説明

入浴用リフト装置

【課題】浴槽の深さ寸法に合わせてフレームの長さを容易に伸縮調整可能とし、寸法の異なる別の浴槽への移設作業の労力を軽減し作業性を向上させた入浴用リフト装置を提供する。
【解決手段】浴槽3の周囲に設置される設置部と、設置部2に対し幅方向に所定間隔を有して平行配置されるとともに設置部から下方に向かって延び終端側が浴槽内底面3bに載置される一対のフレーム4と、各フレーム4面に当接して転動する転動子5を有しフレーム4面に沿って昇降移動する昇降部6とを備えた入浴用リフト装置において、各フレーム4の長さを個別に伸縮調整自在に構成し、各フレーム4は、設置部から下方に向かってそれぞれ垂設されるネジ体14に螺合する雌ネジ15を有する第一のパイプ状部材13を備え、第一のパイプ状部材13をネジ体14に対して正回転乃至逆回転させることにより、各フレーム4の長さを伸縮調整できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自力では入浴困難な身体障害者や高齢者等の入浴者を入浴させる入浴用リフト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、座部が台車部から分離可能とした分離式車椅子の座部を、浴槽に向かって傾斜配置されたフレームに沿って昇降する台座に載置し、この台座を昇降手段により下降させて座部上の入浴者を浴槽内に入浴させる入浴装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の入浴装置によれば、入浴者は座部30に座ったままリフター52まで水平方向に移動し、さらにリフター52ごとスロープ51に沿って昇降するだけで入浴が行え、入浴者を介護する介護者の負担を軽減でき、かつ入浴者に恐怖感を与えないというメリットを有している。
【特許文献1】実公平7−51051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の入浴装置においては、スロープフレーム3の長さは設置時に浴槽1の深さ寸法や浴槽縁の高さ寸法等に合わせて一義的に決められていて、スロープフレーム3の長さを前記諸寸法の異なる他の既設浴槽に合わせて伸縮調整し設置できるようにする工夫は一切施されていない為、前記諸寸法の異なる既設浴槽へ入浴装置を移設するにはスロープフレーム3の長さを移設先の浴槽の寸法に合わせて切断したり、継ぎ足す等の大掛かりな加工作業が必要で作業性の面において問題があった。
【0005】
また、スロープフレーム3の加工作業によっても移設対応が不可能な場合にあっては、移設先の浴槽寸法に合わせた入浴装置を別途購入する必要があり、装置購入者の経済的負担は大きく無視できないものとなっていた。
【0006】
本発明はかかる諸問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、浴槽の深さ寸法に合わせてフレームの長さを容易に伸縮調整可能とし、寸法の異なる別の浴槽への移設作業の労力を軽減し作業性を向上させた入浴用リフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現する為、請求項1記載の発明は、浴槽周囲に設置される設置部と、該設置部に対し幅方向に所定間隔を隔てて平行配置されるとともに前記設置部から前記浴槽内に向かって延び終端側が前記浴槽内底面に載置される一対のフレームと、該各フレーム面に当接して転動する転動子を有し前記フレーム面に沿って昇降移動する昇降部とを備えた入浴用リフト装置であって、前記各フレームの長さを個別に伸縮調整自在に構成したことを特徴とする。
【0008】
上記発明によれば、浴槽深さ寸法等に合わせて設置作業者等が容易にフレームの長さを伸縮調整でき、前記寸法が異なる別の浴槽への移設作業を速やかに行える。また、入浴用リフト装置を運搬する際にフレームを収縮させることで運搬作業がし易くなるというメリットがある。また、一対のフレームはそれぞれの長さを伸縮調整自在である為、フレーム終端が接地される浴槽内底面に傾斜勾配(例えば、一対のフレームの幅方向に浴槽内底面の傾斜勾配)があった場合であっても、容易に設置対応が可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の入浴用リフト装置において、前記各フレームは、前記設置部から下方に向かってそれぞれ垂設されるネジ体に螺合する雌ネジを有する第一のパイプ状部材を備え、前記第一のパイプ状部材を前記ネジ体に対して正回転乃至逆回転させることにより、前記各フレームの長さを伸縮調整することを特徴とする。
【0010】
上記発明によれば、特別な工具を用いて各フレームの伸縮調整作業を行う必要ことなく、更に煩雑で熟練を伴う作業等を必要とせず、非熟練者であっても容易に各フレームの長さを伸縮調整することが可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の入浴用リフト装置において、前記各フレームは、内部に前記ネジ体及び前記雌ネジが配置され、且つ一端が前記設置部に固着されるとともに他端が前記第一のパイプ状部材の一端側に嵌挿される第二のパイプ状部材を有しており、前記フレーム面に沿って昇降移動中の前記昇降部が、前記第一のパイプ状部材と前記第二のパイプ状部材との嵌合部位に形成される段差位置を通過する際に該段差による衝撃を受けないように前記段差を解消する段差解消手段を付設したことを特徴とする。
【0012】
上記発明によれば、第二のパイプ状部材と第一のパイプ状部材との嵌合部位に形成される段差を段差解消手段により解消できるので、昇降部が段差を通過する際に段差による衝撃を強く受けることはなく、昇降部上の入浴者が昇降移動中に恐怖感を抱くこともなく、安心・リラックスして入退浴が行えることになる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の入浴用リフト装置において、前記転動子は、異径ローラ面を有する転動ローラであり、前記段差解消手段は、前記左右各フレームに一部分が固着され、前記嵌合部位から前記両パイプ状部材の嵌挿方向の所定範囲にわたって延在する板状の段差解消プレートであり、前記昇降部が前記段差位置乃至その近傍位置を通過する際は、前記転動ローラのローラ面部が前記段差解消プレート面に沿って転動することを特徴とする。
【0014】
上記発明によれば、第一のパイプ部材と第二のパイプ部材との嵌合部位における段差解消を簡素な構成により実現可能となる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項3または4に記載の入浴用リフト装置において、少なくとも前記フレームの終端位置において傾斜状態の前記昇降部を水平状態へ復帰させる水平復帰手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、水平復帰手段により少なくともフレームの終端位置において昇降部が傾斜状態から水平状態へ状態復帰されるので、例えば、昇降部の前方側が下方へ傾斜するように昇降部全体が傾いたままの状態で昇降部が停止することはなく、入浴者の有効水深をロスし充分な有効水深を確保することができないといった不都合が生じることもない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、浴槽深さ寸法等に合わせて設置作業者等が容易にフレームの長さを伸縮調整できるので、前記寸法が異なる別の浴槽への入浴用リフト装置の移設作業が速やかに行えることとなる。また、入浴用リフト装置を運搬する際にフレームを収縮させることで運搬作業がし易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1乃至8を参照しつつ本発明に係る入浴用リフト装置1の一実施形態について説明する。図1は入浴用リフト装置1全体を右斜め前方から見た外観斜視図、図2は入浴用リフト装置1の正面図、図3は同平面図、図4は同右側面図、図5は図2におけるA−A線で入浴用リフト装置1を切断した側面断面図、図6は図4におけるB−B線で入浴用リフト装置1を切断した拡大正面断面図、図7は段差解消手段の作用説明図、図8は入浴用リフト装置1の一使用形態を示す側面図である。尚、各図面において同一または同等の構成要素には、同一の符号を付している。
【0019】
入浴用リフト装置1は、浴槽縁3a周囲の床面45に設置される設置部2と、この設置部2に対し左右の幅方向に所定間隔を隔てて平行配置されるとともに設置部2から浴槽3内の下方に向かって延び終端側が浴槽3の内底面3bに載置される一対のフレーム4と、各フレーム4の外表面に当接して転動する転動子5を有しフレーム4に沿って昇降移動する昇降部6を備えている(図1、4、5参照)。
【0020】
設置部2は、図4に示すように浴槽縁3a周囲の床面45に載置され、図5、6に示すように、四隅に配設される接地脚46を介して床面45に載置される板状の台板8と、この台板8の左右端位置に立設される立設部材9と、両立設部材9間に亘って横架固定される上側台板10と、一方部が立設部材9上部に螺着されるとともに、中途位置において屈曲し他方部が浴槽3側に向き略水平状に延在し全体形状が略への字状とされる二枚一組の屈曲板11とから骨格形成され、設置部2の外周はケーシング22で包囲されている。
【0021】
設置部2の上方前方に向かって傾斜する左右両側のケーシング22内側における上側台板10には前後方向に延在する左右一組の継ぎレール20が所定間隔を隔てて平行に並設され、この継ぎレール20は、台車41上に分離可能に載設される搬送車39の着座部40(図8参照)を後述する昇降部6上へと誘導案内するものである。入浴者(図示省略)が着座する着座部40は設置部2上方前方に向かって傾斜する左右両側のケーシング22の間から継ぎレール20上を走行し昇降部6上へ移動され載置される。
【0022】
また、設置部2は、図4、5に示すように、各継ぎレール20の前方下面から鉛直下向き方向に垂設される角材等よりなる押さえ材36と、設置部2の前面の左右下方位置にそれぞれ配設される伸縮自在の伸縮具37とにより浴槽縁3aを挟み込みようにして浴槽3周囲に対して設置固定される。
【0023】
図5に示すように、各屈曲板11の他方部(屈曲端部)から浴槽3内に向かって終端部が前方に位置する傾斜状にフレーム4が設けられている。各フレーム4は、一端が屈曲板11に取付部材42を介して固着され下方向へ傾斜して垂設されるネジ体14(ネジシャフト)と、このネジ体14に螺合する雌ネジ15が一端部に設けられる中空円柱形状の第一のパイプ状部材13と、この第一のパイプ状部材13内径よりやや大径の中空円柱形状とされ、その内部空間内にネジ体14及び雌ネジ15が配置される第二のパイプ状部材12とを有する支柱構造に形成されている。第二のパイプ状部材12は、一端が取付部材42に固定されるとともに他端が第一のパイプ状部材13の一端側に外嵌挿通されている。
【0024】
従って、第一のパイプ状部材13をネジ体14に対して正回転乃至逆回転させることにより、第一のパイプ状部材13がネジ体14に対して相対的に進出移動乃至退入移動することとなり、これにより左右各フレーム4の長さを個別に自在に伸縮調整できる。また、第一のパイプ状部材13は、その他端部において、後述する上向き凹の態様に配置される正面視略凹形状の凹状部材34(図2参照)の底面から下方へ突出して設けられる接地脚38を介して浴槽3の内底面3bに載置されている(図4参照)。接地脚38は、凹状部材34の底面に対して脚軸部分を上下に相対移動させることで底面から下方の脚軸部分の長さを調整自在に設けられており、フレーム4を内底面3bへ載置する際に各第一のパイプ状部材13の長さを微調整し、フレーム4を安定に内底面3bに対して載置できるようにするために用いられる。
【0025】
尚、各第二のパイプ状部材12他端部は該部材12より肉厚パイプ状のガタツキ防止部49に形成され(図5参照)、このガタツキ防止部49内周面は第一のパイプ状部材13外表面に当接状態になっていて、昇降部6の昇降移動時に第一のパイプ状部材13のガタツキを抑制防止する作用を奏している。
【0026】
左右一対のフレーム4に沿って昇降移動する昇降部6には、入浴者(図示省略)を載せた搬送車39の着座部40(図8参照)が載置される。搬送車39は台車41に対して着座部40が分離可能に載設される公知の分離式搬送車であるので、詳細説明は省略する。図1、5に示すように昇降部6は、各フレーム4の左右外表面側に配設される二枚一組の保持板16にわたり設けられたローラ軸47に回転自在に軸着される二個の転動子5と、左右各フレーム4側に配設される二枚一組の保持板16の下部を相互連結する連結フレーム17と、保持板16及び連結フレーム17の前後左右周囲を主に包囲する昇降ケーシング18と、この昇降ケーシング18の前方下部位置から水平に前方向に張り出して設けられる目隠し板19とから構成されている。
【0027】
図5に示すように、互いに同一形状とされた二個の転動子5は、保持板16の上下位置でフレーム4を前後方向から挟み込む態様で配設されており、各転動子5は両端部に形成される大径ローラ面部5aと、この両端部から中央に向かうに従って次第に小径となる小径ローラ面部5bを有して形成される異径ローラ面部をもつ転動ローラである。
【0028】
図1中、21は着座部40を昇降部6の所定位置へ誘導案内する左右一組のガイドレールであり、左右のガイドレール21は継ぎレール20と同等の間隔を有して平行に並設されており、昇降部6が上限位置(例えば、図5中実線で示す昇降部6の位置)にて停止している時にガイドレール21上面と前記継ぎレール20上面とが面一となるように設けられている。
【0029】
目隠し板19は下方に開口部を有する略逆トレー形状であり、ガイドレール21下面の適宜位置に設けられる担持部材50によって担持されるとともにガイドレール21先端よりも更に前方向へ張り出していて、昇降部6上に載っている入浴者の下方向への視界を遮ることにより恐怖感を和らげる機能を有するものである。また、この目隠し板19面には多数の通水孔23が穿設されており、フレーム4に沿って水中を昇降移動する昇降部6に加わる水抵抗を低減する工夫がなされている。
【0030】
次に、昇降部6をフレーム4に沿って昇降移動させる昇降移動手段24について説明する。設置部2の台板8上の右方側(図6中、右方側)に駆動モータ7が内設固定され、駆動モータ7の原動軸7aには駆動プーリ25が連繋されている。左右の立設部材9間には連動軸26が原動軸7aと平行方向に軸架され、駆動プーリ25の連結側と同側の連動軸26の一端に駆動プーリ25の正逆回転に従動して回転する駆動プーリ25と同径の従動プーリ28が駆動プーリ25と同一平面上になるように固定されている。また、連動軸26の両端近傍にはそれぞれ帯状ベルト27が巻回されるベルト巻回プーリ29が固定されている。
【0031】
各ベルト巻回プーリ29に巻回された帯状ベルト27は屈曲板11の屈曲端部の近傍位置に設けられる中継プーリ30に掛けられ後、帯状ベルト27端部が保持板16上部において止具48を介して止着されており、昇降部6は帯状ベルト27により釣支状態に支えられている。従って、駆動モータ7を駆動させ駆動プーリ25を回転させることにより、従動プーリ28及びベルト巻回プーリ29が回転する。ベルト巻回プーリ29の回転により、帯状ベルト27がベルト巻回プーリ29から繰り出されると昇降部6がフレーム4に沿って下降移動し、逆にベルト巻回プーリ29に巻き取られると昇降部6は上昇移動することになる。
【0032】
上述したように各フレーム4は第一のパイプ状部材13一端側が第二のパイプ状部材12他端側に嵌挿された構成となっている為、両パイプ状部材の嵌合部位において段差が形成されることになるが、本発明に係る入浴用リフト装置1には、この段差位置を昇降部6が通過する際に段差による衝撃を昇降部6が受けないように段差を解消する段差解消手段31が備えられている。以下、この段差解消手段31について説明する。
【0033】
図2、4に示すように、第二のパイプ状部材12と第一のパイプ状部材13との嵌合部位を略中央とし両パイプの嵌挿方向の所定範囲にわたって延在する側面視略六角形状の段差解消プレート32が第二のパイプ状部材12の左右外周面に対向取着されている。段差解消プレート32は、両パイプ部材の中心線に平行な線に対して線対称形状とされており、両パイプ部材の嵌挿方向に沿って延在するプレート前側面32a及びプレート後側面32bはそれぞれの両端面部に対して中央面部が緩やかに膨らむ曲面に形成され、この中央面部が両パイプ部材の嵌合部位に位置するよう配置されている。
【0034】
次に、上限位置にある昇降部6(図4における位置にある昇降部6)が下降移動する場合に、フレーム4に対して前方位置に配設される転動子5(図5中、左下方向に配設される転動子5、以下前方転動子5と称呼する)に着目して、段差解消手段31の作用を説明する。図7に示すように、昇降部6が下降移動を開始すると、前方転動子5の小径ローラ面部5bが第二のパイプ状部材12の前側外表面に沿って転動する(E状態)。昇降部6の下降移動が進み、前方転動子5が段差解消プレート32始端(上端)付近に至ると、小径ローラ面部5bがプレート前側面32aに当接した状態で、前方転動子5の大径ローラ面部5aがプレート前側面32aに当接する状態となる(F状態)。更に、下降移動が進むと、小径ローラ面部5bが第二のパイプ状部材12の前側外表面から離間する(G状態)。
【0035】
そして、前方転動子5が段差解消プレート32終端(下端)付近に至ると、大径ローラ面部5aがプレート前側面32aに当接した状態で、小径ローラ面部5bが第一のパイプ状部材13の前側外表面へ当接する(H状態)。これ以降は、小径ローラ面部5bが第一のパイプ状部材13の前側外表面に沿って転動する(I状態)。図7における線分J−Jは、昇降部6の昇降移動に伴う前方転動子5の軸心の移動軌跡の一部を示している。この段差解消手段31によって、第二のパイプ状部材12と第一のパイプ状部材13との嵌合部位に形成される段差位置を昇降部6が通過する際でも段差を解消し、段差による衝撃を抑えることができるので、昇降部6は昇降移動が妨げられることなく、円滑に昇降移動が行えることになる。
【0036】
また、昇降部6が第二のパイプ状部材12の外表面に沿って昇降移動している際は、水平性が保たれているが、昇降部6が第二のパイプ状部材12外表面から第一のパイプ状部材13外表面に完全に移動し切った状態に至ると、昇降部6は前方側が下方へ傾斜する方向に全体が水平面から約3°微傾斜した状態になる(図5中、例えば、Cで示す昇降部6の状態)。従って、この傾斜状態のままで昇降部6が下限位置まで下降すると、入浴者に対して充分な有効水深を確保することができないことになるが、本発明に係る入浴用リフト装置1では、このような不都合が生じないようにする為、第一のパイプ状部材13の他端(終端)乃至はその近傍の範囲において、昇降部6を水平状態に復帰させる水平復帰手段33が設けられている。
【0037】
具体的に説明すると、水平復帰手段33は第一のパイプ状部材13の他端部において、正面視略凹形状の凹状部材34(図2参照)を上向き凹の態様に配置して、凹状部材34の各遊端部34aの上下二箇所位置を第一のパイプ状部材13左右の各外表面に対してボルト等で螺結したものである。
【0038】
凹状部材34の各遊端部34aは側面視略楔状に形成され、遊端部34a前面の内底面3bに対する傾斜角度は第一のパイプ状部材13の傾斜角度より緩やかに設定されているので(図4参照)、昇降部6が下降し下限位置近傍に至ると、前方転動子5の大径ローラ面部5aが凹状部材34の遊端部34a前面に沿って転動することになり、従って、傾斜状態の昇降部6が水平状態に戻り、下限位置で昇降部6の下降移動が停止する(図5中、Dで示す昇降部6の状態となる)。
【0039】
図2中、35は正面視凹形状の連結部材であって、第一のパイプ状部材13他端部において両パイプ状部材13同士を連結することで、各々の第一のパイプ状部材13の意図しない不用意な回転動作等を抑制する役割を果たしているものである。連結部材35は、凹状部材34と同様に上向き凹の態様に配置され、連結部材35は凹状部材34に対して上下方向の位置を微調整可能に取着されている。即ち、連結部材35の各遊端部35a面の上下方向に延在して刻設される長孔51に軸部が挿通されるとともに軸部先端側が凹状部材34の遊端部34a面に螺着される二本のネジボルト52を介して、各遊端部35a外側面を各凹状部材34内側の遊端部34a面に対して押し付け、固定している(図1、2参照)。
【0040】
従って、第一のパイプ状部材13の長さを伸縮調整するに際して、予めネジボルト52を緩めておくことで、伸縮調整の結果、左右の第一のパイプ状部材13の長さにアンバランスが生じることになった場合であっても、長孔51の範囲内において連結部材35の上下方向の位置を微調整できることになり、連結部材35による第一のパイプ状部材13同士の連結は妨げられない。
【0041】
また、図3中、43はケーシング22上面に設けられ、昇降部6の上昇スイッチや下降スイッチ等の各種スイッチ類が配設される操作パネル、44は設置部2後面から後方向へ所定間隔を有して平行に突設される左右一対の搬送車案内レールである。
【0042】
次に、入浴用リフト装置1の使用方法について説明する。入浴用リフト装置1を浴槽3に設置する作業を行う際は、まず、第一のパイプ状部材13の他端部に取付けられている接地脚38、連結部材35及び凹状部材34の各部材を取り外す。浴槽3の深さ、必要に応じ内底面3bの傾斜勾配等を考慮しながら第一のパイプ状部材13を適宜所定方向へ回転させて各第一のパイプ状部材13の長さを伸長または短縮する調整作業を行う。左右両方の第一のパイプ状部材13の長さの調整作業を終えた後、作業前に取り外していた接地脚38、連結部材35及び凹状部材34の各部材を第一のパイプ状部材13の他端部へ再び取付け設置作業を完了する。
【0043】
入浴者(図示省略)が載る搬送車39を設置部2後方(例えば、図8中、右方向)から接近させ、左右一対の搬送車案内レール44に台車41側部を沿わせながら設置部2の所定位置に搬送車39を差し込み、台車41を設置部2に対して連結接続する。その後、着座部40を台車41から分離する操作を行い、着座部40のみを一対の継ぎレール20上を走行通過させて、昇降部6のガイドレール21上へ移動させる(図8参照)。着座部40がガイドレール21上の所定位置に至ると不図示のロック装置が作用し、ガイドレール21に対して着座部40がロック固定される。
【0044】
操作パネル43に配設される下降スイッチ(図示省略)を押下し、昇降移動手段24の駆動モータ7を駆動させ、帯状ベルト27をベルト巻回プーリ29から繰り出し、昇降部6をフレーム4に沿って下降移動させる。昇降部6が第二のパイプ状部材12と第一のパイプ状部材13との嵌合部位を通過する際にあっても、上述した段差解消手段31が作用することにより段差が解消されるので、昇降部6が段差による衝撃を強く受けることはなく、従って、昇降部6上の入浴者が恐怖感を抱くことはなく、安心・リラックスして入浴が行える。
【0045】
昇降部6が下限位置の近傍に至ると上述した水平復帰手段33の作用によって、傾斜状態の昇降部6は水平状態に戻り、この水平状態を保ったまま昇降部6は下限位置に至り停止する。従って、入浴者の有効水深を充分に確保することができ、入浴者は肩まで湯に浸かって入浴を行うことが可能となる。
【0046】
退浴する場合は、上昇スイッチ(図示省略)を押下し、駆動モータ7を駆動させて帯状ベルト27をベルト巻回プーリ29に巻き取ることにより、昇降部6がフレーム4に沿って上昇移動する。昇降部6が上昇移動する場合にも段差解消手段31が作用する為、第二のパイプ状部材12と第一のパイプ状部材13との嵌合部位において昇降部6が段差による衝撃を強く受けることはない。昇降部6が上限位置に至ると、上昇移動が自動停止するので、着座部40のロック固定を解除した後、着座部40をガイドレール21から継ぎレール20上を走行させて台車41上へ移動させ退浴する。
【0047】
また、入浴用リフト装置1を浴槽3から別の浴槽へ移設する場合であっても、連結部材35を取り外した後、第一のパイプ状部材13を所定方向へ回転させる操作によりフレーム4全体の長さを短縮させることができる為、フレーム4長さが嵩張らず運搬性に優れたものとなる。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載の趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成を採ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、浴槽の深さ寸法に合わせてフレームの長さを容易に伸縮調整可能であり、寸法の異なる別の浴槽への移設作業の労力を軽減し作業性を向上させることができるもので、産業上の利用可能性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る入浴用リフト装置を右斜め前方からみた外観斜視図である。
【図2】入浴用リフト装置の正面図である。
【図3】同平面図である。
【図4】同右側面図である。
【図5】図2におけるA−A線で入浴用リフト装置を切断した側面断面図である。
【図6】図4におけるB−B線で入浴用リフト装置を切断した拡大正面断面図である。
【図7】段差解消手段の作用説明図である。
【図8】入浴用リフト装置の一使用形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 入浴用リフト装置
2 設置部
3 浴槽
4 フレーム
5 転動子
5a 大径ローラ面部
5b 小径ローラ面部
6 昇降部
12 第二のパイプ状部材
13 第一のパイプ状部材
14 ネジ体
15 雌ネジ
31 段差解消手段
32 段差解消プレート
32a プレート前側面
32b プレート後側面
33 水平復帰手段
34 凹状部材
34a 遊端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽周囲に設置される設置部と、
該設置部に対し幅方向に所定間隔を隔てて平行配置されるとともに前記設置部から下方に向かって延び終端側が前記浴槽内底面に載置される一対のフレームと、
該各フレーム面に当接して転動する転動子を有し前記フレーム面に沿って昇降移動する昇降部とを備えた入浴用リフト装置であって、
前記各フレームの長さを個別に伸縮調整自在に構成したことを特徴とする入浴用リフト装置。

【請求項2】
請求項1に記載の入浴用リフト装置において、
前記各フレームは、前記設置部から下方に向かってそれぞれ垂設されるネジ体に螺合する雌ネジを有する第一のパイプ状部材を備え、
前記第一のパイプ状部材を前記ネジ体に対して正回転乃至逆回転させることにより、前記各フレームの長さを伸縮調整することを特徴とする入浴用リフト装置。

【請求項3】
請求項2に記載の入浴用リフト装置において、
前記各フレームは、内部に前記ネジ体及び前記雌ネジが配置され、且つ一端が前記設置部に固定されるとともに他端が前記第一のパイプ状部材の一端側に嵌挿される第二のパイプ状部材を有しており、
前記フレーム面に沿って昇降移動中の前記昇降部が、前記第一のパイプ状部材と前記第二のパイプ状部材との嵌合部位に形成される段差位置を通過する際に該段差による衝撃を受けないように前記段差を解消する段差解消手段を付設したことを特徴とする入浴用リフト装置。

【請求項4】
請求項3記載の入浴用リフト装置において、
前記転動子は、異径ローラ面部を有する転動ローラであり、
前記段差解消手段は、前記左右各フレームに一部分が固着され、前記嵌合部位から前記両パイプ状部材の嵌挿方向の所定範囲にわたって延在する板状の段差解消プレートであり、
前記昇降部が前記段差位置乃至その近傍位置を通過する際は、前記転動ローラのローラ面部が前記段差解消プレート面に沿って転動することを特徴とする入浴用リフト装置。

【請求項5】
請求項3または4に記載の入浴用リフト装置において、
少なくとも前記フレームの終端位置において傾斜状態の前記昇降部を水平状態へ復帰させる水平復帰手段を備えたことを特徴とする入浴用リフト装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−183452(P2009−183452A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26357(P2008−26357)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】