説明

入浴システム

【課題】浮力による担架の背もたれ部の移動を防止することができ、要介助者が快適に入浴を行うことができる入浴システムを提供する。
【解決手段】座部31と、該座部31の端部に傾動自在に連結された背もたれ部32とを備えた担架30と、浴槽1と、該浴槽1内に支持されていて担架30を載せるための支持台3とを備えた入浴装置10とからなる入浴システム60において、担架30が支持台3上に載せられた際に、背もたれ部32の傾動を阻止する浮き止め機構40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病人や寝たきりの老人、身体障害者等の要介助者を入浴させるための入浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、寝たきりの老人や身体障害者や手術直後の患者のような要介助者を入浴させる入浴システムとして、要介助者が載せられた担架をストレッチャーで入浴装置の浴槽に横付けし、このストレッチャー上から浴槽内の支持台に移動させるよう構成される入浴システムが知られている。この入浴システムは、浴槽または支持台のうち何れか一方を平行移動によって昇降させて、要介助者を湯に浸からせるようになっている(例えば特許文献1参照)。このような入浴システムによれば、要介助者を介護する介護者が、比較的労力を必要とせず要介助者を入浴させるようになっている。
【0003】
また、担架は通常、要介助者の下半身が載せられる座部と、この座部の一端側に傾動可能に設けられ要介助者の上半身が載せられる背もたれ部とから構成されており、要介助者を搬送する際には背もたれ部を倒伏させた搬送姿勢とされ、要介助者を入浴させる際には背もたれ部を座部に対して所定角度で傾斜させた入浴姿勢とされる。
【0004】
担架が入浴姿勢とされている際には、座部の一端側と背もたれ部の裏面とを連結するアームが所定の角度でロックされており、これによって背もたれ部は所定の傾斜角度に固定されている。この状態において、背もたれ部を座部に対して起立する方向に僅かに移動させるとアームのロックが解除され、背もたれ部を倒伏させて搬送姿勢とすることができる。
【特許文献1】特開平11−206841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、要介助者の上半身が載せられている担架の背もたれ部は、ブロー成形により形成されているため内部に空気層が存在し、湯に浸かった状態では浮力によって浮き易い構造とされている。従って、担架が入浴姿勢の状態で湯に浸かっている際には、場合によっては、浮力によって背もたれ部が座部に対して起立する方向に移動することでアームのロックが解除されてしまい、背もたれ部が倒伏してしまうおそれがあり、要介助者を安全かつ快適に入浴させることができないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、浮力による担架の背もたれ部の移動を防止して、要介助者を安全かつ快適に入浴させる入浴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る入浴システムは、座部と該座部の一端側に傾動自在に連結された背もたれ部とを備えた担架と、浴槽と、該浴槽内の底部に支持されていて担架を載せるための支持台とを備えた入浴装置とからなる入浴システムにおいて、前記担架が前記支持台上に載せられた際に、前記背もたれ部の傾動を阻止する浮き止め機構が設けられたことを特徴としている。
【0008】
このような特徴の入浴システムによれば、担架が支持台上に載せられた際に、浮き止め機構によって該担架の背もたれ部の傾動が阻止されるように固定される。これによって、浴槽内に湯が溜められて担架が湯に浸かり、背もたれ部に浮力が作用した場合であっても、この浮力によって背もたれ部が座部に対して起立する方向に移動することはないため、背もたれ部の傾斜角度を一定に保つことができる。
【0009】
また、本発明に係る入浴システムにおいて、前記浮き止め機構は、前記支持台と前記背もたれ部との一方に設けられた係止部と、他方に設けられた被係止部とからなり、前記担架が前記支持台上に移動した際に、前記係止部と前記被係止部とが嵌合することを特徴としている。
【0010】
担架が支持台上に移動した際に、支持台と背もたれ部との一方に設けられた係止部が、他方に設けられた被係止部と嵌合することによって、背もたれ部が固定される。これにより、担架を支持台上に移動させる動作をもって、背もたれ部を固定して傾斜角度を一定とすることができるため、特別な動作を必要とせず容易に背もたれ部の浮き防止を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明における入浴システムによれば、浮き止め機構により担架の背もたれ部の傾動が阻止されることによって、浮力による担架の背もたれ部の移動を防止することができ、要介助者を安全かつ快適に入浴させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態である入浴システムについて、図1から図9を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る入浴システムを示す側面図、図2は入浴システムの浮き止め機構付近の拡大図、図3は入浴システムの浮き止め機構付近の斜視図、図4は入浴装置の平面図、図5は担架の側面図、図6は担架の平面図、図7から図9はロック付き伸縮アームの側断面図及び機構の説明図である。本実施形態に係る入浴システム60は、寝たきりの老人や身体障害者や手術直後の患者のような要介助者を入浴させる際に使用され、図1に示すように、入浴装置10と、担架30とから概略構成されている。
【0013】
入浴装置10は、図1及び図4に示すように、入浴装置本体2と、この入浴装置本体2の上部に開口して設けられる浴槽1と、浴槽1の底部1aに配置される支持台3と、入浴装置本体2の第一側壁2aに設けられる扉部4と、入浴装置10の操作を行うための操作部5とを備えている。
【0014】
図4に示すように、この入浴装置10の第一側壁2aの上部には開口部2bが形成されており、この第一側壁2aに設けられた扉部4は、該第一側壁2aの高さ方向に沿って移動可能に構成され、開口部2bを開閉することができるように構成されている。また、この扉部4が上方へと移動され開口部2bを閉じた状態において、扉部4の浴槽1側の面に設けられるシール部材(図示省略)が、この開口部2bの上方を除く周囲三方を液密に密閉させることができるように構成されている。
【0015】
また、底部1aは、図1に示すように、浴槽1の長手方向に傾斜し形成されている。底部1aは、操作部5の側を傾斜の上方として、操作部5の反対側に向かうにつれ徐々に深くなるよう形成されている。また壁部1bは、この浴槽1の長手方向の操作部5の側と反対側の側板を形成している。壁部1bは前記長手方向に傾斜されており、該長手方向の操作部5側と反対側を傾斜の上方として、操作部5側に向かうにつれ徐々に深くなるよう形成され、底部1aとこの浴槽1の最深部で繋がっている。
【0016】
さらに、底部1aの上面には、支持台3が配置されている。この支持台3は、図4に示すように、例えば浴槽1の長手方向と直交する向きに平行に離間して延在する2本のガイドレール3a、3bと、このガイドレール3a、3bを上面に固定し浴槽1の長手方向に平行に離間して延在する2本の角形基材3cと、これら角形基材3cの操作部5側の端部に配設される2つの回転支軸3dとを備えている。ガイドレール3a、3bは、その形状が互いに向かい合わされた対称形とされて、角形基材3cの上面に固定されて配置されている。これらのガイドレール3a、3bはその本体が角棒状の形状を有しており、その扉部4側の端部は先端がテーパ状に形成されている。
【0017】
図1及び図4に示すように、ガイドレール3a、3bは、その先端のテーパ状の上面が、扉部4側からその反対側に行くにしたがって徐々に上方へと向かって傾斜するように形成されている。また、これら向かい合うガイドレール3a、3bの先端外側に形成されるテーパ状の外面は、それぞれ扉部4側からその反対側に行くにしたがって徐々に外方へと向かって傾斜するように形成されている。ガイドレール3a、3bの内側には、これらガイドレール3a、3bに沿うようにしてLアングル3i、3jがそれぞれのガイドレール3a、3bにその断面L字状の一の外面を接合させて、他の外面を上方へ向けた状態で対向配置されている。
【0018】
また、図4に示すように、2本の角形基材3cの回転支軸3d近傍には、これら角形基材3cに架設されるようにして角形基材3eが固定されている。また2本の角形基材3cは、その両ガイドレール3a、3bの配置される位置の略中央部にロック支持板3fを架設し固定している。また前記ロック支持板3fの上面には、フック付きのツメを有するロック部材3gがそのツメを扉4側へ向けて配設されている。2つの回転支軸3dは、略円柱状の形状を成し、前記2本の角形基材3cの向かい合う内面の操作部5側のそれぞれの端部に、互いの軸線を同一線上となるように向かい合わされて配置され、固定されている。
【0019】
さらに、回転支軸3dの下方には、支軸受板3hが、この入浴装置10の長手方向と直交する方向に延在して底部1aに固定されている。支軸受板3hの両端には、回転支軸3dが軸線回りに回動可能に支持されている。また、ガイドレール3bの下方には、上下方向に昇降駆動可能な昇降部(図示省略)が設けられており、この昇降駆動がガイドレール3bに伝達する構成とされている。
【0020】
そして、本実施形態においては、図4に示す支持台3における扉部4側から見て浴槽1の奥側の箇所には、詳しくは図2及び図3に示すようにかつガイドレール3bの下部に位置する箇所には、浴槽1の長手方向の操作部5側の反対側に略L字状に斜め上方に延びるブラケット41aと、該ブラケット41aの上方端部付近から浴槽1の長手方向と直交する軸に沿って扉部4側へ断面円形に突出した係止突起41bとからなる係止部41が付設されている。
【0021】
担架30は、要介助者を載せた状態で図示しないストレッチャー上に載置されて搬送されるとともに、入浴時には上述の入浴装置10の支持台3上に載せられるものであり、図5及び図6に示すように、要介助者の下半身が載せられる座部31と、該座部31の一端側に連結されこの連結部を支点として傾動可能な背もたれ部32とを備えている。なお、背もたれ部32は、ブロー成形により形成されて内部に空気層が存在しており、軽量なものとされている。
【0022】
また、座部31の長手方向と平面視直交する方向の両端部には、要介助者の落下を防止するための柵部31aが設けられているとともに、背もたれ部32の上面には長手方向一方の端部側から順にヘッドレスト32a、背もたれ32bが設けられている。そして要介助者が、ヘッドレスト32aにその頭部を載せ、長手方向の他方の側に足部を向けるようにして、上半身を背もたれ部32に、下半身を座部31に体重を預けてこの担架30に載せられるようになっている。
【0023】
また、担架30の座部31の裏面には、図5に示すように、ローラー34a、34bがそれぞれ複数ずつ設けられている。これらのローラー34a、34bは担架30の長手方向と平面視直交する方向に同一線上に並べられ、ローラー34aの列とローラー34bの列とが互いに平行に離間するように設けられている。またこれら両ローラー34a、34bの配置される間隔は、入浴装置10におけるガイドレール3a、3bが離間して配置される間隔と同一とされている。両ローラー34a、34bは、ローラー支持体36により軸支されその軸線を中心に回転可能とされ配設されている。
【0024】
また両ローラー34a、34bの外側には、複数のサイドローラー35がローラー支持体36に垂設されている。サイドローラー35は、その軸線を鉛直方向に向け軸線回りに回転可能とされている。また両ローラー34a、34bの内側にあるローラー支持体36の夫々の内面には、Lアングル37が設けられている。このLアングル37は、入浴装置10のLアングル3i、3jと若干の隙間を設けて嵌め合わされている。また、両ローラー34a、34bの内側の略中央部には入浴装置10のロック部材3gのツメと係合するためのピンを設けるロック受部38が備えられ、ロック部材3gとロックされ、固定されている。
【0025】
そして、図6に示す背もたれ部32の長手方向に平面視直交する方向の一端側(図5における奥側)の裏面には、詳しくは図2及び図3に示すように、背もたれ部32の裏面から薄板状に垂直に延びるようにして被係止部42が付設されている。この被係止部42の端部付近には、背もたれ部32の長手方向に平面視直交する向きに円形に貫通する係止孔42aが設けられている。そして、この被係止部42と上述の係止部41とで、背もたれ部32の傾動を阻止する浮き止め機構40が構成されている。
【0026】
また、担架30は、図5に示すように、背もたれ部32を倒伏させた状態が要介助者を搬送する際の搬送姿勢とされる一方で、背もたれ部32を座部31に対して所定角度で傾斜させた状態が入浴姿勢とされ、座部31の一端と背もたれ部32の裏面とを連結するロック付き伸縮アーム50が収縮している状態が搬送姿勢と、伸張している状態が入浴姿勢とされる。
【0027】
このロック付き伸縮アーム50は、詳しくは図7又は図8に示すように、角筒状の固定アーム51と、該固定アーム52の内部に挿入されるとともに、長手方向一方側(図7及び図8における右側)にスライド可能な可動アーム52とを備えており、固定アーム51の連結部51aが座部31に、可動アーム52の連結部52aが背もたれ部32にそれぞれ回動可能に取り付けられている。
【0028】
固定アーム51の一側面には開口部53が設けられており、該開口部53の一縁部が係合縁部53aとされている。また、固定アーム51における開口部53を備えた一側面に対向する面には、該固定アーム51の内部に突出するようにして固定ストッパー54が設けられている。
【0029】
可動アーム52における長手方向他方側(図7及び図8における左側)には、側面視にて長方形の対向する二辺がくの字状に切り欠かれた形状を有する回転ストッパー55が、鉛直面に沿って回転自在に設けられている。この回転ストッパー55においては、くの字の切り欠き部が係合溝部56とされている。
【0030】
次に、上記のように構成される入浴システム60の作用について説明する。
入浴装置10は、予め扉部4を下げ開口部2bを開口状態とし、支持台3を水平状態にしておく。そして、要介助者が載せられて搬送姿勢とされた担架30を載置した図示しないストレッチャーを、入浴装置10の第一側壁2aの側へ横付けし固定する。
【0031】
この際、搬送姿勢とされている担架30を、背もたれ部32が座部31に対して所定の角度で傾斜した入浴姿勢へと変形させる。担架30が図5の実線に示す搬送姿勢とされている場合には、ロック付き伸縮アーム50は、図7に示すように収縮した状態にある。この状態において、背もたれ部32を座部31に対して起立する方向へ移動させる。なお、この背もたれ部32は、ブロー成形により形成されて内部に空気層が存在しており軽量なものとされているため、容易に人の手によって移動させることができる。そしてこの移動によってロック付き伸縮アーム50の可動アーム52が背もたれ部32に引っ張られるようにして固定アーム51内から図7における長手方向一方側に、即ち伸張する方向にスライドする。そして、図9(a)に示すように回転ストッパー55が固定ストッパー54に当接して、回転ストッパー55が反時計回りに回転させられる。これにともなって、固定アーム51の開口部53から回転ストッパー55の一部が突出する。
【0032】
この状態においては、可動アーム52はこれ以上伸張する方向に移動することはできず、これにともなって、背もたれ部32の座部31に対して起立する方向への移動が制限される。そして、背もたれ部32を倒伏させる方向へ移動させようとすると、これによって可動アーム52が収縮する方向へ僅かにスライドし、固定ストッパー55における固定アーム51の開口部53から突出した部分の係合溝56が、該開口部53の係合縁部53aと係合して図8に示す状態となる。これにより、可動アーム52の収縮する方向への移動が阻止されるため、ロック付き伸縮アーム50がロック状態となり、これをもって担架30は、図5の二点鎖線で示す、背もたれ部32が座部31に対して所定の角度で傾斜した入浴姿勢とされる。
【0033】
なお、この状態で、ロック付き伸縮アーム50のロックを解除するには、背もたれ部32を座部に対して起立する方向に僅かに移動させて、可動アーム51を伸張する方向にスライドさせる。これによって、回転ストッパー55が固定ストッパー54に当接して反時計回りに回転して図9(b)に示す状態となり、この状態から可動アーム52を収縮する方向へスライドさせても、回転ストッパー55の係合溝56と固定アーム51の係合縁部53aが係合することはないため、ロック付伸縮アーム50は収縮し、担架を搬送姿勢とすることができる。
【0034】
従って、本実施形態においては、搬送姿勢とされた担架30の背もたれ部32を起立する方向へ移動させることで、傾斜状態でロックがかかった入浴姿勢に移行され、この入浴姿勢において背もたれ部32を起立する方向へ僅かに移動させることでロックが解除されて搬送姿勢に移行させることができる。
【0035】
そして、入浴姿勢とされて要介助者が載せられた担架30は、ガイドレール3a、3bを介して入浴装置10の支持台3上へ水平移動される。具体的手順としては、まず、担架30の裏面に備えられた複数のローラー34a、34bがガイドレール3a、3bの上面にそれぞれ載置されるとともに、複数のサイドローラー35がガイドレール3a、3b外側の面にそれぞれ摺接されるようにして配置される。なお、このサイドローラー35によって両ローラー34a、34bがガイドレール3a、3bから担架30の長手方向に脱落するのが防止される。また、Lアングル37は、Lアングル3i、3jと遊嵌状態に配置されており、この担架30が上方へと跳ね上がって脱落するのを防止している。
【0036】
このようにガイドレール3a、3b上の担架30を水平に押し出し移送する。そして担架30が、ガイドレール3a、3bに案内されることによって該ガイドレール3a、3bの延在する方向の所定の位置まで移動させていくと、ロック受部38が入浴装置10のロック部材3gと係合されて、担架30はその長手方向と直交する向きにロックされ支持台3上に固定される。
【0037】
そして、このように担架30を、該ガイドレール3a、3bの延在する方向の所定の位置まで移動させていくと、図2及び図3に示すように、支持台3に設けられた係止部41の係止突起41aが、背もたれ部32の裏面に付設された被係止部42の係止孔42aに嵌挿される。この係止部41及び被係止部42からなる浮き止め機構40によって、担架30における背もたれ部32は、座部31に対して起立及び倒伏する向きにロックされる。
【0038】
そして、このように、担架30が支持台3上に案内された後に、扉部4を上方へと移動させ、開口部2bを閉じてこの開口部2bの上方を除く周囲3方を液密に密閉させて、湯を浴槽1内に給湯させる。
【0039】
浴槽1内に湯が満たされた後、介護者はさらに要介助者を肩口まで湯に浸からせるため支持台3を降下させる。この降下は、図示しない昇降部によりなされる。この降下により、支持台3は、水平状態から回転支軸3dを回転支点としてガイドレール3b側を降下させるように回転移動させられて傾斜させられていく。このようにして支持台3が降下されると、支持台3に載置される担架30及び要介助者も同様にして回転支軸3dを中心として回転移動し傾斜させられていく。なお、支持台3の傾斜にともなって、支持台3上の担架30が傾斜した場合であっても、担架30に付設された被係止部42と、支持台3に付設された係止部41の係合が解かれることはないため、背もたれ部32の座部31の傾斜角度は一定のまま保持される。
【0040】
以上のように、本発明の実施形態の入浴システム60においては、担架30がガイドレール3a、3b上を案内されて支持台3の所定の位置に移動された際に、担架30の背もたれ部32に付設された被係止部42と、支持台に付設された係止部41が係止することにより、背もたれ部32の座部31に対する傾斜角度が固定される。これによって、浴槽内に湯が溜められて担架30が湯に浸かり、背もたれ部32に浮力が作用した場合であっても、この浮力によって背もたれ部32が座部31に対して起立する方向に移動することはなく、背もたれ部32の傾斜角度を一定に保つことができる。
【0041】
このように担架30が入浴姿勢とされている際に、担架30の背もたれ部32を座部31に対して起立する方向へ移動させると、ロック付き伸縮アーム50のロックが解除されて背もたれ部32が倒伏してしまうが、本実施形態においては、係止部41と被係止部42とからなる浮き止め機構40によって背もたれ部32の座部31に対する傾斜角度を固定することができるため、浮力によって入浴姿勢のロック解除の動作が行われることはない。従って、要介助者が入浴中に、担架30の背もたれ部32が不用意に倒伏することを防ぐことができ、要介助者を安全かつ快適に入浴させることができる。
【0042】
また、担架30をガイドレール3a、3bによって支持台3上に案内する動作をもって、担架30に付設された被係止部42とガイドレール3bに付設された係止部41が係止して、背もたれ部32の座部31に対する傾斜角度を一定とすることができるため、特別な動作を必要とせず容易に背もたれ部の浮き防止を図ることができる
【0043】
以上、本発明に係る入浴システム60の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態の浮き止め機構40は、係止部41が支持台3に付設されており被係止部42が背もたれ部32に付設されているが、係止部41が背もたれ部32に、被係止部42が支持台32に付設されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る入浴システムを示す側面図である。
【図2】図1の入浴システムの浮き止め機構付近の拡大図である。
【図3】図1の入浴システムの浮き止め機構付近の斜視図である。
【図4】入浴装置の平面図である。
【図5】担架の側面図である。
【図6】担架の平面図である。
【図7】収縮した状態のロック付き伸縮アームの側断面図である。
【図8】伸張した状態のロック付き伸縮アームの側断面図である。
【図9】ロック付き伸縮アームの機構説明するための部分拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1 浴槽
1a 底部
3a ガイドレール
3b ガイドレール
10 入浴装置
30 担架
31 座部
32 背もたれ部
40 浮き止め機構
41 係止部
42 被係止部
60 入浴システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、該座部の一端側に傾動可能に連結された背もたれ部とを備えた担架と、
浴槽と、該浴槽内の底部に支持されていて担架を載せるための支持台とを備えた入浴装置とからなる入浴システムにおいて、
前記担架が前記支持台上に載せられた際に、前記背もたれ部の傾動を阻止する浮き止め機構が設けられたことを特徴とする入浴システム。
【請求項2】
前記浮き止め機構は、前記支持台と前記背もたれ部との一方に設けられた係止部と、他方に設けられた被係止部とからなり、
前記担架が前記支持台上に移動した際に、前記係止部と前記被係止部とが嵌合することを特徴とする請求項1に記載の入浴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−39211(P2009−39211A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205573(P2007−205573)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)
【Fターム(参考)】