説明

全光再生増幅装置

【課題】全光システムにおいて用いられ、3R再生を実現できる全光再生増幅装置を提供する。
【解決手段】波長分割多重された複数チャネルの光信号を受け入れ、当該受け入れた各チャネルの光信号の相対的な位相を一致させ、また受け入れた各チャネルの光信号の偏波状態を一致させる。そして位相及び偏波状態を一致させた後の、いずれかのチャネルの光信号から、クロック信号を抽出し、当該抽出したクロック信号と、各チャネルの光信号とを合成し、合成された光信号を、光パラメトリック増幅する全光再生増幅装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全光再生増幅装置に係り、特に多波長への対応に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中継時にも電気信号に変換せず、光信号のままで信号増幅を行うシステム(全光システム)が開発されている。この全光システムでは、伝送距離の増加とともに発生する信号劣化を補償するため、光信号のままで信号再生を行う必要がある。
【0003】
なお、伝送された波長分割多重光信号の波形劣化を改善するため、各チャンネル光信号の位相を揃え、非線形光学効果を利用した波長変換器により、一括して波長変換を行いながら、光再生を行う技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−188821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、全光システムにおいて、波長変換を行うのではなく、信号の増幅(re-amplifing)、整形(reshaping)、タイミング回復(retiming)の全ての処理を行って信号を再生する(いわゆる3R再生)技術については、従来手法では、一部に電気信号処理を用いている方式はあるが、完全に光信号処理で行う方法については、従来得られていない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、全光システムにおいて用いられ、3R再生を実現できる全光再生増幅装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る全光再生増幅装置は、波長分割多重された複数チャネルの光信号を受け入れ、当該受け入れた各チャネルの光信号の相対的な位相を一致させる手段と、前記受け入れた各チャネルの光信号の偏波状態を一致させる手段と、前記位相及び偏波状態を一致させた後の、いずれかのチャネルの光信号から、クロック信号を抽出する手段と、前記抽出したクロック信号と、各チャネルの光信号とを合成する手段と、前記合成された光信号を、光パラメトリック増幅する手段と、を含むこととしたものである。
【0008】
またここで、前記抽出されたクロック信号を、各チャネルの光信号よりも強度が大きくなるまで増幅する手段をさらに含み、前記クロック信号と各チャネルの光信号とを合成する手段が、当該増幅されたクロック信号と各チャネルの光信号とを合成することとしてもよい。
【0009】
さらに、前記光パラメトリック増幅を行う手段が、前記各チャネルの光信号が飽和する増幅率で増幅を行ってもよい。
【0010】
さらに、記光パラメトリック増幅後の光信号のうち、所定波長域の光信号を選択的に透過させるバンドパスフィルタ手段をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、受け入れた各チャネルの光信号の相対的な位相と偏波状態とが一致され、その上で抽出されたクロック信号によって光パラメトリック増幅が行われる。このことで、全光システムにおいて3R再生を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置の一例を表す構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置における前段偏波・ディレイ調整部の構成例を表すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置における第1偏波・ディレイ調整部の構成例を表すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置におけるクロック抽出部の構成例を表すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置における第2偏波・ディレイ調整部の構成例を表すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置における制御部の例を表すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置のもうひとつの例を表す構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る全光再生増幅装置は、図1に例示するように、前段偏波・ディレイ調整部1と、第1光カプラ2と、第1偏波・ディレイ調整部3と、第1増幅部4と、クロック抽出部5と、第2偏波・ディレイ調整部6と、第2増幅部7と、第2光カプラ8と、非線形デバイス部9と、出力部10と、制御部11とを含んで構成される。また、前段偏波・ディレイ調整部1は、例えば図2に示すように、分波器21と、分波器21により複数のチャネルに分離された後の各チャネルの光信号に対応して設けられる偏波調整器22a,b,…n、及びディレイ調整器23a,b,…nと、偏波モニタ24と、偏波制御部25と、ディレイモニタ26と、ディレイ制御部27と、合波器28とを含んで構成される。
【0014】
前段偏波・ディレイ調整部1の分波器21は、例えばアレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)であり、波長分割多重された複数チャネルの光信号(WDM信号)を受け入れて、当該受け入れた光信号に含まれる、各チャネルの光信号を分離して出力する。
なお、本実施の形態では、後に述べるようにパラメトリック増幅の飽和特性を用いるため、飽和する光のパワーレベルを揃えるよう、非線形デバイスへの入射する各チャネルの光信号のパワーを互いに一致させておくことも好ましい。具体的には、分波器21により分離された各チャネルの光信号のパワーを調整するパワー調整部20を分波器21の前段、または分波器21と偏波調整器22との間に設けてもよい(図1において破線にて示しているのはどちらに配置しても構わないためである)。
このパワー調整部20は、例えば光スペクトラムアナライザなどの光信号のパワーモニタと、チャネルごとに光信号のパワーを調整するチャネルイコライザ(分波器21の後段に配する場合)や、すべてのチャネルの光信号を含む波長帯域で、光信号のパワーを調整するスペクトラムイコライザ(分波器21の前段に配する場合)とを用いて実現できる。
【0015】
偏波調整器22は、分波器21が出力した各チャネルの光信号に対応して設けられ、それぞれの偏波調整器22は、対応するチャネルの光信号の偏波を調整する。この偏波調整器22は、ファイバ・ループを用いた公知のもので構わない。この偏波調整器22は、偏波制御部25の出力に従い、対応するチャネルの光信号の偏波を制御する。
【0016】
便宜的に偏波モニタ24を先に説明すると、偏波モニタ24は、例えばストークスモニタ(Stokes Monitor)や、偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)及びパワーモニタを組み合わせたものなどで構成できる。ここで偏波ビームスプリッタは、入力された光を、互いに直交する直線偏波成分を有する2つの光信号に分けるものである。なお、ストークスモニタを用いる場合は、偏波調整器22から偏波モニタ24までの導波路は、偏波保持ファイバ(PMF)など、偏波状態を保持可能なものとしておく。
【0017】
本実施の形態で、偏波モニタ24としてこの偏波ビームスプリッタとパワーモニタとを組み合わせたものを用いる場合、各偏波調整器22のそれぞれに対応して偏波ビームスプリッタとパワーモニタとを設ける。そして、各偏波ビームスプリッタの出力する1対の直線偏波の方向がそれぞれ各偏波ビームスプリッタ間で一致するように調整をしておく。
【0018】
各偏波調整器22の出力信号を偏波ビームスプリッタによって2つの光信号に分割する。そして、そのうちの一方の光信号を、対応するパワーモニタに入力し、パワーモニタにて当該入力された光信号の強度を測定して出力させる。パワーモニタが出力する強度の信号は、偏波制御部25に出力される。また、偏波ビームスプリッタが出力する光信号のうち、パワーモニタに出力される光信号に直交する直線偏波を有する光信号は、対応するチャネルのディレイ調整器23に出力される。
【0019】
偏波制御部25は、各チャネルのパワーモニタの出力がそれぞれ最小となるように、すなわち、各パワーモニタに入力された光信号の偏波とは直交する直線偏波を有する光信号(ディレイ調整器23に出力される光信号)のパワーが最大となるように、偏波調整器22を制御する。
【0020】
このような偏波調整器22、偏波モニタ24、偏波制御部25の構成により、各チャネルの偏波状態が特定の直線偏波の状態に揃えられ、かつ、各チャネルの光信号の強度が最大となるように調整され、各チャネルの光信号の偏波が特定の偏波状態(SOP)に一致させられる。
【0021】
ディレイ調整器23は、対応するチャネルの光信号のディレイ調整を行い、各チャネルの光信号間の相対的な位相を一致させる。このディレイ調整器23は、ディレイ制御部27から入力される指示に従い、ディレイ量を調整しつつ、調整したディレイ量だけ、対応するチャネルの光信号を遅延させて出力する。
【0022】
ディレイモニタ26は、各ディレイ調整器23に対応して設けられ、対応するディレイ調整器23が出力する光信号のピークを検出するのに十分な周期で、周期的に光信号の強度を検出する。そしてこのディレイモニタ26は、光信号のピークのタイミングを表す信号を出力する。この信号は、例えば光信号のピークの位置で立ち上がるパルス信号などとしてもよい。
【0023】
ディレイ制御部27は、ディレイモニタ26が出力する信号に基づいて、各チャネルの光信号のピーク位置(すなわち位相)が互いに一致するよう、各チャネルに対応するディレイ調整器23におけるディレイ量を指定する。このようなディレイ制御部27の動作については広く知られた方法が採用できるので、ここでの詳しい説明を省略する。
【0024】
なお、ディレイモニタ26とディレイ制御部27とはこの態様に限られず、例えばディレイモニタ26が各チャネルのディレイ調整器23の出力信号のクロックを抽出し、各チャネルのクロックの位相を表す信号をディレイ制御部27に出力し、ディレイ制御部27が各チャネルのクロックの位相を一致させるよう、各ディレイ調整器23でのディレイ量を調整させてもよい。
【0025】
このように各ディレイ調整器23が制御されることで、各ディレイ調整器23がそれぞれ出力する光信号のピークの相対時間(相対的な位相)が一致するよう調整される。
【0026】
合波器28は、偏波調整器22にて偏波状態が一致させられ、ディレイ調整器23によって相対的な位相が一致させられた各チャネルの光信号を合波して、WDM信号を生成して出力する。
【0027】
なお、この前段偏波・ディレイ調整部1の説明では、偏波の調整を行ってからディレイの調整を行っているが、この順序は、逆順でも構わない。ただし、偏波調整器22から合波器28までの間の導波路やデバイスは、偏波保持ファイバ(PMF)にて構成するなど、偏波状態を保持可能なものとする。また、ここではWDM信号を分波してから、1チャネルごとに偏波とディレイの調整を行っているが、WDM信号の状態でそのまま、各チャネルの偏波とディレイとを一致させることのできるデバイスが開発されたときには、そのようなデバイスを用いても構わない。
【0028】
第1光カプラ2は、前段偏波・ディレイ調整部1の出力するWDM信号を第1偏波・ディレイ調整部3と、クロック抽出部5とに分配する。第1偏波・ディレイ調整部3は、図3に例示するように、偏波調整器22′及びディレイ調整器23′を含んで構成される。
【0029】
偏波調整器22′は、すべてのチャネルの光信号の偏波を一括して調整する。この偏波調整器22′は、前段偏波・ディレイ調整部1の偏波調整器22と同様、ファイバ・ループを用いた公知のもので構わない。これらの偏波調整器22′は、制御部11の出力に従い、すべてのチャネルの光信号の偏波を一括して制御する。
【0030】
ディレイ調整器23′は、すべてのチャネルの光信号のディレイ調整を一括して行う。このディレイ調整器23′は、制御部11から入力される指示に従い、ディレイ量を調整しつつ、調整したディレイ量だけ、すべてのチャネルの光信号を遅延させて出力する。
【0031】
なお制御部11は、後に述べるように、別途生成されるクロック信号と各チャネルの光信号の偏波状態と位相とを互いに一致させるよう、偏波調整器22′や、ディレイ調整器23′を制御するものである。すなわち、本実施の形態では、前段偏波・ディレイ調整部1が存在するために、チャネル間の光信号の偏波とディレイ量(位相の調整量)とは、後の処理が可能な程度に一致している。そこで、この第1偏波・ディレイ調整部3は、後に説明するクロック信号に対する光信号の偏波、及び相対的な位相を一致させるのである。
【0032】
第1増幅部4は、第1偏波・ディレイ調整部3が出力するWDM信号を増幅する光増幅器であり、第1偏波・ディレイ調整部3が出力するWDM信号を増幅して出力する。
【0033】
クロック抽出部5は、例えば、図4に例示するように、光バンドパスフィルタ31と、偏波調整部32と、半導体モード同期レーザ(MLLD:Mode-locked laser diode)33とを含んで構成される。この光バンドパスフィルタ31は、入力されたWDM信号から、1つのチャネルの光信号を抽出するよう、その通過帯域が設定されている。ここで光バンドパスフィルタ31が抽出するチャネルは、任意のもので構わない。
【0034】
光バンドパスフィルタ31を通過した光信号(いずれか1つのチャネルの光信号)は、偏波調整部32に入力される。偏波調整部32は、入力された光信号をTEモード(Transverse Electric Mode)、すなわち伝搬方向に電場の成分を持たないモードに偏波させる。
【0035】
MLLD33は、偏波調整部32が出力する光信号の入射を受けて、当該光信号にモード同期した光信号を出力する。すなわち、入射された光信号のシンボルレートに同期したクロック信号を出力する。この際、入射される光信号におけるデータ変調方式が強度変調であると、位相変調(PSK、DPSK、QPSK、DQPSKなど)であるとを問わず、クロック信号を生成できる。なお、このMLLD33に代えて、セルフパルス型COMBレーザー(Selfpulsating Phase Controlled Mode Beating Laser)を用いても同様の構成を達成できる。
【0036】
第2偏波・ディレイ調整部6は、図5に例示するように、偏波調整器22′とディレイ調整器23′とを含んで構成される。ここでこれら偏波調整器22′、及びディレイ調整器23′の動作は、第1偏波・ディレイ調整部3におけるものと同様に、制御部11から入力される指示に従って、クロック信号の偏波状態と、位相とを、第1偏波・ディレイ調整部3において調整される各チャネルの偏波状態や位相に一致させるものとなる。
【0037】
第2増幅部7は、第2偏波・ディレイ調整部6の出力するクロック信号を増幅する光増幅器である。本実施の形態では、第2増幅部7が出力する、増幅後のクロック信号の強度が、第1増幅部4の出力する各チャネルの光信号の強度よりも大きくなるよう、この第2増幅部7の増幅率や第1増幅部4の増幅率が設定されている。
【0038】
第2光カプラ8は、第1増幅部4が出力する光信号と、第2増幅部7が出力する光信号とを合波して出力する。非線形デバイス部9は、一般に「高非線形光ファイバ(HNLF)」と呼ばれる光デバイスなどであり、合波されたクロック信号と各チャネルの光信号との入力を受けて、クロック信号をポンプ光として、各チャネルの光信号をパラメトリック増幅する。このとき、各チャネルの光信号におけるパラメトリック増幅の利得が飽和する程度に、ポンプ光(ここではクロック信号)の強度を高めておく。つまり、パラメトリック増幅の利得が飽和する程度に、第2増幅部7における増幅率が設定される。
【0039】
出力部10は、非線形デバイス部9が出力する光信号から、目的とするWDM信号に含まれるべき光信号の波長帯域(所定波長域)内の波長を有する光信号を選択的に透過させ、それ以外の不要光を遮断するバンドパスフィルタを備える。そして、選択的に透過された光信号を出力する。
【0040】
制御部11は、図6に示すように、分波器21′と、偏波モニタ24′と、偏波制御部25′と、ディレイモニタ26′と、ディレイ制御部27′とを含む。
【0041】
この制御部11の分波器21′は、前段偏波・ディレイ調整部1における分波器21と同様の構成を採るものであるが、ここでは第1増幅部4の出力するWDM信号を分波して、各チャネルの信号を出力する。
【0042】
偏波モニタ24′は、分波器21′が出力するいずれかのチャネルの光信号と、第2増幅部7が出力するクロック信号とのそれぞれの偏波状態を表す信号(例えば既に述べた偏波モニタ24と同様、特定の直線偏波成分の強度など)を出力する。一例としてこの偏波モニタ24′が、偏波ビームスプリッタとパワーモニタとを用いるものである場合、各偏波ビームスプリッタの2つの出力信号のうち一方(各偏波状態が同じになる出力信号)を図示しない合波器により合波して、WDM信号としてから、後段の第2光カプラ8に出力する。
【0043】
偏波制御部25′は、偏波モニタ24′が出力する偏波状態を表す情報に基づき、第2光カプラ8に出力されるWDM信号に含まれるすべてのチャネルの光信号と、クロック信号との偏波状態を一致させるよう、第1偏波・ディレイ調整部3及び第2偏波・ディレイ調整部6における各偏波調整器22,22′を制御する。
【0044】
また、ディレイモニタ26′は、分波器21′が出力するいずれかのチャネルの光信号と、第2増幅部7が出力するクロック信号とについて、それらの光信号のピークをそれぞれ検出するのに十分な周期で、周期的に各光信号の強度を検出する。そしてこのディレイモニタ26′は、各光信号のピークのタイミングを表す信号をそれぞれ出力する。これらのタイミングを表す信号は、例えば各光信号のピークの位置で立ち上がるパルス信号などとしてもよい。
なお、ここでは第1増幅部4が出力するWDM信号に含まれるいずれかのチャネルの光信号を、分波器21′を用いて抽出しているが、分波器21′に代えて、光カプラとバンドパスフィルタとを用いてもよい。この場合、光カプラが第1増幅部4が出力するWDM信号を、バンドパスフィルタと、第2光カプラ8とに分岐して出力し、バンドパスフィルタがWDM信号のうちから予め定めたチャネルの光信号を抽出して、偏波モニタ24′や、ディレイモニタ26′へ出力してもよい。
【0045】
ディレイ制御部27′は、ディレイモニタ26′が出力する信号に基づいて、各チャネルの光信号、及びクロック信号のピーク位置が互いに一致するよう、各チャネル及びクロック信号に対応する、第1偏波・ディレイ調整部3及び第2偏波・ディレイ調整部6における各ディレイ調整器23,23′におけるディレイ量をそれぞれ制御する。
【0046】
なお、ディレイモニタ26′とディレイ制御部27′とはこの態様に限られず、例えばディレイモニタ26′が各チャネルのクロックを抽出し、各チャネルのクロックの位相と、クロック信号の位相とを表す信号を生成してディレイ制御部27′に出力し、ディレイ制御部27′が各位相を一致させるよう、第1偏波・ディレイ調整部3及び第2偏波・ディレイ調整部6における各ディレイ調整器23,23′におけるディレイ量をそれぞれ制御してもよい。
【0047】
さらに本実施の形態の構成においては、第1偏波・ディレイ調整部3及び第2偏波・ディレイ調整部6における各偏波調整器22,22′から、非線形デバイス部9まで(第2カプラ8を含む)の導波路や光デバイスを、偏波保持ファイバ(PMF)にて構成するなど、偏波状態を保持可能なものとしておく。
【0048】
また、ここまでの説明では、前段偏波・ディレイ調整部1と、第1偏波・ディレイ調整部3と、第2偏波・ディレイ調整部6とのそれぞれにおいて、偏波調整と、ディレイ調整の順序は、どちらを先にしてもよいものとして説明した。しかしながら、ディレイ調整のためのデバイスの偏波依存性を考慮すると、ディレイ調整を先に行っておき、しかる後に偏波調整を行うように構成してもよい。このように構成すれば、偏波状態を保持可能なデバイスの使用量を低減できる。
【0049】
また、ここまでにおいて、偏波ビームスプリッタを用いている箇所では、偏波ビームスプリッタに代えて、偏光フィルタや偏光プリズム、波長板などのポラライザと、光カプラとを用いても、同様の構成を達成できる。
【0050】
本実施の形態の全光再生増幅装置は、以上の構成を備えてなるので、次のように動作する。本実施の形態の全光再生増幅装置では、前段偏波・ディレイ調整部1により、伝送されてきたWDM信号の各チャネルの光信号の偏波・ディレイ状態が揃えられる。これにより前段の伝送路で生じた偏波状態の変動や位相差の変動を吸収し、後段での処理負担を軽減している。
【0051】
また、この前段偏波・ディレイ調整部1により偏波・ディレイ状態が揃えられた各チャネルの信号のうち、いずれかの光信号を利用して、クロック抽出部5がクロック信号を抽出する。このクロック信号は、再生増幅の対象となるWDM信号の各チャネルの光信号と、その偏波状態、及び位相が一致するよう、第1偏波・ディレイ調整部3と第2偏波・ディレイ調整部6と制御部11とにより、その偏波や位相が調整される。クロック信号と、当該クロック信号に偏波状態及び位相を一致させられたWDM信号とは、それぞれ第2増幅部7と第1増幅部4とにより増幅される。ここで第2増幅部7の増幅率は、後段の非線形デバイス部9における各チャネルの光信号のパラメトリック増幅の利得が飽和する程度に大きく定められ、かつ、第1増幅部4における増幅率に対して十分大きくなるよう(パラメトリック増幅が可能であるよう)設定される。
【0052】
すなわち、パラメトリック増幅が発生するためには、(1)非線形デバイス部9における非線形性が十分高いこと(非線形定数γが十分大きい)、(2)零分散波長λ0に対し、ポンプ光となる光の波長λpが、λ0<λp、(3)ポンプ光となる光の波長λpと、各チャネルの光信号の波長λi(i=1,2,…n)がいずれも零分散波長λ0近傍(λ0との差の絶対値が予め定めた値よりも小さい)、(4)ポンプ光の強度が、各チャネルの光信号の強度より十分大きい、という各条件が満足される必要がある(なお、これら非線形定数γや、各光の強度などの各条件については、実験的に定めることができる)。本実施の形態では、クロック信号の抽出、第1、第2増幅部における増幅率の設定により、また用いる導波路の選択により、これらの条件が満足されるようにできる。
【0053】
また、パラメトリック増幅では、ポンプ光の偏波状態に対し直交した成分については増幅がなされない。しかしながら本実施の形態では、ポンプ光となるクロック信号と、増幅の対象となるWDM信号の各チャネルの光信号との偏波状態が、第1偏波・ディレイ調整部3と第2偏波・ディレイ調整部6と制御部11とにより一致するよう制御されているので、パラメトリック増幅が効果的に行われる。また、伝送路などで生じた偏波モード分散により劣化信号に対しても、上記のようなパラメトリック増幅の作用により、クロック信号の偏波状態に直交する成分については増幅がなされず、従って偏波モード分散が補償される結果となる。
【0054】
このように本実施の形態では、パラメトリック増幅により増幅が行われる。また、ポンプ光として、従来一般的である連続光(CW)ではなく、クロック信号のような正弦波状の信号を用いることで、増幅の結果も正弦波状になるよう制御しているとともに、十分に増幅したポンプ光や各チャネルの光信号の偏波状態を一致させた後でパラメトリック増幅を行っており、各チャネルの光信号が、正弦波状に、かつ、増幅利得が飽和するまで増幅される結果、各チャネルの光信号の波形が整形(reshaping)される。また、位相が一致するよう調整されており、リタイミング(retiming)も行われるので、全光3R再生が達成される。なお、パラメトリック増幅では、位相を保持した状態で、増幅が行われ、また、増幅利得が飽和する、いわゆるリミッタ効果を得ることもできる。このパラメトリック増幅を用いた本再生装置は、強度変調信号のみならず、位相変調信号においても、適用できる。
【0055】
さらに、本実施の形態では、出力部10において、非線形デバイス部9でのパラメトリック増幅により生じる自然放射光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)や、四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)のアイドラ光を除去するので、出力信号のS/N比を向上できる。
【0056】
なお、以上の説明において、非線形デバイス部9が出力する光信号には、既に述べたようなパラメトリック増幅により生じる自然放射光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)や、四光波混合(FWM:Four Wave Mixing)のアイドラ光だけでなく、ポンプ光自体なども含まれる。さらに、非線形デバイス部9において、ポンプ光であるクロック信号のスペクトルは自己位相変調(SPM:Self Phase Modulation)により広がっている。そこで、出力部10が備えるバンドパスフィルタは、例えばその透過特性が周期性を有するようなバンドパスフィルタ(ファブリペローフィルタやマッハツェンダ干渉系など)を用いることとしてもよい。
【0057】
これにより、クロック信号のスペクトルの拡大による、各チャネルの光信号のスペクトルに対する作用(クロック信号同様拡大する)や、ポンプ光、自然放射光、信号間クロストークなどを排除する。
【0058】
なお、周期性を有するフィルタとしては、ファブリペローフィルタだけでなくアレイ導波路回折格子等の合分波器を一対で用いて直結するなどしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態において、前段偏波・ディレイ調整部1よりもさらに前段に、透過波長に周期性を有する光フィルタを挿入し、WDM信号に含まれる各チャネルの波長の光を選択的に透過させ、信号ノイズ(OSNR)を低減してもよい。
【0060】
さらにここまでの説明では、前段偏波・ディレイ調整部1に加え、その後段においても、第1,第2偏波・ディレイ調整部を配しているが、本装置内部の導波路や、光デバイスのすべてにおいて、偏波状態を保持可能なもの(例えば偏波保持ファイバ(PMF)等)を用いることとすれば、第1,第2偏波・ディレイ調整部や制御部11は必ずしも必要でない。
【0061】
すなわち、このように装置全体において偏波保持が可能なデバイス等を用いる場合には、図7に例示するように、前段偏波・ディレイ調整部1と、第1光カプラ2と、第1増幅部4と、クロック抽出部5と、ディレイ調整部12と、第2増幅部7と、第2光カプラ8と、非線形デバイス部9と、出力部10と、制御部11′とを含む構成とすることができる。ここで既に説明したものと同様の構成を採るものについては、同じ符号を付した。これら既に説明したものと同様の構成を採るものについては、繰り返しての説明を省略するが、それぞれにおいて偏波状態を保持可能なデバイスとなっているものとする。
【0062】
制御部11′は、第1増幅部4が出力するすべてのチャネルの光信号の位相と、クロック抽出部5が出力するクロック信号の位相とが一致するよう、ディレイ調整部12を制御する。そしてディレイ調整部12が、制御部11′からの指示に従い、クロック信号のディレイ量を調整し、増幅の対象となるWDM信号に含まれるすべてのチャネルの光信号の位相と、クロック信号の位相とを一致させる。ここで制御部11′に含まれる光デバイスや、ディレイ調整部12も、また、偏波状態を保持可能なデバイスとしておく。
【0063】
なお、この場合においても、非線形デバイス部9よりも後段(例えば出力部10や、それまでの導波路など)については、必ずしも偏波状態を保持可能なデバイスとしておく必要はない。
【符号の説明】
【0064】
1 前段偏波・ディレイ調整部、2 第1光カプラ、3 第1偏波・ディレイ調整部、4 第1増幅部、5 クロック抽出部、6 第2偏波・ディレイ調整部、7 第2増幅部、8 第2光カプラ、9 非線形デバイス部、10 出力部、11,11′ 制御部、12 ディレイ調整部、20 パワー調整部、21,21′ 分波器、22,22′ 偏波調整器、23,23′ ディレイ調整器、24 偏波モニタ、25 偏波制御部、26 ディレイモニタ、27 ディレイ制御部、28 合波器、31 光バンドパスフィルタ、32 偏波調整部、33 MLLD。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長分割多重された複数チャネルの光信号を受け入れ、当該受け入れた各チャネルの光信号の相対的な位相を一致させる手段と、
前記受け入れた各チャネルの光信号の偏波状態を一致させる手段と、
前記位相及び偏波状態を一致させた後の、いずれかのチャネルの光信号から、クロック信号を抽出する手段と、
前記抽出したクロック信号と、各チャネルの光信号とを合成する手段と、
前記合成された光信号を、光パラメトリック増幅する手段と、
を含む全光再生増幅装置。
【請求項2】
請求項1記載の全光再生増幅装置であって、
前記抽出されたクロック信号を、各チャネルの光信号よりも強度が大きくなるまで増幅する手段をさらに含み、
前記クロック信号と各チャネルの光信号とを合成する手段が、当該増幅されたクロック信号と各チャネルの光信号とを合成することを特徴とする全光再生増幅装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の全光再生増幅装置であって、
前記光パラメトリック増幅を行う手段が、前記各チャネルの光信号が飽和する増幅率で増幅を行うことを特徴とする全光再生増幅装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の全光再生増幅装置であって、
前記光パラメトリック増幅後の光信号のうち、所定波長域の光信号を選択的に透過させるバンドパスフィルタ手段をさらに含むことを特徴とする全光再生増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−212851(P2010−212851A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54819(P2009−54819)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(307022424)ソフトバンクテレコム株式会社 (42)
【Fターム(参考)】