説明

共吊用可変速巻上装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、荷物を共吊りし移動させる共吊用可変速巻上装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図12は従来のクレーン共吊り揃速制御方法により制御される共吊り用電動荷役装置を示す概略図である。この電動荷役装置は、例えば特開平2−86598号公報に開示されたものである。図12において、1は第1クラブ巻上げドラム、2は第2クラブ巻上げドラムである。3は第1電動機で、第1クラブ巻上げドラム1を回転させる誘導電動機であり、4は第2電動機で、第2クラブ巻上げドラム2を回転させる誘導電動機である。5は第1インバータ制御装置で、第1電動機3に任意の相回転方向と周波数の三相交流を出力し、任意の回転方向と速度で回転させる。6は第2インバータ制御装置で、第2電動機4に任意の相回転方向と周波数の三相交流を出力し、任意の回転方向と速度で回転させる。
【0003】7は第1シンクロ発信機で、第1クラブ巻上げドラム1とともに回転し、第1クラブ巻上げドラム1の回転量信号を発生する。8は第2シンクロ発信機で、第2クラブ巻上げドラム2とともに回転し、第2クラブ巻上げドラム2の回転量信号を発生する。9は差動受信機で、第1シンクロ発信機7から零調器7aを介して入力された第1クラブ巻上げドラム1の回転量信号と、第2シンクロ発信機8から入力された第2クラブ巻上げドラム2の回転量信号とに基づき、両ドラムの回転量の差を検出する。差動受信機9は、検出された回転量差から両ドラムに取り付けられたクラブのフックレベルの差を算出し、第2クラブのフックが第1クラブのフックより進んでいる場合には進み接点を、また遅れている場合には遅れ接点を閉じる。10は吊荷で、第1クラブ巻上げドラム1,第2クラブ巻上げドラム2の回転により上下する両クラブのフックにより両端を共吊りされている。
【0004】次に図12の装置の動作について説明する。第1インバータ制御装置5および第2インバータ制御装置6に同時に運転指令が入ると両制御装置は、同一の相回転方向・周波数の三相交流を、第1電動機3および第2電動機4にそれぞれ印加する。この時、両クラブのフックに均等に荷重がかかっていれば両クラブの巻上げ速度はほとんど同じであり、吊荷10が傾くことはない。
【0005】しかし荷重に差があると、フックに係る荷重が重いほど、巻上げドラムの回転速度は、巻上げの場合には遅く、巻下げの場合には速くなる。このため両クラブのフックレベルに差が出て吊荷10が傾くことになる。例えば、巻上げ運転において、第2クラブに係る荷重の方が第1クラブに係る荷重より重いとすると、第2電動機4の回転速度が第1電動機3の回転速度より遅くなる。この結果、第2シンクロ発信機8が発生する第2クラブ巻上げドラム2の回転量信号が第1シンクロ発信機7が発生する第1クラブ巻上げドラム1の回転量信号を下回るため、差動受信機9が遅れ接点を閉じる。
【0006】遅れ接点を閉じると第2インバータ制御装置6はこれに応答しインバータ出力周波数を増やすため、第2電動機4の回転速度が速くなり、第2クラブ巻上げドラム2の回転が加速される。この結果、第2クラブのフックが第1クラブのフックに追い付き両フックのレベルが合わせられる。逆に第2クラブのフックが第1クラブのフックより進んだ場合には差動受信機9は進み接点を閉じる。これに応答し、第2インバータ制御装置6はインバータ出力周波数を減らし第2電動機4の回転速度をおくらせて両フックのレベルを合わせる。
【0007】上述のように差動受信機9は、両クラブのフックのレベル差に応じて進み接点、遅れ接点を閉じ、第2インバータ制御装置6はこれに応答し、第2電動機4に印加する三相交流の周波数を増減する。この結果、両クラブのフックのレベルが合わせられ長尺物の吊荷10が水平に維持される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の電動荷役装置は以上のように構成されているので、つぎのような問題があった。例えば2台の電動荷役装置の巻上げ電動機による第1クラブと第2クラブで共吊りを行う場合、第1クラブ側にある第1シンクロ発信機7の信号を第2クラブ側にある差動受信機9に送るための配線が必要であり、配線作業に手間が係る上、差動受信機9などの高価な機器を必要とし、装置が複雑になる。また両クレーンの移動にともない両クラブ間の配線が断線する恐れがある。
【0009】更に、共吊りクラブの台数が3台以上になるとクラブ間の配線が更に増え、差動受信機9などの高価な機器が多数必要となり、いよいよ装置が複雑になる。従って共吊りクラブの台数が増えるとシステムの構成が事実上不可能になる。
【0010】この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、共吊りクラブの台数にかかわらず巻上げ機間の巻上げ電動機回転検出信号の配線や差動受信機などの高価な機器が不要であり、共吊用可変速巻上装置システム全体を安価な構成で行える共吊用可変速巻上装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決する手段】この第1の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、荷物を共吊りするとともにインバータで可変速制御される電動機を有する可変速巻上装置を備えた共吊用可変速巻上装置において、前記荷物を移動させる電動機の回転方向及び回転量を検出するロータリーエンコーダと、前記電動機の目標回転量に相当する基準パルスを発生する基準パルス発生手段と、前記基準パルス発生手段のパルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力する偏差カウンタと、前記インバータの出力周波数を増減して前記偏差カウンタから出力される偏差を無くすように運転制御する運転制御手段とを備えたものである。また第2の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、第1の発明に記載の装置において、偏差カウンタは、アップダウンカウンタで構成したものである。また第3の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、第2の発明に記載の装置において、アップダウンカウンタを、運転停止時リセットするよう構成したものである。また第4の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、荷物を共吊りするとともにインバータで可変速制御される電動機を有する共吊用可変速巻上装置において、前記荷物を移動させる電動機の回転方向及び回転量を検出するロータリーエンコーダと、前記電動機の目標回転量に相当する基準パルスを発生する基準パルス発生手段と、前記基準パルス発生手段のパルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力する偏差カウンタと、可変速巻上装置のいずれかの前記偏差カウンタの出力する偏差が所定値を超えると共吊用可変速巻上装置を停止させる停止制御手段とを備えたものである。また第5の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、荷物を共吊りするとともにインバータで可変速制御される電動機を有する共吊用可変速巻上装置において、前記荷物を移動させる電動機の回転方向及び回転量を検出するロータリーエンコーダと、前記電動機の目標回転量、前記電動機の目標回転量に相当する基準パルスを発生する基準パルス発生手段と、前記基準パルス発生手段のパルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力する偏差カウンタと、前記可変速巻上装置のいずれかの偏差カウンタの出力する偏差が所定値を超えると、前記共吊用可変速巻上装置を停止させる停止制御手段とを備えたものである。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【作用】この第1の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、基準パルス発生手段により電動機の目標回転量に対応した基準パルスが発生され、ロータリーエンコーダにより前記電動機の回転方向及び回転量が検出され、偏差カウンタにより、基準パルス発生手段から発生された前記電動機の目標回転量に相当する基準パルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力し、運転制御手段により前記偏差を無くすように運転制御を行うものである。この第2の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、アップダウンカウンタにより、基準パルス発生手段から発生された前記電動機の目標回転量に相当する基準パルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力する。この第3の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、アップダウンカウンタを運転停止時リセットする。この第4の発明に係る共吊用可変速巻上装置は基準パルス発生手段により電動機の目標回転量に対応した基準パルスが発生され、ロータリーエンコーダにより前記電動機の回転方向及び回転量が検出され、偏差カウンタにより、基準パルス発生手段から発生された前記電動機の目標回転量に相当する基準パルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力し、運転制御手段により前記偏差を無くすように運転制御されるとともに、偏差カウンタの出力する偏差が所定値を超えると、停止制御手段により共吊用可変速巻上装置を停止させる。この第5の発明に係る共吊用可変速巻上装置は、可変速巻上装置のいずれかの偏差カウンタの出力する偏差が所定値を超えると、停止制御手段により前記共吊用可変速巻上装置の全てを停止させる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【実施例】実施例1.
次に図を参照しながらこの発明の実施例について説明する。図1は第1の発明の実施例に係る可変速巻上装置の回路図である。11はインバータで、給電線R、S、Tから三相交流が供給される。12は巻上げ電動機で、インバータ11から出力される三相交流の相回転方向と周波数に応じた回転方向と速度で回転する。13はブレーキコイルで、無通電時は巻上げ電動機12が回転しないようにロックし、通電時は巻上げ電動機12が自由に回転できるように開放する。14は巻上げ運転用常開押しボタンで、押し込むと接点が閉じる。15は巻下げ運転用常開押しボタンで、押し込むと接点が閉じる。なおこの巻上げ運転用常開押しボタン14と巻下げ運転用常開押しボタン15は機械的インターロックにより同時には押せないように構成されている。
【0028】16は電磁リレーコイルで、巻上げ運転用常開押しボタン14が押されると励磁され、常開接点16a1、16a2を閉じる。常開接点16a1は、その閉鎖により、巻上げ電動機12が巻上げ方向に回転する相回転方向でインバータ11が三相交流を出力するように指示する。また常開接点16a2は、その閉鎖により、後述の周波数指令装置20に巻上げ運転中であることを知らせる。17は電磁リレーコイルで、巻下げ運転用常開押しボタン15が押されると励磁され、常開接点17a1、17a2を閉じる。常開接点17a1は、その閉鎖により、巻上げ電動機12が巻上げ方向に回転する相回転方向でインバータ11が三相交流を出力するように指示する。また常開接点17a2は、その閉鎖により、後述の周波数指令装置20に巻下げ運転中であることを知らせる。18は電磁リレーコイルで、インバータ11が巻上げ電動機12に三相交流を出力している間、励磁され、ブレーキコイル13に通電する常開接点18aを閉じる。
【0029】19はロータリーエンコーダで、巻上げ電動機12の回転角度と回転方向に対応するA相信号およびB相信号からなる2相信号を出力する。20は基準パルス発生手段としての周波数指令装置で、速度検出センサとしてのロータリーエンコーダ19に端子SP、SGから電圧を供給する。この装置の指令はすべて内蔵のマイクロコンピュータ20aで行われる。また、周波数指令装置20は、マイクロコンピュータ20aの指示により、端子A、Bにロータリーエンコーダ19から入力されるA相信号、B相信号と、常開接点16a2、常開接点17a2の閉鎖に応答し、インバータ11の出力周波数を指示する電圧信号を端子T2からインバータ11に出力する。上記インバータ11は上記周波数指令装置20によって指令周波数が所定の値に設定されると、その設定された周波数に従って、所定の傾斜特性で出力周波数を変化させるので、モータはこの傾斜特性に沿って変化する。
【0030】次に、この発明の実施例に係る可変速巻上装置の動作について巻上げ運転の場合を例にとって説明する。図2はこの発明の実施例に係る可変速巻上装置のインバータ出力周波数および巻上げ電動機回転速度の変化を示す動作特性図である。時刻t1において、巻上げ運転用常開押しボタン14を押すと、電磁リレーコイル16の常開接点16a1、16a2が閉じる。常開接点16a2が閉じると、運転制御手段としての周波数指令装置20は巻上げ運転中であることを検知する。また常開接点16a1が閉じると、インバータ11は周波数0Hzから周波数指令装置20によって指示された周波数f2まで予め設定された傾斜で増やし始める。
【0031】時刻t2において周波数がf1に達すると、インバータ11は巻上げ電動機12に出力を開始し、同時に電磁リレーコイル18を励磁して常開接点18aを閉じる。この結果、ブレーキコイル13は通電状態になり、巻上げ電動機12を開放し、巻上げ電動機12は巻上げ方向に回転し始め、増速してゆく。時刻t3において、周波数f2に達すると、インバータ11は周波数の増加を停止し、巻上げ電動機12は回転速度S1で定速運転される。
【0032】定速運転開始時刻t3から所定時間経過後の時刻t4において、周波数指令装置20は、ロータリーエンコーダ19から入力される2相信号に基づいて巻上げ電動機12の回転速度S1と予め設定された目標回転速度S3とを比較して、その差に応じてインバータ11に対する指令周波数を増減する。例えば、図2に示されているように、回転速度S1が目標の回転速度S3よりも遅いことを検知した場合、周波数指令装置20は、回転速度S3と回転速度S1の差に対応する増分だけ指令周波数を増加し、指令周波数を周波数f2から周波数f4に増加する。インバータ11はこれに応答し、出力周波数を予め設定された傾斜で出力周波数を周波数f2から周波数f4に増加し、巻上げ電動機12の回転速度を目標回転速度S3に近付ける。
【0033】時刻t5において、周波数が指令周波数f4に達すると、インバータ11は周波数の増加を停止し、巻上げ電動機12は回転速度S4で定速運転される。時刻t5から、更に所定時間経過後の時刻t6において、周波数指令装置20は、再度、ロータリーエンコーダ19の2相信号出力に基づいて検出された巻上げ電動機12の回転速度と、目標回転速度S3とを比較し、検出回転速度と目標回転速度S3の差に応じて指令周波数を増減する。
【0034】例えば、図2に示されるように、回転速度S4が目標回転速度S3よりも速い場合、回転速度S4と目標回転速度S3の差に応じて、指令周波数を周波数f4から周波数f3に減少させる。インバータ11は、これに応答し、予め設定された傾斜で出力周波数を周波数f4から周波数f3に減少し、周波数がf3に達すると周波数の減少を停止する。この結果、巻上げ電動機12は、目標回転速度S3に極めて近い回転速度S2で定速運転される。
【0035】時刻t8において、巻上げ運転用常開押しボタン14を押すのを止めると電磁リレーコイル16は消勢され、その常開接点16a1、16a2が開く。この結果、インバータ11は、出力周波数を0Hzまで、予め設定された傾斜で減少させる。時刻t9において、出力周波数がf1に達すると、インバータ11は巻上げ電動機12への出力を停止し、電磁リレーコイル18を消勢する。この結果、常開接点18aが開き、ブレーキコイル13は無通電状態になって巻上げ電動機12をロックして停止させる。
【0036】巻下げ運転用常開押しボタン15を押して巻下げ運転を行う場合は、電磁リレーコイル17が励磁され巻上げ電動機12が巻下げ方向に回転するが、これ以外は、上に説明した巻上げ運転の場合と同じである。
【0037】次に第1の発明の他の実施例について説明する。回路構成は図1と同様であるが、相違点は、ロータリーエンコーダ19等の速度検出センサより取込んだ信号を積算又はカウントする後述の積算器が周波数指令装置20内に設けられ、この積算器によりモータの回転量を検出し、この回転量とあらかじめ図3,4の目標特性SA,SBに対応して検出した目標回転量とを比較し、この比較結果に応じて周波数の設定を切換えるものである。この発明の動作について巻上げ運転の場合を例にとって説明する。図3,4は電動荷役装置のインバータ出力周波数および巻上げ電動機回転速度の変化を示す動作特性図である。図3において、台形状の回転速度曲線(A−B−C−D−E−F−G−H−J−K−L−M−N)は、各時刻における巻上げ電動機12の目標回転量を決定するための速度パターンを示す。即ち、この曲線と時間軸で囲まれた面積が全行程の目標回転量を表し、また、始動時から各時刻までの目標回転量は、この曲線と時間軸、およびその時刻に対応する時間軸上の点から垂線で囲まれた面積で表される。一方、速度曲線A−B1−C1−D1−W−E1― ―F1−G1−H1−J1−K1−L1−M1−N1は、実際の巻上げ電動機12の速度変化を示す。
【0038】図3の時刻t1において、巻上げ運転用常開押しボタン14を押すと電磁リレーコイル16が励磁され、その常開接点16a1、16a2が閉じる。そして、常開接点16a2の閉鎖により、周波数指令装置20は巻上げ運転中であることを検知する。また、常開接点16a1の閉鎖に応答し、インバータ11は、出力周波数を0Hzから、周波数指令装置20から指示された周波数f21まで予め設定された傾斜で増加させ始める。
【0039】時刻t2において、出力周波数がf11に達すると、インバータ11は巻上げ電動機12に出力を開始し、同時に電磁リレーコイル18を励磁してその常開接点18aが閉じる。この結果、ブレーキコイル13は通電状態になり、巻上げ電動機12が開放され、巻上げ方向に回転し始める。
【0040】時刻t3において、出力周波数がf21に達すると、インバータ11は出力周波数の増加を停止するので、巻上げ電動機12は回転速度S11で定速運転される。この場合、回転速度S11は、インダクションモータのすべりを見込んで目標回転速度S21から若干ずれている。例えば、図3に示すように、回転速度S11は目標回転量を達成する上限回転速度S21よりも若干低い値に設定される。
【0041】時刻t3から所定時間経過後の時刻t4において、周波数指令装置20は、ロータリーエンコーダ19の出力から決定される巻上げ電動機12の実際の回転速度、および目標回転速度を積算ないし積分し、目標回転量(A−B−C−D−P−Aで囲まれた面積)と実際の回転量(A−B1−C1−D1−P−Aで囲まれた面積)を算出し、両者の差を算出する。例えば、図3に示された場合において、周波数指令装置20は、実際の回転量が目標回転量にたいし、A−B−C−D−D1−C1−B1−Aで囲まれた面積分だけ不足していることを算出する。
【0042】そして、周波数指令装置20は回転量の不足ないし超過分に応じて指令周波数を増減する。例えば、図3に示された場合、周波数指令装置20は回転量の不足分に応じて指令周波数の設定を周波数f51に変更する。インバータ11は、これに応答し、予め設定された傾斜で出力周波数を周波数f21から周波数f51に増加する。時刻t5において、周波数がf51に達するとインバータ11は、出力周波数の増加を停止するので、巻上げ電動機12は回転速度S41で定速運転される。
【0043】定速運転に入った時刻t5から所定時間経過後の時刻t6において、周波数指令装置20は、再度、実際の回転量と目標回転量を比較し、インバータ11への指令周波数を増減する。例えば図3の場合、周波数指令装置20は、時刻t6において、時刻t6までの目標回転量(A−B−C−E−Q−Aで囲まれる面積)を検出回転量(A−B1−C1−D1−W−E1−Q−Aで囲まれる面積)と比較し、検出回転量が目標を上回ったことを検知し、指令周波数の設定を周波数f51から周波数f21に変更させる。これに応答してインバータ11は、予め設定された傾斜で出力周波数を周波数f21まで減少させる。時刻t7において、出力周波数が周波数f21に達すると、インバータ11は周波数の減少を停止し、巻上げ電動機12は回転速度S11で定速運転される。
【0044】更に時刻t8から所定時間経過後の時刻t9において、周波数指令装置20は実際の回転量と目標回転量を比較してインバータ11への指令周波数を増減し、その後はインバータ11の検出回転量が目標回転量を超えた場合は出力周波数を減らし、下回った場合は増やすように調整する。例えば図3の場合、周波数指令装置20は、時刻t8において、時刻t8までの目標回転量(A−B−C−F−R−Aで囲まれる面積)を検出回転量(A−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−R−Aで囲まれる面積)と比較し、検出回転量が目標を下回ったことを検知し、指令周波数の設定を周波数f21から周波数f51に変更させる。これに応答してインバータ11は予め設定された傾斜で出力周波数を増加させ始める。この結果、巻上げ電動機12の回転速度は増加し始める。
【0045】以降も同様に、インバータ11の検出回転量が目標回転量を超えた場合は出力周波数を減らし、下回った場合は増やすようにする毎に周波数指令装置20は、巻上げ電動機の回転量を算出し、これを目標回転量と比較して、比較の結果に応じて指令周波数を増減する。例えば図3の場合、時刻t9および時刻t11においては、検出回転量(時刻t9においてはA−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−G1−S−Aで囲まれる面積、時刻t11においてはA−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−G1−H1−J1−U−Aで囲まれる面積)が目標回転量(時刻t9に対してはA−B−C−G−Aで囲まれる面積、時刻t11に対してはA−B−C−J−U−Aで囲まれる面積)を上回っているので指令周波数の設定を周波数f51から周波数f21に変更させる。これに応答してインバータ11は予め設定された傾斜で出力周波数を周波数f41から周波数f21に向かって減少させる。
【0046】一方時刻t10および時刻t12においては、検出回転量(時刻t10においてはA−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−G1−H1−T−Aで囲まれる面積、また時刻t12においてはA−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−G1−H1−J1−K1−V−Aで囲まれる面積)が目標回転量(時刻t10に対してはA−B−C−H−T−Aで囲まれる面積、時刻t12に対してはA−B−C−K−U−Aで囲まれる面積)を下回っているので指令周波数の設定を周波数f21から周波数f51に変更させる。これに応答しインバータ11は、予め設定された傾斜で出力周波数を周波数f21から周波数f31に向かって増加し始める。
【0047】時刻t13において巻上げ運転用常開押しボタン14を押すのを止めると、電磁リレーコイル16の励磁が停止され、その常開接点16a1、16a2が開く。これに応答し、インバータ11は出力周波数をf31から0Hzまで予め設定された傾斜で減らし始める。
【0048】時刻t14において周波数f1に達するとインバータ11は巻上げ電動機12への出力を停止し、同時に電磁リレーコイル18を消勢してその常開接点18aを開く。この結果、ブレーキコイル13は無通電状態になり、巻上げ電動機12をロックして停止させる。
【0049】巻下げ運転用常開押しボタン15を押して巻下げ運転する場合は、電磁リレーコイル17が励磁され、巻上げ電動機12が巻下げ方向に回転するが、他の動作は巻上げ運転用常開押しボタン14を押して巻上げ運転を行う場合と同じである。以上のように、周波数の目標設定をS21とS51とに交互に切換え簡単な操作で、速度を、あらかじめ設定した特性に近づくように変化させることができる。
【0050】なお上記実施例では、速度検知手段としてロータリーエンコ―ダ19を用いているが、指速発電機などを使用してもよい。また、上記実施例では主にリレー回路で制御回路を実現しているが、周波数指令装置20を含め、マイクロコンピュータ、IC回路などで構成してもよい。
【0051】また、上記実施例では、定速運転開始後の所定時刻または検出回転量が目標回転量を超えた場合は出力周波数を減らし、下回った場合は増やすように指令周波数を増減しているが、周波数を増減するタイミングは定期的でも不定期的でもよい。さらに、上記実施例では、指令周波数増減を2段階切り替えとしたが、多段階切り替えとしても、また、連続的に増減してもよい。更にまた上の実施例では、巻上げ運転用常開押しボタン14、15を1段押し込みとしたが、2段以上の多段押し込みボタンとし、多段速運転としてもよい。
【0052】また、上記実施例では、図1に示す可変速巻上装置が一対となって2台の巻上電動機による共吊りの場合について説明したが、この発明は巻上げ、巻下げ運転をする共吊用可変速巻上装置ばかりではなく、横行、走行運転を行う可変速巻上装置にも適用できる。
【0053】つぎに、図4を用いて、この発明の実施例に係る巻下動作を説明する。図4は、第3の発明の実施例に係る可変速巻上装置のインバータ出力および巻下げ電動機回転速度の変化を示す動作特性図である。時間t1において、巻下げ運転用常開押しボタン15を押すと電磁リレーコイル17の常開接点が閉じ、周波数増減装置20に巻下げ運転中であることを知らせると同時に、常開接点17a1が閉じインバータ11が周波数0Hzから周波数増減装置20より指示された基本運転周波数f22まで、予め設定された傾斜で増やし始める。そして時間t2において、周波数f12に達するとインバータ11は巻上げ電動機12に出力を開始すると同時に電磁リレーコイル18を付勢するため、常開接点18aが閉じブレーキコイル13は通電状態となり、巻上げ電動機12が開放され巻下げ方向に回転し始め、増速してゆく。
【0054】時間t3において、基本運転周波数f22に達するとインバータ11は周波数の増加を停止するので、巻上げ電動機12は目標速度S22を超え、回転速度S12での定速回転で運転される。時間t4において、時刻t4までの目標回転量を示す点A−B−C−D−P−Aで囲まれる面積に対して、検出回転量の方が点A−B1−C1−P−Aで囲まれる面積を超えていることを検知し、周波数増減装置20が指令周波数を基本運転周波数f22より補正運転周波数f52に減らすと、インバータ11は予め設定された傾斜で周波数f52まで減らし始める。そして、時間t5において、周波数がf52に達すると、インバータ11は周波数の減少を停止するので、巻上げ電動機12は回転速度S42での定速回転で運転される。
【0055】時間t6において、時間t6までの目標回転量を示す点A−B−C−E−Q−Aで囲まれる面積を検出回転量を示す点A−B1−C1−D1−W−E1−Q−Aで囲まれる面積が下回ったことを検知すると、周波数増減装置20が指令周波数の設定をf52よりf22に増やすように変更する。これによりインバータ11は予め設定された傾斜で基本運転周波数f22まで増やし始める。そして、時間t7において、周波数が基本運転周波数f22に達すると、インバータ11は周波数の増加を停止するので、巻上げ電動機12は回転速度S12での定速回転で運転される。
【0056】時間t8において、時間t8までの目標回転量を示す点A−B−C−F−R−Aで囲まれる面積を検出回転量を示す点A−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−R−Aで囲まれる面積が上回ったことを検知し、周波数増減装置20が指令周波数の設定をf22よりf52に減らすように変更すると、インバータ11は予め設定された傾斜で補正運転周波数f42まで減らし始める。回転速度がS32まで減速した時刻t7において、時間t9までの目標回転量を示す点A−B−C−G−S−Aで囲まれる面積を検出回転量を示す点A−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−G1−S−Aで囲まれる面積が下回ったことを検知し、周波数増減装置20が指令周波数をf42よりf22に増やすと、インバータ11は予め設定された傾斜で周波数f42よりf22まで増やし始める。
【0057】回転速度がS12まで増速した時間t10において、時間t10までの目標回転量を示す点A−B−C−H−T−Aで囲まれる面積を検出回転量を示す点A−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−G1−H1−T−Aで囲まれる面積を上回ったことを検知し、周波数増減装置20が指令周波数の設定をf22よりf42に減らすように変更する。これにより、インバータ11は予め設定された傾斜で周波数f22よりf42まで減らし始める。回転速度がS32まで減速した時間t11において、時間t11までの目標回転量を示す点A−B−C−J−U−Aで囲まれる面積を検出回転量を示す点A−B1−C1−D1−W−E1−X−F1−G1−H1−J1−U−Aで囲まれる面積が下回ったことを検知し、周波数増減装置20が指令周波数の設定をf42よりf32に増やすように変更すると、インバータ11は予め設定された傾斜で周波数f42よりf32まで増やし始める。
【0058】時間t12において、巻下げ運転用常開押しボタン15を押すのを止めると、電磁リレーコイル17は消勢され、その常開接点17a1、17a2が開く。するとインバータ11は、周波数をf32より0Hzになるまで予め設定された傾斜で減らし始める。時間t13において、周波数f12に達すると、インバータ11は、巻上げ電動機12への出力を停止すると同時に、電磁リレーコイル18を消勢するので、その常開接点18aが開き、ブレーキコイル13は無通電状態となり、巻上げ電動機12をロックされ停止する。
【0059】図5は巻上げ、巻下げそれぞれの場合の基本運転速度S11,S12、補正運転速度S41,S42、目標速度S21,S22の関係を示したものである。図5において、巻上時の目標速度S21は無負荷時の基本運転速度を上回るところに設定している。また、巻下時の目標速度S22は無負荷時の基本運転速度を下回るところに設定している。図5について詳述すると、巻上げの場合には基本運転周波数f21を例えば60Hz、補正運転周波数f51を例えば70Hzとした場合、目標回転量と実際の回転量との比較に応じて周波数増減装置20が指令周波数の設定を60Hzと70Hzのいずれか一方に切換え、実際の回転速度がS11とS41との間に保持されるように、すなわち目標速度特性SA(図4)を中心に変動するように制御する。
【0060】巻下げの場合には基本運転周波数f22を例えば60Hz、補正運転周波数f52を例えば30Hzとした場合、目標回転量と実際の回転量との比較に応じて周波数増減装置20が指令周波数の設定を30Hzと60Hzのいずれか一方に切換え、実際の回転速度がS12とS42との間に保持されるように、すなわち目標速度特性SB(図4)を中心に変動するように制御する。
【0061】この場合、周波数増減装置20は、マイクロコンピュータ20a(図1)より構成されており、この機能ブロックの一例を示すと、図6のように構成される。同図において、201は巻上げ制御手段、202は巻下げ制御手段であり、これ等制御手段201、202は巻上げ、巻下げ判定手段203によって選択されるもので、電動機の回転量検出手段201a、202aで検出される実際の検出回転量と、目標回転量検出手段201b、202bからの目標回転量とを比較する比較手段201c、202cと、この比較手段201c、202cの出力に応じて周波数f51かf21、周波数f52かf22を選択する選択手段201d、202dを備えている。出力線204からは、巻上げ時には周波数f51とf21のいずれか一方が、巻下げ時には周波数f52とf22のいずれか一方が出力される。なお、偏差カウンタは回転量検出手段201a、目標回転量検出手段201b、比較手段201cからなる。
【0062】巻上げ,巻下げ回転量検出手段201a,202aとしては、例えばモータの回転に同期してパルスを出力するロータリーエンコーダ19等の回転数検出センサhからのパルスを積算又は積分又はカウントする積算器iが用いられる。目標回転量検出手段201b,202bとしては、図3,図4中の各巻上げ,巻下げの目標速度特性SA,SBに対応して時間経過に従ってパルスを出力するパルス発生手段j及びこのパルス発生手段jからのパルスを積算又は積分又はカウントする積算器kが用いられる。
【0063】次に第2、3、4の発明について説明する。上記巻上、巻下げ制御手段201、202としては図7に示すように上記回転数検出センサh、パルス発生手段jからのパルスをアップカウント、ダウンカウントするアップダウンカウンタm及びこのアップダウンカウンタmの値にもとづき選択手段201d、202dを制御する判定手段nを用いて構成してもよい。この場合、アップダウンカウンタmの出力値としてはモータの実際の回転量と目標回転量との偏差が直接現れる。上記構成において、回転数検出センサh、パルス発生手段jからの信号にもとづいてモータの停止を検出する停止検出手段70を有し、この停止検出手段70によりアップダウンカウンタmをリセットし、モータ動作時にカウント動作するように構成されている。これにより、運転開始時にカウント(積算)が開始されるので、玉掛け時は別々に操作し、吊荷の各点を各ホイストで吊り、希望の姿勢にした後全ホイストに同時に指令を送るだけでそのままの姿勢で上、下ができ、操作も容易である。
【0064】この実施例における可変速巻上装置は、基本運転周波数での巻上無負荷運転速度よりもわずかに早い速度を目標速度として目標回転量を計算し、検出回転量が不足すると補正運転周波数に切り換え、速度を早めに補うので、基本運転中に目標との誤差があまり発生せず安定した動作が得られる。またこの実施例における可変速巻上装置は、基本運転周波数での巻下無負荷運転速度よりもわずかに遅い速度を目標速度として目標回転量を計算し、検出回転量がオーバーすると補正運転周波数に切り換え、速度をおとして補正するので、基本運転中に目標との誤差があまり発生せず安定した動作が得られる。
【0065】実施例2.上記実施例1では基本運転周波数を巻上げ,巻下げで各1つとしたが、図8に示したように高速,低速運転用に個別に設定して2段速としてもよく、しかも、巻上げ時の低速補正運転周波数と巻下げ時の高速補正運転周波数を同一としてもよい。
【0066】図8を詳述すると、巻上げに対し、低速基本運転周波数f21a,低速補正運転周波数f51aの他に、高速基本運転周波数f21b,高速補正運転周波数f51bを有し、巻下げに対し、低速基本運転周波数f22a,低速補正運転周波数f52aの他に、高速基本運転周波数f22b,高速補正運転周波数f52bを有し、高速,低速の周波数を、モータを高速運転するか低速運転するかに応じて切換えて使用するのである。
【0067】これを実現するための回路例を図9に示す。同図において、201A,201Bは高速,低速の巻上げ制御手段であり、202A,202Bは高速,低速の巻下げ制御手段であり、高速巻上げ制御手段201Aからは周波数f21b,f51bのいずれか一方が、低速の巻上げ制御手段201Bからは周波数f21a,f51aのいずれか一方が、高速の巻下げ制御手段202Aからは周波数f22b,f52bのいずれか一方が、低速の巻下げ制御手段202Bからは周波数f22a又はf52aのいずれか一方が出力される。この場合、前記巻上げ,巻下げ判定手段203には、高速,低速の種別を示す信号が高速,低速判別手段203aより入力され、この入力及び巻上げ,巻下げに応じて高速巻上げ制御手段201A,低速巻上げ制御手段201B,高速巻下げ制御手段202A,低速巻下げ制御手段202Bのいずれかが選択されて駆動される。なお、高速,低速判別手段203aには図示しない操作ボタンからの信号が入力される。
【0068】このような構成によれば、高速,低速いずれの場合にも周波数f21b,f51b,f21a,f51a,f22b,f52b,f22a,f52aを選択することにより巻上げ,巻下げに対しあらかじめ設定した図示しない高速,低速用の目標速度特性に対応してモータを運転できる。各周波数の具体例としては、f51bを70Hz、f21bを60Hz、f51aを30Hz、f21aを10Hz、f52aを5Hz、f22aを10Hz、f52bを30Hz、f22bを60Hzとすればよい。このように、f51aとf52bとをともに30Hzとして共用すれば周波数の設定をその分少なくできる。
【0069】実施例3.上記実施例1では、押ボタンから手を離すとすぐに減速停止するものとしたが、図10に示した点K1−K−L−M−M1−L1−K1の目標回転量が残ったまま時刻t14でブレーキをかけて停止してしまうことになる。そこで減速後、低速運転を続け上記の残った目標回転量を消化後停止してもよい。
【0070】すなわち、巻上げ時、時間t13において巻上げ運転用常開押しボタン14を離すと、周波数がf31になった所で0に向かって徐々に低下することになり、回転数が徐々に減少することになる。時間t14で周波数がf11(あらかじめ設定)となったときにブレーキを掛けると、回転が停止されることになるが、この状態では、点K1−K−L−M−M1−L1−K1の残り回転量部分(斜線部分)の目標回転量が残ったまま停止してしまい、僅かではあるが、正確な位置に位置決めされないことになる。そこで、本実施例では目標回転数がt=14で0となって、周波数がf11となったとしてもブレーキを掛けないで放置しておく。これにより、上記残り回転量部分Fが、放置した後の実際の回転量Pで相殺され、この相殺後にブレーキを掛ければ正確な位置に停止できる。
【0071】このように構成するためには図11に示すように押ボタンを押している間発生する運転信号が、押ボタンを離すことにより消去しても、これに代えて比較手段201cからの信号が運転信号として出力されるように構成すれば、比較手段201cより信号が発生している間すなわち残り回転量部分が相殺されるまで運転信号を出力し、ブレーキが掛るのを遅らせることができる。
【0072】実施例4.上記実施例1では、押ボタンから手を離して運転指令をなくしたが、図1に示した周波数増減装置20内のマイクロコンピュータ20aに絶対位置検出機能すなわち、吊荷があらかじめ設定した基準位置を越えたか否かを検出する機能をもたせ、その出力により押ボタンを押していても運転指令をなくすように構成してもよい。この場合絶対位置の検出、判断機能と前記検出回転量、目標回転量の積算、比較機能とを同一のマイクロコンピュータ内に設けてもよい。このように運転指令を絶対位置検出装置の出力でなくすことにより、簡易リフトの4隅を4台の巻上機で巻上下するような、途中で傾いても困るような場合、最終的に傾きも少なくなり、停止位置精度も高くなり、精度を必要とする用途にも適用できる。
【0073】実施例5.
次に第5発明について説明する。上記実施例1では、押しボタンを押した時点からの全目標回転量と全検出回転量とを比較するものとしたが、マイクロコンピュータ内の1メモリをアップダウンカウンタとして用い、その差のみを残すものとし、またその差が一定量を超えると異常と判断し、停止すると共に異常出力をしてもよい。すなわち、図7に示すように、アップダウンカウンタmの値があらかじめ設定した値に達すると停止制御手段としての異常信号を出力する異常判別手段80を設け、これにより自機を停止するとともに、他機を停止するようにしてもよい。この場合、上記アップダウンカウンタmの値をマイクロコンピュータ中のメモリに格納することにより、計算に要するメモリ数を大幅に削減できると共に、アップダウンカウンタの値を見るだけで差が判断でき、制御プログラムの容量も少なくでき安価となる。
【0074】
【発明の効果】第1の発明によれば、電動機の目標回転量に対応した基準パルスとロータリーエンコーダから発生するパルス数との偏差を無くすようにしたので、1台の可変速巻上装置単体で偏差を無くすことができるので、共吊り相手の他方の可変速巻上装置との電動機の回転量の突き合せ制御が不要で、このため突き合せ制御用通信ケーブルや通信手段が不要となり、偏差をみるだけなので、偏差カウンタとして小さな桁数のものでよく、共吊用可変速巻上装置システム全体を安価に構成することができる。また、可変速巻上装置を多数台用いてシステムを構成する場合、共吊り相手台数が多くなると突き合せ制御が極めて複雑となるなどの不具合があるが、この発明によればかかる不具合もなく、極めて至便である。第2の発明によれば、偏差カウンタはアップダウンカウンタを用いたので、さらにメモリ容量が小さくてよく、演算も速く行うことができる。第3の発明によれば、偏差カウンタはアップダウンカウンタを用い運転停止時にリセットするようにしたのでメモリ容量が小さくてよく、演算も速く行うことができるとともに、偏差を打ち消すための補正制御も不要となり積算された偏差値が一掃されるので吊荷の正確な位置制御ができる。第4の発明によれば、電動機の目標回転量に対応した基準パルスとロータリーエンコーダから発生するパルス数との偏差を無くすようにしたので、1台の可変速巻上装置単体で偏差を無くすことができるので、共吊り相手の他方の可変速巻上装置との電動機の回転量の突き合せ制御が不要で、電動機の目標回転量に対応した基準パルスとロータリーエンコーダから発生するパルス数との偏差が所定値を超えると装置全体を停止させるようにしたので、突き合せ制御用通信ケーブルや通信手段が不要となり、偏差をみるだけなので、偏差カウンタとして小さな桁数のものでよく、共吊用可変速巻上装置システム全体を安価に構成することができる。また可変速巻上装置のいずれかが故障したり、定格を超える大きな荷重がかかりインバータの出力周波数を増減したとしても、偏差値が更に増加しようとしても、吊荷が大きく傾く前に停止できるので極めて安全性に優れた共吊用可変速巻上装置を得ることができる。第5の発明によれば、電動機の目標回転量に対応した基準パルスとロータリーエンコーダから発生するパルス数との偏差が所定値を超えると装置全体を停止させるようにしたので、共吊用可変速巻上装置のシステムを構成する共吊用可変速巻上装置のいずれかが故障したり、定格を超える大きな荷重がかかりインバータの出力周波数を増減しても、偏差値が更に増加しようとしても、吊荷が大きく傾く前に停止できるので極めて安全性に優れた共吊用可変速巻上装置を得ることができる。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の可変速巻上装置の回路図である。
【図2】 この発明の可変速巻上装置のインバータ出力周波数および巻上電動機回転速度の変化を示す動作特性図である。
【図3】 この発明の可変速巻上装置のインバータ出力周波数および巻上電動機回転速度の変化を示す動作特性図である。
【図4】 この発明の可変速巻上装置のインバータ出力周波数および巻上電動機回転速度の変化を示す動作特性図である。
【図5】 図3,図4における巻上げ、巻下げそれぞれの場合の基本運転速度、補正運転速度、目標速度の関係を示す図である。
【図6】 図1の周波数増減装置内蔵のマイクロコンピュータの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】 図6の巻上げ、巻下げ制御手段における具体例を示す回路図である。
【図8】 この発明の他の実施例を示す巻上げ、巻下げそれぞれの場合の基本運転速度、補正運転速度、目標速度の関係を示す図である。
【図9】 図8の具体的構成を示す回路図である。
【図10】 この発明の他の実施例を示す低速運転と目標回転量との関係を示す図である。
【図11】 図10の具体的構成を示す回路図である。
【図12】 従来のクレーン共吊り揃速制御方法により制御される共吊り用電動荷役装置を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 荷物を共吊りするとともにインバータで可変速制御される電動機を有する可変速巻上装置を備えた共吊用可変速巻上装置において、前記荷物を移動させる電動機の回転方向及び回転量を検出するロータリーエンコーダと、前記電動機の目標回転量に相当する基準パルスを発生する基準パルス発生手段と、前記基準パルス発生手段のパルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力する偏差カウンタと、前記インバータの出力周波数を増減して前記偏差カウンタから出力される偏差を無くすように運転制御する運転制御手段とを備えたことを特徴とする共吊用可変速巻上装置。
【請求項2】 偏差カウンタは、アップダウンカウンタであることを特徴とする請求項1に記載の共吊用可変速巻上装置。
【請求項3】 偏差カウンタを、運転停止時にリセットすることを特徴とする請求項1に記載の共吊用可変速巻上装置。
【請求項4】 荷物を共吊りするとともにインバータで可変速制御される電動機を有する共吊用可変速巻上装置において、前記荷物を移動させる電動機の回転方向及び回転量を検出するロータリーエンコーダと、前記電動機の目標回転量に相当する基準パルスを発生する基準パルス発生手段と、前記基準パルス発生手段のパルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力する偏差カウンタと、可変速巻上装置のいずれかの前記偏差カウンタの出力する偏差が所定値を超えると共吊用可変速巻上装置を停止させる停止制御手段とを備えたことを特徴とする共吊用可変速巻上装置。
【請求項5】 荷物を共吊りするとともにインバータで可変速制御される電動機を有する共吊用可変速巻上装置において、前記荷物を移動させる電動機の回転方向及び回転量を検出するロータリーエンコーダと、前記電動機の目標回転量に相当する基準パルスを発生する基準パルス発生手段と、前記基準パルス発生手段のパルス数と前記ロータリーエンコーダが発生するパルス数との偏差を出力する偏差カウンタと、前記可変速巻上装置のいずれかの偏差カウンタの出力する偏差が所定値を超えると、全ての前記共吊用可変速巻上装置を停止させる停止制御手段とを備えたことを特徴とする共吊用可変速巻上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図11】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【特許番号】特許第3147199号(P3147199)
【登録日】平成13年1月12日(2001.1.12)
【発行日】平成13年3月19日(2001.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−286897
【出願日】平成4年10月1日(1992.10.1)
【公開番号】特開平5−268788
【公開日】平成5年10月15日(1993.10.15)
【審査請求日】平成8年3月12日(1996.3.12)
【審判番号】平11−10804
【審判請求日】平成11年7月1日(1999.7.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 昭49−125791(JP,A)
【文献】特開 昭57−9678(JP,A)
【文献】特開 平1−191908(JP,A)
【文献】特開 平2−133804(JP,A)
【文献】特開 平4−4793(JP,A)
【文献】特開 平5−70089(JP,A)
【文献】特公 昭48−40219(JP,B1)