共振磁力計デバイス
部材(26)を有する基板と、前記振動部材(26)に交流(AC)を通過させるための手段とを備えた共振磁力計(20)が記載されている。この磁力計は前記振動部材(26)に磁界から独立した振動力を与えるための駆動手段(46、48)も設けられていることを特徴とする。磁力計のマイクロ電気機械システム(MEMS)の実施例も記載されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁力計に関し、より詳細にはマイクロ電気機械システム(MEMS)自己共振磁力計に関する。
【背景技術】
【0002】
共振磁力計は周知であり、MEMSに基づく最も初期の共振磁力計の1つはD.K.ウィッケンデン外による論文「MEMSに基づく共振シロフォンバー磁力計」、SPIE会議議事録−マイクロ機械加工されたデバイスおよびコンポーネントIV、SPIE、第3514巻、350〜358ページ(1998年)に記載されている。このウィッケンデン外によるデバイスは、表面がマイクロ機械加工されたバーを備え、このバーは第1共振モードの節において一対の電極に固定されている。使用に際し、バーの共振周波数の交流電流(AC)がバーに流されるようになっている。磁界の存在下において、ローレンツ力によってバーは共振状態となり、かかる運動の大きさは容量により検出された印加磁界の強度を表示する。
【0003】
基本的なMEMS共振磁力計構造の変形例は、最近では、ザッキ・イズマン、ミカエル・C.L.ワード、ケビン・M・ブルンソンおよびポール・C・スティーブンによる論文「共振磁力計の開発」、2003年、ナノテクノロジー会議およびトレードショーの議事録、2月23〜27日、サンフランシスコ、第1巻、340〜343ページ、ISBN 0−9728422−0−9に記載されている。このイズマン外の共振磁力計はシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハから形成されており、2つの組の固定ー固定されたサスペンションを有する振動質量体を備え、サスペンションによって質量体はウェーハの平面にある軸線に沿って移動できるようになっている。サスペンションに沿って、ほぼ振動質量体の共振周波数の周波数を有するAC電流が流され、よって磁界の存在下で質量体は共振状態とされる。質量体には1組の電極が取り付けられており、磁界によって誘導された運動の大きさを容量により測定可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振磁力計におけるQ増幅率を最大にするために、振動質量体に供給されるAC電流の周波数が質量体の共振周波数に一致させるか、またはそれに十分接近させるように保証しなければならない。ビーム構造体の共振周波数を理論的に予測できるし、および/または測定できるが、共振ビームサスペンションで生じる温度変化、応力によって誘導される効果および/または非線形性からバラツキが生じ得る。共振条件から離れた周波数のAC電流を印加した場合、ローレンツ力のQ増幅がなくなることに起因し、デバイスの感度は大幅に低下する。
【0005】
共振ビームが共振状態になるように駆動されることを保証するために、ビームの共振周波数を検出するのに使用される検出回路の出力に応答し、周波数発生器の出力周波数を調節することが知られている。共振ビームの発振周波数の変化を印加されたACの周波数がトラッキングするのを保証するのに、位相ロックループが使用される。しかしながら、これら位相ロックループ回路は常に最適な周波数を探さなければならないので、望ましくない位相ノイズを生じさせ得る。
【0006】
高感度用途、例えばコンパスなどでは、共振磁力計は約500〜5000の間にある機械的なQ値(Q)および約500Hz〜30kHzの範囲にある共振周波数を必要とする。この高Q値は、共振ビーム構造体にAC電流を供給するのに使用される周波数発生器の精度は数kHzにつき1Hzよりも良好となっていなければならないことを意味している。位相ロックループ回路を設ける外に、かかる高分解率の周波数発生器を設けることによって、デバイスを作動させるのに必要な制御電子回路のコストが高くなり、更に複雑となる。
【0007】
よって、本発明の目的は、上記欠点の少なくとも一部を少なくした共振磁力計デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の様相によれば、共振磁力計は、振動部材と、該振動部材に交流(AC)を通過させるための手段とを備え、前記振動部材に、磁界に応じた振動力を加えるための駆動手段が更に設けられていることを特徴とする。
【0009】
駆動手段により振動部材に対し(例えば静電的に)加えられる振動力は磁界強度から独立しており、使用中、振動部材が連続的に共振状態にされることを保証するのに十分な振幅を有することが好ましい。振動部材を通過するAC電流と前記磁界との相互作用に起因し、磁界を加えるとローレンツ振動力も生じる。上記のようにローレンツ振動力の大きさは所定の振幅のACに対し、振動部材に加える磁界の強度によって決まる。磁界がない場合、振動部材にはローレンツ振動力は与えられない(すなわちローレンツ振動力は振幅がゼロとなる)。
【0010】
従って、磁界から独立した(すなわちローレンツ)振動力と駆動手段によって加えられる磁界に依存した振動力との組み合わせにより振動部材が共振状態に駆動される共振磁力計が提供される。従って、本発明は従来技術のデバイスと異なり、磁界が印加されない場合でも共振状態に駆動される振動部材を有する磁力計を提供するものである。磁界を加えると振動部材の振動の振幅は検出可能な態様で変化する。
【0011】
駆動手段を設けることにより、振動部材を連続的に共振状態に駆動できるので、磁界印加時にしか共振状態に駆動されない従来デバイスと比べていくつかの利点が得られる。第1の利点は、振動部材の共振周波数を連続的に測定することが可能であることである。このことは、(例えば異なる温度、圧力などで)共振特性が顕著に変化する種々の異なる環境で磁力計を使用しなければならない場合、有利である。これまで共振周波数のかかる測定は十分強い磁界を加えたときにしかできなかった。第2の利点は、この磁力計は共振を開始させるのに十分な磁界を加えなければならない従来のデバイスよりも磁界強度検出スレッショルドが一般に低くなっていることである。
【0012】
ACと磁界との相互作用によって生じるローレンツ力と駆動手段によって生じる振動力とは、位相が合ったり、または合わなくなるように配置することが好ましいことに留意すべきである。かかる場合、振動部材の振動の振幅は、印加された磁界の存在下で、磁界の向きに応じて増減する。磁界の向きは振動振幅が増加するか減少するかによって容易に決定できることが認識できよう。
【0013】
磁力計は、振動部材の屈曲に応じて電気出力手段を発生するための検出手段を備えることが好ましい。
【0014】
駆動手段は検出手段が発生する電気信号を受けるための正のフィードバック回路を含むことが好ましい。従って、この駆動手段は正のフィードバックループを使用して振動部材を共振状態に駆動するようになっている。換言すれば、検出手段が発生した信号は、正のフィードバック回路により適性に処理(例えば必要に応じて増幅および/または位相シフト)され、更に振動力を(例えば静電的に)発生するよう、駆動手段によって使用される。これにより、駆動手段は振動部材の共振周波数で共振部材に振動力を連続的に加えることができる。換言すれば、振動部材は駆動手段により自己共振駆動できる。デバイスに固有の機械的ノイズおよび駆動回路に固有の電気ノイズは、デバイスの始動時に共振を開始させるのに十分であることが判っている。
【0015】
駆動手段は、振幅が固定された振動力を発生することが好ましい。換言すれば、駆動手段はいわゆる一定駆動モードで作動し、振動部材に対し(例えば静電駆動電極に対し一定振幅のAC駆動電圧を加えることにより)一定の振動力を与える。磁界がない場合、従ってローレンツ力がない場合、振動部材は一定の振幅で振動する。しかしながら、磁界と振動部材を通過するACとの相互作用により、振動ローレンツ力が発生するが、このローレンツ力は磁界強度に直接関連する値だけ振動部材の振動の振幅を変える。
【0016】
これとは異なり、駆動手段は調節可能な振幅の振動力を振動部材に与えるようになっており、この場合、振動力の振幅は振動部材の振動の所定の振幅を維持するように使用中に調節される。換言すれば、駆動手段は磁力計がいわゆる一定振幅モードで作動し、振動部材が固定された一定の振幅で共振することを保証するように、駆動手段によって与えられる振動力が十分となるように駆動手段を配置できる。磁界を印加する結果、駆動手段はこの駆動手段が加える振動力の振幅を変え、振動部材の共振の振幅を固定された値に維持する。この場合、駆動手段によって加えられる振動力の振幅は磁界強度の尺度となる。
【0017】
振動部材にACを通過させるための手段は、検出手段が発生する電気出力信号を受信するようになっているフィードバック回路を含むことが好ましい。従って、振動部材を通過させられるAC電流を発生するための(適当な増幅手段などを含むことができる)フィードバックループが設けられる。AC電流は振動部材の振動から直接誘導されるので、この電流の周波数は共振周波数に常に等しくなる。従って、AC電流を発生するために別個の発振電流源を設ける必要はなく、AC周波数が振動部材の共振周波数をトラッキングすることを保証するために従来の磁力計で使用される位相ロックループ装置は不要となる。従って、この結果得られる磁力計は従来デバイスよりも簡単となり、製造が安価となる。
【0018】
駆動手段を制御し、振動部材を通過するACを発生させるためにフィードバックループを設けることによって、第1の力の位相と第2の力の位相とを互いに適当に定めることができる。これによって更に磁界測定の精度が高まる。
【0019】
検出手段は基板上に位置し、振動部材との間で可変容量を有する少なくとも1つのセンサ電極を含むことが好ましい。換言すれば、この検出手段は容量性検出により振動部材の移動を測定する。
【0020】
検出手段は基板上に位置する複数の細長いセンサ電極を含むことが好ましく、振動部材は前記複数の細長いセンサ電極と互い違いになっている複数の細長い電極を含むことができる。
【0021】
振動部材の電極は、所定の直流(DC)の分極電圧に維持できることが好ましい。このような場合、振動部材の電極と基板との間の容量を直接測定できる。
【0022】
これとは異なり、振動部材の電極に高周波のAC分極電圧(すなわちいわゆるプローブ信号)を加えることが好ましい。高周波のプローブ信号を使用することにより、増幅電子回路の1/fノイズが容量ピックオフの質に大きな影響を及ぼさないことを保証できる。この周波数は振動構造体の機械的応答よりもかなり高い。この高周波プローブ信号は、50kHzから数十MHzまでのレンジ内にあることが好ましく、100kHzよりも高いことがより好ましく、約1MHzであることがより好ましい。従って、高周波の容量ピックアップを実現することによって、検出手段が発生する出力電気信号の信号対ノイズが改善される。
【0023】
2つの電極の組を形成するように複数のセンサ電極を電気的に接続し、これら2つの電極の組で差分容量性ピックオフを行うようにすることが好ましい。より詳細に後述するように、各電極の組によって生じる運動によって誘導された容量信号はこれら信号の位相がずれるようにすることができる。しかしながら、各電極の組によって生じる信号内の駆動回路からのフィードスルーは常に合相状態となる。従って、(信号の差を決定するように)信号を減算するとノイズ効果が減少し、運動で誘導されたよりクリアな信号が得られる。このような差分容量ピックオフにより、直接ピックオフを使った場合に得られるレベルよりもかなりノイズレベルが低くなった出力電気信号が得られる。
【0024】
振動部材にACを通過させるための手段は、前記ACの振幅を変えるための手段を含むことが好ましい。振動部材に加えられるACの振幅を制御することにより、磁力計の感度を調節することが可能となる。所定の磁界強度に対し、印加されるACを大きくすると、ローレンツ振動力の振幅も大きくなり、振動部材の振幅に対する磁界誘導効果も大きくなる。磁界によって誘導される影響を生じることなく、振動部材の共振特性を評価できるように、印加されるACの振幅をゼロまで低減することも可能である。これによって較正目的のためにQを測定することが可能となる。
【0025】
駆動手段は振動部材に振動力を静電的に与えるために基板上に形成された少なくとも1つの駆動電極を含むことが好ましい。これとは異なり、駆動手段は基板に形成された複数の細長い第1駆動電極を含み、振動部材が複数の細長い第2駆動電極を含むことが好ましい。この場合、細長い第1駆動電極と細長い第2駆動電極とは互い違いになっている。換言すれば、かかる櫛歯状駆動部材を設けたことにより、振動部材の変位に対する印加される静電力の依存性が減少し、よって振動部材の運動の歪みが小さくなる。
【0026】
静電力に基づく駆動手段が好ましいが、この駆動手段の他に、またはこの駆動手段とは別に、熱またはピエゾ電気駆動手段を使用することもできる。振動部材は共振ビームを備えることが好ましい。
【0027】
振動部材は基板に係止された少なくとも2つの可撓性脚部部分を含むことが好ましく、この場合、前記可撓性脚部部分のうちの少なくとも1つに前記ACが通過させられる。振動部材が振動すると、可撓性脚部部分は屈曲するようになっていることが好ましい。更にこの振動部材は、実質的に剛性なクロスビームを含むことが好ましく、このクロスビームは前記少なくとも2つの脚部部分に対し、実質的に垂直に配置され、かつこれら脚部部分を相互に接続する。このクロスビームはビームから垂直に突出する複数の細長い電極を含むことが好ましい。これら細長い電極は静電駆動手段の一部として、または容量性ピックオフとなるように使用できる。
【0028】
前記クロスビームが所望する分極電圧を受信するように、振動部材にAC電流(AC)を通過させるための手段は、前記脚部部分に差分AC電圧を供給するようになっていることが好ましい。換言すれば、脚部部分の一旦には分極電圧(V)+ΔVが印加され、脚部部分の他端には分極電圧(V)−ΔVが印加される。クロスビームが脚部部分に沿った中間に位置していると仮定した場合、クロスビームは分極電圧Vに保持される。更に脚部部分の両端の間の電位差は2ΔVとなる。振動部材の脚部部分を必要なAC電流が流れ、クロスビームが所望する分極電圧に保持されるように交流のΔVを印加できる。
【0029】
振動部材は基板の平面に平行な平面内の軸線に沿って振動するようになっていることが好ましい。
【0030】
多くの理由から、本発明のMEMS磁力計のサスペンドされた振動部材内では、応力が生じ得ることに留意すべきである。例えば2つのアンカーポイントにおいて基板に係止されている振動部材は、振動部材の膨張/収縮と異なる基板の熱膨張/収縮(すなわち熱膨張率の不一致)に起因して、アンカーポイントを介し、圧縮または引っ張り応力を受け得る。このことは、特に使用前に基板がパッケージ内に実装されている場合、または磁力計内に温度勾配がある場合に顕著である。従って、磁力計の振動部材は少なくとも1つの応力軽減手段、例えば弾性的に変形可能な応力軽減構造体を含み、MEMS磁力計デバイスのサスペンドされた部分内の応力を減少することが好ましい。かかる応力軽減構造体は振動部材が受ける引っ張り/圧縮力を吸収するためのスプリングとして働くようになっていることが好ましい。このように、振動部材は使用中および/または非作動時に歪んだり、屈曲することが防止される。
【0031】
更に、複数のアンカーポイントによって基板に固定された振動部材の共振周波数は、振動の振幅と非線形に変化し得ることが判っている。振動振幅を有する共振周波数はこのように変化するので、磁界強度(従って振動振幅)が変化するにつれ導電路に沿って通過するACの周波数を連続的に調節する必要がある。最適なQ増幅が維持されない場合に、これによって特に急激に変化する磁界に対してデバイスの感度を下げることができる。応力軽減構造体を有する振動部材を設けることにより、非線形効果を減少できる。その理由は、応力軽減構造体のスプリング状の性質によって振動振幅が変化する際の振動部材のわずかな膨張、収縮を可能にできる。
【0032】
応力軽減構造体は既に種々のMEMSデバイスに対して既知となっているが、かかる構造体は一般にフォールドバックタイプの構造を備える。共振磁気データ内にかかるフォールドバック構造体を設けた結果、電流は導電路に沿って種々の方向に流れる。例えばフォールドバック構造体の折りたたみ部を通って電流は逆方向に流れる。磁界が存在する場合、順方向に流れる電流領域により誘導されたローレンツ力は、電流が逆方向に流れる領域から生じたローレンツ力と反作用する。したがって、フォールドバック応力軽減構造体を設けた結果、所定の磁界強度に対し、振動部材に与えられる剛性振動力が小さくなり、よって磁力計の全体の感度が低下する。この理由から、当業者であれば、共振磁力計の振動部材内に応力軽減構造体を設けたことによる不可避で、かつ受け入れ不可能な結果としてデバイスの感度が低下することを検討したはずであり、したがって磁力計デバイスに応力軽減構造体を使用することは考慮しなかったはずである。
【0033】
デバイス性能に対する応力軽減構造体の効果を最小にするために、本発明のデバイスの応力軽減構造体を通過する導電路は、導電路の他の部分に沿った電流の主要方向と反対の方向の電流成分を最小にすることが好ましい。換言すれば、電流を搬送するための導電路を備えた振動部材と、少なくとも1つの弾性変形可能な応力軽減構造体とを有し、前記少なくとも1つの弾性変形可能な応力軽減構造体が前記導電度の一部を形成する導電性部分を有し、前記導電部分は導電路の残りの部分に沿った電流の主要方向と反対の方向の電流成分を最小にするようになっている、MEMS共振磁力計が提供される。
【0034】
「電流の主要方向」とは、振動部材を通過する電流の主な方向、例えば応力ストレス構造体を通過する導電路を無視した場合の電流の方向を意味するにすぎないことに留意すべきである。最も簡単な例では、応力軽減構造体との間に延びる振動部材の導電路は、第1軸線を構成する実質的に直線状の導電性トラックとなる。この場合、電流の主要方向は導電路の直線状部分に沿った(すなわち第1軸線に沿った)電流の方向となる。この場合、応力軽減構造体は導電路の他の部分に沿った電流と反対の方向の応力軽減構造体を通過する電流を最小にするようになっていることが好ましい。使用の際、磁界が存在する場合に必要な振動力を与えるように、導電路に沿って交流(AC)が通過され、したがって電流の主要方向は使用時に交互に変化することに留意すべきである。
【0035】
前記少なくとも1つの応力軽減構造体は導電性部分を備え、電流は前記電流の主要方向から90度未満または実質的に90度に等しい角度だけ異なる方向に、この導電性部分を通過して流れる。換言すれば、アンカーポイントとの間ではメイン電流方向と反対の方向の電流成分が実質的にないことが好ましい。
【0036】
ACが通過する振動部材の導電路は振動部材の振動軸線に実質的に垂直な軸線に沿っていることが好ましい。かかる構造では、印加される磁界は振動部材の振動軸線に沿った振動部材の運動を生じさせる力を与える。したがって、振動部材に与えられるローレンツ力は所定の磁界に対して最大となる。
【0037】
応力軽減構造体は、折りたたまれた構造体を備え、前記折りたたまれた構造体は電流の前記主要方向にほぼ垂直な方向に延びる複数の細長い弾性的に可撓性のアームを備えることが好ましい。かかる構造体を設けたことにより、電流の主要方向と反対の方向に電流がない応力軽減手段を通る電流路が得られる。かかる応力軽減構造体における電流の大部分は電流の主要方向にほぼ垂直な方向に存在し、かかる構造によって応力軽減構造体を通過する電流は振動部材に与えられる合成振動力に対する効果は無視できるものとなることが保証される。
【0038】
応力軽減構造体は弾性変形可能なループを含むことが好ましい。1つの応力軽減ループにより、応力軽減手段を通過する2つの電流路が得られ、このループは逆電流が流れるときに通過する折りたたみ部を含まない。実際に、電流の主要方向に沿ったループを通過する電流のかなりの成分が生じる。したがってこのタイプのループ応力軽減構造体は導電路の残りの部分を通過する電流に起因して与えられる振動力に加わる振動力を加える。
【0039】
振動部材は複数のアンカーポイントで基板に取り付けることが好ましい。アンカーポイントの21つまたはいくつかの近くに応力軽減部分を形成できるが、各アンカーポイントには1つの応力軽減構造体が関連していることが好ましい。このようにすることにより、構造がより対称的となり、ねじれた、または非対称の振動モードが励起される可能性が少なくなる。
【0040】
本発明の共振磁力計では、応力軽減手段を設けることが好ましいが、本明細書に記載した応力軽減手段を任意の共振磁力計装置に有利に使用することも可能であることに留意すべきである。従って、振動部材を備えたマイクロ電気機械システム(MEMS)共振磁力計を提供できる。この場合、前記振動部材は電流を搬送するための導電路を含み、振動部材は少なくともつの弾性変形可能な応力軽減構造体を備え、前記振動部材は少なくとも1つの応力軽減手段を通過する電流によって発生される振動力が導電路の他の部分を通過する電流によって発生される振動力から実質的に減算されないようになっている。
【0041】
磁力計はマイクロ電気機械システム(MEMS)として形成することが好ましい。本明細書におけるマイクロ電気機械システム(MEMS)なる用語は、当業者によりマイクロシステムテクノロジー(MST)、マイクロロボティックスおよびマイクロエンジニアリングデバイスなる用語で記述されるものを含む広範な範囲のマイクロ機械センサおよびアクチュエータを含むように使用する。
【0042】
前記基板および/または前記振動部材はシリコンを含むことが好ましく、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハまたはシリコンオングラス(SOG)ウェーハから形成することが好ましい。
【0043】
本発明の第2の様相によれば、本発明の第1の様相に係わる少なくとも1つの磁力計を含む慣性測定ユニット(IMU)が提供される。このIMUは3つの磁力計を備え、これら3つの磁力計の各々は互いに直交する軸線に沿った磁界を検出するようになっていることが好ましい。
【0044】
次に、添付図面を参照し、単なる例により本発明について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
まず、図1を参照する。ここにはウィッケンデン外によって記述されたタイプ簡単なバータイプの磁力計2が示されている。この磁力計は第1電極6および第2電極8によって支持された共振バー4を備える。第1電極6および第2電極8はバー4の振動の基本モードの節ポイントに位置している。
【0046】
バー4を通過する電流(I)が、磁界(B)と相互作用すると、平面外のローレンツ力(F)を発生する。使用に際し、第1電極6および第2電極8を介してバー4に交流ACが加えられる。このイオン化されるACの周波数は、共振バー4の共振周波数に一致しているので、平面内磁界(B)の存在下でデバイスは共振状態とされる。所定の印加電流に対し、共振の大きさは加えられた磁界の大きさを表示している。このローレンツ力効果は、すべての共振磁力計の作動原理となっている。
【0047】
図2を参照すると、ここにはイザム外によって記述されたタイプの従来の共振磁力計が示されている。このデバイスは、第1脚部11と、第2脚部12と、クロスビーム13とを有するサスペンドされた共振ビーム構造体10を含む。各脚部の各端部はアンカーポイント19において基板に固定されている。クロスビーム13は複数のフィンガー電極14を備え、これら電極14はクロスビーム部分13の各側面から垂直に突出得ると共に、基板の平面に平行となっている平面内にある。サスペンドされたクロスビーム部分13の両側において、基板内には容量性ピックアップフィンガー電極の第1の組15および第2の組16が形成されている。このデバイスはサスペンドされたクロスビーム部分13のフィンガー電極14が、基板に形成されたフィンガー電極の第1の組15および第2の組16と互い違いとなるように配置されている。
【0048】
サスペンドされた共振ビーム構造体10は、基板の平面内の1つの軸線にて(すなわち図2のy軸線に沿って)自由に移動できる。使用中、駆動回路17はサスペンドされた共振ビーム構造対10の共振周波数でAC電流を発生し、この電流を第1脚部11に沿って通過させる。基板の(x−y)平面に垂直な方向に加えられた磁界は、共振ビーム構造体10を共振させる(すなわちy軸線に沿って前後に振動させる)ローレンツ力を発生する。共振ビーム構造体10が変位すると、クロスビーム部分のうちのフィンガー電極の第1の組15およびフィンガー電極の第2の組16とフィンガー電極14に関連する容量が変わる。この容量の変化は容量性ピックアップ回路18によって測定され、これによって印加された磁界強度を決定できる。
【0049】
上記のように、図2に示された従来の構造には多数の欠点がある。例えば駆動回路17は数kHzにつき1Hzまで正確な周波数でAC電流を発生できる周波数発生器を含んでいなければならない。回路17によって加えられる駆動周波数が検出回路18によって測定される共振周波数を常に一致するようにするには、周波数トラッキング回路(図示せず)も必要であり、かかる回路はシステムに電気的なノイズを発生させる原因となり、磁界がビーム構造体を共振状態に駆動したときには、共振周波数の尺度を提供するにすぎない。更に検出電極15および16は共振質量体の発信周波数で電気出力を発生するので、駆動回路に起因するノイズを検出し、磁力計の測定精度を低下させる。更に、第1脚部11および第2脚部12の固定−固定構造によって、機械的応力が累積することがあり、これによって最良の場合でもデバイスの共振周波数が変わったり、最悪のケースでは構造体全体が屈曲する。
【0050】
図3(a)を参照すると、ここには本発明の自己共振磁力計20が示されている。この磁力計20はSOI基板から形成されたアクティブ領域22と、関連する制御回路24とを備える。
【0051】
アクティブ領域22は、第1脚部28、第2脚部30およびクロスビーム32を有するサスペンドされた共振ビーム構造体26(すなわちサスペンドされた質量体)を備える。このクロスビーム32は、かなりの量の質量体を追加することなく、高度の剛性を提供するためのボックス部分として形成されている。かかるボックス部分のクロスビームを設けることによって、ねじれた振動モードの励起が防止されている。
【0052】
第1脚部28の両端は第1アンカーポイント34および第2アンカーポイント35のそれぞれにおいて基板に物理的に取り付けられている。同様に、第2脚部30の両端は、第3アンカーポイント36および第4アンカーポイント37のそれぞれにおいて基板に物理的に取り付けられている。第1脚部および第2脚部の各端部には物理的な応力を低減するための応力軽減ループ38が設けられている。次に、図4を参照し、応力軽減ループの構造および作動についてより詳細に説明する。
【0053】
サスペンドされた共振ビーム構造体26のクロスビーム部分32は、複数のフィンガー電極40を支持しており、これらフィンガー電極はクロスビーム部分32の各側面から垂直に突出すると共に、基板の平面内にある。サスペンドされたクロスビーム部分32の両側にて、基板内には容量性検出フィンガー電極の第1の組42および第2の組44が形成されている。このデバイスはサスペンドされたクロスビーム部分32のフィンガー電極40がフィンガー電極の第1の組42および第2の組44と互い違いとなるように配置されている。後述するように、このような電極構造によってサスペンドされた共振ビーム構造体26の移動を容量により検出できるようになっている。基板内には一対の駆動電極46も形成されており、これら電極はクロスビーム部分32によって支持されたフィンガー電極47の端部の対の近くに位置している。
【0054】
使用に際し、デバイスはいわゆる自己共振モードで作動される。サスペンドされた共振ビーム構造体26は駆動電極46の対に駆動電圧を印加する静電駆動回路48によって共振するように、静電力によって駆動される。共振ビーム構造体の移動は、フィンガー電極の第1の組42および第2の組44を使用する差動容量の検出によって検出される。この容量検出信号は差動アンプ50へ送られ、90度の位相シフト回路52(または微分回路)を介して静電駆動回路48へ送られる。このように、共振ビーム構造体26を静電的に駆動するのに使用される容量検出によって発生される信号により、正の電子フィードバックループ構造が実現される。
【0055】
差動アンプ50によって発生される出力信号も、クリッパー電流駆動回路56を介し、差動駆動回路58へ送られる。分極電源60も設けられており、第1アンカーポイント34を介して第1脚部28に分極電圧(V)+ΔVを印加し、第2アンカーポイント35を介して第1脚部28の他端部に分極電圧(V)−ΔVを印加するように差動駆動回路が構成されている。分極電圧(V)は第3アンカーポイント37および第4アンカーポイント38において第2脚部30の両端に印加される。
【0056】
電圧源回路であるこの差動駆動装置により、クロスビーム32を所望する分極電圧(すなわち分極電圧源60が供給する電圧)に維持しながら、サスペンションの第1脚部をAC電流が流れることができるようになっている。クロスビームを固定された電圧に維持することにより、低ノイズの容量性検出を行うことが可能となっている。サスペンションの抵抗変化に起因する電流の流れの不確実性を潜在的に導入するΔVのレベルを固定したり、またはこの電流をモニタし、電流の大きさを一定に維持するようにΔVを変えることができる。
【0057】
従来技術の磁力計デバイスと異なり、別個の周波数発生電源を使って磁力計20内で使用されるAC電流を発生しないが、この電流はサスペンドされた共振ビーム構造体26の振動から直接誘導されていることについて再び強調すべきである。このフィードバック構造はノイズレベルを低減すると共に、Q増幅が常に最大となることを保証する。
【0058】
共振ビーム構造の振動の大きさは、静電駆動力とローレンツ力との合計に応じて決まることは明らかである。図3に示されている構造では静電駆動の大きさは一定に維持される。すなわち磁力計は、一定の駆動モードで作動される。整流/フィルタ回路53を通過した後の差動アンプ50の出力は、信号ライン54に出力信号を発生するが、この出力信号は運動の大きさに関連しており、従って加えられた磁界の強度を表示している。
【0059】
一定駆動モードでは、測定すべき最大の磁界が加えられたときにもデバイスが共振状態を維持するように、静電駆動レベルを十分大きく選択しなければならない。換言すれば、印加される磁界および静電駆動機構によって誘導される合成力は、サスペンドされた共振ビームを端部のストッパーに衝突させることなく、共振状態を維持するよう常に十分大きくなっていなければならない。印加される磁界が共振状態を停止させるかまたはビームを端部のストッパーに衝突させた場合でも、デバイスは通常、故障せず、磁界強度またはAC電流を低減したときに(再較正を必要とすることなく)再び正常に作動する。
【0060】
磁力計は一定駆動モードで作動する代わりに、振動振幅を一定に維持するために静電駆動信号の振幅を変えるための制御ループを含むことができる。すなわち磁力計は一定振幅モードで作動する。
【0061】
印加される駆動電圧の振幅はデバイスに加えられる磁界強度を表示する。
【0062】
上記容量ピックオフ装置は、いわゆる変位電流検出器である。かかる構造では、分極電流は適当なDCレベルに固定され、増幅電子回路(すなわち差動アンプ50など)はデバイスの共振周波数で作動する。集積ユニットまたはアプリケーション特定集積回路(ASIC)で一般に使用されるCMOSのピックオフ増幅器に対し、この作動周波数は増幅器の1/fノイズ内にあり、従って、デバイスの信号対ノイズ比は低減される。
【0063】
これらI/fノイズ効果を低減するために、高周波(例えば1MHz)のプローブ信号を使って容量を検出できる。これに関連し、「高周波」とはアンプのI/fノイズ領域よりも上にあり、更に振動構造体の機械的応答よりも上にある周波数を意味する。分極電圧源60によって発生される分極電圧は、高周波プローブ信号となり、適当な利得後の容量ピックオフの出力は復調およびフィルタリングを必要とする。かかるシステムのためのフィードバックループは、90度の位相シフト回路52の代わりに180度の位相シフト手段(図示せず)を有する上記ベースバンド実施例として完成される。
【0064】
磁力計をコンパスとして作動させるために必要なQを得るために、磁力計を低圧環境内にパッケージできる。このQは圧力におおいに依存し、圧力は感度およびバンド幅に影響する。このデバイスの別の利点は、較正目的のためにQを直接測定するのにもデバイスを使用できることである。ビーム構造体26を通過したAC電流がオフにされると、駆動電極46を介し、静電駆動回路48によって加えられる静電力のみが、サスペンドされた共振ビーム構造体26を共振状態に駆動するように働く。かかる場合、振動運動の大きさ(または低振幅モードで作動する場合に加えられる駆動力)は、Qに関連する。
【0065】
1つはQを測定するために、他方は磁気センサとして使用するように、2つの効果的なデバイスを同時に使用し、双方の測定値を同時に利用できるようにすることも有利である。デバイスのまわりのウェーハ上に平面状コイルを設けることによって較正を行うこともできる。この平面状コイルを通過するように送られる既知の電流はデバイスに既知の磁界を発生する。
【0066】
上記のように、図3(a)に示されたデバイスのサスペンドされた共振ビーム構造体26は、基板内に形成された一対の駆動電極46およびクロスビーム部分32によって支持された対応するペアのフィンガー電極47を使用して静電的に駆動される。図3(b)は、静電櫛歯駆動構造を使用した別の実施例を示す。図3(b)の構造では、複数のフィンガー電極を備えた電極構造体147をクロスビーム32が支持する。基板には対応する駆動電極146が形成され、基板の細長い駆動電極146は電極構造体147のフィンガー電極と互い違いとなっているので、これらは静電櫛歯駆動体を構成している。この櫛歯駆動構造体は加えられる静電力の変位依存性を低減し、更にサスペンドされたビーム構造体26の移動の歪みも低減する。当業者であれば、本発明のデバイスで使用できる種々の別の駆動装置についても想到できよう。
【0067】
図4を参照すると、ここには本発明の磁力計に設けるのに適当な別の容量性ピックアップ構造体が多数示されている。図4(b)は、図3(a)のデバイスで使用される構造を示しているが、図4(a)および4(c)は別の構造を示している。
【0068】
図4(a)はイザム外が記述したタイプの、いわゆる単一目的のピックアップ構造体を示している。サスペンドされたクロスビーム80は、基板のフィンガー電極の2つの組84および86と互い違いになっている多数のフィンガー電極82を備える。クロスビーム80がy方向に移動すると、構造体の容量が変化し、クロスビームの変位量を表示する。この構造体の欠点は駆動回路のフィードスルーに起因するビームの移動および周辺電気回路の電気的な影響に起因し、電気信号を分離することが困難なことである。
【0069】
(上記図3を参照して説明した構造に類似する)図4(b)に示された差動ピックアップ構造体により、低いレベルの関連ノイズでも測定を行うことが可能となっている。互いに横方向にずれているフィンガー電極の2つの組42と44との間にはクロスビーム32が位置する。クロスビーム32が移動する結果、一組のフィンガー電極、すなわち電極42から運動によって誘導される信号が発生されるが、この信号は他方の組の電極44から発生された運動で誘導された信号と位相がずれている。これと対照的に、電極42および44の各々によって生じた信号に関連するノイズは明らかに位相が合っている。従って、電極42および44によって生じた信号を減算すると、不要なバックグラウンドノイズの大部分が除かれるが、クロスビームの誘導によって誘導された信号が加えられる。この理由から、差動ピックアップ構造体が好ましい。
【0070】
図4(c)は、基板に形成された2組のフィンガー電極92と94の各々が、2つに分割された別の差動ピックアップ構造体を示す。これによって両側が対照的となっており、よってピックアップ回路が発生する静電力をバランスさせ、ねじり運動を与えることを防止する電極構造体が得られている。
【0071】
図3を参照して説明したように、本発明の磁力計は応力軽減ループを内蔵するサスペンション(すなわちサスペンドされた共振ビーム構造体26)を含む。次に図5を参照すると、ここには共振磁力計で使用するのに適した2つの機械式応力軽減構造体が示されている。
【0072】
図5(a)は、中心質量体102を支持し、アンカーポイント104において基板に係止されている共振ビーム100を示す。サスペンションの各端部には応力軽減ループ106が設けられている。図5(a)に示された応力軽減ループは、印加磁界によって誘導される力に影響せず、応力を軽減すると共に、サスペンションをより線形な形態で作動できるようにするという2つの利点を有する。
【0073】
図5(b)に示されるように、ループの代わりに共振ビーム100の各端部に折りたたみ部108を形成できる。これら折りたたみ部108は電流が各方向に流れる距離が等しくなるように配置されている。これによって、折りたたみ部108に沿って流れる電流と、印加磁界の相互作用に起因して生じるローレンツ力がバランスすることが保証される。
【0074】
加速度計のような他のMEMSデバイスでは、これまで種々の応力軽減構造体が使用されてきた。例えば図5(c)は、2つのアンカーポイント112にて基板に取り付けられている加速度計のための従来の折りたたみバックビーム110を示す。当業者であれば、ローレンツ力は逆方向(すなわち折りたたみ部の上下)に流れる電流に起因してキャンセルするので、磁力計においてかかる折りたたみサスペンションを使用しなかった。
【0075】
従って、図5(a)および5(b)に示されたタイプの応力軽減手段を形成することによって、磁力計デバイス全体および特にイザム外のデバイスに関連する多数の問題が解決された。まず第1に、基板内の応力はビームを屈曲させ、デバイスを故障させ得る。この応力はパッケージとデバイスとの熱のミスマッチによって生じることがあり、更にSOIの製造からの残留応力によっても生じ得る。この応力軽減手段はこのような屈曲が生じるのを防止する。第2に、固定−固定ビームの剛性は振幅と線形ではないので、振動の振幅と共に共振周波数が変化する。応力軽減ループまたは折りたたみ部を設けることによって、このような非線形性が小さくなっている。
【0076】
図6を参照すると、ここには本発明にかかわるデバイスの製造方法が示されている。
【0077】
図6(a)は機械シリコン層120と、犠牲酸化膜122と、ハンドルウェーハ124とを含むSOI基板を示す。図6(b)に示されるように、シリコン層120上には酸化膜124がデポジットされており、この酸化膜はマスクを構成するようにエッチングされている。図6(c)を参照すると、ここにはマスク酸化膜126を通って犠牲酸化膜122までにどのように機械式シリコン層120をエッチングしたかが示されている。次に、金属膜128によりブランケットをコーティングし、図6(e)に示されるような低オーミック導線を形成する前に、図6(d)で示されるように犠牲酸化膜の一部を除去することにより、機械式シリコン層120内に形成されたサスペンドされた構造体を解放する。
【0078】
図7は、SOIウェーハに形成された本発明の磁力計の顕微鏡写真を示す。磁力計の応力軽減構造体は参照番号130によって表示されている。
【0079】
上記概略を述べた金属被覆されたSOIプロセスを適宜使用できるが、このデバイスはLIGAに類似するプロセスを使って電気形成された金属からも製造できる。実際に当業者であれば本発明の磁力計を製造するのに利用できる多数の技術について想到できよう。
【0080】
最後に、磁力計は慣性測定ユニット(IMU)内で測定するための別の慣性センサとパラレルに製造できると理解すべきである。従って、単一チップは加速度計、磁力計およびジャイロスコープまたはこれら3つの組み合わせを含むことができる。かかる3つのチップはコンパクトなシリコンの自由度が6度のIMUで使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】従来のMEMS磁力計の作動の基本原理を示す。
【図2】平面内で振動する従来のMEMS磁力計の作動を示す。
【図3(a)】本発明のMEMS磁力計を示す。
【図3(b)】本発明のMEMS磁力計を示す。
【図4(a)】図3に示されたタイプのMEMS磁力計で使用できる多数の電極構造を示す。
【図4(b)】図3に示されたタイプのMEMS磁力計で使用できる多数の電極構造を示す。
【図4(c)】図3に示されたタイプのMEMS磁力計で使用できる多数の電極構造を示す。
【図5(a)】磁力計の性能を改善するための折りたたまれたビームの使用を示す。
【図5(b)】磁力計の性能を改善するための折りたたまれたビームの使用を示す。
【図5(c)】従来のバック折りたたみビームを示す。
【図6(a)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(b)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(c)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(d)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(e)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図7】本発明の磁力計のマイクロ写真を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は磁力計に関し、より詳細にはマイクロ電気機械システム(MEMS)自己共振磁力計に関する。
【背景技術】
【0002】
共振磁力計は周知であり、MEMSに基づく最も初期の共振磁力計の1つはD.K.ウィッケンデン外による論文「MEMSに基づく共振シロフォンバー磁力計」、SPIE会議議事録−マイクロ機械加工されたデバイスおよびコンポーネントIV、SPIE、第3514巻、350〜358ページ(1998年)に記載されている。このウィッケンデン外によるデバイスは、表面がマイクロ機械加工されたバーを備え、このバーは第1共振モードの節において一対の電極に固定されている。使用に際し、バーの共振周波数の交流電流(AC)がバーに流されるようになっている。磁界の存在下において、ローレンツ力によってバーは共振状態となり、かかる運動の大きさは容量により検出された印加磁界の強度を表示する。
【0003】
基本的なMEMS共振磁力計構造の変形例は、最近では、ザッキ・イズマン、ミカエル・C.L.ワード、ケビン・M・ブルンソンおよびポール・C・スティーブンによる論文「共振磁力計の開発」、2003年、ナノテクノロジー会議およびトレードショーの議事録、2月23〜27日、サンフランシスコ、第1巻、340〜343ページ、ISBN 0−9728422−0−9に記載されている。このイズマン外の共振磁力計はシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハから形成されており、2つの組の固定ー固定されたサスペンションを有する振動質量体を備え、サスペンションによって質量体はウェーハの平面にある軸線に沿って移動できるようになっている。サスペンションに沿って、ほぼ振動質量体の共振周波数の周波数を有するAC電流が流され、よって磁界の存在下で質量体は共振状態とされる。質量体には1組の電極が取り付けられており、磁界によって誘導された運動の大きさを容量により測定可能となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振磁力計におけるQ増幅率を最大にするために、振動質量体に供給されるAC電流の周波数が質量体の共振周波数に一致させるか、またはそれに十分接近させるように保証しなければならない。ビーム構造体の共振周波数を理論的に予測できるし、および/または測定できるが、共振ビームサスペンションで生じる温度変化、応力によって誘導される効果および/または非線形性からバラツキが生じ得る。共振条件から離れた周波数のAC電流を印加した場合、ローレンツ力のQ増幅がなくなることに起因し、デバイスの感度は大幅に低下する。
【0005】
共振ビームが共振状態になるように駆動されることを保証するために、ビームの共振周波数を検出するのに使用される検出回路の出力に応答し、周波数発生器の出力周波数を調節することが知られている。共振ビームの発振周波数の変化を印加されたACの周波数がトラッキングするのを保証するのに、位相ロックループが使用される。しかしながら、これら位相ロックループ回路は常に最適な周波数を探さなければならないので、望ましくない位相ノイズを生じさせ得る。
【0006】
高感度用途、例えばコンパスなどでは、共振磁力計は約500〜5000の間にある機械的なQ値(Q)および約500Hz〜30kHzの範囲にある共振周波数を必要とする。この高Q値は、共振ビーム構造体にAC電流を供給するのに使用される周波数発生器の精度は数kHzにつき1Hzよりも良好となっていなければならないことを意味している。位相ロックループ回路を設ける外に、かかる高分解率の周波数発生器を設けることによって、デバイスを作動させるのに必要な制御電子回路のコストが高くなり、更に複雑となる。
【0007】
よって、本発明の目的は、上記欠点の少なくとも一部を少なくした共振磁力計デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の様相によれば、共振磁力計は、振動部材と、該振動部材に交流(AC)を通過させるための手段とを備え、前記振動部材に、磁界に応じた振動力を加えるための駆動手段が更に設けられていることを特徴とする。
【0009】
駆動手段により振動部材に対し(例えば静電的に)加えられる振動力は磁界強度から独立しており、使用中、振動部材が連続的に共振状態にされることを保証するのに十分な振幅を有することが好ましい。振動部材を通過するAC電流と前記磁界との相互作用に起因し、磁界を加えるとローレンツ振動力も生じる。上記のようにローレンツ振動力の大きさは所定の振幅のACに対し、振動部材に加える磁界の強度によって決まる。磁界がない場合、振動部材にはローレンツ振動力は与えられない(すなわちローレンツ振動力は振幅がゼロとなる)。
【0010】
従って、磁界から独立した(すなわちローレンツ)振動力と駆動手段によって加えられる磁界に依存した振動力との組み合わせにより振動部材が共振状態に駆動される共振磁力計が提供される。従って、本発明は従来技術のデバイスと異なり、磁界が印加されない場合でも共振状態に駆動される振動部材を有する磁力計を提供するものである。磁界を加えると振動部材の振動の振幅は検出可能な態様で変化する。
【0011】
駆動手段を設けることにより、振動部材を連続的に共振状態に駆動できるので、磁界印加時にしか共振状態に駆動されない従来デバイスと比べていくつかの利点が得られる。第1の利点は、振動部材の共振周波数を連続的に測定することが可能であることである。このことは、(例えば異なる温度、圧力などで)共振特性が顕著に変化する種々の異なる環境で磁力計を使用しなければならない場合、有利である。これまで共振周波数のかかる測定は十分強い磁界を加えたときにしかできなかった。第2の利点は、この磁力計は共振を開始させるのに十分な磁界を加えなければならない従来のデバイスよりも磁界強度検出スレッショルドが一般に低くなっていることである。
【0012】
ACと磁界との相互作用によって生じるローレンツ力と駆動手段によって生じる振動力とは、位相が合ったり、または合わなくなるように配置することが好ましいことに留意すべきである。かかる場合、振動部材の振動の振幅は、印加された磁界の存在下で、磁界の向きに応じて増減する。磁界の向きは振動振幅が増加するか減少するかによって容易に決定できることが認識できよう。
【0013】
磁力計は、振動部材の屈曲に応じて電気出力手段を発生するための検出手段を備えることが好ましい。
【0014】
駆動手段は検出手段が発生する電気信号を受けるための正のフィードバック回路を含むことが好ましい。従って、この駆動手段は正のフィードバックループを使用して振動部材を共振状態に駆動するようになっている。換言すれば、検出手段が発生した信号は、正のフィードバック回路により適性に処理(例えば必要に応じて増幅および/または位相シフト)され、更に振動力を(例えば静電的に)発生するよう、駆動手段によって使用される。これにより、駆動手段は振動部材の共振周波数で共振部材に振動力を連続的に加えることができる。換言すれば、振動部材は駆動手段により自己共振駆動できる。デバイスに固有の機械的ノイズおよび駆動回路に固有の電気ノイズは、デバイスの始動時に共振を開始させるのに十分であることが判っている。
【0015】
駆動手段は、振幅が固定された振動力を発生することが好ましい。換言すれば、駆動手段はいわゆる一定駆動モードで作動し、振動部材に対し(例えば静電駆動電極に対し一定振幅のAC駆動電圧を加えることにより)一定の振動力を与える。磁界がない場合、従ってローレンツ力がない場合、振動部材は一定の振幅で振動する。しかしながら、磁界と振動部材を通過するACとの相互作用により、振動ローレンツ力が発生するが、このローレンツ力は磁界強度に直接関連する値だけ振動部材の振動の振幅を変える。
【0016】
これとは異なり、駆動手段は調節可能な振幅の振動力を振動部材に与えるようになっており、この場合、振動力の振幅は振動部材の振動の所定の振幅を維持するように使用中に調節される。換言すれば、駆動手段は磁力計がいわゆる一定振幅モードで作動し、振動部材が固定された一定の振幅で共振することを保証するように、駆動手段によって与えられる振動力が十分となるように駆動手段を配置できる。磁界を印加する結果、駆動手段はこの駆動手段が加える振動力の振幅を変え、振動部材の共振の振幅を固定された値に維持する。この場合、駆動手段によって加えられる振動力の振幅は磁界強度の尺度となる。
【0017】
振動部材にACを通過させるための手段は、検出手段が発生する電気出力信号を受信するようになっているフィードバック回路を含むことが好ましい。従って、振動部材を通過させられるAC電流を発生するための(適当な増幅手段などを含むことができる)フィードバックループが設けられる。AC電流は振動部材の振動から直接誘導されるので、この電流の周波数は共振周波数に常に等しくなる。従って、AC電流を発生するために別個の発振電流源を設ける必要はなく、AC周波数が振動部材の共振周波数をトラッキングすることを保証するために従来の磁力計で使用される位相ロックループ装置は不要となる。従って、この結果得られる磁力計は従来デバイスよりも簡単となり、製造が安価となる。
【0018】
駆動手段を制御し、振動部材を通過するACを発生させるためにフィードバックループを設けることによって、第1の力の位相と第2の力の位相とを互いに適当に定めることができる。これによって更に磁界測定の精度が高まる。
【0019】
検出手段は基板上に位置し、振動部材との間で可変容量を有する少なくとも1つのセンサ電極を含むことが好ましい。換言すれば、この検出手段は容量性検出により振動部材の移動を測定する。
【0020】
検出手段は基板上に位置する複数の細長いセンサ電極を含むことが好ましく、振動部材は前記複数の細長いセンサ電極と互い違いになっている複数の細長い電極を含むことができる。
【0021】
振動部材の電極は、所定の直流(DC)の分極電圧に維持できることが好ましい。このような場合、振動部材の電極と基板との間の容量を直接測定できる。
【0022】
これとは異なり、振動部材の電極に高周波のAC分極電圧(すなわちいわゆるプローブ信号)を加えることが好ましい。高周波のプローブ信号を使用することにより、増幅電子回路の1/fノイズが容量ピックオフの質に大きな影響を及ぼさないことを保証できる。この周波数は振動構造体の機械的応答よりもかなり高い。この高周波プローブ信号は、50kHzから数十MHzまでのレンジ内にあることが好ましく、100kHzよりも高いことがより好ましく、約1MHzであることがより好ましい。従って、高周波の容量ピックアップを実現することによって、検出手段が発生する出力電気信号の信号対ノイズが改善される。
【0023】
2つの電極の組を形成するように複数のセンサ電極を電気的に接続し、これら2つの電極の組で差分容量性ピックオフを行うようにすることが好ましい。より詳細に後述するように、各電極の組によって生じる運動によって誘導された容量信号はこれら信号の位相がずれるようにすることができる。しかしながら、各電極の組によって生じる信号内の駆動回路からのフィードスルーは常に合相状態となる。従って、(信号の差を決定するように)信号を減算するとノイズ効果が減少し、運動で誘導されたよりクリアな信号が得られる。このような差分容量ピックオフにより、直接ピックオフを使った場合に得られるレベルよりもかなりノイズレベルが低くなった出力電気信号が得られる。
【0024】
振動部材にACを通過させるための手段は、前記ACの振幅を変えるための手段を含むことが好ましい。振動部材に加えられるACの振幅を制御することにより、磁力計の感度を調節することが可能となる。所定の磁界強度に対し、印加されるACを大きくすると、ローレンツ振動力の振幅も大きくなり、振動部材の振幅に対する磁界誘導効果も大きくなる。磁界によって誘導される影響を生じることなく、振動部材の共振特性を評価できるように、印加されるACの振幅をゼロまで低減することも可能である。これによって較正目的のためにQを測定することが可能となる。
【0025】
駆動手段は振動部材に振動力を静電的に与えるために基板上に形成された少なくとも1つの駆動電極を含むことが好ましい。これとは異なり、駆動手段は基板に形成された複数の細長い第1駆動電極を含み、振動部材が複数の細長い第2駆動電極を含むことが好ましい。この場合、細長い第1駆動電極と細長い第2駆動電極とは互い違いになっている。換言すれば、かかる櫛歯状駆動部材を設けたことにより、振動部材の変位に対する印加される静電力の依存性が減少し、よって振動部材の運動の歪みが小さくなる。
【0026】
静電力に基づく駆動手段が好ましいが、この駆動手段の他に、またはこの駆動手段とは別に、熱またはピエゾ電気駆動手段を使用することもできる。振動部材は共振ビームを備えることが好ましい。
【0027】
振動部材は基板に係止された少なくとも2つの可撓性脚部部分を含むことが好ましく、この場合、前記可撓性脚部部分のうちの少なくとも1つに前記ACが通過させられる。振動部材が振動すると、可撓性脚部部分は屈曲するようになっていることが好ましい。更にこの振動部材は、実質的に剛性なクロスビームを含むことが好ましく、このクロスビームは前記少なくとも2つの脚部部分に対し、実質的に垂直に配置され、かつこれら脚部部分を相互に接続する。このクロスビームはビームから垂直に突出する複数の細長い電極を含むことが好ましい。これら細長い電極は静電駆動手段の一部として、または容量性ピックオフとなるように使用できる。
【0028】
前記クロスビームが所望する分極電圧を受信するように、振動部材にAC電流(AC)を通過させるための手段は、前記脚部部分に差分AC電圧を供給するようになっていることが好ましい。換言すれば、脚部部分の一旦には分極電圧(V)+ΔVが印加され、脚部部分の他端には分極電圧(V)−ΔVが印加される。クロスビームが脚部部分に沿った中間に位置していると仮定した場合、クロスビームは分極電圧Vに保持される。更に脚部部分の両端の間の電位差は2ΔVとなる。振動部材の脚部部分を必要なAC電流が流れ、クロスビームが所望する分極電圧に保持されるように交流のΔVを印加できる。
【0029】
振動部材は基板の平面に平行な平面内の軸線に沿って振動するようになっていることが好ましい。
【0030】
多くの理由から、本発明のMEMS磁力計のサスペンドされた振動部材内では、応力が生じ得ることに留意すべきである。例えば2つのアンカーポイントにおいて基板に係止されている振動部材は、振動部材の膨張/収縮と異なる基板の熱膨張/収縮(すなわち熱膨張率の不一致)に起因して、アンカーポイントを介し、圧縮または引っ張り応力を受け得る。このことは、特に使用前に基板がパッケージ内に実装されている場合、または磁力計内に温度勾配がある場合に顕著である。従って、磁力計の振動部材は少なくとも1つの応力軽減手段、例えば弾性的に変形可能な応力軽減構造体を含み、MEMS磁力計デバイスのサスペンドされた部分内の応力を減少することが好ましい。かかる応力軽減構造体は振動部材が受ける引っ張り/圧縮力を吸収するためのスプリングとして働くようになっていることが好ましい。このように、振動部材は使用中および/または非作動時に歪んだり、屈曲することが防止される。
【0031】
更に、複数のアンカーポイントによって基板に固定された振動部材の共振周波数は、振動の振幅と非線形に変化し得ることが判っている。振動振幅を有する共振周波数はこのように変化するので、磁界強度(従って振動振幅)が変化するにつれ導電路に沿って通過するACの周波数を連続的に調節する必要がある。最適なQ増幅が維持されない場合に、これによって特に急激に変化する磁界に対してデバイスの感度を下げることができる。応力軽減構造体を有する振動部材を設けることにより、非線形効果を減少できる。その理由は、応力軽減構造体のスプリング状の性質によって振動振幅が変化する際の振動部材のわずかな膨張、収縮を可能にできる。
【0032】
応力軽減構造体は既に種々のMEMSデバイスに対して既知となっているが、かかる構造体は一般にフォールドバックタイプの構造を備える。共振磁気データ内にかかるフォールドバック構造体を設けた結果、電流は導電路に沿って種々の方向に流れる。例えばフォールドバック構造体の折りたたみ部を通って電流は逆方向に流れる。磁界が存在する場合、順方向に流れる電流領域により誘導されたローレンツ力は、電流が逆方向に流れる領域から生じたローレンツ力と反作用する。したがって、フォールドバック応力軽減構造体を設けた結果、所定の磁界強度に対し、振動部材に与えられる剛性振動力が小さくなり、よって磁力計の全体の感度が低下する。この理由から、当業者であれば、共振磁力計の振動部材内に応力軽減構造体を設けたことによる不可避で、かつ受け入れ不可能な結果としてデバイスの感度が低下することを検討したはずであり、したがって磁力計デバイスに応力軽減構造体を使用することは考慮しなかったはずである。
【0033】
デバイス性能に対する応力軽減構造体の効果を最小にするために、本発明のデバイスの応力軽減構造体を通過する導電路は、導電路の他の部分に沿った電流の主要方向と反対の方向の電流成分を最小にすることが好ましい。換言すれば、電流を搬送するための導電路を備えた振動部材と、少なくとも1つの弾性変形可能な応力軽減構造体とを有し、前記少なくとも1つの弾性変形可能な応力軽減構造体が前記導電度の一部を形成する導電性部分を有し、前記導電部分は導電路の残りの部分に沿った電流の主要方向と反対の方向の電流成分を最小にするようになっている、MEMS共振磁力計が提供される。
【0034】
「電流の主要方向」とは、振動部材を通過する電流の主な方向、例えば応力ストレス構造体を通過する導電路を無視した場合の電流の方向を意味するにすぎないことに留意すべきである。最も簡単な例では、応力軽減構造体との間に延びる振動部材の導電路は、第1軸線を構成する実質的に直線状の導電性トラックとなる。この場合、電流の主要方向は導電路の直線状部分に沿った(すなわち第1軸線に沿った)電流の方向となる。この場合、応力軽減構造体は導電路の他の部分に沿った電流と反対の方向の応力軽減構造体を通過する電流を最小にするようになっていることが好ましい。使用の際、磁界が存在する場合に必要な振動力を与えるように、導電路に沿って交流(AC)が通過され、したがって電流の主要方向は使用時に交互に変化することに留意すべきである。
【0035】
前記少なくとも1つの応力軽減構造体は導電性部分を備え、電流は前記電流の主要方向から90度未満または実質的に90度に等しい角度だけ異なる方向に、この導電性部分を通過して流れる。換言すれば、アンカーポイントとの間ではメイン電流方向と反対の方向の電流成分が実質的にないことが好ましい。
【0036】
ACが通過する振動部材の導電路は振動部材の振動軸線に実質的に垂直な軸線に沿っていることが好ましい。かかる構造では、印加される磁界は振動部材の振動軸線に沿った振動部材の運動を生じさせる力を与える。したがって、振動部材に与えられるローレンツ力は所定の磁界に対して最大となる。
【0037】
応力軽減構造体は、折りたたまれた構造体を備え、前記折りたたまれた構造体は電流の前記主要方向にほぼ垂直な方向に延びる複数の細長い弾性的に可撓性のアームを備えることが好ましい。かかる構造体を設けたことにより、電流の主要方向と反対の方向に電流がない応力軽減手段を通る電流路が得られる。かかる応力軽減構造体における電流の大部分は電流の主要方向にほぼ垂直な方向に存在し、かかる構造によって応力軽減構造体を通過する電流は振動部材に与えられる合成振動力に対する効果は無視できるものとなることが保証される。
【0038】
応力軽減構造体は弾性変形可能なループを含むことが好ましい。1つの応力軽減ループにより、応力軽減手段を通過する2つの電流路が得られ、このループは逆電流が流れるときに通過する折りたたみ部を含まない。実際に、電流の主要方向に沿ったループを通過する電流のかなりの成分が生じる。したがってこのタイプのループ応力軽減構造体は導電路の残りの部分を通過する電流に起因して与えられる振動力に加わる振動力を加える。
【0039】
振動部材は複数のアンカーポイントで基板に取り付けることが好ましい。アンカーポイントの21つまたはいくつかの近くに応力軽減部分を形成できるが、各アンカーポイントには1つの応力軽減構造体が関連していることが好ましい。このようにすることにより、構造がより対称的となり、ねじれた、または非対称の振動モードが励起される可能性が少なくなる。
【0040】
本発明の共振磁力計では、応力軽減手段を設けることが好ましいが、本明細書に記載した応力軽減手段を任意の共振磁力計装置に有利に使用することも可能であることに留意すべきである。従って、振動部材を備えたマイクロ電気機械システム(MEMS)共振磁力計を提供できる。この場合、前記振動部材は電流を搬送するための導電路を含み、振動部材は少なくともつの弾性変形可能な応力軽減構造体を備え、前記振動部材は少なくとも1つの応力軽減手段を通過する電流によって発生される振動力が導電路の他の部分を通過する電流によって発生される振動力から実質的に減算されないようになっている。
【0041】
磁力計はマイクロ電気機械システム(MEMS)として形成することが好ましい。本明細書におけるマイクロ電気機械システム(MEMS)なる用語は、当業者によりマイクロシステムテクノロジー(MST)、マイクロロボティックスおよびマイクロエンジニアリングデバイスなる用語で記述されるものを含む広範な範囲のマイクロ機械センサおよびアクチュエータを含むように使用する。
【0042】
前記基板および/または前記振動部材はシリコンを含むことが好ましく、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハまたはシリコンオングラス(SOG)ウェーハから形成することが好ましい。
【0043】
本発明の第2の様相によれば、本発明の第1の様相に係わる少なくとも1つの磁力計を含む慣性測定ユニット(IMU)が提供される。このIMUは3つの磁力計を備え、これら3つの磁力計の各々は互いに直交する軸線に沿った磁界を検出するようになっていることが好ましい。
【0044】
次に、添付図面を参照し、単なる例により本発明について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
まず、図1を参照する。ここにはウィッケンデン外によって記述されたタイプ簡単なバータイプの磁力計2が示されている。この磁力計は第1電極6および第2電極8によって支持された共振バー4を備える。第1電極6および第2電極8はバー4の振動の基本モードの節ポイントに位置している。
【0046】
バー4を通過する電流(I)が、磁界(B)と相互作用すると、平面外のローレンツ力(F)を発生する。使用に際し、第1電極6および第2電極8を介してバー4に交流ACが加えられる。このイオン化されるACの周波数は、共振バー4の共振周波数に一致しているので、平面内磁界(B)の存在下でデバイスは共振状態とされる。所定の印加電流に対し、共振の大きさは加えられた磁界の大きさを表示している。このローレンツ力効果は、すべての共振磁力計の作動原理となっている。
【0047】
図2を参照すると、ここにはイザム外によって記述されたタイプの従来の共振磁力計が示されている。このデバイスは、第1脚部11と、第2脚部12と、クロスビーム13とを有するサスペンドされた共振ビーム構造体10を含む。各脚部の各端部はアンカーポイント19において基板に固定されている。クロスビーム13は複数のフィンガー電極14を備え、これら電極14はクロスビーム部分13の各側面から垂直に突出得ると共に、基板の平面に平行となっている平面内にある。サスペンドされたクロスビーム部分13の両側において、基板内には容量性ピックアップフィンガー電極の第1の組15および第2の組16が形成されている。このデバイスはサスペンドされたクロスビーム部分13のフィンガー電極14が、基板に形成されたフィンガー電極の第1の組15および第2の組16と互い違いとなるように配置されている。
【0048】
サスペンドされた共振ビーム構造体10は、基板の平面内の1つの軸線にて(すなわち図2のy軸線に沿って)自由に移動できる。使用中、駆動回路17はサスペンドされた共振ビーム構造対10の共振周波数でAC電流を発生し、この電流を第1脚部11に沿って通過させる。基板の(x−y)平面に垂直な方向に加えられた磁界は、共振ビーム構造体10を共振させる(すなわちy軸線に沿って前後に振動させる)ローレンツ力を発生する。共振ビーム構造体10が変位すると、クロスビーム部分のうちのフィンガー電極の第1の組15およびフィンガー電極の第2の組16とフィンガー電極14に関連する容量が変わる。この容量の変化は容量性ピックアップ回路18によって測定され、これによって印加された磁界強度を決定できる。
【0049】
上記のように、図2に示された従来の構造には多数の欠点がある。例えば駆動回路17は数kHzにつき1Hzまで正確な周波数でAC電流を発生できる周波数発生器を含んでいなければならない。回路17によって加えられる駆動周波数が検出回路18によって測定される共振周波数を常に一致するようにするには、周波数トラッキング回路(図示せず)も必要であり、かかる回路はシステムに電気的なノイズを発生させる原因となり、磁界がビーム構造体を共振状態に駆動したときには、共振周波数の尺度を提供するにすぎない。更に検出電極15および16は共振質量体の発信周波数で電気出力を発生するので、駆動回路に起因するノイズを検出し、磁力計の測定精度を低下させる。更に、第1脚部11および第2脚部12の固定−固定構造によって、機械的応力が累積することがあり、これによって最良の場合でもデバイスの共振周波数が変わったり、最悪のケースでは構造体全体が屈曲する。
【0050】
図3(a)を参照すると、ここには本発明の自己共振磁力計20が示されている。この磁力計20はSOI基板から形成されたアクティブ領域22と、関連する制御回路24とを備える。
【0051】
アクティブ領域22は、第1脚部28、第2脚部30およびクロスビーム32を有するサスペンドされた共振ビーム構造体26(すなわちサスペンドされた質量体)を備える。このクロスビーム32は、かなりの量の質量体を追加することなく、高度の剛性を提供するためのボックス部分として形成されている。かかるボックス部分のクロスビームを設けることによって、ねじれた振動モードの励起が防止されている。
【0052】
第1脚部28の両端は第1アンカーポイント34および第2アンカーポイント35のそれぞれにおいて基板に物理的に取り付けられている。同様に、第2脚部30の両端は、第3アンカーポイント36および第4アンカーポイント37のそれぞれにおいて基板に物理的に取り付けられている。第1脚部および第2脚部の各端部には物理的な応力を低減するための応力軽減ループ38が設けられている。次に、図4を参照し、応力軽減ループの構造および作動についてより詳細に説明する。
【0053】
サスペンドされた共振ビーム構造体26のクロスビーム部分32は、複数のフィンガー電極40を支持しており、これらフィンガー電極はクロスビーム部分32の各側面から垂直に突出すると共に、基板の平面内にある。サスペンドされたクロスビーム部分32の両側にて、基板内には容量性検出フィンガー電極の第1の組42および第2の組44が形成されている。このデバイスはサスペンドされたクロスビーム部分32のフィンガー電極40がフィンガー電極の第1の組42および第2の組44と互い違いとなるように配置されている。後述するように、このような電極構造によってサスペンドされた共振ビーム構造体26の移動を容量により検出できるようになっている。基板内には一対の駆動電極46も形成されており、これら電極はクロスビーム部分32によって支持されたフィンガー電極47の端部の対の近くに位置している。
【0054】
使用に際し、デバイスはいわゆる自己共振モードで作動される。サスペンドされた共振ビーム構造体26は駆動電極46の対に駆動電圧を印加する静電駆動回路48によって共振するように、静電力によって駆動される。共振ビーム構造体の移動は、フィンガー電極の第1の組42および第2の組44を使用する差動容量の検出によって検出される。この容量検出信号は差動アンプ50へ送られ、90度の位相シフト回路52(または微分回路)を介して静電駆動回路48へ送られる。このように、共振ビーム構造体26を静電的に駆動するのに使用される容量検出によって発生される信号により、正の電子フィードバックループ構造が実現される。
【0055】
差動アンプ50によって発生される出力信号も、クリッパー電流駆動回路56を介し、差動駆動回路58へ送られる。分極電源60も設けられており、第1アンカーポイント34を介して第1脚部28に分極電圧(V)+ΔVを印加し、第2アンカーポイント35を介して第1脚部28の他端部に分極電圧(V)−ΔVを印加するように差動駆動回路が構成されている。分極電圧(V)は第3アンカーポイント37および第4アンカーポイント38において第2脚部30の両端に印加される。
【0056】
電圧源回路であるこの差動駆動装置により、クロスビーム32を所望する分極電圧(すなわち分極電圧源60が供給する電圧)に維持しながら、サスペンションの第1脚部をAC電流が流れることができるようになっている。クロスビームを固定された電圧に維持することにより、低ノイズの容量性検出を行うことが可能となっている。サスペンションの抵抗変化に起因する電流の流れの不確実性を潜在的に導入するΔVのレベルを固定したり、またはこの電流をモニタし、電流の大きさを一定に維持するようにΔVを変えることができる。
【0057】
従来技術の磁力計デバイスと異なり、別個の周波数発生電源を使って磁力計20内で使用されるAC電流を発生しないが、この電流はサスペンドされた共振ビーム構造体26の振動から直接誘導されていることについて再び強調すべきである。このフィードバック構造はノイズレベルを低減すると共に、Q増幅が常に最大となることを保証する。
【0058】
共振ビーム構造の振動の大きさは、静電駆動力とローレンツ力との合計に応じて決まることは明らかである。図3に示されている構造では静電駆動の大きさは一定に維持される。すなわち磁力計は、一定の駆動モードで作動される。整流/フィルタ回路53を通過した後の差動アンプ50の出力は、信号ライン54に出力信号を発生するが、この出力信号は運動の大きさに関連しており、従って加えられた磁界の強度を表示している。
【0059】
一定駆動モードでは、測定すべき最大の磁界が加えられたときにもデバイスが共振状態を維持するように、静電駆動レベルを十分大きく選択しなければならない。換言すれば、印加される磁界および静電駆動機構によって誘導される合成力は、サスペンドされた共振ビームを端部のストッパーに衝突させることなく、共振状態を維持するよう常に十分大きくなっていなければならない。印加される磁界が共振状態を停止させるかまたはビームを端部のストッパーに衝突させた場合でも、デバイスは通常、故障せず、磁界強度またはAC電流を低減したときに(再較正を必要とすることなく)再び正常に作動する。
【0060】
磁力計は一定駆動モードで作動する代わりに、振動振幅を一定に維持するために静電駆動信号の振幅を変えるための制御ループを含むことができる。すなわち磁力計は一定振幅モードで作動する。
【0061】
印加される駆動電圧の振幅はデバイスに加えられる磁界強度を表示する。
【0062】
上記容量ピックオフ装置は、いわゆる変位電流検出器である。かかる構造では、分極電流は適当なDCレベルに固定され、増幅電子回路(すなわち差動アンプ50など)はデバイスの共振周波数で作動する。集積ユニットまたはアプリケーション特定集積回路(ASIC)で一般に使用されるCMOSのピックオフ増幅器に対し、この作動周波数は増幅器の1/fノイズ内にあり、従って、デバイスの信号対ノイズ比は低減される。
【0063】
これらI/fノイズ効果を低減するために、高周波(例えば1MHz)のプローブ信号を使って容量を検出できる。これに関連し、「高周波」とはアンプのI/fノイズ領域よりも上にあり、更に振動構造体の機械的応答よりも上にある周波数を意味する。分極電圧源60によって発生される分極電圧は、高周波プローブ信号となり、適当な利得後の容量ピックオフの出力は復調およびフィルタリングを必要とする。かかるシステムのためのフィードバックループは、90度の位相シフト回路52の代わりに180度の位相シフト手段(図示せず)を有する上記ベースバンド実施例として完成される。
【0064】
磁力計をコンパスとして作動させるために必要なQを得るために、磁力計を低圧環境内にパッケージできる。このQは圧力におおいに依存し、圧力は感度およびバンド幅に影響する。このデバイスの別の利点は、較正目的のためにQを直接測定するのにもデバイスを使用できることである。ビーム構造体26を通過したAC電流がオフにされると、駆動電極46を介し、静電駆動回路48によって加えられる静電力のみが、サスペンドされた共振ビーム構造体26を共振状態に駆動するように働く。かかる場合、振動運動の大きさ(または低振幅モードで作動する場合に加えられる駆動力)は、Qに関連する。
【0065】
1つはQを測定するために、他方は磁気センサとして使用するように、2つの効果的なデバイスを同時に使用し、双方の測定値を同時に利用できるようにすることも有利である。デバイスのまわりのウェーハ上に平面状コイルを設けることによって較正を行うこともできる。この平面状コイルを通過するように送られる既知の電流はデバイスに既知の磁界を発生する。
【0066】
上記のように、図3(a)に示されたデバイスのサスペンドされた共振ビーム構造体26は、基板内に形成された一対の駆動電極46およびクロスビーム部分32によって支持された対応するペアのフィンガー電極47を使用して静電的に駆動される。図3(b)は、静電櫛歯駆動構造を使用した別の実施例を示す。図3(b)の構造では、複数のフィンガー電極を備えた電極構造体147をクロスビーム32が支持する。基板には対応する駆動電極146が形成され、基板の細長い駆動電極146は電極構造体147のフィンガー電極と互い違いとなっているので、これらは静電櫛歯駆動体を構成している。この櫛歯駆動構造体は加えられる静電力の変位依存性を低減し、更にサスペンドされたビーム構造体26の移動の歪みも低減する。当業者であれば、本発明のデバイスで使用できる種々の別の駆動装置についても想到できよう。
【0067】
図4を参照すると、ここには本発明の磁力計に設けるのに適当な別の容量性ピックアップ構造体が多数示されている。図4(b)は、図3(a)のデバイスで使用される構造を示しているが、図4(a)および4(c)は別の構造を示している。
【0068】
図4(a)はイザム外が記述したタイプの、いわゆる単一目的のピックアップ構造体を示している。サスペンドされたクロスビーム80は、基板のフィンガー電極の2つの組84および86と互い違いになっている多数のフィンガー電極82を備える。クロスビーム80がy方向に移動すると、構造体の容量が変化し、クロスビームの変位量を表示する。この構造体の欠点は駆動回路のフィードスルーに起因するビームの移動および周辺電気回路の電気的な影響に起因し、電気信号を分離することが困難なことである。
【0069】
(上記図3を参照して説明した構造に類似する)図4(b)に示された差動ピックアップ構造体により、低いレベルの関連ノイズでも測定を行うことが可能となっている。互いに横方向にずれているフィンガー電極の2つの組42と44との間にはクロスビーム32が位置する。クロスビーム32が移動する結果、一組のフィンガー電極、すなわち電極42から運動によって誘導される信号が発生されるが、この信号は他方の組の電極44から発生された運動で誘導された信号と位相がずれている。これと対照的に、電極42および44の各々によって生じた信号に関連するノイズは明らかに位相が合っている。従って、電極42および44によって生じた信号を減算すると、不要なバックグラウンドノイズの大部分が除かれるが、クロスビームの誘導によって誘導された信号が加えられる。この理由から、差動ピックアップ構造体が好ましい。
【0070】
図4(c)は、基板に形成された2組のフィンガー電極92と94の各々が、2つに分割された別の差動ピックアップ構造体を示す。これによって両側が対照的となっており、よってピックアップ回路が発生する静電力をバランスさせ、ねじり運動を与えることを防止する電極構造体が得られている。
【0071】
図3を参照して説明したように、本発明の磁力計は応力軽減ループを内蔵するサスペンション(すなわちサスペンドされた共振ビーム構造体26)を含む。次に図5を参照すると、ここには共振磁力計で使用するのに適した2つの機械式応力軽減構造体が示されている。
【0072】
図5(a)は、中心質量体102を支持し、アンカーポイント104において基板に係止されている共振ビーム100を示す。サスペンションの各端部には応力軽減ループ106が設けられている。図5(a)に示された応力軽減ループは、印加磁界によって誘導される力に影響せず、応力を軽減すると共に、サスペンションをより線形な形態で作動できるようにするという2つの利点を有する。
【0073】
図5(b)に示されるように、ループの代わりに共振ビーム100の各端部に折りたたみ部108を形成できる。これら折りたたみ部108は電流が各方向に流れる距離が等しくなるように配置されている。これによって、折りたたみ部108に沿って流れる電流と、印加磁界の相互作用に起因して生じるローレンツ力がバランスすることが保証される。
【0074】
加速度計のような他のMEMSデバイスでは、これまで種々の応力軽減構造体が使用されてきた。例えば図5(c)は、2つのアンカーポイント112にて基板に取り付けられている加速度計のための従来の折りたたみバックビーム110を示す。当業者であれば、ローレンツ力は逆方向(すなわち折りたたみ部の上下)に流れる電流に起因してキャンセルするので、磁力計においてかかる折りたたみサスペンションを使用しなかった。
【0075】
従って、図5(a)および5(b)に示されたタイプの応力軽減手段を形成することによって、磁力計デバイス全体および特にイザム外のデバイスに関連する多数の問題が解決された。まず第1に、基板内の応力はビームを屈曲させ、デバイスを故障させ得る。この応力はパッケージとデバイスとの熱のミスマッチによって生じることがあり、更にSOIの製造からの残留応力によっても生じ得る。この応力軽減手段はこのような屈曲が生じるのを防止する。第2に、固定−固定ビームの剛性は振幅と線形ではないので、振動の振幅と共に共振周波数が変化する。応力軽減ループまたは折りたたみ部を設けることによって、このような非線形性が小さくなっている。
【0076】
図6を参照すると、ここには本発明にかかわるデバイスの製造方法が示されている。
【0077】
図6(a)は機械シリコン層120と、犠牲酸化膜122と、ハンドルウェーハ124とを含むSOI基板を示す。図6(b)に示されるように、シリコン層120上には酸化膜124がデポジットされており、この酸化膜はマスクを構成するようにエッチングされている。図6(c)を参照すると、ここにはマスク酸化膜126を通って犠牲酸化膜122までにどのように機械式シリコン層120をエッチングしたかが示されている。次に、金属膜128によりブランケットをコーティングし、図6(e)に示されるような低オーミック導線を形成する前に、図6(d)で示されるように犠牲酸化膜の一部を除去することにより、機械式シリコン層120内に形成されたサスペンドされた構造体を解放する。
【0078】
図7は、SOIウェーハに形成された本発明の磁力計の顕微鏡写真を示す。磁力計の応力軽減構造体は参照番号130によって表示されている。
【0079】
上記概略を述べた金属被覆されたSOIプロセスを適宜使用できるが、このデバイスはLIGAに類似するプロセスを使って電気形成された金属からも製造できる。実際に当業者であれば本発明の磁力計を製造するのに利用できる多数の技術について想到できよう。
【0080】
最後に、磁力計は慣性測定ユニット(IMU)内で測定するための別の慣性センサとパラレルに製造できると理解すべきである。従って、単一チップは加速度計、磁力計およびジャイロスコープまたはこれら3つの組み合わせを含むことができる。かかる3つのチップはコンパクトなシリコンの自由度が6度のIMUで使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】従来のMEMS磁力計の作動の基本原理を示す。
【図2】平面内で振動する従来のMEMS磁力計の作動を示す。
【図3(a)】本発明のMEMS磁力計を示す。
【図3(b)】本発明のMEMS磁力計を示す。
【図4(a)】図3に示されたタイプのMEMS磁力計で使用できる多数の電極構造を示す。
【図4(b)】図3に示されたタイプのMEMS磁力計で使用できる多数の電極構造を示す。
【図4(c)】図3に示されたタイプのMEMS磁力計で使用できる多数の電極構造を示す。
【図5(a)】磁力計の性能を改善するための折りたたまれたビームの使用を示す。
【図5(b)】磁力計の性能を改善するための折りたたまれたビームの使用を示す。
【図5(c)】従来のバック折りたたみビームを示す。
【図6(a)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(b)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(c)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(d)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図6(e)】MEMS磁力計を製造するのに使用できるプロセスを示す。
【図7】本発明の磁力計のマイクロ写真を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材と、該振動部材に交流(AC)を通過させるための手段とを備えた共振磁力計において、
前記振動部材に、磁界に応じた振動力を加えるための駆動手段が更に設けられていることを特徴とする共振磁力計。
【請求項2】
振動部材の屈曲に応じた電気出力信号を発生するための検出手段を備えた請求項1記載の磁力計。
【請求項3】
前記駆動手段が前記検出手段によって発生された電気信号を受信するための正のフィードバック回路を含む請求項2記載の磁力計。
【請求項4】
前記駆動手段が固定された振幅の振動力を発生する請求項3記載の磁力計。
【請求項5】
前記駆動手段が調節可能な振幅の振動力を振動部材に与えるようになっており、前記振動部材の振動の所定の振幅を得るように、使用中、前記駆動手段によって印加される振動力の振幅を調節する請求項3記載の磁力計。
【請求項6】
前記振動部材にACを通過させるための手段が前記検出手段によって発生された電気出力信号を受信するようになっているフィードバック回路を含む請求項2乃至5の何れか1項記載の磁力計。
【請求項7】
前記検出手段が前記基板に設けられ、前記振動部材との間に可変容量を有する少なくとも1つのセンサ電極を含む請求項2乃至6の何れか1項記載の磁力計。
【請求項8】
前記検出手段が基板に位置する複数の細長いセンサ電極を備え、前記振動部材が前記複数の細長いセンサ電極と互い違いになっている複数の細長い電極を含む請求項7記載の磁力計。
【請求項9】
前記振動部材の電極が所定の直流(DC)分極電圧に維持されている請求項8記載の磁力計。
【請求項10】
前記振動部材の電極に高周波のAC分極電圧が印加される請求項8記載の磁力計。
【請求項11】
2つの電極の組を形成するように前記複数のセンサ電極が電気的に接続されており、これら2つの電極の組が差分容量ピックオフ信号を発生するようになっている請求項8乃至10の何れか1項記載の磁力計。
【請求項12】
振動部材にACを通過させるための手段が前記ACの振幅を変えるための手段を含む請求項1乃至11の何れか1項記載の磁力計。
【請求項13】
前記駆動手段が前記振動部材に振動力を制限的に加えるよう、前記基板に形成された少なくとも1つの駆動電極を備える請求項1乃至12の何れか1項記載の磁力計。
【請求項14】
前記駆動手段が前記基板に形成された複数の細長い第1駆動電極を備え、前記振動部材が複数の細長い第2の駆動電極を備え、第1の細長い駆動電極が第2の細長い駆動電極と互い違いになっている請求項1乃至13の何れか1項記載の磁力計。
【請求項15】
前記振動部材が共振ビームを備える請求項1乃至14の何れか1項記載の磁力計。
【請求項16】
振動部部材が少なくとも2つの可撓性脚部部分を備え、前記少なくとも2つの可撓性脚部部分のうちの少なくとも1つを前記AC電流が通過される請求項1乃至15の何れか1項記載の磁力計。
【請求項17】
振動部材が前記少なくとも2つの脚部部分に対して実質的に垂直に配置されており、これら脚部部分を相互に接続するようになっている実質的に剛性のクロスビームを備える請求項16記載の磁力計。
【請求項18】
前記クロスビームがこのビームから垂直に突出する複数の細長い電力を備える請求項17記載の磁力計。
【請求項19】
前記クロスビームが所望する分極電圧を受けるように、前記振動部材に交流電流(AC)を通過させるための手段が、前記脚部部分に差分AC電圧を供給するようになっている請求項17又は18記載の磁力計。
【請求項20】
前記振動部材が前記基板の平面に平行な平面内の軸線に沿って振動するようになっている請求項1乃至19の何れか1項記載の磁力計。
【請求項21】
前記振動部材が少なくとも1つの応力軽減手段を備える請求項1乃至20の何れか1項記載の磁力計。
【請求項22】
前記少なくとも1つの応力軽減手段が応力軽減ループを備える請求項21記載の磁力計。
【請求項23】
前記磁力計がマイクロ電気機械システム(MEMS)として形成されている請求項1乃至22の何れか1項記載の磁力計。
【請求項24】
前記基板および振動部材がシリコンを含む請求項1乃至23の何れか1項記載の磁力計。
【請求項25】
前記基板および振動部材がシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハおよびシリコンオングラス(SOG)ウェーハのうちのいずれか1つから形成されている請求項24記載の磁力計。
【請求項26】
請求項1乃至25の何れか1項記載の少なくとも1つの磁力計を含む慣性測定ユニット(IMU)。
【請求項27】
3つの磁力計が設けられており、これら3つの磁力計のうちの各々が相互に直交する軸線に沿って磁界を検出するようになっている請求項26記載のIMU。
【請求項1】
振動部材と、該振動部材に交流(AC)を通過させるための手段とを備えた共振磁力計において、
前記振動部材に、磁界に応じた振動力を加えるための駆動手段が更に設けられていることを特徴とする共振磁力計。
【請求項2】
振動部材の屈曲に応じた電気出力信号を発生するための検出手段を備えた請求項1記載の磁力計。
【請求項3】
前記駆動手段が前記検出手段によって発生された電気信号を受信するための正のフィードバック回路を含む請求項2記載の磁力計。
【請求項4】
前記駆動手段が固定された振幅の振動力を発生する請求項3記載の磁力計。
【請求項5】
前記駆動手段が調節可能な振幅の振動力を振動部材に与えるようになっており、前記振動部材の振動の所定の振幅を得るように、使用中、前記駆動手段によって印加される振動力の振幅を調節する請求項3記載の磁力計。
【請求項6】
前記振動部材にACを通過させるための手段が前記検出手段によって発生された電気出力信号を受信するようになっているフィードバック回路を含む請求項2乃至5の何れか1項記載の磁力計。
【請求項7】
前記検出手段が前記基板に設けられ、前記振動部材との間に可変容量を有する少なくとも1つのセンサ電極を含む請求項2乃至6の何れか1項記載の磁力計。
【請求項8】
前記検出手段が基板に位置する複数の細長いセンサ電極を備え、前記振動部材が前記複数の細長いセンサ電極と互い違いになっている複数の細長い電極を含む請求項7記載の磁力計。
【請求項9】
前記振動部材の電極が所定の直流(DC)分極電圧に維持されている請求項8記載の磁力計。
【請求項10】
前記振動部材の電極に高周波のAC分極電圧が印加される請求項8記載の磁力計。
【請求項11】
2つの電極の組を形成するように前記複数のセンサ電極が電気的に接続されており、これら2つの電極の組が差分容量ピックオフ信号を発生するようになっている請求項8乃至10の何れか1項記載の磁力計。
【請求項12】
振動部材にACを通過させるための手段が前記ACの振幅を変えるための手段を含む請求項1乃至11の何れか1項記載の磁力計。
【請求項13】
前記駆動手段が前記振動部材に振動力を制限的に加えるよう、前記基板に形成された少なくとも1つの駆動電極を備える請求項1乃至12の何れか1項記載の磁力計。
【請求項14】
前記駆動手段が前記基板に形成された複数の細長い第1駆動電極を備え、前記振動部材が複数の細長い第2の駆動電極を備え、第1の細長い駆動電極が第2の細長い駆動電極と互い違いになっている請求項1乃至13の何れか1項記載の磁力計。
【請求項15】
前記振動部材が共振ビームを備える請求項1乃至14の何れか1項記載の磁力計。
【請求項16】
振動部部材が少なくとも2つの可撓性脚部部分を備え、前記少なくとも2つの可撓性脚部部分のうちの少なくとも1つを前記AC電流が通過される請求項1乃至15の何れか1項記載の磁力計。
【請求項17】
振動部材が前記少なくとも2つの脚部部分に対して実質的に垂直に配置されており、これら脚部部分を相互に接続するようになっている実質的に剛性のクロスビームを備える請求項16記載の磁力計。
【請求項18】
前記クロスビームがこのビームから垂直に突出する複数の細長い電力を備える請求項17記載の磁力計。
【請求項19】
前記クロスビームが所望する分極電圧を受けるように、前記振動部材に交流電流(AC)を通過させるための手段が、前記脚部部分に差分AC電圧を供給するようになっている請求項17又は18記載の磁力計。
【請求項20】
前記振動部材が前記基板の平面に平行な平面内の軸線に沿って振動するようになっている請求項1乃至19の何れか1項記載の磁力計。
【請求項21】
前記振動部材が少なくとも1つの応力軽減手段を備える請求項1乃至20の何れか1項記載の磁力計。
【請求項22】
前記少なくとも1つの応力軽減手段が応力軽減ループを備える請求項21記載の磁力計。
【請求項23】
前記磁力計がマイクロ電気機械システム(MEMS)として形成されている請求項1乃至22の何れか1項記載の磁力計。
【請求項24】
前記基板および振動部材がシリコンを含む請求項1乃至23の何れか1項記載の磁力計。
【請求項25】
前記基板および振動部材がシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハおよびシリコンオングラス(SOG)ウェーハのうちのいずれか1つから形成されている請求項24記載の磁力計。
【請求項26】
請求項1乃至25の何れか1項記載の少なくとも1つの磁力計を含む慣性測定ユニット(IMU)。
【請求項27】
3つの磁力計が設けられており、これら3つの磁力計のうちの各々が相互に直交する軸線に沿って磁界を検出するようになっている請求項26記載のIMU。
【図1】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図6(e)】
【図7】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図6(e)】
【図7】
【公表番号】特表2007−506112(P2007−506112A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527464(P2006−527464)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004017
【国際公開番号】WO2005/029107
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501297550)キネティック リミテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004017
【国際公開番号】WO2005/029107
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501297550)キネティック リミテッド (57)
【Fターム(参考)】
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