説明

共役ジエン重合体変性物及びその製造方法、その共役ジエン重合体変性物が含まれたゴム補強剤配合ゴム組成物及びその製造方法

【課題】 (メタ)アクリル酸エステル系重合体をニトロキシド化合物を用いたラジカル重合(NMP法)を使用することによりグラフト変性した共役ジエン系ゴムおよびそれを製造するための効果的な方法を提供する。
【解決手段】 1,4-シス構造が94〜99%であり、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、37〜48である共役ジエン系ゴムを芳香族炭化水素溶媒中にて、有機過酸化物及びアゾ化合物のような既存のラジカル開始剤を使用したニトロキシドを介した制御ラジカルグラフトにて共重合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4−シスポリブタジエンゴムをポリアルキルアクリレートでグラフト変性した共役ジエン重合体変性物及びその製造方法、その共役ジエン重合体変性物が含まれたゴム補強剤配合ゴム組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカは、引裂強度、耐摩耗性、耐老化性などの機械強度を改善するという点においてカーボンブラックに比べて優れた補強材であることはすでに知られている。特に、対応する温度が広い範囲においてもゴム加硫物の粘弾特性がより改善するという点は、注目に値する。そこで最近では、シリカ単独で配合したもの、あるいはカーボンブラックと併用したシリカ配合ゴム組成物が注目されている。
【0003】
しかしながら、シリカの表面はシラノール基由来の極性があるため、常にシリカ同士が水素結合による相互作用を示す傾向を持つ。こうしたことが、ポリブタジエンのようなゴム中における炭化水素構造との相性や親和性が良くない原因となっている。
その結果、シリカ粒子同士が凝集、さらにはゴム組成物中に配合したシリカの分散性が良くならず、更にシリカ配合ゴム加硫物では、ヒステリシスロスや発熱性の増加に伴うエネルギー損失をもたらす。
【0004】
最近では、ゴム加流物中での無機補強材であるシリカの分散性を改善するのに二元機能性を持った高価なシランカップリング剤が広く使用されている。この二元機能性を持ったシランカップリング剤は、極性を帯びたシリカ表面と無極性ゴムマトリクスとの親和性と相互作用を改善できるものである。
【0005】
こうしたシランカップリング剤は、加水分解してシリカの極性シラノール基と結合できる一つの機能とゴムマトリクスと反応あるいは相互作用を形成できるもう一つの別な機能を持っている(非特許文献1)。
【0006】
さらに、ゴムを重合した後で、アクリレート系極性モノマーでフリーラジカルグラフト変性した共重合体を得るための別の化学的変性方法が、特殊用途向けの炭化水素ゴムマトリクス中で、極性を高める目的で10年以上前から報告されている。
【0007】
これまで大学や企業においてかなり研究されてきた、最もよく知られている例としては、モルフォロジーを制御した天然ゴムラテックス粒子を得るのに、メチルメタクリレート(MMA)とスチレンのフリーラジカルグラフト共重合体エマルジョンによる天然ゴムラテックスの変性である。形成されたラテックス粒子複合体は、塗料、ゴム接着剤、手袋、有機乳白剤、生体分子のキャリアーおよび熱可塑性樹脂の衝撃改質剤など幅広い用途に適用されている(非特許文献2〜5および特許文献1)。
【0008】
また、有機過酸化物やアゾ化合物のような一般的なラジカル開始剤を用いて、シス-ブタジエンゴムやビニル−1,2−ポリブタジエンのような合成ゴムの主鎖を極性モノマーでフリーラジカルグラフト化した共重合体も報告されている。しかしながら、グラフト効率やグラフトした後のポリブタジエンの構造を制御することが難しい。特に、ビニル−1,2−ポリブタジエンは、一般的により高いグラフト効率を示すことが知られている。(非特許文献6、7)
【0009】
安定ニトロキシドフリーラジカルを含む化合物、いわゆるニトロキシドを介したラジカル重合(NMPと略記)を使用することによる制御されたラジカル重合体(CRPと略記)の発見以来(非特許文献8、9)、極性共重合体の側鎖をグラフトする化学変性を目的としたNMPの適用は、分子鎖の長さや合成ゴム上への分散性のコントロールを伴っており、従来のフリーラジカルグラフト共重合より優れたものとなっている。
【0010】
例えば、初期に開示されている研究のひとつは、有機過酸化物のような従来のラジカル開始剤によりアリル水素を引き抜くことでポリブタジエンの主鎖にメチルアクリレートのような極性モノマーをグラフトするNMP法であった。そして、ジ−tert−ブチルニトロキシドのようなニトロキシドの働きによって、分子鎖の長さやグラフトした側鎖の分散性を制御がされる。
【0011】
しかし、水素引き抜きの副反応を防ぐために、溶媒として毒性の含塩素炭化水素を使用しなければならない不都合が有った(特許文献2)。
【0012】
近年、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPOと略記)のような分子中に安定フリーラジカルを持った化合物を使用した、合成ゴムへのグラフト化が報告されている。
この目的は、加工性や耐摩耗性のようなゴム化合物の物理特性を改善することにある(参考文献3および4)。更に可逆架橋剤としての使用を目的とした従来のラジカル開始剤の存在下、多機能ニトロキシドを用いたゴムへのグラフト化研究が報告されている。
しかし、ゴム中へ極性基を導入する化学的変性を目的とした報告は未だされていない(特許文献5)。
【0013】
更に近年、従来のフリーラジカル開始剤の存在下、溶媒を使用せずにミキサー中にて、ブチルゴムとニトロキシドフリーラジカルでグラフトしたエチレン-プロピレン共重合体に基づく合成ゴムの化学的変性の研究が開示されている。
ゴムへの極性基の導入は成功したものの、グラフトしたゴムの分子量は徐々に減少し、グラフト効率も低くなる不具合が生じた(特許文献6)。
【0014】
そこで、グラフトしたゴムの分子量の減少を抑えるための改善策として、機能化したニトロキシドフリーラジカルとラジカル開始剤のモル比を1.5以上にすることが効果的である(特許文献7)。
更に、前述の非溶媒系により、ゴムの主鎖にラジカル重合可能な極性モノマーをグラフト共重合したジエン系エラストマーである合成ゴムの化学的変性が報告されている。
グラフトしたゴムを含んだシリカ配合ゴム組成物では、シリカの分散性が改善され、ヒステリシスロスが更に低くなり、また耐摩耗性もわずかに改善される(特許文献8)。
【0015】
【特許文献1】米国特許第6423783号公報
【特許文献2】米国特許第4581429号公報
【特許文献3】特開平10-182881号公報
【特許文献4】特開2004-182926号公報
【特許文献5】特開2003-524037号公報
【特許文献6】特許第3963917号公報(米国特許第7282542号公報)
【特許文献7】特許第4101242号公報
【特許文献8】特開2008-297559号公報
【非特許文献1】Walter Meon, Rubber Compounding: Chemistry and Applications, Brendan Rodgers Edt., Marcel Dekker Inc., 2004, p. 285.
【非特許文献2】Schneider, M., Pith, T. and Lambla, M., J. Appl. Polym. Sci., 62: 273 (1996).
【非特許文献3】Schneider, M., Pith, T. and Lambla, M., Polym. Adv. Technol., 7: 577 (1996).
【非特許文献4】Teng, G. and Soucek, M.D., Polymer, 42: 2849 (2001).
【非特許文献5】Benny, G., Maiti, S.N., and Varma, I.K., J. Elastomers and Plastics, 38: 319 (2006).
【非特許文献6】Huang, N.J., Sundberg, D.C., J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 33, 2571 (1995).
【非特許文献7】Huang, N.J., Sundberg, D.C., J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 33, 2587 (1995).
【非特許文献8】Georges, M. K.; Veregin, R. P. N.; Kazmaier, P. M.; Hamer, G. K., Macromolecules, 26, 2987-2988 (1993).
【非特許文献9】Hawker, C. J.; Bosman, A. W.; Harth, E. Chem. Rev., 101, 3661-3688 (2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本願発明では、1,4−シス構造が94〜99%であり、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、37〜48である1,4−シス-ポリブタジエンゴムを芳香族炭化水素溶媒中にて、有機過酸化物及びアゾ化合物のような既存のラジカル開始剤を使用したニトロキシドを介した制御ラジカルグラフト共重合による技術であって、ポリアルキルアクリレートをグラフト変性した1,4−シス−ポリブタジエンゴムを製造するための効果的な方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の目的を達成するため、本願発明は第1の発明として分子量、分子量分布、ゲル量およびポリアルキルアクリレートのグラフト率が良好に制御されたポリアルキルアクリレートでグラフト変性した1,4−シスポリブタジエンゴムの効果的な製造方法を提供している。
そのグラフト化の方法としては、芳香族炭化水素溶媒中において、有機過酸化物やアゾ化合物などの既存のラジカル開始剤を使用したものである。
第2の発明として前記のポリアルキルアクリレートでグラフト変性した1,4−シスポリブタジエンゴムを含む新規なシリカ配合ゴム組成物を提案している。そのゴム組成物中では、シリカがかなり良好に分散しており、その結果として、低ヒステリシスロス、低発熱性を達成している。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を、ニトロキシド化合物を用いたラジカル重合(NMP法)を使用することによりグラフト変性した共役ジエン系ゴムに関する。
【0019】
該(メタ)アクリル酸エステル系重合体がポリアルキルアクリレートであることを特徴とする前記のグラフト変性した共役ジエン系ゴムに関する。
【0020】
該共役ジエン系ゴムが1,4−シス構造を持ち、かつその割合が94〜99%である事を特徴とする、前記のグラフト変性した共役ジエン系ゴムに関する。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体をニトロキシド化合物を用いたラジカル重合(NMP法)を使用することによりグラフト変性した共役ジエン系ゴムの製造方法に関する。
【0022】
該グラフト変性した共役ジエン系ゴム(A)、(A)以外の加硫可能なゴム(B)さらにゴム補強剤(C)を加える事を特徴とするゴム補強剤配合ゴム組成物に関する。
【0023】
該グラフト変性した共役ジエン系ゴム(A)、(A)以外の加硫可能なゴム(B)さらにゴム補強剤を加える事を特徴とするゴム補強剤配合ゴム組成物の製造方法に関する。
【0024】
該ゴム補強剤(C)がシリカであることを特徴とする前記のゴム補強剤配合ゴム組成物に関する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、芳香族炭化水素溶媒に溶解したゴム溶液中に、既存のフリーラジカル開始剤とニトロキシドフリーラジカルを共存させ、ゴム分子主鎖にアクリルアクリレート類であるラジカル重合可能な極性モノマーをグラフト変性した1,4−ポリブタジエンを効率よく化学変性する方法を提供する事が出来る。
また、ラジカル開始剤、温度、重合度、さらにニトロキシドとラジカル開始剤のモル比などの重合条件を適当に調整することで、グラフトしたポリアルキルアクリレート側鎖の分子量を制御したグラフト変性1,4−シス-ポリブタジエンを製造することが出来る。
更にシリカの分散性を改善した、低ヒステリシスロス、低発熱性を得た該グラフト変性1,4−シス-ポリブタジエンを含んだシリカ配合ゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ポリアルキルアクリレートを用いてグラフト変性した1,4−シス−ポリブタジエンを製造する方法の概念図。
【図2】実施例14に関わるPMMAグラフト化BR150L(グラフト率14.42%)のFT−IRスペクトルである。
【図3】開始剤等を変えた場合のPMMAグラフト化BR150LのGPCチャートである。
【図4】開始剤BPO/TEMPOを用いたときのPMMAグラフト化BR150LのMMA/グラフトサイトのモル比とゲル含量およびグラフト率の関係である。
【図5】PMMAグラフト化BR150LのTEMPO/BPOのモル比とゲル含量およびグラフト率の関係である。
【図6】PMMAグラフト化BR150Lの熱安定性評価(450℃での重量損失)である。
【図7】天然ゴム(NR)/BR150L/PMMAグラフト化BR150L組成物の動的歪み掃引による貯蔵せん断弾性率を示す。
【図8】天然ゴム(NR)/BR150L/PMMAグラフト化BR150L組成物の動的歪み掃引中の弾性率の損失(tanδ)を示す。
【図9】天然ゴム(NR)/BR150L/PMMAグラフト化BR150L加硫物の動的温度掃引中の弾性率の損失(tanδ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ポリブタジエン
本発明に係る共役ジエン重合体変性物に用いられるポリブタジエンにおいて、特徴的であるのは高シスポリブタジエン(1,4−シス構造94〜99.9mol%)を適用したことにある。本発明に係る共役ジエン重合体変性物によれば、高シスポリブタジエンを適用することで、シリカ-ゴム相互作用を改善し、分子末端変性と比較して高シス構造のもつ高性能とポリブタジエン主鎖への変性の度合いのバランスを保つことができる。
【0028】
1,4−シス-ポリブタジエンゴムとしては、市販の宇部興産社製(UBEPOL BR150L)あるいは特殊合成した1,4−シス−ポリブタジエンゴムを使用することが出来るが、これらに限定されるものではない。
該1,4−シス-ポリブタジエンゴムの1,4−シス構造の割合は、好ましくは94〜99.9%であり、より好ましくは94.5〜99%、最も好ましくは95〜98%である。
【0029】
またムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは37〜48が好ましく、39〜46がより好ましく、42〜44が特に好ましい。更にゴムのリニアリティー(直鎖性)の指標である5wt%のトルエン溶液粘度(Tcp cps)は、98〜110が好ましく、100〜108がより好ましく、103〜107が特に好ましい。
1,4−シス構造の割合が、94%より低い場合、あるいはTcpが98より低いと、ゴムの粘弾性特性と同様に耐摩耗性も劣るので好ましくない。
【0030】
その他、適用出来るゴムとしては、加硫可能なゴムを使用する事が可能である。例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム、スチレン−イソプレンゴムなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのエチレン-α-オレフィン系共重合ゴムが挙げられる。これらを単独でもよいし複数組み合わせて使用してもよい。
【0031】
好ましくは本願発明の狙いでもある高シス構造を持ったゴム成分であり、より好ましくは、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)などである。
特に高シス−ブタジエンゴム(BR)が好ましい。
【0032】
ラジカル開始剤
また、本願発明で用いられるラジカル開始剤は、フリーラジカルを得るために熱分解を経て、1,4−シス-ポリブタジエン主鎖上に炭素ラジカルを発生させるものである。ラジカル開始剤には、過酸化ベンゾイル(BPO)のような既存の有機過酸化物を使用することが出来る。
【0033】
例えば、ジラウロイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ヘキシルペルオキシピバレート、ジ−n−オクタノイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシ−3−ヘキシン、2,4−ジクロロジベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、ジイソブチルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、1−シクロヘキシルジカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシネオデカネート、ジメトキシブチルペルオキシカーボネート、tert−ブチルペルオキシネオデカネート、tert−ヘキシルペルオキシネオカーボネート、ジメトキシブチルペルオキシカーボネート、ジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシドがある。さらに、アゾ化合物類も使用することが出来る。
例えば、1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などがある。
【0034】
これらラジカル開始剤の中で、有機過酸化物が好ましく、ジベンゾイルパーオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレートおよび2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBNと略記)がより好ましい。さらにジベンゾイルパーオキシドとAIBNが特に好ましい。
【0035】
安定化ニトロキシドフリーラジカルに含まれる化合物
安定化ニトロキシドフリーラジカルに含まれる化合物は、市販のTEMPOやTEMPO誘導体を使用することが出来る。ここにTEMPOは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルであり、TEMPO誘導体とは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(OH−TEMPO)や4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(OXO−TEMPO)である。特にTEMPOの使用が好ましい。
【0036】
ラジカル重合可能な極性モノマー
ラジカル重合可能な極性モノマーは、特に限定されるものではないが、アルキルアクリレート類の使用が好ましい。アルキルアクリレート類としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、)プn−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ペンタフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロブチルメタクリレート、3−(ジメトキシシリルロピルメタクリレート、3−(ジエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレートが上げられる。これらを単独であるいは2つ以上組み合わせて使用しても良い。
【0037】
溶媒
本願発明において制御ラジカルグラフト共重合をする際に、1,4−シス-ポリブタジエンを溶解する溶媒としては、芳香族炭化水素類が好ましく、特にベンゼン、トルエンおよびキシレンが好ましく、最も好ましくはトルエンである。
【0038】
1,4−シス-ポリブタジエンの主鎖同士を架橋することなく、かつ分子鎖の長さを制御したポリアルキルアクリレートを用いてグラフト変性した1,4−シス-ポリブタジエンを製造する方法を、図1に示す。以下に操作の手順示す。
【0039】
(反応操作方法)
(1)均一のゴム溶液が得られるまで、1,4−シス-ポリブタジエンを芳香族炭化水素溶媒に溶解する。
(2)所望のグラフト変性共重合温度にて前述した熱分解性ラジカル開始剤により水素引き抜きを経由して1,4−シス-ポリブタジエン主鎖上に炭素ラジカルを発生させる。
この段階で、分子安定ニトロキシドフリーラジカルを含む化合物あるいはTEMPO誘導体が、可逆反応にて炭素ラジカルを消滅させるために1,4−シス-ポリブタジエン主鎖上の炭素ラジカルを攻撃する。
(3)所望の重合時間にてゴム溶液中の1,4−シス-ポリブタジエン主鎖を、グラフト共重合を行うためにアルキルアクリレートモノマーを加える。
(4)所望のポリアルキルアクリレートのホモポリマーとグラフトした1,4−シス-ポリブタジエンを含んだゴム溶液を大容量のメタノールを用いて沈殿させる。それをろ過、乾燥する。
(5)還流温度にてアセトン中にてグラフトした1,4−シス-ポリブタジエンからポリアルキルアクリレートのホモポリマーを抽出する。
得られたグラフト化1,4−シス-ポリブタジエン生成物は、ポリアルキルアクリレート含量、グラフト率、分子量、分子量分布、ゲル量、更に熱安定性などの諸物性が評価された。
【0040】
トルエン溶液中の1,4−シス-ポリブタジエンゴムの濃度は、制御されたグラフト共重合に大いに影響を及ぼす重要な要素である。好ましいゴム濃度は、0.015〜0.07g/ml、より好ましくは0.02〜0.06g/ml,最も好ましくは0.025〜0.045g/mlである。
0.07g/ml以上のゴム濃度では、粘度が高すぎるために不均一な重合溶液となるため好ましくない。特に制御できないグラフト共重合体や高すぎるゲル含量の原因になる。
逆に0.015g/ml以下では、ゴム濃度が低すぎるためグラフト率が低くなり、あるいは溶液中のゴムにグラフトするモノマーの反応率が、均一重合速度より低くなるため好ましくない。
【0041】
グラフト共重合の温度は理論的に、前述のラジカル開始剤がフリーラジカルを発生するのに1時間で初期量の半分が分解する温度(T(℃)1-h t1/2)である。本願発明では、グラフト共重合の好ましい温度は、75〜100℃、より好ましくは80〜95℃、特に好ましくは85〜90℃である。
温度が100℃以上では、重合で使用される芳香族炭化水素溶媒の沸点に近くなり、ガラス反応器内での突沸や圧力上昇の原因となるので好ましくない。逆に温度が75℃よりも低すぎると、発生ラジカルの数が少なすぎて、グラフト共重合の効率が低下する原因となる。
【0042】
1,4−シス-ポリブタジエン主鎖上のグラフトサイトの数は、1〜5mol%が良く、2〜4mol%がより好ましく、2.5〜3mol%が特に好ましい。1mol%より少ないグラフトサイト数では、グラフト共重合の効果が低く、1,4−シス-ポリブタジエンにグラフトしたポリアルキルアクリレートの量が少なくなる。そのため、ゴム中の極性の増加が期待できない。これに反して、5mol%より多いグラフトサイト数では、ゴム主鎖間で制御不能のゲル化おこり、その結果ゲルが大量発生するので好ましくない。
【0043】
グラフトサイトに対するラジカル開始剤のモル比(開始剤/グラフトサイト)は、通常0.5〜1.5が好ましく、0.7〜1.2が特に好ましい。
【0044】
ラジカル開始剤に対するTEMPOあるいはTEMPO誘導体のモル比(TEMPO/開始剤)は、0.5〜1.5がよく、0.9〜1.1が特に好ましい。TEMPO/開始剤のモル比が1.0に近づくほど、共重合速度(アルキルアクリレートモノマーの転化率)とリビング重合的特性を持つグラフト共重合の制御可能性との間のバランスをとる最適条件になる。
【0045】
グラフトサイトあるいは重合度に対するアルキルアクリレートのモル比(DPn)は、1,4−シス-ポリブタジエン主鎖にグラフトしたポリアルキルアクリレートの所望の分子長さに対する理論的数値である。
本願発明では、1,4−シス-ポリブタジエン主鎖にグラフトしたポリアルキルアクリレートの短鎖の構造は、グラフトサイトの数に相対的に近い分岐鎖の数あるいは分岐鎖の分散性を持っていることが好ましい。
更に、好ましいグラフトサイトに対するモノマーのモル比(DPn)は、25〜100の範囲であり、より好ましくは30〜80、特に好ましくは40〜75である。
【0046】
DPnの値が25より小さいと、グラフトしたポリアルキルアクリレートの短鎖が短すぎてしまい、1,4−シス-ポリブタジエン主鎖での極性増大の効果が低くなるため好ましくない。
一方、DPnの値が100より大きいと、グラフトしたポリアルキルアクリレートの短鎖が長すぎてしまい、その結果グラフト側鎖が硬くなるため、加硫工程での障害になる。また、あまりにも硬すぎるグラフト側鎖は、エラストマーの重要な特性を失わせる原因ともなり、好ましくない。
【0047】
ラジカル開始剤としてジベンゾイルパーオキシド(BPO)とAIBNを用いたグラフト共重合の具体例を表1と2に示す。
【0048】
表1と図3〜5において、BPOを使ったグラフト共重合の結果から前述のグラフト共重合条件では、ポリ(メチルメタクリレート)グラフト化1,4−シス-ポリブタジエン(PMMAグラフト化BR150L)の数平均分子量(Mn)が36,000〜55,000の範囲で減少する結果となっている。しかし、重量平均分子量(Mw)は8,000〜150,000の範囲で増加している。さらに、分子量分布(MWD)は2.8〜3.6の範囲となっている。
【0049】
ゲル量を0.1wt%以下にするような条件では、1,4−シス-ポリブタジエンにグラフトしているポリメチルメタクリレートの最大含有量が4.5%、グラフト率が4.7%である。よく制御されたグラフト共重合体では、モノマー/グラフトサイトのモル比(DPn)の減少やTEMPO/開始剤のモル比の増加を伴ってゲル量の減少が得られる。
ポリメチルメタクリレートのグラフト率は、モノマー/グラフトサイトのモル比(DPn)の増加を伴って僅かだけ増加傾向を示すが、TEMPO/開始剤のモル比が減少すると、急激な増加を示す。
【0050】
表2と図3に示したAIBNを用いたグラフト共重合の結果から、前述したグラフト共重合条件の下、得られたポリ(メチルメタクリレート)グラフト化1,4−シス−ポリブタジエン(PMMA−グラフト化BR150L)は、MnとMw双方の増加を伴いつつBPO系と比較して分子量分布が狭く(2.8未満)、ゲル量を僅か(0.02wt%未満)に含むにすぎない。
1,4−シス−ポリブタジエンにグラフトしているポリ(メチルメタクリレート)の最大含量は12.6%、最大グラフト率は、14.4%である。
【0051】
図2は、実施例14(グラフト率14.4%)におけるポリ(メチルメタクリレート)グラフト化1,4−シス−ポリブタジエン(PMMA−グラフト化BR150L)と未変性1,4−シス−ポリブタジエン(BR150L)のFT−IRスペクトルを比較して示したものである。
グラフトしたポリメチルメタクリレートのC=O伸縮振動が1734cm−1に観測されている。
【0052】
図6では、熱重量分析(TGA)による450℃での重量減少を測定した結果、未変性1,4−シス−ポリブタジエン(BR150L)と比較して、ポリ(メチルメタクリレート)グラフト化1,4−シス−ポリブタジエン(PMMA−グラフト化BR150L)は熱安定性が改善していることがわかる。
【0053】
(ポリアルキルアクリレートグラフト化1,4−シス-ポリブタジエンを含んだシリカ配合ゴム組成物)
表3にシリカ配合ゴム組成物の配合成分およびその量を示す。ここに、「phr」は「重量部」であり、エラストマーあるいはゴムの重量100に対する重量の割合である。
【0054】
使用する天然ゴムあるいは1,4−シス-ポリイソプレンの量は、10〜90重量部が良く、より好ましくは20〜60重量部である。また、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、40〜100が好ましく、50〜80がより好ましく、60〜70が特に好ましい。
【0055】
使用する1,4−シス-ポリブタジエンの量は、10〜90重量部が良く、30〜50重量部がより好ましい。さらに、1,4−シス-ポリブタジエンのミクロ構造は1,4−シス構造が80〜98%、1,2−ビニル構造が1〜19%であることが好ましい。また、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、10〜70が好ましく、30〜60がより好ましい。
例えば、1,4−シス-ポリブタジエンは市販の1,4−シス-ポリブタジエンに限定されず、コバルト(II)オクタエートのようなコバルト系触媒とジエチルアルミニウムクロリドのような有機アルミニウム化合物の存在下、1,3−ブタジエンを溶液重合して得られたものを使用しても良い。
【0056】
前述したポリアルキルアクリレートグラフト化1,4−シス-ポリブタジエンの量としては、1〜50重量部が良く、10〜30重量部がより好ましい。
1重量部未満のポリアルキルアクリレートグラフト化1,4−シス-ポリブタジエンは、ゴム組成物中におけるシリカ分散性向上の効果が無い。一方、50重量部より多くなると耐摩耗性が悪くなる原因となる。
【0057】
使用する沈降シリカの量は20〜80重量部が良く、30〜70重量部がより好ましい。また、沈降シリカのBET比表面積は100〜300m/gであり、粒径0.01〜0.1ミクロンであることが好ましい。
沈降シリカの比表面積が高すぎると加工段階や加硫後にゴムマトリクス中で凝集が起こりやすいので好ましくない。
【0058】
本願発明で使用される沈降シリカあるいは業界で一般にゴム配合物として使用される沈降シリカは、ケイ酸ナトリウムのような可溶性ケイ酸塩の酸化性によって得られるものであることが好ましい。
様々な市販の沈降シリカが利用でき、特にPPG社製のシリカ、Hi−Silの商標で知られるRhodia社製のZ1165MPやZ165GRのシリカ、さらにEvonik(Degussa AG)社製でVN2やVN3(商標Nipsilで知られる東ソ社製VN3を含む)で知られるシリカを使用することが出来る。
【0059】
シリカ表面上のシラノール基をもつ結合を形成する時のシラン部分とエラストマーに相互作用を及ぼす際の2〜6の反応硫黄原子をもつポリスルフィド部分をもつシランカップリング剤の量としては、1〜10重量部が良く、1〜5重量部がより好ましい。
【0060】
本願発明では使用するシランカップリング剤の量を、シリカ配合ゴム組成物に通常使用するケースと比較して、減らすことが出来る利点がある。
一方、シランカップリング剤の量が10重量部より多すぎると、複合化の段階で架橋が進みすぎて、甚大な結果をもたらす為、良くない。更に、シランカップリング剤の量が1重量部より少ないと、ゴムマトリクス中にシリカが分散しにくくなる原因となり、好ましくない。
【0061】
シランカップリング剤は、一般に市販のものを使用することができる。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド,ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド,ビス(2−トリエトキシシリルプロピル) テトラスルフィド,ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,ビス(2−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン,3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン,2−メルカプトエチルトリメトキシシラン,2−メルカプトエチルトリエトキシシラン,3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド,3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド,2−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド,3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド,3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド,3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド,3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらのシランカップリング剤を単独で用いるだけでなく、複数組み合わせて用いても良い。この中でも特に、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドの使用が好ましい。
【0062】
その他使用するものとしては、ゴムの複合化や加硫段階で一般に使用されるものを用いることが出来る。例えば、プロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、酸化防止剤、加硫促進剤およびイオウのような加硫剤である。プロセスオイルとしては、パラフィンオイル、ナフテンオイルやアロマオイルが用いられるが、これらに限定されるものではない。この中でもアロマオイルが最も使用に好ましく、ゴム組成物の引張強さ、耐摩耗性など、優れた物性を維持することが可能である。
さらに、使用する量としては1〜50重量部が良く、5〜30重量部がより好ましい。
【0063】
加硫剤としてはイオウが用いられるが、イオウに限定されるものでなく他の加硫剤も使用が可能である。使用量としては、0.1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。加硫剤の量が10重量部より多すぎると加硫が進みすぎてしまい、ゴムの弾性が失われるので良くない。一方、加硫剤の量が0.1重量部より少なすぎると、加硫不足による引張強度や耐摩耗性などの物性が十分得られないので良くない。
【0064】
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチオゾール(Mと略す)、ジベンジルゾチアジルジスルフィド(DMと略す)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZと略す)およびジフェニルグアニジン(Dと略す)などであるが、これらに限定されるものではない。
使用する量としては、0.1〜5重量部がよく、1〜3重量部がより好ましい。
【0065】
(I)混合工程(第1ゴム組成物)
混合工程において、加硫剤および加硫促進剤を除く全成分は、プラストミルのような密閉式混合機で90℃、5分以内にて混合される。その後直ちに、混合物がミキシングロールを使用して30〜60℃の温度範囲にて冷却後、シート状に形成される。シート状のゴム組成物のサンプルを用いて、ムーニー粘度が測定される。さらに、Payne効果の測定は、120℃、1Hzの周波数の条件にて動的歪掃引分析にておこなった。使用した分析機器は、Alpha Technologies社製のゴム加工性解析装置RPA−2000である。
シリカ配合ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、110〜150が好ましく、120〜135がより好ましい。
【0066】
図7に天然ゴムおよび宇部興産社製UBEPOL BR150L(高シス構造を持つ1,4−cis−polybutadiene)およびポリメチルメタクリレートでグラフト変性したUBEPOL BR150L(PMMA−g−BR150Lと略す)の3種のゴムからなるシリカ配合したゴム組成物のせん断歪と貯蔵せん断率の関係を、BR150Lと比較して示す。
図7から、せん断歪の低い範囲でのより低い貯蔵せん断率は、シリカとゴムの相互作用が改善していることを示している。比較例のBR150Lは、せん断歪が2〜10%に掛けて急激な貯蔵せん断率減少を示している。これは、シリカ凝集体の形成による分離によるものである。一方、PMMA−g−BR150Lを含んだ全てのゴム組成物は、前述の現象がほとんど起こらない。
【0067】
図8に天然ゴムおよび宇部興産社製UBEPOL BR150L(高シス構造を持つ1,4−cis−polybutadiene)およびポリメチルメタクリレートをグラフト変性したUBEPOL BR150L(PMMA−g−BR150Lと略す)の3種のゴムからなるシリカ配合したゴム組成物の損失貯蔵せん断率、即ちヒステリシスロスあるいはtanδとせん断歪の関係を、BR150Lと比較して示す。
PMMA−g−BR150Lを含んだ全てのゴム組成物は、せん断歪が10〜100%にかけてtanδが低いことが分かる。これは、ゴムマトリクス中でのシリカ−ゴムの相互作用あるいはシリカの分散性が改善していることを示している。
【0068】
(II)加硫予備工程(第2ゴム組成物)
前述した混合工程から得られたシリカ配合ゴム組成物のシートは、30〜60℃の温度範囲でミキシングロールを使用して、イオウのような加硫剤や加硫促進剤とともに混合したものである。加硫予備工程におけるゴム組成物は、シート状に引かれ、そのサンプルはムーニー粘度(ML1+4,100℃)、RPA−2000における150℃での最適加硫点および加硫中のtanδの測定がなされる。
【0069】
加硫予備工程による第2ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、混合工程から得られた第1化合物のムーニー粘度より減少し、その値は、60〜100、より好ましくは70〜90である。加硫予備工程による第2ゴム組成物の150℃での90%加硫での時間(t90)は、5〜15分間が良く、より好ましくは7〜12分間である。
【0070】
表4より、6%以上PMMA参照実験(BR150L)に比べて、より遅くなっていることが分かる。
一方、5%以下PMMAがグラフトしているPMMA−g−BR150Lを含んだ第2ゴム組成物(実施例A〜C)の加硫時間は参照実験(BR150L)に比べて、より速くなっている。
こうした加硫速度が速くなる原因は、TEMPOラジカルに加硫促進効果があるためではと考えられる。これに反して、グラフトしたPMMAの割合が多すぎると、加硫を阻害してしまうのは、TEMPOラジカルの加硫促進効果がほとんど無くなってしまうからである。
【0071】
(III)加硫工程およびシリカ配合ゴム加流物の物性
表4にPMMA−g−BR150Lを含んだシリカ配合ゴム組成物の物性を示す。
【0072】
加硫予備工程による第2ゴム組成物は、加硫時間の測定をした150℃でプレス成形される。生成したゴム加流物サンプルは、温度掃引、引張張力、粘弾性特性、発熱性および耐摩耗性(ランボーン摩耗)などの粘弾性の物性が測定される。
【0073】
粘弾性の物性は、動的温度掃引分析により、周波数16Hz、1%の静的歪、0.3%の動的歪および−120〜100℃の温度範囲にて測定される。
表4より、シリカ配合した加硫物では全て、参考例に比べて粘弾性の物性が改善していることが分かる。
特に、天然ゴム、UBEPOL BR150LおよびPMMA−g−BR150Lを成分に含んだ加硫物は、参考例のBR150Lに比べ、−30℃における弾性率(G')がより低くなっており、その結果、シリカの凝集割合が低くなっている、あるいはシリカのゴムマトリクスへの分散状態が良くなっていることがわかる。
【0074】
ほとんどの加硫物は、0℃でのtanδの値が参考例を基準として、約1%〜13.3%(実施例A)と高くなっていることが分かる。これは、低温での濡れ摩擦特性が改善しているためである。さらに、5%以下のPMMAグラフト率であるPMMA−g−BR150Lを含んだ実施例A〜Cの加硫物は、60℃でのtanδの値が参考例を基準として、約1.6〜8.1%低くなっていることが分かる。これは、ヒステリシスロスが改善されているためである。
【0075】
一方、8%以上のPMMAグラフト率であるPMMA−g−BR150Lを含んだ比較例DとEなる加硫物は、60℃におけるtanδが参考例より高くなっている。特に図9から分かるように、比較例は温度が高くなるに連れ、いずれもtanδが高くなる傾向を示している。これは、通常の熱可塑性樹脂に見られる傾向である。さらに、グラフト率のレベルの最大値は、シリカ配合ゴム加流物の所望の粘弾性特性とのバランスをとることが必要とされる。
【0076】
ヒステリシスロスが改善すると、本願発明での全ての加硫物は低発熱性を示すことになる。特に、実施例A〜Cの熱上昇値は、参考例のBR150Lに比べて、約3〜9%低くなっている。
本願発明での全ての加硫物の機械強度に関しても、引張強度や引張伸びなどの結果が、参考例のBR150Lに比べて、上昇していることがわかる。
20%スリップ速度でのランボーン摩耗抵抗の結果から、本願発明における全てのゴム加流物は、参考例のBR150Lに比べて、約1〜7%改善していることが分かる。
【0077】
産業上の利用可能性
本願発明で用いられている天然ゴム、UBEPOL BR150Lおよびポリアルキルアクリレート−グラフト化BR150Lからなるシリカ配合ゴム組成物は、1,4−ポリブタジエンの主鎖にグラフトしたポリアルキルアクリレート鎖のような極性のある機能性を導入することで、シリカーゴム相互作用を改善したゴム加硫物を提供することが可能となる。
その結果として、低温での濡れ摩擦特性のバランスを保ちながら、低ヒステリシスロスや低発熱性の改善することが出来る。これらのゴム加流物は、エネルギー損失あるいは効果的な省エネルギーに優れた粘弾性特性や耐久性を持った数多くの用途として、天然ゴムやジエン系合成ゴムを組み合わせたゴム成分として使用される高い可能性を示す。特に以下に限定されるもではないが、具体的用途としては、工業用ベルト、ホース、シール材を含む他の産業用エラストマーなどがあげられる。
【0078】
以下に本願発明で調製したゴムの分析内容を示す。
(変性ゴム中のグラフトしたポリマー(ポリアルキルアクリレート)含量)
変性ゴム中のグラフトしたポリマー(ポリアルキルアクリレート)含量は、標準KBr法を用いて、島津製作所製Shimadzu−8700を用いたFT−IRスペクトルを測定することで行った。
市販のポリアルキルアクリレートとBR150Lをブレンドしたものの検量線は、全ビーク面積に対するC=O(波数1734cm−1でのカルボニル基)のピーク面積の比によってプロットした。
それぞれのグラフトしたサンプルゴムの全ビーク面積に対するC=O(波数1734cm−1でのカルボニル基)のピーク面積の比の結果は、ゴム中のグラフト含量を決定するのに、検量線を用いて比較される。
【0079】
(変性ゴム中のグラフト率(Percent Grafting,PG))
グラフト率(PG)は重量%で表され、前述したFT−IR測定から得られたグラフトしたポリマーの含量の結果から以下の計算式によって求めることが出来る。
【0080】
【数1】

【0081】
(ゴムの分子量及び分子量分布)
分子量及び分子量分布は、東ソー社製HLC−8220 GPCを用い、カラムを2本直列にて使用し、標準ポリスチレンの検量線により算出した。使用したカラムはShodex GPC KF−805L columnsであり、THF中でのカラム温度を40℃に測定することで行った。
【0082】
(ゴムのゲル含量)
ゲル含量の測定は、ゴムサンプル1gをトルエン50mlに溶解し、室温にて24時間攪拌して行った。
ゴムのトルエン溶液は予め重量を測定してあるNo.250メッシュのろ過器を使ってろ過した後、トルエンで数回洗浄した。膨潤したゲルを濾したろ過器は、100℃の真空状態で30分間乾燥し、デシケーター中で保管され、その後、重量が測定される。
ゲル含量(%)は以下の式で計算される。
【0083】
【数2】

【0084】
(ゴムの熱安定性)
熱安定性は、島津製作所製Shimadzu TGA−50を用いた熱重量分析(TGA)にて行った。測定条件は、毎分10℃の昇温速度で30〜600℃にて上昇させた後、600℃で15分間保持した。
【0085】
(ムーニー粘度)
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)測定は、JIS K−6300に準拠して行った。
【0086】
(Payne効果)
動的歪み掃引分析は、温度120℃と150℃にて、周波数を1Hzに固定した条件で、Alpha Technologies社製ゴム加工性解析装置RPA−2000を使って行った。
【0087】
(加硫時間測定)
ゴムの加硫時間は、ゴム組成物の加硫状態が90%進行した時間(t90)として測定した。測定装置は、Alpha Technologies社製のRPA−1000を用い、温度150℃にて、周波数を1Hzおよび角度0.5度に固定した条件で測定し、JIS K−6300−2に準拠して行われた。
【0088】
(加硫ゴムの粘弾性測定)
動的温度掃引分析は、EPLEXOR 100N(ドイツ国GABO社製)を用いて、温度−120〜100℃の間で、周波数を16Hzおよび角度0.5度に固定した条件で測定した。
【0089】
(発熱特性)
発熱特性と圧縮永久歪の測定は、Goodrich Flexometer(上島製作所社製)を用いて、温度100℃、重量55ポンド、ストローク長0.175インチ、振動数毎分1800回の条件にて、JIS K−6265および米国規格ASTM D−623(ISO 4666/3:1982)に準拠して行われた。
【0090】
(破壊特性(引張特性))
破壊特性における引張強度や引張伸びの測定は、JIS K−6251に準拠して、TENSILON RTG−1310張力計(A&D社製)を用いて行われた。
【0091】
(耐摩耗特性)
耐摩耗性の測定は、ランボーン摩耗抵抗機を用い、20%のスリップ速度にてJIS K6265に準拠して行われた。
【0092】
以下にポリメチルメタクリレート−グラフト化BR150L(PMMA−g−BR150L)の合成方法を示す。
(実施例1)
窒素雰囲気下にて攪拌翼、還流器、熱電対を伴った1リットルのガラス反応器がオイルバスに設置され、その中に使用前に窒素で1時間バブリングし、かつモレキュラーシーブスで脱水しておいた350mlのトルエン溶媒を入れた後、窒素が加圧状態で小さくカットした10g(0.185mol)の1,4−シス-ポリブタジエン(BR150L)小片を入れた。BR150Lを室温、1.5〜2時間、攪拌速度350〜400(回/分)にてトルエン溶液に溶かす。その後、0.72g(TEMPOとBPOのモル比=1.0になるよう)の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)を窒素雰囲気下で投入する。その後、メチルエチルケトンとメタノールの混合溶液にて再結晶化した1.12g、即ち0.185mol(2.5%グラフト率)に相当するジベンゾイルパーオキシド(BPO)を窒素雰囲気下で投入する。
温度を85℃に上げ、その温度にて攪拌速度350(回/分)かつ30分間熟成をする。その後、24.7mlのCaH上、減圧蒸留したメチルメタクリレート(MMA)(グラフトサイトに対するMMAのモル比DPn=50になるように)をシリンジからゴム膜を貫通させることで反応器に加えた。ガスタイトシリンジで採取した0.5mlのトルエン溶液のサンプルを直ぐにメタノールとイソプロパノール(1ml)の混合冷媒10mlに投入して、沈殿させた。
グラフト共重合反応は、温度85℃、攪拌速度350(回/分)にて4時間行った。4時間後、0.5mlのトルエン溶液サンプルが再度ガスタイトシリンジで抜き出され、直ぐにメタノールとイソプロパノール(1ml)の混合冷媒10mlに投入して、沈殿させた。重合前後でのアルコール溶液は、沈殿したゴムを取り除くためにろ過され、次いでMMAの転化率を決定するのにガスクロマトグラフに注入した。
反応器を40℃以下に冷却し、直ぐに反応器のトルエン溶液を冷やした大容量のメタノール中に投入して沈殿させ、攪拌しながら1時間保った。
ろ過後、沈殿したゴムを70℃で4時間、重量が一定になるまで真空乾燥した。
乾燥したゴムを55℃、3時間、アセトン還流で抽出し、ろ過した。
アセトン溶液を大容量のメタノールにて再沈し、抽出したPMMAホモポリマーをろ過、70℃で重量が一定になるまで乾燥した。アセトンで抽出したPMMAグラフト化BR150Lを、FT−IR、GPC、TGAおよびゲル量の測定をした。PMMAホモポリマーのサンプルも同様に、FT−IR、GPCで測定を行った。
【0093】
(実施例2)
実施例2のPMMAグラフト化BR150Lは、MMA/graft モル比(DPn)を75にした以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0094】
(実施例3)
実施例3のPMMAグラフト化BR150Lは、MMA/graft モル比(DPn)を75にし、かつ重合温度を85℃から90℃に上昇させた以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0095】
(実施例4)
実施例4のPMMAグラフト化BR150Lは、MMA/graft モル比(DPn)を100にした以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0096】
(実施例5)
実施例5のPMMAグラフト化BR150Lは、MMA/graft モル比(DPn)を75にし、かつTEMPO/BPO モル比を0.9にした以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0097】
(実施例6)
実施例6のPMMAグラフト化BR150Lは、MMA/graft モル比(DPn)を75にし、かつTEMPO/BPO モル比を0.7にした以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0098】
(実施例7)
実施例7のPMMAグラフト化BR150Lは、MMA/graft モル比(DPn)を75にし、かつTEMPO/BPO モル比を0.5にした以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0099】
(実施例8)
実施例8のPMMAグラフト化BR150Lは、トルエン溶液中のゴム濃度が0.043g/ml、MMA/graft モル比(DPn)を50にし、かつTEMPO/BPO モル比を0.95にした以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0100】
(実施例9)
実施例9のPMMAグラフト化BR150Lは、トルエン溶液中のゴム濃度が0.043g/ml、MMA/graft モル比(DPn)を75にし、かつTEMPO/BPO モル比を0.95にした以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0101】
(実施例10)
窒素雰囲気下にて攪拌翼、熱電対(還流器なし)を伴った1.5リットルのステンレス製反応器に使用前に窒素で1時間バブリングし、かつモレキュラーシーブスで脱水しておいた700mlのトルエン溶媒を入れた後、窒素が加圧状態で、小さくカットした20g(0.37mol)の1,4−シス−ポリブタジエン(BR150L)小片を入れた。
BR150Lを室温、1.5〜2時間、攪拌速度350〜400(回/分)にてトルエン溶液に溶かす。その後、1.37g(TEMPOとBPOのモル比=0.95になるよう)の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)を窒素雰囲気下で投入する。
その後、メチルエチルケトンとメタノールの混合溶液にて再結晶化した2.24g、即ち0.37molの2.5mol%(2.5%グラフト率)に相当するジベンゾイルパーオキシド(BPO)を窒素雰囲気下で投入する。
温度を85℃に上げ、その温度にて攪拌速度350(回/分)かつ30分間熟成をする。この時点で、反応器内の圧力は、約1.5kgf/cmとなる。
熟成を30分後、74.2mlのCaH上、減圧蒸留したメチルメタクリレート(MMA/グラフトサイトに対するMMAのモル比DPn=75になるように)を反応器に取り付けられたステンレスチューブから加える。この際、窒素圧力3kgf/cmの下、窒素パージを三回繰り返して反応器に加える。ガスタイトシリンジで採取した0.5mlのトルエン溶液のサンプルを直ぐにメタノールとイソプロパノール(1ml)の混合冷媒10mlに投入して、沈殿させた。
グラフト共重合反応は、温度85℃、攪拌速度350(回/分)にて反応圧力約2〜2.5kgf/cmの下、4時間行った。4時間後、0.5mlのトルエン溶液サンプルが再度ガスタイトシリンジで抜き出し、直ぐにメタノールとイソプロパノール(1ml)の混合冷媒10mlに投入して、沈殿させた。重合前後でのアルコール溶液は、沈殿したゴムを取り除くためにろ過され、次いでMMAの転化率を決定するのにガスクロマトグラフに注入した。
反応器を40℃以下に冷却し、反応器内圧力をベントバルブから放出した。
直ぐに反応器のトルエン溶液を冷やした大容量のメタノール中に投入して沈殿させ、攪拌しながら1時間保った。
ろ過後、沈殿したゴムを70℃で4時間、重量が一定になるまで真空乾燥した。
乾燥したゴムを55℃、3時間、アセトン還流で抽出し、ろ過した。
アセトン溶液を大容量のメタノールにて再沈し、抽出したPMMAホモポリマーをろ過、70℃で重量が一定になるまで乾燥した。
アセトンで抽出したPMMAグラフト化BR150Lを、重量が一定になるまで70℃で乾燥した。PMMAグラフト化BR150Lサンプルは、FT−IR、GPC、TGAおよびゲル量の測定をした。PMMAホモポリマーのサンプルも同様に、FT−IR、GPCで測定を行った。
【0102】
(参照実験A)
参照実験1の変性したBR150Lは、MMAを加えていないこと、トルエン溶液中のゴム濃度が0.043g/ml、TEMPO/BPOモル比を1、かつ反応時間を4.5時間にした以外は、前記実施例1と同様の方法で合成した。
【0103】
(実施例11)
実施例11のPMMAグラフト化BR150Lは、開始剤BPOの代わりに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル),AIBNを使用した以外は、実施例1と同様の方法で合成した。また、トルエン溶液中のゴム濃度は0.043g/ml、AIBN/グラフトサイトのモル比は0.7である。
【0104】
(実施例12)
実施例12のPMMAグラフト化BR150Lは、AIBN/グラフトサイトのモル比を1.0にした以外は、実施例11と同様の方法で合成した。
【0105】
(実施例13)
実施例13のPMMAグラフト化BR150Lは、AIBN/グラフトサイトのモル比を1.0、TEMPO/AIBNモル比を0.95にした以外は、実施例11と同様の方法で合成した。
【0106】
(実施例14)
実施例14のPMMAグラフト化BR150Lは、AIBN/グラフトサイトのモル比を1.0、TEMPO/AIBNモル比を0.90、およびMMA/グラフトサイトのモル比を75にした以外は、実施例11と同様の方法で合成した。
【0107】
(実施例15)
実施例15のPMMAグラフト化BR150Lは、開始剤BPOの代わりに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を使用し、TEMPO/AIBNのモル比を0.90にした以外は、実施例10(ステンレス製オートクレーブ中の実験)と同様の方法で合成した。
【0108】
(実施例16)
実施例16のPMMAグラフト化BR150Lは、AIBN/グラフトサイトのモル比を1.0、重合温度を85℃から90℃にした以外は、実施例11と同様の方法で合成した。
【0109】
(参考例B)
参照実験2の変性したBR150Lは、MMAを使用しないこと、AIBN/グラフトサイトのモル比を1.0、重合時間を4.5時間にした以外は、実施例11と同様の方法で行った。
【0110】
シリカ配合ゴム組成物の実施例は以下の通りである。
表3に実施例A〜Cおよび比較例DとE(加硫物1〜5について)の詳細を示す。
(実施例A〜Cおよび比較例DとE)
開始温度が90℃、終了温度が150℃、混合時間が5分間以内で容量250mlの東洋精機社製ラボプラストミル中で混錬することで、天然ゴムと市販グレードのシス−1,4−ポリブタジエン(UBEPOL BR150L)であるジエン系ゴム成分が、最初にポリメチルメタクリレートグラフト化BR150L (PMMA−g−BR150Lと略記)と共にブレンドされた。ここで、このPMMA−g−BR150Lのポリメチルメタクリレート(PMMAと略記)のグラフト率(PGと略記)は実験により様々に変更している。
その後、沈降シリカ(Nipsil VN3)が、シランカップリング剤(Si69)や混合前成分であるシリカ、アロマオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸および酸化防止剤(6C)が加えられ、ブレンドされた。
混合工程から得られた第一ゴム組成物は、6インチのミキシングロールを用い、温度30〜60℃にて延伸された。そのサンプルは、ムーニー粘度測定とAlpha Technologies社製 RPA−2000を用いて、Payne効果解析が行われた。
加硫予備工程においては、得られた第1ゴム組成物シートが、6インチのミキシングロールを用い、温度30〜60℃にて、硫黄と加硫促進剤(CZ and D)と共に加えられ、さらに延伸されてシート化された。得られた第2ゴム組成物のサンプルは、ムーニー粘度測定とAlpha Technologies社製 RPA−2000を用いて、Payne効果解析と加硫時間(t90)測定が行われた。
加硫予備工程から得られたシリカ配合ゴム組成物は、実際の加硫時間(2t90)にて温度150℃で成形加工された。本願発明における様々な形態のゴム加硫物サンプルは、温度掃引による粘弾性、引張強度、発熱特性、さらに耐摩耗性(ランボーン摩耗)を測定するために用いられた。
【0111】
(参考例)
参考例のシリカ配合ゴム組成物は、PMMAグラフト化BR150Lを使用していないことを除いては、実施例A〜Cおよび比較例D、Eと同様の方法で調製した。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体をニトロキシド化合物を用いたラジカル重合(NMP法)を使用することによりグラフト変性した共役ジエン系ゴム。
【請求項2】
該(メタ)アクリル酸エステル系重合体がポリアルキルアクリレートであることを特徴とする請求項1に記載のグラフト変性した共役ジエン系ゴム。
【請求項3】
該共役ジエン系ゴムが1,4−シス構造を持ち、かつその割合が94〜99%である事を特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のグラフト変性した共役ジエン系ゴム。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体をニトロキシド化合物を用いたラジカル重合(NMP法)を使用することによりグラフト変性した共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項5】
該グラフト変性した共役ジエン系ゴム(A)、(A)以外の加硫可能なゴム(B)さらにゴム補強剤(C)を加える事を特徴とするゴム補強剤配合ゴム組成物。
【請求項6】
該グラフト変性した共役ジエン系ゴム(A)、(A)以外の加硫可能なゴム(B)さらにゴム補強剤を加える事を特徴とするゴム補強剤配合ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
該ゴム補強剤(C)がシリカであることを特徴とする請求項5〜6のいずれかに記載のゴム補強剤配合ゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−168643(P2011−168643A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31333(P2010−31333)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】