説明

入浴用担架

【課題】
入浴介助者の操作手数を軽減し操作性をより向上させた入浴用担架を提供すること。
【解決手段】
入浴者が把持する回動式の手摺17と、主サイドガード15と、を有する入浴用担架1において、主サイドガード7に対し担架本体に載せられた入浴者の頭部側であって、担架本体の両側部に手摺17の回動に追従連動して担架本体の載置面に対し起立した位置と倒伏した位置との間で回動する副サイドガード24を備え、手摺17を入浴者が把持できる把持位置にまで回動すると、副サイドガード24が載置面に対し起立した位置になるよう回動し、載置面から外方への入浴者の上肢部のはみ出しを阻止し、手摺17を非把持位置にまで回動すると、副サイドガード24が入浴者の載置面への移乗動作の妨げにならない倒伏した位置まで回動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者等の入浴者を仰臥位姿勢で浴槽に浸漬させ入浴させる入浴用担架に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、仰臥位姿勢の入浴者を載せた担架を浴槽内の支持台上に移乗させた後、浴槽を昇降機構により上昇させて入浴者を入浴させる入浴装置が知られており、この担架には入浴時に入浴者が把持する回動式の手摺が設けられている(例えば、特許文献1)。
この回動式手摺は、担架面への移乗の際は、入浴者の移乗動作の邪魔にならない担架面と同等の位置まで回転しその位置にて固定することができ、一方、入浴時には担架上で仰臥位姿勢の入浴者が把持できる位置まで回転しその位置で固定することができるようになっている。
【0003】
また、この種の入浴用担架において、担架本体の側部に設けられた第一のサイドフェンスに対して担架に載せられる入浴者の頭部側に第二のサイドフェンスが設けられた入浴用担架が知られている(例えば、特許文献2)。
この第二のサイドフェンスは手動で起立及び転倒ができるように構成されており、第二のサイドフェンスによって、入浴者の上肢部が担架から滑り落ちることや、入浴者の腕や手等が担架からはみ出すことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−95884号公報
【特許文献2】特開2006−42853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の入浴用担架には、主副のサイドガードと、回動式の手摺を備え、手摺の回動に追従連動して副サイドガードを起立及び倒伏させることにより、入浴介助者の操作手数を軽減し操作性を向上させる工夫のなされたものは存在しない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、入浴介助者の操作手数を軽減し操作性をより向上させた入浴用担架を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現する為、請求項1記載の発明は、入浴者が把持する回動式の手摺と、主サイドガードと、を有する入浴用担架において、
前記主サイドガードに対し担架本体に載せられた入浴者の頭部側であって、前記担架本体の両側部に前記手摺の回動に追従連動して前記担架本体の載置面に対し起立した位置と倒伏した位置との間で回動する副サイドガードを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の入浴用担架において、前記手摺を入浴者が把持できる把持位置にまで回動すると、前記副サイドガードが前記載置面に対し起立した位置になるよう回動し、前記載置面から外方への入浴者の上肢部のはみ出しを阻止することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の入浴用担架において、前記手摺を非把持位置にまで回動すると、前記副サイドガードが入浴者の前記載置面への移乗動作の妨げにならない倒伏した位置まで回動することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れかに記載の入浴用担架において、前記手摺の回動に追従連動して両側部の前記副サイドガードが同時に回動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、主サイドガードに対し担架本体に載せられた入浴者の頭部側であって、担架本体の両側部に手摺の回動に追従連動して担架本体の載置面に対し起立した位置と倒伏した位置との間で回動する副サイドガードが備えられるので、介助者は手摺の回動操作と、副サイドガードの起立・倒伏に係る回動操作を個々別々に行う必要はなく、入浴介助者の操作手数を軽減することができ、操作性を向上できる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、手摺を入浴者が把持できる把持位置にまで回動すると、副サイドガードが載置面に対し起立した位置になるよう回動し、載置面から外方への入浴者の肩部ないしは上肢部のはみ出しを阻止する構成であるから、入浴介助者の操作手数を軽減でき、また、入浴者の肩や腕や手が不意に載置面から外方へはみ出すとこともない。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、手摺を非把持位置にまで回動すると、副サイドガードが入浴者の載置面への移乗動作の妨げにならない倒伏した位置まで回動する構成であるから、入浴介助者の操作手数を軽減でき、副サイドガードが移乗動作の妨げになることはない。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、手摺の回動に追従連動して両側部の副サイドガードが同時に回動する構成であるから、このような構成を採用することで操作性がより優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る入浴用担架を示す平面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る入浴用担架を示す側面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る手摺及び副サイドガードの付近を示す部分拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る入浴用担架が用いられる入浴装置の斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る入浴用担架を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1ないし4を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明に係る入浴用担架1は、高齢者や身体障害者等の入浴者を仰臥姿勢で横たわらせた状態で図4に示すような略長方形状のストレッチャー11に支持されて浴室に搬送され、ストレッチャー11の一方の長辺方向を昇降式浴槽9の一方の長辺方向に対して横付けし両者を連結し、入浴用担架1を昇降式浴槽9内に設けられる受け部12方向にスライド移動させた後、昇降式浴槽9を上昇させることにより入浴者を湯に浸漬して入浴に供するものである。
【0017】
以下、図1における入浴用担架1の下側を前側とし、上側を後側として、説明を行う。図1に示すように、入浴用担架1(担架本体)は、大別して背もたれ部2と、臀部3と、脚受け部4とからなる平面視略長方形状の載置部5がベースフレーム6上に載置されて構成される。背もたれ部2は概ね入浴者の頭部から腰部にかけての範囲を支持し、脚受け部4は概ね入浴者の脚から下の部位を支持する。
入浴用担架1がストレッチャー11上に支持されている場合、通常、載置部5は、略水平状態となるように維持されている。
【0018】
図1に示すように、背もたれ部2は、後側から前側にかけて順次配列される第一の背もたれ部2aと第二の背もたれ部2bとから構成され、両部間が関節軸22によって回動可能に連結されている。第一の背もたれ2aには、枕29が前後方向に位置調整可能に設けられている。
【0019】
同様に脚受け部4も、後側から前側にかけて順次配列される第一の脚受け部4aと第二の脚受け部4bとから構成され、両部間が関節軸23によって回動可能に連結されている。
また、第二の背もたれ部2bの前側と臀部3の後側も関節軸30によって回動可能に連結され、臀部3の前側と第一の脚受け部4aの後側が関節軸31によって回動可能に連結されている。
【0020】
図2に示すように、背もたれ部2は、関節軸30を支軸として臀部3に対し背もたれ部2全体が回動可能となっている。また、詳細な説明及び図示は省略するが、入浴用担架1を昇降式浴槽9の受け部12に移動させた後、昇降式浴槽9を上昇させると、この上昇動作に随伴して、関節軸22を支軸として、第一の背もたれ部2aが第二の背もたれ部2bに対して回動する構成となっている。これにより入浴者の後頭部や耳が湯に浸かることなく、安全に入浴を行うことができる。さらに、脚受け部4は、側面視で関節軸23部分が頂点となるよう上方に持ち上げて山形状に形態変更することができ、膝を立てた状態で入浴させることで入浴時のずり込みを防止できるようにもなっている。
【0021】
ベースフレーム6は、載置部5の前後方向に延在され所定間隔をあけて離間して左右に並行配設されるパイプ状部材7・7と、このパイプ状部材7・7の各端部に連結され載置部5の左右方向にわたって横架される側面視逆凹形状の横架材8・8とから構成される。
各パイプ状部材7の外側には介助者が入浴用担架1を操作する際に掴む握り手28が前後方向に延在して設けられる。また、各横架材8の裏面には、昇降式浴槽9の受け部12の両端に並行配設される案内レール14・14上を転動する転動ローラ13が複数個配設されている。
【0022】
入浴用担架1の左右両側部において、各パイプ状部材7の所定位置二箇所に取着される水平軸16・16に対して回動可能に主サイドガード15が配設されている。図2に示すように、主サイドガード15は、不図示のロック機構によって載置部5の載置面に対して起立する起立位置に固定できるとともに、ロック解除をすることにより同載置面に対して垂下する垂下位置に位置を切替えできるようになっている。
【0023】
図2に示すように、各主サイドガード15は第二の背もたれ部2bの前側近傍から第二の脚受け部4bの前側近傍におよぶ範囲にわたって設けられ、起立位置にあるときに入浴者の肢体が載置部5面からのはみ出しを防ぐのに充分なサイズとされている。
【0024】
また、背もたれ部2には、入浴者が主に入浴時に把持する回動式の手摺17が載置部5の左右方向にわたって設けられている。手摺17は平面視略U字形状に形成され、その各遊端部17aが第一の背もたれ部2a裏面の左右位置において取着金具18を介して取着される手摺支軸19に連結されている(図3参照)。
【0025】
図3に示すように、各遊端部17aにはボス20が固着され、このボス20が手摺支軸19端部に嵌挿され、手摺17が手摺支軸19に対し回動可能となっている。また、ボス20はその外周面の一部に沿って外周溝20aが形成され、この外周溝20aに手摺支軸19に設けられたピン材21が嵌入している。このピン材21によって手摺17の回動が外周溝20aの端部において規制される。
【0026】
即ち、手摺17は、ピン材21によって、入浴者が把持する把持位置(図2中、Bで示す位置)と非把持位置(図2中、Aで示す位置)の各位置で回動が規制される。図2に示すように、非把持位置にまで手摺17を回動したとき、手摺17の全体が載置部5の下方に位置するので、載置部5への入浴者の移乗時には手摺17をこの位置に回動させておくことで入浴者の移乗動作の妨げになることはない。
【0027】
さらに、図1に示すように載置部5の左右両側部には手摺17の回動に追従連動して載置部5の載置面に対し起立した位置と倒伏した位置との間で回動する副サイドガード24が設けられる。尚、起立した位置とは、図2中Cで示す位置であり、倒伏した位置とは同図中Dで示す位置をいう。
【0028】
図1、2に示すように、各副サイドガード24は、各主サイドガード15に対する後側(載置部5上に横たわる入浴者の頭部側)であって、手摺17と第一の背もたれ部2aとの間において設けられ側面視で略への字形状をしている。この副サイドガード24は、入浴時に載置部5の載置面から外方への入浴者の肩部ないしは上肢部のはみ出しを阻止する役割を果たすものである。
【0029】
図3に示すように、副サイドガード24における長手部分24aの端位置はボルト軸25で第一の背もたれ部2aの側面に回動可能に軸着されている。また、短手部分24bには直線状のガイド溝26が形成され、このガイド溝26に手摺17の支持部17b内側に突出状に設けられるガイドピン27が嵌入している。
【0030】
従って、手摺17を回動させると、ガイドピン27によってガイドされる副サイドガード24が手摺17に追従連動して回動することになる。このとき、ガイドピン27は、ガイド溝26の内壁に摺接しながら移動する。手摺17の回動がピン材21によって規制されると、副サイドガード24の回動も規制される。
【0031】
次に、入浴用担架1の使用方法を説明する。入浴者を寝台等から入浴用担架1の載置部5に移乗させるに際し、主サイドガード15が起立位置にある場合は、ロックを解除し主サイドガード15を垂下位置まで垂下させる。
【0032】
また、手摺17が把持位置にある場合は、手摺17を回動させて非把持位置にする。手摺17を非把持位置にまで回動すると、副サイドガード24も手摺17の回動に追従連動して回動し、副サイドガード24全体が載置面より下方の倒伏した位置に至るので、入浴者の移乗動作の妨げとなることはない。
【0033】
入浴者の載置部5への移乗が完了した後、主サイドガード15を起立位置に戻しロック機構を作用させ、続いて手摺17を回動させて把持位置にまで戻す。手摺17を把持位置に戻すと、副サイドガード24が載置部5の載置面に対し起立した位置になり、載置面から外方への入浴者の肩部ないしは上肢部のはみ出しを阻止することができる。
【0034】
従って、介助者は手摺17の回動操作と、副サイドガード24の起立・倒伏に係る回動操作を個々別々に行う必要はなく、入浴介助者の操作手数を軽減することができ、操作性を向上できる。また、平面視略U字形状の手摺17が一体として回動することによって、左右側部の副サイドガード24・24も同時に回動するので、操作性がより優れたものとなる。
【0035】
図5を参照して本発明の第二の実施形態を説明する。尚、図5において、図1ないし4と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。第二の実施形態は、第一の実施形態における手摺17を支持部17bの中途位置において曲折した手摺32に変更したものである。
【0036】
手摺32は、非把持位置にある状態で支持部32aがその略中間位置で図5中、右斜め下方向に延在する形状に曲折されて形成される。これにより、非把持位置にある手摺32を把持位置の方向へ回動するときに、副サイドガード24の短手部分24bの側端部24cと支持部32aの間で副サイドガード24に巻き込まれるようにして入浴介助者の手指が挟まれてしまうという危険を防ぐことができ、安全に手摺32の回動操作を行うことができる。また、恰幅の良い腹部の突き出た入浴者が載置部5に仰臥し入浴する場合であっても、把持位置にある手摺32の水平部32b付近が腹部に仕え難いというメリットも兼ね備えている。
【0037】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、図示は省略するが、手摺は左右一体の構造ではなく、左右別体の構造として背もたれ部に対し独立に回動可能に設けても本発明の目的を達成することができるものである。また、副サイドガードとガイドピンとにわたって、あるいは、副サイドガードとそのボルト軸とにわたって、それぞれバネを介装し、手摺と副サイドガードとの間に万一手指が挟み込まれた場合には、副サイドガードが手摺に対して離間する方向に一時退避できるような構成を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、高齢者や身体障害者等の入浴者を入浴させる入浴用担架に適用できるもので、産業上の利用可能性は高いものである。
【符号の説明】
【0039】
1 入浴用担架
2 背もたれ部
2a 第一の背もたれ部
2b 第二の背もたれ部
5 載置部
15 主サイドガード
17 手摺
24 副サイドガード
25 ボルト軸
26 ガイド溝
27 ガイドピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴者が把持する回動式の手摺と、主サイドガードと、を有する入浴用担架において、
前記主サイドガードに対し担架本体に載せられた入浴者の頭部側であって、前記担架本体の両側部に前記手摺の回動に追従連動して前記担架本体の載置面に対し起立した位置と倒伏した位置との間で回動する副サイドガードを備えたことを特徴とする入浴用担架。

【請求項2】
請求項1記載の入浴用担架において、
前記手摺を入浴者が把持できる把持位置にまで回動すると、前記副サイドガードが前記載置面に対し起立した位置になるよう回動し、前記載置面から外方への入浴者の上肢部のはみ出しを阻止することを特徴とする入浴用担架。

【請求項3】
請求項1または2記載の入浴用担架において、
前記手摺を非把持位置にまで回動すると、前記副サイドガードが入浴者の前記載置面への移乗動作の妨げにならない倒伏した位置まで回動することを特徴とする入浴用担架。

【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載の入浴用担架において、
前記手摺の回動に追従連動して両側部の前記副サイドガードが同時に回動することを特徴とする入浴用担架。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−62480(P2011−62480A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218222(P2009−218222)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】