説明

共まい防止用治具、フレーム固定用治具、アーム支持用治具、シャフト取外用治具、クランプ分解用治具セット、スプリング回転用治具、フレーム開幅用治具、スプリング圧縮用治具セット、クランプ組立用治具セット、クランプ分解方法、及び、クランプ組立方法

【目的】安全に、しかも、高度の熟練を必要とせず短時間で分解作業又は組立作業を行うことができる共まい防止用治具、フレーム固定用治具、アーム支持用治具、シャフト取外用治具、クランプ分解用治具セット、スプリング回転用治具、フレーム開幅用治具、スプリング圧縮用治具セット、クランプ組立用治具セット、クランプ分解方法、及び、クランプ組立方法を提供すること。
【解決手段】フレーム開幅用治具37で支えた状態のフレーム3に、シャフト5を取り付けた状態のアーム2を挿入し、シャフト5の両先端部5a,5bを連結孔11a,11bに嵌め込む。そして、フレーム開幅用治具37、アーム支持用治具31、スプリング回転用治具41を外す。このとき、コイルスプリング4の先端部4aを係止溝14に係合させるようにして、スプリング回転用治具41を外す。これによって、クランプ1が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプの組立や分解を安全で効率的に行うための各種治具等に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に銅メッキをする際に電流を流し続ける必要があるが、プリント基板は搬送しながらメッキされる。そのため、搬送中も接点を接触させ続けるためにクランプのバネ力が利用されている。そして、クランプを長期間使用していると、バネとシャフトがこすり合わされるためにシャフトが磨耗する。
【0003】
そこで、シャフトの交換が必要となる。クランプの交換をするときは、クランプを分解し再度組立を行う必要があり、従来からこの作業は手作業によって行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クランプの手作業による分解や組立は、以下の問題点がある。
第一にクランプ分解において、ボルトの共まいという問題がある。図1にクランプの分解図を示し、図2にクランプ組立全体図を示す。これらの図に示すクランプ1のボルト6をシャフト5に螺合させるとき、ボルト6とシャフト5とを螺合するところにボルトロック剤(まわりどめ剤)が塗布される。そのため、一方のボルト6と他方のボルト6とを取り外そうとして力をかけると、互いに反対の方向に力がかかるので一方のボルト6はシャフト5から容易に取り外しができる。しかし、残った他方のボルト6はシャフト5にボルトロック剤で接着されているため、ボルト6を回すとシャフト5も一緒に回ってしまい(共まい)、取り外すことができないという問題がある。
【0005】
第二にクランプ分解において、安全性に欠けるという問題がある。すなわち、クランプ1からコイルスプリング4を取り外そうとするときは、フレーム3を手の力で少し開いてコイルスプリング4を取り出す。すると、コイルスプリング4が跳ね返って怪我をしたり、部品の間に指が挟まったりするため、安全性に欠けるという問題がある。
【0006】
第三にクランプ組立において、高度の熟練が必要となり、初心者の半分が途中で諦めてしまうという問題がある。
第四にクランプ組立において、組立に時間が掛かるという問題がある。第三及び第四の問題は、クランプ1のコイルスプリング力が強く、且つ、入り組んだ構造であることが原因である。
【0007】
第五にクランプ組立において、手が痛むという作業負荷があるという問題がある。場合によっては、コイルスプリング4が跳ね返ってきて怪我をするということもある。
このように、従来における手作業によるクランプ1の分解及び組立作業には種々の問題がある。
【0008】
また、この種の従来技術としては、例えば、特許文献1,2に開示されたものが知られている。しかしながら、特許文献1のクランプ部材保持用治具、くさび形引留クランプは、クランプ組立作業を効率化させる点で問題点に対する認識は共通しているが、本発明における治具はプリント配線基盤に用いるクランプ分解・組立作業を改善しようとするものである。また、特許文献2の安全装置は、クランプ組立体を備えるが車体用の安全に関するものであり、クランプ自体の分解組立作業に関するものではない。
【特許文献1】特開2005−168219号公報
【特許文献2】特開平7−76258号公報
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものである。
本発明の第一の目的は、共まいを防止することができるクランプ分解用の共まい防止用治具を提供することにある。
【0010】
本発明の第二の目的は、安全に分解作業又は組立作業を行うことができる共まい防止用治具、フレーム固定用治具、アーム支持用治具、シャフト取外用治具、クランプ分解用治具セット、スプリング回転用治具、フレーム開幅用治具、スプリング圧縮用治具セット、クランプ組立用治具セット、クランプ分解方法、及び、クランプ組立方法を提供することにある。
【0011】
本発明の第三の目的は、高度の熟練を必要とせず、短時間で分解作業又は組立作業を行うことができる共まい防止用治具、フレーム固定用治具、アーム支持用治具、シャフト取外用治具、クランプ分解用治具セット、スプリング回転用治具、フレーム開幅用治具、スプリング圧縮用治具セット、クランプ組立用治具セット、クランプ分解方法、及び、クランプ組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る共まい防止用治具は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプであって前記シャフトの両端がボルト締めされたクランプの分解用に用いられるものであり、前記シャフトの下側を当てる位置に下側凹部が形成された下側面を備えた下側治具と、支点を中心に回動する長尺状部材と、前記長尺状部材の前記支点寄り部位に取り付けられる上側面であって前記シャフトの上側を当てる位置に上側凹部が形成された上側面とを備えた上側治具と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るフレーム固定用治具は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用及び組立用に用いられるものであり、作業台に固定される支持手段と、前記支持部から延設された二本の把持手段とを備え、前記二本の把持手段の間及び二本の把持手段と前記作業台との間が前記フレームの所定の部分が挿通可能な間隔であることを特徴とするものである。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るアーム支持用治具は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用及び組立用に用いられるものであり、前記アームの先端支持部の幅よりも狭くない大きさの幅又は径の断面多角形状又は断面円形状の窪みと、グリップとを備えたことを特徴とするものである。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るシャフト取外用治具は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用に用いられるものであり、先端が尖ったピン状部分と、グリップとを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るクランプ分解用治具セットは、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用に用いられるものであり、本発明に係るフレーム固定用治具と、本発明に係るアーム支持用治具と、本発明に係るシャフト取外用治具と、からなることを特徴とするものである。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係るスプリング回転用治具は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用に用いられるものであり、ワイヤー断面の幅又は径よりも狭くない幅又は径の筒状部材が端部に設けられたスプリング保持手段と、グリップとを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係るフレーム開幅用治具は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用に用いられるものであり、前記フレームの板厚よりも狭くない幅の溝が形成された開幅作用部と、グリップとを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係るスプリング圧縮用治具セットは、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用に用いられるものであり、本発明に係るアーム支持用治具と、本発明に係るスプリング回転用治具とからなることを特徴とするものである。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明に係るクランプ組立用治具セットは、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用に用いられるものであり、本発明に係るフレーム固定用治具と、本発明に係るアーム支持用治具と、本発明に係るスプリング回転用治具と、本発明に係るフレーム開幅用治具とからなることを特徴とするものである。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係るクランプの分解方法は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトであってその両端がボルト締めされたシャフトによって連結されたクランプの分解用に用いられるものであり、前記フレームと前記アームとの間で前記シャフトを本発明に係る共まい防止用治具によって相対向する二方向から押さえ込み、前記ボルトをこれが外れる方向に回すボルト取外し工程と、前記クランプを本発明に係るフレーム固定用治具によって固定するクランプ固定工程と、前記アームに本発明に係るアーム支持用治具を装着するアーム支持用治具装着工程と、前記フレームと前記アームとの間に本発明に係るシャフト取外用治具を差し込んだ後、前記アーム支持用治具で支えながら前記シャフト取外用治具によって前記フレームと前記アームとの間を広げることにより、前記シャフトを前記フレームから取り外すシャフト取外し工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明に係るクランプの組立方法は、アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用に用いられるものであり、前記シャフトを、前記アームの連結孔と前記コイルスプリングの円筒状部分とに挿通することによって、前記アームに取り付けるシャフト取付工程と、本発明に係るアーム支持用治具を前記アームに装着し、本発明に係るスプリング回転用治具を前記コイルスプリングに装着した後、前記アーム支持用治具を固定した状態で、前記スプリング回転用治具を回転させることにより前記コイルスプリングを圧縮するコイルスプリング圧縮工程と、本発明に係るフレーム固定用治具に、前記フレームを固定するフレーム固定工程と、本発明に係るフレーム開幅用治具の開幅作用溝を前記フレームに係合させるフレーム開幅用治具セット工程と、前記フレーム開幅用治具が係合された前記フレームに、前記シャフトが取り付けられた前記アームを挿入して、前記フレーム開幅用治具で前記フレームの幅を広げながら前記シャフトの両先端部を前記フレームの連結孔に嵌め込むアーム取付工程とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る共まい防止用治具によれば、共まいを防止することができるという効果がある。
【0024】
本発明に係る共まい防止用治具、フレーム固定用治具、アーム支持用治具、シャフト取外用治具、クランプ分解用治具セット、スプリング回転用治具、フレーム開幅用治具、スプリング圧縮用治具セット、クランプ組立用治具セット、クランプ分解方法、及び、クランプ組立方法によれば、安全に分解作業又は組立作業を行うことができるという効果がある。
【0025】
本発明に係る共まい防止用治具、フレーム固定用治具、アーム支持用治具、シャフト取外用治具、クランプ分解用治具セット、スプリング回転用治具、フレーム開幅用治具、スプリング圧縮用治具セット、クランプ組立用治具セット、クランプ分解方法、及び、クランプ組立方法によれば、高度の熟練を必要とせず、短時間で分解作業又は組立作業を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
(本発明が適用されるクランプ1)
図1及び図2は、各々、本発明の一実施形態に係るクランプ1の分解用治具や組立用治具を用いて分解又は組立がなされるクランプ1の分解斜視図及び外観斜視図である。これらの図に示したクランプ1は、プリント基板に銅メッキをする際に用いられる。この銅メッキの際は、電流を流し続ける必要があるが、プリント基板は搬送しながらメッキされる。そのため、搬送中も接点を接触させ続けるための手段としてクランプ1が用いられる。
【0027】
クランプ1は、アーム2とフレーム3とがコイルスプリング4を挿通して設けられるシャフト5によって連結されたものであって、シャフト5の両端部5a,5bがボルト締めされている(図2参照)。これらは金属製(例えば、ステンレス、鉄系合金等)である。
【0028】
アーム2は、先端支持部7と、連結支持部8と、連結支持部8の両端に対向して起立した連結支持片9a,9bとからなる。連結支持片9a,9bと、連結支持部8は、連結支持部8を間に挟んでコ字条の形態を呈する。連結支持部8には、コイルスプリング4の先端部4bが挿入されるコイルスプリング挿入孔10が形成されている。連結支持片9a,9bには、アーム2とフレーム3とを、シャフト5によって連結するための連結孔11a,11bが形成されている。
【0029】
フレーム3は、フレーム正面12と、フレーム正面12の両端に対向して起立したフレーム側面13a,13bとからなる。フレーム側面13a,13bと、フレーム正面12は、フレーム正面12を間に挟んでコ字条の形態を呈する。フレーム正面12の上端側面寄り部位には、コイルスプリング4の先端部4aが係止されるコイルスプリング係止溝14が形成されている。フレーム側面13a,13bには、フレーム3とアーム2とを、シャフト5によって連結するための連結孔15a,15bが形成されている。フレーム3には、図1及び図2上での時計回りの方向へのアーム2の回転を防止するアームストッパー16が形成されている。
【0030】
コイルスプリング4は、コイル状のスプリングであり、先端部4b(挿入端)が挿入孔10に挿入され、先端部4a(係止端)が係止溝14によって係止される。コイルスプリング4は、コイルを形成するワイヤーの断面形状が四角形状(角部は面取りされていても、されていなくてもよい)である。そのため、断面形状が円形状のものに比べるとスプリング力が極めて高い。また、コイルスプリング4は、その断面形状が四角形状であるため、コイルの内外表面の凸凹形状が無い若しくはあったとしてもワイヤー角部だけのものとなる。そのため、コイルスプリング4の内表面とシャフト5とがこすれることによる磨耗が断面円形形状のコイルスプリングに比べて低減される。しかしながら、コイルスプリング4としては、断面形状が円形状のものを用いることを妨げるものではない。
【0031】
シャフト5は、アーム2とフレーム3とを連結するとともに、コイルスプリング4に貫通してこれを支持し、クランプ1の動作の支点となる。シャフト5は、コイルスプリング4の先端部4b(挿入端)が挿入孔10に挿入された後、その先端部4a(係止端)が係止溝14に係止され、更に、コイルスプリング4の円筒状部分4cが連結孔11a,11bに繋がるように調整された状態で、連結孔11a→円筒状部分4c→連結孔11bという順番(又はこの逆の順番)でこれらに貫通して、アーム2に、取り付けられる。シャフト5が取り付けられたアーム2は、フレーム側面13a,13bの間に挿入され、シャフト5の両端部5a,5bがそれぞれ連結孔15a,15bに嵌められる。
【0032】
そして、シャフト5は、その両端部5a,5bが連結孔11,15よりも頭部の径が大きいボルト6,6によってフレーム3の外側から螺合される。ボルト6,6とシャフト5との間にはまわり止め剤(ボルトロック)が予め塗布される。尚、符号30はフレーム3の鍔部分を示す。
【0033】
(クランプ分解用の共まい防止用治具17)
図3から図6を参照してクランプ分解用の共まい防止用治具17について説明する。これらの図は、図3がクランプ分解用の共まい防止用治具17の外観斜視図、図4が下側治具18の拡大図、図5が下側治具18のセット位置Pをクランプ1の上方向(係止溝14がある側)から示した図、図6がボルト6を外すときにクランプ1を共まい防止用治具17にセットするときの状態を示す図である。
【0034】
これらの図に示すクランプ分解用の共まい防止用治具17は、下側治具18と、上側治具19とからなる。下側治具18は、シャフト5の下側を当てる位置に下側凹部20が形成された下側面21を備えている。また、上側治具19は、支点22を中心に回動する長尺状部材23と、長尺状部材23の支点寄り部位に取り付けられる上側面24であってシャフト5の上側を当てる位置に上側凹部25が形成された上側面24とを備えている。
【0035】
(共まい防止用治具17を用いたボルト6の取外手順)
次に、共まい防止用治具17を用いたボルト6の取り外しについて説明する。
まず、下側治具18を上側治具19の適当な位置に載置する(図3及び図6等参照)。次に、下側面21を図5のセット位置Pで示す連結支持片9aとフレーム側面13aとの間(約1mm前後の僅かな隙間)に差し込んで、下側凹部20をシャフト5の下側に当てる。(尚、セット位置Pは、連結支持片9bとフレーム側面13bとの間でもよい。)
【0036】
次に、下側凹部20が当たっているシャフト5の反対部分の上側を、上側面24の上側凹部25に当てる。すなわち、図5のセット位置Pで示すシャフト5の部分に当てる。この作業は、支点22を中心にして長尺状部材23を回動させながら、また、必要に応じて、下側治具18とクランプ1とを一体に上側治具19のステージ45上で位置調整しながら行われる(図6等参照)。
【0037】
次に、長尺状部材23を把持して上から下に向かって力をかけると上側凹部25及び下側凹部20が作用点となってシャフト5が固定される。そして、一方の手で長尺状部材23を押さえ、他方の手でレンチやスパナ等でボルト6を回すと回り止め剤が塗布されているにもかかわらず簡単に且つ短時間でボルト6を外すことができる。これにより、ボルト6を取り外すときにシャフト5がボルト6と共まいすることがなくなる。
【0038】
尚、アーム2とフレーム3との間に隙間の無いクランプ1の場合には、これらの間にマイナスドライバーを挿入することによって、必要な隙間を確保すればよい。
【0039】
(フレーム固定用治具26)
図7は、クランプ分解用及び組立用のフレーム固定用治具26の外観等を示す図である。フレーム固定用治具26は、支持部27と、支持部27から延設された二本の把持部28,28とからなる。支持部27は作業台29にボルト等によって固定されている。二本の把持部28,28としたのは、フレーム3をスライド式で簡単に着脱するためである。
【0040】
二本の把持部28,28は、フレーム3を挟み込むことによってこれを固定するものであり、その間隔は、フレーム3の胴体部分の幅Qよりも狭くなければよい。また、把持部28,28は、フレーム3の鍔部分30が引っ掛からないように下側に間隔Lが設けられている。フレーム3を固定するときは、矢示Rの方向に沿ってこれをフレーム固定用治具26へ装着すればよい(分解時は同図(a)に示すボルト6を取り外した状態のクランプ1のフレーム3部分が装着され、組立時は同図(b)に示すフレーム3が装着される)。
【0041】
(アーム支持用治具31)
図8は、クランプ分解用及び組立用のアーム支持用治具31の外観を示す図である。同図に示したアーム支持用治具31は、アーム2の先端支持部7の幅W1(図1参照)よりも狭くない大きさの幅又は径の断面多角形状又は断面円形状の窪み32と、グリップ33とを備える。この窪み32は、アーム2の先端支持部7を保持するものである。尚、窪み32の断面形状はアーム2の先端支持部7を収容できる大きさであれば限定されるものではない。グリップ33は作業者が手で把持する部分である。
【0042】
(シャフト取外用治具34)
図9は、クランプ分解用のシャフト取外用治具34の外観を示す図である。同図に示したシャフト取外用治具34は、先端が尖ったピン状部分35と、グリップ36とからなる。ピン状部分35でアーム2とフレーム3との間をワンプッシュするだけで従来取外しに時間がかかり苦労した部分(アーム2のフレーム3からの取外し)を簡単に且つ短時間で取り外すことができる。
【0043】
(クランプ分解用治具を用いたクランプ分解手順)
次に、「クランプ分解用治具17,26,31,34」、すなわち、共まい防止用治具17、フレーム固定用治具26、アーム支持用治具31、シャフト取外用治具34を用いたクランプ分解手順について説明する。
【0044】
一 ボルト6の取り外し
まず、上述した共まい防止用治具17を用いてボルト6を取り外しておく。ボルト6の取り外し手順については上述したので説明を省略する。
【0045】
一 シャフト5の連結孔15a,15bからの取外し
(1)図10に示したようにボルト6を取り外したクランプ1をフレーム固定用治具26に装着し、アーム支持用治具31をアーム先端支持部7に取り付ける。このフレーム固定用治具26によって、分解時のクランプ1の部品の跳ね返りが防止され安全性が高められる。
(2)次に、図10に示したようにシャフト取外用治具34をフレーム側面13aと連結支持片9aとの間に差し込んで楔効果を与えるとともに(図5のセット位置P参照)、アーム支持用治具31のグリップ33を握って、シャフト取外用治具34をワンプッシュして、フレーム側面13aと連結支持片9aとの間を広げる。フレーム3の連結孔15a,15bからアーム2(シャフト5及びコイルスプリング4が装着された状態のアーム2)を取り外す。この取外しは、安全、簡単且つ短時間で行うことができる。
【0046】
一 アーム2(シャフト5及びコイルスプリング4が装着された状態)の分解
次に、連結孔11a,11bからシャフト5を手で抜く。そして、コイルスプリング4の先端部4b(図1参照)を挿入孔10から抜けば、アーム2からコイルスプリング4を取り外すことができる。これにより、図1に示す態様でクランプ1の分解が完成する。
【0047】
以上説明した分解手順によれば、コイルスプリング4等に直接手を触れるのは、ボルト6を取外すとともに、アーム2をフレーム3から取り外した後であり、シャフト5が簡単に手で抜ける状態なった後である。従って、クランプ1の部品の間に指を挟んだり、コイルスプリング4が跳ね返り怪我をするという危険を解消することができる。
また、フレーム3の間隔をシャフト取外用治具34によって広げるというだけで容易にアーム2を取り外すことができる。シャフト取外用治具34が、フレーム側面13aと連結支持片9aとの間(約1mm前後)に差し込まれるため、楔効果と開幅効果が同時に発揮されるからである。
【0048】
(フレーム開幅用治具37)
図11は、フレーム開幅用治具37の外観を示したものであり、同図(a)が外観斜視図、同図(b)が部分拡大図である。フレーム開幅用治具37は、フレーム側面13a,13bの間の幅を広げるために用いられ、開幅作用部38と、グリップ39とからなる。開幅作用部38には、フレーム側面13の厚さW2(図1参照)よりも狭くない幅の開幅作用溝40が形成されている。使用に際しては、フレーム固定用治具26に装着されたフレーム3のフレーム側面13に開幅作用溝40を係合させて、グリップ39を把持してフレーム側面13a,13bを開く方向へ力をかければよい(図14参照)。
【0049】
(スプリング回転用治具41)
図12は、スプリング回転用治具41の外観図である。スプリング回転用治具41は、上述したアーム支持用治具31と共に使用するため、これらを総称するときは、「スプリング圧縮用治具E」という。ここで、「圧縮」という言葉を用いている。これについて説明する。コイルスプリング4はアーム2に取り付けた状態で何も力をかけない状態だとバネ力によって円筒状部分4cの軸方向の長さ方向、すなわち、アーム2を広げる方向へ作用する。そのままだと、アーム2をフレーム3に収容できない幅W3(図13(a)参照)になるため、コイルスプリング4の先端部4a,4bを回転させることによってアーム2の幅W3を縮める必要がある。これがここでいう「圧縮」の意味である。
【0050】
図12に示すスプリング回転用治具41は、L字状のスプリング保持具42と、グリップ43とを備える。スプリング保持具42はL字状の先端部分にコイルスプリング4を形成するワイヤーの断面の幅又は径よりも狭くない幅又は径の筒状部材44が設けられている。グリップ43は作業者が把持する部分である。本実施形態では、筒状部材44とグリップ43とが直交する位置関係となっている。アーム支持用治具31で支えながらスプリング回転用治具41を所期する角度だけ回転させることができ、回転させた結果、スプリング回転用治具41とアーム支持用治具31とを片手で把持できる形態のものであれば、スプリング保持具42は、L字状には限定されず、W字状やU字状、曲線形状等、種々の形態が適用できる。
【0051】
(クランプ組立用治具を用いたクランプ1の組立手順)
次に、「クランプ組立用治具26,31,41,37」、すなわち、フレーム固定用治具26、アーム支持用治具31、スプリング回転用治具41、フレーム開幅用治具37を用いたクランプ組立手順について説明する。
図13は、スプリング圧縮用治具Eの使用状態を示した図であり、図14は、アーム2のフレーム3への装着手順を示した図である。
【0052】
一 コイルスプリング4とシャフト5のアーム2への装着(図1、図2及び図13(a)参照)
(1)まず、先端部4bを挿入孔10に通し(図1及び図2参照)、この状態で、コイルスプリング4を、その円筒状部分4cが連結孔11a,11bと繋がるように位置調整する。
(2)次に、シャフト5を、連結孔11a→コイルスプリング4の円筒状部分4c→連結孔11bの順番(逆でも良い)で挿通する。
【0053】
一 コイルスプリング4の圧縮(図13参照)
(1)次に、アーム支持用治具31の窪み32をアーム2へ装着する。これにより、図13(a)に示した状態となる。
(2)次に、先端部4bにスプリング回転用治具41の筒状部材44を装着する。これにより、図13(b)に示した状態となる。
(3)次に、グリップ33を右手で持って、左手でグリップ43を同図矢示Mの方向へ回転させる。これにより、図13(c)に示した状態となる。この状態になると、片手で一度にグリップ33,43を把持できる。そこで、アーム2が装着されたグリップ33,43を右手に持ち替えておく。スプリング回転用治具41を回転させるだけでよいため、安全且つ簡単、短時間でコイルスプリング4を圧縮させることができる。
【0054】
一 アーム2のフレーム3への装着(図14参照)
(1)図14に示したように、フレーム固定用治具26の二本の把持部28,28の間にフレーム3を通して、フレーム3を固定する。このとき、フレーム3の向きに注意する。
(2)フレーム開幅用治具37を左手で、アーム2(図13(c)の状態のもの)を右手で持つ。そして、フレーム開幅用治具37の開幅作用溝40にフレーム側面13aを係合させる(係合させるのはフレーム側面13bでもよいが、この場合持ち手を替える必要がある)。
【0055】
(3)図14に示したように、フレーム開幅用治具37で把持した状態のフレーム3に、フレーム開幅用治具37とアーム2(図13(c)の状態のもの)とでフレーム3の間の幅を広げながら当該アーム2を挿入し、シャフト5の両先端部5a,5bを連結孔15a,15bに嵌め込む。作業者が直接手でフレーム3を広げるものではないため安全に作業を行うことができる。また、アーム2の幅W3が圧縮されているので、アーム2をスムーズにフレーム側面13a,13b間に挿入することができ、簡単で短時間に作業を行うことができる。
【0056】
(4)フレーム開幅用治具37、スプリング圧縮用治具E(アーム支持用治具31、スプリング回転用治具41)を外す。このとき、コイルスプリング4の先端部4aを係止溝14に係合させるようにして、スプリング回転用治具41を外す。これによって、図2に示したクランプ1が完成する。
【0057】
(評価試験)
クランプ1の組立作業にどれだけ時間がかかるかを調べた。
ベテラン作業者の場合、従来の手作業では4分45秒要したのが、上記組立手順に従えば1分20秒で済んだ。また、未経験作業者の場合、従来の手作業では15分45秒要したのが、上記組立手順に従えば1分27秒で済んだ。
【0058】
以上本発明に係るクランプ分解又は組立用の各種治具について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0059】
例えば、共まい防止用治具の凹部は円弧形状としているが、これに限定されるものではなく、鋸状、凸凹状のものでもよい。また、共まい防止用治具の凹部の円弧形状は、シャフトの径よりも小さくても大きくても良い。少なくとも一点又は複数点でシャフトと接触することによりシャフトを固定できればよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るクランプ分解用及び/又は組立用の各種治具は、安全性や作業能率を高めるものであるから、プリント基板のメッキ業界だけではなく、同様のクランプを用いるあらゆる業種において適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】クランプ1の分解斜視図である。
【図2】クランプ1の外観斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る共まい防止用治具17の外観斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る共まい防止用治具17の下側治具18の拡大図である。
【図5】下側治具18のセット位置Pを示した図である。
【図6】クランプ1の共まい防止用治具17へのセット過程を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るフレーム固定用治具26の外観等を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るアーム支持用治具31の外観斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るシャフト取外用治具34の外観斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るクランプ分解方法を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るフレーム開幅用治具37の外観を示した図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るスプリング回転用治具41の外観図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るスプリング圧縮用治具Eの使用状態を示した図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るクランプ組立方法に係るアーム2のフレーム3への装着手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
1 クランプ
2 アーム
3 フレーム
4 コイルスプリング 4a,4b 先端部 4c 円筒状部分
5 シャフト 5a,5b シャフトの先端部
6 ボルト
7 アームの先端支持部
8 アームの連結支持部
9(9a,9b) アームの連結支持片
10 コイルスプリング挿入孔
11(11a,11b) 連結孔
12 フレーム正面
13(13a,13b) フレーム側面
14 コイルスプリング係止溝
15(15a,15b) フレーム側面の連結孔
16 アームストッパー
17 共まい防止用治具
18 下側治具
19 上側治具
20 下側凹部
21 下側面
22 支点
23 長尺状部材
24 上側面
25 上側凹部
26 フレーム固定用治具
27 支持部
28 把持部(二本の把持部)
29 作業台
30 鍔部分
31 アーム支持用治具
32 窪み
33 グリップ
34 シャフト取外用治具
35 ピン状部分
36 グリップ
37 フレーム開幅用治具
38 開幅作用部
39 グリップ
40 開幅作用溝
41 スプリング回転用治具
42 スプリング保持具
43 グリップ
44 筒状部材
45 ステージ
E スプリング圧縮用治具
P セット位置
L 間隔
M,R 矢示
Q 幅
W1 先端支持部7の幅
W2 フレーム側面13の厚さ
W3 アーム2の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプであって前記シャフトの両端がボルト締めされたクランプの分解用の共まい防止用治具であって、
前記シャフトの下側を当てる位置に下側凹部が形成された下側面を備えた下側治具と、
支点を中心に回動する長尺状部材と、前記長尺状部材の前記支点寄り部位に取り付けられる上側面であって前記シャフトの上側を当てる位置に上側凹部が形成された上側面とを備えた上側治具と、
を備えたことを特徴とする共まい防止用治具。
【請求項2】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用及び組立用のフレーム固定用治具であって、
作業台に固定される支持手段と、
前記支持部から延設された二本の把持手段と、を備え、
前記二本の把持手段の間及び二本の把持手段と前記作業台との間が前記フレームの所定の部分が挿通可能な間隔であることを特徴とするフレーム固定用治具。
【請求項3】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用及び組立用のアーム支持用治具であって、
前記アームの先端支持部の幅よりも狭くない大きさの幅又は径の断面多角形状又は断面円形状の窪みと、
グリップと、
を備えたことを特徴とするアーム支持用治具。
【請求項4】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用のシャフト取外用治具であって、
先端が尖ったピン状部分と、
グリップと、
を備えたことを特徴とするシャフト取外用治具。
【請求項5】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの分解用治具セットであって、
請求項2に記載のフレーム固定用治具と、請求項3に記載のアーム支持用治具と、請求項4に記載のシャフト取外用治具と、からなることを特徴とするクランプ分解用治具セット。
【請求項6】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用のスプリング回転用治具であって、
ワイヤー断面の幅又は径よりも狭くない幅又は径の筒状部材が端部に設けられたスプリング保持手段と、
グリップと、を備えたことを特徴とするスプリング回転用治具。
【請求項7】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用のフレーム開幅用治具であって、
前記フレームの板厚よりも狭くない幅の溝が形成された開幅作用部と、
グリップと、を備えたことを特徴とするフレーム開幅用治具。
【請求項8】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプのスプリング圧縮用治具セットであって、
請求項3に記載のアーム支持用治具と、請求項6に記載のスプリング回転用治具と、からなることを特徴とするスプリング圧縮用治具セット。
【請求項9】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立用治具セットであって、
請求項2に記載のフレーム固定用治具と、請求項3に記載のアーム支持用治具と、請求項6に記載のスプリング回転用治具と、請求項7に記載のフレーム開幅用治具と、からなることを特徴とするクランプ組立用治具セット。
【請求項10】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトであってその両端がボルト締めされたシャフトによって連結されたクランプの分解方法であって、
前記フレームと前記アームとの間で前記シャフトを請求項1に記載の共まい防止用治具によって相対向する二方向から押さえ込み、前記ボルトをこれが外れる方向に回すボルト取外し工程と、
前記クランプを請求項2に記載のフレーム固定用治具によって固定するクランプ固定工程と、
前記アームに請求項3に記載のアーム支持用治具を装着するアーム支持用治具装着工程と、
前記フレームと前記アームとの間に請求項4に記載のシャフト取外用治具を差し込んだ後、前記アーム支持用治具で支えながら前記シャフト取外用治具によって前記フレームと前記アームとの間を広げることにより、前記シャフトを前記フレームから取り外すシャフト取外し工程と、
を備えたことを特徴とするクランプ分解方法。
【請求項11】
アームとフレームとがコイルスプリングを挿通して設けられるシャフトによって連結されたクランプの組立方法であって、
前記シャフトを、前記アームの連結孔と前記コイルスプリングの円筒状部分とに挿通することによって、前記アームに取り付けるシャフト取付工程と、
請求項3に記載のアーム支持用治具を前記アームに装着し、請求項6に記載のスプリング回転用治具を前記コイルスプリングに装着した後、前記アーム支持用治具を固定した状態で、前記スプリング回転用治具を回転させることにより前記コイルスプリングを圧縮するコイルスプリング圧縮工程と、
請求項2に記載のフレーム固定用治具に、前記フレームを固定するフレーム固定工程と、
請求項7に記載のフレーム開幅用治具の開幅作用溝を前記フレームに係合させるフレーム開幅用治具セット工程と、
前記フレーム開幅用治具が係合された前記フレームに、前記シャフトが取り付けられた前記アームを挿入して、前記フレーム開幅用治具で前記フレームの幅を広げながら前記シャフトの両先端部を前記フレームの連結孔に嵌め込むアーム取付工程とを備えたことを特徴とするクランプ組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−21624(P2007−21624A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205308(P2005−205308)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(305029553)アイケイ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】