250Hz〜500Hz)である。
【0026】
また、この振動子の振幅は、一例として、数μmpp程度である。従って、タッチパネル10が振動を行う様子を図示することは困難であるため、図1(b)に示すように、図示し易い大きな振幅としている。また、第1の振動子21は、第1の方向301、すなわち、伸びる方向における最大振幅が+dであり、第2の方向302、すなわち、縮む方向における最大振幅が−dである。第2の振動子22は、第2の方向302、すなわち、伸びる方向における最大振幅が+dであり、第1の方向301、すなわち、縮む方向における最大振幅が−dである。
【0027】
振動発生部20は、例えば、図1(a)及び(b)に示すように、一対の振動子(第1の振動子21及び第2の振動子22)が検出面100の中央を対称点として点対称となるように配置される。なお、この一対の振動子の配置は、点対称に限定されない。つまり、一対の振動子は、少なくとも一方が、点対称となる位置からずれて配置されていても良い。
【0028】
第1の振動子21と第2の振動子22は、例えば、タッチパネル10の長手方向の側面に接するように配置されている。
【0029】
第1の振動子21は、例えば、図1(a)に示すように、第1の側面101の左端部に接するように配置され、Y軸の正方向及び負方向、つまり、第1の方向301及び第2の方向302に振動する。
【0030】
第2の振動子22は、例えば、図1(a)に示すように、第1の側面101の反対側の側面となる第2の側面102の右端部に接するように配置され、Y軸の正方向及び負方向、つまり、第1の方向301及び第2の方向302に振動する。
【0031】
なお、第1の振動子21及び第2の振動子22は、振動を行っている間、タッチパネル10との接触が保たれている。
【0032】
第1の振動子21及び第2の振動子22は、例えば、回転中心11を形成しない、すなわち、タッチパネル10をX軸又はY軸に平行に変位させる位置には配置されない。従って、第1の振動子21及び第2の振動子22は、長手方向の第1の側面101及び第2の側面102、又は短手方向の第3の側面103及び第4の側面104にそれぞれ配置されることが好ましく、かつ、振動子がタッチパネル10を介して向かい合わないことが好ましい。
【0033】
ここで、本実施の形態では、第1の方向301がY軸の正方向に平行な方向であり、第2の方向302がY軸の負方向に平行な方向であった。しかし、これに限定されず、第1の振動子21が短手方向の第4の側面104に配置され、第2の振動子22が第3の側面103に配置された場合は、例えば、第1の方向301がX軸の正方向に平行な方向となり、第2の方向302がX軸の負方向に平行な方向となる。
【0034】
この第1の振動子21及び第2の振動子22は、例えば、駆動部23に接続されている。この駆動部23は、制御部13から取得した制御信号に基づいて第1の振動子21及び第2の振動子22に駆動信号を出力するように構成されている。第1の振動子21に供給される駆動信号は、例えば、図2(a)に示すように、電圧が+Vと−Vを周期的に繰り返す矩形波である。第2の振動子22に供給される駆動信号は、例えば、図2(b)に示すように、+Vと−Vを周期的に繰り返す矩形波である。
【0035】
・第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32の構成
入力装置1は、さらに、第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32を備えている。この第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32は、例えば、タッチパネル10が初期位置にあるとき、弾性力を蓄積している状態にあるものとする。すなわち、第1の弾性部材31は、タッチパネル10が初期位置にあるとき、第1の方向301の弾性力をタッチパネル10に付加している。また、第2の弾性部材32は、タッチパネル10が初期位置にあるとき、第2の方向302の弾性力をタッチパネル10に付加している。この弾性力により、第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32は、振動が発生している状態においても、タッチパネル10との接触を保っている。また、この弾性力により、第1の振動子21及び第2の振動子22とタッチパネル10との接触が保たれる。
【0036】
第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32は、例えば、弾性を有する部材であり、ポリウレタン等の合成樹脂、シリコーンゴム等の合成ゴム等を用いて形成される。
【0037】
第1の弾性部材31は、例えば、図1(a)に示すように、第1の側面101の右端部に接するように配置されている。第2の弾性部材32は、例えば、図1(a)に示すように、第2の側面102の左端部に接するように配置されている。なお、第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32の配置は、例えば、振動が停止している際に、タッチパネル10を初期位置に復帰させる弾性力を付加することができる位置であれば良い。
【0038】
・制御部13の構成
入力装置1は、さらに、タッチパネル10が初期位置にあるとき、タッチパネル10から検出信号を取得する制御部13を有する。
【0039】
制御部13は、例えば、プログラムに従って、取得した情報に演算、加工等を行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等から構成されるマイクロコンピュータである。
【0040】
制御部13は、例えば、取得した検出信号に基づいた座標値から、指が接触、または近づいた座標を算出する。この座標の算出方法は、例えば、加重平均を用いた方法等の周知の方法が用いられる。制御部13は、例えば、算出した座標の情報を含む操作信号を生成して出力するように構成されている。
【0041】
制御部13は、例えば、タッチパネル10が振動しているとき、回転中心11から離れるに従って、指の検出に誤差が生じる可能性があるので、タッチパネル10が初期位置にあるタイミングで、検出信号を取得するように構成されている。検出信号の取得は、例えば、図2(a)〜(e)に示すように、振動子が電圧を供給されてから伸縮を行うまでのタイムラグ等を考慮し、電圧+V及び電圧+Vの供給が開始される時間と、電圧−V及び電圧−Vの供給が開始される時間と、の中央の時間に補正値を加算した時間に行われる。すなわち、図2(e)に示す検出信号の取得のためのトリガ信号は、上記に示した位相の遅れを考慮して、図2(a)に示す駆動信号を所定の時間ディレイして生成される。なお、検出信号の取得のタイミングは、例えば、タッチパネル10の初期位置を検出するセンサを設け、このセンサの信号をトリガとしても良い。
【0042】
(動作)
以下に、本実施の形態に係る入力装置1の動作について各図を参照しながら詳細に説明する。まず、回転中心11がタッチパネル10の中央に形成される場合の動作について説明する。
【0043】
・回転中心11を中央に形成する場合
回転中心11をタッチパネル10の中央に形成する場合、第1の振動子21及び第2の振動子22の位相、振幅を同位相及び同振幅にする必要がある。
【0044】
そこで、制御部13は、第1の振動子21及び第2の振動子22の位相、振幅を同位相及び同振幅とするための制御信号を生成し、駆動部23に出力する。
【0045】
駆動部23は、制御信号を取得すると、図2(a)及び(b)に示す駆動信号を生成し、時間tにおいて、第1の振動子21及び第2の振動子22に駆動信号を出力する。この駆動信号は、第1の振動子21に供給する電圧と、第2の振動子22に供給する電圧とが、同じ電圧となる。同じ電圧となることにより、第1の振動子21の振幅dと第2の振動子22の振幅dとが等しくなる。
【0046】
第1の振動子21は、例えば、図2(a)及び(c)に示すように、時間tにおいて電圧+Vが供給されると、第1の方向301に変位を開始する。また、第2の振動子22は、例えば、図2(b)及び(d)に示すように、時間tにおいて電圧+Vが供給されると、第2の方向302に変位を開始する。
【0047】
電圧+V及び電圧+Vが供給される時間tから時間tにかけて、第1の振動子21が第1の方向301に変位して振幅がゼロ(初期位置)から+dとなり、第2の振動子22が第2の方向302に変位して振幅がゼロ(初期位置)から+dとなる。この変位に基づいて、タッチパネル10は、初期位置から、図1(b)の紙面の反時計回りに回転する。この回転に伴って、第1の弾性部材31が第2の方向302に弾性変形し、第2の弾性部材32が第1の方向301に弾性変形する。時間tにおいて、タッチパネル10の反時計回りの回転角度は、最大となる。
【0048】
次に、時間tにおいて、第1の振動子21に供給される電圧が+Vから−Vに切り替わり、第2の振動子22に供給される電圧が+Vから−Vに切り替わる。切り替えられた電圧は、時間tから時間tにかけて供給される。
【0049】
この電圧の切り替えに伴って、第1の振動子21が第2の方向302に変位して振幅が+dから−dとなり、第2の振動子22が第1の方向301に変位して振幅が+dから−dとなる。この変位に基づいて、タッチパネル10は、図1(b)の紙面の時計回りに回転する。この回転に伴って、時間tから時間tにかけて、第1の弾性部材31は、蓄積された弾性力を開放して第1の方向301にタッチパネル10を駆動し、第2の弾性部材32は、蓄積された弾性力を開放して第2の方向302にタッチパネル10を駆動する。この時間tから時間tにかけての第1の振動子21と第2の振動子22の変位、及び第1の弾性部材31と第2の弾性部材32の駆動により、タッチパネル10の時計回りの回転角は、最大となる。
【0050】
次に、時間tにおいて、第1の振動子21に供給される電圧が−Vから+Vに切り替わり、第2の振動子22に供給される電圧が−Vから+Vに切り替わる。切り替えられた電圧は、時間tから時間tにかけて供給される。制御部13は、例えば、図2(e)に示すように、タッチパネル10が初期位置に復帰する時間tに、タッチパネル10から検出信号を取得する。
【0051】
この電圧の切り替えに伴って、第1の振動子21が第1の方向301に変位して振幅が−dから+dとなり、第2の振動子22が第2の方向302に変位して振幅が−dから+dとなる。この変位に基づいて、タッチパネル10は、図1(b)の紙面の反時計回りに回転する。この回転に伴って、時間tから時間tにかけて、第1の弾性部材31は、第1の方向301に弾性変形して弾性力を蓄積し、第2の弾性部材32は、第2の方向302に弾性変形して弾性力を蓄積する。
【0052】
第1の振動子21及び第2の振動子22は、駆動信号が停止されるまで、供給される駆動信号に基づいて振動する。この振動により、検出面100には、回転中心11が存在することとなる。この回転中心11は、検出面100の他の領域と異なって、タッチパネル10の移動量が限りなく小さいので、触感が他の領域と大きく異なる。従って、操作者は、視線移動することなく回転中心11、つまり、入力装置1のホームポジションを認識することができる。
【0053】
・回転中心11を任意の位置に形成する場合
図3(a)〜(d)は、実施の形態に係る入力装置の検出面に形成された回転中心について説明するための上面図である。図3(a)は、紙面の左上側に回転中心11が形成され、(b)は、紙面の左下側に回転中心11が形成され、(c)は、紙面の右上側に回転中心11が形成され、(d)は、紙面の右下側に回転中心11が形成されている。図3(a)〜(d)は、いずれもタッチパネル10の回転角度を2度として図示している。
【0054】
なお、制御部13は、回転中心11を形成する位置に関する情報に基づいて制御信号を生成し、駆動部23に出力する。この情報は、外部から取得されても良いし、予め制御部13に記憶されていても良い。
【0055】
図3(a)〜(d)は、第1の振動子21の振幅d及び第2の振動子22の振幅dの組み合わせにより、検出面100の任意の位置を回転中心11とすることができることを示している。この振幅d及び振幅dは、回転中心11からそれぞれの振動子までの距離に応じて決定される。つまり、振幅は、タッチパネル10の回転角度が同じ場合、回転中心11から離れるに従って大きくなる。従って、いずれかの振幅が最大の振幅よりも大きくならないように、タッチパネル10の回転角度を考慮して、振幅の組み合わせが決定される。なお、第1の振動子21及び第2の振動子22の位相は、同一とされる。
【0056】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る入力装置1は、タッチパネル10を振動させることで、検出面100の任意の位置に回転中心11を形成することができるので、他の領域と異なる触感を与える領域を任意の位置に形成することができる。つまり、入力装置1は、回転中心11を検出面100の中心、すなわち、ホームポジションに形成することにより、入力装置1に対する操作者の視線移動を抑えることができる。
【0057】
本実施の形態に係る入力装置1は、圧電素子を用いた第1の振動子21及び第2の振動子22により、振動を発生させる構成であるので、モータ等で振動を発生させる場合と比べて、構成部品を少なくすることができ、製造コストを抑制することができる。また、入力装置1は、振動に伴って発生する音を抑制することができる。
【0058】
本実施の形態に係る入力装置1は、第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32により、第1の振動子21及び第2の振動子22とタッチパネル10との接触を保持することができ、また、振動が停止した際には、タッチパネル10を初期位置に復帰させることができる。入力装置1は、他の機械要素を用いて接触の保持、及び初期位置の復帰を行う場合と比べて、構成が単純であるので、構成部品が少なくなり、製造コストを抑制することができる。
【0059】
本実施の形態に係る入力装置1は、タッチパネル10が初期位置に位置する時間をトリガとして、検出信号を取得するので、初期位置に位置する時間を考慮しない場合と比べて、なされた操作の検出精度が高い。
【0060】
なお、本実施の形態の変形例として、入力装置1は、操作者の指を止めさせたい位置に回転中心11を形成することができる。つまり、これは、例えば、電子機器の表示部に表示されたアイコンを選択させたいとき、入力装置1は、このアイコンに相当するタッチパネル10の位置に回転中心11を形成することにより、触感で指を止める位置を認識させることができる。
【0061】
また、本実施の形態に係る入力装置1は、タッチパネル10の長手方向の第1の側面101及び第2の側面102に振動子が配置されたがこれに限定されず、タッチパネル10の短手方向の第3の側面103及び第4の側面104に振動子が配置されても良い。
【0062】
また、本実施の形態に係る第1の弾性部材31及び第2の弾性部材32は、第1の振動子21及び第2の振動子22と同じ側面に配置されたが、これに限定されず、異なる側面に配置されても良い。
【0063】
また、本実施の形態に係る振動子の数は、上記に限定されず、用途に応じて自由に変更可能である。また、振動子は、例えば、タッチパネル10の形状に合わせて配置や個数が変更可能である。
【0064】
さらに、本実施の形態に係る制御部13は、検出信号を取得するタイミングが電圧+Vが供給された時間と、電圧が−Vに切り替わる時間と、の間の時間であったが、これに限定されず、初期位置に復帰するごとに検出信号を取得する構成としても良い。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…入力装置、10…タッチパネル、11…回転中心、12…センサワイヤ、13…制御部、20…振動発生部、21…第1の振動子、22…第2の振動子、23…駆動部、31…第1の弾性部材、32…第2の弾性部材、100…検出面、101…第1の側面、102…第2の側面、103…第3の側面、104…第4の側面、301…第1の方向、302…第2の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出面に対する接触に基づく検出信号を出力する検出部と、
前記検出面に回転中心が存在するように、第1の方向と前記第1の方向の逆方向である第2の方向に前記検出部を振動させる振動発生部と、
を備える入力装置。
【請求項2】
前記振動発生部は、前記検出部の一方の側面に配置され、前記検出部に振動を与える第1の振動子と、前記一方の側面の反対側の他方の側面に配置され、前記検出部に振動を与える第2の振動子と、を有する請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記検出部が初期位置にあるとき、前記検出部から前記検出信号を取得する制御部を有する請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記検出部に対して前記第1の方向の弾性力を付加する第1の弾性部材と、前記検出部に対して前記第2の方向の弾性力を付加する第2の弾性部材と、を有する請求項3に記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−243190(P2012−243190A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114542(P2011−114542)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】