共振器を利用する電源の安定な帰還
【課題】共振器の出力を整流して生成される直流出力を共振器を駆動する搬送波に帰還することにより安定化する電源において、負荷に応じて変化する搬送波の周波数の変化する範囲を共振器の効率が良いある一定の範囲に限定する安定な帰還を実現する。
【解決手段】整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電圧に変換し、これを電圧源の出力として負荷に供給するとともに誤差増幅器と電流検出器に入力する。誤差増幅器は帰還回路に入力された出力電圧と、出力電圧を設定するために外部から供給される参照電圧とを比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路に入力する。周波数変調回路は入力に比例した周波数をドライバー回路に出力する。電流検出器は出力電流を搬送波の振幅に帰還することにより、搬送波の周波数の変化をある一定の範囲に限定する安定な帰還を実現する。
【解決手段】整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電圧に変換し、これを電圧源の出力として負荷に供給するとともに誤差増幅器と電流検出器に入力する。誤差増幅器は帰還回路に入力された出力電圧と、出力電圧を設定するために外部から供給される参照電圧とを比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路に入力する。周波数変調回路は入力に比例した周波数をドライバー回路に出力する。電流検出器は出力電流を搬送波の振幅に帰還することにより、搬送波の周波数の変化をある一定の範囲に限定する安定な帰還を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器の出力を整流して生成される電源の直流出力を共振器を駆動する搬送波に帰還することにより電源の直流出力の安定化を実現する。
【背景技術】
【0002】
共振器を利用して電圧を発生する電源として、たとえば圧電トランスを共振器として利用して直流高電圧を発生する電源がある。共振の周波数依存性を利用して出力電圧を安定化する場合、出力電圧が共振器を駆動する搬送波の周波数に帰還される。与えられた出力電圧を実現する搬送波の周波数は負荷に依存して広い範囲にわたり、とりわけ共振周波数から離れている周波数に対応する軽い負荷に対する効率は低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-359967
【特許文献2】特開2005-137085
【特許文献3】特開2007-330091
【特許文献4】特願2007-018715
【特許文献5】PCT/JP2007/000477
【特許文献6】PCT/JP2007/000947
【特許文献7】特願2008-229540
【特許文献8】特願2009-529868
【0004】
特許文献1は、安定化された高電圧を提供する、効率のよい直流高電圧電源装置の簡単な回路の構成を提供することを課題とし、直流高電圧電源に、通常の電磁トランスではなく、圧電トランスによる高電圧発生手段を採用することにより効率の向上を計り、しかも高電圧を安定化するために圧電トランスの共振特性の周波数依存性を利用することにより、回路の簡素化と部品点数の減少を計ることにより課題を解決する。
【0005】
特許文献2は直流高電圧電源装置に関するもので、当該装置の出力電圧を安定化する帰還について、高電圧の発生に伴う遅れの大きい帰還とは独立な遅れの少ない帰還を実装することにより、出力電圧の安定化の精度の向上と応答の高速化を実現する。
【0006】
特許文献3は安定化直流電圧電源に関するものであり、共振器における共振の周波数依存性を利用する安定化において、原点の近傍に極の配置された伝達関数により出力電圧を共振器を駆動する搬送波の周波数に帰還する電源の構成とその回路定数を与える。
【0007】
特許文献4は安定化直流電圧電源に関するものであり、共振器における共振の周波数依存性を利用する安定化において、原点の近傍に極の配置されていない伝達関数により出力電圧を共振器を駆動する搬送波の周波数に帰還する電源の構成とその回路定数を与える。
【0008】
特許文献5は特許文献3,4を基にしたPCT 国際出願である。
【0009】
特許文献6は安定化直流電圧電源に関するものであり、共振器における共振の周波数依存性と振幅依存性とを利用する安定化において、出力電圧の誤差の共振器を駆動する搬送波の周波数への帰還と、出力電圧の誤差の共振器を駆動する搬送波の振幅への帰還とを備えた電源の構成とその回路定数を与える。
【0010】
特許文献7は特許文献2の拡張であり、特許文献3,4,5、6の発明を基礎としている。出力電圧の搬送波の周波数と振幅とへの帰還が具体的に与えられている。
【0011】
特許文献8は、特許文献6の国内に移行した対応した特許出願である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
たとえば電圧源において、出力電圧と参照電圧との誤差が共振器を駆動する搬送波の周波数と振幅とに帰還されている場合、帰還の定常状態では誤差は小さく、したがって搬送波の振幅も近似的に一定になる。このため負荷に応じて変化する搬送波の周波数の変化する範囲を、共振器の効率が良いある一定の範囲に限定することが困難となる。搬送波の周波数を負荷によらずある一定の範囲に限定できる安定な帰還を実現することにより効率を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
出力電圧を安定化する場合には出力電流を搬送波の振幅に帰還し、また出力電流を安定化する場合には出力電圧を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流あるいは出力電圧の変化が引き起こす搬送波の周波数の変化する範囲を限定する。電圧源と電流源は双対な関係にあるので、以下では電圧源について具体的に述べる。
【0014】
振幅が近似的に一定の搬送波により駆動される共振器からの出力は交流であり、交流の周波数は搬送波の周波数に一致するが、交流の振幅は搬送波の周波数に対して共振特性を示す。したがって共振器から出力される交流の整流により生成される直流電圧は搬送波の周波数に依存する。すなわち搬送波の周波数が共振器の共振周波数に近づくと直流電圧は高くなり、遠ざかると低くなる。
【0015】
また共振器から出力される交流の振幅は搬送波の振幅に近似的に比例する。このため、出力交流の整流によって生成される直流電圧は搬送波の周波数と振幅に依存する。一定の直流電圧を実現する搬送波の周波数と振幅とは、一方を決めると他方が決まる関係となる。
【0016】
たとえば、安定化が容易な実用的な帰還として、出力電圧と参照電圧との誤差が、原点に極の配置されている伝達関数により搬送波の周波数に帰還されているとき、まず誤差が搬送波の振幅へ帰還されていない場合について考える。この場合、振幅は近似的に不変であり、したがって振幅は初期値を保つ。帰還の定常状態では出力電圧と参照電圧は近似的に等しくなり、共振器を駆動する搬送波の周波数すなわち駆動周波数は振幅と負荷すなわち出力電流とに依存する。
【0017】
さらに誤差が原点に極の配置されていない伝達関数により振幅に帰還されている場合、帰還の定常状態では出力電圧と参照電圧が近似的に等しくなるので誤差は近似的に零となり、誤差の振幅への帰還は無効となる。つまり定常状態では振幅はその初期値に等しくなる。定常状態では負荷すなわち出力電流の如何にかかわらず搬送波の振幅は初期値に等しくなる。
【0018】
定常状態では電源の出力電流にかかわらず搬送波の振幅は初期値に近似的に等しくなるので、搬送波の周波数は出力電流に応じて変化する。すなわち出力電流が大きくなると周波数は共振周波数に近づき、小さくなると離れる。
【0019】
共振器を共振周波数から遠く離れた周波数の搬送波で駆動すると効率が低くなる。出力電流に依らず共振器の効率をある一定の範囲に保つためには、搬送波の周波数をある一定の範囲に限定することが必要となる。出力電流を搬送波の振幅に安定に帰還することにより、出力電流の変化が引き起こす駆動周波数の変化する範囲を限定する。
電源を近似する等価電源
【0020】
電源は搬送波を発生するドライバー回路と、ドライバー回路の出力である搬送波によって駆動される共振回路と、共振回路の出力である振幅変調された搬送波を整流することにより直流電圧に変換する整流平滑回路とを備える電圧発生回路と、整流平滑回路の出力である直流電圧とこの電源の出力電圧を設定するためにあらかじめ与えられている参照電圧と比較する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路とを備える帰還回路を含み、周波数変調回路の出力は前記ドライバー回路の入力となりドライバー回路の発生する搬送波の周波数の制御を行い、直流電圧を搬送波の周波数に帰還する。
【0021】
この電源の動作を解析することを目的として、特許文献3,特許文献5、特許文献6において電源を近似する等価電源が導入された。等価電源は、搬送波を発生するドライバー回路と、ドライバー回路の出力である搬送波によって駆動される仮想共振回路と、その出力が入力される仮想整流平滑回路とからなる仮想電圧発生回路と、仮想整流平滑回路の出力である直流電圧を参照電圧と比較する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路を備える帰還回路を含み、周波数変調回路の出力は前記ドライバー回路に入力され、ドライバー回路の発生する搬送波の周波数の制御を行い、仮想整流平滑回路の出力である直流電圧を搬送波の周波数に帰還する。
【0022】
仮想電圧発生回路はドライバー回路と仮想共振回路と仮想整流平滑回路とからなる。仮想共振回路は、共振回路と同様に周波数変調された搬送波を入力とし、振幅変調された搬送波ではなく、そのエンベロープを出力する。また仮想整流平滑回路はこのエンベロープを入力とし、エンベロープに対して一次遅れのフィルターとして作用し、整流平滑回路の出力と同等の結果を出力する。
【0023】
この等価電源は連立微分方程式系によりその動作を記述することができるので、安定性の数理的な解析が可能となる。微分方程式系を導出し、これから等価電源の出力電圧が参照電圧の近傍で安定となる条件を明らかにする。この条件を基にして安定な帰還を実現する実際の回路を構成し、また回路定数を与えることができる。
【0024】
等価電源は、特許文献3において導入され、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献8の発明はこの等価電源を基礎としている。これらの文献における等価電源の表記法は、それぞれの文献において新規に導入されたもの以外は、以下に述べる例外を除いて、それ以前の文献の表記法に従っている。特許文献6において、それ以前の文献における rr および ri の定義が変更され、rr およびri が新に定義された。特許文献8は特許文献6の表記法に従っている。
出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源
【0025】
周波数変調された搬送波の入力される共振回路が出力する振幅変調された搬送波から整流平滑により生成される出力電圧と参照電圧の誤差を、共振回路に入力される搬送波の周波数に帰還することにより安定化する安定化直流電源において、出力電圧の誤差を共振回路に入力される搬送波の周波数へ帰還する遅れの大きい帰還ともに、出力電圧を搬送波の振幅へ帰還する遅れの小さい帰還を同時に実装することにより、搬送波の周波数の急速な変化の抑制と出力電圧の周波数応答の向上を実現する。
【0026】
出力電圧と参照電圧との誤差が搬送波の周波数とともに、搬送波の振幅に帰還される電源を解析するために、特許文献6において、出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源が導入された。出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源が、出力電流が搬送波の振幅に帰還される電源を解析する基礎となるので、この出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源について簡単に説明する。
搬送波の可変な振幅と(仮想)共振回路および(仮想)整流平滑回路
【0027】
共振回路の共振周波数をωr、Q値をQ、共振周波数における昇圧比をgrとするとき、δ、ω0およびcを
【数1】
【数2】
【数3】
と定義する。
【0028】
定数wと時間の関数xからなる関数w+xを振幅とし、時間の関数ψを位相とした周波数変調された搬送波を
【数4】
と書いたとき、数式4のψからφを
【数5】
と定義することにより数式4に記載された周波数変調された搬送波の周波数を
【数6】
と表し、rrおよびriのこれまでの定義を変更し、以下のように新たに
【数7】
【数8】
と定義する。このとき(仮想)共振回路に数式4で与えられる搬送波を入力したとき(仮想)共振回路から出力される搬送波の振幅は、連立微分方程式
【数9】
【数10】
を満たすp、qにより
【数11】
と表すことが出来るので、共振回路から出力される搬送波は、整流平滑を行う(仮想)整流平滑回路に入力され、直流電圧に変換される。(仮想)整流平滑回路から出力される直流電圧をzとすると、(仮想)整流平滑回路の時定数をμ、振幅の乗数をνとして、zは微分方程式
【数12】
に従う。
振幅への帰還
【0029】
この整流平滑回路からの出力電圧zとあらかじめ出力に電圧を設定する参照電圧λとを比較し、電圧の誤差を搬送波の振幅w+xに帰還する帰還回路の伝達関数を、Gを正の定数として
【数13】
と表す。数式13は、出力電圧zが参照電圧より高いときにはxは負となり搬送波の振幅w+xは減少し出力電圧を下げる方向に働く。同様にして出力電圧が参照電圧より低い時には出力電圧を上げる方向に働く。
【0030】
数式13を数式9、数式10に代入することにより次式を得る。
【数14】
【数15】
出力電圧の搬送波の周波数への帰還
【0031】
この整流平滑回路からの出力電圧zとあらかじめ出力に電圧を設定する参照電圧λとを比較し、電圧の誤差を搬送波の周波数φに帰還する帰還回路の伝達関数は、数式5に定義されたφと数式12のzと参照電圧λと正数k、d、E、A、Bとを使って、φ≧0として
【数16】
と表せる。
出力電圧の2階微分
【0032】
出力電圧zの微分は数式12によって与えられる。これから出力電圧zの時間tに関する2階微分は次のようになる。
【数17】
数式17に数式12、数式14および数式15を代入して整理すると次式を得る。
【数18】
数式18に数式13を代入すると次式を得る。
【数19】
出力電圧の搬送波の周波数への伝達関数
【0033】
数式16を書き直すと次のようになる。
【数20】
数式20において、zの1階微分を数式12で置き換え、zの2階微分を数式19で置き換えると次式を得る。
【数21】
微分方程式系による電源の記述
【0034】
数式21を、数式14と数式15および数式12とを連立させることにより得られる次の正規な微分方程式系は、出力電圧を搬送波の周波数に帰還するとともに搬送波の振幅に帰還する安定化直流電源を記述する。
【数22】
【数23】
【数24】
【数25】
微分方程式系の平衡点
【0035】
微分方程式系数式22〜25の平衡点では
【数26】
が成り立つ。数式17と数式26から平衡点では
【数27】
が成り立つ。平衡点は次の連立一次方程式の解である。
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
【0036】
この解である平衡点をpe、qe、ze、φeとすると、数式20と数式27から
【数32】
であることが従い、数式13から平衡点においてx=0となる。すなわち任意の正のwが出力電圧zeを生成できる搬送波の振幅である場合に、これを平衡点における搬送波の振幅とする搬送波の周波数の存在することがわかる。ここでrを
【数33】
と表すときpe、qe、zeおよびλはφeの関数として次にように表すことができる。
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
方程式系の安定性
【0037】
Lyapunovの方法により平衡点の近傍での微分方程式系の安定性を調べる。p、q、z、φをそれぞれpe、qe、ze、φeの近傍で次のように展開する。
【数38】
【数39】
【数40】
【数41】
この式を微分方程式系数式22〜25に代入し高次の項を無視することによりΔp、Δq、Δz、Δφに関する次のような正規な微分方程式系を得る。
【数42】
【数43】
ここで
【数44】
【数45】
【数46】
【0038】
このとき、行列Mの要素はpe、qe、ze、φeの関数となるが、数式34〜数式37により、これらはφeの関数と考えることができる。したがってMの固有多項式を m(h) とし、
【数47】
と書く。係数a0、a1、a2、a3、a4は以下のようにφeの関数となる。
【数48】
【数49】
【数50】
【数51】
【数52】
ここで、rは次にように定義されている。
【数53】
【0039】
固有多項式 m(h) の係数a0、a1、a2、a3、a4が数式48〜数式52で与えられる場合のm(h)は次のように書くことができる。
【数54】
【0040】
出力電圧から振幅への帰還が数式13ではなく
【数55】
で与えられる場合の係数a0、a1、a2、a3、a4は以下の通りである。
【数56】
【数57】
【数58】
【数59】
【数60】
【0041】
固有関数m(h)の係数a0、a1、a2、a3、a4が数式56〜数式60で与えられる場合のm(h)は次のように書くことができる。
【数61】
搬送波の周波数と振幅の適切な関係
【0042】
出力電圧と参照電圧の誤差を搬送波の周波数に帰還する伝達関数が数式62のように原点に極の配置されている場合、
【数62】
wを正の定数とすると、出力電圧zを搬送波の振幅w+xに数式13の
【数63】
あるいは数式55の
【数64】
によって帰還するとき、平衡点では振幅は周波数に依らずwの一定値を取る。すなわち平衡点における搬送波の周波数と振幅の関係は、周波数が共振周波数に近いときには振幅が大きくなり、また共振周波数から離れるにともない小さくなる適切な関係にはない。平衡点を実現する搬送波の周波数と振幅とについてこのような適切な関係を実現するためには付加的な条件が必要になる。
適切な関係を実現する付加的条件
【0043】
多様な付加的条件を考えることができる。ここでは電源から出力される電流Jを考え、出力電圧zとともに出力電流Jを搬送波の振幅w+xにKを正の定数として
【数65】
あるいは
【数66】
により帰還することを考える。このような帰還を考える理由は次に通りである。
【0044】
数式65あるいは数式66の帰還が有効な振幅weffを
【数67】
と定義し、平衡点における有効振幅をweffeとかく。出力電流Jが出力電圧zと独立に変化すると仮定できる場合には、数式65あるいは66で定義される帰還の組み込まれた微分方程式系の固有多項式は、数式63あるいは64により帰還が定義される微分方程式系すなわち数式22〜25からなる微分方程式系の固有多項式においてwをweffeに置き換えることにより得られると予想できることにある。
【0045】
さらに、適当なxの単調な関数f(x)を使って出力電流Jを変換したf(J)を搬送波の振幅に帰還する
【数68】
あるいは
【数69】
の場合にも、weffを次のように
【数70】
と定義することにより、固有多項式は同様な置き換えることにより得られると予想できる。
【0046】
これらの予想が正しい場合、平衡状態を考えると、出力電流が大きい重い負荷に対しては搬送波の振幅が大きくなり、また軽い負荷に対しては振幅が小さくなる。つまり共振周波数に近い周波数では搬送波の振幅が大きくなり、離れた周波数では振幅が小さくなる、周波数と振幅の適切な関係を実現する事ができる。
【0047】
これらの予想は出力電流Jが出力電圧zと独立に変化する場合のみならず、出力電流Jの出力電圧zへの依存が近似的に独立と考えられる場合にも正しいことが以下に示される。この結果、出力電流が振幅に帰還されている微分方程式系の安定性は、数式22〜25からなる微分方程式系の安定性に帰着できることが分かる。さらに出力電流を適切な関数 f(・)で変換することにより搬送波の周波数を近似的に一定に保つことができるので、出力電流が振幅に帰還される微分方程式系を安定化する定数の選択を著しく容易にする。
負荷のモデル
【0048】
電圧源に接続された負荷を考える。負荷は2端子であるが、負荷を流れる電流は負荷の入力インピーダンスとともに負荷の状態に依存する。つまり負荷は負荷電流を発生する負荷電流源を含む。負荷電流源の発生する電流は、負荷の内部状態だけに依存し、負荷に印加される電圧には依存しない。すなわち負荷を流れる電流は印加される電圧に依存する部分と印可される電圧に依存しない部分とからなる。
【0049】
たとえば図1に示す負荷を考える。負荷は二端子である。この負荷には入力端子を両端とする二つの独立した電流の回路がある。すなわち負荷電流源を含む回路と、これを含まない回路である。電源から出力される出力電流をJ、負荷電流源を含む回路を流れる電流をIS、電流源を含まない回路を流れる電流をiとすると図から明らかなように
【数71】
また図に示されているインピーダンスZ1、Z2を考慮すると、負荷の入力端子に印加されている電源の出力電圧をzとして
【数72】
数式71と72とから出力電流Jは
【数73】
と表すことができる。
負荷の標準モデル
【0050】
負荷の標準モデルを図2に示す。標準モデルではZの入力インピーダンスと出力Iの負荷電流源とが並列に結合されている。図1の負荷のモデルは数式73から分かるように、入力インピーダンスが Z1+Z2 かつ出力がZ2IS/(Z1+Z2)の負荷電流源によって、数式74のように表すことができる。ここでJは電源からの出力電流である。
【数74】
負荷電流Iの簡単な微分方程式
【0051】
負荷電流Iは負荷の状態にだけ依存して変化する。言いかえると電流Iの変化を記述する微分方程式は電圧源の独立変数p、q、z、φに依存しない。負荷電流の変化を近似する最も簡単な微分方程式は一次遅れである。すなわち負荷が平衡状態に到達したのちに実際に消費される負荷電流をIeとすると、負荷電流の変化は
【数75】
により近似できる。負荷電流Iは時定数τの一次遅れで平衡点における負荷電流Ieに近づく。
出力電流の振幅への帰還の簡単な例
【0052】
数式65による帰還は、出力電流の搬送波の振幅へのもっとも簡単な帰還であろう。すなわち微分方程式系数式22〜25において、数式22、数式23、数式25を、Jを出力電流として次式で置き換える。
【数76】
【数77】
【数78】
ただし Kは正の定数である。Jは電圧源の出力電流である。数式74により書き換えると,微分方程式系は次のようになる。
【数79】
【数80】
【数81】
【数82】
これに負荷電流Iを記述す微分方程式として、たとえば数式75を微分方程式系に追加すると出力電流の振幅への帰還を記述する微分方程式系となる。
【数83】
平衡点
ALが定数の場合について安定性を考察する。微分方程式系数式79〜83の平衡点では
【数84】
が成り立つ。数式17と数式84から平衡点では
【数85】
が成り立つ。平衡点は次の連立一次方程式の解である。
【数86】
【数87】
【数88】
【数89】
【数90】
平衡点では
【数91】
が成り立つ。この解である平衡点をpe、qe、ze、φe、Ieとすると
【数92】
であることがわかる。ここでrを
【数93】
と表すときpe、qe、zeおよびλはφeの関数として次にように表すことができる。
【数94】
【数95】
【数96】
【数97】
安定性
【0053】
ALが定数であることが仮定されている。p、q、z、φ、Iをそれぞれpe、qe、ze、φe、Ieの近傍で次のように展開する。
【数98】
【数99】
【数100】
【数101】
【数102】
この式を微分方程式系数式79〜83に代入し高次の項を無視することによりΔp、Δq、Δz、Δφ、ΔIに関する次のような正規な微分方程式系を得る。
【数103】
【数104】
ここで
【数105】
【数106】
【数107】
【0054】
このとき、行列Mの要素はpe、qe、ze、φeの関数となるが、数式94〜数式97により、これらはφeの関数と考えることができる。Mの固有多項式m(h)は次のように書くことができる。
【数108】
平衡点における有効振 weffeは次のようになる。
【数109】
【数110】
数式108の括弧の中の第3項はweffeによって次のように書ける。
【数111】
微分方程式系の独立変数と自由変数
【0055】
たとえば電圧源を記述する正規な微分方程式系数式22〜25において、それぞれの数式の左辺にその時間微分として現れる変数を微分方程式系の独立変数と呼び、独立変数でない変数を自由変数と呼ぶ。この微分方程式系の独立変数は p、q、z、φである。またμ、ν、δ、rr、ri、E、A、B、Gが定数である場合この微分方程式系は自由変数を含まない。
出力電流の帰還
【0056】
簡単のため微分方程式系数式22〜25においてμ、ν、δ、rr、ri、E、A、B、G が定数であると仮定する。つまりこの微分方程式系は自由変数を含まない。ここに出力電流の振幅への帰還を組み込むことにより自由変数が導入される。微分方程式系数式79〜82においてIはこの微分方程式系の自由変数である。微分方程式系に自由変数を組み込むことにより実現される帰還の安定性を考察する。
自由変数の組み込まれた電源の記述
【0057】
自由変数Iの組み込まれた電源を記述する微分方程式系を簡単のために次のように書く
【数112】
【数113】
【数114】
【数115】
ここでIは、たとえば微分方程式系数式79〜82における負荷電流である。自由変数Iは、たとえば微分方程式系数式22〜25によって記述される電圧源から負荷への出力電流ではない。つまり変数Iは電圧源からの出力電流ではなく、出力電圧に依存しない負荷電流である。Iは次のような微分方程式系により表されると仮定できる。
【数116】
【数117】
【数118】
変数Iが微分方程式系数式112〜115において自由変数である。微分方程式系数式112〜115を記述する独立変数はp、q、z、…、φであり、また微分方程式系数式116〜118を記述する独立変数はa、b、…、Iである。微分方程式系数式112〜115の独立変数は微分方程式系数式116〜118に自由変数として含まれていない。
合併微分方程式の安定性
【0058】
微分方程式系数式112〜115と微分方程式系数式116〜118とを連立させた合併微分方程式系の安定性をLyapunovの方法で調べる。合併微分方程式系の平衡点を
【数119】
とすると、平衡点の定義から
【数120】
【数121】
【数122】
【数123】
【数124】
【数125】
【数126】
を満足する。平衡点peの近傍での安定性を考察するために、平衡点からのずれを
【数127】
と表すとき、Δp、Δq、Δz、…、Δφ、Δa、Δb、…、ΔI の従う変分微分方程式系を
【数128】
と表す。ここで
【数129】
この変分微分方程式系を次のように書く。
【数130】
行列M1と行列M2とを次のように定義する。
【数131】
【数132】
このとき数式128、数式130は次のように表すことができる。
【数133】
すなわち行列Mの固有多項式は行列M1の固有多項式と行列M2の固有多項式との積で与えられる。そこで次の二つの変分微分方程式系を定義する。
【数134】
【数135】
【0059】
合併微分方程式系の変分微分方程式系から導かれる固有多項式が、微分方程式系数式112〜115において自由変数Iを定数とした変分微分方程式系から導かれる固有多項式と、Iを独立変数とする微分方程式系数式116〜118の変分微分方程式系から導かれる固有多項式との積で与えられる十分条件は、微分方程式系数式116〜118が、微分方程式系数式112〜115の独立変数を自由変数として含まないことである。
【0060】
変数Iを自由変数とする微分方程式系Aにたいして、微分方程式系Aの独立変数を自由変数として含まないIを独立変数とする微分方程式系Bを選ぶことにより、微分方程式系Aと微分方程式系Bとを合併して得られる合併微分方程式系の変分微分方程式系から導かれる固有多項式を、微分方程式系Aにおいて自由変数Iを定数 Ie とした変分微分方程式系から導かれる固有多項式と微分方程式系Bの変分微分方程式系から導かれる固有多項式との積で表すことが可能となる。
安定な帰還
【0061】
負荷電流Iを記述する微分方程式系数式116〜118は一般性を失うことなく安定であることを仮定できるので、その変分微分方程式系数式135から導かれる固有多項式は安定となり、したがって合併微分方程式系の安定性は変分微分方程式系数式134から導かれる固有多項式の安定性に帰着する。すなわち変数Iが微分方程式系数式112〜115の自由変数ならば、微分方程式系数式112〜115の安定性は変分微分方程式系数式134の安定性に帰着する。
【0062】
微分方程式系の安定性はその変分微分方程式系の固有多項式に帰着する。微分方程式系数式79〜82において、負荷電流Iは自由変数である。この微分方程式系を平衡点の近傍で展開することにより得られる変分微分方程式系の固有多項式はALが定数の場合には、微分方程式系数式22〜25の変分微分方程式系の固有多項式において、wをweffeに置き換えることにより得られることがすでに示されている。ALが定数でない場合にも同様な事情にあることが以下に示される。この意味で微分方程式系数式79〜82の安定性は、微分方程式系数式22〜25の安定性に帰着する。
ALが定数でない場合
【0063】
微分方程式系数式79〜83において、ALが定数すなわち図2に示す負荷の標準モデルにおいて入力インピーダンスZが抵抗である場合の固有多項式は数式108に示されている。ここでは図3に示すように入力インピーダンスZが抵抗とキャパシタンスの並列結合である場合の固有多項式を求める。このことによりALが定数でない一般の場合の固有多項式について見通しを得ることができる。
【0064】
入力インピーダンスの抵抗をRL、キャパシタンスをCLとする。出力電圧をzとするとき、負荷電流のうち出力電圧に依存する電流は
【数136】
で与えらる。また出力電圧に依存いない電流はIとなる。出力電流は
【数137】
となり、これを数式76〜78に代入すると次のような微分方程式系を得る。
【数138】
【数139】
【数140】
【数141】
この微分方程式系の平衡点をpe、qe、ze、φeとする。またIeは平衡点におけるIを表す。さらに
【数142】
となる。またrを
【数143】
と表すとき、pe、qe、zeおよびλはφeの関数として次にようになる。
【数144】
【数145】
【数146】
【数147】
平衡点の近傍における微分方程式系の線形化
【0065】
p、q、z、φをそれぞれpe、qe、ze、φeの近傍で次のように展開する。
【数148】
【数149】
【数150】
【数151】
この式を微分方程式系数式138〜141に代入し高次の項を無視することによりΔp、Δq、Δz、Δφに関する次のような正規かつ線形な微分方程式系を得る。
【数152】
ここで行列Mは次のようになる。
【数153】
M41、M42、M43は次の通りである。
【数154】
【数155】
【数156】
このとき、行列Mの要素はpe、qe、ze、φeの関数となるが、数式34〜数式37により、これらはφeの関数と考えることができる。したがって、Mの固有多項式をm(h)とし、
【数157】
と書く。係数a0、a1、a2、a3、a4は以下のようにφeの関数となる。
【数158】
【数159】
【数160】
【数161】
【数162】
固有関数m(h)の分解
【0066】
固有関数m(h)の係数 a0、a1、a2、a3、a4 が数式158〜数式162で与えられる場合のm(h)は次のように書くことができる。
【数163】
【0067】
出力電圧から振幅への帰還が数式13ではなく
【数164】
で与えられる場合、固有関数m(h)は次のようになる。
【数165】
平衡点における有効振幅weffe
【0068】
平衡点における有効振幅weffeを次のよう求める。平衡点では
【数166】
がなりたつので、平衡点における出力電流は
【数167】
となる。ここで ze は平衡点における出力電圧、RLは負荷の入力抵抗を表し、Ieは出力電圧に依存しない負荷電流を表す。数式146からweffeは次のようになる。
【数168】
【数169】
ここでwは帰還のない場合の振幅を表す定数である。これをwについて解き、数式163あるいは数式 165の第3項に代入すると、第3項は次のように書き換えることができる。
【数170】
これは、数式54あるいは数式61の第3項においてwをweffに置き換えた式に一致することが分かる。
入力アドミッタンスALによる置換
【0069】
数式163の第2項
【数171】
において(hCLRL+1)/RLは抵抗RLとキャパシタンスCLが並列に結合された負荷の入力アドミッタンスに一致するので、これを負荷の入力アドミッタンスALに一般化すると
【数172】
となる。
【0070】
数式163を数式170と数式172を使って書きなおすと固有多項式m(h)は次のようになる。
【数173】
またAL=0の場合、上式は数式54おいてwをweffeに置き換えた式に一致する。数式165についても同様である。
AL の符号を説明するモデル
【0071】
数式108あるいは数式173の第2項において、ALの符号がマイナスである理由を明らかにするために、第2項が振幅への帰還に対応していることを考慮して、次に示すような出力電圧を安定化する帰還の簡単なモデルを考える。出力電圧の誤差と出力電流が、出力電圧を安定化するために搬送波の振幅に帰還されるので、出力電圧zと参照電圧λとの誤差λ-zと出力電流Jとが、図4に示すように同一のノードに入力され、これが増幅されて出力電圧zとなる帰還を考える。ノードへの入力は
【数174】
となる。この入力からzの出力される増幅をSと表すと
【数175】
また出力電流JはアドミッタンスALを使って
【数176】
と表すことができるので、これらから
【数177】
数式177の分母がこの帰還の固有関数に対応する。ここにおいてALの符号はマイナスとなる。
【0072】
たとえばALが正の実数である場合、G-KALの符号が正から負に変わると、この帰還が負帰還から正帰還に変わる。つまりG-KALが負の場合、出力電圧が参照電圧より低くなると、さらに低くする方向に帰還が働く。帰還が出力電圧を安定化する方向に働くためには G-KAL が正であることが必要である。出力電圧を安定化するためにわずかな出力電圧の変化に対して大きな帰還をかけることが必要であり、このためG-KALは大きくなる。つまり出力電圧の安定化を目的とした場合G≫|KAL|である。G≫|KAL|であり、さらに出力電圧を安定化する観点からみるとKALは安定性を低下させる。つまりKALをノイズとして取り扱うことが可能になる。KALをノイズとみなした帰還を図5に示す。
G≫|KAL|
【0073】
出力電流が搬送波の振幅に帰還される場合、搬送波の振幅の最小値と最大値が負荷電流の最小値と最大値にほぼ対応するように選ばれる。これに対して、Gは出力電圧を安定化するためにわずかな出力電圧の変化に対して大きな帰還をかけることが必要である。このため出力電圧と出力電流とが搬送波の振幅に帰還される場合にも、出力電圧を安定化を目的とする場合にはG≫|KAL|なる。出力電流の振幅への帰還のうちALzはノイズとして取り扱うことが可能となる。
出力電流の変化はノイズ
【0074】
数式74から、出力電圧と出力電流の振幅への帰還は数式79および80にあるように
【数178】
と書くことができる。ところでzを記述する微分方程式の独立変数が、Iを記述する微分方程式に自由変数として含まれないので、平衡点におけるIをIeとすると、帰還の数式178はIをIeに置き換えた
【数179】
となる。KIeは定数であるので、振幅wをw+KIeと考えて数式179を
【数180】
とすると、KALzをノイズとして取り扱えることが分る。つまり数式178において
【数181】
をノイズと考えることができる
【0075】
言いかえると、数式74のうちALzをノイズとみなせる。また出力電流の変化の多くの部分は出力電圧に依存しない負荷電流の変化である。出力電圧を安定化する一般的な観点から見ると、負荷電流の振幅への帰還は、負荷電流が出力電圧に依存しないのであるから、ノイズに他ならない。出力電流Jの振幅への帰還は
【数182】
と表される。つまり出力電流の振幅への帰還はノイズと考えることができる。出力電圧を安定化する一般的な観点から見ると、出力電流の振幅への帰還はノイズであり、したがって出力電圧の安定化に寄与する場合もあるが寄与しない場合も多い。出力電流を振幅に帰還する信号を、ここでは出力電圧を振幅に帰還する信号に加法的に働くノイズと仮定する。
【0076】
出力電流を振幅へ帰還する信号は、出力電圧を振幅に帰還する信号に加えられたノイズである。そこで出力電圧を振幅に帰還する信号に加法的なノイズが働くより一般的な場合の帰還の安定性について考える。このノイズをNとすると、出力電圧の振幅への帰還は
【数183】
と書ける。ノイズNを平均値が0のランダムなノイズ NR と定数 NC とにより
【数184】
と表すと、数式183は
【数185】
と書ける。
【0077】
たとえば微分方程式系数式76〜78において、数式182を数式183に置き換えた微分方程式系の安定性は、数式183を次の186に置き換えた微分方程式系の安定性に帰着する
【数186】
ここで NCeは平衡点におけるNCを表す。つまり数式183のようにノイズが加法的に働く帰還の安定性は、ノイズのない数式186による帰還の安定性に帰着する。これは合併微分方程式系の固有関数が、それぞれの微分方程式系の固有関数の積で与えられることの別の表現であろう。
関数によるノイズの変換
【0078】
出力電流Iはノイズであることから、たとえばI2もノイズであり、Iの有理関数もノイズとなる。さらに適当な(たとえば単調に増加する)関数fN(x) によるIの変換fN(I)もノイズとなる。このノイズが振幅へ帰還に加法的に働くと数式183は
【数187】
となり、このような帰還が働く場合の安定性は、数式185に対応して振幅への帰還が
【数188】
で与えられる場合の安定性に帰着する。ここでNCefは平衡点におけるNCfである。またNCfはノイズfN(I)を数式184に従い、
【数189】
と分解することにより定義される。
【0079】
出力電流Iを適当な関数fN(x)によって変換したfN(I)を使って数式187を
【数190】
と置き換えたとき、微分方程式系数式76〜78において、出力電流の振幅への帰還を数式190で置き換えた微分方程式系
【数191】
【数192】
【数193】
【数194】
の変分微分方程式系から導かれる固有多項式m(h)は、weffを
【数195】
と定義するとき、数式54あるいは数式61においてwをweffeに置き換えることにより得られる。
固有多項式mA(h)とmB(h)
【0080】
出力電圧から振幅への帰還が数式13すなわち
【数196】
で与えられる場合の固有多項式m(h)をmA(h)と表すと
【数197】
となる。また出力電圧から振幅への帰還が数式164すなわち
【数198】
で与えられる場合の固有多項式m(h)をmB(h)と表すと、
【数199】
となる。
周波数の変化を抑える関数
【0081】
共振器として圧電トランスが使用されているときに、定常状態において搬送波の周波数が出力電流によらず一定の範囲の周波数に収まるためには、搬送波の振幅が出力電流のどのような関数にあるときかを明らかにする。出力電圧と参照電圧との誤差が搬送波の周波数と振幅とに帰還されている場合、定常状態では数式32により出力電圧zeは参照電圧λに等しくなる。出力電流がIのときの搬送波の振幅をwIとすると数式37からwIとλとは
【数200】
によって結ばれている。
【0082】
そこでφe=δeと近似すると、wIは次のようになる。
【数201】
ここでrは圧電トランスの定数であるので、rは近似的に一定と考えられる。νは整流平滑回路における整流回路のキャパシタンスと負荷との時定数に関係する乗数であり、負荷が重くなると小さくなる。この意味でνは近似的に電流に反比例すると考えられる。振幅wIはδλに比例する。ところが圧電トランスの共振は負荷抵抗Rに対して並列共振であるから、δはRに反比例する。すなわち負荷が重くなるとδが大きくなる。これからwIは近似的に出力電流Iの二乗に比例すると考えられる。すなわち
【数202】
となる。
【0083】
搬送波の振幅の初期値をwと表すと、搬送波の振幅は適当な正の定数Kによって
【数203】
と近似できる。数式203が満たされているとき、φeは近似的にδに等しくなる筈である。しかし実際にはδは出力電流に応じて変化し、さらに共振周波数も出力電流に応じて変化するため、これらの変化のすべてを合わせた範囲が駆動周波数の変化する範囲となる。出力電流の変化によるδの変化と共振周波数の変化とを同時に考慮した出力電流からの振幅への帰還は、駆動周波数の変化する範囲をさらに縮小することができる。
【0084】
出力電圧が搬送波の周波数に帰還され、かつ出力電流が搬送波の振幅の帰還されていない場合、共振回路を駆動する搬送波の振幅は近似的に一定である。したがって負荷が重い場合には搬送波の周波数は共振周波数に近づき、負荷が軽い場合には共振周波数から離れる。つまり搬送波の周波数は負荷により大幅に変化する。搬送波の振幅を負荷により変化させることにより、すなわち出力電流を振幅に帰還することにより、負荷の重い場合には大きな振幅の搬送波で駆動し、また軽い場合には小さい振幅の搬送波で駆動することにより、搬送波の周波数の変化する範囲を狭くすることが可能となり、周波数を近似的に一定に保つことができる。
方程式m(h)=0の根
【0085】
帰還が平衡点の近傍で安定である必要十分条件は、固有多項式のすべての根の実部が負であることである。ここでは回路の実装が容易な、固有多項式が少なくとも2個の負の実根を持つ場合について、安定なパラメータが選べることを示す。
【0086】
固有多項式mB(h)から導かれる方程式mB(h)=0の根の配置を調べる。固有多項式mA(h)についても同様である。数式199で定義された固有多項式mB(h)から導かれる方程式mB(h)=0を調べるために、f1(h)とf2(h)とを次のように定義する。
【数204】
【数205】
このとき
【数206】
が成り立ち、mB(h)を、
【数207】
と書いたときの係数a0、a1 は
【数208】
【数209】
と与えられる。したがってmB(h)=0の4根の和をSとすると
【数210】
となる。
【0087】
グラフy=f1(h)について考える。グラフy=f1(h)の第1項と第2項のグラフを図6において点線で示す。y=f1(h)の第一項は、すくなくとも原点からh=-1/μまでの区間で負となる下に凸なhに関する4次式である。第二項は少なくとも原点からh=-H/Gまたは h=-(δ2+φ2)/δまでの区間で負となるhに関する3次式である。Gが小さく、H/G>δ+φ/δの場合には、原点からh=-(δ2+φ2)/δの区間で負となる。これから正の数hzが存在して、グラフy=f1(h) は、φによらず原点からh=-hzまでの区間で負となることが分かる。また第一項は4次式であり、第二項は3次式であることから、y=f1(h)は下に凸であることが分かる。
【0088】
グラフy=f2(h)は上に凸な2次式であり、φeとweffeとに依存する。f2(h)=0の根を原点とhzとの区間に実根αとして配置し、このαに隣接する実根をβとして
【数211】
と配置すると、グラフy=f2(h)はh軸上のαとβとを通り、φeとweffeの値に応じて頂点の高さが変化する上に凸な放物線であるので、図6から分かるように、mB(h)=0はφeによらず2個の実根を持つ。この2根はグラフy=f2(h)上に拘束される。mB(h)=0は4次方程式である。残りの2根が実根である場合、 mB(h)=0が4個の実根を持つので根はすべて負となり、帰還は安定となる。残りの2根が虚根である場合には、虚根の実部をα、βと数式210 から評価することができる。虚根の実部のh軸上の位置はα βの配置により制御できる。αとβのh軸上の位置はパラメータE、A、Bにより制御できる。つまりE、A、Bを適切に選ぶことにより虚根の実部をh軸上の望ましい位置に配置することが可能となる。E、A、Bを適切に選ぶことにより安定な帰還を実現することができる。
【発明の効果】
【0089】
本発明は、共振回路から出力される高周波交流を整流して得られる出力電圧を、共振回路を駆動する搬送波の周波数に帰還する安定化において、出力電流を共振回路を駆動する搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流の変化に対して搬送波の周波数の変化する範囲を狭めることができる。また本発明は、共振回路から出力される高周波交流を整流して得られる出力電流を共振回路を駆動する搬送波の周波数へ帰還する安定化において、出力電圧を共振回路を駆動する搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流の変化に対して搬送波の周波数の変化する範囲を狭めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
本発明の実施例として、共振回路として圧電トランスを使用した直流安定化電圧源と直流安定化電流源とについて、それぞれをシミュレートするシミュレーション用回路とシミュレーションの結果を示す。
【0091】
理想電圧源の出力インピーダンスは0であり、理想電流源の出力インピーダンスは無限大である。一般に、電圧源の出力インピーダンスが低く、電流源の出力インピーダンスは高い。電源は理想電圧源に出力インピーダンスを直列に結合した電源として表されることが多いが、これは理想電流源に出力インピーダンスを並列に結合した電源と相互に変換できる。圧電トランスの出力を整流するダイオードブリッジからの出力は直流電圧源とも直流電流源とも考えることができる。電圧と電流が双対であることを考えると直流安定化電圧源を直流安定化電流源に変換することができる。
【実施例1】
【0092】
直流安定化電圧源
【0093】
図7は圧電トランスを共振回路として使用した直流安定化電圧源の模式図である。この電圧源は電圧発生回路と帰還回路とから構成される。電圧発生回路はドライバー回路、共振回路として使用される圧電トランス、整流平滑回路から構成される。帰還回路は誤差増幅器、電流検出器、周波数変調回路と振幅変調回路とから構成される。ドライバー回路は外部の電源よりドライバー回路に供給される直流電圧を、周波数変調回路の出力電圧に対応した周波数を持つ高周波交流に変換する。電流検出器と振幅変調回路はこの高周波交流の振幅を変調する。周波数と振幅の変調された高周波交流が搬送波であり、圧電トランスを駆動する。
【0094】
圧電トランスは共振を示す。圧電トランスから出力される高周波交流の振幅は、これに入力された高周波交流の周波数と振幅に依存して変化する。整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電圧に変換し、これを電圧源の出力として負荷に供給するとともに誤差増幅器と電流検出器に入力する。
【0095】
誤差増幅器は帰還回路に入力された出力電圧と、出力電圧を設定するために外部から供給される参照電圧とを比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路に入力する。周波数変調回路は入力に比例した周波数をドライバー回路に出力する。また電流検出器は検出された出力電流により振幅を変調する。このようにして出力電圧と出力電流とは圧電トランスを駆動する高周波交流である搬送波の周波数と振幅に帰還される。
誤差増幅器
【0096】
誤差増幅器は出力電圧と参照電圧を比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路と振幅変調回路に入力する。周波数変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。振幅変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。また電流検出器は検出された出力電流により振幅を変調する。このようにして出力電圧と出力電流とは圧電トランスを駆動する高周波交流である搬送波の周波数と振幅に帰還される。
周波数変調回路
【0097】
誤差増幅器の出力すなわち出力電圧と参照電圧の誤差を搬送波の周波数へ帰還する場合、特許文献1および3により、周波数変調回路が原点の近傍に極の配置されている伝達関数を備えていることが安定化に貢献する。誤差の搬送波の周波数への帰還には、電圧発生回路による遅れと圧電トランスによる遅れの補償が必要である。このため周波数変調回路は、この遅れを補償するゼロ点と原点に位置する極とを備えた伝達関数を通して誤差を変換する。
振幅変調回路
【0098】
振幅変調回路は、誤差増幅器の出力すなわち出力電圧と参照電圧の誤差を搬送波の振幅に帰還することにより出力電圧を安定化する。誤差の振幅への帰還は圧電トランスと整流平滑回路による遅れの補償が必要である。誤差は、遅れにより生成される極を補償するゼロ点を備えた伝達関数を通して変換され搬送波の振幅に帰還される。
【0099】
振幅変調回路は、周波数変調回路の伝達関数が含む遅れの大きい績分を含まないので、振幅への帰還は周波数への帰還にくらべて遅れの小さな帰還となる。誤差を短い遅れで出力電圧に帰還することができる。このため誤差の微分を搬送波の振幅への帰還に有効に利用できる。
ドライバー回路
【0100】
ドライバー回路は、フェイズシフトモードで動作するフルブリッジと、フルブリッジを構成する4個のスイッチをオン・オフするゲートパルスを生成するゲートパルス生成回路とから構成される。互いに近似的にコンプリメンタリなゲートパルスによってオン・オフされる2個のスイッチを直列に接続したハーフブリッジを2組並列に接続することによりフルブリッジが構成される。フェイズシフトモードの動作では、フルブリッジを構成する2組のハーフブリッジのゲートパルス間の位相の差が外部の信号によって制御される。
【0101】
2組のハーフブリッジをオン・オフするゲートパルスは同一の周波数を持ち、これが搬送波の周波数の2倍なる。ゲートパルス生成回路の周波数入力はこのゲートパルスの周波数を制御する。フェイズシフトモードでは、一方のハーフブリッジをオン・オフするコンプリメンタリなゲートパルスと他方のハーフブリッジをオン・オフするコンプリメンタリなゲートパルスの間の位相差が搬送波の振幅を制御する。ゲートパルス生成回路の振幅入力はこのゲートパルス間の位相の差を制御する。
【0102】
ゲートパルス生成回路は、周波数変調回路が出力する周波数と、振幅変調回路と電流検出器とが出力するゲートパルス間の位相差とを備えた4個のゲートパルスを生成する。
圧電トランス
【0103】
圧電トランスはあらかじめ分極された圧電素子が持つ圧電効果を利用する。圧電素子に外力を加えて変形させれば電圧が発生し、逆に電圧を加えれば応力が発生し変形する。圧電トランスはこの効果を利用して、1次側で電気振動を機械振動に変換して二次側に伝送し、二次側でこれを再び電気振動に戻すことにより、一次側から二次側に電気エネルギーを伝送する。圧電トランスは内部に共振回路を含む。このため圧電トランスは、通常の電磁トランスと異なり、鋭い周波数特性や大きな負荷依存性を示す。圧電トランスの入力電圧と出力電圧の比を昇圧比と定義すると、圧電トランスは共振周波数の付近で大きな昇圧比を示す。
【0104】
電圧源に使用される圧電トランスは出力インピーダンスの小さい降圧型圧電トランスである。つまり一次側に入力された搬送波から、その振幅の縮小された搬送波が二次側から出力される。圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数は、圧電トランスの共振周波数より高くなるように選ばれている。したがって、出力電圧が参照電圧より高い場合には、周波数を上げて共振周波数から遠ざかり、また逆の場合には周波数を下げて共振周波数に近づく。
整流平滑回路
【0105】
圧電トランスから出力される高周波交流すなわち搬送波の振幅は、これに入力された搬送波の周波数と振幅に依存して変化する。整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電圧に変換し、これを電圧源の出力として帰還回路すなわち誤差増幅器と電流検出器に入力するとともに負荷に供給する。整流平滑回路は整流を行うダイオードブリッジとリップルの低減を目的とする出力キャパシタンスから構成される。
電流検出器
【0106】
電流検出器は、出力電流を検出する回路と、この電流をドライバー回路の振幅入力に変換する変換関数の回路とからなる。電流検出器は整流平滑回路から出力される電流を検出し、検出した電流に応じて搬送波の振幅を変調するために、この電流に対応する変換関数の値をドライバー回路に入力する。
シミュレーション用回路
【0107】
この直流安定化電圧源のシミュレーション用回路を図8に示す。シミュレーション用回路における電圧発生回路は、圧電トランスがその等価回路に置き換えられていることを除けば、回路は忠実に再現されている。シミュレーション用回路における帰還回路は基本的には線形な回路である。このため帰還回路の入力と出力の関係を再現する簡単な回路がシミュレーション用回路に採用されている。入力と出力の関係を数学的関係式を用いて指定できるビヘービアモデルと呼ばれる回路素子をシミュレーションに使用することができる。多数のビヘービアモデルが帰還回路に使われている。
【0108】
図8は帰還回路を構成する誤差増幅器、周波数変調回路、振幅変調回路並びに電流検出器のシミュレーション用回路を示すとともに、ドライバー回路のシミュレーション用回路を示す。
圧電トランスの等価回路
【0109】
この電圧源で使用されている降圧型圧電トランスの等価回路とそのパラメータを図9に示す。Cd1に較べて Cd2の大きいことが降圧型圧電トランスの特徴である。
誤差増幅器のシミュレーション用回路
【0110】
誤差増幅器のシミュレーション用回路は図8に示されている。誤差増幅器は引き算回路により構成される。引き算回路は2入力1出力のビヘービアモデルと増幅器からなる。このビヘービアモデルは入力の差が出力となるように設定されている。
周波数変調回路のシミュレーション用回路
【0111】
周波数変調回路のシミュレーション用回路を図8に示されている。周波数変調回路は、積分器、ゲイン1の増幅器、微分器とこれに付属する積分回路、2入力の加算器2個とから構成される。積分器はゲインEの増幅器とビヘービアモデルとから構成される。関数SDT(x)に設定されビヘービアモデルは入力の時間積分を出力する。このビヘービアモデルからの出力がゲインEの増幅器に入力され、この増幅器からの出力が積分器の出力となる。
【0112】
微分器はゲインBの増幅器とビヘービアモデルとから構成される。関数DDT(x)に設定されビヘービアモデルは入力の時間微分を出力する。このビヘービアモデルからの出力がゲインBの増幅器に入力され、この増幅器からの出力が微分器の出力となる。微分器に付属する積分回路は高周波のノイズを積分することにより抑えることを目的としている。
【0113】
積分器のゲインをE、微分器のゲインをBとするとき、周波数変調回路の伝達関数は
【数212】
によって与えられる。
振幅変調回路のシミュレーション用回路
【0114】
振幅変調回路のシミュレーション用回路は図8に示されている。このシミュレーション用回路では誤差増幅器の出力は増幅器により増幅されドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
電流検出器のシミュレーション用回路
【0115】
電流検出器のシミュレーション用回路は図8に示されている。出力電流は出力電圧0 Vに設定されている電圧源V6によって検出され、ビヘービアモデルABM29によって電圧に変換される。電圧に変換された出力電流は、ビヘービアモデルABM101とビヘービアモデルABM110によって定義された関数により変換されドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
ドライバー回路のシミュレーション用回路
【0116】
ドライバー回路を構成するブリッジとゲートパルス生成回路のシミュレーション用回路は図8に示されている。スイッチを使ってブリッジが構成される。ゲートパルス生成回路はビヘービアモデルを組み合わせてシミュレーションされる。周波数変調回路の出力に比例した周波数の矩形波を生成する電圧制御発振器は、2個のビヘービアモデルAすなわちABM26、BすなわちABM13、さらにABM14とABM15からなる矩形波生成回路を組み合わせて実現される。ビヘービアモデルAは入力(すなわち周波数変調回路の出力)の積分を出力する。ビヘービアモデルBには数式
【数213】
が設定されている。この結果、ビヘービアモデルAに入力される電圧(すなわち周波数変調回路の出力)に比例した周波数を持つサイン波がビヘービアモデルBから出力される。矩形波生成回路はこのサイン波の閾値を検出することにより矩形波を生成し、スイッチS1とS2とからなるハーフブリッジを駆動する2個のゲートパルスを出力する。
【0117】
スイッチS3とS4とからなるハーフブリッジを駆動する2個のゲートパルスは、振幅制限器GLIMIT1とビヘービアモデルCすなわちABM19と矩形波生成回路ABM17、ABM18とから構成される回路によって生成される。振幅制限器には振幅の上限HIと下限LOおよび利得GAINを指定することができる。ビヘービアモデルCには次の数式
【数214】
が設定されている。この結果、数式213で定義されるサイン波は数式214で定義されるサイン波に対して位相の遅れが
【数215】
である。すなわちハーフブリッジを駆動するゲートパルスの間の位相差は振幅制限器の出力によって制御される。つまり搬送波の振幅は、振幅変調回路の出力と電流検出器の出力の和によって制御される。
安定な帰還のシミュレーション例
【0118】
このようにして構成された帰還が安定であることを、シミュレーション用回路 8を用いて示す。負荷抵抗25Ωすなわち図8において imoimo=0.1 の場合と、負荷抵抗0.83Ωすなわちimoimo=3の場合とについて、シミュレーションの結果を図10と図11とに示す。それぞれの図には横軸を時間軸として、縦軸1を出力電圧すなわち誤差増幅器の入力(ABM21:IN1)、縦軸2を搬送波の周波数を制御する電圧制御発振器の入力(ABM26:IN)、縦軸3を搬送波の振幅を制御するゲートパルス間の位相差を制御する入力(ABM19:IN1)としてそれぞれの時間的経過が示されている。
負荷による周波数の変化
【0119】
出力電流を J とし、定数a、b、cを適当に選び、搬送波の振幅にJの関数
【数216】
を加法的に帰還することにより、広い範囲の負荷に対して搬送波の周波数を狭い範囲に限定できることをシミュレーションにより示す。図8に示されたシミュレーション用回路を用いた負荷と搬送波の周波数の関係を示す。図8では負荷は2.5/imoimo Ωである。図12では、0.1ステップで0.1から3まで変化させたパラメータimoimoを横軸に、負荷抵抗に対する搬送波の周波数(最大値と最小値の中央の値)を縦軸1に、出力電流(最大値と最小値の中央の値)を縦軸2に示す。
【実施例2】
【0120】
直流安定化電流源
【0121】
図13は圧電トランスを共振回路として使用した直流安定化電流源の模式図である。この電流源は電流発生回路と帰還回路とから構成される。電流発生回路はドライバー回路、共振回路として使用される圧電トランス、整流平滑回路から構成される。帰還回路は誤差増幅器、電圧検出器、周波数変調回路と振幅変調回路とから構成される。ドライバー回路は、外部の電源よりドライバー回路に供給される直流電圧を、圧電トランスを駆動する高周波交流に変換する。周波数変調回路はこの高周波交流の周波数を変調する。振幅変調回路と電圧検出器はこの高周波交流の振幅を変調する。
誤差増幅器
【0122】
誤差増幅器は出力電流を電圧に変換して、出力電流を設定するために外部から供給される参照電圧と比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路と振幅変調回路に入力する。周波数変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。振幅変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。また電圧検出器は検出された出力電圧により振幅を変調する。このようにして出力電流と出力電圧とは圧電トランスを駆動する高周波交流である搬送波の周波数と振幅に帰還される。
周波数変調回路
【0123】
誤差増幅器の出力すなわち電圧に変換された出力電流と参照電圧の誤差を搬送波の周波数へ帰還する場合、特許文献1および3により、周波数変調回路が原点の近傍に極の配置されている伝達関数を備えていることが安定化に貢献する。誤差の搬送波の周波数への帰還には、電流発生回路による遅れと圧電トランスによる遅れの補償が必要である。このため周波数変調回路は、この遅れを補償するゼロ点と原点に位置する極とを備えた伝達関数を通して誤差を変換する。
振幅変調回路
【0124】
振幅変調回路は、誤差増幅器の出力すなわち電圧に変換された出力電流と参照電圧の誤差を搬送波の振幅に帰還することにより出力電流を安定化する。誤差の振幅への帰還は圧電トランスと整流平滑回路による遅れの補償が必要である。遅れにより生成される極を補償するゼロ点を備えた伝達関数を通して誤差は変換され搬送波の振幅に帰還される。
【0125】
振幅変調回路は、周波数変調回路の伝達関数が含む遅れの大きい績分を含まないので、振幅への帰還は周波数への帰還にくらべて遅れの小さな帰還となる。誤差を短い遅れで出力電流に帰還することができる。このため誤差の微分を搬送波の振幅への帰還に有効に利用できる。
ドライバー回路
【0126】
直流安定化電流源には、直流安定化電圧源と同じドライバー回路が使用される。
圧電トランス
【0127】
広い範囲の負荷に対して定電流を供給するために、広い範囲の電圧を生成することが必要となり、このため直流安定化電流源に使用される圧電トランスは直流安定化電圧源に使用される降圧型圧電トランスではなく、出力インピーダンスの大きい昇圧型圧電トランスが使用される。つまり一次側に入力された搬送波から、その振幅の拡大された搬送波が二次側から出力される。圧電トランスの出力に負荷抵抗を接続し、入力電圧と出力電圧の比である昇圧比を考えると、昇圧型圧電トランスは共振周波数の付近で大きな昇圧比を示すことが分かる。
【0128】
圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数は、圧電トランスの共振周波数より高くなるように選ばれている。したがって、出力電圧が参照電圧より高い場合には、周波数を上げて共振周波数から遠ざかり、また逆の場合には周波数を下げて共振周波数に近づく。
整流平滑回路
【0129】
圧電トランスから出力される高周波交流すなわち搬送波の振幅は、これに入力された搬送波の周波数と振幅に依存して変化する。整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電流に変換し、これを電流源の出力として誤差増幅器と電圧検出器に入力するとともに負荷に供給する。整流平滑回路はキャパシタとダイオードをカスケードに接続した昇圧整流回路とリップルの低減を目的とする出力キャパシタンスから構成される。電流出力に必要な電圧は昇圧整流回路により生成される。
電圧検出器
【0130】
電圧検出器は、出力電圧を検出する回路と、この電圧をドライバー回路の入力に変換する変換関数の回路とからなる。電圧検出器は整流平滑回路から出力される電圧を検出し、検出した電圧により搬送波の振幅を変調するために、この電圧に対応する変換関数の値をドライバー回路に入力する。
シミュレーション用回路
【0131】
この直流安定化電流源のシミュレーション用回路を図14に示す。シミュレーション用回路における電流発生回路は、圧電トランスがその等価回路に置き換えられていることを除けば、直流安定化電流源の回路が忠実に再現されている。シミュレーション用回路における帰還回路は基本的には線形な回路である。このため帰還回路の入力と出力の関係を再現する簡単な回路がシミュレーション用回路に採用されている。
圧電トランスの等価回路
【0132】
この電流源で使用されている圧電トランスの等価回路とそのパラメータを図15に示す。Cd1に較べてCd2の小さいことが昇圧型圧電トランスの特徴である。
誤差増幅器のシミュレーション用回路
【0133】
誤差増幅器のシミュレーション用回路は図14に示されている。誤差増幅器は出力電流を検出する電圧源V6と電流を電圧に変換するビヘービアモデルと引き算回路により構成される。引き算回路は2入力1出力のビヘービアモデルと増幅器からなる。このビヘービアモデルは入力の差が出力となるように設定されている。引き算回路の出力が増幅器によって増幅され出力となる。
周波数変調回路のシミュレーション用回路
【0134】
周波数変調回路のシミュレーション用回路は、直流安定化電圧源のシミュレーション用回路で使用された周波数変調回路と同じ回路が使用される。
振幅変調回路のシミュレーション用回路
【0135】
振幅変調回路のシミュレーション用回路は図14に示されている。このシミュレーション用回路では誤差増幅器の出力とその微分がドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
電圧検出器のシミュレーション用回路
【0136】
電圧検出器のシミュレーション用回路は図8に示されている。出力電圧は、ビヘービアモデルABM41とビヘービアモデルABM10によって定義された関数により変換されドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
ドライバー回路のシミュレーション用回路
【0137】
ドライバー回路のシミュレーション用回路は、直流安定化電圧源のシミュレーション用回路で使用されたドライバー回路と同じ回路が使用される。
安定な帰還のシミュレーション例
【0138】
このようにして構成された帰還が安定であることを、図14のシミュレーション用回路を用いて示す。出力電流が1 mA、1.5 mA、2 mAの場合について、それぞれのシミュレーションの結果を図16、17、18に示す。それぞれの図には横軸を時間軸として、縦軸1を搬送波の振幅を制御するゲートパルス間の位相差を制御する入力(ABM19:IN1)、縦軸2を搬送波の周波数を制御する電圧制御発振器の入力(ABM26:IN)、縦軸3を出力電流すなわち誤差増幅器の入力(ABM31:IN1)として、それぞれの時間的経過が示されている。
出力電流による周波数の変化
【0139】
図16、17、18から分かるように、電圧検出器の出力に応じて搬送波の振幅が変化することにより、1 mAから2 mAの範囲の出力電流に対して搬送波の周波数は近似的に一定に保たれていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、高周波交流である搬送波によって駆動される共振回路から出力される高周波交流を整流することにより生成される出力を共振回路を駆動する搬送波の周波数と振幅に帰還することにより、負荷の変化に伴う搬送波の周波数の変化する範囲を限定することができる。このような帰還が用意されていないときには、負荷が重い場合には共振回路は共振周波数に近い周波数で駆動され、負荷が軽い場合には共振周波数から離れた周波数で駆動される。共振回路の特性たとえば搬送波の周波数の変化に対する出力の変化する割合は周波数によって大幅に変化する。このことが共振回路から生成される出力を安定化する帰還回路の設計を難しくしている。負荷の変化に伴う搬送波の周波数の変化する範囲を限定することにより、共振回路の諸特性を近似的に一定と考えることが可能になり、このことが帰還回路の設計を容易にし、出力の特性の見積もりを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】負荷のモデル
【図2】負荷の標準モデル
【図3】抵抗とキャパシタンスの並列結合が入力インピーダンス
【図4】出力電圧と出力電流の帰還
【図5】KALをノイズとみなした帰還
【図6】方程式mB(h)=0の根の配置
【図7】圧電トランスを使った直流安定化電圧源の模式図
【図8】シミュレーション用回路
【図9】降圧型圧電トランスの等価回路
【図10】負荷抵抗がimoimo=0.1に相当する場合
【図11】負荷抵抗がimoimo=3に相当する場合
【図12】負荷と搬送波の周波数
【図13】圧電トランスを使った直流安定化電流源の模式図
【図14】シミュレーション用回路
【図15】圧電トランスの等価回路
【図16】出力電流 1 mA
【図17】出力電流 1.5 mA
【図18】出力電流 2 mA
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器の出力を整流して生成される電源の直流出力を共振器を駆動する搬送波に帰還することにより電源の直流出力の安定化を実現する。
【背景技術】
【0002】
共振器を利用して電圧を発生する電源として、たとえば圧電トランスを共振器として利用して直流高電圧を発生する電源がある。共振の周波数依存性を利用して出力電圧を安定化する場合、出力電圧が共振器を駆動する搬送波の周波数に帰還される。与えられた出力電圧を実現する搬送波の周波数は負荷に依存して広い範囲にわたり、とりわけ共振周波数から離れている周波数に対応する軽い負荷に対する効率は低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-359967
【特許文献2】特開2005-137085
【特許文献3】特開2007-330091
【特許文献4】特願2007-018715
【特許文献5】PCT/JP2007/000477
【特許文献6】PCT/JP2007/000947
【特許文献7】特願2008-229540
【特許文献8】特願2009-529868
【0004】
特許文献1は、安定化された高電圧を提供する、効率のよい直流高電圧電源装置の簡単な回路の構成を提供することを課題とし、直流高電圧電源に、通常の電磁トランスではなく、圧電トランスによる高電圧発生手段を採用することにより効率の向上を計り、しかも高電圧を安定化するために圧電トランスの共振特性の周波数依存性を利用することにより、回路の簡素化と部品点数の減少を計ることにより課題を解決する。
【0005】
特許文献2は直流高電圧電源装置に関するもので、当該装置の出力電圧を安定化する帰還について、高電圧の発生に伴う遅れの大きい帰還とは独立な遅れの少ない帰還を実装することにより、出力電圧の安定化の精度の向上と応答の高速化を実現する。
【0006】
特許文献3は安定化直流電圧電源に関するものであり、共振器における共振の周波数依存性を利用する安定化において、原点の近傍に極の配置された伝達関数により出力電圧を共振器を駆動する搬送波の周波数に帰還する電源の構成とその回路定数を与える。
【0007】
特許文献4は安定化直流電圧電源に関するものであり、共振器における共振の周波数依存性を利用する安定化において、原点の近傍に極の配置されていない伝達関数により出力電圧を共振器を駆動する搬送波の周波数に帰還する電源の構成とその回路定数を与える。
【0008】
特許文献5は特許文献3,4を基にしたPCT 国際出願である。
【0009】
特許文献6は安定化直流電圧電源に関するものであり、共振器における共振の周波数依存性と振幅依存性とを利用する安定化において、出力電圧の誤差の共振器を駆動する搬送波の周波数への帰還と、出力電圧の誤差の共振器を駆動する搬送波の振幅への帰還とを備えた電源の構成とその回路定数を与える。
【0010】
特許文献7は特許文献2の拡張であり、特許文献3,4,5、6の発明を基礎としている。出力電圧の搬送波の周波数と振幅とへの帰還が具体的に与えられている。
【0011】
特許文献8は、特許文献6の国内に移行した対応した特許出願である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
たとえば電圧源において、出力電圧と参照電圧との誤差が共振器を駆動する搬送波の周波数と振幅とに帰還されている場合、帰還の定常状態では誤差は小さく、したがって搬送波の振幅も近似的に一定になる。このため負荷に応じて変化する搬送波の周波数の変化する範囲を、共振器の効率が良いある一定の範囲に限定することが困難となる。搬送波の周波数を負荷によらずある一定の範囲に限定できる安定な帰還を実現することにより効率を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
出力電圧を安定化する場合には出力電流を搬送波の振幅に帰還し、また出力電流を安定化する場合には出力電圧を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流あるいは出力電圧の変化が引き起こす搬送波の周波数の変化する範囲を限定する。電圧源と電流源は双対な関係にあるので、以下では電圧源について具体的に述べる。
【0014】
振幅が近似的に一定の搬送波により駆動される共振器からの出力は交流であり、交流の周波数は搬送波の周波数に一致するが、交流の振幅は搬送波の周波数に対して共振特性を示す。したがって共振器から出力される交流の整流により生成される直流電圧は搬送波の周波数に依存する。すなわち搬送波の周波数が共振器の共振周波数に近づくと直流電圧は高くなり、遠ざかると低くなる。
【0015】
また共振器から出力される交流の振幅は搬送波の振幅に近似的に比例する。このため、出力交流の整流によって生成される直流電圧は搬送波の周波数と振幅に依存する。一定の直流電圧を実現する搬送波の周波数と振幅とは、一方を決めると他方が決まる関係となる。
【0016】
たとえば、安定化が容易な実用的な帰還として、出力電圧と参照電圧との誤差が、原点に極の配置されている伝達関数により搬送波の周波数に帰還されているとき、まず誤差が搬送波の振幅へ帰還されていない場合について考える。この場合、振幅は近似的に不変であり、したがって振幅は初期値を保つ。帰還の定常状態では出力電圧と参照電圧は近似的に等しくなり、共振器を駆動する搬送波の周波数すなわち駆動周波数は振幅と負荷すなわち出力電流とに依存する。
【0017】
さらに誤差が原点に極の配置されていない伝達関数により振幅に帰還されている場合、帰還の定常状態では出力電圧と参照電圧が近似的に等しくなるので誤差は近似的に零となり、誤差の振幅への帰還は無効となる。つまり定常状態では振幅はその初期値に等しくなる。定常状態では負荷すなわち出力電流の如何にかかわらず搬送波の振幅は初期値に等しくなる。
【0018】
定常状態では電源の出力電流にかかわらず搬送波の振幅は初期値に近似的に等しくなるので、搬送波の周波数は出力電流に応じて変化する。すなわち出力電流が大きくなると周波数は共振周波数に近づき、小さくなると離れる。
【0019】
共振器を共振周波数から遠く離れた周波数の搬送波で駆動すると効率が低くなる。出力電流に依らず共振器の効率をある一定の範囲に保つためには、搬送波の周波数をある一定の範囲に限定することが必要となる。出力電流を搬送波の振幅に安定に帰還することにより、出力電流の変化が引き起こす駆動周波数の変化する範囲を限定する。
電源を近似する等価電源
【0020】
電源は搬送波を発生するドライバー回路と、ドライバー回路の出力である搬送波によって駆動される共振回路と、共振回路の出力である振幅変調された搬送波を整流することにより直流電圧に変換する整流平滑回路とを備える電圧発生回路と、整流平滑回路の出力である直流電圧とこの電源の出力電圧を設定するためにあらかじめ与えられている参照電圧と比較する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路とを備える帰還回路を含み、周波数変調回路の出力は前記ドライバー回路の入力となりドライバー回路の発生する搬送波の周波数の制御を行い、直流電圧を搬送波の周波数に帰還する。
【0021】
この電源の動作を解析することを目的として、特許文献3,特許文献5、特許文献6において電源を近似する等価電源が導入された。等価電源は、搬送波を発生するドライバー回路と、ドライバー回路の出力である搬送波によって駆動される仮想共振回路と、その出力が入力される仮想整流平滑回路とからなる仮想電圧発生回路と、仮想整流平滑回路の出力である直流電圧を参照電圧と比較する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力よって決まる周波数を発生し、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路を備える帰還回路を含み、周波数変調回路の出力は前記ドライバー回路に入力され、ドライバー回路の発生する搬送波の周波数の制御を行い、仮想整流平滑回路の出力である直流電圧を搬送波の周波数に帰還する。
【0022】
仮想電圧発生回路はドライバー回路と仮想共振回路と仮想整流平滑回路とからなる。仮想共振回路は、共振回路と同様に周波数変調された搬送波を入力とし、振幅変調された搬送波ではなく、そのエンベロープを出力する。また仮想整流平滑回路はこのエンベロープを入力とし、エンベロープに対して一次遅れのフィルターとして作用し、整流平滑回路の出力と同等の結果を出力する。
【0023】
この等価電源は連立微分方程式系によりその動作を記述することができるので、安定性の数理的な解析が可能となる。微分方程式系を導出し、これから等価電源の出力電圧が参照電圧の近傍で安定となる条件を明らかにする。この条件を基にして安定な帰還を実現する実際の回路を構成し、また回路定数を与えることができる。
【0024】
等価電源は、特許文献3において導入され、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献8の発明はこの等価電源を基礎としている。これらの文献における等価電源の表記法は、それぞれの文献において新規に導入されたもの以外は、以下に述べる例外を除いて、それ以前の文献の表記法に従っている。特許文献6において、それ以前の文献における rr および ri の定義が変更され、rr およびri が新に定義された。特許文献8は特許文献6の表記法に従っている。
出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源
【0025】
周波数変調された搬送波の入力される共振回路が出力する振幅変調された搬送波から整流平滑により生成される出力電圧と参照電圧の誤差を、共振回路に入力される搬送波の周波数に帰還することにより安定化する安定化直流電源において、出力電圧の誤差を共振回路に入力される搬送波の周波数へ帰還する遅れの大きい帰還ともに、出力電圧を搬送波の振幅へ帰還する遅れの小さい帰還を同時に実装することにより、搬送波の周波数の急速な変化の抑制と出力電圧の周波数応答の向上を実現する。
【0026】
出力電圧と参照電圧との誤差が搬送波の周波数とともに、搬送波の振幅に帰還される電源を解析するために、特許文献6において、出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源が導入された。出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源が、出力電流が搬送波の振幅に帰還される電源を解析する基礎となるので、この出力電圧の誤差が振幅に帰還される等価電源について簡単に説明する。
搬送波の可変な振幅と(仮想)共振回路および(仮想)整流平滑回路
【0027】
共振回路の共振周波数をωr、Q値をQ、共振周波数における昇圧比をgrとするとき、δ、ω0およびcを
【数1】
【数2】
【数3】
と定義する。
【0028】
定数wと時間の関数xからなる関数w+xを振幅とし、時間の関数ψを位相とした周波数変調された搬送波を
【数4】
と書いたとき、数式4のψからφを
【数5】
と定義することにより数式4に記載された周波数変調された搬送波の周波数を
【数6】
と表し、rrおよびriのこれまでの定義を変更し、以下のように新たに
【数7】
【数8】
と定義する。このとき(仮想)共振回路に数式4で与えられる搬送波を入力したとき(仮想)共振回路から出力される搬送波の振幅は、連立微分方程式
【数9】
【数10】
を満たすp、qにより
【数11】
と表すことが出来るので、共振回路から出力される搬送波は、整流平滑を行う(仮想)整流平滑回路に入力され、直流電圧に変換される。(仮想)整流平滑回路から出力される直流電圧をzとすると、(仮想)整流平滑回路の時定数をμ、振幅の乗数をνとして、zは微分方程式
【数12】
に従う。
振幅への帰還
【0029】
この整流平滑回路からの出力電圧zとあらかじめ出力に電圧を設定する参照電圧λとを比較し、電圧の誤差を搬送波の振幅w+xに帰還する帰還回路の伝達関数を、Gを正の定数として
【数13】
と表す。数式13は、出力電圧zが参照電圧より高いときにはxは負となり搬送波の振幅w+xは減少し出力電圧を下げる方向に働く。同様にして出力電圧が参照電圧より低い時には出力電圧を上げる方向に働く。
【0030】
数式13を数式9、数式10に代入することにより次式を得る。
【数14】
【数15】
出力電圧の搬送波の周波数への帰還
【0031】
この整流平滑回路からの出力電圧zとあらかじめ出力に電圧を設定する参照電圧λとを比較し、電圧の誤差を搬送波の周波数φに帰還する帰還回路の伝達関数は、数式5に定義されたφと数式12のzと参照電圧λと正数k、d、E、A、Bとを使って、φ≧0として
【数16】
と表せる。
出力電圧の2階微分
【0032】
出力電圧zの微分は数式12によって与えられる。これから出力電圧zの時間tに関する2階微分は次のようになる。
【数17】
数式17に数式12、数式14および数式15を代入して整理すると次式を得る。
【数18】
数式18に数式13を代入すると次式を得る。
【数19】
出力電圧の搬送波の周波数への伝達関数
【0033】
数式16を書き直すと次のようになる。
【数20】
数式20において、zの1階微分を数式12で置き換え、zの2階微分を数式19で置き換えると次式を得る。
【数21】
微分方程式系による電源の記述
【0034】
数式21を、数式14と数式15および数式12とを連立させることにより得られる次の正規な微分方程式系は、出力電圧を搬送波の周波数に帰還するとともに搬送波の振幅に帰還する安定化直流電源を記述する。
【数22】
【数23】
【数24】
【数25】
微分方程式系の平衡点
【0035】
微分方程式系数式22〜25の平衡点では
【数26】
が成り立つ。数式17と数式26から平衡点では
【数27】
が成り立つ。平衡点は次の連立一次方程式の解である。
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
【0036】
この解である平衡点をpe、qe、ze、φeとすると、数式20と数式27から
【数32】
であることが従い、数式13から平衡点においてx=0となる。すなわち任意の正のwが出力電圧zeを生成できる搬送波の振幅である場合に、これを平衡点における搬送波の振幅とする搬送波の周波数の存在することがわかる。ここでrを
【数33】
と表すときpe、qe、zeおよびλはφeの関数として次にように表すことができる。
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
方程式系の安定性
【0037】
Lyapunovの方法により平衡点の近傍での微分方程式系の安定性を調べる。p、q、z、φをそれぞれpe、qe、ze、φeの近傍で次のように展開する。
【数38】
【数39】
【数40】
【数41】
この式を微分方程式系数式22〜25に代入し高次の項を無視することによりΔp、Δq、Δz、Δφに関する次のような正規な微分方程式系を得る。
【数42】
【数43】
ここで
【数44】
【数45】
【数46】
【0038】
このとき、行列Mの要素はpe、qe、ze、φeの関数となるが、数式34〜数式37により、これらはφeの関数と考えることができる。したがってMの固有多項式を m(h) とし、
【数47】
と書く。係数a0、a1、a2、a3、a4は以下のようにφeの関数となる。
【数48】
【数49】
【数50】
【数51】
【数52】
ここで、rは次にように定義されている。
【数53】
【0039】
固有多項式 m(h) の係数a0、a1、a2、a3、a4が数式48〜数式52で与えられる場合のm(h)は次のように書くことができる。
【数54】
【0040】
出力電圧から振幅への帰還が数式13ではなく
【数55】
で与えられる場合の係数a0、a1、a2、a3、a4は以下の通りである。
【数56】
【数57】
【数58】
【数59】
【数60】
【0041】
固有関数m(h)の係数a0、a1、a2、a3、a4が数式56〜数式60で与えられる場合のm(h)は次のように書くことができる。
【数61】
搬送波の周波数と振幅の適切な関係
【0042】
出力電圧と参照電圧の誤差を搬送波の周波数に帰還する伝達関数が数式62のように原点に極の配置されている場合、
【数62】
wを正の定数とすると、出力電圧zを搬送波の振幅w+xに数式13の
【数63】
あるいは数式55の
【数64】
によって帰還するとき、平衡点では振幅は周波数に依らずwの一定値を取る。すなわち平衡点における搬送波の周波数と振幅の関係は、周波数が共振周波数に近いときには振幅が大きくなり、また共振周波数から離れるにともない小さくなる適切な関係にはない。平衡点を実現する搬送波の周波数と振幅とについてこのような適切な関係を実現するためには付加的な条件が必要になる。
適切な関係を実現する付加的条件
【0043】
多様な付加的条件を考えることができる。ここでは電源から出力される電流Jを考え、出力電圧zとともに出力電流Jを搬送波の振幅w+xにKを正の定数として
【数65】
あるいは
【数66】
により帰還することを考える。このような帰還を考える理由は次に通りである。
【0044】
数式65あるいは数式66の帰還が有効な振幅weffを
【数67】
と定義し、平衡点における有効振幅をweffeとかく。出力電流Jが出力電圧zと独立に変化すると仮定できる場合には、数式65あるいは66で定義される帰還の組み込まれた微分方程式系の固有多項式は、数式63あるいは64により帰還が定義される微分方程式系すなわち数式22〜25からなる微分方程式系の固有多項式においてwをweffeに置き換えることにより得られると予想できることにある。
【0045】
さらに、適当なxの単調な関数f(x)を使って出力電流Jを変換したf(J)を搬送波の振幅に帰還する
【数68】
あるいは
【数69】
の場合にも、weffを次のように
【数70】
と定義することにより、固有多項式は同様な置き換えることにより得られると予想できる。
【0046】
これらの予想が正しい場合、平衡状態を考えると、出力電流が大きい重い負荷に対しては搬送波の振幅が大きくなり、また軽い負荷に対しては振幅が小さくなる。つまり共振周波数に近い周波数では搬送波の振幅が大きくなり、離れた周波数では振幅が小さくなる、周波数と振幅の適切な関係を実現する事ができる。
【0047】
これらの予想は出力電流Jが出力電圧zと独立に変化する場合のみならず、出力電流Jの出力電圧zへの依存が近似的に独立と考えられる場合にも正しいことが以下に示される。この結果、出力電流が振幅に帰還されている微分方程式系の安定性は、数式22〜25からなる微分方程式系の安定性に帰着できることが分かる。さらに出力電流を適切な関数 f(・)で変換することにより搬送波の周波数を近似的に一定に保つことができるので、出力電流が振幅に帰還される微分方程式系を安定化する定数の選択を著しく容易にする。
負荷のモデル
【0048】
電圧源に接続された負荷を考える。負荷は2端子であるが、負荷を流れる電流は負荷の入力インピーダンスとともに負荷の状態に依存する。つまり負荷は負荷電流を発生する負荷電流源を含む。負荷電流源の発生する電流は、負荷の内部状態だけに依存し、負荷に印加される電圧には依存しない。すなわち負荷を流れる電流は印加される電圧に依存する部分と印可される電圧に依存しない部分とからなる。
【0049】
たとえば図1に示す負荷を考える。負荷は二端子である。この負荷には入力端子を両端とする二つの独立した電流の回路がある。すなわち負荷電流源を含む回路と、これを含まない回路である。電源から出力される出力電流をJ、負荷電流源を含む回路を流れる電流をIS、電流源を含まない回路を流れる電流をiとすると図から明らかなように
【数71】
また図に示されているインピーダンスZ1、Z2を考慮すると、負荷の入力端子に印加されている電源の出力電圧をzとして
【数72】
数式71と72とから出力電流Jは
【数73】
と表すことができる。
負荷の標準モデル
【0050】
負荷の標準モデルを図2に示す。標準モデルではZの入力インピーダンスと出力Iの負荷電流源とが並列に結合されている。図1の負荷のモデルは数式73から分かるように、入力インピーダンスが Z1+Z2 かつ出力がZ2IS/(Z1+Z2)の負荷電流源によって、数式74のように表すことができる。ここでJは電源からの出力電流である。
【数74】
負荷電流Iの簡単な微分方程式
【0051】
負荷電流Iは負荷の状態にだけ依存して変化する。言いかえると電流Iの変化を記述する微分方程式は電圧源の独立変数p、q、z、φに依存しない。負荷電流の変化を近似する最も簡単な微分方程式は一次遅れである。すなわち負荷が平衡状態に到達したのちに実際に消費される負荷電流をIeとすると、負荷電流の変化は
【数75】
により近似できる。負荷電流Iは時定数τの一次遅れで平衡点における負荷電流Ieに近づく。
出力電流の振幅への帰還の簡単な例
【0052】
数式65による帰還は、出力電流の搬送波の振幅へのもっとも簡単な帰還であろう。すなわち微分方程式系数式22〜25において、数式22、数式23、数式25を、Jを出力電流として次式で置き換える。
【数76】
【数77】
【数78】
ただし Kは正の定数である。Jは電圧源の出力電流である。数式74により書き換えると,微分方程式系は次のようになる。
【数79】
【数80】
【数81】
【数82】
これに負荷電流Iを記述す微分方程式として、たとえば数式75を微分方程式系に追加すると出力電流の振幅への帰還を記述する微分方程式系となる。
【数83】
平衡点
ALが定数の場合について安定性を考察する。微分方程式系数式79〜83の平衡点では
【数84】
が成り立つ。数式17と数式84から平衡点では
【数85】
が成り立つ。平衡点は次の連立一次方程式の解である。
【数86】
【数87】
【数88】
【数89】
【数90】
平衡点では
【数91】
が成り立つ。この解である平衡点をpe、qe、ze、φe、Ieとすると
【数92】
であることがわかる。ここでrを
【数93】
と表すときpe、qe、zeおよびλはφeの関数として次にように表すことができる。
【数94】
【数95】
【数96】
【数97】
安定性
【0053】
ALが定数であることが仮定されている。p、q、z、φ、Iをそれぞれpe、qe、ze、φe、Ieの近傍で次のように展開する。
【数98】
【数99】
【数100】
【数101】
【数102】
この式を微分方程式系数式79〜83に代入し高次の項を無視することによりΔp、Δq、Δz、Δφ、ΔIに関する次のような正規な微分方程式系を得る。
【数103】
【数104】
ここで
【数105】
【数106】
【数107】
【0054】
このとき、行列Mの要素はpe、qe、ze、φeの関数となるが、数式94〜数式97により、これらはφeの関数と考えることができる。Mの固有多項式m(h)は次のように書くことができる。
【数108】
平衡点における有効振 weffeは次のようになる。
【数109】
【数110】
数式108の括弧の中の第3項はweffeによって次のように書ける。
【数111】
微分方程式系の独立変数と自由変数
【0055】
たとえば電圧源を記述する正規な微分方程式系数式22〜25において、それぞれの数式の左辺にその時間微分として現れる変数を微分方程式系の独立変数と呼び、独立変数でない変数を自由変数と呼ぶ。この微分方程式系の独立変数は p、q、z、φである。またμ、ν、δ、rr、ri、E、A、B、Gが定数である場合この微分方程式系は自由変数を含まない。
出力電流の帰還
【0056】
簡単のため微分方程式系数式22〜25においてμ、ν、δ、rr、ri、E、A、B、G が定数であると仮定する。つまりこの微分方程式系は自由変数を含まない。ここに出力電流の振幅への帰還を組み込むことにより自由変数が導入される。微分方程式系数式79〜82においてIはこの微分方程式系の自由変数である。微分方程式系に自由変数を組み込むことにより実現される帰還の安定性を考察する。
自由変数の組み込まれた電源の記述
【0057】
自由変数Iの組み込まれた電源を記述する微分方程式系を簡単のために次のように書く
【数112】
【数113】
【数114】
【数115】
ここでIは、たとえば微分方程式系数式79〜82における負荷電流である。自由変数Iは、たとえば微分方程式系数式22〜25によって記述される電圧源から負荷への出力電流ではない。つまり変数Iは電圧源からの出力電流ではなく、出力電圧に依存しない負荷電流である。Iは次のような微分方程式系により表されると仮定できる。
【数116】
【数117】
【数118】
変数Iが微分方程式系数式112〜115において自由変数である。微分方程式系数式112〜115を記述する独立変数はp、q、z、…、φであり、また微分方程式系数式116〜118を記述する独立変数はa、b、…、Iである。微分方程式系数式112〜115の独立変数は微分方程式系数式116〜118に自由変数として含まれていない。
合併微分方程式の安定性
【0058】
微分方程式系数式112〜115と微分方程式系数式116〜118とを連立させた合併微分方程式系の安定性をLyapunovの方法で調べる。合併微分方程式系の平衡点を
【数119】
とすると、平衡点の定義から
【数120】
【数121】
【数122】
【数123】
【数124】
【数125】
【数126】
を満足する。平衡点peの近傍での安定性を考察するために、平衡点からのずれを
【数127】
と表すとき、Δp、Δq、Δz、…、Δφ、Δa、Δb、…、ΔI の従う変分微分方程式系を
【数128】
と表す。ここで
【数129】
この変分微分方程式系を次のように書く。
【数130】
行列M1と行列M2とを次のように定義する。
【数131】
【数132】
このとき数式128、数式130は次のように表すことができる。
【数133】
すなわち行列Mの固有多項式は行列M1の固有多項式と行列M2の固有多項式との積で与えられる。そこで次の二つの変分微分方程式系を定義する。
【数134】
【数135】
【0059】
合併微分方程式系の変分微分方程式系から導かれる固有多項式が、微分方程式系数式112〜115において自由変数Iを定数とした変分微分方程式系から導かれる固有多項式と、Iを独立変数とする微分方程式系数式116〜118の変分微分方程式系から導かれる固有多項式との積で与えられる十分条件は、微分方程式系数式116〜118が、微分方程式系数式112〜115の独立変数を自由変数として含まないことである。
【0060】
変数Iを自由変数とする微分方程式系Aにたいして、微分方程式系Aの独立変数を自由変数として含まないIを独立変数とする微分方程式系Bを選ぶことにより、微分方程式系Aと微分方程式系Bとを合併して得られる合併微分方程式系の変分微分方程式系から導かれる固有多項式を、微分方程式系Aにおいて自由変数Iを定数 Ie とした変分微分方程式系から導かれる固有多項式と微分方程式系Bの変分微分方程式系から導かれる固有多項式との積で表すことが可能となる。
安定な帰還
【0061】
負荷電流Iを記述する微分方程式系数式116〜118は一般性を失うことなく安定であることを仮定できるので、その変分微分方程式系数式135から導かれる固有多項式は安定となり、したがって合併微分方程式系の安定性は変分微分方程式系数式134から導かれる固有多項式の安定性に帰着する。すなわち変数Iが微分方程式系数式112〜115の自由変数ならば、微分方程式系数式112〜115の安定性は変分微分方程式系数式134の安定性に帰着する。
【0062】
微分方程式系の安定性はその変分微分方程式系の固有多項式に帰着する。微分方程式系数式79〜82において、負荷電流Iは自由変数である。この微分方程式系を平衡点の近傍で展開することにより得られる変分微分方程式系の固有多項式はALが定数の場合には、微分方程式系数式22〜25の変分微分方程式系の固有多項式において、wをweffeに置き換えることにより得られることがすでに示されている。ALが定数でない場合にも同様な事情にあることが以下に示される。この意味で微分方程式系数式79〜82の安定性は、微分方程式系数式22〜25の安定性に帰着する。
ALが定数でない場合
【0063】
微分方程式系数式79〜83において、ALが定数すなわち図2に示す負荷の標準モデルにおいて入力インピーダンスZが抵抗である場合の固有多項式は数式108に示されている。ここでは図3に示すように入力インピーダンスZが抵抗とキャパシタンスの並列結合である場合の固有多項式を求める。このことによりALが定数でない一般の場合の固有多項式について見通しを得ることができる。
【0064】
入力インピーダンスの抵抗をRL、キャパシタンスをCLとする。出力電圧をzとするとき、負荷電流のうち出力電圧に依存する電流は
【数136】
で与えらる。また出力電圧に依存いない電流はIとなる。出力電流は
【数137】
となり、これを数式76〜78に代入すると次のような微分方程式系を得る。
【数138】
【数139】
【数140】
【数141】
この微分方程式系の平衡点をpe、qe、ze、φeとする。またIeは平衡点におけるIを表す。さらに
【数142】
となる。またrを
【数143】
と表すとき、pe、qe、zeおよびλはφeの関数として次にようになる。
【数144】
【数145】
【数146】
【数147】
平衡点の近傍における微分方程式系の線形化
【0065】
p、q、z、φをそれぞれpe、qe、ze、φeの近傍で次のように展開する。
【数148】
【数149】
【数150】
【数151】
この式を微分方程式系数式138〜141に代入し高次の項を無視することによりΔp、Δq、Δz、Δφに関する次のような正規かつ線形な微分方程式系を得る。
【数152】
ここで行列Mは次のようになる。
【数153】
M41、M42、M43は次の通りである。
【数154】
【数155】
【数156】
このとき、行列Mの要素はpe、qe、ze、φeの関数となるが、数式34〜数式37により、これらはφeの関数と考えることができる。したがって、Mの固有多項式をm(h)とし、
【数157】
と書く。係数a0、a1、a2、a3、a4は以下のようにφeの関数となる。
【数158】
【数159】
【数160】
【数161】
【数162】
固有関数m(h)の分解
【0066】
固有関数m(h)の係数 a0、a1、a2、a3、a4 が数式158〜数式162で与えられる場合のm(h)は次のように書くことができる。
【数163】
【0067】
出力電圧から振幅への帰還が数式13ではなく
【数164】
で与えられる場合、固有関数m(h)は次のようになる。
【数165】
平衡点における有効振幅weffe
【0068】
平衡点における有効振幅weffeを次のよう求める。平衡点では
【数166】
がなりたつので、平衡点における出力電流は
【数167】
となる。ここで ze は平衡点における出力電圧、RLは負荷の入力抵抗を表し、Ieは出力電圧に依存しない負荷電流を表す。数式146からweffeは次のようになる。
【数168】
【数169】
ここでwは帰還のない場合の振幅を表す定数である。これをwについて解き、数式163あるいは数式 165の第3項に代入すると、第3項は次のように書き換えることができる。
【数170】
これは、数式54あるいは数式61の第3項においてwをweffに置き換えた式に一致することが分かる。
入力アドミッタンスALによる置換
【0069】
数式163の第2項
【数171】
において(hCLRL+1)/RLは抵抗RLとキャパシタンスCLが並列に結合された負荷の入力アドミッタンスに一致するので、これを負荷の入力アドミッタンスALに一般化すると
【数172】
となる。
【0070】
数式163を数式170と数式172を使って書きなおすと固有多項式m(h)は次のようになる。
【数173】
またAL=0の場合、上式は数式54おいてwをweffeに置き換えた式に一致する。数式165についても同様である。
AL の符号を説明するモデル
【0071】
数式108あるいは数式173の第2項において、ALの符号がマイナスである理由を明らかにするために、第2項が振幅への帰還に対応していることを考慮して、次に示すような出力電圧を安定化する帰還の簡単なモデルを考える。出力電圧の誤差と出力電流が、出力電圧を安定化するために搬送波の振幅に帰還されるので、出力電圧zと参照電圧λとの誤差λ-zと出力電流Jとが、図4に示すように同一のノードに入力され、これが増幅されて出力電圧zとなる帰還を考える。ノードへの入力は
【数174】
となる。この入力からzの出力される増幅をSと表すと
【数175】
また出力電流JはアドミッタンスALを使って
【数176】
と表すことができるので、これらから
【数177】
数式177の分母がこの帰還の固有関数に対応する。ここにおいてALの符号はマイナスとなる。
【0072】
たとえばALが正の実数である場合、G-KALの符号が正から負に変わると、この帰還が負帰還から正帰還に変わる。つまりG-KALが負の場合、出力電圧が参照電圧より低くなると、さらに低くする方向に帰還が働く。帰還が出力電圧を安定化する方向に働くためには G-KAL が正であることが必要である。出力電圧を安定化するためにわずかな出力電圧の変化に対して大きな帰還をかけることが必要であり、このためG-KALは大きくなる。つまり出力電圧の安定化を目的とした場合G≫|KAL|である。G≫|KAL|であり、さらに出力電圧を安定化する観点からみるとKALは安定性を低下させる。つまりKALをノイズとして取り扱うことが可能になる。KALをノイズとみなした帰還を図5に示す。
G≫|KAL|
【0073】
出力電流が搬送波の振幅に帰還される場合、搬送波の振幅の最小値と最大値が負荷電流の最小値と最大値にほぼ対応するように選ばれる。これに対して、Gは出力電圧を安定化するためにわずかな出力電圧の変化に対して大きな帰還をかけることが必要である。このため出力電圧と出力電流とが搬送波の振幅に帰還される場合にも、出力電圧を安定化を目的とする場合にはG≫|KAL|なる。出力電流の振幅への帰還のうちALzはノイズとして取り扱うことが可能となる。
出力電流の変化はノイズ
【0074】
数式74から、出力電圧と出力電流の振幅への帰還は数式79および80にあるように
【数178】
と書くことができる。ところでzを記述する微分方程式の独立変数が、Iを記述する微分方程式に自由変数として含まれないので、平衡点におけるIをIeとすると、帰還の数式178はIをIeに置き換えた
【数179】
となる。KIeは定数であるので、振幅wをw+KIeと考えて数式179を
【数180】
とすると、KALzをノイズとして取り扱えることが分る。つまり数式178において
【数181】
をノイズと考えることができる
【0075】
言いかえると、数式74のうちALzをノイズとみなせる。また出力電流の変化の多くの部分は出力電圧に依存しない負荷電流の変化である。出力電圧を安定化する一般的な観点から見ると、負荷電流の振幅への帰還は、負荷電流が出力電圧に依存しないのであるから、ノイズに他ならない。出力電流Jの振幅への帰還は
【数182】
と表される。つまり出力電流の振幅への帰還はノイズと考えることができる。出力電圧を安定化する一般的な観点から見ると、出力電流の振幅への帰還はノイズであり、したがって出力電圧の安定化に寄与する場合もあるが寄与しない場合も多い。出力電流を振幅に帰還する信号を、ここでは出力電圧を振幅に帰還する信号に加法的に働くノイズと仮定する。
【0076】
出力電流を振幅へ帰還する信号は、出力電圧を振幅に帰還する信号に加えられたノイズである。そこで出力電圧を振幅に帰還する信号に加法的なノイズが働くより一般的な場合の帰還の安定性について考える。このノイズをNとすると、出力電圧の振幅への帰還は
【数183】
と書ける。ノイズNを平均値が0のランダムなノイズ NR と定数 NC とにより
【数184】
と表すと、数式183は
【数185】
と書ける。
【0077】
たとえば微分方程式系数式76〜78において、数式182を数式183に置き換えた微分方程式系の安定性は、数式183を次の186に置き換えた微分方程式系の安定性に帰着する
【数186】
ここで NCeは平衡点におけるNCを表す。つまり数式183のようにノイズが加法的に働く帰還の安定性は、ノイズのない数式186による帰還の安定性に帰着する。これは合併微分方程式系の固有関数が、それぞれの微分方程式系の固有関数の積で与えられることの別の表現であろう。
関数によるノイズの変換
【0078】
出力電流Iはノイズであることから、たとえばI2もノイズであり、Iの有理関数もノイズとなる。さらに適当な(たとえば単調に増加する)関数fN(x) によるIの変換fN(I)もノイズとなる。このノイズが振幅へ帰還に加法的に働くと数式183は
【数187】
となり、このような帰還が働く場合の安定性は、数式185に対応して振幅への帰還が
【数188】
で与えられる場合の安定性に帰着する。ここでNCefは平衡点におけるNCfである。またNCfはノイズfN(I)を数式184に従い、
【数189】
と分解することにより定義される。
【0079】
出力電流Iを適当な関数fN(x)によって変換したfN(I)を使って数式187を
【数190】
と置き換えたとき、微分方程式系数式76〜78において、出力電流の振幅への帰還を数式190で置き換えた微分方程式系
【数191】
【数192】
【数193】
【数194】
の変分微分方程式系から導かれる固有多項式m(h)は、weffを
【数195】
と定義するとき、数式54あるいは数式61においてwをweffeに置き換えることにより得られる。
固有多項式mA(h)とmB(h)
【0080】
出力電圧から振幅への帰還が数式13すなわち
【数196】
で与えられる場合の固有多項式m(h)をmA(h)と表すと
【数197】
となる。また出力電圧から振幅への帰還が数式164すなわち
【数198】
で与えられる場合の固有多項式m(h)をmB(h)と表すと、
【数199】
となる。
周波数の変化を抑える関数
【0081】
共振器として圧電トランスが使用されているときに、定常状態において搬送波の周波数が出力電流によらず一定の範囲の周波数に収まるためには、搬送波の振幅が出力電流のどのような関数にあるときかを明らかにする。出力電圧と参照電圧との誤差が搬送波の周波数と振幅とに帰還されている場合、定常状態では数式32により出力電圧zeは参照電圧λに等しくなる。出力電流がIのときの搬送波の振幅をwIとすると数式37からwIとλとは
【数200】
によって結ばれている。
【0082】
そこでφe=δeと近似すると、wIは次のようになる。
【数201】
ここでrは圧電トランスの定数であるので、rは近似的に一定と考えられる。νは整流平滑回路における整流回路のキャパシタンスと負荷との時定数に関係する乗数であり、負荷が重くなると小さくなる。この意味でνは近似的に電流に反比例すると考えられる。振幅wIはδλに比例する。ところが圧電トランスの共振は負荷抵抗Rに対して並列共振であるから、δはRに反比例する。すなわち負荷が重くなるとδが大きくなる。これからwIは近似的に出力電流Iの二乗に比例すると考えられる。すなわち
【数202】
となる。
【0083】
搬送波の振幅の初期値をwと表すと、搬送波の振幅は適当な正の定数Kによって
【数203】
と近似できる。数式203が満たされているとき、φeは近似的にδに等しくなる筈である。しかし実際にはδは出力電流に応じて変化し、さらに共振周波数も出力電流に応じて変化するため、これらの変化のすべてを合わせた範囲が駆動周波数の変化する範囲となる。出力電流の変化によるδの変化と共振周波数の変化とを同時に考慮した出力電流からの振幅への帰還は、駆動周波数の変化する範囲をさらに縮小することができる。
【0084】
出力電圧が搬送波の周波数に帰還され、かつ出力電流が搬送波の振幅の帰還されていない場合、共振回路を駆動する搬送波の振幅は近似的に一定である。したがって負荷が重い場合には搬送波の周波数は共振周波数に近づき、負荷が軽い場合には共振周波数から離れる。つまり搬送波の周波数は負荷により大幅に変化する。搬送波の振幅を負荷により変化させることにより、すなわち出力電流を振幅に帰還することにより、負荷の重い場合には大きな振幅の搬送波で駆動し、また軽い場合には小さい振幅の搬送波で駆動することにより、搬送波の周波数の変化する範囲を狭くすることが可能となり、周波数を近似的に一定に保つことができる。
方程式m(h)=0の根
【0085】
帰還が平衡点の近傍で安定である必要十分条件は、固有多項式のすべての根の実部が負であることである。ここでは回路の実装が容易な、固有多項式が少なくとも2個の負の実根を持つ場合について、安定なパラメータが選べることを示す。
【0086】
固有多項式mB(h)から導かれる方程式mB(h)=0の根の配置を調べる。固有多項式mA(h)についても同様である。数式199で定義された固有多項式mB(h)から導かれる方程式mB(h)=0を調べるために、f1(h)とf2(h)とを次のように定義する。
【数204】
【数205】
このとき
【数206】
が成り立ち、mB(h)を、
【数207】
と書いたときの係数a0、a1 は
【数208】
【数209】
と与えられる。したがってmB(h)=0の4根の和をSとすると
【数210】
となる。
【0087】
グラフy=f1(h)について考える。グラフy=f1(h)の第1項と第2項のグラフを図6において点線で示す。y=f1(h)の第一項は、すくなくとも原点からh=-1/μまでの区間で負となる下に凸なhに関する4次式である。第二項は少なくとも原点からh=-H/Gまたは h=-(δ2+φ2)/δまでの区間で負となるhに関する3次式である。Gが小さく、H/G>δ+φ/δの場合には、原点からh=-(δ2+φ2)/δの区間で負となる。これから正の数hzが存在して、グラフy=f1(h) は、φによらず原点からh=-hzまでの区間で負となることが分かる。また第一項は4次式であり、第二項は3次式であることから、y=f1(h)は下に凸であることが分かる。
【0088】
グラフy=f2(h)は上に凸な2次式であり、φeとweffeとに依存する。f2(h)=0の根を原点とhzとの区間に実根αとして配置し、このαに隣接する実根をβとして
【数211】
と配置すると、グラフy=f2(h)はh軸上のαとβとを通り、φeとweffeの値に応じて頂点の高さが変化する上に凸な放物線であるので、図6から分かるように、mB(h)=0はφeによらず2個の実根を持つ。この2根はグラフy=f2(h)上に拘束される。mB(h)=0は4次方程式である。残りの2根が実根である場合、 mB(h)=0が4個の実根を持つので根はすべて負となり、帰還は安定となる。残りの2根が虚根である場合には、虚根の実部をα、βと数式210 から評価することができる。虚根の実部のh軸上の位置はα βの配置により制御できる。αとβのh軸上の位置はパラメータE、A、Bにより制御できる。つまりE、A、Bを適切に選ぶことにより虚根の実部をh軸上の望ましい位置に配置することが可能となる。E、A、Bを適切に選ぶことにより安定な帰還を実現することができる。
【発明の効果】
【0089】
本発明は、共振回路から出力される高周波交流を整流して得られる出力電圧を、共振回路を駆動する搬送波の周波数に帰還する安定化において、出力電流を共振回路を駆動する搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流の変化に対して搬送波の周波数の変化する範囲を狭めることができる。また本発明は、共振回路から出力される高周波交流を整流して得られる出力電流を共振回路を駆動する搬送波の周波数へ帰還する安定化において、出力電圧を共振回路を駆動する搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流の変化に対して搬送波の周波数の変化する範囲を狭めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
本発明の実施例として、共振回路として圧電トランスを使用した直流安定化電圧源と直流安定化電流源とについて、それぞれをシミュレートするシミュレーション用回路とシミュレーションの結果を示す。
【0091】
理想電圧源の出力インピーダンスは0であり、理想電流源の出力インピーダンスは無限大である。一般に、電圧源の出力インピーダンスが低く、電流源の出力インピーダンスは高い。電源は理想電圧源に出力インピーダンスを直列に結合した電源として表されることが多いが、これは理想電流源に出力インピーダンスを並列に結合した電源と相互に変換できる。圧電トランスの出力を整流するダイオードブリッジからの出力は直流電圧源とも直流電流源とも考えることができる。電圧と電流が双対であることを考えると直流安定化電圧源を直流安定化電流源に変換することができる。
【実施例1】
【0092】
直流安定化電圧源
【0093】
図7は圧電トランスを共振回路として使用した直流安定化電圧源の模式図である。この電圧源は電圧発生回路と帰還回路とから構成される。電圧発生回路はドライバー回路、共振回路として使用される圧電トランス、整流平滑回路から構成される。帰還回路は誤差増幅器、電流検出器、周波数変調回路と振幅変調回路とから構成される。ドライバー回路は外部の電源よりドライバー回路に供給される直流電圧を、周波数変調回路の出力電圧に対応した周波数を持つ高周波交流に変換する。電流検出器と振幅変調回路はこの高周波交流の振幅を変調する。周波数と振幅の変調された高周波交流が搬送波であり、圧電トランスを駆動する。
【0094】
圧電トランスは共振を示す。圧電トランスから出力される高周波交流の振幅は、これに入力された高周波交流の周波数と振幅に依存して変化する。整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電圧に変換し、これを電圧源の出力として負荷に供給するとともに誤差増幅器と電流検出器に入力する。
【0095】
誤差増幅器は帰還回路に入力された出力電圧と、出力電圧を設定するために外部から供給される参照電圧とを比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路に入力する。周波数変調回路は入力に比例した周波数をドライバー回路に出力する。また電流検出器は検出された出力電流により振幅を変調する。このようにして出力電圧と出力電流とは圧電トランスを駆動する高周波交流である搬送波の周波数と振幅に帰還される。
誤差増幅器
【0096】
誤差増幅器は出力電圧と参照電圧を比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路と振幅変調回路に入力する。周波数変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。振幅変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。また電流検出器は検出された出力電流により振幅を変調する。このようにして出力電圧と出力電流とは圧電トランスを駆動する高周波交流である搬送波の周波数と振幅に帰還される。
周波数変調回路
【0097】
誤差増幅器の出力すなわち出力電圧と参照電圧の誤差を搬送波の周波数へ帰還する場合、特許文献1および3により、周波数変調回路が原点の近傍に極の配置されている伝達関数を備えていることが安定化に貢献する。誤差の搬送波の周波数への帰還には、電圧発生回路による遅れと圧電トランスによる遅れの補償が必要である。このため周波数変調回路は、この遅れを補償するゼロ点と原点に位置する極とを備えた伝達関数を通して誤差を変換する。
振幅変調回路
【0098】
振幅変調回路は、誤差増幅器の出力すなわち出力電圧と参照電圧の誤差を搬送波の振幅に帰還することにより出力電圧を安定化する。誤差の振幅への帰還は圧電トランスと整流平滑回路による遅れの補償が必要である。誤差は、遅れにより生成される極を補償するゼロ点を備えた伝達関数を通して変換され搬送波の振幅に帰還される。
【0099】
振幅変調回路は、周波数変調回路の伝達関数が含む遅れの大きい績分を含まないので、振幅への帰還は周波数への帰還にくらべて遅れの小さな帰還となる。誤差を短い遅れで出力電圧に帰還することができる。このため誤差の微分を搬送波の振幅への帰還に有効に利用できる。
ドライバー回路
【0100】
ドライバー回路は、フェイズシフトモードで動作するフルブリッジと、フルブリッジを構成する4個のスイッチをオン・オフするゲートパルスを生成するゲートパルス生成回路とから構成される。互いに近似的にコンプリメンタリなゲートパルスによってオン・オフされる2個のスイッチを直列に接続したハーフブリッジを2組並列に接続することによりフルブリッジが構成される。フェイズシフトモードの動作では、フルブリッジを構成する2組のハーフブリッジのゲートパルス間の位相の差が外部の信号によって制御される。
【0101】
2組のハーフブリッジをオン・オフするゲートパルスは同一の周波数を持ち、これが搬送波の周波数の2倍なる。ゲートパルス生成回路の周波数入力はこのゲートパルスの周波数を制御する。フェイズシフトモードでは、一方のハーフブリッジをオン・オフするコンプリメンタリなゲートパルスと他方のハーフブリッジをオン・オフするコンプリメンタリなゲートパルスの間の位相差が搬送波の振幅を制御する。ゲートパルス生成回路の振幅入力はこのゲートパルス間の位相の差を制御する。
【0102】
ゲートパルス生成回路は、周波数変調回路が出力する周波数と、振幅変調回路と電流検出器とが出力するゲートパルス間の位相差とを備えた4個のゲートパルスを生成する。
圧電トランス
【0103】
圧電トランスはあらかじめ分極された圧電素子が持つ圧電効果を利用する。圧電素子に外力を加えて変形させれば電圧が発生し、逆に電圧を加えれば応力が発生し変形する。圧電トランスはこの効果を利用して、1次側で電気振動を機械振動に変換して二次側に伝送し、二次側でこれを再び電気振動に戻すことにより、一次側から二次側に電気エネルギーを伝送する。圧電トランスは内部に共振回路を含む。このため圧電トランスは、通常の電磁トランスと異なり、鋭い周波数特性や大きな負荷依存性を示す。圧電トランスの入力電圧と出力電圧の比を昇圧比と定義すると、圧電トランスは共振周波数の付近で大きな昇圧比を示す。
【0104】
電圧源に使用される圧電トランスは出力インピーダンスの小さい降圧型圧電トランスである。つまり一次側に入力された搬送波から、その振幅の縮小された搬送波が二次側から出力される。圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数は、圧電トランスの共振周波数より高くなるように選ばれている。したがって、出力電圧が参照電圧より高い場合には、周波数を上げて共振周波数から遠ざかり、また逆の場合には周波数を下げて共振周波数に近づく。
整流平滑回路
【0105】
圧電トランスから出力される高周波交流すなわち搬送波の振幅は、これに入力された搬送波の周波数と振幅に依存して変化する。整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電圧に変換し、これを電圧源の出力として帰還回路すなわち誤差増幅器と電流検出器に入力するとともに負荷に供給する。整流平滑回路は整流を行うダイオードブリッジとリップルの低減を目的とする出力キャパシタンスから構成される。
電流検出器
【0106】
電流検出器は、出力電流を検出する回路と、この電流をドライバー回路の振幅入力に変換する変換関数の回路とからなる。電流検出器は整流平滑回路から出力される電流を検出し、検出した電流に応じて搬送波の振幅を変調するために、この電流に対応する変換関数の値をドライバー回路に入力する。
シミュレーション用回路
【0107】
この直流安定化電圧源のシミュレーション用回路を図8に示す。シミュレーション用回路における電圧発生回路は、圧電トランスがその等価回路に置き換えられていることを除けば、回路は忠実に再現されている。シミュレーション用回路における帰還回路は基本的には線形な回路である。このため帰還回路の入力と出力の関係を再現する簡単な回路がシミュレーション用回路に採用されている。入力と出力の関係を数学的関係式を用いて指定できるビヘービアモデルと呼ばれる回路素子をシミュレーションに使用することができる。多数のビヘービアモデルが帰還回路に使われている。
【0108】
図8は帰還回路を構成する誤差増幅器、周波数変調回路、振幅変調回路並びに電流検出器のシミュレーション用回路を示すとともに、ドライバー回路のシミュレーション用回路を示す。
圧電トランスの等価回路
【0109】
この電圧源で使用されている降圧型圧電トランスの等価回路とそのパラメータを図9に示す。Cd1に較べて Cd2の大きいことが降圧型圧電トランスの特徴である。
誤差増幅器のシミュレーション用回路
【0110】
誤差増幅器のシミュレーション用回路は図8に示されている。誤差増幅器は引き算回路により構成される。引き算回路は2入力1出力のビヘービアモデルと増幅器からなる。このビヘービアモデルは入力の差が出力となるように設定されている。
周波数変調回路のシミュレーション用回路
【0111】
周波数変調回路のシミュレーション用回路を図8に示されている。周波数変調回路は、積分器、ゲイン1の増幅器、微分器とこれに付属する積分回路、2入力の加算器2個とから構成される。積分器はゲインEの増幅器とビヘービアモデルとから構成される。関数SDT(x)に設定されビヘービアモデルは入力の時間積分を出力する。このビヘービアモデルからの出力がゲインEの増幅器に入力され、この増幅器からの出力が積分器の出力となる。
【0112】
微分器はゲインBの増幅器とビヘービアモデルとから構成される。関数DDT(x)に設定されビヘービアモデルは入力の時間微分を出力する。このビヘービアモデルからの出力がゲインBの増幅器に入力され、この増幅器からの出力が微分器の出力となる。微分器に付属する積分回路は高周波のノイズを積分することにより抑えることを目的としている。
【0113】
積分器のゲインをE、微分器のゲインをBとするとき、周波数変調回路の伝達関数は
【数212】
によって与えられる。
振幅変調回路のシミュレーション用回路
【0114】
振幅変調回路のシミュレーション用回路は図8に示されている。このシミュレーション用回路では誤差増幅器の出力は増幅器により増幅されドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
電流検出器のシミュレーション用回路
【0115】
電流検出器のシミュレーション用回路は図8に示されている。出力電流は出力電圧0 Vに設定されている電圧源V6によって検出され、ビヘービアモデルABM29によって電圧に変換される。電圧に変換された出力電流は、ビヘービアモデルABM101とビヘービアモデルABM110によって定義された関数により変換されドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
ドライバー回路のシミュレーション用回路
【0116】
ドライバー回路を構成するブリッジとゲートパルス生成回路のシミュレーション用回路は図8に示されている。スイッチを使ってブリッジが構成される。ゲートパルス生成回路はビヘービアモデルを組み合わせてシミュレーションされる。周波数変調回路の出力に比例した周波数の矩形波を生成する電圧制御発振器は、2個のビヘービアモデルAすなわちABM26、BすなわちABM13、さらにABM14とABM15からなる矩形波生成回路を組み合わせて実現される。ビヘービアモデルAは入力(すなわち周波数変調回路の出力)の積分を出力する。ビヘービアモデルBには数式
【数213】
が設定されている。この結果、ビヘービアモデルAに入力される電圧(すなわち周波数変調回路の出力)に比例した周波数を持つサイン波がビヘービアモデルBから出力される。矩形波生成回路はこのサイン波の閾値を検出することにより矩形波を生成し、スイッチS1とS2とからなるハーフブリッジを駆動する2個のゲートパルスを出力する。
【0117】
スイッチS3とS4とからなるハーフブリッジを駆動する2個のゲートパルスは、振幅制限器GLIMIT1とビヘービアモデルCすなわちABM19と矩形波生成回路ABM17、ABM18とから構成される回路によって生成される。振幅制限器には振幅の上限HIと下限LOおよび利得GAINを指定することができる。ビヘービアモデルCには次の数式
【数214】
が設定されている。この結果、数式213で定義されるサイン波は数式214で定義されるサイン波に対して位相の遅れが
【数215】
である。すなわちハーフブリッジを駆動するゲートパルスの間の位相差は振幅制限器の出力によって制御される。つまり搬送波の振幅は、振幅変調回路の出力と電流検出器の出力の和によって制御される。
安定な帰還のシミュレーション例
【0118】
このようにして構成された帰還が安定であることを、シミュレーション用回路 8を用いて示す。負荷抵抗25Ωすなわち図8において imoimo=0.1 の場合と、負荷抵抗0.83Ωすなわちimoimo=3の場合とについて、シミュレーションの結果を図10と図11とに示す。それぞれの図には横軸を時間軸として、縦軸1を出力電圧すなわち誤差増幅器の入力(ABM21:IN1)、縦軸2を搬送波の周波数を制御する電圧制御発振器の入力(ABM26:IN)、縦軸3を搬送波の振幅を制御するゲートパルス間の位相差を制御する入力(ABM19:IN1)としてそれぞれの時間的経過が示されている。
負荷による周波数の変化
【0119】
出力電流を J とし、定数a、b、cを適当に選び、搬送波の振幅にJの関数
【数216】
を加法的に帰還することにより、広い範囲の負荷に対して搬送波の周波数を狭い範囲に限定できることをシミュレーションにより示す。図8に示されたシミュレーション用回路を用いた負荷と搬送波の周波数の関係を示す。図8では負荷は2.5/imoimo Ωである。図12では、0.1ステップで0.1から3まで変化させたパラメータimoimoを横軸に、負荷抵抗に対する搬送波の周波数(最大値と最小値の中央の値)を縦軸1に、出力電流(最大値と最小値の中央の値)を縦軸2に示す。
【実施例2】
【0120】
直流安定化電流源
【0121】
図13は圧電トランスを共振回路として使用した直流安定化電流源の模式図である。この電流源は電流発生回路と帰還回路とから構成される。電流発生回路はドライバー回路、共振回路として使用される圧電トランス、整流平滑回路から構成される。帰還回路は誤差増幅器、電圧検出器、周波数変調回路と振幅変調回路とから構成される。ドライバー回路は、外部の電源よりドライバー回路に供給される直流電圧を、圧電トランスを駆動する高周波交流に変換する。周波数変調回路はこの高周波交流の周波数を変調する。振幅変調回路と電圧検出器はこの高周波交流の振幅を変調する。
誤差増幅器
【0122】
誤差増幅器は出力電流を電圧に変換して、出力電流を設定するために外部から供給される参照電圧と比較することにより誤差を検出し、この誤差を周波数変調回路と振幅変調回路に入力する。周波数変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。振幅変調回路に入力された誤差は変換されてドライバー回路に入力される。また電圧検出器は検出された出力電圧により振幅を変調する。このようにして出力電流と出力電圧とは圧電トランスを駆動する高周波交流である搬送波の周波数と振幅に帰還される。
周波数変調回路
【0123】
誤差増幅器の出力すなわち電圧に変換された出力電流と参照電圧の誤差を搬送波の周波数へ帰還する場合、特許文献1および3により、周波数変調回路が原点の近傍に極の配置されている伝達関数を備えていることが安定化に貢献する。誤差の搬送波の周波数への帰還には、電流発生回路による遅れと圧電トランスによる遅れの補償が必要である。このため周波数変調回路は、この遅れを補償するゼロ点と原点に位置する極とを備えた伝達関数を通して誤差を変換する。
振幅変調回路
【0124】
振幅変調回路は、誤差増幅器の出力すなわち電圧に変換された出力電流と参照電圧の誤差を搬送波の振幅に帰還することにより出力電流を安定化する。誤差の振幅への帰還は圧電トランスと整流平滑回路による遅れの補償が必要である。遅れにより生成される極を補償するゼロ点を備えた伝達関数を通して誤差は変換され搬送波の振幅に帰還される。
【0125】
振幅変調回路は、周波数変調回路の伝達関数が含む遅れの大きい績分を含まないので、振幅への帰還は周波数への帰還にくらべて遅れの小さな帰還となる。誤差を短い遅れで出力電流に帰還することができる。このため誤差の微分を搬送波の振幅への帰還に有効に利用できる。
ドライバー回路
【0126】
直流安定化電流源には、直流安定化電圧源と同じドライバー回路が使用される。
圧電トランス
【0127】
広い範囲の負荷に対して定電流を供給するために、広い範囲の電圧を生成することが必要となり、このため直流安定化電流源に使用される圧電トランスは直流安定化電圧源に使用される降圧型圧電トランスではなく、出力インピーダンスの大きい昇圧型圧電トランスが使用される。つまり一次側に入力された搬送波から、その振幅の拡大された搬送波が二次側から出力される。圧電トランスの出力に負荷抵抗を接続し、入力電圧と出力電圧の比である昇圧比を考えると、昇圧型圧電トランスは共振周波数の付近で大きな昇圧比を示すことが分かる。
【0128】
圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数は、圧電トランスの共振周波数より高くなるように選ばれている。したがって、出力電圧が参照電圧より高い場合には、周波数を上げて共振周波数から遠ざかり、また逆の場合には周波数を下げて共振周波数に近づく。
整流平滑回路
【0129】
圧電トランスから出力される高周波交流すなわち搬送波の振幅は、これに入力された搬送波の周波数と振幅に依存して変化する。整流平滑回路は、圧電トランスから出力される高周波交流を直流電流に変換し、これを電流源の出力として誤差増幅器と電圧検出器に入力するとともに負荷に供給する。整流平滑回路はキャパシタとダイオードをカスケードに接続した昇圧整流回路とリップルの低減を目的とする出力キャパシタンスから構成される。電流出力に必要な電圧は昇圧整流回路により生成される。
電圧検出器
【0130】
電圧検出器は、出力電圧を検出する回路と、この電圧をドライバー回路の入力に変換する変換関数の回路とからなる。電圧検出器は整流平滑回路から出力される電圧を検出し、検出した電圧により搬送波の振幅を変調するために、この電圧に対応する変換関数の値をドライバー回路に入力する。
シミュレーション用回路
【0131】
この直流安定化電流源のシミュレーション用回路を図14に示す。シミュレーション用回路における電流発生回路は、圧電トランスがその等価回路に置き換えられていることを除けば、直流安定化電流源の回路が忠実に再現されている。シミュレーション用回路における帰還回路は基本的には線形な回路である。このため帰還回路の入力と出力の関係を再現する簡単な回路がシミュレーション用回路に採用されている。
圧電トランスの等価回路
【0132】
この電流源で使用されている圧電トランスの等価回路とそのパラメータを図15に示す。Cd1に較べてCd2の小さいことが昇圧型圧電トランスの特徴である。
誤差増幅器のシミュレーション用回路
【0133】
誤差増幅器のシミュレーション用回路は図14に示されている。誤差増幅器は出力電流を検出する電圧源V6と電流を電圧に変換するビヘービアモデルと引き算回路により構成される。引き算回路は2入力1出力のビヘービアモデルと増幅器からなる。このビヘービアモデルは入力の差が出力となるように設定されている。引き算回路の出力が増幅器によって増幅され出力となる。
周波数変調回路のシミュレーション用回路
【0134】
周波数変調回路のシミュレーション用回路は、直流安定化電圧源のシミュレーション用回路で使用された周波数変調回路と同じ回路が使用される。
振幅変調回路のシミュレーション用回路
【0135】
振幅変調回路のシミュレーション用回路は図14に示されている。このシミュレーション用回路では誤差増幅器の出力とその微分がドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
電圧検出器のシミュレーション用回路
【0136】
電圧検出器のシミュレーション用回路は図8に示されている。出力電圧は、ビヘービアモデルABM41とビヘービアモデルABM10によって定義された関数により変換されドライバー回路のゲートパルス生成回路に入力される。
ドライバー回路のシミュレーション用回路
【0137】
ドライバー回路のシミュレーション用回路は、直流安定化電圧源のシミュレーション用回路で使用されたドライバー回路と同じ回路が使用される。
安定な帰還のシミュレーション例
【0138】
このようにして構成された帰還が安定であることを、図14のシミュレーション用回路を用いて示す。出力電流が1 mA、1.5 mA、2 mAの場合について、それぞれのシミュレーションの結果を図16、17、18に示す。それぞれの図には横軸を時間軸として、縦軸1を搬送波の振幅を制御するゲートパルス間の位相差を制御する入力(ABM19:IN1)、縦軸2を搬送波の周波数を制御する電圧制御発振器の入力(ABM26:IN)、縦軸3を出力電流すなわち誤差増幅器の入力(ABM31:IN1)として、それぞれの時間的経過が示されている。
出力電流による周波数の変化
【0139】
図16、17、18から分かるように、電圧検出器の出力に応じて搬送波の振幅が変化することにより、1 mAから2 mAの範囲の出力電流に対して搬送波の周波数は近似的に一定に保たれていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、高周波交流である搬送波によって駆動される共振回路から出力される高周波交流を整流することにより生成される出力を共振回路を駆動する搬送波の周波数と振幅に帰還することにより、負荷の変化に伴う搬送波の周波数の変化する範囲を限定することができる。このような帰還が用意されていないときには、負荷が重い場合には共振回路は共振周波数に近い周波数で駆動され、負荷が軽い場合には共振周波数から離れた周波数で駆動される。共振回路の特性たとえば搬送波の周波数の変化に対する出力の変化する割合は周波数によって大幅に変化する。このことが共振回路から生成される出力を安定化する帰還回路の設計を難しくしている。負荷の変化に伴う搬送波の周波数の変化する範囲を限定することにより、共振回路の諸特性を近似的に一定と考えることが可能になり、このことが帰還回路の設計を容易にし、出力の特性の見積もりを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】負荷のモデル
【図2】負荷の標準モデル
【図3】抵抗とキャパシタンスの並列結合が入力インピーダンス
【図4】出力電圧と出力電流の帰還
【図5】KALをノイズとみなした帰還
【図6】方程式mB(h)=0の根の配置
【図7】圧電トランスを使った直流安定化電圧源の模式図
【図8】シミュレーション用回路
【図9】降圧型圧電トランスの等価回路
【図10】負荷抵抗がimoimo=0.1に相当する場合
【図11】負荷抵抗がimoimo=3に相当する場合
【図12】負荷と搬送波の周波数
【図13】圧電トランスを使った直流安定化電流源の模式図
【図14】シミュレーション用回路
【図15】圧電トランスの等価回路
【図16】出力電流 1 mA
【図17】出力電流 1.5 mA
【図18】出力電流 2 mA
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力と出力とを備える共振器の入力である駆動波の周波数と振幅に依存する共振器の出力を整流することにより生成される直流電圧を出力とする電圧源において、出力電圧の参照電圧との誤差を搬送波の周波数に帰還し、出力電流を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電圧を安定化することを特徴とする電圧源。
【請求項2】
入力と出力とを備える共振器の入力である搬送波の周波数と振幅に依存する共振器の出力を整流することにより生成される直流電流をその出力とする電流源において、出力電流の参照電流との誤差を搬送波の周波数に帰還し、出力電圧を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流を安定化することを特徴とする電流源。
【請求項3】
請求項1に記載の電圧源において、出力電流とともに出力電圧の参照電圧との誤差を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電圧の応答を高速化することを特徴とする電圧源。
【請求項4】
請求項2に記載の電流源において、出力電圧とともに出力電流の参照電流との誤差を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流の応答を高速化することを特徴とする電流源。
【請求項5】
請求項3に記載された電圧源において、出力電圧の誤差の、原点に極の配置された伝達関数による搬送波の周波数への帰還と、原点に極の配置されていない伝達関数による搬送波の振幅への帰還とを含むことを特徴とする電圧源。
【請求項6】
請求項4に記載された電流源において、出力電流の誤差の、原点に極の配置された伝達関数による搬送波の周波数への帰還と、原点に極の配置されていない伝達関数による搬送波の振幅への帰還とを含むことを特徴とする電流源。
【請求項7】
請求項5に記載の電圧源において、出力電流を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより広い範囲の出力電流にたいして搬送波の周波数をある一定の範囲に限定することを特徴とする電圧源。
【請求項8】
請求項6に記載の電流源において、出力電圧を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより広い範囲の出力電圧にたいして搬送波の周波数をある一定の範囲に限定することを特徴とする電流源。
【請求項9】
請求項1に記載の電圧源が、出力電圧と参照電圧との誤差の原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されている電圧源であるとき、出力電流を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定化を実現する方法。
【請求項10】
請求項2に記載の電流源が、出力電流と参照電流との誤差の原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されている電流源であるとき、出力電圧を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定な帰還を実現する方法。
【請求項11】
請求項3に記載の電圧源が、出力電圧と参照電圧との誤差の、原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されるとともに、搬送波の振幅に帰還されている電圧源であるとき、出力電流を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定な帰還を実現する方法。
【請求項12】
請求項4に記載の電流源が、出力電流と参照電流との誤差の、原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されるとともに、搬送波の振幅に帰還されている電流源であるとき、出力電圧を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定な帰還を実現する方法。
【請求項1】
入力と出力とを備える共振器の入力である駆動波の周波数と振幅に依存する共振器の出力を整流することにより生成される直流電圧を出力とする電圧源において、出力電圧の参照電圧との誤差を搬送波の周波数に帰還し、出力電流を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電圧を安定化することを特徴とする電圧源。
【請求項2】
入力と出力とを備える共振器の入力である搬送波の周波数と振幅に依存する共振器の出力を整流することにより生成される直流電流をその出力とする電流源において、出力電流の参照電流との誤差を搬送波の周波数に帰還し、出力電圧を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流を安定化することを特徴とする電流源。
【請求項3】
請求項1に記載の電圧源において、出力電流とともに出力電圧の参照電圧との誤差を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電圧の応答を高速化することを特徴とする電圧源。
【請求項4】
請求項2に記載の電流源において、出力電圧とともに出力電流の参照電流との誤差を搬送波の振幅に帰還することにより、出力電流の応答を高速化することを特徴とする電流源。
【請求項5】
請求項3に記載された電圧源において、出力電圧の誤差の、原点に極の配置された伝達関数による搬送波の周波数への帰還と、原点に極の配置されていない伝達関数による搬送波の振幅への帰還とを含むことを特徴とする電圧源。
【請求項6】
請求項4に記載された電流源において、出力電流の誤差の、原点に極の配置された伝達関数による搬送波の周波数への帰還と、原点に極の配置されていない伝達関数による搬送波の振幅への帰還とを含むことを特徴とする電流源。
【請求項7】
請求項5に記載の電圧源において、出力電流を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより広い範囲の出力電流にたいして搬送波の周波数をある一定の範囲に限定することを特徴とする電圧源。
【請求項8】
請求項6に記載の電流源において、出力電圧を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより広い範囲の出力電圧にたいして搬送波の周波数をある一定の範囲に限定することを特徴とする電流源。
【請求項9】
請求項1に記載の電圧源が、出力電圧と参照電圧との誤差の原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されている電圧源であるとき、出力電流を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定化を実現する方法。
【請求項10】
請求項2に記載の電流源が、出力電流と参照電流との誤差の原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されている電流源であるとき、出力電圧を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定な帰還を実現する方法。
【請求項11】
請求項3に記載の電圧源が、出力電圧と参照電圧との誤差の、原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されるとともに、搬送波の振幅に帰還されている電圧源であるとき、出力電流を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定な帰還を実現する方法。
【請求項12】
請求項4に記載の電流源が、出力電流と参照電流との誤差の、原点に極の配置されていない伝達関数により搬送波の周波数に帰還されるとともに、搬送波の振幅に帰還されている電流源であるとき、出力電圧を搬送波の振幅に帰還する伝達関数を適切に選ぶことにより、搬送波の周波数を帰還が安定となる範囲に限定することにより安定な帰還を実現する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図13】
【図15】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図13】
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【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−42590(P2013−42590A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177368(P2011−177368)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(706000791)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(706000791)
【Fターム(参考)】
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