説明

入浴介助装置

【課題】 浴槽への取り付け及び取り外しが容易で、かつ座面に被介助者が乗り降りする位置と座面が昇降する際の上限位置との間で着座部の無理なく滑らかな移動を可能とする入浴介助装置を提供する。
【解決手段】 ベース部100と当該ベース部100の両端から略垂直に延在したアーム部200とからなり浴槽のリムに載置されるコの字型のフレーム10と、フレーム10に取り付けられた昇降装置と、フレーム10に取り付けられ、昇降装置を介して昇降可能となった着座部600及び着座台500を備えた入浴介助装置において、着座部600にピニオンギアを備えるとともに、着座台500にラックギア及びピニオンギアのアーム方向へのスライドをガイドするスライドガイドを備え、着座部600を着座台500に対して回転しながらスライド可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者や身体障害者などの入浴時に介助を必要とする者の入浴を助ける入浴介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽の縁部に取り付けられ、例えば高齢者や身体障害者など入浴時に介助を必要とする者の入浴を助ける入浴介助装置は従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる特許文献1に記載の入浴介助装置は、シートが基台と基台上に備わった着座部を有しており、当該基台は着座部移動用スリットと当該スリット両端部においてのみ着座部の回転を可能とする孔部を有している。そして、着座部をスリットに沿って移動させて当該スリットの両端部である入浴位置と移乗位置にそれぞれ達した場合にのみ着座部を略90°回転させてシートの向きを変え、被介助者を移乗させたり入浴するようになっている。
【特許文献1】特開平9−294686号公報(3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような構造を有する入浴介助装置によると、基台に対する着座部のスライド動作と回転動作とが独立して行われるので、被介助者が着座部に乗り降りする移乗位置と入浴位置との間で滑らかに移動させることができない。また、移乗位置と入浴位置とにおいてのみ着座部が回転するようになっているので、これらの位置において着座部が急激に回転して被介助者の姿勢が不安定となる恐れがある。また、着座部の急激な回転によって被介助者の手や指、脚を入浴介助装置と浴槽との間に挟んでしまう恐れもある。
【0004】
一方、シートのスライド動作と回転動作を複合動作として同時に行う機構をベアリング等の機械要素によって実現しようとすると、機構的に複雑で重量が重くなりかつ座面の高さも高い入浴介助装置となってしまう。そのため、浴槽への簡単な取り付け取り外しができなくなるとともに、座面の高さが高いので座面への被介助者の乗り降りが困難となり、反って使い勝手の悪い入浴介助装置となってしまう。
【0005】
本発明の目的は、浴槽への取り付け及び取り外しが容易で、かつ座面に被介助者が乗り降りする位置と座面が昇降する際の上限位置との間での着座部の無理なく滑らかな移動を可能とする入浴介助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明にかかる入浴介助装置は、
ベース部と当該ベース部の両端から略垂直に延在したアーム部とからなり浴槽のリムに載置されるコの字型のフレームと、
前記フレームに取り付けられた昇降装置と、
前記フレームに取り付けられ、前記昇降装置を介して昇降可能となった着座部及び着座台を備えた入浴介助装置において、
前記着座部にピニオンギアを備えるとともに、前記着座台にラックギア及び前記ピニオンギアの前記アーム方向へのスライドをガイドするスライドガイドを備え、前記着座部の着座台に対する回転と連動してスライドが可能なことを特徴としている。
【0007】
着座部が着座台に対して回転と同時にスライドする複合動作で移動するようになっているので、座面が昇降する際の上限位置と座面に被介助者が乗り降りする位置との間で着座部を滑らかに移動させることができる。すなわち、被介助者が着座した着座部が急激に回転することがないので、着座者の姿勢を安定させながら移乗させることができ、かつ着座部の急激な回転に伴う着座者の手挟み等を防止できる。
【0008】
また、ラックギアとピニオンギアとの組み合わせでこのような動作を実現することで、ピニオンギア全面を介して着座者の荷重を着座台に分散させることができるようになり、入浴介助装置の移乗機構を薄く構成することができる。これにより、着座部の高さを低くでき、被介助者が着座部から乗り降りし易くなって入浴介助装置の使い勝手を向上させる。また、このような簡易な構成の入浴介助装置とすることで入浴介助装置自体の小型化及び軽量化を図ることができ、浴槽リムへの後付け設置を前提とした入浴介助装置の使い勝手を向上させる。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の入浴介助装置は、請求項1に記載の入浴介助装置において、前記ピニオンギア若しくはピニオンギアと接触する着座台にピニオンギア摺動用のすべり部を設けたことを特徴としている。
【0010】
ピニオンギアの面全体で着座者の荷重を受けながら回転動作とスライド動作を同時に行う代わりに、例えばピニオンギアの円周上に設けたリブや円筒状のコロ(ローラ)などの滑り用突起部からなるすべり部を介して回転動作とスライド動作を行うことで、着座部のピニオンギアと着座台との摺動抵抗を減らすことができ、着座部の回転とスライドをより滑らかに行えるようになり、入浴介助装置の使い勝手を向上させる。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の入浴介助装置は、請求項1又は請求項2に記載の入浴介助装置において、
前記着座台は着座台本体と当該着座台本体の各アーム側端部に起き上がり可能に結合された副座部を備え、前記副座部には前記ピニオンギアの少なくとも一部を収容する収容部が形成され、かつ前記副座部の上面は座面が昇降する際の上限位置において前記着座部の下面と略面一となることを特徴としている。
【0012】
副座部にピニオンギアを収容する収容部を設けてピニオンギアの少なくとも一部が副座部の収容部に移動できるようにしたので、ピニオンギアのスライド量を十分確保することができ、着座部のスライド量を多くとることが可能となる。
【0013】
また、座面が昇降する際の上限位置において着座部の下面と副座部の上面を略面一とすることで、着座部と副座部との間に隙間が生じないようにし、着座した被介助者の手挟みの心配を無くす。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の入浴介助装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の入浴介助装置において、
前記ラックギアは、前記座面が昇降する際の上限位置において当該ラックギア両端部が対向する各アーム部の近傍にそれぞれ位置するように前記着座台に取り付けられ、当該上限位置において当該座面が前記各アーム部のどちら側にも回転と同時にスライドできるようになったことを特徴としている。
【0015】
ラックギアを着座台にこのように取り付けることで座面が昇降する際の上限位置において何れのアーム側に向かっても着座部が回転動作とスライド動作を可能とするので、浴槽の何れのリム側にも着座部を移動させることができ、被介助者が浴槽の何れの側からも着座部に座ることができるようになる。その結果、入浴介助装置を浴槽に取り付ける方向性を考えなくて済み、入浴介助装置の使い勝手を向上させる。
【0016】
また、本発明の請求項5に記載の入浴介助装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の入浴介助装置において、
前記座面に被介助者が乗り降りする座面移乗位置と前記座面昇降の際の座面上限位置との各位置で着座部が着座台にロックするロック機構を備えたことを特徴としている。
【0017】
このような位置において着座部が着座台に対して回転もスライドもさせないようにするロック機構を備えることで、被介助者が着座部に安心して着座できるとともに、シートを安心して昇降させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、浴槽への取り付け及び取り外しが容易で、かつ座面に被介助者が乗り降りする位置と座面が昇降する際の上限位置との間での着座部の無理なく滑らかな移動を可能とする入浴介助装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態にかかる入浴介助装置について説明する。本発明の一実施形態にかかる入浴介助装置1は、図1及び図2に示すように、上面視でコの字型を有したフレーム10と、フレーム10に取り付けられ浴槽内を昇降可能な背凭れ付きのシート50(図1参照)を備え、当該シート50は着座台500と着座部600を有して着座部600のみがシート上限位置において座面昇降上限位置と座面移乗位置との間を回転と同時にスライドして移動するようになっている。なお、ここでいう座面昇降上限位置とは、入浴介助装置1を浴槽に取り付けた状態(以下、「装置取り付け状態」とする)でシート50の着座部600が浴槽内を昇降する際に着座部600が上限に達した位置を言い(図8参照)、座面移乗位置とは、着座部600が浴槽のリム側に完全に移動して着座部600に被介助者が乗り降りする位置を言う(図11参照)。
【0020】
フレーム10は、例えばステンレスなどでできており、昇降装置300(図2参照)を備えたベース部100と、当該ベース部100の両端から略垂直に延在したアーム部200とからなる。そして、ベース部100が、浴槽の長手方向片端部のリム上に載置され、アーム部200は浴槽の両側方のリム上に載置されるようになっている。また、フレーム10には、図1に示すように、そのベース部100と各アーム部200に強度と成型のし易さを兼ね備えた樹脂でできたカバー101,201が被せられている。
【0021】
図2は、フレーム10のカバー101,201を取り去った状態を示した平面図である。図2から明らかなように、ベース部100にはDCモータ310、ウオーム歯車と平歯車とを組み合わせた減速ギア320、ワイヤ繰り出し巻き取りドラム330が備わっている。なお、減速ギア320とワイヤ繰り出し巻き取りドラム330は支持ブラケット350でベース部100にしっかりと固定されている。また、ベース部100にはDCモータ310を駆動するバッテリ370及びDCモータ310の駆動を制御する制御ボックス360が備わると共に、ブラケットとバネとの組み合わせからなりワイヤ繰り出し巻き取りドラム330に巻き取られるワイヤWの巻き取り方向を規制するワイヤ巻き乱れ防止部380が備わっている。また、ベース部100には対向する各アーム部間の間隔を調整可能とする図示しないアーム部間間隔調整機構が備わり、入浴介助装置1の取り付けられる浴槽の横幅に応じて入浴介助装置1のアーム部間の間隔を調整するようになっている。
【0022】
また、一方(図中左側)のワイヤ巻き乱れ防止部近傍には、ワイヤ繰り出し巻き取りドラム330の上側から繰り出されたワイヤWを後述するプーリに案内するガイドプーリ390が備わっている。
【0023】
ワイヤ繰り出し巻き取りドラム330には、ステンレス製の撚り線で周囲が樹脂で覆われたワイヤであってシート50を吊持するための可撓性部材をなす4本のワイヤWが各アーム部200に向かって2本ずつ巻回されている。また、ベース部100の両端部には繰り出したり巻き取られたりするワイヤWの延在方向をアーム部200の延在方向に変えるベースプーリ110が備わっている。
【0024】
一方、各アーム部200のベース側である基端部近傍及び先端部近傍には4本のワイヤWを各アーム部2本ずつその延在方向を変える第1のワイヤ繰り出し巻き取りプーリ210(以下、「第1プーリ210」とする)がワイヤWごとに設けられている。第1プーリ210は、例えばポリアセタール(POM)などの強度と自己潤滑性、成型性に優れた樹脂でできており、装置取り付け状態においてその回転中心軸線が鉛直方向を向いており、この第1プーリ210によって4本のワイヤWはそれぞれアーム延在方向から対向するアーム部200に向かって延在するようになっている。
【0025】
また、第1プーリ210の近傍であって入浴介助装置1を浴槽に取り付けた状態で見てアーム部200の第1プーリ下方には、各第1プーリ210に対応して第2のワイヤ繰り出し巻き取りプーリ220(以下、「第2プーリ220」とする)が備わっている。この第2プーリ220は、例えばポリアセタールなどの強度と自己潤滑性、成型性に優れた樹脂でできており、装置取り付け状態においてその回転中心軸線が水平方向を向いており、第1プーリ210から対向するアーム部200に向かって延在したワイヤWの向きを着座部600の下降方向に変えるようになっている。また、各アーム部200の長手方向略中央部であって各アーム部下面にはアーム部200を浴槽の側方リムに位置決め固定するストッパ230が下方に向かって延在している。
【0026】
以上の構成によって、ベース部100のワイヤ繰り出し巻き取りドラム330において一部巻き取られたワイヤWは、残りの部分がそれぞれワイヤ巻き乱れ防止部380やガイドプーリ390を介してベース部両端部に向かって延在すると共に、ベースプーリ110を介してアーム部200に沿って延在し、その先方部分が第1プーリ210を介してそれぞれのアーム部200の対向するアーム部側に延在した後、第2プーリ220を介してシート50の下降方向に向かう。そして、各ワイヤWの端部は着座台500に着脱可能に取り付けられ例えばステンレスでできた支持シャフト290に結合されている。
【0027】
一方、図1に示すシート50は、上面視矩形の着座台500と例えば十分な強度を確保した樹脂でできており上面視略矩形の着座部600と、着座部600に金属パイプ680を介して取り付けられた背凭れ690を有し、上述したように座面昇降上限位置と座面移乗位置との間をスライドと同時に回転しながら移動するようになっている。
【0028】
具体的には、着座台500は、例えばステンレスでできた略矩形の板体からなり、図3乃至図5に示すように、ポリアセタールなどの強度と成型性に優れた樹脂でできたラックギア510が着座台上面に取り付けられている。なお、ラックギア510は、座面昇降上限位置においてギア両端部が対向する各アーム部200の近傍に位置するように各アーム部200の長手方向に対して垂直をなす角度で着座台500に取り付けられている。また、着座台500には後述するピニオンギア610をスライド移動させるスライドガイド溝520がラックギア510と一定距離だけ離間して当該ラックギア510と平行に形成されている。これによって、着座部600が座面昇降上限位置から各アーム部200のどちら側にも回転と同時にスライドできるようになっている。
【0029】
また、シート上限位置において各アーム部200に隣接する着座台500のアーム部側の側方(以下、単に「側方」とする)には、図1及び図7に示すように着座台吊り下げ用のステンレスでできた支持ブラケット590が取り付けられている。そして、支持ブラケット590には図示しない切り欠き等が形成され、この支持ブラケット590に支持シャフト290(図7参照)が着脱自在に取り付けられている。また、着座台500の上部には着座部600と着座台500との間への手等の挟み込みを防止する保護カバー580(図1参照)が着座部600の移動を妨げないように設けられている。
【0030】
また、着座台500の保護カバー580の側方には図示しないヒンジ部が設けられ、当該ヒンジ部に樹脂でできたフラップ状の副座部570が起き上がり可能に備わっている。なお、副座部570の上面は、座面昇降上限位置において着座部600の下面と略面一となっており、着座部600と副座部570との間に隙間が生じないようにし、これによって、着座部600に着座した被介助者(以下、「着座者」とする)の手挟みを防止している。
【0031】
また、副座部570は、図7に示すように、シート50を浴槽内に下降させた際にワイヤWによって上方に起き上がるようになっており、シート下降中にワイヤWの一部を覆って着座者の手挟みを防止する役目も果たしている。また、各副座部570には、着座台側に上面視で半円状の収容凹み部571(図1参照)が形成され、シート上限位置において着座部600を座面移乗位置に移動させた時にこの収容凹み部571が着座部600に備わった後述するピニオンギア610の約半分を収容するようになっている。
【0032】
一方、着座部600は、例えばポリアセタールやABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)などの強度と成型のし易さを兼ね備えた樹脂でできた略矩形の板体からなり、ステンレスなどの金属パイプ680を介して樹脂でできた略矩形の背凭れ690を備えている。そして、着座部600の下面には、上述したラックギア510と噛合するピニオンギア610が図示しないネジ等の締結具によって固定されている。
【0033】
ピニオンギア610は例えばポリアセタールなどの摺動時に摺動抵抗が小さい樹脂でできた厚さが薄く大径の平歯車からなり、上述したラックギア510及びスライドガイド溝520と後述するスライダ530(図5参照)と協働して着座部600を着座台500に対してスライドと同時に回転しながら移動させる役目を果たしている。
【0034】
ピニオンギア610は、図3乃至図5に示すように、その中央部分にスライダ係合孔612を有するとともに、一方の面(着座部に取り付けられた状態でその上面)に上面視で深さの浅い円形のスライダ係合凹み部611をスライダ係合孔612と同心状に備えている。また、スライダ係合凹み部611の周方向90°の角度をなして3カ所に回転ロック機構を収容するキー溝状のロック機構収容部613が半径方向に備わっている。また、ピニオンギア610の他方の面(着座部に取り付けられた状態でその下面)には、図6に示すように、周方向に異なる半径を有する2つの凸状のすべり部614,615がピニオンギア610の中心軸線と同心状に形成されている。
【0035】
なお、このようなすべり部614,615が形成されていないと、ピニオンギア610の下面全体が着座台500に接触することになり、ピニオンギア移動時の摺動抵抗が増すが、このすべり部614,615が形成されていることでピニオンギア610と着座台500との間に作用する着座者の体重を分散させることが可能となり、その結果、着座部600のピニオンギア610と着座台500との摺動抵抗を減らすことができ、着座部600の回転動作とスライド動作をより滑らかに行えるようになる。
【0036】
スライダ530は、例えばポリアセタールなどの強度と成型のし易さを兼ね備えた樹脂でできており、その長手方向に沿った断面が工の字型を有している。そして、スライダ530は、ピニオンギア610と着座台500のスライドガイド溝520との間に取り付けられて着座部600を着座台500に対してスライドと同時に回転しながら移動させる役目を果たす。
【0037】
スライダ530はピニオンギア610のスライダ係合凹み部611及びスライダ係合孔612と係合する上部スライダ530aと、上部スライダ530aとネジ等の締結具によって締結され着座台500の下面と摺動する下部スライダ530bを有している。
【0038】
上部スライダ530aは、図5に示すように、ピニオンギア610のスライダ係合凹み部611と相対回転可能に係合する厚さの薄い円板状のスライダベース531と、スライダベース531と一体化して同心に備わりピニオンギア610のスライダ係合孔612と相対回転可能に係合するスライダシャフト532を有している。なお、スライダシャフト532は着座台500のスライドガイド溝520の溝幅より大きい外径の円柱体をその周方向両側から均等に切除された形状を有し、この部分でスライドガイド溝520と係合可能とするように形成されている。
【0039】
また、下部スライダ530bは厚さの薄い円板状の板体からなり、その外径はスライドガイド溝520の溝幅より大きくなっている。
【0040】
また、スライダベース531の周方向所定位置には後述するロック機構のレバーピン720を受け入れてピニオンギア610の回転を停止させるロックノッチ531a(図9参照)が中心角度90°を隔てて3箇所に形成されている。
【0041】
ロック機構は、図3乃至図5に示すように、ピニオンギア610の上面周方向一部に設けられた溝状のロック機構収容部613と、例えば摺動抵抗の小さい金属の板体を折曲して形成され、ロック機構収容部613にネジ等の締結具で締結されるレバーピンガイド710と、レバーピンガイド内にスライド可能に収容され、先端部がスライダ530のスライダベース531に形成されたロックノッチ531aと係合するレバーピン720と、レバーピンガイド内のレバーピン基端部側に介装されレバーピン720の先端を常にスライダベース531に付勢する圧縮バネ(図示せず)と、レバーピン720の基端部に接続されたロック解除用ワイヤ(図示せず)を備えている。
【0042】
ロック解除用ワイヤはピニオンギア610の外周から導出され、背凭れ690の裏に設けた操作レバー(図示せず)にロック解除用ワイヤの他端部が接続されている。そして、操作レバーを握ることでロック解除用ワイヤが引っ張られ、これによってレバーピン720を圧縮バネの付勢力に抗してピニオンギア610の外周方向に移動させてレバーピン720とスライダベース531のロックノッチ531aとの係合を解除し、スライダ530とピニオンギア610の相対回転を可能として着座部600を着座台500に対して移動可能とするようになっている。
【0043】
続いて、かかるラックギア510を備えた着座台500とピニオンギア610を備えた着座部600とこれらを結合するスライダ530との組み付け方について説明する。これらを組み付けるにあたって、まず、上部スライダ530aをピニオンギア610のスライダ係合凹部611及びスライダ係合孔612に嵌合させ、ピニオンギア610を着座台500のラックギア510に噛合させるとともに、スライドガイド溝520にスライダシャフト532を係合させてピニオンギア610を着座台500の適所に位置決めする。この際、例えば着座部600を座面昇降上限位置に取り付ける場合、ピニオンギア610がスライドガイド溝520の中心に位置するとともに、ピニオンギア610に備わったロック機構がスライダ530に関してラックギア510と反対方向でロック機構の軸線がラックギア510と直交する向きになるようにピニオンギア610を着座台500に配置する。また、スライダベース531に形成された3つのロックノッチ531aのうち、真ん中のロックノッチ531aがロック機構のレバーピン720と係合するようにスライダ530をピニオンギア610に組み付ける(図9参照)。
【0044】
次いで、下部スライダ530bを着座台500の下面から上部スライダ530aに締結して、スライダ530がスライドガイド溝520から外れないようにする。
【0045】
そして、着座部600をピニオンギア610にネジ等の締結具を介して取り付けて着座部600と着座台500とをシート50として組み付ける。次いで、着座台500の支持ブラケット590をアーム部200から延在したワイヤ端部の支持シャフト290に連結して入浴介助装置1を浴槽のリムに取り付け可能な状態とする。
【0046】
続いて、上述した入浴介助装置1の実際の使用方法とその作用について説明する。なお、図8以降の動作説明図に示す入浴介助装置1は着座部600に背凭れ690が備わった入浴介助装置であるが、その着座台500に対する着座部600の動作は背凭れ690の備わっていない入浴介助装置にも同様に適用可能である。また、図9乃至図11においては、動作の理解を容易にするために着座部600を図示省略して示している。
【0047】
最初に上述した構成を有する入浴介助装置1を、図8に示すように、浴槽リムの長手方向一方の端部に載置する。この際、フレーム10のベース部100に備わったアーム部間間隔調整機構を調整することで、入浴介助装置1の取り付けられる浴槽の横幅に応じて入浴介助装置1のアーム部200を浴槽側壁のリムに合致するように調整する。この各アーム部200の間隔調整は、フレーム下面に備わったストッパ230(図1参照)が浴槽壁面に当接するような間隔となるように行う。また、フレーム10のベース部100を浴槽の長手方向一端側のリムに合致するように載置する。
【0048】
この状態においては、着座部600は座面昇降上限位置にあり、シート50はその着座部600を透過して示す図9から明らかなように、ピニオンギア610がラックギア510の長手方向中央部に位置した状態でラックギア510に噛合している。また、スライダ530はスライドガイド溝520の長手方向中央部に位置しており、この状態でレバーピン720の先端が圧縮バネの付勢力によってスライダベース531のロックノッチ531aに係合し、これによってピニオンギア610がスライダ530に対して相対回転せずにロックしている。すなわち、着座部600に固定されたピニオンギア610は着座台500に固定されたラックギア510にこの状態で噛合したままとなり、着座部600は着座台500に対して座面昇降上限位置で固定されている。なお、この座面昇降上限位置はいわゆる中立位置であり、図7及び図12に示すように、入浴介助装置1を浴槽に載置した状態においてシート50を昇降させることができる位置である。
【0049】
次いで、図示しない操作レバーを操作することでロック解除用ワイヤを引っ張り、これに応じて圧縮バネによってスライダベース531に付勢されたレバーピン720をピニオンギア610の外周方向に引っ張り、レバーピン720とスライダベース531のロックノッチ531aとの係合を解除し、ピニオンギア610をスライダ530に対して相対回転可能とする。
【0050】
これによって着座部600を着座台500に対して移動可能とし、着座部600を浴槽の被介助者が待機するリム側(図9乃至図11に示す本実施形態においては右側)に移動させる。この際、スライダ530とピニオンギア610は相対回転可能となっているので、図10に示すようにスライダ530はスライドガイド溝520に沿って回転動作を伴わず、スライド動作のみで浴槽の側方リム側(図中右側)に移動する。これとともにスライダ530と相対回転可能なピニオンギア610はラックギア510と噛合した状態で回転しながらスライドガイド溝520に沿って浴槽の側方リム側(図中右側)に移動する。これによってピニオンギア610に固定された着座部600はラックギア510が固定されかつスライドガイド溝520が備わった着座台500に対して図中反時計方向に回転しながら浴槽の側方リム側(図中右側)に移動する。なお、図10は、着座部600が図9に示す座面昇降上限位置から約45°回転した状態を示しており、レバーピン720がスライダベース531のロックノッチ間に形成された周面に沿いながら移動しているのが分かる。
【0051】
次いで、着座部600を着座台500に対して更に浴槽の側方リム側(図中右側)に押し付けると、図11に示すようにピニオンギア610が更に右方向に移動してピニオンギア610の約半分が着座台500の副座部570に形成された収容凹み部571に入り込んでいく。これに応じて、着座部600は着座台500に対して回転動作を伴いながら更に右方向に移動する。そして、ロックノッチ531aに対して係合していたレバーピン720が反時計方向に隣接する座面移乗位置に対応したロックノッチ531aまで達する。
【0052】
これと同時に圧縮バネを介してスライダベース531に付勢されていたレバーピン720の先端がこの隣接するロックノッチ531aに入り込み、スライダ530とピニオンギア610との相対回転を停止させる。これによって着座部600は着座台500に対して完全に一側(図11中右側)に偏倚した位置で90°向きを変えて停止し、この状態で被介助者は浴槽のリムを跨ぐことなく着座部600に座ることができるようになる。
【0053】
上述したように、入浴介助装置1は、ラックギア510とピニオンギア610との組み合わせで座面移乗機構を実現しているので、着座部600に着座した被介助者の荷重をピニオンギア全体で均一に受けることができるようになり、入浴介助装置1の移乗機構を薄くできる。これによって、シート50の高さを低くすることができ、被介助者が着座部600に着座しやすくなる。
【0054】
この座面移乗位置において、被介助者を着座部600に着座させた後、着座部600に着座した被介助者(以下、「着座者」とする)を上述した着座部600の動きと逆の動きにより座面昇降上限位置まで移動させる。この際、図示しない操作レバーを握ってロック解除用ワイヤを引っ張ることで、圧縮バネの付勢力によって保たれていたレバーピン720とスライダベース531のロックノッチ531aとの係合を解除する。そして、着座者の上半身や背凭れ690を押えながら図11から図9に至るように着座部600を着座台中央の位置、即ち座面昇降上限位置まで移動させる。
【0055】
この移動の際にも上述したように着座部600のピニオンギア610とスライダベース531とが相対回転しながらピニオンギア610がラックギア510と噛合したまま着座台中央部までピニオンギア610が移動する。これとともにスライダ530はスライドガイド溝520に沿って回転することなく移動する。これによって、ピニオンギア610が固定された着座部600はラックギア510が備わりかつスライドガイド溝520の形成された着座台500に対して座面昇降上限位置まで回転しながらスライドする。
【0056】
そして、着座部600が座面昇降上限位置に達すると、図9に示すようにレバーピン720が座面昇降上限位置に対応するスライダベース531のロックノッチ531aまで達し、レバーピン720の先端がこのロックノッチ531aに入り込み、スライダ530とピニオンギア610との相対回転を停止させる。これによって着座部600は着座台500の中央部であって座面昇降上限位置で停止する。
【0057】
これによって、被介助者の着座した着座部600が移動中に急激な回転を伴うことがないので、着座者の姿勢を安定させながら移乗させることができるとともに、シート50の急激な回転等に伴う着座者の手挟み等を防止できる。
【0058】
なお、座面昇降上限位置において着座部600の下面は副座部570の上面に対して略面一となるので、着座部600と副座部570との間に隙間が生じす、着座した被介助者の手挟みの心配を無くすことができる。
【0059】
このようにして、着座部600を昇降位置まで移動させた後に着座部600を浴槽底部に向って下降させる。この下降に際しては図示しない操作レバーの昇降装置駆動スイッチの座面下降ボタンを押すことで、DCモータ310が所定方向に回転し、ワイヤ巻き取り繰り出しドラム330によって巻回されていたワイヤWが繰り出される。なお、ワイヤWは昇降装置駆動スイッチの操作量に応じて第1プーリ210及び第2プーリ220によって延在方向を変えながら繰り出され、ワイヤ先端及びこのワイヤ先端が接続された支持シャフト290が浴槽底部に向って下降する。これによって、支持シャフト290に取り付けられたシート50も着座者を載せながら下降して着座者を浴槽の湯に浸らせる。
【0060】
なお、このシート下降の際に、着座台500に起き上がり可能に連結された副座部570はシート50を浴槽内に下降させる際にワイヤWに押されて上方に起き上がり、これによって座面下降中にワイヤWの一部を覆って着座者の手挟みを防止することができる。
【0061】
このようにしてシート50が浴槽の底部に達するとワイヤ先端の移動も停止するので、繰り出されるワイヤWがワイヤ繰り出し部において撓む。このワイヤWの撓みによって図示しないリミットスイッチが作動してシート50が浴槽底部に達したことを検知する。これによって昇降装置300の駆動を停止して着座者がしばらく湯に浸る。
【0062】
着座者が入浴を楽しんだ後、上述と逆の動作を行うことでシート50を上昇させて座面昇降上限位置を経由して座面移乗位置まで着座者を移動させる。具体的には、図示しない操作スイッチを操作することで昇降装置300のDCモータ310を座面上昇方向に駆動させ、ワイヤWを巻き取ってシート50を上昇させる。これによってシート50は浴槽内を上昇していく。なお、着座台500の副座部570が起き上がってワイヤWの一部を覆ったまま着座者とワイヤWとの間に介在しているので、シート50の上昇中に着座者がワイヤWに触れることがなく安心したままシート50を上昇させることができる。
【0063】
シート50が完全に上昇すると着座台500の一部がアーム部200の適所に設けられたリミットスイッチに当たってこれを作動させて昇降装置300の座面上昇動作を停止させる。シート50が上限位置に達すると着座台500の副座部570はワイヤWによって傾くことがなくなるので、副座部570は水平状態まで倒れる。
【0064】
なお、座面昇降上限位置において着座部600の下面は副座部570の上面に対して略面一となるので、着座部600と副座部570との間に隙間が生じす、着座した被介助者の手挟みの心配を無くすことができる。
【0065】
続いて、図示しない操作レバーを握ってワイヤWを引っ張ることで、圧縮バネの付勢力によって維持されていたレバーピン720とスライダベース531のロックノッチ531aとの係合を解除する。そして、着座者の上半身や背凭れ690を押えながら図9乃至図11の順に着座部600を着座台500の一方のアーム部側即ち座面移乗位置まで移動させる。
【0066】
この移動の際には上述したように着座部600のピニオンギア610がラックギア510と噛合したままピニオンギア610とスライダベース531が相対回転しながら座面移乗位置までピニオンギア610が移動する。これとともにスライダ530はスライドガイド溝520を回転することなく座面移乗位置まで移動する。その結果、ピニオンギア610に固定された着座部600はラックギア510が備わりかつスライドガイド溝520の形成された着座台500に対して座面移乗位置まで回転しながらスライドする。
【0067】
これによって、被介助者の着座した着座部600が急激な回転動作を行うことがなくなり、移乗中に被介助者の姿勢を安定させながら移乗させることができるとともに、シート50の急な回転等に伴う被介助者の手挟み等を防止できる。
【0068】
このようにして座面移乗位置まで着座部600が達すると、図11に示すようにレバーピン720の先端が座面移乗位置に対応するスライダベース531のロックノッチ531aまで達し、レバーピン720の先端がこのロックノッチ531aに入り込み、スライダ530とピニオンギア610との相対回転を停止させる。これによって着座部600は着座台500に対して完全に一側に偏倚した位置で90°向きを変えて停止する。
【0069】
上述したようにラックギア510とピニオンギア610との組み合わせで座面移乗機構を実現しているので、シート50の高さを低くすることができ、被介助者が着座部600から降り易くなる。
【0070】
なお、上述の実施形態では、図10及び図11において、着座部600が着座台中央の座面昇降上限位置と着座台500に対して右側に位置した座面移乗位置との間で着座部600が移動するようになったが、座面昇降上限位置において当該ラックギア510の両端部がそれぞれ各アーム部近傍に略等しく位置するように着座台500にラックギア510を取り付けているので、シート上限位置において着座部600が何れのアーム部側に向かっても回転スライド可能となる。
【0071】
従って、浴槽の何れのリム側にも着座部600を移動させることができ、被介助者を浴槽の何れの側からも着座部600に座らせることが可能となる。従って、被介助者が移乗する浴槽の着座位置を上述の実施形態のように限定する必要はない。同じく、入浴介助装置1を浴槽に取り付ける方向性を考える必要もなくなり、入浴介助装置1の使い勝手を向上させる。
【0072】
一方、上述したように被介助者の入浴を終えて被介助者以外の例えば家族が入浴する際には、着座台500をワイヤ先端に連結された支持シャフト290から外してフレーム10のみが浴槽のリムに載置した状態とし、これら被介助者以外の者が入浴する。これによってこれらの者も浴槽を広く使って入浴を十分楽しむことができるようになる。
【0073】
なお、かかる着座部600の移動機構がラックギア510とピニオンギア610との組み合わせという単純な構成で実現されているので、入浴介助装置自体の重量の軽量化が図れる。従って、入浴介助装置自体を浴槽から取り去ったり取り替えたりする際にも、装置取り去り取り替え作業を容易に行うことができる。
【0074】
以上説明したように、上述の実施形態にかかる入浴介助装置1は、ラックギア510とピニオンギア610とを組み合わせることで、着座部600が着座台500に対して回転と同時にスライドする複合動作で移動するので、移乗中に被介助者の着座した着座部600が急激な回転を伴うことなく被介助者の姿勢を安定させながら移乗させることができるとともに、着座部600の急激な回転等に伴う被介助者の手挟み等を防止できる。
【0075】
また、着座部600が洗い場側に確実に回転した状態で、かつ移動して洗い場側に近づいているので着座時に着座部600の中心に座ることができ、座り直しなどの動作を必要としない。
【0076】
また、ラックギア510とピニオンギア610との組み合わせでこのような動作を実現することで、座面に着座した被介助者の荷重をピニオンギア全体で均一に受けることができるようになり、ピニオンギア610と着座台500との間に作用する着座者の体重を分散させることが可能となり、その結果、入浴介助装置1の移乗機構を薄くできる。これにより、着座部600の高さを低くすることができ、被介助者が移乗する際に着座部600に乗り降りし易くなり、入浴介助装置1の使い勝手を向上させる。また、このような簡易な構成の入浴介助装置1とすることで入浴介助装置自体の小型化及び軽量化を図ることができ、一般浴槽のリムへの着脱を前提とした入浴介助装置の使い勝手を向上させる。すなわち、着座部のスライド動作と回転動作を複合動作として同時に行う機構をベアリング等などによって実現しようとすると、機構的に複雑で重量が重くなりかつ着座部の高さも高い使い勝手が悪い入浴介助装置となってしまうが、ラックギア510とピニオンギア610との組み合わせで着座部600の移動動作を実現することでこのような不都合の生じない入浴介助装置とすることができる。
【0077】
また、着座台500は、その両側部に起き上がり可能に結合された副座部570を備え、副座部570にピニオンギア610を収容する収容凹み部571を設けたので、着座部600のスライド量を十分確保できる。
【0078】
なお、座面昇降上限位置において着座部600の下面は副座部570の上面に対して略面一となるので、着座部600と副座部570との間に隙間が生じす、着座した被介助者の手挟みの心配を無くすことができる。
【0079】
また、シート上限位置において座面移乗位置及び座面昇降上限位置のそれぞれの位置で着座部600が着座台500にロックするロック機構を備えたので、被介助者が着座部600に安心して着座できかつ着座部600を安心しながら昇降させることができる。
【0080】
なお、上述の実施形態にかかる入浴介助装置1は、ピニオンギアに同心円上の突起部からなるすべり部614,615を設けることで、着座部600のピニオンギア610と着座台500の摺動抵抗を減らし、着座部600の回転動作とスライド動作を滑らかに行えるようにしていたが、ピニオンギア610にすべり部614,615を設ける代わりに着座部600にすべり部を設けても良い。また、ピニオンギア610にすべり部614,615を設ける代わりに、図13に示すようにピニオンギア610の周方向に所定間隔でローラ収容凹部616を形成するとともに、このローラ収容凹部616に円筒状のコロ(ローラ)などからなるすべり部617を回動可能に配置し、これによってピニオンギア610の回転動作とスライド動作を行うことで、着座部600の着座台500に対する回転動作とスライド動作の複合動作を滑らかに行うようにしても良い。
【0081】
また、上述の実施形態のようにスライダ530を用いる代わりに図14に示すように、ピニオンギア610をラックギア510と協働して挟み込むとともにピニオンギア610の移動中にピニオンギア610とラックギア510との噛合を保つようなスライドガイド540を着座台500のラックギア510に対向する位置に設けても良い。このような構成であっても、着座台500に固定されたラックギア510に対してピニオンギア610を回転と同時に平行移動させることができ、これによってピニオンギア610に固定された着座部600を、ラックギア510を固定した着座台500に対して回転と同時にスライドさせることが可能となる。すなわち、このような構成をとることでスライダ530が必要無くなるとともに、スライダ530が係合するスライドガイド溝520を着座台500に形成する必要も無くなり、構造上の更なる簡略化を図ることが可能となる。
【0082】
なお、本発明にかかる入浴介助装置の各構成要素の材質は上述の実施形態において記載した材質に限定されるものでないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態にかかる入浴介助装置を示した斜視図である。
【図2】図1に示した入浴介助装置のフレームを、カバーを取り外した状態で示した平面図である。
【図3】図1に示した入浴介助装置の着座台とラックギア及び着座部とピニオンギアを分解して示す斜視図である。
【図4】図3に示す着座台とラックギア及び着座部とピニオンギアを半分に破断して示す分解斜視図である。
【図5】図4において半分に破断して示した着座台とラックギア及び着座部とピニオンギアを組み付けた状態を拡大して示す斜視図である。
【図6】本実施形態にかかるピニオンギアのすべり部を示す断面図(図6(a))及び平面図(図6(b))である。
【図7】図1に示した入浴介助装置のワイヤを繰り出して着座部をアーム部から吊持した状態を示す斜視図である。
【図8】図1に示した入浴介助装置を浴槽のリムに取り付けた状態を示した斜視図である。
【図9】図8に示した入浴介助装置を、浴槽のリムを省略するとともに着座部を透過した状態で示した平面図である。
【図10】図9に示した入浴介助装置を浴槽のリム側に若干移動させた状態を、浴槽のリムを省略するとともに着座部を透過した状態で示した平面図である。
【図11】図9に示した入浴介助装置を座面移乗位置まで完全に移動させた状態を、浴槽のリムを省略するとともに着座部を透過した状態で示した平面図である。
【図12】図8に示した入浴介助装置の着座部を浴槽内に下降した状態を浴槽の一部を破断して示す斜視図である。
【図13】本実施形態にかかるピニオンギアの変形例を示す断面図(図13(a))及び平面図(図13(b))である。
【図14】本実施形態にかかるスライダの変形例であってスライドガイドが着座台に備わった構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
1 入浴介助装置
10 フレーム
50 シート
100 ベース部
101,201 カバー
110 ベースプーリ
200 アーム部
210 第1のワイヤ繰り出し巻き取りプーリ(第1プーリ)
220 第2のワイヤ繰り出し巻き取りプーリ(第2プーリ)
230 ストッパ
290 支持シャフト
300 昇降装置
310 DCモータ
320 減速ギア
330 ワイヤ繰り出し巻き取りドラム
350 支持ブラケット
360 制御ボックス
370 バッテリ
380 ワイヤ巻き乱れ防止部
390 ガイドプーリ
500 着座台
510 ラックギア
520 スライドガイド溝
530 スライダ
530a 上部スライダ
530b 下部スライダ
531 スライダベース
531a ロックノッチ
532 スライダシャフト
540 スライドガイド
570 副座部
571 収容凹み部
580 保護カバー
590 支持ブラケット
600 着座部
610 ピニオンギア
611 スライダ係合凹み部
612 スライダ係合孔
613 ロック機構収容部
614,615 すべり部
616 ローラ収容凹部
617 すべり部
680 金属パイプ
690 背凭れ
710 レバーピンガイド
720 レバーピン
W ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と当該ベース部の両端から略垂直に延在したアーム部とからなり浴槽のリムに載置されるコの字型のフレームと、
前記フレームに取り付けられた昇降装置と、
前記フレームに取り付けられ、
前記昇降装置を介して昇降可能となった着座部及び着座台を備えた入浴介助装置において、
前記着座部にピニオンギアを備えるとともに、前記着座台にラックギア及び前記ピニオンギアの前記アーム方向へのスライドをガイドするスライドガイドを備え、前記着座部の着座台に対する回転と連動してスライドが可能なことを特徴とする入浴介助装置。
【請求項2】
前記ピニオンギア又はピニオンギアと接触する着座台にピニオンギア摺動用のすべり部を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の入浴介助装置。
【請求項3】
前記着座台は着座台本体と当該着座台本体の各アーム側端部に起き上がり可能に結合された副座部を備え、前記副座部には前記ピニオンギアの少なくとも一部を収容する収容部が形成され、かつ前記副座部の上面は座面が昇降する際の上限位置において前記着座部の下面と略面一となることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の入浴介助装置。
【請求項4】
前記ラックギアは、前記座面が昇降する際の上限位置において当該ラックギア両端部が対向する各アーム部の近傍にそれぞれ位置するように前記着座台に取り付けられ、当該上限位置において当該座面が前記各アーム部のどちら側にも回転と同時にスライドできるようになったことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の入浴介助装置。
【請求項5】
前記座面に被介助者が乗り降りする座面移乗位置と前記座面昇降の際の座面上限位置との各位置で着座部が着座台にロックするロック機構を備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の入浴介助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−102241(P2006−102241A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294140(P2004−294140)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】