説明

共振型光偏向素子の駆動制御装置

【課題】回動状態を高精度に制御でき、広角駆動を実現できる、安価な共振型光偏向装置を提供する。
【解決手段】共振型光偏向素子の回動状態信号入力端と、共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータ3と、コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する手段と、回動状態信号にもとづいて共振型光偏向素子の共振周波数を制御する周波数コントローラと、周波数コントローラにより周波数が制御されるクロック信号を発生し、コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、回動状態信号入力端に入力する振幅が制御されるデジタル信号を生成する第一の振幅コントローラと、その生成するデジタル信号を前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第二のD/Aコンバータを介してコンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第一の電源電圧供給手段とを備る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振型光偏向素子の駆動制御装置に関し、特に共振型光偏向素子の回動状態を高精度に制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により製造される小型の共振型光偏向素子は、光偏向システムの小型化、低コスト化が実現できるため、種々の提案がなされ、試作・実用化が進んでいる。動作原理も静電駆動方式、電磁駆動方式、圧電駆動方式、その他の方式など様々な種類のデバイスが存在する。たとえば、ガルバノメータの原理(可動コイル型電磁駆動)で動作する電磁駆動光偏向素子(ガルバノミラーともいう)は種々提案されており、これらの電磁駆動光偏向素子は、光学走査角度プラスマイナス15度以上の広角走査を20Vp−p程度以下の振幅の交流電圧信号による低電圧動作が実現でき、コンパクトなレーザプロジェクションシステムなどへの実用化が期待されている(特許文献1、2)。そして、これらの電磁駆動光偏向素子はたとえば図6に示すように、可動部が一対のトーションバー40、41により軸支された両持ち梁構造として使用することがある。
【0003】
この種の共振型電磁駆動光偏向素子では、平板状の可動部39が一対のトーションバー40、41により支持部42に対して回動可能に軸支されている。可動部39には、平面ミラーなどの光線反射手段43と、通電により磁界を形成する手段である駆動コイル44とが設けられる。駆動コイル44は前記可動部39の周縁部を周回している。駆動コイル44の両端はトーションバー40、41を通る配線などの電気導通手段45を介して支持部42に設けられた電極取り出し部46、47に電気的に接続される。また、可動部39の外部には前記駆動コイル44に静磁界を作用させる一対の永久磁石などの磁界発生手段48、49が設けられる。電極取り出し部46、47には交流電圧あるいは交流電流の駆動信号が印加される。
【0004】
前記駆動コイル44における、トーションバー40、41を通る一本の回動軸に平行な一対の対辺部分は、そこを流れる電流と磁界発生手段48、49から供給される磁界成分との相互作用により、可動部39における光線反射手段43が設けられた面に対してほぼ垂直な方向にローレンツ力を受ける(図7参照)。また、それら一対の対辺部分を流れる電流の方向はそれぞれ逆向きであるため、可動部39は駆動コイル44に流れる電流の大きさ、言い換えれば駆動コイル44に供給される駆動電圧の大きさに応じて回動軸の周りに回動する。
【0005】
その結果、回動する可動部39に設けられた光線反射手段43で反射された光線は一次元的に走査される。可動部39は、可動部39の大きさや形状や重さ、またトーションバー40、41の大きさや形状や材質により決まる固有の共振周波数を有しており、前記交流電圧あるいは交流電流の駆動信号の周波数と可動部39の共振周波数とが一致するとき、共振型電磁駆動光偏向素子の走査角度は最大となる。駆動コイル44に供給する駆動信号を所定共振周波数に対応した交流信号とすることにより共振型電磁駆動光偏向素子は低電圧、低電流による広角光線走査が実現できる。
【0006】
前記共振型電磁駆動光偏向素子の他に、共振型圧電駆動光偏向素子も種々の提案がなされている(特許文献3、4)。該圧電駆動光偏向素子は、前記電磁駆動光偏向素子と同様に、平板状の可動部が一対のトーションバーにより支持部に対して回動可能に軸支されており、可動部には平面ミラーなどの光線反射手段が設けられる。前記電磁駆動光偏向素子においてはローレンツ力を利用することにより可動部39を駆動することに対し、該圧電駆動光偏向素子においては、圧電素子により発生する振動エネルギーを可動部に供給することにより可動部は駆動される。可動部は、可動部の大きさや形状や重さ、またトーションバーの大きさや形状や材質により決まる固有の共振周波数を有しており、前記圧電素子に供給する交流駆動信号の周波数と可動部の共振周波数とが一致するとき、共振型圧電駆動光偏向素子の走査角度は最大となる。圧電素子に供給する駆動信号を所定共振周波数に対応した交流信号とすることにより共振型圧電駆動光偏向素子は低消費電力による広角光線走査が実現できる。
【0007】
前記共振型光偏向素子を駆動するための駆動コイルや圧電素子に供給する駆動信号の波形は正弦波や矩形波が広く使用される。共振型光偏向素子はそれ自体が機械的周波数フィルタ特性を有するため、共振周波数近傍で駆動するとき、駆動波形が矩形波であっても共振型光偏向素子の応答はほぼ正弦波的応答となる。矩形波状の駆動信号は一定時間内に供給できるエネルギーを最大とできる。
【特許文献1】特開2000−035549号公報
【特許文献2】特開平10−123449号公報
【特許文献3】特許公表2007−522528号公報
【特許文献4】特開2007−94146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、共振型光偏向素子の駆動装置は、レーザプロジェクションシステムや高精度センシングシステムへの応用のため、回動状態制御(走査状態制御)の高精度化が強く望まれている。より高精度な制御を実現するために光偏向素子の走査振幅や走査速度などの回動状態を検出し、回動状態をフィードバック制御することが望ましい。
【0009】
共振型光偏向素子の共振周波数は、温度、または経年により変動するのが通例であり、あらかじめ設定した共振周波数の駆動信号を駆動コイルに供給し続けるのでは、温度変化や時間経過にしたがって光偏向素子の走査振幅や走査速度などの回動状態が一定に制御されない問題を生じるためである。
【0010】
光偏向素子の回動状態を検出し、フィードバック制御する手段として、たとえば特開2003−177347号公報では、駆動コイルに生じる逆起電力を検出し、該検出された逆起電力の波形にもとづいて正弦励振電流を所定時間だけ停止するとともに、該停止期間内に共振周波数を検出してその後該検出した共振周波数の正弦励振電流で可動部を駆動する手法が提案されている。しかし、特開2003−177347号公報による制御手法では、温度、また経年により変動する共振型光偏向素子の共振周波数を追従する結果、走査振幅は一定値に制御でき得るものの、走査速度は温度、また経年により変動してしまい、たとえばレーザプロジェクションシステムに利用する場合はプロジェクション映像が温度、また経年により変動してしまう。特に走査速度が限界値以下に遅くなってしまうと、映像信号との整合性が取れなくなり描画できなくなってしまう。
【0011】
光偏向素子の回動状態を検出しフィードバック制御する手段として、たとえば特開2003−66360号公報では、一周期内の一定期間の間、電流値がゼロである周期的な波形で可動部の共振周波数にほぼ等しい周波数を有する電流信号を駆動コイルに供給し、電流値がゼロである期間に対応する期間の間の駆動コイルの両端の電圧にもとづいて可動部の回動状態を検出し、駆動コイルに供給する電流信号の共振周波数と振幅を制御する手法が提案されている。しかし、該特開2003−66360号公報による手法では、駆動コイルに供給する電流信号の共振周波数を温度、また経年により変動する光偏向素子の共振周波数に追従させるため、走査速度が温度、また経年により変動してしまい、たとえばレーザプロジェクションシステムに利用する場合はプロジェクション映像が温度、また経年により変動してしまい問題となることは前述のとおりである。
【0012】
駆動コイルに供給する電流信号の周波数変動は、プロジェクション映像の変動が許容できる範囲内に抑制し、主に該電流信号の振幅制御により光偏向素子の走査振幅や走査速度などの回動状態を制御する必要がある。
【0013】
しかし、特開2003−66360号公報による手法では、該電流信号の振幅制御により光偏向素子の回動状態を制御しようとしたとき光偏向素子の走査角度と制御精度に大きく制限を与えてしまう。該走査角度に制限を与える機構を図7、8、9により説明する。図7は図6に示す一般的な共振型光偏向素子におけるAA断面構造図であり、駆動コイルの44a部では紙面垂直方向において手前側に向かってコイル電流が流れており、駆動コイル44b部では紙面垂直方向において奥側に向かってコイル電流が流れている。また、磁界発生手段48、49は紙面の左から右の方向に静磁界を与えている。このとき駆動コイル44a部は光偏向素子の上方向にローレンツ力50を受け、44b部は下方向にローレンツ力51を受けるため駆動コイル44に供給される電流信号(電圧信号)の大きさに応じて回動軸の周りに反時計回り方向に回動する。
【0014】
図8は図6に示す一般的な共振型光偏向素子におけるAA断面構造図であり、駆動コイルの44a部では紙面垂直方向において奥側に向かってコイル電流が流れており、駆動コイル44b部では紙面垂直方向において手前側に向かってコイル電流が流れている。また、磁界発生手段48、49は紙面の左から右の方向に静磁界を与えている。このとき駆動コイル44a部は光偏向素子の下方向にローレンツ力52を受け、44b部は上方向にローレンツ力53を受けるため、駆動コイル44に供給される電流信号(電圧信号)の大きさに応じて回動軸の周りに時計回り方向に回動する。
【0015】
このように該光偏向素子は正負の電流信号(電圧信号)を交流印加することにより時計回り方向、反時計回り方向の双方向に回動することができる。図9は、共振型電磁駆動光偏向素子の駆動コイルに供給する電圧と走査角度との関係を示す模式図である。図9に示されるように、走査角度が大きくなるに伴い、磁界発生手段から駆動コイルまでの距離が離れてしまいローレンツ力が小さくなってしまうため、またローレンツ力の作用する方向と可動部の回動方向がずれてしまうためなどにより走査角度は飽和する傾向にあり、広角走査領域ではリニアな特性を示さなくなる。すなわち、共振型光偏向素子を高効率で高精度に広角駆動させるためには正負の交流信号で駆動することが有効であることは明確である。これに対して、特開2003−66360号公報による手法では、正バイアスのみ、あるいは負バイアスのみで形成される駆動信号しか適用できないため、正負バイアスで形成される駆動信号を利用する場合に較べて走査角度が約半分に制限されてしまう。走査角度の制限はたとえばレーザプロジェクションシステムでは、画角を制限してしまうため問題となる。また、前述のとおり、走査角度は広角走査領域において飽和する傾向にあるため、広角走査する場合に効率的で高精度に制御された光偏向素子の駆動が困難となってしまう。
【0016】
光偏向素子の回動状態を検出しフィードバック制御する手段として、たとえば特開2001−305471号公報では、定電流ドライバとスイッチング機構を組み合わせて形成した矩形波状の電流信号により一周期内の一定期間の間、電流値がゼロである周期的な波形で可動部の共振周波数にほぼ等しい周波数を有する電流信号を駆動コイルに供給し、電流値がゼロである期間に対応する期間の間の駆動コイルの両端に発生する誘導起電圧(誘導起電流)にもとづいて可動部の回動状態を検出し、駆動コイルに供給する電流信号の振幅を制御する手法が提案されている。該特開2001−3015471号公報による手法は前記特開2003−66360号公報による手法と同様に、正バイアスのみ、あるいは負バイアスのみで形成される駆動信号しか適用できないため、やはり正負バイアスで形成される駆動信号を利用する場合に較べて走査角度が約半分に制限されてしまい、また、広角走査する場合に効率的で高精度に制御された光偏向素子の駆動が困難となってしまう。
【0017】
光偏向素子の回動状態を検出するための手段として、たとえば特開平7−218857号公報では可動部に設けられた駆動コイルと固定部に設けられた検出用コイルとの相互誘導を利用して可動部の回動状態を検出し、得られた回動状態検出信号を光偏向素子の駆動系にフィードバックし駆動電流を制御する手法が提案されている。しかし、該特開平7−218857号公報による制御手法では、可動部の回動領域を確保するために駆動コイルと検出用コイルを近付けることができず、駆動コイルと検出用コイルとの相互誘導による起電力の検出レベルが微弱となり、高精度に検出できない問題がある。また、該回動状態を検出する手法により抽出した回動状態情報を用いて具体的にフィードバック制御する手法は示されていない。
【0018】
光偏向素子の回動状態を検出するための手段として、たとえば特開平11−242180号公報では、可動部に駆動コイルと検出用コイルを具備し、検出用コイルが磁界中で運動することにより発生する誘導起電力を利用して光偏向素子の回動状態を検出し、得られた回動状態検出信号を光偏向素子の駆動系にフィードバックし駆動信号を制御する手法、及びトーションバー部にひずみゲージを具備し、ひずみ量を検出することにより回動状態をモニタリングし、得られた回動状態検出信号を光偏向素子の駆動系にフィードバックし駆動信号を制御する手法が提案されている。しかし、特開平11−242180号公報による制御手法では、検出用コイルの出力信号には駆動コイルと検出用コイルの相互誘導成分がノイズ成分として混入するため検出用コイルの出力信号に歪みが生じてしまい、高精度に検出できない問題がある。また、ひずみゲージを具備する手法においても該回動状態を検出する手法により抽出した回動状態情報を用いて形成した自励発振回路の出力を駆動信号に利用することにより駆動信号の周波数、振幅は安定に制御できるが、光偏向素子の共振周波数が温度、経年により変動することによって変動する走査角度を安定に制御する手法は具体的に示されていない。
【0019】
以上に示すように、走査速度や走査角度などの回動状態を検出するための手段として駆動コイルに生じる誘導起電力を利用する手法、検出用コイルを付加する手法、ひずみゲージの適用によりひずみ量を検出する手法が提案されており、何れも回動状態検出手段としては有望であるが、広角走査駆動する共振型光偏向素子の回動状態を高精度に制御する手法としては十分な提案がなされていない。
【0020】
前述の回動状態検出手段により抽出された回動状態の情報は、特開2001−305471号公報、特開2003−177347号公報、特開2003−66360号公報などに示されるように、通常、CPUやマイクロコンピュータに入力され、演算処理後、駆動制御信号に加工される。
【0021】
出力される駆動制御信号は、たとえば特開2003−66360号公報による手法では、図10に示すようなD/Aコンバータ(DACと略記することもある)54を介して形成した、一周期内の一定期間の間、電圧値がゼロである周期的な波形で可動部の共振周波数にほぼ等しい周波数を有する矩形波状のアナログ波形の電圧信号55である。出力された該矩形波状の電圧信号55は、ドライバアンプ56により増幅された後、駆動コイルに入力され光偏向素子57を回動制御する。走査角度を制御するためには形成するアナログ波形の電圧信号の振幅を制御することが考えられ、電圧信号はLOレベルからHIレベルの範囲(以降、代表値としてLOレベル=0V、HIレベル=+5Vの場合を勘案する)内で自由に形成でき、たとえば8ビットのD/Aコンバータ54を使用したときは256階調の振幅V(t)を表現できる。すなわち、走査振幅は略256分の1の最小解像度で制御することができる。しかし、当該手法では、該電圧信号の振幅制御により光偏向素子の回動状態を制御しようとしたとき該電圧信号の振幅中心電圧レベルが変動してしまうため、駆動コイルに供給する電流信号I(t)のオフセット値が変動してしまう。その結果、走査領域のオフセット変動、ひいては回動状態の不安定化を発生させてしまい、高精度の駆動制御が困難となり問題となる。また、正バイアスのみで形成される駆動信号しか適用できないため、正負バイアスで形成される駆動信号を利用する場合に較べて走査角度が約半分に制限されてしまい問題となることは前述のとおりである。
【0022】
前述の問題を解決するために、出力される駆動制御信号58をたとえば図11に示すようなD/Aコンバータ59を介して形成した矩形波や正弦波などの所望のアナログ波形とする手法が考えられる。形成されたアナログ波形58はLOレベルからHIレベルの範囲(以降、代表値としてLOレベル=0V、HIレベル=+5Vの場合を考慮する)内で自由に形成でき、たとえば8ビットのD/Aコンバータ59を使用したときは256階調の表現ができる。走査角度を制御するためには形成するアナログ波形58の振幅V(t)を制御することが考えられ、たとえば+2.5Vを振幅中心として形成したアナログ波形が有望であり、アナログ波形の振幅中心を固定することにより前述のオフセット変動の問題を回避できる。また、出力された該アナログ波形58はレベルシフト回路60により振幅中心電圧が0Vとなるように加工した後、増幅回路61により増幅され、駆動コイルに入力され光偏向素子62を回動制御する。本手法によれば、駆動コイルに入力される駆動信号63は正負両バイアスにて利用できるため、前述の走査角度が制限される問題も回避できる。ただし、このとき前述のオフセット変動の問題を解決するために正負の振幅は同時に制御する必要があるため、8ビットのD/Aコンバータを使用したとき、振幅V(t)の制御は128分の1の最小解像度となってしまう。また、該所望のアナログ波形を形成する手法では、高価な高性能CPU、あるいは高性能マイクロコンピュータを適用する必要があり、システムが高価となってしまう問題がある。より高精度化を実現するためにはD/Aコンバータの入力ビット数を増やすことが必要となるが、さらなるシステムの高価格化を招いてしまう。
【0023】
一方、たとえばレーザプロジェクションシステムなどにおいては、画角が広く、高精細な描画に適応できる光偏向素子の要求が強く、すなわち、より広角で動作でき、より高精度な回動状態制御が実現できる光偏向素子が強く要求されている。
【0024】
以上に説明したように、走査速度や走査角度などの回動状態を高精度に制御でき、広角駆動を実現できる、安価な共振型光偏向素子の有効な駆動手法は提案されていない。
【0025】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、回動状態を高精度に制御でき、広角駆動を実現できる、安価な共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題を解決するため、本発明では、共振型光偏向素子の駆動制御装置を次の(1)ないし(7)のとおりに構成する。
【0027】
(1)共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて前記共振型光偏向素子の共振周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第一の振幅コントローラと、
前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第一のD/Aコンバータを介して前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第二のD/Aコンバータを介して前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第一の電源電圧供給手段と、
を備えた共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【0028】
(2)共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第一の振幅コントローラと、
前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第三のD/Aコンバータを介して前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を前記第三のD/Aコンバータと反転増幅回路を介して前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第二の電源電圧供給手段と、
を備えた共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【0029】
(3)共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第一の振幅コントローラと、
所定のアナログ値と、前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第四のD/Aコンバータで変換したアナログ値とを加算する第一の加算回路と、
前記第一の加算回路の出力を前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第一の加算回路の出力を反転増幅回路を介して前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第三の電源電圧供給手段と、
を備えた共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【0030】
(4)前記(3)に記載の共振型光偏向素子の駆動制御装置において、
前記所定のアナログ値は、変更可能な値である共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【0031】
(5)前記(3)または(4)に記載の共振型光偏向素子の駆動制御装置において、
前記所定のアナログ値を第一の分圧回路を介して前記第一の加算回路に供給し、前記第四のD/Aコンバータで変換したアナログ値を第二の分圧回路を介して前記第一の加算回路に供給する共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【0032】
(6)前記(5)に記載の共振型光偏向素子の駆動制御装置において、
前記第一の分圧回路の分圧比と前記第二の分圧回路の分圧比を、所要の値にそれぞれ設定することにより、前記所定のアナログ値を粗制御用に、前記第四のD/Aコンバータで変換したアナログ値を微制御用に使用する共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【0033】
(7)共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第二の振幅コントローラと、
所定のアナログ値を分圧する第三の分圧回路と、
前記第二の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第五のD/Aコンバータで変換したアナログ値を分圧する第四の分圧回路と、
前記第三の分圧回路の出力と前記第四の分圧回路の出力を加算する第二の加算回路と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第三の振幅コントローラと、
所定のアナログ値を分圧する第五の分圧回路と、
前記第三の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第六のD/Aコンバータで変換したアナログ値を分圧する第六の分圧回路と、
前記第五の分圧回路の出力と前記第六の分圧回路の出力を加算する第三の加算回路と、
前記第二の加算回路の出力を前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第三の加算回路の出力を前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第四の電源電圧供給手段と、
を備えた共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、回動状態を高精度に制御でき、広角駆動を実現できる、安価な共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、「共振型光偏向素子の駆動制御装置」の実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0036】
図1は、実施例1である“共振型光偏向素子の駆動制御装置”の構成を示すブロック図である。本実施例では、共振型光偏向素子として共振型電磁駆動光偏向素子を想定しているが、共振型圧電駆動光偏向素子についても同様に実施することができる。
【0037】
図1において、クロック信号発生手段2から出力されるクロック信号をコンパレータ3の信号入力端子4に入力し、基準電圧発生手段5から出力される比較電圧信号を前記コンパレータ3の比較信号入力端子6に入力する。前記比較電圧の電圧値は前記クロック信号の最小値より大きく、また、最大値より小さい値に設定され、たとえば前記比較電圧信号は、前記クロック信号の最大振幅値の略半値となる定電圧信号である。前記クロック信号の周波数は、共振型光偏向素子の可動部の大きさや形状や重さ、またトーションバーの大きさや形状や材質により決まる可動部の固有の共振周波数とほぼ一致しており、すなわち前記共振型光偏向素子の駆動信号となる前記コンパレータ3の出力電圧はその周波数は前記可動部の固有の共振周波数とほぼ一致した矩形波状の信号となり、前記共振型光偏向素子は共振駆動される。共振型光偏向素子はそれ自体が機械的周波数フィルタ特性を有するため、共振周波数近傍で駆動するとき、駆動波形が矩形波であっても共振型光偏向素子の応答はほぼ正弦波的応答となることは前述のとおりである。前記共振型光偏向素子の駆動信号となる前記コンパレータ3の出力電圧の正の振幅は、前記コンパレータ3の正の電源電圧入力端子7に入力される正の電圧8により決定され、また、前記コンパレータ3の出力電圧の負の振幅は、前記コンパレータ3の負の電源電圧入力端子9に入力される負の電圧10により決定される。
【0038】
前記コンパレータ3の正の電源電圧入力端子7に入力される正の電圧と、前記コンパレータ3の負の電源電圧入力端子9に入力される負の電圧は、回動状態検出手段11により検出された回動状態信号12を振幅コントローラ13により演算処理し、走査振幅が所望の値となるよう変調制御された振幅制御電圧14、15に相当する。振幅コントローラ13では、回動状態検出手段11で検出した回動状態信号12より共振型光偏向素子の走査振幅情報を抽出し、所定の振幅値と比較して所要のフィードバック信号を生成する。なお、振幅コントローラ13は、後述の構成のコンパレータ3を用いることにより、十分な制御精度が得られるので、高価な高性能CPUや高性能マイクロコンピュータを適用する必要がなく、通常のCPUやマイクロコンピュータで構成することができる。
【0039】
回動状態検出手段11は、前述の駆動コイルに生じる誘導起電力を利用する手法や、検出用コイルを付加する手法、ひずみゲージの適用によりひずみ量を検出する手法を利用しても良いが、光走査領域にフォトダイオードなどの光センサを配備し、直接、光信号を検出しても良く、また光走査領域に光ファイバーを配備して光信号を光センサに導き、光信号を検出しても良い。このとき、前記光信号の時間軸成分により走査位置情報が得られることは言うまでもなく、また、前記光信号の周波数を測定することにより走査周波数を抽出することができる。また、光センサに光が照射されている時間、具体的には前記光信号のパルス幅には、走査角度が大きくなると前記パルス幅は小さくなるなど、走査振幅情報も抽出することができる。光センサの配備数量は1個に限るものではなく、複数配備することにより、得られる複数の光信号の平均値を算出でき、より高精度の回動状態検出ができる。たとえば、所望の光走査領域において、走査方向に対称となるように2個の光センサを配備し、得られる2種の光信号それぞれのパルス幅を比較したり、2種のパルスの間隔を演算したりすることにより回動状態のオフセットずれ情報も抽出することができる。
【0040】
本実施例によれば、回動状態検出手段11により検出された回動状態信号12を周波数コントローラ16により演算処理し、クロック信号発生手段2を介して走査周波数が所望の値となるようフィードバック制御されたクロック信号17の周波数により、前記共振型光偏向素子の走査周波数を制御できる。本実施例では、コンパレータを利用していることにより、前記クロック信号17は、たとえば最大振幅値=+5V、最小振幅値=0Vの矩形波信号のようないわゆるTTLレベルのデジタルパルス信号で良く、高価な高性能CPUや高性能マイクロコンピュータを必要とせず、安価で簡易なシステムを実現することができる。
【0041】
また、本実施例によれば、回動状態検出手段11により検出された前記回動状態検出信号12を振幅コントローラ13によりデジタル演算処理し、D/Aコンバータ及び増幅回路を介して走査振幅が所望の値となるようフィードバック制御された振幅制御電圧14、15を前記コンパレータ3の正の電源電圧、あるいは負の電源電圧、あるいは正負の両電源電圧に変調、入力する。これにより前記共振型光偏向素子の駆動信号18となる前記コンパレータ3の矩形波状の出力電圧信号は正負両バイアスを利用して形成できるため、走査角度に制限を与えることなく広角に動作できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供できる。さらに、8ビットのD/Aコンバータを使用したときは正負の振幅をそれぞれ256階調の表現ができ、すなわち全体振幅で512階調の表現を可能とする高精度の駆動制御装置を提供することができ、D/Aコンバータの入力ビット数を増やすことなく、容易に高精度の駆動制御装置を提供することができる。
【0042】
さらに、本実施例によれば、前記コンパレータ3の正の電源電圧入力端子7に入力される正の電圧8と、負の電源電圧入力端子9に入力される負の電圧10とはそれぞれ独立に制御できるため、回動状態のオフセット制御も可能となり、走査振幅のオフセット値を変動させることなく走査振幅中心を安定に維持できる、高精度の駆動制御装置を提供できる。
【0043】
具体的には、回動状態検出手段11により得られた回動状態のオフセットずれ情報にもとづき、たとえば正方向にオフセットずれ情報が検出された場合には、前記正の電圧8を低下制御させる、あるいは前記負の電圧10を負方向に上昇制御させる、あるいはそれらの制御を組み合わせるなど、前記正の電圧8をフィードバック制御する、あるいは前記負の電圧10をフィードバック制御する、あるいは前記正の電圧8と前記負の電圧10を共にフィードバック制御することにより実現できる。
【0044】
以上説明したように、本実施例によれば、前記コンパレータ3の矩形波状の出力電圧信号は正負両バイアスを利用して形成できるため、走査角度に制限を与えることなく広角に動作できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供でき、8ビットのD/Aコンバータを使用したときは正負の振幅を同時に256階調の表現ができ、8ビットのD/Aコンバータを使用したときの従来技術に較べて2倍の解像度を有する高精度の駆動制御装置を提供することができ、D/Aコンバータの入力ビット数を増やすことなく、容易に高精度の駆動制御装置を提供することができる。
【実施例2】
【0045】
図2は、実施例2である“共振型光偏向素子の駆動制御装置”の構成を示すブロック図である。実施例1と同様に、クロック信号発生手段2から出力されるクロック信号17をコンパレータ3の信号入力端子4に入力し、基準電圧発生手段5から出力される比較電圧信号を前記コンパレータ3の比較信号入力端子6に入力する。これにより、前記共振型光偏向素子の走査周波数は、クロック信号発生手段2を介して走査周波数が所望の値となるようフィードバック制御されたTTLレベルのデジタルパルス信号であるクロック信号17の周波数により制御でき、高価な高性能CPUや高性能マイクロコンピュータを必要としない安価で簡易なシステムを実現することができる。
【0046】
また、実施例1と同様、前記共振型光偏向素子の駆動信号18となる前記コンパレータ3の出力電圧の正の振幅は、前記コンパレータ3の正の電源電圧入力端子21に入力される正の電圧20により決定され、また、前記コンパレータ3の出力電圧の負の振幅は、前記コンパレータ3の負の電源電圧入力端子23に入力される負の電圧により決定されるが、本実施例によれば、回動状態検出手段11により検出された回動状態信号12を振幅コントローラ13により演算処理し、走査振幅が所望の値となるよう変調制御された第一の電圧20は、前記コンパレータ3の極性が一致する所望の第一の電源電圧入力端子21に入力される。そして、前記第一の電圧20は、同時に反転増幅回路22に入力され、前記反転増幅回路22から出力される逆極性の電圧は前記コンパレータ3の極性が一致する所望の第二の電源電圧入力端子23に入力されるよう構成している。たとえば、前記走査振幅が所望の値となるよう変調制御された第一の電圧20が正の電圧である場合は、前記第一の電圧20は前記コンパレータ3の正の電源電圧入力端子に入力され、同時に、前記第一の電圧20は反転増幅回路22を介して前記コンパレータ3の負の電源電圧入力端子23に入力されるよう構成する。
【0047】
以上説明したように、本実施例によれば、前記コンパレータ3の矩形波状の出力電圧信号は正負両バイアスを利用して形成できるため、走査角度に制限を与えることなく広角に動作できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供でき、8ビットのD/Aコンバータを使用したときは正負の振幅を同時に256階調の表現ができ、8ビットのD/Aコンバータを使用したときの従来技術に較べて2倍の解像度を有する高精度の駆動制御装置を提供することができ、D/Aコンバータの入力ビット数を増やすことなく、容易に高精度の駆動制御装置を提供することができる。
【0048】
また、本実施例によれば、実施例1の駆動制御装置1に較べて、D/Aコンバータを含む制御電圧発生手段を一つ省略できるため、より安価で簡易な共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供できる。
【0049】
さらに、本実施例によれば、前記コンパレータ3の正負の電源電圧入力端子に入力される正負の電圧は同時に振幅変調制御できるため、走査振幅のオフセット値を変動させることなく安定維持することができる。前記反転増幅回路22の増幅率は通常1とすれば良いが、オフセット状態を調整したい場合は、前記反転増幅回路22の増幅率を調整することにより実現できる。
【実施例3】
【0050】
図3は、実施例3である“共振型光偏向素子の駆動制御装置”の構成を示すブロック図である。本実施例においても、実施例1、実施例2と同様に、クロック信号発生手段2から出力されるクロック信号17をコンパレータ3の信号入力端子4に入力し、基準電圧発生手段5から出力される比較電圧信号を前記コンパレータ3の比較信号入力端子6に入力する。これにより、前記共振型光偏向素子の走査周波数は、クロック信号発生手段2を介して走査周波数が所望の値となるようフィードバック制御されたTTLレベルのデジタルパルス信号であるクロック信号17の周波数により制御でき、高価な高性能CPUや高性能マイクロコンピュータを必要としない安価で簡易なシステムを実現することができる。
【0051】
そして、本実施例においても実施例2と同様に反転増幅回路22を適用することにより、走査振幅のオフセット値を変動させることなく安定維持することができる安価で簡易なシステムを提供でき、また、前記コンパレータ3の矩形波状の出力電圧信号は正負両バイアスを利用して形成できるため、走査角度に制限を与えることなく広角に動作できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供できる。
【0052】
さらに、本実施例では、回動状態検出手段11により検出された回動状態信号12を振幅コントローラ13により演算処理し、D/Aコンバータ25を介して走査振幅が所望の値となるよう変調制御された第一の振幅制御電圧26と、振幅コントローラ13により所望の値に変調制御された第二の振幅制御電圧27とを第一の加算増幅回路28の入力端子に入力し、前記第一の加算増幅回路28から出力される制御された第三の電圧29を、実施例2における前記制御された第一の電圧20とするよう構成する。この構成により、振幅制御解像度を向上させることができる。
【0053】
具体的には、たとえば前記第一の振幅制御電圧26を+5Vの定電圧に設定し、8ビットのD/Aコンバータを介して走査振幅が所望の値となるよう変調制御された前記第二の振幅制御電圧27の出力範囲を0Vから+5Vとなるように設定し、前記第一の加算増幅回路28の増幅率を1倍に設定すると、前記制御された第三の電圧29の出力は+5Vから+10Vの範囲を256階調で表現できるようになり、実施例2による駆動制御装置19に較べてさらに2倍の解像度を得ることができ、D/Aコンバータの入力ビット数を増やすことなく、容易に高精度の駆動制御装置を提供することができる。このとき、前記第一の振幅制御電圧26を定電圧としているため前記振幅コントローラ13からの制御、及びD/Aコンバータは省略できることは言うまでもない。また、前記第一の振幅制御電圧26は定電圧に限られるものではなく、たとえば0Vから+5Vの範囲を変調制御できるよう構成したとき、前記制御された第三の電圧29の制御範囲を広くすることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施例によれば、簡単な構成を追加するだけで、実施例2より高精度の共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供することができる。
【実施例4】
【0055】
図4は、実施例4である“共振型光偏向素子の駆動制御装置”の構成を示すブロック図である。本実施例により実施例3に較べてさらに高精度制御が実現できる。
【0056】
本実施例4による駆動制御装置30の構成は実施例3において説明した駆動制御装置24の構成とほぼ同様であるため詳細は省略するが、本実施例による駆動制御装置30では、実施例3による駆動制御装置24の構成と較べて、前記第一の振幅制御電圧26、及び前記第二の振幅制御電圧27とをそれぞれ第一の分圧回路31、及び第二の分圧回路32を介して前記第一の加算増幅回路28に入力している点が改良されている。
【0057】
この構成をとることにより、共振型光偏向素子の振幅制御精度を飛躍的に向上させることができる。
【0058】
具体的には、たとえば、前記第一の振幅制御電圧26を+5Vの定電圧に設定し、8ビットのD/Aコンバータ25を介して前記第二の振幅制御電圧27を0Vから+5Vの範囲を256階調で変調制御できる電圧となるよう構成し、前記第一の分圧回路31の分圧比は1とし、前記第二の分圧回路32の分圧比は、0.1とすると、前記第一の加算増幅回路28から出力される制御された第三の電圧33は+5Vから+5.5Vの範囲を256階調表現できる電圧とすることができ、D/Aコンバータの入力ビット数を増やすことなく、容易に飛躍的に振幅駆動精度を向上できる。このとき、前記第一の振幅制御電圧26を定電圧としているため前記振幅コントローラ13からの制御、及びD/Aコンバータは省略できることは言うまでもない。分圧比の設定は0.1に限られるものではなくシステムの目的に応じて所望の値に設定されるものであり、たとえば分圧比の設定を0.05とするなどによりさらに駆動制御精度を向上させても良いし、あるいは、分圧比の設定を0.5とするなどにより駆動制御範囲を広範囲化させても良い。また、前記第一の振幅制御電圧26は定電圧に限られるものではなく、たとえば0Vから+5Vの範囲を変調制御できるよう構成したとき、前記制御された第三の電圧33の制御範囲を広くすることができるし、さらに、前記第一の分圧回路31の分圧比と前記第二の分圧回路32の分圧比を所望の値にそれぞれ設定することにより、前記第一の振幅制御電圧26を粗制御用に、前記第二の振幅制御電圧27を微制御用に使用するといった使用法も可能である。
【0059】
以上説明したように、本実施例によれば、簡単な構成を追加するだけで、実施例3より高精度の共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供することができる。
【実施例5】
【0060】
図5は、実施例5である“共振光偏向素子の駆動制御装置”の構成を示すブロック図である。本実施例5は、実施例4により説明した、分圧回路を利用することにより電圧制御精度を飛躍的に向上した構成を、コンパレータの正、負それぞれの電源電圧入力端子への電源供給の構成としており、さらに、実施例2、実施例3、実施例4では使用していた反転増幅回路22を省略し、前記コンパレータの正負の電源電圧は独立に制御できるよう構成している。
【0061】
本実施例においても、実施例1ないし実施例4と同様に、クロック信号発生手段2から出力されるクロック信号17をコンパレータ3の信号入力端子4に入力し、基準電圧発生手段5から出力される比較電圧信号を前記コンパレータ3の比較信号入力端子6に入力する。これにより、前記共振型光偏向素子の走査周波数は、クロック信号発生手段2を介して走査周波数が所望の値となるようフィードバック制御されたTTLレベルのデジタルパルス信号であるクロック信号17の周波数により制御でき、高価な高性能CPUや高性能マイクロコンピュータを必要としない安価で簡易なシステムを実現することができる。
【0062】
そして、本実施例においても前記コンパレータ3の矩形波状の出力電圧信号は正負両バイアスを利用して形成できるため、走査角度に制限を与えることなく広角に動作できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供できる。
【0063】
さらに本実施例によれば、第三ないし第六の分圧回路35、36、37、38、それぞれの分圧比を適正に設定することにより、D/Aコンバータの入力ビット数を増やすことなく、容易に高解像度の振幅制御を実現したうえで、回動状態のオフセット制御も高解像度で実現可能となり、走査振幅のオフセット値を変動させることなく走査振幅中心を安定に維持できる、高精度の駆動制御装置を提供できる。
【0064】
以上、説明したように、本実施例によれば、高価な高性能CPUや高性能マイクロコンピュータを適用することなく、また、D/Aコンバータの入力ビット数を増やすことなく、回動状態を高精度に制御できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を安価に提供できる。
【0065】
また、走査角度に制限を与えることなく広角に動作でき、回動状態を高精度に制御できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供できる。さらに、走査振幅中心を安定に維持し、走査振幅のオフセット値を変動させることなく、共振型光偏向素子の回動状態を高精度に制御できる共振型光偏向素子の駆動制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1の構成を示すブロック図
【図2】実施例2の構成を示すブロック図
【図3】実施例3の構成を示すブロック図
【図4】実施例4の構成を示すブロック図
【図5】実施例5の構成を示すブロック図
【図6】電磁駆動光偏向素子の構成を示す斜視図
【図7】電磁駆動光偏向素子の動作説明図
【図8】電磁駆動光偏向素子の動作説明図
【図9】電磁駆動光偏向素子の駆動特性を示す図
【図10】従来技術の問題点を説明する図
【図11】従来技術の問題点を説明する図
【符号の説明】
【0067】
1 実施例1である駆動制御装置
2 クロック信号発生手段
3 コンパレータ
4 コンパレータの信号入力端子
5 基準電圧発生手段
6 コンパレータの比較信号入力端子
7 コンパレータの正の電源電圧入力端子
9 コンパレータの負の電源電圧入力端子
11 回動状態検出手段
13 振幅コントローラ
16 周波数コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて前記共振型光偏向素子の共振周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第一の振幅コントローラと、
前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第一のD/Aコンバータを介して前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第二のD/Aコンバータを介して前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第一の電源電圧供給手段と、
を備えたことを特徴とする共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【請求項2】
共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第一の振幅コントローラと、
前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第三のD/Aコンバータを介して前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を前記第三のD/Aコンバータと反転増幅回路を介して前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第二の電源電圧供給手段と、
を備えたことを特徴とする共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【請求項3】
共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第一の振幅コントローラと、
所定のアナログ値と、前記第一の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第四のD/Aコンバータで変換したアナログ値とを加算する第一の加算回路と、
前記第一の加算回路の出力を前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第一の加算回路の出力を反転増幅回路を介して前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第三の電源電圧供給手段と、
を備えたことを特徴とする共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の共振型光偏向素子の駆動制御装置において、
前記所定のアナログ値は、変更可能な値であることを特徴とする共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の共振型光偏向素子の駆動制御装置において、
前記所定のアナログ値を第一の分圧回路を介して前記第一の加算回路に供給し、前記第四のD/Aコンバータで変換したアナログ値を第二の分圧回路を介して前記第一の加算回路に供給することを特徴とする共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の共振型光偏向素子の駆動制御装置において、
前記第一の分圧回路の分圧比と前記第二の分圧回路の分圧比を、所要の値にそれぞれ設定することにより、前記所定のアナログ値を粗制御用に、前記第四のD/Aコンバータで変換したアナログ値を微制御用に使用することを特徴とする共振型光偏向素子の駆動制御装置。
【請求項7】
共振型光偏向素子の回動状態を示す回動状態信号を入力する回動状態信号入力端と、
前記共振型光偏向素子に駆動信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータの一方の入力端子に基準電圧を供給する基準電圧発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて周波数を制御する周波数制御信号を生成する周波数コントローラと、
前記周波数コントローラが生成する周波数制御信号により周波数が制御されるクロック信号を発生し、前記コンパレータの他方の入力端子に供給するクロック信号発生手段と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第二の振幅コントローラと、
所定のアナログ値を分圧する第三の分圧回路と、
前記第二の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第五のD/Aコンバータで変換したアナログ値を分圧する第四の分圧回路と、
前記第三の分圧回路の出力と前記第四の分圧回路の出力を加算する第二の加算回路と、
前記回動状態信号入力端に入力する回動状態信号にもとづいて振幅が制御されるデジタル信号を生成する第三の振幅コントローラと、
所定のアナログ値を分圧する第五の分圧回路と、
前記第三の振幅コントローラの生成するデジタル信号を第六のD/Aコンバータで変換したアナログ値を分圧する第六の分圧回路と、
前記第五の分圧回路の出力と前記第六の分圧回路の出力を加算する第三の加算回路と、
前記第二の加算回路の出力を前記コンパレータの一方の電源電圧入力端子に供給し、前記第三の加算回路の出力を前記コンパレータの他方の電源電圧入力端子に供給する第四の電源電圧供給手段と、
を備えたことを特徴とする共振型光偏向素子の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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