説明

共押出金型とそのマニホールドシステム

本発明は、熱可塑性樹脂材料からなる多層構成のフィルムまたはシートを製造するための共押出金型に関する。 共押出金型は、金型出口と、コア層を製造するための第1の金型部分と、第1の表面層を製造するための第2の金型部分であって、当該第2の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは、熱可塑性樹脂材料の溶融流の一部が第2の金型部分の幅の1倍以上にわたって横断するようになっている流路を備えている第2の金型部分と、第2の表面層を製造するための第3の金型部分であって、当該第3の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは、熱可塑性樹脂材料の溶融流の一部が第3の金型部分の幅の1倍以上にわたって横断するようになっている流路を備えている第3の金型部分とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートを製造するための押出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共押出金型は、様々な製品を作る製造工程において使用されている。 例えば、ある種の押出金型は、プラスチック材料を薄いフィルム、シート、あるいは延展した形状に成形するために使用される。 薄いフィルムを複数層状に重ねたフィルムを製造することによって、多くの利点を実現することができる。 それは、かかる構成のフィルムでは、単層構成のフィルムではなし得ない性質を組み合わせることができるからである。 もともと、かかる多層構成の製品は、別々に形成したフィルムまたはシートを、接着剤、熱、あるいは圧力をかけて一緒に積層することによって作られていた。
【0003】
別々の溶融した層を構成する2つ以上の異なった材料(例えば、熱可塑性樹脂材料)を、一つの積層材料として構成するようにするために、加圧下において押出金型の中で一体化する工程を含んだ溶融積層成形法の技術が開発されている。 かかる工程では、接触境界面において混合されることなく、共通する流路において2つ以上の溶融した層を適切な操作条件下で一体化できる層流理論が使われている。 このような多層押出成形システムが同種材料または異種材料の多層材の成形に都合の良い方法として使用されるようになってきている。
【0004】
多層フィルムを押出成形するための種々の押出金型が製造されている。 かかる装置の一般的な形態として、種々の材料の層を一体化する第1の金型部分を使用したものがある。 一体化された材料は、その後平坦化され、第2の金型部分を通過して押し出される。 このようなタイプの装置の一例が米国特許US No. 5,316,703に開示されており、ここでこれを引用することにより、その全てが本明細書に取り入れられるものとする。 多層シートあるいは多層膜を製造する際、押し出されたシートの幅方向あるいは横方向(TD)に亘って均一な厚さを有することとの要求があり、このような要求の観点から、この種の装置の有効性に限界があった。 容易に理解できることではあるが、もし、樹脂層を形成する溶融樹脂の間において、粘度、温度、および流量が大きく異なっていれば、均一な厚さの多層構成のシートを得ることは困難になる。
【0005】
各層毎に個々の流路やマニホールドを備えた複数のマニホールドを有する金型システムが設計されており、通常、金型を出る直前に、各層が接触するようになっている。 最終的な金型の出口スロットの近傍において各層が合流するようになっているので、ある程度異なったレオロジー的特性を持った材料を処理することができる。 他の層と組み合わせる前に、所望の厚さで各層を形成することができ、かつ各層の流速を調整することによって、複数の層の間の流れの均一性を効果的に維持することができる。 各層が合流する点において、各層の流れが異なると、製品に不均一な部分が生じるために、以上のような議論が必要になる。
【0006】
金型組立は、モジュール化が可能であり、典型的には複数の部品から組み立てられており、一体化した装置として金型ステーションを形成している。 例えば、金型組立は、第1の金型部分と第2の金型部分から構成することができる。 この第1の金型部分と第2の金型部分は、流体を金型組立の中に取り込み、更にこの流体を金型組立から押し出すことができるようにしたコンポーネントを構成するものである。 第1の金型部分には、第1の金型リップ部が備えられ、第2の金型部分には第2の金型リップ部が備えられている。 そしてこれら第1および第2の金型リップ部の間には、金型組立から押し出される流体状フィルムの厚さを決定づけるフィードギャップ(溶融ポリマーを押し出す隙間)が形成されている。
【0007】
中央フィード型の押出金型は、今日の樹脂工業会においては一般的に使用されているものである。 マニホールドに入った溶融ポリマーの流れは、分岐し、その分岐の結果、マニホールドの両端部へ向う逆の方向に流れる支流に分割される。 各支流は、マニホールドの中心部からマニホールドの各端部へ流れるので、圧力低下が生じる。
【0008】
典型的には、中央フィード型の押出金型は涙滴状の形状をしたフラットなマニホールド(このフラットなマニホールドはコートハンガー状マニホールドの形態のものであっても良い)、尾びれ状マニホールド、あるいはT型マニホールドを備えている。 圧力降下に打ち勝ち、流れの横幅全体にわたって流れの容量が実質的に均一になるようにするために、この種の金型は、流体圧力を補償するための過渡領域の流路を備えている。 また、中央フィード型の押出金型は2段階状の流体圧力を補償するための過渡領域の流路を備えていることが知られている。 この種の装置は、U.S. Patent No. 4,372,739(Vetter 他) 、およびU.S. Patent No. 5,256,052(Cloeren)に例示されている。
【0009】
金型組立は、固定式の押出し隙間とすることも出来るし、フレキシブルな押出し隙間とすることも出来る。 固定式の押出し隙間の場合、金型リップ部は、相対的に互いに動くことはなく、押出し隙間の厚さ寸法は常に同じ寸法となるようになっている。 フレキシブルな押出し隙間の場合、金型組立の幅方向に亘って、フレキシブルな押出し隙間の厚さ寸法を調整できるようにするために、一方の側の金型リップ部を他方の側の金型リップ部に対して相対的に動かすことができるようになっている。 一般的に、フレキシブルな押出し隙間は、第1の金型部分が、第1の金型部分の後方部分と前方部分(この部分に第1の金型リップ部が当接する)の間にフレキシブルなウェブ部を備えるようにして第1の金型部分を組み立てることによって実現している。 そして、フレキシブルな押出し隙間は、局所的な領域において第1の金型部分の前方部分を動かす手段によっても実現している。 前方部分を動かすことによって、金型リップ部を他方の金型リップ部に対して相対的に位置調整することになり、その結果目的とする局所的な領域の押出し隙間の厚さを調節することになる。
【0010】
フレキシブルな押出し隙間を利用することによって、特定の運転状態に適合させるために、従来の金型組立の設計で、通常押出し隙間の局所的な調整を可能ならしめる。 しかし、一旦最初の調整が行われると(即ち、可動リップ部が元の調整位置から動くと)、元の位置に戻すことは、可能ではあっても、容易ではない。 また、金型が清浄ではなく、かつ特別な道具を用いない場合には、工業的に、かつ標準的に使用しているフレキシブルな金型の押出し隙間を、所定の隙間寸法に精度良く調整することは不可能である。
【0011】
マイクロポーラスなポリオレフィン膜のような特殊なフィルムの製造に関し、このようなフィルムを製造するための押出金型の設計において更なる要求事項が示されている。 マイクロポーラスなポリオレフィン膜は1次電池や、リチュームイオン2次電池、リチューム・ポリマー2次電池、ニッケル・水素2次電池、ニッケル・カドミュウム2次電池、ニッケル・亜鉛2次電池、銀・亜鉛2次電池等の2次電池のセパレータとして有用である。 マイクロポーラスなポリオレフィン膜が、電池のセパレータとして使用されるとき、特にリチュームイオン電池のセパレータとして使用されるとき、膜の性能は電池の特性、生産性、および安全性に極めて強い影響を与える。 従って、マイクロポーラスなポリオレフィン膜は、適切にバランスのとれた、透過性、機械的特性、寸法安定性、シャットダウン特性、溶融特性等を備えている必要がある。 ここで、「バランスのとれた」との用語は、これらの特性の一つを最適化することにより、別の特性を顕著に低下させてしまうものではないことを意味する。
【0012】
良く知られているように、電池の安全性を向上させるため、特に使用中高温に晒される電池にとって、比較的低いシャットダウン温度と比較的高い溶融温度を持つセパレータが求められている。 フィルムの厚さのような、均一な寸法特性は、高性能フィルムとしては不可欠なものである。 高い機械的強度を有するセパレータは、高性能な電池組立、高性能な信頼性を有する電池にとって望ましいものである。 マイクロポーラスなポリオレフィン膜の特性を向上させるために、材料組成、成形と延伸の条件、熱処理の条件等を最適化することは、これまでにも提案されてきている。
【0013】
一般に、マイクロポーラスなポリオレフィン膜は、実質上、ポリエチレン(即ち、この材料は、他の材料を顕著に含むことなくポリエチレンのみから構成されているものである)から構成され、比較的に低い溶融温度を有している。 従って、溶融温度を上げるために、ポリエチレンとポリプロピレンの樹脂を混合して作ったマイクロポーラスなポリオレフィン膜や、ポリエチレン層とポリプロピレン層を備えた多層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜が提案されてきている。 このような混合した樹脂を使用することや、異なったポリオレフィンの層を有する多層構成のフィルムを製造することは、フィルムの厚さのような均一な寸法特性を持ったフィルムを製造することを困難にしている。
【0014】
WO 2005/113657では、従来技術であるシャットダウン特性、溶融特性、寸法安定性、および高温強度特性を有するマイクロポーラスなポリオレフィン膜を開示している。 この膜は、(a) 低分子量のポリエチレンと高分子量のポリエチレンからなるポリエチレン樹脂組成物と、(b) ポリプロピレンと、から成るポリオレフィン組成物を使用して製造されている。 このマイクロポーラスなポリオレフィン膜は、いわゆる「ウェット・プロセス」と呼ばれる方法によって製造される。
【0015】
WO 2004/089627では、2以上の層からなり、少なくとも一つの表面層におけるポリプロピレン含有量が質量で50%以上、95%以上、あるいはそれ以下であり、膜全体におけるポリエチレンの含有量が質量で、50%〜95%である、ポリエチレンとポリプロピレンから作られたマイクロポーラスなポリオレフィン膜が開示されている。
【0016】
日本のJP7-216118Aでは、必須の構成要素としてのポリエチレンとポリプロピレンから成り、ポリエチレン含有率の異なった、少なくとも二つのマイクロポーラスな層を備えたポーラスなフィルムから形成された電池のセパレータが開示されている。 ポリエチレンの含有率は、一つのマイクロポーラスな層では0〜20重量%、他のマイクロポーラスな層では21〜60重量%、フィルム全体としては2〜40重量%となっている。 電池用セパレータは、比較的高いシャットダウン開始温度と機械的強度を有している。
【0017】
日本の実用新案JP U3048972では、押出金型のマニホールド内において、溶融したポリマーの流れが発散していくのを低減させるための、押出金型が提案されている。 提案された押出金型の設計においては、二つのスリット流を形成するようにするために二つのマニホールドを備えるようにしている。 溶融したポリマーは第1のマニホールドの端部にある第1の入り口と、第1の入り口と対向して配置された第2のマニホールドの端部にある第2の入り口に供給されるようになっている。 この二つのスリット流は、金型内部において合流するようになっている。 マニホールドの中で溶融ポリマーの流れが発散しないようにすることによって、金型内部での流れの分布が均一になるようにすることができることが理論付けされている。 これによって、フィルムまたはシートの横方向における板厚の均一性を向上させることができる。
【0018】
ここで述べたような先行技術が利点を有しているにもかかわらず、マイクロポーラスなポリオレフィン膜を製造できる共押出金型とマニホールドシステム、高品質な多層フィルムに対するニーズは依然として強い。
【発明の概要】
【0019】
ここで開示する発明は、熱可塑性樹脂材料からなる多層フィルムまたはシートを製造するための共押出金型に関するものである。 共押出金型は、
ポリマーと希釈剤の層状になった混合物が多層フィルムまたはシートとして押出される金型出口と、
コア層を製造するための第1の金型部分であって、当該第1の金型部分はフラットなマニホールドを有し、当該マニホールドは供給側注入口とスロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第1の金型部分と、
第1の表面層を製造するための第2の金型部分であって、当該第2の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは一つの流路を有し、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が当該第2の金型部分の幅の1倍以上にわたって横断するようになっており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第2の金型部分と
第2の表面層を製造するための第3の金型部分であって、当該第3の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは一つの流路を有し、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が当該第3の金型部分の幅の1倍以上にわたって横断するようになっており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第3の金型部分と、
を備えている。
【0020】
別の観点として、熱可塑性樹脂の多層フィルムまたはシートを製造するためのプロセスが提供されている。 このプロセスは、
第1のポリオレフィン溶液を準備するために、少なくとも第1のポリオレフィン組成物と少なくとも第1の溶剤とを混合するステップと、
第2のポリオレフィン溶液を準備するために、少なくとも第2のポリオレフィン組成物と少なくとも第2の溶剤とを混合するステップと、
共押出金型を通して第1のポリオレフィン溶液と第2のポリオレフィン溶液を共に押出すステップと、から成り、
当該共押出金型は、押出し材を形成するために
(i) 多層構成の押出し材を形成するために、当該ポリオレフィン溶液を押出す金型出口と、
(ii) 押出し材のコア層を製造するための第1の金型部分であって、当該第1の金型部分はフラットなマニホールドを有し、当該フラットなマニホールドは第2のポリオレフィン溶液用の供給側注入口と、スロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第1の金型部分と、
(iii) 押出し材の第1の表面層を製造するための第2の金型部分であって、当該第2の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは一つの流路を有し、第1のポリオレフィン溶液の一部が当該第2の金型部分の幅の1倍以上にわたって横断するようになっており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第2の金型部分と、
(iv) 押出し材の第2の表面層を製造するための第3の金型部分であって、当該第3の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは一つの流路を有し、第1のポリオレフィン溶液の一部が当該第3の金型部分の幅の1倍以上にわたって横断するようになっており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第3の金型部分と、
を備えている。
【0021】
ポリオレフィンの形状記憶特性は、共押出金型を出てくるフィルムまたはシートの横方向の板厚の均一性を維持する際に、一つの要素となることが分かった。 従来、シートやフィルムを押出成形、あるいは共押出成形する際に、形状記憶効果が生じることが観察されている。 そして、溶融ポリマーから成形された、このシートやフィルムなどの押出材は、わずかではあるが少量の溶剤を含有している。 ポリオレフィンと希釈剤の混合物を押出す際、希釈剤が存在することによってポリマー鎖の絡みつき(エンタングルメント)の数が低下するため、形状記憶効果は観察されないものと考えられていた。 従って、押出材の重量に対して、10重量%以上の範囲、または25重量%以上の範囲、または50重量%以上の範囲、または75重量%以上の範囲、の多くの量の溶剤を含有するポリマーの押出材において形状記憶効果が現れたことは、驚きであった。
【0022】
また、押出金型のマニホールド設計は、形状記憶特性に影響を受けることが分かった。 ここで例示する形態において、クロスフローマニホールドは、熱可塑性樹脂材料の形状記憶特性を実質的に低減するのに十分な長さの流路を提供するようになっている。
【0023】
更に、ここで開示する別の形態において、金型出口は、第1の金型リップ部とは第2の金型リップ部を有するスロットを設けた金型出口であり、第1の金型リップ部には、金型出口の長手方向に沿って配置された駆動手段を有するフレキシブルなリップ・バーを備えている。
【0024】
更に、ここで開示する別の形態において、第1の金型リップ部の駆動手段は、複数の個々のリップボルトを備え、調整部材に隣接する領域のスロットを設けた金型出口の幅を変えることができるようになっている。
【0025】
更に、ここで開示する別の形態において、表面層用の供給ブロックは、表面層用ポリオレフィン溶液(第1のポリオレフィン溶液)を、第1の流れ、および第2の流れに分流するようになっており、第1の流れは第1の表面層を製造するために、第2の金型部分の供給側注入口に供給され、第2の流れは第2の表面層を製造するために、第3の金型部分の供給側注入口に供給される。
【0026】
ここで開示する共押出金型とマニホールドシステムの、以上のような、あるいはその他の、利点、特徴、および特質、並びにこれらの有効な応用方法/及び又は使用方法は、以下に詳細に説明する事項によって、特に、ここで添付する図を参照することによって、明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、熱可塑性樹脂材料の多層構成のフィルムまたはシートを製造するための、共押出金型の端面の図を示したものである。
【図2】図2は、図1の2−2面に沿った第1の金型部分の側面図を示したものであり、熱可塑性樹脂材料の多層構成のフィルムまたはシートのコア層を製造するための、コートハンガー状マニホールドを示したものである。
【図3】図3は、図1の3−3面に沿った第2の金型部分の第1の部分の斜視図を示したものであり、熱可塑性樹脂材料の多層構成のフィルムまたはシートの表面層を製造するためのクロスフローマニホールドを示したものである。
【図4】図4は、図1の3−3面に沿った第2の金型部分の第2の部分の斜視図を示したものであり、熱可塑性樹脂材料の多層構成のフィルムまたはシートの表面層を製造するためのクロスフローマニホールドを示したものである。
【図5】図5は、熱可塑性樹脂材料の多層構成のフィルムまたはシートを製造するための共押出金型の側面図を示したものであり、外部の駆動手段を備えたフレキシブルなリップ・バーを示している。
【図6】図6は、熱可塑性樹脂材料の多層構成のフィルムまたはシートを製造するための共押出金型の模式図を示したものであり、熱可塑性樹脂材料(ポリマーと希釈剤を混合したもの)の個々の流路を示したものである。
【図7】図7は、コートハンガータイプの押出し金型の図を現わしたものであり、熱可塑性樹脂材料の流路を示している。
【図8】図8は、クロスフロータイプの押出し金型の図を現わしたものであり、熱可塑性樹脂材料の流路を示している。
【図9】図9は、2層フィルムの断面図を示したものである。
【図10】図10は、3層フィルムの断面図を示したものである。
【図11】図11は、3層フィルムの断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1-11を参照して説明する。 なお、これらの図においては、同じ部品には同じ番号を付して示してある。
【0029】
まず、図1-5には、熱可塑性プラスチック材料の多層構成のフィルムまたはシートを製造するための共押出金型10が示されている。 共押出金型10には、図示するようにスロットを設けた金型出口である金型出口12が設けられており、この金型出口を通って、ポリマーと希釈剤の混合物が多層構成のフィルムまたはシート(押出し材)として押出されるようになっている。 共押出金型10には、コア層または中間層を製造するための第1の金型部分14が設けられている。
第1の金型部分14は、フラットなマニホールドを備えており、このマニホールドは、図示するようにコートハンガー状マニホールド16の形態のものであっても良いし、尾びれ状マニホールド、あるいはT型マニホールドであっても良い。 図2に示すように、コートハンガー状マニホールド16は先端部20に供給側注入口18を備えており、更にスロットを設けた金型出口12に連通した圧力マニホールド32を備えている。
【0030】
共押出金型10は、更に第1の表面層を製造するための第2の金型部分24を備えている。 図3および4に詳細に示すように、第2の金型部分はクロスフローマニホールド26(a)を備えている。 これらの図から分かるように、クロスフローマニホールドは流路28を備えており、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が第2の金型部分24の横幅方向長さの1倍以上の長さに亘って、横方向に横断するようになっている。 クロスフローマニホールド26(a)は、更に供給側注入口30とスロットを設けた金型出口12に連通した圧力マニホールド32を備えている。
【0031】
3層構成のフィルムまたはシートが必要な場合、第2の表面層を製造するための第3の金型部分34を用意する。 第3の金型部分34にも、クロスフローマニホールド24が備えられている。 第2の金型部分24と同様に、第3の金型部分34のクロスフローマニホールド26(b)は、流路28を有し、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が第3の金型部分34の横幅方向長さの1倍以上の長さに亘って、横方向に横断するようになっている。 第3の金型部分34のクロスフローマニホールド26は、供給側注入口30とスロットを設けた金型出口12に連通した圧力マニホールド32を備えている。
【0032】
後述するように、ポリオレフィンと希釈剤の混合物から、多層構成であってマイクロポーラスなポリオレフィン膜のフィルムやシートを成形する際に、これらの材料の特性として、形状記憶に関する固有の性質を示す。 当業者において知られているように、形状記憶プラスチックは、熱可塑フェーズと凍結フェーズの二つのフェーズを有している。 最初の形状は、凍結フェーズにおいて記憶され、プラスチックが仮の形状に変形させられたとしてもその形状から元の形状に戻るという形状記憶効果を有する。 良く知られているように、ポリマーの重合鎖は、溶融状態において、あるいは摂動の無い状態での溶液において理想的な立体的形状(ガウシアン・コイル)を有している。 例えば、せん断流のような外力によってポリマーが変形した際、ポリマーをポリマーの軸方向へ広げてやることにより、ポリマーの形状は緩和し、理想的なガウシアン・コイルの状態にもどるようになる。 この緩和時間はエンタングルメントの数に強く依存する。 従って、ポリマーの分子量が大きく、かつ溶液のポリマー濃度が高いほど長い緩和時間が必要になる。
【0033】
ポリオレフィンと希釈剤の混合物の形状記憶特性は、これがフィルムまたはシートとして共押出金型をでてくるときにフィルムまたはシートの幅方向の厚さの均一性を確保する際に問題となってくる。 マニホールドの設計は、この現象に対して影響を及ぼし、マニホールドの設計によってはこの現象を修正するこができることが分かっている。 そのため、ある実施の形態においては、第2の金型部分24のクロスフローマニホールド26と第3の金型部分34のクロスフローマニホールドの各々は、押出し材の形状記憶特性を実質的に無くしてしまうことができる十分な幅方向長さの流路を備えている。 別の実施の形態においては、2層構成のフィルムまたはシートを製造する必要がある場合、第2の金型部分24のクロスフローマニホールド26は、押出し材の形状記憶特性を実質的に無くしてしまうことができる十分な幅方向長さの流路を備えている。
【0034】
別の実施の形態においては、第2の金型部分24のクロスフローマニホールド26と第3の金型部分34のクロスフローマニホールドの各々は、少なくともポリマーと希釈剤の混合物の一部が、第2の金型部分24の幅方向長さと第3の金型部分34の幅方向長さのそれぞれの長さの少なくとも2倍の長さを幅方向に流れるようにした流路を有している。 更に、別の実施の形態であって、2層構成のフィルムまたはシートを製造する必要がある場合、第2の金型部分24のクロスフローマニホールド26は、少なくともポリマーと希釈剤の混合物の一部が、第2の金型部分24の幅方向長さの少なくとも2倍の長さを幅方向に流れるようにした流路を有している。
【0035】
特に、図1, 4, および5に示すように、共押出金型10のスロットを設けた金型出口12は、第1の金型リップ部36と第2の金型リップ部38を備えており、第1の金型リップ部36は、金型出口の長手方向に沿って配置された駆動手段42を有するフレキシブルなリップ・バー40を備えている。 図からも分かるように、外部駆動手段42は、複数の個々のリップボルト44を備えている。 各リップボルト44は、各調整部材に隣接する領域のスロットを設けた金型出口12の幅を変えることができるようになっている。
【0036】
特に、図6を参照すると、共押出金型10には表面層用の材料の流れを第1の流れS1と、第2の流れS2とに分流するための表面層用の供給ブロック46を備えるようにすることができる。 第1の流れS1は、第1の表面層を製造するために第2の金型部分24の供給側注入口30に供給され、第2の流れS2は、第2の表面層を製造するために第3の金型部分34の供給側注入口30に供給される。
【0037】
別の実施の形態では、2層構成のフィルムまたはシートが製造され、共押出金型10には、第1の表面層を製造するために、材料を第2の金型部分24の供給側注入口30に供給する表面層用の供給ブロック(図示せず)が備えられている。
【0038】
特に、図6に示す一つの実施の形態において、共押出金型10には、コートハンガー状マニホールド16の先端部分20に、供給側注入口18に流体的に連通したコア層用の供給入り口48が備えられている。
【0039】
ここで開示する共押出金型およびマニホールドシステムは、「ウエット」でマイクロポーラスなポリオレフィン製の膜状フィルムやシートの成形工程を含む、さまざまな工程において、ポリオレフィンと希釈剤の混合物、例えばポリオレフィン溶液を金型から共押出しする際に生じる困難な問題を解決することができる。 多層構成のマイクロポーラスな膜を製造するためのウエットプロセスは、例えば、PCT公開公報WO2008/016174、米国特許公開公報US2008/0057388、US2008/0057389に開示されており、ここでこれらを引用することにより、これらの全ては本明細書に組み入れられるものである。 図7に示すように、ここで言う困難な問題とは、コートハンガー状マニホールド(CH)を備えた金型100が、単一層のマイクロポーラスなポリオレフィン製の膜状フィルムやシート102を押出し成形するために使用されるとき、押出し材に生じる形状記憶効果に起因して、押出し材の横方向において板厚が不均一になってしまうという点にある。 理解できることではあるが、押出し材における形状記憶効果は、ポリオレフィンと希釈材の混合溶液「S」の金型のマニホールド104内での流れに対して直角方向に作用する傾向にある。 コートハンガー状マニホールドを備えた金型100においては、マニホールド内の流れの主たる方向は金型リップ部106の方へ向かうため、形状記憶効果は押出し材の横方向に生じやすくなる。 このため、押出し材内における材料の再配分を生じさせ、押出し材の横方向に沿って、その中心方向へ材料が集まる傾向にある。
【0040】
次に図8に示す単一層の押出金型を参照すると、この問題は、クロスフローマニホールド(CF)を備えた金型200を使用することによって解決することができることが分かった。 ここで、混合物Sは、混合物Sが金型リップ部206に接近する前に、少なくとも金型のマニホールド204の幅の2倍にわたって横切るようになっている。 理解できることではあるが、このようにすることによって、金型のマニホールド部分における混合物Sの大部分が金型リップ部206に平行に流れるようになる。 その結果、形状記憶効果は主に機械の方向(長手方向)に生じるようになり、押出し材の横方向においてより均一な板厚分布を得ることができるようになる。
【0041】
クロスフローマニホールドを備えた金型を使用して作られたフィルムやシートにおいて、幅方向における形状記憶効果が無いという事実は、クロスフローマニホールドを備えた金型から押出された1つの層とコートハンガー状マニホールドを備えた金型から共押出しされた第2の層から成る2層構成の共押出しされたフィルムやシートを製造する際にも役立つということが経験的に知られている。 しかし、図9に示した押出し材300の断面からも見られるように、このような場合だけではないことが分かってきた。 図示するように、2つの層302と304の密着した平面状の接触面があると、コートハンガー状マニホールドを備えた金型から押出しされた層302の形状記憶効果を打ち消すには十分にはなりえない。 その結果、2層構成の共押出しされたフィルムまたはシートを作る際の興味深い知見によって、クロスフローマニホールドを備えた金型を組合せて使用するという考え方に到達した。 しかし、ポリオレフィンと希釈剤の混合物から共押出しされた3層構成のフィルムまたはシートを作るために3つのクロスフローマニホールドを備えた金型を使用すると、金型が非常に高価になると共に、金型が複雑になって製造が困難に成るという問題を有している。
【0042】
次に図10を参照する。 ここで開示する共押出金型とマニホールドシステムは、以下のような発見に基いて設計されたものである。 すなわち、表面層402用のクロスフローマニホールドを備えた金型を使って製造された3層構成の押出し材400は、大きな平面状のインターフェース面を有しているため、コートハンガー状マニホールドを備えた金型を使って製造されたコア層404の材料の位置を修正するものと考えられている。 このことは、形状記憶効果の結果としてコア層404に生じる幅方向における厚さの変化の大部分を打ち消すものである。 図9に示す2層構成のフィルム300の場合に得られた結果によって、当業者は、クロスフローマニホールドを備えた金型/コートハンガー状マニホールドを備えた金型/ クロスフローマニホールドを備えた金型の構成の共押出金型よりも、クロスフローマニホールドを備えた金型/クロスフローマニホールドを備えた金型/クロスフローマニホールドを備えた金型の構成の共押出金型を使用するようになっていたので、上述した結果は予測できないものであった。
【0043】
図10に描かれているように、コア層404用としてコートハンガー状マニホールドを備えた金型が使用され、表面層402用としてクロスフローマニホールドを備えた金型が使用された場合であっても、コア層404の厚さの不均一性は、わずかではあるが生じていた。 再び図7を参照すると分かるように、このことは、コア層404の形状記憶効果の結果として生じたものではなく、金型マニホールド104内におけるせん断変形下において、ポリオレフィンと希釈剤の混合物Sの見かけ密度が増加することによって生じたものである。 そして、このことによって金型100の外側縁に近い金型のチャンネル(経路)108の端部にポリオレフィンと希釈剤の混合物Sが十分に接近できない状態が生じているのである。 金型のチャンネル内における混合物Sの見かけ密度が高いので、金型リップ部106の幅方向の縁近くにおける利用可能な混合物Sの量は、レオロジー(流動学)上の試験によって計測された粘度に基いて予測を行った利用可能な混合物Sの量よりも少なくなっている。 金型リップ部106の端部近くにおいて利用可能なコア層の材料が不十分であることが、図10に示すコア層の厚さの不均一性の原因と考えられている。
【0044】
この問題に対応するために、一つの実施の形態においては、コア層用のコートハンガー状マニホールドを備えた金型100の圧力マニホールドは、その圧力マニホールドの中央部の断面積より、幅方向における端部108近傍の断面積を大きくするようにしている。 このようにすることによって、共押出しされた3層構成のフィルムまたはシートのコア層の幅方向の厚さの変動の程度を顕著に低減させるために、コア層用のポリオレフィン溶液Sは、金型リップ部106の幅方向における端部近傍において十分な量を利用可能にすることができるようになる。 図11に示すように、圧力マニホールドの幅方向における端部近傍の断面を大きくすることによって修正したコートハンガー状マニホールド構造を有する金型を使って製造した、3層構成の共押出しされたマイクロポーラスなポリオレフィン膜のフィルムまたはシートは、均一な断面を有する1対の表面層502とコア層504を有するフィルムまたはシートとなっている。 上述したように、この共押出金型は、クロスフローマニホールドを備えた金型/クロスフローマニホールドを備えた金型/クロスフローマニホールドを備えた金型の構成の共押出金型に比較して、複雑な構造ではなく、かつ高価ではない。 また、この共押出金型は、従来のクロスフローマニホールドを備えた金型/コートハンガー状マニホールドを備えた金型/ クロスフローマニホールドを備えた金型の構成の共押出金型に較べ、ポリオレフィンと希釈剤の混合物の幅広い範囲の特性のものに適合することができる。 その結果、フィルムの製造プロセス中の金型の中におけるポリオレフィンと希釈剤の混合物の粘度に較べ、試験によって計測された混合物の粘度が大きく異なるという特性を有するポリオレフィンと希釈剤の混合物に対して、幅方向のフィルム厚さの均一性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0045】
上述したように、ここで開示した共押出金型とマニホールドシステムは、多層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜のフィルムまたはシートを成形するのに有用である。 そしてこのようなフィルムまたはシートは厳しい条件下で使用される電池のセパレータとして使用する際に、特に有用なものとなる。 一つの形態において、多層の、マイクロポーラスなポリオレフィン膜は、二つの層から構成される。 第1の層(例えば、膜の表皮層、外側層、上側層)は、第1のマイクロポーラス層の材料からなり、第2の層(例えば、膜の底層、下側層、コア層)は、第2のマイクロポーラス層の材料からなる。 例えば、膜の横方向と長手(機械)方向に対してほぼ直角な軸の上方から見た場合に、当該膜は平坦な上側層が見え、膜の平坦な底層は上側層に隠れて見えない。
【0046】
別の形態として、多層の、マイクロポーラスな膜であって、3層またはそれ以上の層からなる膜では、外側層(又は表面層、表皮層ともいう)は、第1のマイクロポーラス層の材料からなり、少なくとも1つのコア側層または中間層は、第2のマイクロポーラス層の材料からなる。 これに関連する形態として、多層の、マイクロポーラスなポリオレフィンの膜であって、2層からなる膜では、第1の層は第1のマイクロポーラス層の材料からなり、第2の層は第2のマイクロポーラス層の材料からなる。 更に、これに関連する形態として、多層の、マイクロポーラスなポリオレフィンの膜であって、3層またはそれ以上の層からなる膜では、外側層は、第1のマイクロポーラス層の材料からなり、少なくとも1つの中間層は、第2のマイクロポーラス層の材料からなる。
【0047】
前述したフィルムまたはシートの製造に有用な出発材料について以下に説明する。 当業者であれば理解できることであるが、押出金型とクロスフローマニホールドの原理を利用したマニホールドシステムを使用する限り、どのような出発材料を選択するかはクリティカルなことではない。 ここで開示した金型を使用してマイクロポーラスなフィルムを製造する際に、適切なポリマー、溶剤、およびこれらの量については、例えばPCT国際公開No. WO2008/016174、US2008/0057388、およびUS2008/0057389に説明されている。 一つの形態において、第1および第2のマイクロポーラス層の材料はポリエチレンから製造される。 一つの形態において、第1のマイクロポーラス層の材料は、約1 x 106以下のMw値を有する第1のポリエチレン(PE-1)または少なくとも約1 x 106のMw値を有する第2のポリエチレン(UHMWPE-1)から製造される。 一つの形態において、第1のマイクロポーラス層の材料には、第1のポリプロピレン(PP-1)が含まれる。 一つの形態において、第1のマイクロポーラス層の材料は、(1)ポリエチレン(PE)、(2)超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、(3)PE-1とPP-1、(4)PE-1、UHMWPE-1およびPP-1の内のいずれかから構成される。
【0048】
上記(2)と(4)一つの形態においてUHMWPEは約1 x 106から約15 x 106の範囲のMw値を有するものが望ましく、あるいは約1 x 106から約5 x 106の範囲のMw値を有するものが更に望ましく、あるいは約1 x 106から約3 x 106の範囲のMw値を有するものが更に望ましい。 そして、PCT国際公開No. WO2008/016174に記載されているようなハイブリッド構造を持ったマイクロポーラス層を得るために、UHMWPE-1はPE-1とUHMWPE-1の合計量に対して約7重量%以下のものが望ましく、少なくともホモポリマーあるいはコポリマーのいずれであっても良い。 上記(3)と(4)の一つの形態において、PP-1は、少なくともホモポリマーあるいはコポリマーのいずれであっても良く、また第1のマイクロポーラス層の材料の総量に対して約25重量%以下の含有量であることが望ましく、約2重量%から約15重量%であれば更に望ましく、約3重量%から約10重量%であれば更に望ましい。 一つの形態において、第1のマイクロポーラス層の材料におけるポリオレフィンのMw値は、後で定義するようなハイブリッド構造を持ったマイクロポーラス層を得るために、約1 x 106以下であっても良いし、約1 x 105から約3 x 106の範囲、あるいは約2 x 105から約3 x 106の範囲であっても良い。 一つの形態において、PE-1は、約1 x 104から約5 x 105の範囲のMw値を有するものが望ましく、あるいは約2 x 105から約4 x 105の範囲のMw値を有するものが更に望ましい。 そして、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐した低密度ポリエチレン、あるいは直鎖状低密度ポリエチレンの内の一つ以上であっても良く、少なくともホモポリマーあるいはコポリマーのいずれであっても良い。
【0049】
一つの形態において、第2のマイクロポーラス層の材料は、(1)少なくとも約1 x 106のMw値を有する第4のポリエチレン(UHMWPE-2)、(2)1 x 106以下のMw値を有する第3のポリエチレンとUHMWPE-2、並びに第4のポリエチレン、ここで第4のポリエチレンは、第3のポリエチレンと第4のポリエチレンの合計質量に対し、少なくとも約8%の質量含まれ、(3)UHMWPE-2とPP-2、(4)PE-2、UHMWPE-2、およびPP-2の内の一つから構成される。 上記した(2)、(3)、および(4)の形態において、UHMWPE-2は、相対的に強い多層材であるマイクロポーラスなポリオレフィン膜を製造するために、UHMWPE-2、PE-2、およびPP-2の総量に対して少なくとも約8重量%、あるいは少なくとも約20重量%、あるいは少なくとも約25重量%を含有することができる。上記した(3)および(4)の形態において、PP-2は、少なくともホモポリマーあるいはコポリマーのいずれであっても良く、また第2のマイクロポーラス層の材料の総量に対して25重量%以下、あるいは約2重量%から約15重量%の範囲、あるいは約3重量%から約10重量%の範囲の量を含有することができる。 一つの形態において、好ましいPE-2としては、PE-1と同じものとすることができるが、独立して選択することもできる。 一つの形態において、好ましいUHMWPE-2としては、UHMWPE-1と同じものとすることができるが、独立して選択することもできる。
【0050】
第1、第2、第3、第4のポリエチレンと第1、第2のポリプロピレンの他に、第1および第2の層の材料の各々には、オプションとして、1以上の追加されたポリオレフィン、及び/又はポリエチレンワックス(例えば、US2008/0057388に記載されているような、約1 x 103から約1 x 104の範囲のMw値を有するもの)を含むことができる。
【0051】
一つの形態において、2層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜を製造するプロセスが提供され、このプロセスにおいて、ここで開示するタイプの押出金型とマニホールドシステムが使用される。 別の形態において、マイクロポーラスなポリオレフィン膜は少なくとも3層構成となっており、図1−6に示すタイプの共押出金型とマニホールドシステムを使用して製造される。 マイクロポーラスなポリオレフィン膜の製造については、主に2層構成と3層構成の膜として説明することとする。
【0052】
一つの形態において、3層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜は、マイクロポーラスなポリオレフィン膜の外側層をなす第1および第3のマイクロポーラスな層と、第1および第3の層の間に(随意に平面的に接触して)配置される第2の層(コア層)からなる。 別の形態では、第1の層と第3の層はポリオレフィンと希釈剤からなる第1の混合物、例えば、第1のポリオレフィン溶液から製造され、第2の層(コア層)はポリオレフィンと希釈剤からなる第2の混合物、例えば、第2のポリオレフィン溶液から製造される。
【0053】
一つの形態において、多層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜の製造方法が提供される。 当該製造方法は、
(1) 第1のポリオレフィン溶液を準備するために、第1のポリオレフィン組成物と少なくとも一つの第1の希釈剤(例えば、溶剤)とを(例えば、溶融ブレンドによって)混合するステップと、
(2) 第2のポリオレフィン溶液(第1と第2の希釈剤のことを「膜形成溶剤」と呼ぶ)を準備するために、第2のポリオレフィン組成物と少なくとも一つの第2の希釈剤(例えば、溶剤)とを混合するステップと、
(3) 押出し材を形成するために、第1および第2のポリオレフィン溶液を、ここで開示したタイプの金型から共押出しするステップと、
(4) オプションとして、多層構成であって、冷却した押出し材を形成するために、押出し材を冷却するステップと、
(5) 多層構成の膜を形成するために、多層構成の押出し材または冷却した押出し材から少なくとも膜形成溶剤の部分を取り除くステップと、
(6) 好ましくは、多層構成の膜から少なくとも残余の揮発性の物質を除去するステップと
から構成されている。
オプションとしての押出し材を延伸するステップ(7)とオプションとしての押出し材を加熱溶剤処理するステップ(8)等は、もし必要であればステップ(4)と(5)の間に行われる。 ステップ(6)の後、もし必要であれば、オプションとしての多層構成のマイクロポーラスな膜を延伸するステップ(9)と、オプションとしての多層構成のマイクロポーラスな膜を熱処理するステップ(10)と、オプションとしての電離放射線によって架橋するステップ(11)と、オプションとしての親水性処理するステップ(12)等を実施することができる。 これらのオプションとしてのステップの順番は、クリティカルなものではない。
【0054】
第1のポリオレフィン組成物は、上述したようにポリオレフィン樹脂で構成され、第1のポリオレフィン溶液を作り出すために、適切な膜形成溶剤と一緒に、例えば乾燥混合または溶融ブレンドによって混合される。 オプションとして、例えば、WO2008/016174に開示されているように、第1のポリオレフィン溶液には、一つ以上の抗酸化剤、シリケート微粉末(気孔形成材料)等の添加物を含めるようにすることもできる。
【0055】
第1及び第2の希釈剤、たとえば、膜形成溶剤は、室温において液体状態にある溶剤とすることができる。 適切な希釈材は、WO2008/016174、US2008/0057388、およびUS2008/0057389に開示されている。
【0056】
一つの形態において、第1のポリオレフィン組成物を製造するために使用される樹脂等は、2つのスクリュウ部材を使用した押出機または混和機の中で溶融ブレンドされる。 例えば、2つのスクリュウ部材を使用した押出機のように、従来から使用されている押出機(または混和機や混和-押出機)は、第1のポリオレフィン組成物を形成するために、樹脂等を混和する際に使用することができる。 膜形成溶剤は、プロセス中の都合の良い時点においてポリオレフィン組成物(またはポリオレフィン組成物を作り出すために使用される樹脂)に添加することができる。 例えば、一つの形態において、第1のポリオレフィン組成物と第1の膜形成溶剤は溶融ブレンドされ、溶剤は
(1) 溶融ブレンドを開始する前、
(2) 第1のポリオレフィン組成物の溶融ブレンド中、あるいは
(3) 溶融ブレンドの後
のいずれかの段階においてポリオレフィン組成物(またはその成分)に添加することができる。 そして、これは例えば、ポリオレフィン組成物を溶融ブレンドするために使用される押出機の下流側に配置された領域または第2の押出機の中において、溶融ブレンドされた、又は部分的に溶融ブレンドされたポリオレフィン組成物に第1の膜形成溶剤を供給することによって行われる。
【0057】
ポリマーと希釈剤を混和する適切なプロセスの条件は、WO2008/016174、US2008/0057388、およびUS2008/0057389に開示されている。
【0058】
第1のポリオレフィン溶液中の第1のポリオレフィン組成物の量はクリティカルなものではない。 一つの形態において、第1のポリオレフィン溶液中の第1のポリオレフィン組成物の量は、ポリオレフィン溶液の重量に対して、約1重量%から約75重量%の範囲とすることができ、例えば、約20重量%から約70重量%の範囲としても良い。 第1のポリオレフィン溶液の残りの部分は、溶剤である。 第2のポリオレフィン溶液は第1のポリオレフィン溶液を準備する際に使用した方法と同じ方法によって準備することができる。
【0059】
第2のポリオレフィン溶液中の第2のポリオレフィン組成物の量はクリティカルなものではない。 一つの形態において、第2のポリオレフィン溶液中の第2のポリオレフィン組成物の量は、第2のポリオレフィン溶液の重量に対して、約1重量%から約75重量%の範囲とすることができ、例えば、約20重量%から約70重量%の範囲としても良い。 ポリオレフィン溶液の残りの部分は、溶剤である。
【0060】
第1と第2のポリオレフィン溶液は、ここで開示したタイプの共押出金型を使って共押出しされる。 ここで、第1のポリオレフィン溶液から形成された第1の押出し材の層の平坦面は、第2のポリオレフィン溶液から形成された第2の押出し材の層の平坦面に接触している。押出し材の平坦面は、押出し材の機械方向(長手方向)(MD)である第1のベクトルと、押出し材の幅方向(TD)である第2のベクトルとによって定義できる。
【0061】
別の形態において、第1のポリオレフィン溶液を内蔵する第1の押出機は、第1の表面層を製造するための第2の金型部分と第2の表面層を製造するための第3の金型部分とに結合されており、第2のポリオレフィン溶液を内蔵する第2の押出機は、コア層を製造するための第1の金型部分に結合されている。 第1のポリオレフィン溶液から製造される表面層あるいは外層を構成する第1および第3の層を備えた3層構成の押出し材を形成するために、第1および第2のポリオレフィン溶液が共押出し、あるいは積層される。 そして、第2の層は、二つの表面層に平面的に接触し、これらの間に配置された押出し材のコア層または中間層を構成する。 ここで、第2の層は、第2のポリオレフィン溶液から製造される。
【0062】
一般的に金型の隙間寸法は、特にクリティカルなものではない。 例えば、ここで開示するタイプの多層構成のシート成形用の押出金型は、約0.1mmから約5mmの間の金型の隙間寸法を有するようにすることができる。 金型温度と押出速度もまた、クリティカルではないパラメータである。 例えば、押出成形中、金型温度が約140℃から約250℃の範囲になるように加熱することができる。 押出速度は、例えば、約0.2 m/分から約15 m/分の範囲になるようにすることができる。 積層構成の押出し材の層の厚さは、各々独立して設定することができる。 例えば、ゲル状シートは、積層構成の押出し材の中間層の厚さに比べ、比較的厚い表皮層または表面層を有するようにすることができる。
【0063】
2層又は3層構成の押出し材の製造という呼び方で、押出し工程について説明してきたが、押出し工程はこれらに限定されるものではない。 例えば、複数の金型、及び/又は金型組立を、ここで説明した押出金型の原理とここで説明した方法を適用した、4又はそれ以上の層数を有する多層構成の押出し材を製造するために使用することができる。
【0064】
多層構成の押出し材は、例えば、冷却することによって多層構成のゲル状シートに成形される。 冷却速度および冷却温度は、特にクリティカルなものではない。 例えば、多層構成のゲル状シートは、多層構成のゲル状シートの温度が多層構成のゲル状シートのゲル化温度に等しいか、それより低い温度になるまで、少なくとも約50℃/分の冷却速度で冷却される。 ある形態においては、多層構成のゲル状シートを形成させるために、押出し材は25℃か、あるいはそれ以下の温度にまで冷却される。
【0065】
一つの形態として、少なくとも第1と第2の膜形成溶剤は、多層構成の膜を形成するために、多層構成の押出し材あるいは冷却された押出し材から除去される。 適切な溶剤の除去方法はWO2008/016174、US2008/0057388、およびUS2008/0057389に開示されている。
【0066】
一つの形態として、少なくとも膜に残された揮発性の物質を取り除くために、膜形成溶剤を取り除くことによって得られる膜は乾燥されることになる。
【0067】
膜形成溶剤を除去するためのステップに先立ち、少なくとも部分的に方向性を有する押出し材を得るために、多層構成の押出し材または冷却した押出し材を延伸することができる。
【0068】
押出し材を延伸するための方法はNo. WO2008/016174、US2008/0057388、およびUS2008/0057389に開示されている。
【0069】
要求されることではないが、多層構成の押出し材または冷却された押出し材は、高温溶剤で処理することができる。 この処理を行なう場合、高温溶剤処理を行なうことによって、比較的厚い葉脈状構造にフィブリル(多層構成のゲル状シートを延伸することによって形成されるもの)を与えることになる。 これの適切な方法については、WO2000/20493に開示されている。
【0070】
一つの形態として、多層構成のマイクロポーラスな膜は、少なくとも1軸方向に延伸することができる。 選択された延伸方法はクリティカルではなく、テンター法(tenter method)などのような従来技術による延伸方法を使用することができる。 延伸中、膜を加熱することができるが、このことはクリティカルな問題ではない。 ここで述べたように、多層構成のゲル状シートが延伸される場合であって、乾燥状態にある多層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜を延伸することを乾燥延伸、re-stretching、あるいは乾燥オリエンテーションと呼んでいる。
【0071】
一つの形態として、多層構成のマイクロポーラスな膜は熱処理することができる。 一つの形態として、この熱処理には、熱硬化(heat-setting)及び/又はアニーリングが含まれる。 熱硬化(heat-setting)を行なうとき、テンター法(tenter method)及び/又はローラー法のような従来から行なわれている方法によって実行することができる。
【0072】
アニーリングは、多層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜に負荷をかけないで熱処理するという点において、熱硬化(heat-setting)とは異なる。 どのようなアニーリング方法を選択するかということは、クリティカルな問題ではない。 そして、アニーリングは、例えば、ベルトコンベアを備えた加熱炉、あるいは空気によりフローティングさせたタイプの加熱炉を使用して行なわれる。 他の方法として、アニーリングは、緩んだテンタークリップによって熱硬化(heat-setting)させた後に実施するようにしても良い。 アニーリング中の多層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜の温度は、ほぼ融点温度Tmまたはそれ以下、あるいは約60℃から[Tm−10℃]の範囲、あるいは約60℃から[Tm−5℃]の範囲にある。
【0073】
一つの形態において、多層構成のマイクロポーラスなポリオレフィン膜は、(例えば、a-rays [3-rays、7-rays、電子ビーム等]のような電離放射線を照射することによって)架橋させることができる。 また、マイクロポーラスな膜に、親水性処理を施すこともできる。(即ち、この親水性処理は、多層構成のマイクロポーラスなオレフィン膜を更に親水性のものにするものである。[例えば、モノマー親和性処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理等]) 膜の延伸、熱処理、アニーリング、親水性化等の処理に関する適切な方法は、WO2008/016174、US2008/0057388、およびUS2008/0057389に開示されている。
【0074】
優先権主張の基礎となる文書を含め、ここで引用する全ての特許、試験手順、その他の文書は、本明細書で参照することにより、矛盾していない範囲において全て本明細書に組み入れられるものとし、全ての法的管轄においてこのことは認められるべきである。
【0075】
ここで開示した実施例としての形態は、特定のもとして説明してきたが、当該技術分野における当業者であれば、本発明の技術的思想から外れることなく、種々の改良を行なうことができることは自明であり、またそれは容易に実施することができるものである。 従って、本明細書に添付される特許請求の範囲(クレームの範囲)は、本明細書に記載する実施例や記載内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲(クレームの範囲)は、そこに記載された特許性のある新規な技術的特徴をすべて包含するものとして解釈すべきものであり、その全ての技術的特徴は、本発明が属する技術分野における当業者が等価であると認めるものを含めて取り扱われるべきものである。
【0076】
本明細書において、上限の数値と、下限の数値が記載されている場合、下限から上限までの範囲を含めることを意図しているものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂材料の多層構成のフィルムまたはシートを製造するための共押出金型であって、
(1) 層状の押出し材が多層構成のフィルムまたはシートとして押出される金型出口と、
(2) コア層を製造するための第1の金型部分であって、当該第1の金型部分はフラットなマニホールドを備え、当該フラットなマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた当該金型出口に連通した圧力マニホールドを備えた、第1の金型部分と、
(3) 第1の表面層を製造するための第2の金型部分であって、当該第2の金型部分はクロスフローマニホールドを備え、当該クロスフローマニホールドは、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が、第2の金型部分の幅方向長さの1倍以上の長さに亘って横方向に横断する流路を備えており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた前記金型出口に連通した圧力マニホールドを備えた、第2の金型部分と、
(4) 第2の表面層を製造するための第3の金型部分であって、当該第3の金型部分はクロスフローマニホールドを備え、当該クロスフローマニホールドは、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が、第3の金型部分の幅方向長さの1倍以上の長さに亘って横方向に横断する流路を備えており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた前記金型出口に連通した圧力マニホールドを備えた、第3の金型部分と、
を備えたことを特徴とする共押出金型。
【請求項2】
請求項1に記載の共押出金型であって、前記第1の金型部分の前記フラットなマニホールドがコートハンガー状マニホールド、尾びれ状マニホールド、あるいはT型マニホールドであることを特徴とする共押出金型。
【請求項3】
請求項1または2に記載の共押出金型であって、前記フラットなマニホールドがコートハンガー状マニホールドであり、前記供給側注入口がコートハンガー状マニホールドの先端位置に配置されていることを特徴とする共押出金型。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の共押出金型であって、前記第1の金型部分の前記圧力マニホールドが、第1の断面積を有する中央部と第2の断面積を有する幅方向端部を備え、前記圧力マニホールドの第2の断面積が第1の断面積より大きいことを特徴とする共押出金型。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の共押出金型において、前記金型出口は、第1の金型リップ部と第2の金型リップ部を備えたスロットを設けた金型出口であって、当該第1の金型リップ部は金型出口の長手方向に沿って配置された駆動手段を有するフレキシブルなリップ・バーを備えていることを特徴とする共押出金型。
【請求項6】
請求項5に記載された共押出金型であって、前記駆動手段は、複数の個々のリップボルトを備え、当該リップボルトの各々は前記スロットを設けた金型出口の幅を変えることができることを特徴とする押出金型。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の共押出金型であって、表面層用のポリマーと希釈剤の混合物の流れを第1の流れと第2の流れに分流するための表面層用供給ブロックを更に備え、第1の流れは第1の表面層を製造するために、前記第2の金型部分の供給側注入口に供給され、第2の流れは第2の表面層を製造するために、前記第3の金型部分の供給側注入口に供給されることを特徴とする押出金型。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の共押出金型であって、前記第2の金型部分のクロスフローマニホールドと前記第3の金型部分のクロスフローマニホールドの各々は、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が、第2の金型部分の幅方向長さおよび第3の金型部分の幅方向長さの少なくとも2倍の長さに亘って横方向にそれぞれ横断する流路を備えていることを特徴とする押出金型。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の共押出金型であって、前記第2の金型部分のクロスフローマニホールドと前記第3の金型部分のクロスフローマニホールドの各々は、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が、第2の金型部分の幅方向長さおよび第3の金型部分の幅方向長さの少なくとも2.5倍の長さに亘って横方向にそれぞれ横断する流路を備えていることを特徴とする押出金型。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の共押出金型であって、前記第2の金型部分のクロスフローマニホールドと前記第3の金型部分のクロスフローマニホールドの各々は、押出材の形状記憶特性を実質的に低減するのに十分な長さの流路を備えていることを特徴とする押出金型。
【請求項11】
多層構成の押出材を製造するための方法であって、
(1) 第1の混合物を準備するために、少なくとも第1のポリオレフィンと少なくとも第1の希釈剤とを混合するステップと、
(2) 第2の混合物を準備するために、少なくとも第2のポリオレフィンと少なくとも第2の希釈剤とを混合するステップと、
(3) 共押出金型を通して当該第1および第2の混合物を共押出しするステップと、から成り、
当該共押出金型は、押出し材を形成するために、
(a) 押出し材が押出される金型出口と、
(b) 押出し材のコア層を製造するための第1の金型部分であって、当該第1の金型部分はフラットなマニホールドを有し、当該フラットなマニホールドは第2の混合物用の供給側注入口と、金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第1の金型部分と、
(c) 押出し材の第1の表面層を製造するための第2の金型部分であって、当該第2の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは第1の混合物の一部が当該第2の金型部分の幅の1倍以上にわたって横断する流路を有するようになっており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第2の金型部分と、
(d) 押出し材の第2の表面層を製造するための第3の金型部分であって、当該第3の金型部分はクロスフローマニホールドを有し、当該クロスフローマニホールドは第1の混合物の一部が当該第3の金型部分の幅の2倍以上にわたって横断する流路を有するようになっており、当該クロスフローマニホールドは供給側注入口とスロットを設けた金型出口に連通した圧力マニホールドを有する第2の金型部分と、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の多層構成の押出材を製造するための方法であって、前記第1の金型部分の前記フラットなマニホールドがコートハンガー状マニホールド、尾びれ状マニホールド、あるいはT型マニホールドであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の多層構成の押出材を製造するための方法であって、前記フラットなマニホールドがコートハンガー状マニホールドであり、前記供給側注入口がコートハンガー状マニホールドの先端位置に配置されていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかに記載の多層構成の押出材を製造するための方法であって、前記第1の金型部分の前記圧力マニホールドが、第1の断面積を有する中央部と第2の断面積を有する幅方向端部を備え、前記圧力マニホールドの第2の断面積が第1の断面積より大きいことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれかに記載の多層構成の押出材を製造するための方法において、前記共押出金型の金型出口は、第1の金型リップ部と第2の金型リップ部を備えたスロットを設けた金型出口であって、当該第1の金型リップ部は金型出口の長手方向に沿って配置された駆動手段を有するフレキシブルなリップ・バーを備えていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載された多層構成の押出材を製造するための方法であって、前記共押出金型のスロットを設けた金型出口の前記駆動手段は、複数の個々のリップボルトを備え、当該リップボルトの各々は前記スロットを設けた金型出口の幅を変えることができることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれかに記載の多層構成の押出材を製造するための方法であって、前記共押出金型は、前記第1の混合物の流れを第1の流れと第2の流れに分流するための表面層用供給ブロックを更に備え、第1の流れは第1の表面層を製造するために、前記第2の金型部分の供給側注入口に供給され、第2の流れは第2の表面層を製造するために、前記第3の金型部分の供給側注入口に供給されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11乃至17のいずれかに記載の多層構成の押出材を製造するための方法であって、前記第2の金型部分のクロスフローマニホールドと前記第3の金型部分のクロスフローマニホールドの各々は、ポリマーと希釈剤の混合物の一部が、第2の金型部分の幅方向長さおよび第3の金型部分の幅方向長さの少なくとも2倍の長さに亘って横方向にそれぞれ横断する流路を備えていることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11乃至18のいずれかに記載の多層構成の押出材を製造するための方法であって、前記第2の金型部分のクロスフローマニホールドと前記第3の金型部分のクロスフローマニホールドの各々は、第1の混合物の一部が、第2の金型部分の幅方向長さおよび第3の金型部分の幅方向長さの少なくとも2.5倍の長さに亘って横方向にそれぞれ横断する流路を備えていることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項11乃至19のいずれかに記載の共押出金型であって、前記第2の金型部分のクロスフローマニホールドと前記第3の金型部分のクロスフローマニホールドの各々は、押出材の形状記憶特性を実質的に低減するのに十分な長さの流路を備えていることを特徴とする押出金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−538858(P2010−538858A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510593(P2010−510593)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/JP2008/066922
【国際公開番号】WO2009/035154
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000221627)東燃化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】