説明

入力装置

【課題】機能項目が複数の列を成して配置されるものにおいて、機能項目の誤選択、および誤入力を抑制可能とする入力装置を提供する。
【解決手段】画面上に複数の機能項目を表示する表示部と、所定の選択操作に応じて画面上を移動するポインタによって、複数の機能項目に対してそれぞれ設けられる選択領域のいずれか1つを選択し、且つ、所定の決定操作に応じてその選択を決定する入力部と、入力部からの入力値に基づいてポインタの移動を制御する制御部と、を備える入力装置において、複数の機能項目は、複数の列を成すように配置されており、制御部は、任意の機能項目が選択されると、複数の列の方向のうち、予め定められた方向に沿う列であって、任意の機能項目が属する機能項目の列における選択領域を、隣の列に向かう方向へ拡大するように設定し直す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に表示される機能項目が所定の選択操作によって選択され、所定の決定操作に基づいてその選択が決定される入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の入力装置として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。特許文献1の入力装置では、画面上に機能項目(オブジェクト)およびカーソルを表示する表示部(表示装置)と、カーソルを用いて機能項目を選択させる入力部(入力装置)と、入力部からの入力値に基づいてカーソルの移動を制御する制御部(制御装置)とを備えている。
【0003】
そして、制御部は、カーソルが機能項目上にある場合であって、カーソルを機能項目の外に移動させる場合には、一旦、カーソルを機能項目の境界上に止め、更にカーソルの移動量が閾値以上であると、カーソルを機能項目の外に移動させるようにしている。
【0004】
これにより、カーソルを機能項目の外に移動させる場合に、入力部操作時のブレを無視することができ、所望の機能項目の選択が容易となって、より精度の高い操作を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−282244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表示部において、例えば機能項目が複数あり、複数のボタンが列を成して、更にその列が複数並ぶようなものであると、以下のような機能項目の誤選択が発生する場合がある。つまり、1つの列内にある機能項目に対して列の延びる方向にカーソルの移動を行った場合に、入力部での操作は人の手動操作であるため、完全な直線上にカーソルを移動させることは困難であり、カーソルの移動先が所望の機能項目に対して、隣の列の機能項目に位置して、意図しない機能項目が選択されてしまう場合がある。
【0007】
あるいは、所望の機能項目を選択しても、選択された座標位置が機能項目の境界近傍であると、選択決定のための入力操作(指で押し込む等の操作)のズレによって、隣の列の機能項目を選択決定してしまうという誤入力が発生する場合もある。
【0008】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、機能項目が複数の列を成して配置されるものにおいて、機能項目の誤選択、および誤入力を抑制可能とする入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0010】
請求項1に記載の発明では、画面上に複数の機能項目を表示する表示部と、
所定の選択操作に応じて画面上を移動するポインタによって、複数の機能項目に対してそれぞれ設けられる選択領域のいずれか1つを選択し、且つ、所定の決定操作に応じてその選択を決定する入力部と、
入力部からの入力値に基づいてポインタの移動を制御する制御部と、を備える入力装置において、
複数の機能項目は、複数の列を成すように配置されており、
制御部は、任意の機能項目が選択されると、複数の列の方向のうち、予め定められた方向に沿う列であって、任意の機能項目が属する機能項目の列における選択領域を、隣の列に向かう方向へ拡大するように設定し直すことを特徴とする入力装置。
【0011】
この発明によれば、選択された任意の機能項目を含む予め定められた方向の機能項目の列を対象にして、予め定められた方向に沿う選択領域の境界線位置が、隣の列に向かう方向へ移動され、選択領域が拡大されるので、任意の機能項目からポインタを移動させた時に隣の列に向かう方向のブレがあっても、そのブレ分を吸収することができ、機能項目の誤選択を抑制することができる。
【0012】
また、任意の機能項目からポインタを移動し所望の機能項目を選択した場合、ポインタの位置が隣の列に向かう方向において機能項目の境界近傍にあっても、選択領域が隣の列に向かう方向に拡大されているので、決定操作を行う際に位置ズレが発生しても、この位置ズレ分を吸収することができる。よって、所望の機能項目を選択した後に、その機能項目を確実に決定することができるので、誤入力の発生を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、制御部は、任意の機能項目からポインタが移動するときの予め定められた方向に沿う移動量のベクトル成分の大きさに応じて、選択領域の拡大量を設定することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、ポインタが移動するときの移動方向を加味した選択領域の設定が可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、制御部は、予め定められた方向に沿う移動量のベクトル成分の大きさが大きいほど、選択領域の拡大量をより大きく設定することを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、ポインタの予め定められた方向に沿う移動量のベクトル成分の大きさが大きいほど、主に予め定められた方向に沿ってポインタを移動させて次の機能項目を探していることが推測される。よって、主に予め定められた方向に移動されるポインタにおいて、隣の列に向かう方向への選択領域がより大きく設定されるので、ポインタ移動時に隣の列に向かう方向へのブレが大きく発生しても、そのブレの分を吸収することができ、機能項目の誤選択の発生を効果的に抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、入力装置は、車両に搭載されており、
制御部は、車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、選択領域の拡大量をより大きく設定することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、車両に搭載されるものであると、車両の走行時に発生する振動等によって、ポインタの移動時のブレが大きく発生する。よって、請求項4に記載の発明では、車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、選択領域の拡大量が大きく設定されるので、ポインタのブレの分を吸収することができ、機能項目の誤選択の発生を抑制することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、制御部は、選択領域を拡大した分だけ、他の機能項目の選択領域の位置を、ずらすように設定することを特徴としている。
【0020】
上記のように、予め定められた方向に沿う列内の機能項目の選択領域が拡大されると、その分、他の列にある機能項目の選択領域が小さくなるため、仮に、予め定められた方向から他の列に向かう方向にポインタの移動が変更されると、他の列における機能項目の選択がされにくくなってしまう。
【0021】
これに対して、請求項5に記載の発明によれば、予め定められた方向に沿う列内の機能項目の選択領域を拡大した分だけ、他の機能項目の選択領域の位置を、ずらすようにしているので、他の機能項目の選択領域の大きさを変えずに保持することができ、他の機能項目が選択されにくくなってしまうということを抑制することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明では、画面上に複数の機能項目を表示する表示部と、
所定の選択操作に応じて画面上を移動するポインタによって、複数の機能項目に対してそれぞれ設けられる選択領域のいずれか1つを選択し、且つ、所定の決定操作に応じてその選択を決定する入力部と、
入力部からの入力値に基づいてポインタの移動を制御する制御部と、を備える入力装置において、
複数の機能項目は、複数の列を成すように配置されており、
制御部は、現在選択されている任意の機能項目の選択領域からポインタが移動されたとき、ポインタと、ポインタに隣接する機能項目との距離を算出し、
複数の列の方向のうち、予め定められた方向に沿う列であって、任意の機能項目が属する列内の機能項目に対して、算出した距離が短くなるように補正距離を算出し、
算出した距離と補正距離とのうち、一番短い距離と成る機能項目を次に選択することを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、予め定められた方向に沿う列であって、任意の機能項目が属する列内の機能項目に対して、ポインタとの距離を補正することで、補正距離を実際の距離よりも小さくすることができる。よって、算出された距離と補正距離のうち、一番短い距離と成る機能項目を選択することで、予め定められた方向に沿う列内の機能項目を優先して、次に選択することができる。よって、予め定められた方向に沿う列内にある機能項目の選択や、選択決定が容易となり、ひいては誤選択や誤入力を抑制することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明では、制御部は、ポインタの移動方向に応じて、補正距離算出時の補正量を設定することを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、ポインタが移動するときの移動方向を加味した次の機能項目の選択が可能となる。
【0026】
請求項8に記載の発明では、制御部は、ポインタの移動方向が、予め定められた方向に沿っているほど、補正量をより大きく設定することを特徴としている。
【0027】
この発明によれば、ポインタの移動方向(予め定められた方向)に沿って並ぶ機能項目を次に選択しやすくなる。
【0028】
請求項9に記載の発明では、車両に搭載されており、
制御部は、車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、補正距離算出時の補正量をより大きく設定することを特徴としている。
【0029】
この発明によれば、車両に搭載されるものであると、車両の走行時に発生する振動等によって、ポインタの移動時のブレが大きく発生する。よって、請求項9に記載の発明では、車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、補正距離算出時の補正量がより大きく設定されるので、振動等に伴うポインタのブレがあっても、予め定められた方向に沿う列内の機能項目の選択が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】入力装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】第1実施形態の各ボタンにおける選択領域、および拡大選択領域を示す説明図である。
【図3】第1実施形態の変形例を示す説明図である。
【図4】第2実施形態を示す説明図である。
【図5】第4実施形態を示す説明図である。
【図6】第5実施形態を示す説明図である。
【図7】第5実施形態の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0032】
(第1実施形態)
第1実施形態の入力装置100について図1、図2を用いて説明する。図1は入力装置100の概略構成を示す構成図、図2は各ボタン1〜9における選択領域1121〜1129、および拡大選択領域112a6、112b1を示す説明図である。
【0033】
入力装置100は、図1に示すように、表示画面上にGUI(グラフィカルユーザインターフェース)を表示する表示部110と、システムに対する指示を入力する入力部120と、入力部120からの入力に基づいてGUIの表示制御を行う制御部130と、を備えている。
【0034】
表示部110は、例えば液晶ディスプレイのような表示手段であり、表示画面上の全体に亘って複数の機能項目を表示するようになっている。機能項目は、例えば、複数のボタンであり、複数のボタンは、複数の列を形成するように表示画面上に配置されている。ここでは、複数のボタンは、表示画面上の左右方向、および上下方向にそれぞれ複数並べられて、碁盤目を成すように配置されている。図1、図2中では、説明用としてボタン1〜9を表示している。複数のボタン1〜9は、それぞれに所定のプログラムが割り当てられたものであり、後述するボタンの選択操作、および選択後の決定操作によって、選択されたボタンのプログラムが実行されるようになっている。
【0035】
尚、複数のボタンは、上記のような碁盤目状に配置されるものに限らず、列の途中のボタンの大きさが周りのボタンより大きくあるいは小さく設定されたものや、列の途中でボタンが未配置となるもの等としても良い。また、ボタン1〜9は、図1、図2に示すように、外形が矩形形状(正方形)に形成されたものとしているが、ボタンの形状は、この例に限定されるものではない。
【0036】
ボタン1〜9のうち、いずれかのボタンが選択されたときには、図1に示すように、選択されたボタン(図1中ではボタン3)の外周部に枠状のカーソル111が点灯表示され、使用者に対してボタンの選択状態が視覚的に認識されるようになっている。
【0037】
各ボタン1〜9の周りには、図2に示すように、例えば、各ボタン1〜9の間の領域を等分する中間位置に配置された複数の境界線112によって、各ボタン1〜9の位置を区画する選択領域1121〜1129が設けられている。つまり、各選択領域1121〜1129は、入力装置100の作動初期状態において、各ボタン1〜9の一回り外側からそれぞれのボタン1〜9を取り囲むように設定された領域となっている。境界線112は、表示部110の表示画面上において使用者には不可視の状態で設定されている。
【0038】
入力部120は、例えば、トラックパッド、あるいはタッチパッド等のポインティングデバイスで構成された入力手段である。入力部120は、使用者が入力部120の表面上で指をスライド操作することで、表示部110の表示画面上にポインタ113を移動させるようになっている。ポインタ113は、使用者に対して不可視のもの、あるは可視のものとして設定することができる。そして、ポインタ113が各ボタン1〜9のうち、所望のボタン(1〜9のいずれか)の選択領域(1121〜1129のいずれか)内に入ると、所望のボタンを選択状態とすることができるようになっている。更に、使用者が入力部120の表面上で指を押し込むことで、所望のボタンの選択状態を決定状態にすることができるようになっている。
【0039】
制御部130は、例えば、コンピュータであり、少なくとも演算・制御機能を備えた中央演算装置(CPU)、プログラムやデータを格納する記憶機能を備えたROM、RAM等からなる主記憶装置(メモリ)及びハードディスクなどの補助記憶装置から構成されている。制御部130は、入力部120からの入力値(指のスライド)に基づいてポインタ113の移動を制御するようになっている。
【0040】
本実施形態においては、制御部130は、複数のボタンの中の任意のボタン(1〜9のいずれか)が選択されると、複数のボタン1〜9によって形成される列の方向(上下方向、左右方向)のうち、予め定められた方向であって、任意のボタンが属するボタン列の境界線112の位置を、隣の列に向かう方向へ移動させて(拡大境界線112a、112b)、選択領域を拡大するように設定し直すようになっている。
【0041】
ここで、「予め定められた方向」というのは、複数のボタン1〜9の内容および配置等から、使用者がポインタ113を移動させて所望のボタンを選択するにあたって、使い勝手のよいポインタ113の主たる移動方向として定義したものである。以下、「予め定めた方向」を「主移動方向」と呼ぶことにする。本実施例では、この主移動方向を、例えば、「左右方向」として捉えている。
【0042】
具体的に、図2に示すように、ポインタ113が現在、ボタン6におけるIの位置にあるとする。このとき、ポインタ113が選択領域1126内にあることから、各ボタン1〜9のうち、ボタン6が選択状態となっている。このとき、ボタン6が選択されたため、制御部130は、ボタン6を含む左右方向(主移動方向)のボタン4〜6の列に対して、新たな境界線として拡大境界線112aを設定する。拡大境界線112aの位置は、図2中の上下方向の境界線112のうち、2番目と3番面の境界線112に対して、ボタン6を含むボタン4〜6の列の隣の列となるボタン1〜3の列、およびボタン7〜9の列に向けて所定量移動された位置となる。拡大境界線112aによって、ボタン6に対しては、ボタン6を取り囲む拡大選択領域112a6(図2中の実線四角内領域)が設定されることになる。
【0043】
この状態から、使用者がポインタ113をボタン3におけるIIの位置に移動させたとすると、ポインタ113は、ボタン3側の拡大境界線112aを超えてボタン3側に移動するので、ボタン3が選択状態となる。
【0044】
更に、ボタン3が選択状態となると、制御部130は、図2中の白矢印のように、拡大境界線112aを拡大境界線112bに設定し直す。拡大境界線112bの位置は、ボタン3を含むボタン1〜3の列の隣の列となるボタン4〜6の列に向けて所定量移動された位置となる。
【0045】
これによって、ボタン1〜3の選択領域1121〜1123は、上下方向の下側に延びた領域となる。例えば、ボタン1における選択領域1121(図2中の一点鎖線四角内領域)は、拡大選択領域112b1(図2中の実線四角内領域)となる。
【0046】
このように、図2中のIIの位置に移動されたポインタ113によってボタン3が選択された後、次にポインタ113は、使用者によって主移動方向(図2中の左右方向)に移動される可能性が高い。このとき、入力部120における使用者の指のスライド操作によっては、ポインタ113が隣のボタン4〜6の列に向かう方向にブレてしまうことが在り得る。これは、使用者による指のスライド操作においては、あくまでも手動操作であって、完全な直線的な動きでスライドさせることが困難なためである。
【0047】
本実施形態によれば、このようなポインタ113の移動におけるブレが発生するような場合であっても、ポインタ113の移動される方向にあるボタン1〜3における選択領域1121、1122、1123が隣のボタン4〜6の列に向かう方向に拡大されるので、ポインタ113のブレ分を吸収することができ、ボタンの誤選択を抑制することができる。例えば、図2に示すように、ポインタ113がボタン4上のIIIの位置となったとき、通常の選択領域1121〜1129に基づくと、ポインタ113は選択領域1124内にあり、ボタン4が選択されるところを、拡大境界線112bに基づく拡大選択領域112b1によって、ボタン1が選択されることになるのである。
【0048】
また、ポインタ113を移動させて、所望のボタンを選択した場合、ポインタ113の位置が隣の列に向かう方向においてボタンの境界線近傍にあっても、選択領域が拡大選択領域として隣の列に向かう方向に拡大されているので、決定操作を行う際に位置ズレが発生しても、この位置ズレ分を吸収することができる。よって、所望のボタンを選択した後に、そのボタンを確実に決定することができるので、誤入力の発生を抑制することができる。
【0049】
尚、ポインタ113の移動が、図2に対して、例えば、ボタン3からボタン6およびボタン4に向かうものであると、拡大境界線は112aとなり、ポインタ113がボタン4〜6の列に対してボタン1側にブレた場合でも、ボタン4が選択される。
【0050】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例を図3に示す。上記第1実施形態では、ポインタ113の主移動方向を左右方向とした場合について説明したが、主移動方向を左右方向、および上下方向としても良い。この場合は、図3に示すように、例えば、ボタン9が選択されると、制御部130は、拡大境界線112aとして、ボタン9の選択領域を白矢印のように、それぞれ左右方向および上下方向に拡大する形で設定する(図3中の白矢印)。
【0051】
これにより、ボタン9からポインタ113が左右方向、あるいは上下方向に移動された場合に、ボタン9を含む左右方向、あるいは上下方向のボタンの列に含まれるボタンを確実に選択、更には決定することができる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態について図4を用いて説明する。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、制御部130は、任意のボタンからポインタ113が移動するときの主移動方向に沿う移動量のベクトル成分の大きさに応じて、選択領域の拡大量を設定するようにしたものである。ここでは、主移動方向に沿う移動量のベクトル成分の大きさが大きいほど、選択領域の拡大量をより大きく設定するようにしている。
【0053】
本実施形態では、主移動方向は、上記第1実施形態と同様に左右方向としている。制御部130は、任意のボタン(図4中ではボタン1〜6のいずれか)からポインタ113が左右方向のボタンの列によって挟まれる境界線112を超えたときに、ポインタ113の移動量を把握する。ポインタ113の移動量は、例えば、表示部120の座標中におけるポインタ113の移動ベクトルによって把握することができる。このとき、制御部130は、移動ベクトルにおけるx成分(左右方向成分)がy成分(上下方向成分)より大きいほど、ポインタ113の左右方向に向かう方向の移動量が大きいと把握する。尚、移動ベクトルにおけるx成分がy成分より大きいか否かは、移動ベクトルの傾き、移動ベクトルにおけるx成分とy成分との差、あるいは移動ベクトルにおけるx成分とy成分との比等によって把握することができる。
【0054】
図4では、ポインタ113が、ボタン4〜6の列から、ボタン1〜3の列に向けて境界線112を越えて移動する場合を示している。制御部130は、図4に示すように、ポインタ113の左右方向に向かう方向の移動量(x方向の移動量)が大きいほど、拡大境界線112aの位置をボタン4〜6の列に対して、ボタン1〜3の列に向かう方向へ位置するように設定することで、選択領域がより大きくなるように設定する。
【0055】
ポインタ113が左右方向により大きく移動される場合では、ポインタ113の移動量が大きいほど、使用者は主に左右方向へポインタ113を移動させて次のボタンを探していることが推測される。よって、左右方向にポインタ113が移動される場合において、隣の列に向かう方向(ボタン4〜6の列からボタン1〜3の列へ向かう方向)への移動のブレが大きく発生しても、隣の列に向かう方向への選択領域がより大きく設定されるので、ポインタ113のブレの分を吸収することができ、ボタンの誤選択の発生を効果的に抑制することができる。
【0056】
逆に、制御部130は、図4に示すように、ポインタ113の隣の列に向かう方向の移動量(y方向の移動量)が大きいほど、拡大境界線112aの位置を本来の境界線112の近くに設定し、選択領域が大きくなるようにはしていない。よって、ポインタ113の隣の列に向かう方向の移動に対しては、速やかにボタンの選択が変更されていくので、操作性を向上させることができる。
【0057】
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態に対して、本入力装置100は、車両に搭載されて使用することも可能である。この場合であると、制御部130は、車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、選択領域の拡大量をより大きく設定するようにすると良い。
【0058】
入力装置100が車両に搭載されるものであると、車両の走行時に発生する振動等によって、ポインタ113の移動時のブレが大きく発生することが考えられる。よって、車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、選択領域の拡大量がより大きく設定されるようにすることで、ポインタ113のブレの分を吸収することができ、ボタンの誤選択の発生を抑制することができる。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態について図5を用いて説明する。第4実施形態は、上記第1実施形態の変形例に対して、制御部130は、選択されたボタンの位置を基に選択領域を拡大した分、他のボタンの選択領域の位置を、ずらすように設定するものである。
【0060】
本実施形態では、主移動方向は、上記第1実施形態の変形例と同様に左右方向、および上下方向としている。図5に示すように、例えば、ボタン9が選択されると、制御部130は、拡大境界線112aとして、ボタン9の選択領域を白矢印のように、それぞれ左右方向および上下方向に拡大する形で設定する(図5中の白矢印)。
【0061】
ここで、上記のように、選択されたボタン9を基に、左右方向、あるいは上下方向に選択領域が拡大されると、その分、ボタン9を含む左右方向のボタンの列、およびボタン9を含む上下方向のボタンの列とそれぞれ隣り合うボタンの列における選択領域は、ボタン9における選択領域が拡大される分、縮小される形となるため(前述の図3参照)、選択されたボタン9から、隣り合うボタンの列に向かう方向にポインタ113の移動が変更されると、隣り合う列におけるボタンの選択がされにくくなってしまう。
【0062】
そこで、本実施形態では、制御部130は、ボタン9における選択領域を拡大した分だけ、隣り合う列におけるボタン、更には他の列のボタンの選択領域の位置を、順にずらすように設定する。この場合では、ボタン9の選択領域が左右方向、および上下方向に拡大されているので、拡大された分だけ隣り合う列のボタン、更に他の列のボタンの選択領域は、図5中の黒線矢印で示すように、左右方向、および上下方向にそれぞれスライドするように移動される。尚、表示部110の外周枠位置に対応する境界線112の位置は、そのままとする。これは、ポインタ113が表示部110の外周枠位置に移動されれば、確実に、その位置における選択領域に対応するボタンを選択可能となるためである。
【0063】
以下、制御部130は、ポインタ113が複数のボタン間で移動されていくたびに、選択されたボタンに対して拡大選択領域を設定すると共に、他の列のボタンの選択領域をずらすようにしていく。
【0064】
これにより、選択されたボタンを基に左右方向、および上下方向に選択領域を拡大した分だけ、他の列ボタンの選択領域の位置を、ずらすようにしているので、他の列のボタンの選択領域の大きさを変えずに保持することができ、他の列におけるボタンが選択されにくくなってしまうということを抑制することができる。
【0065】
(第5実施形態)
第5実施形態について図6を用いて説明する。第5実施形態は、上記第1実施形態に対して、制御部130は、各ボタンとポインタ113との距離に基づいて、次のボタンを選択するようにしたものとしている。
【0066】
本実施形態では、主移動方向は、上記第1実施形態と同様に左右方向としている。制御部130は、例えば、ポインタ113が選択されていた任意のボタン(ボタン1)の外に出た場合に、外に出たポインタ113と、このポインタ113に隣接するボタンとの距離を算出する。例えば、制御部130は、図6に示すように、ポインタ113と、隣接する各ボタン1、2、4、5との距離を、それぞれ、10、4、6、2と算出する。距離の算出に当たっては、ポインタ113と各ボタン1、2、4、5のポインタ113に一番近い角部との距離、あるいはポインタ113と各ボタン1、2、4、5との最短距離、あるいはポインタ113と各ボタン1、2、4、5の中心位置との距離、等とすることができる。ここでは、ポインタ113と各ボタン1、2、4、5との距離は、 ポインタ113と各ボタン1、2、4、5のポインタ113に一番近い角部との距離としている。
【0067】
次に、制御部130は、上記のように算出された距離に対して、所定の補正を行う。所定の補正とは、最初に選択されていた任意のボタン(ボタン1)が含まれる主移動方向のボタンの列(ここでは、ボタン1を含む左右方向の列となる)に属するボタン(ボタン1、2)について、得られた距離から予め定めた所定値を減算する、というものである。最初に選択されていたボタン1に対しては、第1所定値として例えば6を減算する。また、他のボタン2に対しては、第2所定値として例えば3を減算する。よって、ボタン1、2の補正後の補正距離は、4、1となる。
【0068】
そして、制御部130は、最初に算出したボタン4、5の距離(6と2)と、補正によるボタン1、2の補正距離(4と1)のうち、ポインタ113と一番近い距離(補正距離1)となるボタンを次のボタンとして選択する。この場合では、ボタン2が次の選択されるボタンとなる。
【0069】
本実施形態によれば、最初に選択されていた任意のボタンが属する主移動方向の列内のボタンに対して、ポインタ113との距離を補正することで、補正距離は実際の距離よりも小さくすることができる。よって、算出された距離と補正距離のうち、一番短い距離と成るボタンを選択することで任意のボタンが属する主移動方向の列内のボタンを優先した選択が可能となる。
【0070】
これは、ポインタ113が任意のボタンの選択領域から外れた場合であっても、ポインタ113の移動の動きは、任意のボタンが属する主移動方向の列を対象にしている傾向があると見られるため、次の選択対象として、任意のボタンが属する主移動方向の列内のボタンを優先するようにするのである。よって、任意のボタンが属する主移動方向の列内にあるボタンの選択や、選択決定が容易となり、ひいては誤選択や誤入力を抑制することができる。
【0071】
尚、算出した距離を補正する要領として、本実施形態では、最初に選択されていた任意のボタンが含まれる主移動方向のボタンの列に属するボタンについて、実際に得られた距離から予め定めた所定値を減算するものとした。しかしながら、これに限定されることなく、主移動方向とは異なるボタンの列に属するボタンに対して、逆に所定値を加算して補正距離とし、主移動方向のボタン列に属するボタンの距離を見かけ上、小さくすることで対応しても良い。
【0072】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態の変形例について図7を用いて説明する。第5実施形態の変形例は、上記第5実施形態に対して、制御部130は、ポインタ113の主移動方向を左右方向、および上下方向とした場合に、ポインタ113と各ボタンとの距離に基づいて、次のボタンを選択するようにしたものとしている。
【0073】
制御部130は、例えば、ポインタ113が選択されていた任意のボタン(ボタン1)から移動した場合に、移動先のポインタ113とこのポインタ113に隣接するボタンとの距離を算出する。ここでは、ポインタ113の移動先は、例えば、ボタン5の領域の左上隅にある。制御部130は、図7に示すように、ポインタ113と、隣接する各ボタン1、2、4、5との距離を、それぞれ、8、2、5、−1と算出する。ポインタ113とボタン5との距離は、ポインタ113がボタン5の領域内にあることから、マイナスとなっている。距離の算出方法は、上記第5実施形態と同一である。
【0074】
次に、制御部130は、上記のように算出された距離に対して、所定の補正を行う。所定の補正としては、最初に選択されていた任意のボタン(ボタン1)が含まれる主移動方向のボタンの列(ここでは、ボタン1を含む左右方向の列、および上下方向の列となる)に属するボタン(ボタン1、2、4)について、得られた距離から予め定めた所定値を減算する。つまり、最初に選択されていたボタン1に対しては、第1所定値として例えば8を減算する。また、他のボタン2、4に対しては、第2所定値として例えば4を減算する。よって、ボタン1、2、4の補正後の補正距離は、0、−2、1となる。
【0075】
そして、制御部130は、最初に算出したボタン5の距離(−1)と、補正によるボタン1、2、4の補正距離(0、−2、1)のうち、ポインタ113と一番近い距離(補正距離−2)となるボタンを次のボタンとして選択する。この場合では、ボタン2が次の選択されるボタンとなる。
【0076】
このように、主移動方向が複数想定される場合でも、上記第5実施形態と同様に、次に選択すべきボタンを容易に決定することができ、ポインタ113の移動方向を加味したボタンの選択が可能となる。
【0077】
尚、上記第5実施形態、および第5実施形態の変形例においては、制御部130は、ポインタ113の移動方向に応じて、補正距離算出時の補正量を設定するようにしても良い。具体的には、制御部130は、ポインタ113の移動方向が、主移動方向に沿っているほど、補正量をより大きく設定すると良い。
【0078】
これにより、ポインタ113が移動するときの移動方向を加味した次のボタンの選択が可能となる。つまり、ポインタ113の移動方向が主移動方向に沿っているほど、その主移動方向に沿って並ぶボタンを次に選択しやすくなる。
【0079】
また、上記第5実施形態、および第5実施形態の変形例においては、上記第3実施形態で説明したように、車両に搭載されて使用されるものとしても良い。この場合は、制御部130は、車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、補正距離算出時の補正量をより大きく設定するようにする。
【0080】
車両に搭載されるものであると、車両の走行時に発生する振動等によって、ポインタ113の移動時のブレが大きく発生するが、このような振動等に伴うポインタ113のブレがあっても、主移動方向に沿う列内のボタン113の選択が容易となる。
【0081】
また、上記第5実施形態、第5実施形態の変形例においては、主移動方向を左右方向、あるいは左右方向および上下方向としたが、主移動方向として斜め方向を採用しても良い。つまり、主移動方向としては、左右方向、上下方向、および斜め方向のうち、少なくとも1つを含むものとして対応可能である。
【符号の説明】
【0082】
1〜9 ボタン(機能項目)
100 入力装置
110 表示部
111 カーソル
112 境界線
112a、112b 拡大境界線
1121〜1129 選択領域
112a6、112b1 拡大選択領域
113 ポインタ
120 入力部
130 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面上に複数の機能項目を表示する表示部と、
所定の選択操作に応じて前記画面上を移動するポインタによって、複数の前記機能項目に対してそれぞれ設けられる選択領域のいずれか1つを選択し、且つ、所定の決定操作に応じてその選択を決定する入力部と、
前記入力部からの入力値に基づいて前記ポインタの移動を制御する制御部と、を備える入力装置において、
複数の前記機能項目は、複数の列を成すように配置されており、
前記制御部は、任意の前記機能項目が選択されると、複数の前記列の方向のうち、予め定められた方向に沿う列であって、前記任意の機能項目が属する前記機能項目の列における前記選択領域を、隣の列に向かう方向へ拡大するように設定し直すことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記任意の機能項目から前記ポインタが移動するときの前記予め定められた方向に沿う移動量のベクトル成分の大きさに応じて、前記選択領域の拡大量を設定することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記予め定められた方向に沿う移動量のベクトル成分の大きさが大きいほど、前記選択領域の拡大量をより大きく設定することを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
車両に搭載されており、
前記制御部は、前記車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、前記選択領域の拡大量をより大きく設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の入力装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記選択領域を拡大した分だけ、他の前記機能項目の前記選択領域の位置を、ずらすように設定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の入力装置。
【請求項6】
画面上に複数の機能項目を表示する表示部と、
所定の選択操作に応じて前記画面上を移動するポインタによって、複数の前記機能項目に対してそれぞれ設けられる選択領域のいずれか1つを選択し、且つ、所定の決定操作に応じてその選択を決定する入力部と、
前記入力部からの入力値に基づいて前記ポインタの移動を制御する制御部と、を備える入力装置において、
複数の前記機能項目は、複数の列を成すように配置されており、
前記制御部は、現在選択されている任意の前記機能項目の前記選択領域から前記ポインタが移動されたとき、前記ポインタと、前記ポインタに隣接する前記機能項目との距離を算出し、
複数の前記列の方向のうち、予め定められた方向に沿う列であって、前記任意の機能項目が属する列内の前記機能項目に対して、算出した前記距離が短くなるように補正距離を算出し、
算出した前記距離と前記補正距離とのうち、一番短い距離と成る前記機能項目を次に選択することを特徴とする入力装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ポインタの移動方向に応じて、前記補正距離算出時の補正量を設定することを特徴とする請求項6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ポインタの移動方向が、前記予め定められた方向に沿っているほど、前記補正量をより大きく設定することを特徴とする請求項7に記載の入力装置。
【請求項9】
車両に搭載されており、
前記制御部は、前記車両の速度、あるいは振動量が大きいほど、前記補正距離算出時の補正量をより大きく設定することを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1つに記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88961(P2013−88961A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227702(P2011−227702)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】