共有結合形成反応ペアを用いた標的分子の粒子ベースの検出における方法および組成物
標的分子と基質とを含む結合複合体を形成する強度および/又は確率を増やすために用いられうる方法および組成物を開示する。一態様では、標的分子と基質とを含む複合体における複合体内結合相互作用を増加させるために使用できる、反応ペアの一以上のメンバーを有する連結分子が開示される。これらの方法および組成物と関連して複合体内架橋および複合体間架橋を利用し、開示された結合複合体をさらに強化し、安定させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
本出願は、すべての目的のため、および出典明記によってその全体が本明細書中に援用される2008年11月17日に出願した米国仮特許出願61/115401の優先権を主張する。
【0002】
ハードウェアのリードヘッドのようなアプリケーションの電子工学および半導体産業において開発された磁気検知能力は、ここ20〜30年で感度と密度に大きく進歩した。近年、生体分子の検出にこれらの能力を応用することが注目されている。本開示内容は、これらの問題に対処し、関連した利点を提供するものである。
【発明の概要】
【0003】
標的分子と基質とを含む結合複合体を形成する強度および/又は確率を増やすために用いられうる方法および組成物を開示する。一態様では、標的分子と基質とを含む複合体における複合体内結合相互作用の数を増やすために用いられうる、反応ペアの一以上の第一メンバーを有する連結分子を開示する。これらの方法および組成物と関連して複合体内の架橋結合および複合体間の架橋結合を利用し、開示された結合複合体をさらに強化し、安定させることができる。
【0004】
第一の態様では、本開示は、標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体の生成方法を提供し、ここで当該方法は、反応混合物中において、基質、標的分子を含むと思われる試料、および連結分子を混合することを含む。基質は、一つの反応ペアの複数の第一メンバーを含み、連結分子は、存在すれば、標的分子に特異的に結合する一以上の標的特異的結合部分を含む。連結分子が多様な標的特異的結合部分を含む場合には、各標的特異的結合部分が、存在すれば、標的分子の異なる領域に特異的に結合する。連結分子は、前記反応ペアの一以上の第二メンバーをも含む。混合は、存在すれば、標的分子に対して連結分子が特異的結合を生じるのに十分な反応条件下で行われる。この方法は、反応混合物を、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件にさらすことをさらに含み、ここで、標的分子が試料中に存在する場合には、連結分子が標的分子に特異的に結合し、反応ペアの一以上の複数の第一メンバーと一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって標的分子、連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0005】
ある態様では、連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子は反応ペアの複数の第二メンバーを含み、連結分子が反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合には、連結分子は複数の標的特異的結合部分を含む。
【0006】
前記方法は、複合体の有無を検出することを更に含んでよい。
【0007】
一実施態様では、前記方法により複合体の形成が生じる。
【0008】
一実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの第二メンバーの一つとを含む。
【0009】
他の実施態様では、連結分子が、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0010】
他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0011】
一実施態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0012】
前記方法の他の実施態様では、基質が検出可能な標識である。
【0013】
基質が検出可能な標的である一実施態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0014】
本開示の第二の態様では、第一の態様に記載された方法の一態様が開示され、ここで、基質が検出可能な標識であり、反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含み、バイオチップ表面は複数の標的固定化プローブを含み、混合は、存在すれば、標的分子が複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行われる。標的分子が試料中に存在する場合、複数の標的固定化プローブの一つが標的分子に特異的に結合し、標的分子が連結分子に特異的に結合し、かつ、連結分子が反応ペアの一以上の複数の第一メンバーと一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0015】
本開示の第二の態様に記載した方法のある態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0016】
本開示内容の第二態様で記述される方法の別の実施態様では、前記方法は、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体の有無を検出することを更に含む。
【0017】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、前記方法により、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、核酸標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体の形成が生じる。
【0018】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの一つの第二メンバーを含む。
【0019】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、連結分子が、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーを含む。
【0020】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーを含む。
【0021】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、複数の複合体が形成され、このとき複数の複合体のメンバーのそれぞれがバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、および検出可能な標識を含んでおり、前記方法は、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む。
【0022】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0023】
本開示の第二の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む。
【0024】
本開示の第三の態様では、標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体の製造方法を提供する。当該方法は、基質と、標的分子を含有すると思われる試料と、複数の連結分子とを、反応混合物に混合することを含む。基質は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。複数の連結分子のそれぞれのメンバーは一又は複数のコピーで各々存在し、それぞれのメンバーは、(存在する場合には)標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分を含む。また、複数の連結分子のそれぞれのメンバーは、反応ペアの第二メンバーを含む。この混合は、複数の連結分子が(存在する場合には)標的分子に特異的に結合するために十分な反応条件下である。当該方法は、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件に反応混合物をさらすことをさらに含む。標的分子が試料中に存在するとき、複数の連結分子は、標的分子の複数の異なる領域と特異的に結合し、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって標的分子、複数の連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0025】
本開示内容の第三態様で記述される方法の一実施態様では、前記方法は、複合体の有無を検出することを更に含む。
【0026】
本開示内容の第三態様で記述される方法の他の実施態様では、前記の方法により複合体が形成される。
【0027】
本開示の第三の態様に記載した方法の別の態様では、複数の複合体が形成され、その複数の複合体の各メンバーはバイオチップ表面、複数の連結分子、標的分子および検出可能標識を含む。この方法は、反応混合物中に架橋剤を添加して、複数の複合体の少なくとも二つを一以上の共有結合を介して連結することをさらに含む。
【0028】
本開示の第三の態様に記載した方法の別の態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0029】
本開示の第三の態様に記載した方法の別の態様では、基質が検出可能な標識である。その態様の一つでは、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0030】
第四の態様では、本開示の第三の態様に記載した方法を提供するものであり、ここで、基質は検出可能な標識であり、反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含む。バイオチップ表面は、複数の標的固定化プローブを含み、混合は、存在すれば標的分子が複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行う。標的分子が試料中に存在する場合、複数の標的固定化プローブの一つが標的分子に特異的に結合し、標的分子は複数の連結分子に特異的に結合し、かつ、複数の連結分子は反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0031】
本開示の第四の態様に記載した方法のある態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、一以上の複数の連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0032】
本開示の第四の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体の存在または不存在を検出することをさらに含む。
【0033】
本開示の第四の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、核酸標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体の形成をもたらす。
【0034】
本開示内容の第四態様で記述される方法の他の実施態様では、複数の複合体が形成され、そのメンバーのそれぞれがバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含んでおり、前記方法は、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む。
【0035】
本開示内容の第四態様で記述される方法の別の実施態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0036】
本開示の第四の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む。
【0037】
第五の態様では、本開示内容は、基質と、標的分子を含有すると思われる試料と、連結分子とを含む反応混合物を提供する。基質は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。連結分子は、(存在する場合には)標的分子に特異的に結合する一又は複数の標的特異的結合部分を含む。連結分子が複数の標的特異的結合部分を含むとき、標的特異的結合部分のそれぞれは(存在する場合には)標的分子の異なる領域に特異的に結合する。また、連結分子は、反応ペアの一以上の第二メンバーを含む。標的分子が試料中に存在するとき、連結分子は、標的分子と特異的に結合し、反応ペアの複数の第一メンバーの一以上と一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって標的分子、連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0038】
本開示の第五の態様に記載した反応混合物の別の態様では、連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が反応ペアの複数の第二メンバーを含み、連結分子が反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の標的特異的結合部分を含む。
【0039】
本開示の第五の態様に記載した反応混合物の別の態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0040】
本開示の第五の態様に記載した反応混合物の別の態様では、基質が検出可能な標識である。その態様の一つでは、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0041】
本開示内容の第五態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子は、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの一つの第二メンバーとを含む。
【0042】
本開示内容の第五態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子は、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0043】
本開示内容の第五態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子は、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0044】
本開示内容の第六態様では、基質が検出可能な標識であり、前記反応混合物が、バイオチップ表面を含む基質を更に含み、このバイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含むものである、第五態様で記述される反応混合物の実施態様が開示される。標的分子が試料中に存在するとき、標的固定化プローブの一つは標的分子に特異的に結合し、標的分子は連結分子に特異的に結合し、そして、連結分子は、反応ペアの複数の第一メンバーの一以上と一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0045】
本開示の第六の態様に記載した反応混合物の別の態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0046】
本開示の第六の態様に記述された反応混合物の別の態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0047】
本開示内容の第六態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの一つの第二メンバーとを含む。
【0048】
本開示内容の第六態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子が、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0049】
本開示内容の第六態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0050】
第七態様では、本開示内容は、基質と、標的分子を含有すると思われる試料と、複数の連結分子とを含む反応混合物を提供する。基質は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。複数の連結分子のそれぞれのメンバーは一又は複数のコピーで各々存在し、それぞれのメンバーは、(存在する場合には)核酸標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分を含む。また、複数の連結分子のそれぞれのメンバーは、反応ペアの第二メンバーを含む。標的分子が試料中に存在するとき、複数の連結分子は、標的分子の複数の異なる領域と特異的に結合し、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって標的分子、複数の連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0051】
本開示の第七の態様に記載した反応混合物のある態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0052】
本開示の第七の態様に記載した反応混合物の他の実施態様では、基質は検出可能な標識である。このような実施態様の一つでは、検出可能な標識は磁性粒子である。
【0053】
第八態様では、本開示内容は、基質は検出可能な標識であり、反応混合物はバイオチップ表面を含む基質を更に含むものである、第七態様で記述される反応混合物を提供する。バイオチップ表面は、複数の標的固定化プローブを含む。標的分子が試料中に存在するとき、複数の標的固定化プローブの一つは標的分子に特異的に結合し、標的分子は複数の連結分子に特異的に結合し、そして、複数の連結分子は反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0054】
本開示の第八の態様に記載した反応混合物のある態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、一以上の複数の連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0055】
本開示の第八の態様に記載した反応混合物の他の態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0056】
第九の態様では、本開示はキットを提供するものであり、キットは磁性粒子を含み、磁性粒子は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。当該キットはさらに連結分子を含み、この連結分子は、(存在する場合には)標的分子に特異的に結合する一又は複数の標的特異的結合部分を含む。連結分子が複数の標的特異的結合部分を含むとき、標的特異的結合部分のそれぞれは(存在する場合には)標的分子の異なる領域に特異的に結合する。また、連結分子は反応ペアの一以上の第二メンバーをも含む。
【0057】
本開示の第九の態様に記載したキットのある態様では、連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合には、この連結分子は反応ペアの複数の第二メンバーを含み、連結分子が反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合には、連結分子は複数の標的特異的結合部分を含む。
【0058】
本開示の第九の態様に記載したキットの別の態様では、キットはバイオチップ表面を含む基質をさらに含み、ここでバイオチップ表面は、存在すれば標的分子と特異的に結合する複数の標的固定化プローブを含む。
【0059】
第十の態様では、本開示は、検出可能な共有結合複合体を形成する方法を提供する。この方法は、標的分子を含むと思われる試料を、反応ペアの複数の第一メンバーを含む修飾された標的分子を含む反応混合物を製造するのに十分な条件にさらすことを含む。この方法は、反応混合物を標的固定化プローブと接触させることをさらに含み、ここで接触は、存在する修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件下で行われ、ここで前記標的固定化プローブは反応ペアの第二メンバーを含む。この方法は、反応混合物を磁性粒子と接触させることをさらに含み、ここで磁性粒子は反応ペアの第二メンバーを含む。この方法は、反応混合物を、反応ペアの第一および第二メンバー間で共有結合を形成するのに適した条件にさらすことをさらに含み、ここで、標的分子が試料中に存在する場合には、修飾された標的分子を含む検出可能な共有結合複合体が形成される。
【0060】
本開示の第十の態様に記載した方法のある態様では、標的分子が核酸標的分子であり、存在すれば、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される。
【0061】
本開示の第十の態様に記載した方法の別の態様では、磁性粒子が標識プローブを含み、磁性粒子に含まれる反応ペアの第二メンバーが標識プローブの成分である。
【0062】
第十一の態様では、本開示の第十の態様に記載される方法を提供するものであり、ここで、磁性粒子が標識プローブを含み、磁性粒子に含まれる反応ペアの第二メンバーが標識プローブの成分であり、標識プローブは修飾された標的分子と非共有結合複合体を形成することができ、反応混合物を一以上の共有結合の形成に適した条件にさらす前に、反応混合物を、磁性粒子、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件にさらし、修飾された標的分子が反応混合物中に存在する場合に、磁性粒子、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が形成される。
【0063】
本開示の第十一の態様に記載した方法のある態様では、標的分子は核酸標的分子であり、磁性粒子、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される。
【0064】
本開示の第十の態様に記載した方法のある態様では、当該方法が検出可能な共有結合複合体の存在、不存在および/または量を検出することをさらに含む。
【0065】
本開示の第十の態様に記載した方法の別の態様では、共有結合形成反応ペアがアジド/アルキン反応ペアであり、共有結合の形成に適した条件が、反応混合物をCuイオン触媒と接触させることを含む。
【0066】
本開示の第十の態様に記載した方法の別の態様では、反応混合物を核酸架橋試薬と接触させることをさらに含む。
【0067】
添付の図面とともに読むと、開示内容は以下の詳細な説明から十分に理解される。一般的な実施に従い、図面の様々な特徴が必ずしも一定の比率であるというわけではないことを強調する。様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小される。図面には以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】標的固定化プローブ、核酸標的分子、連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。
【0069】
【図2A】標的固定化プローブ、核酸標的分子、複数の連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。図2Aは反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間の共有結合形成を例示しており、ここで反応ペアの第二メンバーは検出可能な標識と標的固定化プローブの両方に含まれ、第一メンバーは連結分子に含まれている。図2Aは核酸標的分子を示しているが、このような表示は例示を目的としているに過ぎない。さらに別の典型的な標的はタンパク質や他の生物学的要素を含むが、これらに限定されるものではない。
【0070】
【図2B】標的固定化プローブ、非核酸標的分子(例えば、タンパク質または他の生物学的成分)、複数の連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。図2Bは反応ペアの第一メンバー(X1)と反応ペアの第二メンバー(X2)との間の共有結合形成を例示しており、ここで反応ペアの第一メンバーは検出可能な標識と標的固定化プローブの両方に含まれ、第二メンバーは連結分子に含まれている。
【0071】
【図3】ポリペプチド標的分子、複数の抗体をベースとする連結分子、および基質を含む結合複合体を図示する。XおよびYは反応ペアの第一メンバーおよび第二メンバーをそれぞれ示す。AおよびBはポリペプチド標的分子の異なる領域に結合することができる標的特異的結合部分を示す。任意に、付加的な共有結合架橋剤を適用して、結合複合体の強度を増加させることができる。
【0072】
【図4】標的固定化プローブ、標的分子、連結分子、検出可能標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。検出可能標識は反応ペアの第一メンバー、例えばアルキン(またはアジド)で機能化されている。連結分子は標的特異的結合部分と、反応ペアの第二メンバー、例えばアジド(またはアルキン)で機能化されたポリマーを含む。バイオチップ表面を含む基質も反応ペアの第一メンバーで機能化されている。この形態は、連結分子と検出可能な標識との間の共有結合および連結分子とバイオチップ表面を含む基質との間の共有結合の形成を可能にする。
【0073】
【図5】反応ペアのメンバーを含む連結分子を使用して、MTJアレイバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に“固定”することを図示する。XおよびYは反応ペアの第一メンバーおよび第二メンバーをそれぞれ示す。(i)標的核酸がバイオチップ表面の標的固定化プローブ(A)に特異的にハイブリダイズする(B)。(ii)反応ペアの第一メンバーXを備えた連結分子が、捕捉された標的核酸分子にハイブリダイズする(C)。(iii)非共有結合構造体が核酸架橋剤、例えばソラレンで共有結合的に“固定”される(D)。(iv)共有結合構造体(D)を、Xと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバーYで機能化された磁性粒子とインキュベートして、完全に共有結合的に“固定”された構造体を生成する(E)。次いで、磁性粒子の存在をMTJセンサーアレイによって検出する。“n”は複数の括弧でくくられたメンバーを意味する。
【0074】
【図6】反応ペアのメンバーを含む連結分子を使用して、MTJアレイバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に“固定”することを図示する。XおよびYは反応ペアの第一メンバーおよび第二メンバーをそれぞれ示す。図6では、連結分子は必要ではない。代わりに、核酸標的が、反応ペアの第一メンバーを取り込むように、修飾された塩基を用いてPCRを介して増幅される。これらの第一メンバーは、標的固定化プローブおよび磁性粒子に存在する標識プローブに含まれる反応ペアの第二メンバーと反応する。標的核酸は修飾された塩基を用いてPCRを介して増幅され、Xで示す反応ペアの第一メンバーが、結果的に得られるアンプリコン中に導入される(挿入物)。(i)修飾されたアンプリコンはバイオチップ表面の標的固定化プローブに特異的にハイブリダイズする。標的固定化プローブ(A)は、反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができるYで示す反応ペアの一以上の第二メンバーで修飾されている。(ii)非共有結合構造体(B)は、構造体“C”を共有結合的に“固定”するのに適した条件下で反応ペアの第二メンバー(Y)で機能化された磁性粒子とインキュベートされる。次いで、磁性粒子の存在をMTJセンサーアレイによって検出する。“n”は複数の括弧でくくられたメンバーを意味する。
【0075】
【図7】MTJアレイバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に“固定”するための反応ペアの利用に関する別の方法を図示する。図6に示す方法と違って、図7に示す方法は標識プローブを利用しないアプローチについて記載する。代わりに、反応ペアの第一メンバーが、磁性粒子と組み合わせられた反応ペアの第二メンバーと共有結合を形成する。共有結合は、修飾された標的分子と機能化された標的固定化プローブとの間にも形成される。核酸標的は、修飾された塩基を用いてPCRを介して増幅され、Xで示す反応ペアの第一メンバーが、結果的に得られるアンプリコン中に導入される(挿入物)。(i)修飾されたアンプリコンはバイオチップ表面の標的固定化プローブに特異的にハイブリダイズする。標的固定化プローブ(A)は、反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができるYで示す反応ペアの一以上の第二メンバーで修飾されている。(ii)非共有結合構造体(B)は、反応基Yの第二メンバーで修飾された標識プローブで機能化された磁性ビーズと共にインキュベートされて、非共有結合核酸検出構造体(C)を完成する。(iii)適切な条件下で、共有結合を形成し、構造体(D)を共有結合的に“固定”する。次いで、磁性粒子の存在をMTJセンサーアレイによって検出する。“n”は複数の括弧でくくられたメンバーを意味する。
【0076】
【図8】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型の連結分子の直接合成の合成スキームを示す。
【0077】
【図9】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成の合成スキームを示す。
【0078】
【図10】反応ペアの複数の第一メンバーを含む連結分子を形成するための、ODNと分岐型部分との間のコンジュゲート反応を示す。
【0079】
【図11】反応ペアの複数の第一メンバーを含むデンドリマー又は星状オリゴマーへのODNのコンジュゲートによる連結分子の形成を示す。
【0080】
【図12】反応ペアの複数の第一メンバーの接着と、デンドリマー又は星状オリゴマーへのカップリングリンカーの導入を示す。
【0081】
【図13】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成のための様々な単量体Xによるホスホラミダイト化学を使用した合成スキームを示す。
【0082】
【図14】反応ペアの様々な第一メンバーに変換しうる複数のアミノ基を含む分岐型部分の合成スキームを示す。
【0083】
【図15】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成と、標的特異的結合部分とのコンジュゲートについての、図14に示す複数のアミノ基を含む分岐型部分を使用した合成スキームを示す。
【0084】
【図16】ODN標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型連結分子の直接合成のスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
(定義)
文脈に応じて、ここで使用する「基質」なる用語は、例えば磁性粒子などの検出可能な標識(又は、検出可能な標識として働くように修飾される)として機能しうる基質、又は、その後の検出のための標的分子を固定するために用いられうるバイオチップ表面を含む基質を指す。
【0086】
ここで使用する「バイオチップ」なる用語は、対象の他の生物学的分子に結合可能な生物学的分子のアレイによって機能化されている表面を有する固形、通常実質的に平面の支持体を指す。バイオチップの製造には、例えば、ガラススライド、石英ガラス、シリコンおよびプラスチックを含む様々な材料が用いられうる。ここで開示する特定の実施態様では、対象のバイオチップは、バイオチップの表面に固定された標的分子に結合した磁性粒子の存在を検出することができる磁気センサーを含む。例として、Baselt et al., (1998) Biosens. Bioelectron., vol. 13, pp. 731-739;Edelstein et al., (2000) Biosens. Bioelectron., vol. 14, pp. 805-813;Miller et al., (2001) J. Magn. Magn. Mater., vol. 225, pp. 138-144;Graham et al. (2002) J. Appl. Phys., vol. 91, pp. 7786-7788;Ferreira et al. (2003) J. Appl. Phys., vol. 93, pp. 7281;Li et al. (2003) J. Appl. Phys., vol. 93, pp. 7557-7559, May;Li et al. (2004) IEEE Trans. Magn., vol.40, pp. 3000;Wang et al., (2005) J. Magn. Magn. Mater., vol. 293, pp. 731-736;Shen et al. (2005) Appl. Phys. Lett., vol. 86, pp. 253901;Baselt et al. 米国特許第5981297号;Tondra, 米国特許第6743639号;および、Tondra, 米国特許第6875621号を参照のこと。
【0087】
ここで使用する「検出可能な標識」なる用語は、検出が可能な分子又は粒子を指し、限定するものではないが、放射性同位体、蛍光剤、化学発光剤、発色基、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、磁性粒子、特定の結合対のメンバーなどを含む。
【0088】
「連結分子」なる用語は、少なくとも一つの「反応ペアのメンバー」と少なくとも一つの「標的特異的結合部分」とを含む分子を指すためにここで使用する。連結分子との関連で用いる「分子」なる言葉は単一の分子体に限定するものではなく、連結分子を生産するために互い結合した複数の分子を含みうる。
【0089】
「反応ペアのメンバー」なる用語は、第一または第二の官能基を指すものとして使用され、ここで第一および第二の官能基は、共有結合を形成するのに適した条件下で互いと反応する。このような反応ペアは、「共有結合形成反応ペア」とも称される。反応ペアのどちらか一方のメンバーが第一メンバーとして称される場合、残りのメンバーは第二メンバーであると理解され、逆もまた同様であることに注意すべきである。共有結合形成反応ペアの第一および第二メンバーの例は、Rostovtsevら (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41: 2596-2599およびTornoeら (2002) J. Org. Chem. 67: 3057-3064に記載されているCu触媒アジド/アルキン[3+2]付加環化「クリック化学」;Baskinら (2007) PNAS Vol. 104, No. 43: 167393-16797に記載されているアジド/DIFO(二フッ化シクロオクチン)Cuフリークリック化学;Linら (2005) J. Am. Chem. Soc. 127: 2686-2695に記載されているアジド/ホスフィン“シュタウディンガー反応”;SaxonおよびBertozzi (2000) Mar 17 Science 287(5460):2007-10に記載されているアジド/トリアリールホスフィン“修正シュタウディンガー反応”;並びに、Casey (2006) J. of Chem. Edu. Vol. 83, No. 2: 192-195, Lynnら (2000) J. Am. Chem. Soc. 122: 6601-6609, およびChenら (2003) Progress in Chemistry 15: 401-408に記載されている触媒オレフィン交差メタセシス反応を含む。
【0090】
一部の実施態様では、「クリック化学官能基」は、反応ペアの第一および第二メンバーとして特に興味深い。用語「クリック化学官能基」は、それぞれ、アルキン官能基またはアジド官能基との共有結合の形成反応に寄与しうるアジド官能基またはアルキン官能基を指す。また、用語「クリック化学官能基」は、それぞれ、DIFO官能基またはアジド官能基との共有結合の形成反応に寄与しうるアジド官能基またはDIFO官能基を指すためにも使用される。アジド/アルキン共有結合形成反応はCuイオン触媒の存在を必要とするが、アジド/DIFO共有結合形成反応はそのような触媒の使用を必要としない点に注意すべきである。
【0091】
「標的特異的結合部分」は、対象の標的分子又は他の分析物と接触したときに対象の標的分子又は他の分析物に特異的に結合することができる連結分子の領域を指すためにここで使用する。
【0092】
「標的固定化プローブ」なる用語は、基質の表面に結合した実体、例えばバイオチップを指すためにここで使用し、この実体は、標的分子と接触したときに標的分子に特異的に結合することができるものである。
【0093】
「標識プローブ」なる用語は、検出可能な標識に結合された分子を指すものとして使用され、ここで前記分子は標的分子と接触させたときに、標的分子に特異的にかつ少なくとも非共有結合的に結合することができる。ここに記載する一部の実施態様では、標識プローブは反応ペアの一以上の第一または第二メンバーを含む。
【0094】
ここで交換可能に使用する「ポリペプチド」および「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸の重合型を指し、コード化および非コード化アミノ酸、化学的ないし生化学的に修飾されたか又は誘導体化されたアミノ酸、および修飾したペプチド主鎖を有するポリペプチドを含みうる。この用語には、限定するものではないが、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する又は有さない異種性および天然のリーダー配列を有する融合物;免疫学的にタグを付けたタンパク質;検出可能な融合パートナーを有する融合タンパク質、例えば融合パートナーとして蛍光タンパク質であるβガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを含む融合タンパク質などを含む融合タンパク質が含まれる。
【0095】
「核酸」、「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」なる用語は交換可能に用い、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド何れかの任意の長さのヌクレオチドの重合型、又は、2つの天然に生じる核酸と同じように配列特異的な様式で天然に生じる核酸とハイブリダイズすることができる、例えばワトソン−クリック塩基対相互作用に加わることができる、合成によって製造された化合物を指す。ポリヌクレオチドは三次元構造を有し、公知又は未知何れの機能でも発揮しうる。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、遺伝子、遺伝子断片、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファRNA、リボソームRNA、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離したDNA、コントロール領域、任意の配列の単離したRNA、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。
【0096】
「部分(moiety)」なる用語は、典型的に特定の機能的又は構造的な特徴を有する実体又は分子の一部を指すために用いられる。
【0097】
「抗体」、「免疫グロブリン」なる用語およびこれらの複数形は、Fab、Fv、scFv、およびFdフラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、および抗体の抗原結合部分と非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含むがこれらに限定せず、任意のアイソタイプの抗体又はイムノグロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体の断片が含まれる。抗体は、例えば放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素、蛍光タンパク質などにて検出可能に標識されてよい。抗体はさらに、例えばビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対のメンバー)などの特定の結合対のメンバーといった他の部分にコンジュゲートしてよい。また、抗体は、ポリスチレンプレート又はビーズなどを含むがこれらに限定せず、固形支持体に結合していてよい。また、この用語には、Fab'、Fv、F(ab')2、および抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片も包含される。
【0098】
抗体は、例えばFv、Fabおよび2(Fab')2、並びに二官能性(すなわち二特異性)ハイブリッド抗体を含む様々な形態で(例えばLanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))、および単鎖で(例えばHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879-5883 (1988);Bird et al., Science, 242, 423-426 (1988);Hood et al., "Immunology", Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984), and Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)を参照)ありうる。
【0099】
「特異的結合」、「特異的に結合する」などといった用語は、反応混合物中の他の分子又は部分と比較して、第二結合分子又は部分(例えば標的分子又は特異的結合対の第二メンバー)に(共有結合又は非共有結合で)優先的に結合する、第一結合分子又は部分(例えば標的特異的結合部分又は特異的結合対の第一メンバー)の能力を指す。例えば、タンパク質−タンパク質結合相互作用を伴うある実施態様では、結合複合体内で互いに特異的に結合するとき、第一結合分子又は部分と第二結合分子又は部分との間の親和性は、10−6M未満、10−7M未満、10−8M未満、10−9M未満、10−10M未満、10−11M未満、10−12M未満、10−13M未満、10−14M未満、又は10−15M未満のKD(解離係数)によって特徴付けられる。
【0100】
ここで使用する「特異的結合対のメンバー」は特異的結合対相互作用のメンバーである。結合対のいずれか一方のメンバーが第一メンバーとみなされる場合、残りのメンバーが第二メンバーであると考え、その逆も同様であることは注記すべきである。特異的結合対相互作用の例には、抗原/抗体およびハプテン/抗体といった免疫性結合相互作用、並びに相補的核酸結合、ビオチン/アビジンおよびビオチン/ストレプトアビジンのような非免疫性結合相互作用が含まれる。
【0101】
ここで使用する「ハイブリダイズすることができる」、「ハイブリダイズする」および「ハイブリダイゼーション」なる用語は、相補的又は部分的に相補的な核酸分子間の「特異的結合」相互作用(例えばDNA−DNA、RNA−RNA)を指す。
【0102】
「相補的」なる用語は、ポリヌクレオチドの配列に基づいたポリヌクレオチド間の特異的結合の特性を示す。ここで使用するように、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションアッセイにおいて互いに結合する場合、例えばハイブリダイゼーションアッセイにおいて所定又は検出可能なレベルのシグナルが産生する場合に、ポリヌクレオチドは相補的である。従来の塩基対合法則に従う場合、例えばAがT(又はU)と、GがCと対になる場合、ポリヌクレオチドの各部分は各々に相補的である。「相補的」には、絶対的な配列相補性がある実施態様、更に実質的な配列相補性がある実施態様が含まれる。
【0103】
「絶対的な配列相補性」とは、第一ポリヌクレオチドと第二ポリヌクレオチドとの間に100%の配列相補性がある、すなわち、他のポリヌクレオチドとの関連で(相補的な領域に対して)第一および第二いずれかのポリヌクレオチドに挿入、欠失又は置換がないことを意味する。言い換えれば、相補的領域のすべての塩基は、通常の塩基対合法則に従ってその相補的塩基と対になる。
【0104】
「実質的配列相補性」は、他のポリヌクレオチドと比較して(相補的な領域に対して)第一および又は第二のポリヌクレオチドに一又は複数の相対的に小さい(10塩基未満、例えば5塩基未満、典型的には3塩基未満、より典型的には単一塩基)挿入、欠失又は置換を認める。相補的領域は、第一ポリヌクレオチドと第二ポリヌクレオチド(例えば核酸標的分子の異なる配列と連結分子の結合部分)との間で相補的である領域である。相補配列は一般的により大きなポリヌクレオチド内に埋まっているので、2つの相対的に長いポリヌクレオチドはその全長の一部のみに対して相補的であってもよい。相補的領域は典型的に、少なくともおよそ10塩基長、より典型的には少なくともおよそ12塩基長、より典型的には少なくともおよそ15塩基長、さらにより典型的には少なくともおよそ20塩基長であり、又は少なくともおよそ25塩基長であってよい。
【0105】
核酸ハイブリダイゼーションの関係において本明細書中で記載するハイブリダイゼーションは、典型的に「ストリンジェントな条件」下で生じる。「ストリンジェント条件」なる用語は、第一核酸が第二核酸配列に選択的にハイブリダイズし、他の配列にはほとんどあるいはまったくハイブリダイズしない条件を指す。言い換えれば、ここで使用する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、相補的な結合メンバー間、例えば連結分子の結合部分と標的核酸の相補的配列との間の二本鎖を製造するのに適している条件を指す。
【0106】
核酸ハイブリダイゼーションの関連で(例えばアレイ、サザン又はノーザンハイブリダイゼーションにおける)「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、異なる環境パラメーター下で異なる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、例えば、50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDSを含むバッファ中、42℃でのハイブリダイゼーション、又は、5×SSCおよび1%SDSを含むバッファ中、65℃でのハイブリダイゼーション、何れも65℃の0.2×SSCおよび0.1%SDSの洗浄を行うものが含まれる。また、例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、40%ホルムアミド、1M NaClおよび1%SDSのバッファ中、37℃でのハイブリダイゼーションと、1×SSCでの45℃での洗浄を含む。あるいは、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mnM EDTA中、65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーションと、0.1×SSC/0.1%SDS中、68℃での洗浄を実施することもできる。更なる他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、3×SSC(450mM 塩化ナトリウム/45mM クエン酸ナトリウム)中、60℃以上でのハイブリダイゼーション、又は、30%ホルムアミド、1M NaCl、0.5%ナトリウムサルコシン、50mM MES、pH6.5を含む溶液中、42℃でのインキュベーションが含まれる。当業者であれば、別であるが同程度のハイブリダイゼーションと洗浄の条件を用いて、同様なストリンジェンシーの条件が得られることを理解するであろう。
【0107】
ある実施態様では、洗浄状態のストリンジェンシーは、核酸分子が特異的にハイブリダイズする程度に影響しうる。適切な洗浄条件には、例えば、pH7のおよそ0.02モルの塩濃度と少なくともおよそ50℃又はおよそ55℃からおよそ60℃の温度;又は、およそ0.15M NaClの塩濃度、72℃、およそ15分間;又は、およそ0.2×SSCの塩濃度、少なくともおよそ50℃又はおよそ55℃からおよそ60℃の温度、およそ1からおよそ20分間;又は、0.1%SDSを含むおよそ0.1×SSCの塩濃度を有する溶液にて、20から50℃、1から15分間複数回洗浄;又は同等な条件が含まれる。また、洗浄のためのストリンジェント条件は、例えば0.2×SSC/0.1%SDS、42℃であってよい。核酸分子がオリゴデオキシヌクレオチド(例えばデオキシリボヌクレオチドサブユニットから構成するオリゴヌクレオチド)である例では、ストリンジェント条件は、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基オリゴのとき)、48℃(17塩基オリゴのとき)、55℃(20塩基オリゴのとき)、および60℃(23塩基オリゴのとき)での洗浄を含む。等価ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件の詳細、試薬やバッファ、例えばSSCバッファおよび等価試薬および条件については、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, (1989) Cold Spring Harbor, N. Y.)を参照のとこ。
【0108】
また、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、反復配列を抑えるための複雑性低減核酸との水性核酸の「プレハイブリダイゼーション」が含まれる。例えば、あるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、表面に結合したポリヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションの前に、Cot-1 DNAと、又は、ランダム配列合成オリゴヌクレオチド等(例えば25mer)とのハイブリダイゼーションを含む。
【0109】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、上記の代表的な条件と少なくとも同じくらいストリンジェントであるハイブリダイゼーション条件であり、この条件は、上記のあるストリンジェントな条件と少なくともおよそ80%、典型的には少なくともおよそ90%同じくらいストリンジェントである場合に少なくともストリンジェントであるとみなす。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当分野で公知であり、必要に応じて用いてもよい。
【0110】
ここで使用する「結合する」および「結合した」なる用語は、2以上の実体間の結合相互作用を指す。2つの実体、例えば分子が互いに結合する場合、例えば共有結合、イオン結合、水素結合、静電気的相互作用、疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス力又はこれらの組合せにより「直接結合」してもよいし、例えば中間連結部分の使用により「間接的に結合」してもよい。
【0111】
「検出」、「検出する」などの用語は、定量的並びに定質的な測定値を包含する。
【0112】
本発明をさらに記載する前に、本発明は記載された特定の実施態様に限定されるものではなく、もちろん変化しうることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、ここで使用する用語は特定の実施態様のみを記載するためのものであり、限定するためのものではないことも理解されるべきである。
【0113】
値の範囲を示す場合、特に明確に示さない限り、その範囲の上限と下限の間の下限の10分の1の単位までの各介在値、および他の示す値かあるいは示した範囲内の介在値は、本発明の範囲内に包含される。これらの小さい範囲の上限および下限はそれぞれ、その小さい範囲内に含まれ、本発明にも包含され、その示す範囲の限定が明示的に除かれる。示す範囲がその限界値の一又は両方を含む場合、これらの含まれる限界値の何れか又は両方を除く範囲もまた本発明に含まれる。
【0114】
特別に定義しない限り、ここで使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の技術者によって共通して理解される意味と同じである。また、ここに記載するものと同様又は等価な方法および材料はいずれも本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法および材料をここに記載する。この文脈で「好適な」なる用語の使用は、いずれの場合であっても本発明の範囲を限定するものではないことを注記する。
ここで示したすべての出版物は、関連して出版物が引用される方法および/又は材料を開示および記載するために、出典明記によってここに援用される。
【0115】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形の「a」、「and」および「the」は、特に明示しない限り、複数形を含むことを注記する。ゆえに、例えば「連結分子」を指す言葉には複数の該連結分子が含まれ、「結合複合体」を指す言葉には一又は複数の結合複合体および当分野の技術者に公知なその等価物などが含まれる。さらに、特許請求の範囲は任意の要素を除くために記載されていることを注記する。よって、この記述は、「単に」や「のみ」といった排他的な用語およびクレームする要素の記載と関連するものの使用、又は「ネガティブな」限定の使用の例示となるものである。
【0116】
ここで論じる出版物は単に、本出願の出願日前の開示内容のために示す。ここで、本発明が先行発明によってこれら出版物に先行する権利がないと認めているものではない。さらに、示した出版物の日付は、第三者的な機関によって確認することが必要である実際の出版日と異なっていてもよい。
【0117】
以下の詳細な記載は、当分野の技術者に、本発明の製造および使用方法についての完全な開示および記載を提供するために示すものであり、発明者が発明として認める範囲を限定するためのものではない。特に示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧あるいは大気圧付近である。例えば、bp、塩基対;kb、キロベース;pl、ピコリットル;s又はsec、秒;min、分;h又はhr、時間;aa、アミノ酸;kb、キロベース;bp、塩基対;nt、ヌクレオチドなどといった標準の略語を用いてよい。
【0118】
(詳細な説明)
本開示内容は、標的分子および基質を含む結合複合体を形成する強度および/又は可能性を増すために用いられうる方法および組成物に関する。一態様では、複合体内結合相互作用の数を増やすために用いられうる連結分子が開示される。複合体間架橋、すなわち2以上の異なる結合複合体の架橋は、開示した結合複合体をさらに強くし、安定化するための方法と関連して利用してよい。
【0119】
複数の複合体内結合相互作用部位を有する標的分子−基質複合体の形成
一態様では、本開示内容は、標的分子および一又は複数の基質を含む結合複合体を製造するために利用されうる方法および組成物であって、この結合複合体は複数の複合体内結合相互作用部位を有するものである方法および組成物に関する。一又は複数の連結分子を利用して、標的分子−基質結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を作製する。ある実施態様では、一又は複数の連結分子を用いて、標的分子と検出可能な標識を含む結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を提供する。他の実施態様では、一又は複数の連結分子を用いて、標的分子とバイオチップ表面を含む結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を提供する。これらの実施態様は、標的分子の有無および/又は定量を検出するために設計されたアッセイといった特定のアッセイにおいて別々又は一緒に用いられてよい。
【0120】
一又は複数の連結分子を用いて、標的分子および検出可能な標識を含む結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を提供する場合、この連結分子は、一又は複数の検出可能な標識実体が連結分子(一又は複数)を介して標的分子を結合するように設計されてよい。例えば、一実施態様では、単一の検出可能な標識実体、例えば単一の磁性粒子のみが、連結分子(一又は複数)を介して特定の標的分子に結合している。他の実施態様では、複数の検出可能な標識実体が連結分子(一又は複数)を介して特定の標的分子に結合している。
【0121】
様々な分子標的は、核酸およびタンパク質標的を含むがこれに限らず現在開示されている方法および組成物と関連して利用されてよい。
【0122】
核酸連結分子
標的分子が核酸である場合、核酸連結分子を用いて、複数の複合体内結合部位を有する核酸標的分子−基質複合体を形成することができる。対象となるある類型の核酸連結分子は、対象の核酸標的分子に対して適切な条件下で特異的にハイブリダイズする単一の標的特異的結合部分を含む。このような核酸連結分子は、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、ここで反応ペアの第一メンバーは共有結合を形成するのに適した条件下で反応ペアの第二メンバーと反応する。対象となる別の核酸連結分子は、複数の標的特異的結合部分を含み、ここで各標的特異的結合部分は、対象の核酸標的分子の異なる領域に対して適切な条件下で特異的にハイブリダイズする。このような核酸連結分子は、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、ここで反応ペアの第一メンバーは共有結合を形成するのに適した条件下で反応ペアの第二メンバーと反応する。
【0123】
複数の核酸連結分子を使用することができ、ここで複数の核酸連結分子の各核酸連結分子は標的特異的結合部分を含む。各標的特異的結合部分は、核酸標的分子の異なる配列に特異的に結合することができる核酸配列を含む。また複数の連結分子のそれぞれは、反応ペアの第二メンバーと適切な条件下で反応して共有結合を形成することができる反応ペアの第一メンバーを含む。一般に、反応ペアのこのような複数の第二メンバーを含む。複数の連結分子は、標的分子の複数の異なる領域に結合し、かつ、基質に結合した反応ペアの第二メンバーと複数の共有結合を形成することができるように設計されている。こうして、複数の複合体内結合部位を有する核酸標的分子-基質複合体を形成することができる。
【0124】
図1および2Aは、本明細書において開示される核酸連結分子の特定の実施態様を利用した結合相互作用を例示する。
【0125】
図1は、二つの異なる基質の利用を示す。第一の基質は検出可能な標識、例えば磁性粒子であり、第二の基質は標的固定化プローブを含むバイオチップ表面を含む。この例では、連結分子は、対象の核酸標的分子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む単一の標的特異的結合部分を含む。連結分子は図中「X」で示される反応ペアの複数の第一メンバーを含む。これらの第一メンバーは図中「Y」で示される反応ペアの第二メンバーと適切な条件下で共有結合を形成することができる。
【0126】
図2Aは、検出可能な標識と、バイオチップ表面を含む基質の利用を示す。図2Aは、標的固定化プローブ、核酸標的分子、複数の連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。図2Aに示されている複数の連結分子のそれぞれは、単一の標的特異的結合部分と、特異的な結合ペアの複数の第一メンバーとを含む。図2Aは反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間の共有結合形成を図示しており、ここで反応ペアの第二メンバーは検出可能な標識と標的固定化プローブの両方に含まれている。この形態は、連結分子と検出可能な標識との間に形成される共有結合、並びに連結分子とバイオチップ表面を含む基質上の標的固定化プローブとの間に形成される共有結合を介して結合強度の増強を可能にする。
【0127】
複数の連結分子を利用する場合、反応ペアのメンバーを介して連結分子が基質に結合する位置によって、標的分子に対する連結分子のポジショニングが標的分子との結合前に著しい影響を受けることがないように、基質と接触させる前に複数の連結分子を標的分子(または標的分子を含むと思われる試料)に接触させてもよい。
【0128】
核酸連結分子の調製
現在開示されている連結分子の標的特異的結合部分には、DNA、RNA、これらのアナログ、修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せが含まれうる。
【0129】
連結分子の結合部分は、ホスホジエステル結合、又は、核酸、アミノ酸、糖質ないしはポリオール架橋のような一又は複数の他の試薬、又は、核酸ないしは修飾核酸鎖を架橋結合することができる他の架橋剤によって、互いに直接共有結合的に連結されてよい。結合の部位(一又は複数)が、結合部分の端、および/又は鎖の一又は複数の内部ヌクレオチドであってよい。
【0130】
現在開示されている連結分子の結合部分は、およそ10〜およそ80のヌクレオチド長の核酸配列を含んでいてよい。例えば、第一および/又は第二の結合部分は、およそ10からおよそ20、およそ20からおよそ30、およそ30からおよそ40、およそ40からおよそ50、およそ50からおよそ60、およそ60からおよそ70、又はおよそ70〜およそ80のヌクレオチド長の核酸配列を含んでいてよい。より典型的には、現在開示されている連結分子の第一および/又は第二の結合部分は、およそ10からおよそ60のヌクレオチド長、更に典型的にはおよそ10からおよそ45のヌクレオチド長の配列を含む。
【0131】
開示された連結分子が複数の標的特異的結合部分を含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の標的特異的結合部分を含むことができる。
【0132】
開示された連結分子が反応ペアの複数の第一メンバーを含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の反応ペアの第一メンバーを含むことができる。
【0133】
ある実施態様では、本明細書において開示される核酸連結分子は、線形構造で調製される。線形核酸連結分子は、当分野で公知の様々な技術を用いて調製されてよい。例えば、連結分子は、ポリメラーゼ増幅(例えばPCR)、クローニング技術、化学的架橋、酵素的アセンブリ、直接的な化学合成又はこれらの組合せを用いることによって調製されうる。
【0134】
核酸連結分子をポリメラーゼ増幅又はクローニングによって調製する場合、すべての連結分子をコードする核酸配列又はその断片は従来の手順によって一本鎖又は二本鎖の形態で作製されてよい。二本鎖の形態で作製する場合、連結分子および/又はその断片は、最終的に修飾するか、又はエキソヌクレアーゼによって消化して、一本鎖の連結分子および/又はその断片とする。また、核酸連結分子は、M13といった従来の一本鎖ファージベクターを用いて一本鎖の形態でクローニングされてよい。断片を酵素的又は化学的に連結して、連結分子を形成してもよい。酵素的にアセンブリする場合、個々の断片は、T4 DNA又はRNAリガーゼといったリガーゼによってライゲートしてよい。化学的架橋によって調製する場合、個体断片は、連結部位を提供する官能基を有するように誘導体化された一又は複数の核酸によって合成してもよいし、又は、このような部位を提供するように断片を合成した後に断片を誘導体化してもよい。
【0135】
また、本開示内容の連結分子は、分岐型構造で設計され、構築されてよい。分岐型連結分子は、5'末端、3'末端又はこれらの組合せである、少なくとも3つの末端を有するという点で、線形連結分子と区別される。分岐型核酸分子の調製方法は、1992年6月23日発行の米国特許第5124246号、8−13および18−25の段落に示されており、これは分岐型の多量体調製の説明のために出典明記によってここに援用される。更に、1996年12月3日発行の米国特許第5580731号は、現在開示された分岐型連結分子の合成に使われうるN−4修飾ピリミジンヌクレオチドの説明のために出典明記によってここに援用される。
【0136】
また、分岐型連結分子は、デンドリマー的なオリゴヌクレオチドの形態で調製されてよい。例として、Shchepinov et al. (1997) Nucleic Acids Research 25(22): 4447-4454を参照のこと。ここでは、著者は複数の保護した一次水酸基を有する分岐型ホスホラミダイトを利用して従来のモノマー的なオリゴヌクレオチドの上にデンドリマーの頭部の合成を記述する。また、デンドリマーオリゴヌクレオチドの他の種類とその調製を記載しているShchepinov et al. (1999) Nucleic Acids Research 27(15): 3035-3041も参照のこと。これらの参考文献は、デンドリマーオリゴヌクレオチドとその調製の説明のために、出典明記によってここに援用される。
【0137】
更に、分岐型連結分子は、アビジン/ストレプトアビジンとビオチン化核酸の組合せを使用して調製されてよい。例えば、個々のアビジン/ストレプトアビジン分子は、アビジン/ストレプトアビジン− ビオチン相互作用により、4つのビオチン化された核酸に連結されてよい。この種の連結分子は、4つのビオチン化核酸のうちの1つが対象の核酸標的分子の異なる領域に特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含み、その一方で、残りの3つのビオチン化核酸が反応ペアの第一メンバーで機能化された核酸を含むように、調製されてよい。
【0138】
また、核酸連結分子は、コンジュゲート、ライゲーション又はポリメリゼーションといった化学的又は酵素的な技術を使用して調製してよい。これらの化学的又は酵素的な技術は、線形および様々な分岐型の形態で複数の部位を形成するために応用してよい。
【0139】
図8−12は、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(又はそのアナログ)標的特異的結合部分と、反応ペアの複数の第一メンバーとを含む様々な「分岐型」および「星型」連結分子の合成スキームを示す。これらの連結分子は、ODN(又はそのアナログ)での直接合成によっても二工程合成方法によってでも調製され得、この二工程合成方法では、ビオチン分子を含む分岐型又は星型の部分は修飾したODN(又はそのアナログ)から別々に調製され、2つの成分はその後コンジュゲートされて、標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む連結分子が形成される。
【0140】
図8は、分岐型部分が固形支持体に結合したODN上へ直接合成される分岐型連結分子の調製についての直接合成スキームを示す。分岐型連結分子は、様々な公知の固形支持体又はインサイツ合成方法によって合成されてよい。
【0141】
図9は、反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成を示す。図10に示すように、この分岐型部分は、その後、ODNにコンジュゲートされ、連結分子を形成する。様々な官能基およびコンジュゲート化学、例えばクリック化学、チオおよびマレイミド、チオおよびブロモ−アルキル、アルデヒドおよびヒドラジンないしヒドラジド、アミンおよびNHSエステル、ジスルフィド結合形成、ディールスアルダー反応などはこのコンジュゲートを促すために有用である。これらの反応の官能基は図10に示したXおよびZである。
【0142】
また、連結分子は、反応ペアの複数の第一メンバーを含むデンドリマー(樹状)又は星状のオリゴマーに修飾したODNをコンジュゲートさせることによって合成されてもよい。図11および12は共に、反応ペアの複数の第一メンバーによりデンドリマー又は星状のオリゴマーを合成ないし修飾した後、修飾したオリゴヌクレオチドとコンジュゲートする二工程方法を示す。XおよびZは、例えばクリック化学、チオおよびマレイミド、チオおよびブロモ−アルキル、アルデヒドおよびヒドロジンないしヒドロジド、アミンおよびNHSエステル、ジスルフィド結合形成、ディールスアルダー反応などを用いたコンジュゲートに適切である官能基を表す。
【0143】
抗体連結分子
タンパク質標的に関して、修飾された抗体を連結分子として使用することができる。これらの連結分子は、複数の結合部位を形成して、比較的大きな実体、例えば磁性粒子を含む基質に対する結合効率および強度を増強するために使用することができる。
【0144】
対象となる抗体連結分子の一例は、標的タンパク質に特異的な一以上の標的特異的結合部分を含み、かつ、反応ペアの一以上の第一メンバーを含む、抗体連結分子である。
【0145】
開示された連結分子が複数の標的特異的結合部分を含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の標的特異的結合部分を含むことができる。
【0146】
開示された連結分子が反応ペアの複数の第一メンバーを含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の反応ペアの第一メンバーを含むことができる。
【0147】
別の例としては、複数の抗体連結分子が開示されており、ここで複数の抗体連結分子の各抗体連結分子が反応ペアの第一メンバーと標的特異的結合部分とを含み、標的特異的結合部分が、複数の抗体連結分子の別のメンバーとは、標的タンパク質の異なる領域に適切な条件下で結合する。このような連結分子によって形成される結合複合体の例示を図2Bおよび3に示す。
【0148】
複数の連結分子を利用する場合、反応ペアのメンバーを介して連結分子が基質に結合する位置によって、標的分子に対する連結分子のポジショニングが標的分子との結合前に著しい影響を受けることがないように、基質と接触させる前に複数の連結分子を標的分子(または標的分子を含むと思われる試料)に接触させてもよい。
【0149】
抗体連結分子の標的特異的結合部分は、タンパク質標的分子のエピトープに特異的に結合することができる、抗体の結合ドメインまたはそのフラグメント、例えばFv領域、を含むことができる。
【0150】
例として、複数の連結分子を利用する場合、複数の抗体連結分子の各メンバーがタンパク質標的分子の異なる領域に結合することができるように、連結分子の標的特異的結合部分によって結合されたエピトープがオーバーラップしないものである。
【0151】
別の抗体連結分子の例では、特異的結合対のメンバーが、ウシ血清アルブミンまたはデンドリマーのようなキャリアーに結合されてもよい。次いで、キャリアーが、標的分子の領域に特異的な抗体に結合されうる。この増幅サイクルを一回以上適用して、所望とするレベルの結合増強をもたらす連結分子を製造することができる。
【0152】
対象の特異的な結合ペアは、例えば、特異的抗体に認識されるポリペプチドおよび種々のハプテン(例えば、フルオレセンまたはジゴキシゲン)、結合レセプターに対するリガンド、ストレプトアビジンまたはアビジンに対するビオチン、並びに、相補的配列とのハイブリダイゼーションのためのオリゴヌクレオチドを含む。
【0153】
特定の実施態様では、開示された方法及び組成物において利用された連結分子は、タンパク質の翻訳後修飾の間にタンパク質に付加された部分と結合又は反応する。例えば、ある実施態様では、開示された連結分子は、翻訳後修飾の間にタンパク質に付加されたグリコシル基又は糖質と結合又は反応する。別の実施態様では、開示された方法及び組成物において利用された連結分子は、タンパク質の翻訳後修飾の間にタンパク質に付加された部分と結合又は反応しない。例えば、ある実施態様では、開示された連結分子は、翻訳後修飾の間にタンパク質に付加されたグリコシル基又は糖質と結合又は反応しない。
【0154】
抗体連結分子の調製
ここに開示される抗体連結分子の調製に利用できる種々の技術が知られている。例えば、抗体の調製及び標識化の一般的な方法については、Harlow, E. & Lane, D. 1998. Antibodies: A Laboratory Manual. New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。
【0155】
さらに、ポリペプチドに特異的な結合ペアメンバーおよび反応ペアメンバーを導入する方法が当該技術分野において知られている。抗体をビオチンで標識化する方法については、Harlow, E. & Lane, D. 1998. Antibodies: A Laboratory Manual. New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。ポリペプチドにアジド/アルキン結合ペアメンバーを取り込むことについては、Wang, Q. et al. (2003) J. Am. Chem. Soc. 125: 3192-3193を参照(参照としてここに含める)。タンパク質修飾およびコンジュゲートのより一般的な方法については、Greg T. Hermanson Bioconjugate Techniques, published by Academic Press 1996を参照。
【0156】
抗体結合に適した条件についても、当該技術分野において周知である。例えば、Harlow and Lane (Using Antibodies: A Laboratory Manual, CSHL Press, 1999); Harlow et al. (Antibodies: A Laboratory Manual, First Edition (1988) Cold spring Harbor, N.Y. Harlow, Sambrook and Ausubel, supra); Sambrook, et al, (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (2001) Cold Spring Harbor, N.Y.); およびAusubel, et al, (Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, 1995)を参照。
【0157】
標識プローブ
ここに記載した一部の実施態様では、対象の標的分子に検出可能な標識を非共有結合的に結合させるために標識プローブが利用される。標識プローブは、検出可能な標識に結合した分子であり、ここで前記分子は適切な条件下で標的分子と接触させたときに標的分子に特異的かつ少なくとも非共有結合的に結合することができる。標識プローブが核酸配列含む場合、プローブは典型的には約10から約80塩基の長さである。例えば、粒子標識にコンジュゲートした核酸分子は、約10から約20、約20から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約60、約60から約70、または約70から約80ヌクレオチドの長さである。より典型的には、粒子標識にコンジュゲートした核酸分子は、約10から約60ヌクレオチドの長さであり、さらに典型的には約10から約45ヌクレオチドの長さである。
【0158】
検出可能な標識
開示した方法および組成物と関連して利用されうる当分野で公知の様々な検出可能な標識がある。これらには、例えば放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、発色団、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素インヒビター、金属イオン、磁性粒子、特定の結合対のメンバーなどが含まれる。
【0159】
検出可能な標識は、微粒子又はナノ粒子といった粒子の形態であってよい。磁性粒子が本明細書において開示する方法および/又は組成物に利用される場合、磁性粒子は、例えば、磁気ナノ粒子又は微粒子であってもよい。磁性粒子には、例えば、磁気ビーズ又は、強磁性体、フェリ磁性体、常磁性体、又はスーパー常磁性体といった磁性体から造られた他の小さい物体が含まれる。ある実施態様では、磁性粒子は、およそ10ナノメートルからおよそ100マイクロメートルの直径を有する酸化鉄(Fe2O3および/又はFe3O4)を含む。磁気ナノ粒子は、例えばベルギッシュグラートバハ、ドイツのミルテニーバイオテク社から入手可能である。典型的にはおよそ5からおよそ500ナノメートルの直径の、コートされた単一ドメイン酸化鉄粒子から造られた相対的に小さい粒子がある。また、磁性粒子は、ポリスチレンといった高分子マトリックスに包埋された磁気ナノ粒子から造られてよい。およそ0.2〜およそ5マイクロメートルの直径を有する典型的に滑らかで一般に球状である。この種の粒子は、カリフォルニア州カールズバッドのインヴィトロジェン社から入手可能である。磁性粒子の他の例には、Baselt et al. (1998) Biosensors & Bioelectronics 13: 731-739、Edelstein et al. (2000) Biosensors & Bioelectronics 14: 805-813、Miller et al. (2001) J. of Magnetism and Magnetic Materials 225: 138-144、Graham et al. (2002) J. Appl. Phys. 91: 7786-7788、Ferreira et al. (2003) J. Appl. Phys. 93, pp. 7281-7286および米国公開特許2005/0100930(2005年5月12日公開)によって記述されるものが含まれる。
【0160】
一態様では、およそ10ナノメートル〜およそ1000ナノメートルの平均直径を有する磁性粒子、例えばおよそ100ナノメートル〜およそ900ナノメートル、およそ200ナノメートル〜およそ800ナノメートル、およそ300ナノメートル〜およそ700ナノメートル、およそ400ナノメートル〜およそ600ナノメートル又はおよそ500ナノメートルの平均直径を有する磁性粒子が、開示した方法および組成物に利用される。
【0161】
結合複合体を強化および/又は安定させる架橋結合
結合複合体の強度および/又は安定性は、架橋結合および強い共有結合の導入によって増加しうる。これらの技術はここに記載する連結部分と組み合わせてもしくは単独で用いて、強力で安定した標的分子−基質結合複合体、例えば、標的分子−検出可能な標識複合体及び/又は標的分子-バイオチップ表面結合複合体、を提供することができる。
【0162】
例えば、単一の標的分子−基質結合複合体に見られる2以上の結合実体間の結合相互作用は、一又は複数の架橋剤の導入により強化および/又は安定化されうる。この種の架橋は「複合体内架橋結合」として記載されうる。ある実施態様では、この「複合体内架橋結合」は分子内複合体内への共有結合の導入を伴う。例えば、検出可能な標識を含む基質と接触する前に一又は複数の連結分子によりバイオチップ表面に結合した標的を安定させることが望ましい。ある実施態様では、検出可能な標識が一又は複数の連結分子によって標的分子に結合した後に、結合複合体をさらに安定化することが望ましい。
【0163】
また、開示内容は、「複合体間架橋結合」を導入するために架橋剤を使用することを考慮する。例えば、一実施態様では、単一の複合体は、式A−B−C−Dによって表され得、ここでAは複数の標的固定化プローブを含むバイオチップ表面、Bは標的分子、Cは一又は複数の連結分子、Dは検出可能な標識である。この単一の複合体は、架橋剤の導入により基質表面に存在する一又は複数の他の複合体に連結してもよい。
【0164】
共有結合の導入による架橋結合
架橋剤は、結合複合体のメンバー間および/又は複合体間での共有結合の形成を容易にするために導入されてよい。共有結合は、通常300〜400kJ/molの範囲である。これらの結合は、レセプターとそのリガンドとの間、タンパク質とタンパク質との間、又は複数のハイブリダイズした二本鎖核酸間の非共有結合相互作用より何倍も強い。
【0165】
例として、図2および4のそれぞれは、開示された結合複合体において付加的な共有結合を導入するための架橋剤の使用に関する例示的な実施態様を示す。これらの実施例では、反応ペアのメンバーが、連結分子と検出可能な標識との間に共有結合を形成するだけでなく、連結分子とバイオチップ表面上に存在する反応ペアのメンバーとの間に共有結合を形成するためにも利用される。
【0166】
図2および4は特定の連結分子の実施態様に関する架橋を示すものであるが、このような架橋は、ここに開示されたあらゆる連結分子の実施態様を含む複合体に適用できると解すべきである。
【0167】
結合対相互作用を形成する様々な共有結合は、Cu触媒アジド/アルキン[3+2]付加環化「クリック化学」、アジド/DIFO(ジフッ化シクロオクチン)Cuフリークリック化学、アジド/ホスフィン「シュタウディンガー反応」、アジド/トリアリールホスフィン「修飾シュタウディンガー反応」、および触媒されたオレフィンクロスメタセシスを含め、当分野で公知である。これらの結合対反応は、共有結合を導入するために利用して、(標的)−(連結分子)−(基質)結合複合体のメンバー間の相互作用を安定化および/又は強化する。当業者は、これらの反応のいくつか、例えばCu触媒アジド/アルキン[3+2]付加環化が結合対相互作用を触媒するために触媒剤の添加が必要であるのに対して、アジド/DIFO反応のような他のものはその必要がないことは理解するであろう。
【0168】
図5は、架橋剤の導入によりハイブリダイズした核酸鎖間に共有結合が形成される例示的な実施態様を示す。ハイブリダイズした核酸の鎖間、核酸とタンパク質との間、および異なるタンパク質分子間を架橋結合させるために用いられる当分野で有用な様々な試薬がある。異なる長さの架橋剤および官能基の組合せは、市販されている。
【0169】
例えば、光化学付加により共有結合核酸付加物を形成する光変異原性化合物の種類であるソラレンが利用されてよい。一次反応は、DNAのチミジンの5,6二重結合とソラレンの4',5'ないしは3,4何れかの二重結合との間でのシクロブタン環形成である。4',5'二重結合での反応によりフラン-側単一付加物が作製される。これは、対する鎖上に隣接するピリミジンを有する部位でさらに反応し、鎖間架橋が造られる。Spielmann et al. (1995) Proc. Natl. Acad. ScL USA Vol. 92, pp. 2345-2349。また、8-メトキシソラレンからのペプチド核酸(PNA)を含むソラレンの合成を記載している、Okamoto et al. (2001) Org. Lett. Mar 22;3(6): 925-7を参照のこと。鎖端にソラレン単位を含有するPNAは、相補的なDNAを有する安定した二体鎖を形成する。更なる機能性を有するソラレンも合成されている。例えば、Saffran et al. (1988) Nucleic Acids Research;16(l5): 7221-31は、ビオチン化したソラレン(BPsor)の合成を記述する。BPsorはDNAと光反応して鎖間架橋結合を形成する一方で、その後ストレプトアビジン分子と反応することができる付着したビオチンの形態で更なる結合機能性を提供する。
【0170】
また、ハイブリダイズした核酸分子の架橋結合は、米国特許第6800768号(2004年10月5日に発行)に記載されるように実施されてよい。この特許文献では、非ヌクレオシド光活性クマリン誘導体が核酸に組み込まれて架橋を促している。
【0171】
あるいは、特定の架橋結合条件の必要性に合うように架橋剤を設定し、合成してもよい。
【0172】
Pendergrast et al. (1992) Proc. Natl Acad. ScL USA Vol. 89, pp.10287-10291に記載されるように、光架橋結合は、また、タンパク質と核酸との間の結合相互作用を安定させるために利用されてよい。具体的には、Pedergrast et al.は、部位特異的突然変異とその後のシステイン特異的化学修飾からなる二工程手順によってタンパク質内の単一のアミノ酸で光反応性架橋剤を組み込む。まず、部位特異的突然変異を用いて、対象の位置に特定の溶媒へのアクセス可能なシステイン残基を導入する。それから、結果として生じたタンパク質を、システイン特異的異種二機能化光反応性架橋剤、例えば4-アジドフェナシル臭化物にて誘導体化する。定められた条件下で、特定の溶媒へのアクセス可能なシステイン残基を有するタンパク質と4-アジドフェナシル臭化物とが反応して、システイン残基の完全かつ非常に選択的な誘導体化が生じ、[(4-アジドフェナシル)-Cys]タンパク質形態のコンジュゲートが得られる。それから、タンパク質−DNA複合体を形成し、タンパク質−DNA複合体をUV照射して架橋結合を導入する。
【0173】
架橋剤は、異なる独立した試薬として応用されてよい。あるいは、架橋結合官能基は、連結分子、標的固定化プローブ、基質などに直接コンジュゲートしてよい。官能基は、所望の時に適用される光、pH変化又は特定の化学物質といった投入による命令で活性化されうる。さらに、本明細書に開示される結合部分および/又は連結分子は、選択する架橋剤の適用に適するように設計されうる。例えば、核酸を含む標的特異的結合部分へのタンパク質又は他の化学物質実体のコンジュゲートにより、架橋剤の選択性が拡がり、本来は核酸に適用できないものも適用可能となる。
【0174】
相補的核酸の導入
ハイブリダイズした一組の鎖の間の結合強度は抗体−抗原結合対のような多くの非共有結合対の結合強度を超えるように設計できるので、相補的核酸配列を導入して、結合複合体間の結合の強度を上げることができる。例えば、選択された配列を有する核酸を、抗体連結分子のような連結分子にコンジュゲートすることができる。二以上の連結分子にコンジュゲートした配列に相補的な核酸領域を含む分子を、複合体間及び/又は複合体内の架橋結合の形成に利用することができる。このような核酸は、適切にハイブリダイゼーションさせるために好適な長さに設計してよい。これは、所望の長さのリンカー切片を架橋核酸に挿入することによって達成されうる。リンカー切片は、ヌクレオチドおよびポリエチレングリコールといったポリマーを含む任意の好適な物質を含みうる。
【0175】
複数の複合体内結合相互作用部位を有する標的分子−基質複合体の作製方法
本明細書中に記載する連結分子は、複数の複合体内結合相互作用部位を有する標的−基質複合体を作製するように設計された方法において使用される。これらの方法は、例えば試料中における特定の標的分子の有無を決定するために設計されたアッセイと組み合わせて使用されうる。また、開示した方法を用いて、特定の試料中における特定の標的分子の量を量的に決定することができる。一般に、本明細書中に記載する方法は、本明細書中に記載する、標的分子、一又は複数の機能化基質および一又は複数の連結分子を含有すると思われる試料を反応混合物に混合することを含む。
【0176】
一実施態様では、この方法は、2つの異なる種類の基質を利用する。第一の種類はバイオチップ表面を含み、第二の種類は検出可能な標識であるか又は検出可能な標識を含むように修飾されている。標的分子を含むと思われる試料は、本明細書中に記載する一又は複数の連結分子と反応混合物中で組合わす。十分な時間をおいて、連結分子を(存在する場合には)標的分子に結合させた後、反応混合物を、本明細書中に記載のバイオチップ表面を含む基質と接触させる。バイオチップ表面は、一又は複数の標的固定化プローブによって機能化されてよい。標的固定化プローブを利用する場合、(標的分子)−(連結分子)複合体は標的固定化プローブによって直接結合されていてよい。ついで、反応混合物を、第二種類の基質、すなわち検出可能な標識と接触させることができる。検出可能な標識に存在する反応ペアのメンバーにより、標的分子に結合した一又は複数の連結分子への結合が可能になる。この様式で、標的分子と検出可能な標識を含む固定された複合体が形成される。ついで、検出可能な標識の存在および/又は量は、例えばバイオチップに組み込まれる磁気センサーの使用により、当分野で公知の様々な方法に従って検出されうる。
【0177】
ある実施態様では、一又は複数の上記の結合工程の後に一又は複数の洗浄工程を行い、非特異的に結合した分子を除去する。
【0178】
いくつかの実施態様は標的固定化プローブを利用してバイオチップ表面上の標的分子を固定しているが、バイオチップ表面に結合した一又は複数の反応ペアのメンバーと組み合わせて一又は複数の連結分子を使用して、バイオチップ表面上の標的分子も固定されうることを注記する。よって、ある実施態様では、開示された方法により結合複合体が形成される。この複合体では、バイオチップ表面上の反応ペアのメンバーに結合する一以上の連結分子により標的分子はバイオチップ表面に結合しており、そして、検出可能な標識上の反応ペアのメンバーに結合する一以上の連結分子によって検出可能な標識は標的分子に結合している。
【0179】
標的分子と基質との間に共有結合相互作用を導入して検出可能な共有結合複合体を生成する
架橋剤、例えばソラレン、及び/又は反応ペアのメンバー、例えばアジド/アルキン[3+2]付加環化「クリック化学」を用いた共有結合の導入を使用して、標的分子と基質との間の結合相互作用の強度を増強させることができる。これらの技術を、単独またはここに記載されている連結分子と組み合わせて使用して、検出可能な標識、標的分子、およびバイオチップ基質を含む安定化された結合複合体を製造することができる。
【0180】
例えば、クリック化学を全体的または部分的に利用して、標的分子の粒子ベース検出を増強するために強固な共有結合構造を形成することができる。図5は、標的核酸配列を捕捉および標識するための磁性粒子によって例示される、標的固定化プローブ、連結分子、および検出可能な標識を使用した結合複合体の形成を説明するものである。図5は核酸標的分子を含む複合体の形成を図示するものであるが、一般的な方法工程は他の標的、例えばタンパク質標的、に等しく適用できる点に注意すべきである。二種類の構造の共有的「固定化」が示されている。これらの種類の共有結合的「固定化」は単独でも組み合わせても使用することができる。
【0181】
図5に示される例示的な実施態様では、核酸標的分子がバイオチップ表面の標的固定化プローブとハイブリダイズし、次いで、連結分子とハイブリダイズする。連結分子は、Xで示される反応ペアの第一メンバー、例えばクリック化学官能基と、標的分子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列とを含む。洗浄工程を行って、標的と特異的にハイブリダイズしなかった連結分子を取り除くことができる。この構造体を、反応ペアの第一メンバーと反応することができる反応ペアの第二メンバー(Yで示す)で機能化された磁性粒子とインキュベートして、バイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体の共有結合的「固定化」を完成させることができる。例えばアジド/アルキン[3+2]付加環化において、反応ペアのメンバーの反応が触媒の添加を必要とする場合には、適切な触媒(例えばCuイオン)が配合される。あるいは、アジド/DIFO反応のような反応を利用して、触媒を追加することなく、磁性粒子と連結分子とを共有結合的に連結させてもよい。得られた共有結合複合体は、例えば磁気トンネル接合(MTJ)センサのような適切な磁性センサを用いて検出することができる。図5に説明するように、得られた非共有結合的構造体は核酸−架橋剤、例えばソラレンを用いて架橋することができる。Pierce Biotechnology, Inc.およびFisher Scientific Internationalから商業的に入手可能なものなど、多くの架橋剤が、タンパク質及び核酸の両方の技術分野において知られている。追加の架橋剤をカスタム合成することができる。図5は、この工程を、反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間に共有結合を形成する前に行うものとして示しているが、この工程は、例えば、反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間に共有結合を形成した後のように、工程中の適切なときに行うことができる。
【0182】
図6は、磁性粒子がYで示される反応ペアのメンバーで機能化されている実施態様を示す。図6に示される特定の例では、核酸標的分子がPCRを用いて増幅される。反応混合物において、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、反応ペアの第一メンバーを導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される反応ペアの第一メンバーを含むように修飾された一以上の塩基を有する。
【0183】
アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。また、標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバー(Yで示される)を含むように修飾することができる。ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、反応ペアの第二メンバーで機能化された磁性粒子とインキュベートすることができ、ここでインキュベーションは反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間の共有結合の形成に適した条件下で行われる。例えば、反応ペアの第一及び第二メンバーがクリック化学官能基である場合には、インキュベーションはCuイオン触媒の存在下で行ってもよい。
【0184】
修飾された標的分子に対する標的固定化プローブのハイブリダイゼーションによって形成された非共有結合的構造体は、ソラレンなどの核酸架橋剤を用いて架橋することができる。この工程は、例えば、反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間に共有結合を形成する前又は後に、工程中の適切なときに行うことができる。
【0185】
さらなる実施態様を図7に説明する。対象の標的が核酸である場合、核酸標的分子をPCRを用いて増幅することができる。反応混合物中に、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、例えばクリック化学官能基などの反応ペアの第一メンバーを導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される反応ペアの第一メンバーを含むように修飾された一以上の塩基を有する。次いで、アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバー(Yで示される)を含むように修飾される。ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、標識化プローブで機能化された磁性粒子とインキュベートすることができる。標的が核酸である場合には、標識化プローブは、アンプリコンの配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。また標識化プローブは、適切な条件下でアンプリコンにおける反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバーを含む。標識化プローブとアンプリコンとのハイブリダイゼーションは、非共有結合核酸結合複合体を完成させる。反応条件が触媒の使用を必要とする場合、触媒がバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に「固定」するために配合され、かくして検出可能な共有結合複合体が形成される。得られた共有結合複合体は磁性センサを用いて検出することができる。ソラレンまたは別の適切な核酸架橋剤を、この方法に関連して使用し、さらなる共有結合を導入して、検出可能な共有結合複合体をさらに安定化できることも考慮される。
【0186】
先に記載したように、核酸をクリック化学アジド/アルキン結合ペアメンバーで修飾する方法は当該分野で公知である。例えば、5−エチニル−2’−デオキシウリジン(EdU)の導入、およびCu−触媒[3+2]付加環化反応を介した蛍光アジドによるその後の検出について記述するSalic and Mitchison (2008) PNAS 105 (7): 2415-2420を参照(参照としてここに含める)。また、クリック化学官能基で修飾されたヌクレオチド構築ブロックの合成について記述した2008年5月に公開されたWO 2008/052775も参照(参照としてここに含める)。これらの方法は、検出可能な共有結合複合体を形成するためにここに記載した方法と関連して利用可能である。
【実施例】
【0187】
実施例1:反応ペアの第一メンバーを含む分岐型またはデンドリマー型分子の合成と標的結合部分としてオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)とのコンジュゲート
上記のように、図8−12は、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN) 標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む様々な「分岐型」および「星型」連結分子の合成スキームを示す。
【0188】
2つの例示的な合成方法を以下の予測的な実施例に記載する。この方法はいずれも、所望のスペーシングおよび化学を生産するために異なるサイズおよび官能基の固形表面合成のために単量体を適応するなどといった、変更を有する固相オリゴヌクレオチド合成化学スキームを使用する。1つの方法は、図8に示すように、核酸標的に結合するためのオリゴヌクレオチド配列と個体支持体上の全体としての第一の反応ペアのメンバーを有する分岐型部分とを合成することである。あるいは、図9および10に示すように、分岐型部分と標的結合部分を別々に合成し、それからコンジュゲートして全分子を形成する。
【0189】
両方法では、固形支持体上にクリーバブルな保護基DMT(ジメトキシトリチル)を有する制御細孔ガラス(CPG)を用いて、固相合成を始める。酸溶液にてDMT基を取り除いた後、この方法が全連結分子を直接合成することである場合、オリゴ核酸合成を最初に行い、図8に示すように分岐型部分の合成を始める前に標的結合オリゴヌクレオチドの伸長を生成する。この方法が2つの部分を別々に合成してそれらをコンジュゲートする場合、図9および10に示すように、固形表面上での分岐型または星型部分の合成は固形支持体上ですぐに始めることができる。
【0190】
「Y」型の二官能性リンカーのユニットは、ホスホラミダイト合成化学を用いて固形支持体上にカップリングする。図9に示すように、「Y」型の二官能性リンカーは、その2つの対称アームの末端に、DMTなどの保護基Xによって覆われた2つの官能基を有する。DMT基は酸性溶液を使用して非ブロック化されてよく、「Y」型の二官能性リンカーの他方のユニットは組み込まれてよい。所望の数の「Y」型二官能性リンカーのユニットを骨格に組み込んだ後に、DMT基を酸性溶液を用いて非ブロック化することができる。DMTのような保護基を除去した後、露出した水酸基を選択したいくつかの官能基を形成するために修飾することができる。例えば、アルキニル官能基を、5’−ヘキシニルホスホラミダイトを用いて、これらの末端水酸基に導入することができる。合成が終わったとき、全分岐型リンカー分子を、強力なアルカリ性溶液を使用してCPG固形支持体から切断してよい。最終的な化合物を用いて、MTJバイオセンサー上に標的分子および検出可能な磁性粒子を含む複合体を生産することができる。
【0191】
実施例2:デンドリマー分子上の反応ペアの複数の第一メンバーの合成と、標的結合部分としてのオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)とのコンジュゲート
デンドリマーを利用した連結分子合成スキームの予測的実施例は以下のとおりである。
【0192】
デンドロンにシスタミンコアおよび末端アミノ基を有する様々な生成物(サイズ)のポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーは、デンドリティックナノテクノロジー社から市販されている(Dendritic Nanotechnologies, Inc., 2625 Denison Drive. Mount Pleasant, MI 48858)。シグマ−アルドリッヒ社又はサーモフィッシャーサイエンティフィックのピアスバイオテクノロジー社から市販されている様々な修飾又は架橋試薬を用いて、末端アミノ基は、共有結合を形成する反応ペアのメンバーを加えるように容易に誘導体化できる。例えば、末端アミノ基は、EDCのようなカルボジイミド試薬によって活性化されたヘキシン酸を用いた反応により、アルキニル基に変換することができる。末端アミノ基は、コハク酸無水物でアミノ基を最初に修飾することによりアジド基に変換することができる。得られた末端カルボキシル基は、EDCによって活性化され、シグマ−アルドリッヒ社から入手できる1−アミノ−11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカンとコンジュゲートすることができる。
【0193】
反応ペアの複数の第一メンバーが形成される末端アミノ基の修飾の前あるいは後に、シスタミンコアを有するデンドリマーを、様々な標的特異的結合部分のコンジュゲートが可能な特定の部位を提供するスルフヒドリル基に還元されてよい。タンパク質、ペプチドまたは核酸標的特異的結合部分への遊離スルファヒドリル基による機能化樹状分子のコンジュゲートには、通常、スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラートといったヘテロ二官能性架橋リンカーの使用が必要である。場合によって、コンジュゲートは、十分なスペーシングを提供し立体障害を最小にするスペーサーにより媒介されてよい。
【0194】
このようにして、標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む連結分子を合成することができる。
【0195】
実施例3:分岐型連結分子の「二工程」合成スキーム
分岐型連結分子を合成するために、固形支持体にホスホラミダイト化学を利用した以下の予測的合成スキームを実施することができる。
【0196】
図13に示すように、クリーバブル単量体(1)によって誘導体化した制御細孔ガラスビーズ(CPG)を、固形支持体として用いて合成を始める。酸性溶液にて保護基DMT(ジメトキシトリチル)を取り除いた後に、水酸基を露出させる。「Y」型の二官能性単量体のユニット(2)を、ホスホラミダイト化学を用いて単量体(1)にカップリングさせる。非対称性ダブラーホスホラミダイトと称する「Y」型二官能性単量体(2)は、各々の末端に、酸性易動性基であるDMTと塩基性易動性基であるFMOCの2つの異なる保護基を有する。DMT基は酸性溶液を使用して再び取り除き、その後、「Y」型二官能性単量体の他方のユニット(2)を組み込んで、分岐型実体の主鎖を伸長する。
【0197】
「Y」型二官能性単量体の複数のユニットは、同じホスホラミダイト化学を繰り返して組み込むことができる。FMOC保護基は、カップリング反応を複数回繰り返している間安定である。「Y」型二官能性単量体の所望の数のユニットが主鎖に取り込まれた後に、FMOC保護基は、弱アルカリ性溶液、例えば1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)を含むアセトニトリルを用いて還元し、分岐の末端上に水酸基を露出させる。様々な官能基Xは、異なるホスホラミダイト修飾体(114)を使用して水酸基上に導入することができる。例えば、官能基Xは、アルキン、アジドまたは他の好適な反応ペアメンバーであってよい。
【0198】
ホスホラミダイト修飾体を官能基と接着させた後に、分岐型実体を有するCPG固形支持体(115)を濃縮した水酸化アンモニウムにて処理して、保護基を取り除き、分岐型実体を固形支持体から切断する。トリチル疎水性基を含む所望の長さの分岐型生成物は、HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)を用いて粗混合物から単離することができる。その後、トリチル基は、精製した生成物を酸にて処理して取り除く。ジスルフィド結合は、DTTといった還元剤を用いて還元し、分岐型リンカー(116)の末端にチオ基を生成させる。分岐型リンカー(116)は、標的分子、例えばオリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、糖質、脂質などに対する親和性を有する生体分子とコンジュゲートさせるために用いてよい。
【0199】
様々な生体分子とコンジュゲートするための、分岐型実体の側鎖上にアミノ官能基を導入する方法を、図14に示す。
【0200】
上記のホスホラミダイト合成化学を使用して、「Y」型二官能性単量体のユニット(2)を選択した数だけ組み込み、固形支持体上に分岐型実体(3)を形成させる。FMOC保護基は、弱アルカリ性溶液、例えばDBUを含むアセトニトリルによって取り除くことができる。露出した水酸基に、5'-アミノ修飾体C6-TFA(グレン研究所から入手)といったアミノ修飾体ホスホラミダイト単量体(117)をカップリングさせ、分子(118A)を生成することができる。それから、分岐型実体を脱保護し、濃縮した水酸化アンモニウムにて処理して固形支持体から切断する。
【0201】
HPLC精製の後、その側鎖(118B)上にアミノ基を有する分岐型実体は更なるコンジュゲートに用いることができる。多くの修飾および架橋結合試薬が使われてよい。図15に示すように、N-ヒドロキシスクシミド(NHS)エステルを一端に、そして反応ペアの第一メンバー(W)を他方の末端に有する連結試薬(119)を用いることができる。リンカー類(119)は市販されているか、特別に合成することもできる。糖質、ペプチド、タンパク質、DNA、RNAなどの多くの生体分子は、化学的に修飾してもよいし、リンカーとコンジュゲートさせて、分岐型実体(118B)上のアミノ基と反応させるためにNHSエステル基を導入してよい。
【0202】
(118B)の側鎖を(119)にて修飾することによって(120)を形成させた後、(120)のジスルフィド結合を、DTTのような還元剤を適用して、(121)の遊離チオ基に変換してよい。次いで、マレイミド機能化生体分子(122)例えばオリゴヌクレオチドを、(121)上のチオとコンジュゲートさせてよい。
【0203】
実施例4:分岐型連結分子の「直接」合成スキーム
図16に記載の他の方法は、固相上のオリゴヌクレオチドの5'末端の分岐型リンカーを合成し修飾することである。多くの官能基および分子は、分岐型リンカーの側鎖に連結してよい。
【0204】
オリゴヌクレオチドは、ホスホラミダイト合成化学を用いて固形支持体に合成してよい。場合によって、化学的スペーサーは、ホスホラミダイトを持つスペーサーにてオリゴヌクレオチドの末端に組み込んでよい。次いで、分岐型実体は、存在する場合にはオリゴヌクレオチド上に又はスペーサー上に直接合成してよい。オリゴヌクレオチド又はスペーサーからDMT保護基を取り除いた後に、「Y」型の二官能性単量体(2)のユニットを、ホスホラミダイト合成化学を用いて露出した水酸基にカップリングさせる。「Y」型二官能性単量体(2)は、各々の末端に、酸性易動性基であるDMTと塩基性易動性基であるFMOCの2つの異なる保護基を有する。DMT基は酸性溶液を使用して脱ブロックし、その後、「Y」型二官能性単量体の他方のユニット(2)を組み込んで、分岐主鎖を伸長する。この工程を繰り返すことによって、「Y」型二官能性単量体の既定数を、(221)から分岐型構造に組み込むことができる。
【0205】
分岐型実体の側鎖上のFMOC保護基を、弱酸性溶液、例えばDBUを含むアセトニトリルを用いて除去し、多くの官能基を形成させるか又は生体分子とコンジュゲートさせるように修飾できる水酸基を露出させる。これらの修飾は、適切なホスホラミダイト修飾体(222)を使用して導入してもよい。修飾に使用される官能基および分子には、例えば、アルキン、アジド、または反応ペアの他の適切な第一メンバーが含まれる。
【0206】
側鎖上に複数の官能基又は分子を持つ合成したオリゴヌクレオチドおよび分岐型リンカー(223)を脱保護し、濃縮した水酸化アンモニウムによって固形支持体から切断する。アンモニアは蒸発によって除去する。トリチル疎水基を含有する所望の分岐型リンカー生成物は、HPLCを用いて粗混合物から単離する。トリチル基は酸にて処理することによって切断し、n−ブタノール抽出によって取り除かれうる。側鎖上に複数の官能基又は分子を持つ純オリゴヌクレオチドおよび分岐型リンカー(224)は、核酸標的分子とMTJバイオセンサー上の磁性粒子との架橋結合を含むがこれに限定されず多くの用途に利用することができる。
【0207】
実施例5:核酸標的分子、バイオチップ表面、および磁性粒子を含む検出可能な共有結合複合体を製造するための共有結合相互作用の導入
以下の予測的な実施例では、クリック化学を用いて、核酸標的分子の粒子ベース検出を増強するために、強力な共有結合的に連結した構造体を形成する。図5は、標的核酸配列を捕捉および標識するための、標的固定化プローブ、連結分子、および磁性粒子を用いた結合複合体の形成を示す。
【0208】
核酸標的分子をバイオチップ表面上の標的固定化プローブとハイブリダイズさせ、その後、連結分子のハイブリダイゼーションを行う。連結分子は、Xで示される第一のクリック化学官能基と、標的分子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列とを含む。洗浄工程を行って、標的に特異的にハイブリダイズしていない連結分子を取り除くことができる。得られた非共有結合的構造体を、例えばソラレンのような核酸架橋剤を用いて架橋することができる。
【0209】
ソラレン架橋に引き続いて、この構造体を、第一のクリック化学官能基と反応することができる第二のクリック化学官能基(Yで示す)で機能化された磁性粒子とインキュベートして、バイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体の共有結合的「固定化」を完成させることができる。
【0210】
例えばアジド/アルキン[3+2]付加環化において、クリック化学官能基の反応が触媒の添加を必要とする場合には、適切な触媒(例えばCuイオン)が配合される。あるいは、アジド/DIFO反応のような反応を利用して、Cuイオン触媒を追加することなく、磁性粒子と連結分子とを共有結合的に連結させてもよい。得られた共有結合複合体は、磁気トンネル接合(MTJ)センサを用いて検出することができる。
【0211】
さらなる例では、磁性粒子がYで示されるクリック化学官能基で機能化されている。図6に示されるように、核酸標的分子がPCRを用いて増幅される。反応混合物において、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、第一のクリック化学官能基を導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される第一のクリック化学官能基を含むように修飾された一以上の塩基を有する。アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。また、標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる第二のクリック化学官能基(Yで示される)を含むように修飾することができる。
【0212】
ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、第二のクリック化学官能基で機能化された磁性粒子とインキュベートすることができ、ここでインキュベーションは第一のクリック化学官能基と第二のクリック化学官能基との間の共有結合の形成に適した条件下で行われる。例えば、インキュベーションはCuイオン触媒の存在下で行われるように設計することができる。
【0213】
任意に、ソラレンまたは他の適切な核酸架橋剤を用いて、複合体の非共有結合的に結合したメンバー間に共有結合を導入し、これによって検出可能な共有結合複合体をさらに安定化させることができる。
【0214】
さらなる例を図7に説明する。最初の工程において、核酸標的分子がPCRを用いて増幅される。反応混合物中に、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、第一のクリック化学官能基を導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される第一のクリック化学官能基を含むように修飾された一以上の塩基を有する。次いで、アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する第一のクリック化学官能基と共有結合を形成することができる第二のクリック化学官能基(Yで示される)を含むように修飾される。
【0215】
ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、標識化プローブで機能化された磁性粒子とインキュベートすることができる。標識化プローブは、アンプリコンの配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。また標識化プローブは、適切な条件下でアンプリコンにおける反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる第二のクリック化学官能基をも含む。標識化プローブとアンプリコンとのハイブリダイゼーションは、非共有結合的核酸結合複合体を完成させる。共有結合形成反応がCu触媒の添加を必要とする場合には、そのような触媒が添加される。
【0216】
得られた共有結合は、バイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を「固定」し、それによって検出可能な共有結合複合体を形成する。得られた共有結合複合体はMTJセンサのような磁性センサを用いて検出することができる。
【0217】
任意に、ソラレンまたは別の適切な核酸架橋剤を使用し、複合体の非共有結合的に結合したメンバー間に共有結合を導入して、検出可能な共有結合複合体をさらに安定化できる。
【0218】
例示的な共有結合形成条件は以下の通りである:銅(I)触媒の存在下では、1,3−付加環化がアルキン基とアジド基との間で起こり、トリアゾール結合−共有結合的連結を形成する。典型的なクリック化学反応条件は、0.1mM 硫酸銅および銅(II)を活性のある銅(I)種に還元する1mMの還元剤(例えば、アスコルビン酸ナトリウムまたはトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP))を含む、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4−0.1%Tweenあるいは第三級ブタノール−水混合物である。トリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン(TBTA)のような銅(I)安定化リガンドも、反応効率および反応速度を増強するために、通常はCu(I)種の2−5倍モル過剰量で、使用することができる。適切かつ生体分子非共有結合複合体に適合するものであれば、クリック化学反応は活性Cu(I)種の供給源としてヨウ化銅(I)を用いてアセトニトリルまたはジメチルホルムアミドのような極性溶媒中で効率的に行われる。
【0219】
本発明を特別な実施態様を参照しながら説明したが、当業者は、様々な変更がなされること、本発明の精神および権利範囲を逸脱しない範囲で均等物と置き換えられることは理解するであろう。さらに、特定の状況、物質、組成物、方法、工程を本発明の対象物、精神および権利範囲に合わせるために多くの変更がなされうる。このような変更のすべては本明細書に添付した特許請求の範囲の権利範囲内である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
本出願は、すべての目的のため、および出典明記によってその全体が本明細書中に援用される2008年11月17日に出願した米国仮特許出願61/115401の優先権を主張する。
【0002】
ハードウェアのリードヘッドのようなアプリケーションの電子工学および半導体産業において開発された磁気検知能力は、ここ20〜30年で感度と密度に大きく進歩した。近年、生体分子の検出にこれらの能力を応用することが注目されている。本開示内容は、これらの問題に対処し、関連した利点を提供するものである。
【発明の概要】
【0003】
標的分子と基質とを含む結合複合体を形成する強度および/又は確率を増やすために用いられうる方法および組成物を開示する。一態様では、標的分子と基質とを含む複合体における複合体内結合相互作用の数を増やすために用いられうる、反応ペアの一以上の第一メンバーを有する連結分子を開示する。これらの方法および組成物と関連して複合体内の架橋結合および複合体間の架橋結合を利用し、開示された結合複合体をさらに強化し、安定させることができる。
【0004】
第一の態様では、本開示は、標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体の生成方法を提供し、ここで当該方法は、反応混合物中において、基質、標的分子を含むと思われる試料、および連結分子を混合することを含む。基質は、一つの反応ペアの複数の第一メンバーを含み、連結分子は、存在すれば、標的分子に特異的に結合する一以上の標的特異的結合部分を含む。連結分子が多様な標的特異的結合部分を含む場合には、各標的特異的結合部分が、存在すれば、標的分子の異なる領域に特異的に結合する。連結分子は、前記反応ペアの一以上の第二メンバーをも含む。混合は、存在すれば、標的分子に対して連結分子が特異的結合を生じるのに十分な反応条件下で行われる。この方法は、反応混合物を、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件にさらすことをさらに含み、ここで、標的分子が試料中に存在する場合には、連結分子が標的分子に特異的に結合し、反応ペアの一以上の複数の第一メンバーと一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって標的分子、連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0005】
ある態様では、連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子は反応ペアの複数の第二メンバーを含み、連結分子が反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合には、連結分子は複数の標的特異的結合部分を含む。
【0006】
前記方法は、複合体の有無を検出することを更に含んでよい。
【0007】
一実施態様では、前記方法により複合体の形成が生じる。
【0008】
一実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの第二メンバーの一つとを含む。
【0009】
他の実施態様では、連結分子が、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0010】
他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0011】
一実施態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0012】
前記方法の他の実施態様では、基質が検出可能な標識である。
【0013】
基質が検出可能な標的である一実施態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0014】
本開示の第二の態様では、第一の態様に記載された方法の一態様が開示され、ここで、基質が検出可能な標識であり、反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含み、バイオチップ表面は複数の標的固定化プローブを含み、混合は、存在すれば、標的分子が複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行われる。標的分子が試料中に存在する場合、複数の標的固定化プローブの一つが標的分子に特異的に結合し、標的分子が連結分子に特異的に結合し、かつ、連結分子が反応ペアの一以上の複数の第一メンバーと一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0015】
本開示の第二の態様に記載した方法のある態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0016】
本開示内容の第二態様で記述される方法の別の実施態様では、前記方法は、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体の有無を検出することを更に含む。
【0017】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、前記方法により、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、核酸標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体の形成が生じる。
【0018】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの一つの第二メンバーを含む。
【0019】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、連結分子が、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーを含む。
【0020】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーを含む。
【0021】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、複数の複合体が形成され、このとき複数の複合体のメンバーのそれぞれがバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、および検出可能な標識を含んでおり、前記方法は、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む。
【0022】
本開示内容の第二態様で記述される方法の他の実施態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0023】
本開示の第二の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む。
【0024】
本開示の第三の態様では、標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体の製造方法を提供する。当該方法は、基質と、標的分子を含有すると思われる試料と、複数の連結分子とを、反応混合物に混合することを含む。基質は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。複数の連結分子のそれぞれのメンバーは一又は複数のコピーで各々存在し、それぞれのメンバーは、(存在する場合には)標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分を含む。また、複数の連結分子のそれぞれのメンバーは、反応ペアの第二メンバーを含む。この混合は、複数の連結分子が(存在する場合には)標的分子に特異的に結合するために十分な反応条件下である。当該方法は、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件に反応混合物をさらすことをさらに含む。標的分子が試料中に存在するとき、複数の連結分子は、標的分子の複数の異なる領域と特異的に結合し、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって標的分子、複数の連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0025】
本開示内容の第三態様で記述される方法の一実施態様では、前記方法は、複合体の有無を検出することを更に含む。
【0026】
本開示内容の第三態様で記述される方法の他の実施態様では、前記の方法により複合体が形成される。
【0027】
本開示の第三の態様に記載した方法の別の態様では、複数の複合体が形成され、その複数の複合体の各メンバーはバイオチップ表面、複数の連結分子、標的分子および検出可能標識を含む。この方法は、反応混合物中に架橋剤を添加して、複数の複合体の少なくとも二つを一以上の共有結合を介して連結することをさらに含む。
【0028】
本開示の第三の態様に記載した方法の別の態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0029】
本開示の第三の態様に記載した方法の別の態様では、基質が検出可能な標識である。その態様の一つでは、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0030】
第四の態様では、本開示の第三の態様に記載した方法を提供するものであり、ここで、基質は検出可能な標識であり、反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含む。バイオチップ表面は、複数の標的固定化プローブを含み、混合は、存在すれば標的分子が複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行う。標的分子が試料中に存在する場合、複数の標的固定化プローブの一つが標的分子に特異的に結合し、標的分子は複数の連結分子に特異的に結合し、かつ、複数の連結分子は反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0031】
本開示の第四の態様に記載した方法のある態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、一以上の複数の連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0032】
本開示の第四の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体の存在または不存在を検出することをさらに含む。
【0033】
本開示の第四の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、核酸標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体の形成をもたらす。
【0034】
本開示内容の第四態様で記述される方法の他の実施態様では、複数の複合体が形成され、そのメンバーのそれぞれがバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含んでおり、前記方法は、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む。
【0035】
本開示内容の第四態様で記述される方法の別の実施態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0036】
本開示の第四の態様に記載した方法の別の態様では、バイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む。
【0037】
第五の態様では、本開示内容は、基質と、標的分子を含有すると思われる試料と、連結分子とを含む反応混合物を提供する。基質は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。連結分子は、(存在する場合には)標的分子に特異的に結合する一又は複数の標的特異的結合部分を含む。連結分子が複数の標的特異的結合部分を含むとき、標的特異的結合部分のそれぞれは(存在する場合には)標的分子の異なる領域に特異的に結合する。また、連結分子は、反応ペアの一以上の第二メンバーを含む。標的分子が試料中に存在するとき、連結分子は、標的分子と特異的に結合し、反応ペアの複数の第一メンバーの一以上と一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって標的分子、連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0038】
本開示の第五の態様に記載した反応混合物の別の態様では、連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が反応ペアの複数の第二メンバーを含み、連結分子が反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の標的特異的結合部分を含む。
【0039】
本開示の第五の態様に記載した反応混合物の別の態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0040】
本開示の第五の態様に記載した反応混合物の別の態様では、基質が検出可能な標識である。その態様の一つでは、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0041】
本開示内容の第五態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子は、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの一つの第二メンバーとを含む。
【0042】
本開示内容の第五態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子は、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0043】
本開示内容の第五態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子は、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0044】
本開示内容の第六態様では、基質が検出可能な標識であり、前記反応混合物が、バイオチップ表面を含む基質を更に含み、このバイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含むものである、第五態様で記述される反応混合物の実施態様が開示される。標的分子が試料中に存在するとき、標的固定化プローブの一つは標的分子に特異的に結合し、標的分子は連結分子に特異的に結合し、そして、連結分子は、反応ペアの複数の第一メンバーの一以上と一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0045】
本開示の第六の態様に記載した反応混合物の別の態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0046】
本開示の第六の態様に記述された反応混合物の別の態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0047】
本開示内容の第六態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの一つの第二メンバーとを含む。
【0048】
本開示内容の第六態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子が、一つの標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0049】
本開示内容の第六態様で記述される反応混合物の他の実施態様では、連結分子が、複数の標的特異的結合部分と反応ペアの複数の第二メンバーとを含む。
【0050】
第七態様では、本開示内容は、基質と、標的分子を含有すると思われる試料と、複数の連結分子とを含む反応混合物を提供する。基質は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。複数の連結分子のそれぞれのメンバーは一又は複数のコピーで各々存在し、それぞれのメンバーは、(存在する場合には)核酸標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分を含む。また、複数の連結分子のそれぞれのメンバーは、反応ペアの第二メンバーを含む。標的分子が試料中に存在するとき、複数の連結分子は、標的分子の複数の異なる領域と特異的に結合し、反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって標的分子、複数の連結分子および基質を含む複合体が形成される。
【0051】
本開示の第七の態様に記載した反応混合物のある態様では、基質がバイオチップ表面を含む。
【0052】
本開示の第七の態様に記載した反応混合物の他の実施態様では、基質は検出可能な標識である。このような実施態様の一つでは、検出可能な標識は磁性粒子である。
【0053】
第八態様では、本開示内容は、基質は検出可能な標識であり、反応混合物はバイオチップ表面を含む基質を更に含むものである、第七態様で記述される反応混合物を提供する。バイオチップ表面は、複数の標的固定化プローブを含む。標的分子が試料中に存在するとき、複数の標的固定化プローブの一つは標的分子に特異的に結合し、標的分子は複数の連結分子に特異的に結合し、そして、複数の連結分子は反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによってバイオチップ表面、複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含む複合体が形成される。
【0054】
本開示の第八の態様に記載した反応混合物のある態様では、複数の標的固定化プローブのそれぞれが反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、一以上の複数の連結分子が反応ペアの一以上の第一メンバーと反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する。
【0055】
本開示の第八の態様に記載した反応混合物の他の態様では、検出可能な標識が磁性粒子である。
【0056】
第九の態様では、本開示はキットを提供するものであり、キットは磁性粒子を含み、磁性粒子は反応ペアの複数の第一メンバーを含む。当該キットはさらに連結分子を含み、この連結分子は、(存在する場合には)標的分子に特異的に結合する一又は複数の標的特異的結合部分を含む。連結分子が複数の標的特異的結合部分を含むとき、標的特異的結合部分のそれぞれは(存在する場合には)標的分子の異なる領域に特異的に結合する。また、連結分子は反応ペアの一以上の第二メンバーをも含む。
【0057】
本開示の第九の態様に記載したキットのある態様では、連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合には、この連結分子は反応ペアの複数の第二メンバーを含み、連結分子が反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合には、連結分子は複数の標的特異的結合部分を含む。
【0058】
本開示の第九の態様に記載したキットの別の態様では、キットはバイオチップ表面を含む基質をさらに含み、ここでバイオチップ表面は、存在すれば標的分子と特異的に結合する複数の標的固定化プローブを含む。
【0059】
第十の態様では、本開示は、検出可能な共有結合複合体を形成する方法を提供する。この方法は、標的分子を含むと思われる試料を、反応ペアの複数の第一メンバーを含む修飾された標的分子を含む反応混合物を製造するのに十分な条件にさらすことを含む。この方法は、反応混合物を標的固定化プローブと接触させることをさらに含み、ここで接触は、存在する修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件下で行われ、ここで前記標的固定化プローブは反応ペアの第二メンバーを含む。この方法は、反応混合物を磁性粒子と接触させることをさらに含み、ここで磁性粒子は反応ペアの第二メンバーを含む。この方法は、反応混合物を、反応ペアの第一および第二メンバー間で共有結合を形成するのに適した条件にさらすことをさらに含み、ここで、標的分子が試料中に存在する場合には、修飾された標的分子を含む検出可能な共有結合複合体が形成される。
【0060】
本開示の第十の態様に記載した方法のある態様では、標的分子が核酸標的分子であり、存在すれば、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される。
【0061】
本開示の第十の態様に記載した方法の別の態様では、磁性粒子が標識プローブを含み、磁性粒子に含まれる反応ペアの第二メンバーが標識プローブの成分である。
【0062】
第十一の態様では、本開示の第十の態様に記載される方法を提供するものであり、ここで、磁性粒子が標識プローブを含み、磁性粒子に含まれる反応ペアの第二メンバーが標識プローブの成分であり、標識プローブは修飾された標的分子と非共有結合複合体を形成することができ、反応混合物を一以上の共有結合の形成に適した条件にさらす前に、反応混合物を、磁性粒子、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件にさらし、修飾された標的分子が反応混合物中に存在する場合に、磁性粒子、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が形成される。
【0063】
本開示の第十一の態様に記載した方法のある態様では、標的分子は核酸標的分子であり、磁性粒子、修飾された標的分子および標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される。
【0064】
本開示の第十の態様に記載した方法のある態様では、当該方法が検出可能な共有結合複合体の存在、不存在および/または量を検出することをさらに含む。
【0065】
本開示の第十の態様に記載した方法の別の態様では、共有結合形成反応ペアがアジド/アルキン反応ペアであり、共有結合の形成に適した条件が、反応混合物をCuイオン触媒と接触させることを含む。
【0066】
本開示の第十の態様に記載した方法の別の態様では、反応混合物を核酸架橋試薬と接触させることをさらに含む。
【0067】
添付の図面とともに読むと、開示内容は以下の詳細な説明から十分に理解される。一般的な実施に従い、図面の様々な特徴が必ずしも一定の比率であるというわけではないことを強調する。様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小される。図面には以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】標的固定化プローブ、核酸標的分子、連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。
【0069】
【図2A】標的固定化プローブ、核酸標的分子、複数の連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。図2Aは反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間の共有結合形成を例示しており、ここで反応ペアの第二メンバーは検出可能な標識と標的固定化プローブの両方に含まれ、第一メンバーは連結分子に含まれている。図2Aは核酸標的分子を示しているが、このような表示は例示を目的としているに過ぎない。さらに別の典型的な標的はタンパク質や他の生物学的要素を含むが、これらに限定されるものではない。
【0070】
【図2B】標的固定化プローブ、非核酸標的分子(例えば、タンパク質または他の生物学的成分)、複数の連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。図2Bは反応ペアの第一メンバー(X1)と反応ペアの第二メンバー(X2)との間の共有結合形成を例示しており、ここで反応ペアの第一メンバーは検出可能な標識と標的固定化プローブの両方に含まれ、第二メンバーは連結分子に含まれている。
【0071】
【図3】ポリペプチド標的分子、複数の抗体をベースとする連結分子、および基質を含む結合複合体を図示する。XおよびYは反応ペアの第一メンバーおよび第二メンバーをそれぞれ示す。AおよびBはポリペプチド標的分子の異なる領域に結合することができる標的特異的結合部分を示す。任意に、付加的な共有結合架橋剤を適用して、結合複合体の強度を増加させることができる。
【0072】
【図4】標的固定化プローブ、標的分子、連結分子、検出可能標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。検出可能標識は反応ペアの第一メンバー、例えばアルキン(またはアジド)で機能化されている。連結分子は標的特異的結合部分と、反応ペアの第二メンバー、例えばアジド(またはアルキン)で機能化されたポリマーを含む。バイオチップ表面を含む基質も反応ペアの第一メンバーで機能化されている。この形態は、連結分子と検出可能な標識との間の共有結合および連結分子とバイオチップ表面を含む基質との間の共有結合の形成を可能にする。
【0073】
【図5】反応ペアのメンバーを含む連結分子を使用して、MTJアレイバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に“固定”することを図示する。XおよびYは反応ペアの第一メンバーおよび第二メンバーをそれぞれ示す。(i)標的核酸がバイオチップ表面の標的固定化プローブ(A)に特異的にハイブリダイズする(B)。(ii)反応ペアの第一メンバーXを備えた連結分子が、捕捉された標的核酸分子にハイブリダイズする(C)。(iii)非共有結合構造体が核酸架橋剤、例えばソラレンで共有結合的に“固定”される(D)。(iv)共有結合構造体(D)を、Xと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバーYで機能化された磁性粒子とインキュベートして、完全に共有結合的に“固定”された構造体を生成する(E)。次いで、磁性粒子の存在をMTJセンサーアレイによって検出する。“n”は複数の括弧でくくられたメンバーを意味する。
【0074】
【図6】反応ペアのメンバーを含む連結分子を使用して、MTJアレイバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に“固定”することを図示する。XおよびYは反応ペアの第一メンバーおよび第二メンバーをそれぞれ示す。図6では、連結分子は必要ではない。代わりに、核酸標的が、反応ペアの第一メンバーを取り込むように、修飾された塩基を用いてPCRを介して増幅される。これらの第一メンバーは、標的固定化プローブおよび磁性粒子に存在する標識プローブに含まれる反応ペアの第二メンバーと反応する。標的核酸は修飾された塩基を用いてPCRを介して増幅され、Xで示す反応ペアの第一メンバーが、結果的に得られるアンプリコン中に導入される(挿入物)。(i)修飾されたアンプリコンはバイオチップ表面の標的固定化プローブに特異的にハイブリダイズする。標的固定化プローブ(A)は、反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができるYで示す反応ペアの一以上の第二メンバーで修飾されている。(ii)非共有結合構造体(B)は、構造体“C”を共有結合的に“固定”するのに適した条件下で反応ペアの第二メンバー(Y)で機能化された磁性粒子とインキュベートされる。次いで、磁性粒子の存在をMTJセンサーアレイによって検出する。“n”は複数の括弧でくくられたメンバーを意味する。
【0075】
【図7】MTJアレイバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に“固定”するための反応ペアの利用に関する別の方法を図示する。図6に示す方法と違って、図7に示す方法は標識プローブを利用しないアプローチについて記載する。代わりに、反応ペアの第一メンバーが、磁性粒子と組み合わせられた反応ペアの第二メンバーと共有結合を形成する。共有結合は、修飾された標的分子と機能化された標的固定化プローブとの間にも形成される。核酸標的は、修飾された塩基を用いてPCRを介して増幅され、Xで示す反応ペアの第一メンバーが、結果的に得られるアンプリコン中に導入される(挿入物)。(i)修飾されたアンプリコンはバイオチップ表面の標的固定化プローブに特異的にハイブリダイズする。標的固定化プローブ(A)は、反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができるYで示す反応ペアの一以上の第二メンバーで修飾されている。(ii)非共有結合構造体(B)は、反応基Yの第二メンバーで修飾された標識プローブで機能化された磁性ビーズと共にインキュベートされて、非共有結合核酸検出構造体(C)を完成する。(iii)適切な条件下で、共有結合を形成し、構造体(D)を共有結合的に“固定”する。次いで、磁性粒子の存在をMTJセンサーアレイによって検出する。“n”は複数の括弧でくくられたメンバーを意味する。
【0076】
【図8】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型の連結分子の直接合成の合成スキームを示す。
【0077】
【図9】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成の合成スキームを示す。
【0078】
【図10】反応ペアの複数の第一メンバーを含む連結分子を形成するための、ODNと分岐型部分との間のコンジュゲート反応を示す。
【0079】
【図11】反応ペアの複数の第一メンバーを含むデンドリマー又は星状オリゴマーへのODNのコンジュゲートによる連結分子の形成を示す。
【0080】
【図12】反応ペアの複数の第一メンバーの接着と、デンドリマー又は星状オリゴマーへのカップリングリンカーの導入を示す。
【0081】
【図13】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成のための様々な単量体Xによるホスホラミダイト化学を使用した合成スキームを示す。
【0082】
【図14】反応ペアの様々な第一メンバーに変換しうる複数のアミノ基を含む分岐型部分の合成スキームを示す。
【0083】
【図15】反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成と、標的特異的結合部分とのコンジュゲートについての、図14に示す複数のアミノ基を含む分岐型部分を使用した合成スキームを示す。
【0084】
【図16】ODN標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型連結分子の直接合成のスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
(定義)
文脈に応じて、ここで使用する「基質」なる用語は、例えば磁性粒子などの検出可能な標識(又は、検出可能な標識として働くように修飾される)として機能しうる基質、又は、その後の検出のための標的分子を固定するために用いられうるバイオチップ表面を含む基質を指す。
【0086】
ここで使用する「バイオチップ」なる用語は、対象の他の生物学的分子に結合可能な生物学的分子のアレイによって機能化されている表面を有する固形、通常実質的に平面の支持体を指す。バイオチップの製造には、例えば、ガラススライド、石英ガラス、シリコンおよびプラスチックを含む様々な材料が用いられうる。ここで開示する特定の実施態様では、対象のバイオチップは、バイオチップの表面に固定された標的分子に結合した磁性粒子の存在を検出することができる磁気センサーを含む。例として、Baselt et al., (1998) Biosens. Bioelectron., vol. 13, pp. 731-739;Edelstein et al., (2000) Biosens. Bioelectron., vol. 14, pp. 805-813;Miller et al., (2001) J. Magn. Magn. Mater., vol. 225, pp. 138-144;Graham et al. (2002) J. Appl. Phys., vol. 91, pp. 7786-7788;Ferreira et al. (2003) J. Appl. Phys., vol. 93, pp. 7281;Li et al. (2003) J. Appl. Phys., vol. 93, pp. 7557-7559, May;Li et al. (2004) IEEE Trans. Magn., vol.40, pp. 3000;Wang et al., (2005) J. Magn. Magn. Mater., vol. 293, pp. 731-736;Shen et al. (2005) Appl. Phys. Lett., vol. 86, pp. 253901;Baselt et al. 米国特許第5981297号;Tondra, 米国特許第6743639号;および、Tondra, 米国特許第6875621号を参照のこと。
【0087】
ここで使用する「検出可能な標識」なる用語は、検出が可能な分子又は粒子を指し、限定するものではないが、放射性同位体、蛍光剤、化学発光剤、発色基、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、磁性粒子、特定の結合対のメンバーなどを含む。
【0088】
「連結分子」なる用語は、少なくとも一つの「反応ペアのメンバー」と少なくとも一つの「標的特異的結合部分」とを含む分子を指すためにここで使用する。連結分子との関連で用いる「分子」なる言葉は単一の分子体に限定するものではなく、連結分子を生産するために互い結合した複数の分子を含みうる。
【0089】
「反応ペアのメンバー」なる用語は、第一または第二の官能基を指すものとして使用され、ここで第一および第二の官能基は、共有結合を形成するのに適した条件下で互いと反応する。このような反応ペアは、「共有結合形成反応ペア」とも称される。反応ペアのどちらか一方のメンバーが第一メンバーとして称される場合、残りのメンバーは第二メンバーであると理解され、逆もまた同様であることに注意すべきである。共有結合形成反応ペアの第一および第二メンバーの例は、Rostovtsevら (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41: 2596-2599およびTornoeら (2002) J. Org. Chem. 67: 3057-3064に記載されているCu触媒アジド/アルキン[3+2]付加環化「クリック化学」;Baskinら (2007) PNAS Vol. 104, No. 43: 167393-16797に記載されているアジド/DIFO(二フッ化シクロオクチン)Cuフリークリック化学;Linら (2005) J. Am. Chem. Soc. 127: 2686-2695に記載されているアジド/ホスフィン“シュタウディンガー反応”;SaxonおよびBertozzi (2000) Mar 17 Science 287(5460):2007-10に記載されているアジド/トリアリールホスフィン“修正シュタウディンガー反応”;並びに、Casey (2006) J. of Chem. Edu. Vol. 83, No. 2: 192-195, Lynnら (2000) J. Am. Chem. Soc. 122: 6601-6609, およびChenら (2003) Progress in Chemistry 15: 401-408に記載されている触媒オレフィン交差メタセシス反応を含む。
【0090】
一部の実施態様では、「クリック化学官能基」は、反応ペアの第一および第二メンバーとして特に興味深い。用語「クリック化学官能基」は、それぞれ、アルキン官能基またはアジド官能基との共有結合の形成反応に寄与しうるアジド官能基またはアルキン官能基を指す。また、用語「クリック化学官能基」は、それぞれ、DIFO官能基またはアジド官能基との共有結合の形成反応に寄与しうるアジド官能基またはDIFO官能基を指すためにも使用される。アジド/アルキン共有結合形成反応はCuイオン触媒の存在を必要とするが、アジド/DIFO共有結合形成反応はそのような触媒の使用を必要としない点に注意すべきである。
【0091】
「標的特異的結合部分」は、対象の標的分子又は他の分析物と接触したときに対象の標的分子又は他の分析物に特異的に結合することができる連結分子の領域を指すためにここで使用する。
【0092】
「標的固定化プローブ」なる用語は、基質の表面に結合した実体、例えばバイオチップを指すためにここで使用し、この実体は、標的分子と接触したときに標的分子に特異的に結合することができるものである。
【0093】
「標識プローブ」なる用語は、検出可能な標識に結合された分子を指すものとして使用され、ここで前記分子は標的分子と接触させたときに、標的分子に特異的にかつ少なくとも非共有結合的に結合することができる。ここに記載する一部の実施態様では、標識プローブは反応ペアの一以上の第一または第二メンバーを含む。
【0094】
ここで交換可能に使用する「ポリペプチド」および「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸の重合型を指し、コード化および非コード化アミノ酸、化学的ないし生化学的に修飾されたか又は誘導体化されたアミノ酸、および修飾したペプチド主鎖を有するポリペプチドを含みうる。この用語には、限定するものではないが、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する又は有さない異種性および天然のリーダー配列を有する融合物;免疫学的にタグを付けたタンパク質;検出可能な融合パートナーを有する融合タンパク質、例えば融合パートナーとして蛍光タンパク質であるβガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを含む融合タンパク質などを含む融合タンパク質が含まれる。
【0095】
「核酸」、「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」なる用語は交換可能に用い、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド何れかの任意の長さのヌクレオチドの重合型、又は、2つの天然に生じる核酸と同じように配列特異的な様式で天然に生じる核酸とハイブリダイズすることができる、例えばワトソン−クリック塩基対相互作用に加わることができる、合成によって製造された化合物を指す。ポリヌクレオチドは三次元構造を有し、公知又は未知何れの機能でも発揮しうる。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、遺伝子、遺伝子断片、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファRNA、リボソームRNA、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離したDNA、コントロール領域、任意の配列の単離したRNA、核酸プローブ、およびプライマーが含まれる。
【0096】
「部分(moiety)」なる用語は、典型的に特定の機能的又は構造的な特徴を有する実体又は分子の一部を指すために用いられる。
【0097】
「抗体」、「免疫グロブリン」なる用語およびこれらの複数形は、Fab、Fv、scFv、およびFdフラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、および抗体の抗原結合部分と非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含むがこれらに限定せず、任意のアイソタイプの抗体又はイムノグロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体の断片が含まれる。抗体は、例えば放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素、蛍光タンパク質などにて検出可能に標識されてよい。抗体はさらに、例えばビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対のメンバー)などの特定の結合対のメンバーといった他の部分にコンジュゲートしてよい。また、抗体は、ポリスチレンプレート又はビーズなどを含むがこれらに限定せず、固形支持体に結合していてよい。また、この用語には、Fab'、Fv、F(ab')2、および抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片も包含される。
【0098】
抗体は、例えばFv、Fabおよび2(Fab')2、並びに二官能性(すなわち二特異性)ハイブリッド抗体を含む様々な形態で(例えばLanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987))、および単鎖で(例えばHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 5879-5883 (1988);Bird et al., Science, 242, 423-426 (1988);Hood et al., "Immunology", Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984), and Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)を参照)ありうる。
【0099】
「特異的結合」、「特異的に結合する」などといった用語は、反応混合物中の他の分子又は部分と比較して、第二結合分子又は部分(例えば標的分子又は特異的結合対の第二メンバー)に(共有結合又は非共有結合で)優先的に結合する、第一結合分子又は部分(例えば標的特異的結合部分又は特異的結合対の第一メンバー)の能力を指す。例えば、タンパク質−タンパク質結合相互作用を伴うある実施態様では、結合複合体内で互いに特異的に結合するとき、第一結合分子又は部分と第二結合分子又は部分との間の親和性は、10−6M未満、10−7M未満、10−8M未満、10−9M未満、10−10M未満、10−11M未満、10−12M未満、10−13M未満、10−14M未満、又は10−15M未満のKD(解離係数)によって特徴付けられる。
【0100】
ここで使用する「特異的結合対のメンバー」は特異的結合対相互作用のメンバーである。結合対のいずれか一方のメンバーが第一メンバーとみなされる場合、残りのメンバーが第二メンバーであると考え、その逆も同様であることは注記すべきである。特異的結合対相互作用の例には、抗原/抗体およびハプテン/抗体といった免疫性結合相互作用、並びに相補的核酸結合、ビオチン/アビジンおよびビオチン/ストレプトアビジンのような非免疫性結合相互作用が含まれる。
【0101】
ここで使用する「ハイブリダイズすることができる」、「ハイブリダイズする」および「ハイブリダイゼーション」なる用語は、相補的又は部分的に相補的な核酸分子間の「特異的結合」相互作用(例えばDNA−DNA、RNA−RNA)を指す。
【0102】
「相補的」なる用語は、ポリヌクレオチドの配列に基づいたポリヌクレオチド間の特異的結合の特性を示す。ここで使用するように、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションアッセイにおいて互いに結合する場合、例えばハイブリダイゼーションアッセイにおいて所定又は検出可能なレベルのシグナルが産生する場合に、ポリヌクレオチドは相補的である。従来の塩基対合法則に従う場合、例えばAがT(又はU)と、GがCと対になる場合、ポリヌクレオチドの各部分は各々に相補的である。「相補的」には、絶対的な配列相補性がある実施態様、更に実質的な配列相補性がある実施態様が含まれる。
【0103】
「絶対的な配列相補性」とは、第一ポリヌクレオチドと第二ポリヌクレオチドとの間に100%の配列相補性がある、すなわち、他のポリヌクレオチドとの関連で(相補的な領域に対して)第一および第二いずれかのポリヌクレオチドに挿入、欠失又は置換がないことを意味する。言い換えれば、相補的領域のすべての塩基は、通常の塩基対合法則に従ってその相補的塩基と対になる。
【0104】
「実質的配列相補性」は、他のポリヌクレオチドと比較して(相補的な領域に対して)第一および又は第二のポリヌクレオチドに一又は複数の相対的に小さい(10塩基未満、例えば5塩基未満、典型的には3塩基未満、より典型的には単一塩基)挿入、欠失又は置換を認める。相補的領域は、第一ポリヌクレオチドと第二ポリヌクレオチド(例えば核酸標的分子の異なる配列と連結分子の結合部分)との間で相補的である領域である。相補配列は一般的により大きなポリヌクレオチド内に埋まっているので、2つの相対的に長いポリヌクレオチドはその全長の一部のみに対して相補的であってもよい。相補的領域は典型的に、少なくともおよそ10塩基長、より典型的には少なくともおよそ12塩基長、より典型的には少なくともおよそ15塩基長、さらにより典型的には少なくともおよそ20塩基長であり、又は少なくともおよそ25塩基長であってよい。
【0105】
核酸ハイブリダイゼーションの関係において本明細書中で記載するハイブリダイゼーションは、典型的に「ストリンジェントな条件」下で生じる。「ストリンジェント条件」なる用語は、第一核酸が第二核酸配列に選択的にハイブリダイズし、他の配列にはほとんどあるいはまったくハイブリダイズしない条件を指す。言い換えれば、ここで使用する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、相補的な結合メンバー間、例えば連結分子の結合部分と標的核酸の相補的配列との間の二本鎖を製造するのに適している条件を指す。
【0106】
核酸ハイブリダイゼーションの関連で(例えばアレイ、サザン又はノーザンハイブリダイゼーションにおける)「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、異なる環境パラメーター下で異なる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、例えば、50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDSを含むバッファ中、42℃でのハイブリダイゼーション、又は、5×SSCおよび1%SDSを含むバッファ中、65℃でのハイブリダイゼーション、何れも65℃の0.2×SSCおよび0.1%SDSの洗浄を行うものが含まれる。また、例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、40%ホルムアミド、1M NaClおよび1%SDSのバッファ中、37℃でのハイブリダイゼーションと、1×SSCでの45℃での洗浄を含む。あるいは、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mnM EDTA中、65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーションと、0.1×SSC/0.1%SDS中、68℃での洗浄を実施することもできる。更なる他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、3×SSC(450mM 塩化ナトリウム/45mM クエン酸ナトリウム)中、60℃以上でのハイブリダイゼーション、又は、30%ホルムアミド、1M NaCl、0.5%ナトリウムサルコシン、50mM MES、pH6.5を含む溶液中、42℃でのインキュベーションが含まれる。当業者であれば、別であるが同程度のハイブリダイゼーションと洗浄の条件を用いて、同様なストリンジェンシーの条件が得られることを理解するであろう。
【0107】
ある実施態様では、洗浄状態のストリンジェンシーは、核酸分子が特異的にハイブリダイズする程度に影響しうる。適切な洗浄条件には、例えば、pH7のおよそ0.02モルの塩濃度と少なくともおよそ50℃又はおよそ55℃からおよそ60℃の温度;又は、およそ0.15M NaClの塩濃度、72℃、およそ15分間;又は、およそ0.2×SSCの塩濃度、少なくともおよそ50℃又はおよそ55℃からおよそ60℃の温度、およそ1からおよそ20分間;又は、0.1%SDSを含むおよそ0.1×SSCの塩濃度を有する溶液にて、20から50℃、1から15分間複数回洗浄;又は同等な条件が含まれる。また、洗浄のためのストリンジェント条件は、例えば0.2×SSC/0.1%SDS、42℃であってよい。核酸分子がオリゴデオキシヌクレオチド(例えばデオキシリボヌクレオチドサブユニットから構成するオリゴヌクレオチド)である例では、ストリンジェント条件は、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基オリゴのとき)、48℃(17塩基オリゴのとき)、55℃(20塩基オリゴのとき)、および60℃(23塩基オリゴのとき)での洗浄を含む。等価ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件の詳細、試薬やバッファ、例えばSSCバッファおよび等価試薬および条件については、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, (1989) Cold Spring Harbor, N. Y.)を参照のとこ。
【0108】
また、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、反復配列を抑えるための複雑性低減核酸との水性核酸の「プレハイブリダイゼーション」が含まれる。例えば、あるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、表面に結合したポリヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションの前に、Cot-1 DNAと、又は、ランダム配列合成オリゴヌクレオチド等(例えば25mer)とのハイブリダイゼーションを含む。
【0109】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、上記の代表的な条件と少なくとも同じくらいストリンジェントであるハイブリダイゼーション条件であり、この条件は、上記のあるストリンジェントな条件と少なくともおよそ80%、典型的には少なくともおよそ90%同じくらいストリンジェントである場合に少なくともストリンジェントであるとみなす。他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当分野で公知であり、必要に応じて用いてもよい。
【0110】
ここで使用する「結合する」および「結合した」なる用語は、2以上の実体間の結合相互作用を指す。2つの実体、例えば分子が互いに結合する場合、例えば共有結合、イオン結合、水素結合、静電気的相互作用、疎水性相互作用、ファン・デル・ワールス力又はこれらの組合せにより「直接結合」してもよいし、例えば中間連結部分の使用により「間接的に結合」してもよい。
【0111】
「検出」、「検出する」などの用語は、定量的並びに定質的な測定値を包含する。
【0112】
本発明をさらに記載する前に、本発明は記載された特定の実施態様に限定されるものではなく、もちろん変化しうることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、ここで使用する用語は特定の実施態様のみを記載するためのものであり、限定するためのものではないことも理解されるべきである。
【0113】
値の範囲を示す場合、特に明確に示さない限り、その範囲の上限と下限の間の下限の10分の1の単位までの各介在値、および他の示す値かあるいは示した範囲内の介在値は、本発明の範囲内に包含される。これらの小さい範囲の上限および下限はそれぞれ、その小さい範囲内に含まれ、本発明にも包含され、その示す範囲の限定が明示的に除かれる。示す範囲がその限界値の一又は両方を含む場合、これらの含まれる限界値の何れか又は両方を除く範囲もまた本発明に含まれる。
【0114】
特別に定義しない限り、ここで使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の技術者によって共通して理解される意味と同じである。また、ここに記載するものと同様又は等価な方法および材料はいずれも本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法および材料をここに記載する。この文脈で「好適な」なる用語の使用は、いずれの場合であっても本発明の範囲を限定するものではないことを注記する。
ここで示したすべての出版物は、関連して出版物が引用される方法および/又は材料を開示および記載するために、出典明記によってここに援用される。
【0115】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形の「a」、「and」および「the」は、特に明示しない限り、複数形を含むことを注記する。ゆえに、例えば「連結分子」を指す言葉には複数の該連結分子が含まれ、「結合複合体」を指す言葉には一又は複数の結合複合体および当分野の技術者に公知なその等価物などが含まれる。さらに、特許請求の範囲は任意の要素を除くために記載されていることを注記する。よって、この記述は、「単に」や「のみ」といった排他的な用語およびクレームする要素の記載と関連するものの使用、又は「ネガティブな」限定の使用の例示となるものである。
【0116】
ここで論じる出版物は単に、本出願の出願日前の開示内容のために示す。ここで、本発明が先行発明によってこれら出版物に先行する権利がないと認めているものではない。さらに、示した出版物の日付は、第三者的な機関によって確認することが必要である実際の出版日と異なっていてもよい。
【0117】
以下の詳細な記載は、当分野の技術者に、本発明の製造および使用方法についての完全な開示および記載を提供するために示すものであり、発明者が発明として認める範囲を限定するためのものではない。特に示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧あるいは大気圧付近である。例えば、bp、塩基対;kb、キロベース;pl、ピコリットル;s又はsec、秒;min、分;h又はhr、時間;aa、アミノ酸;kb、キロベース;bp、塩基対;nt、ヌクレオチドなどといった標準の略語を用いてよい。
【0118】
(詳細な説明)
本開示内容は、標的分子および基質を含む結合複合体を形成する強度および/又は可能性を増すために用いられうる方法および組成物に関する。一態様では、複合体内結合相互作用の数を増やすために用いられうる連結分子が開示される。複合体間架橋、すなわち2以上の異なる結合複合体の架橋は、開示した結合複合体をさらに強くし、安定化するための方法と関連して利用してよい。
【0119】
複数の複合体内結合相互作用部位を有する標的分子−基質複合体の形成
一態様では、本開示内容は、標的分子および一又は複数の基質を含む結合複合体を製造するために利用されうる方法および組成物であって、この結合複合体は複数の複合体内結合相互作用部位を有するものである方法および組成物に関する。一又は複数の連結分子を利用して、標的分子−基質結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を作製する。ある実施態様では、一又は複数の連結分子を用いて、標的分子と検出可能な標識を含む結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を提供する。他の実施態様では、一又は複数の連結分子を用いて、標的分子とバイオチップ表面を含む結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を提供する。これらの実施態様は、標的分子の有無および/又は定量を検出するために設計されたアッセイといった特定のアッセイにおいて別々又は一緒に用いられてよい。
【0120】
一又は複数の連結分子を用いて、標的分子および検出可能な標識を含む結合複合体内に複数の複合体内結合相互作用部位を提供する場合、この連結分子は、一又は複数の検出可能な標識実体が連結分子(一又は複数)を介して標的分子を結合するように設計されてよい。例えば、一実施態様では、単一の検出可能な標識実体、例えば単一の磁性粒子のみが、連結分子(一又は複数)を介して特定の標的分子に結合している。他の実施態様では、複数の検出可能な標識実体が連結分子(一又は複数)を介して特定の標的分子に結合している。
【0121】
様々な分子標的は、核酸およびタンパク質標的を含むがこれに限らず現在開示されている方法および組成物と関連して利用されてよい。
【0122】
核酸連結分子
標的分子が核酸である場合、核酸連結分子を用いて、複数の複合体内結合部位を有する核酸標的分子−基質複合体を形成することができる。対象となるある類型の核酸連結分子は、対象の核酸標的分子に対して適切な条件下で特異的にハイブリダイズする単一の標的特異的結合部分を含む。このような核酸連結分子は、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、ここで反応ペアの第一メンバーは共有結合を形成するのに適した条件下で反応ペアの第二メンバーと反応する。対象となる別の核酸連結分子は、複数の標的特異的結合部分を含み、ここで各標的特異的結合部分は、対象の核酸標的分子の異なる領域に対して適切な条件下で特異的にハイブリダイズする。このような核酸連結分子は、反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、ここで反応ペアの第一メンバーは共有結合を形成するのに適した条件下で反応ペアの第二メンバーと反応する。
【0123】
複数の核酸連結分子を使用することができ、ここで複数の核酸連結分子の各核酸連結分子は標的特異的結合部分を含む。各標的特異的結合部分は、核酸標的分子の異なる配列に特異的に結合することができる核酸配列を含む。また複数の連結分子のそれぞれは、反応ペアの第二メンバーと適切な条件下で反応して共有結合を形成することができる反応ペアの第一メンバーを含む。一般に、反応ペアのこのような複数の第二メンバーを含む。複数の連結分子は、標的分子の複数の異なる領域に結合し、かつ、基質に結合した反応ペアの第二メンバーと複数の共有結合を形成することができるように設計されている。こうして、複数の複合体内結合部位を有する核酸標的分子-基質複合体を形成することができる。
【0124】
図1および2Aは、本明細書において開示される核酸連結分子の特定の実施態様を利用した結合相互作用を例示する。
【0125】
図1は、二つの異なる基質の利用を示す。第一の基質は検出可能な標識、例えば磁性粒子であり、第二の基質は標的固定化プローブを含むバイオチップ表面を含む。この例では、連結分子は、対象の核酸標的分子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む単一の標的特異的結合部分を含む。連結分子は図中「X」で示される反応ペアの複数の第一メンバーを含む。これらの第一メンバーは図中「Y」で示される反応ペアの第二メンバーと適切な条件下で共有結合を形成することができる。
【0126】
図2Aは、検出可能な標識と、バイオチップ表面を含む基質の利用を示す。図2Aは、標的固定化プローブ、核酸標的分子、複数の連結分子、検出可能な標識、およびバイオチップ表面を含む基質を含む結合複合体を図示する。図2Aに示されている複数の連結分子のそれぞれは、単一の標的特異的結合部分と、特異的な結合ペアの複数の第一メンバーとを含む。図2Aは反応ペアの第一メンバーと反応ペアの第二メンバーとの間の共有結合形成を図示しており、ここで反応ペアの第二メンバーは検出可能な標識と標的固定化プローブの両方に含まれている。この形態は、連結分子と検出可能な標識との間に形成される共有結合、並びに連結分子とバイオチップ表面を含む基質上の標的固定化プローブとの間に形成される共有結合を介して結合強度の増強を可能にする。
【0127】
複数の連結分子を利用する場合、反応ペアのメンバーを介して連結分子が基質に結合する位置によって、標的分子に対する連結分子のポジショニングが標的分子との結合前に著しい影響を受けることがないように、基質と接触させる前に複数の連結分子を標的分子(または標的分子を含むと思われる試料)に接触させてもよい。
【0128】
核酸連結分子の調製
現在開示されている連結分子の標的特異的結合部分には、DNA、RNA、これらのアナログ、修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せが含まれうる。
【0129】
連結分子の結合部分は、ホスホジエステル結合、又は、核酸、アミノ酸、糖質ないしはポリオール架橋のような一又は複数の他の試薬、又は、核酸ないしは修飾核酸鎖を架橋結合することができる他の架橋剤によって、互いに直接共有結合的に連結されてよい。結合の部位(一又は複数)が、結合部分の端、および/又は鎖の一又は複数の内部ヌクレオチドであってよい。
【0130】
現在開示されている連結分子の結合部分は、およそ10〜およそ80のヌクレオチド長の核酸配列を含んでいてよい。例えば、第一および/又は第二の結合部分は、およそ10からおよそ20、およそ20からおよそ30、およそ30からおよそ40、およそ40からおよそ50、およそ50からおよそ60、およそ60からおよそ70、又はおよそ70〜およそ80のヌクレオチド長の核酸配列を含んでいてよい。より典型的には、現在開示されている連結分子の第一および/又は第二の結合部分は、およそ10からおよそ60のヌクレオチド長、更に典型的にはおよそ10からおよそ45のヌクレオチド長の配列を含む。
【0131】
開示された連結分子が複数の標的特異的結合部分を含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の標的特異的結合部分を含むことができる。
【0132】
開示された連結分子が反応ペアの複数の第一メンバーを含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の反応ペアの第一メンバーを含むことができる。
【0133】
ある実施態様では、本明細書において開示される核酸連結分子は、線形構造で調製される。線形核酸連結分子は、当分野で公知の様々な技術を用いて調製されてよい。例えば、連結分子は、ポリメラーゼ増幅(例えばPCR)、クローニング技術、化学的架橋、酵素的アセンブリ、直接的な化学合成又はこれらの組合せを用いることによって調製されうる。
【0134】
核酸連結分子をポリメラーゼ増幅又はクローニングによって調製する場合、すべての連結分子をコードする核酸配列又はその断片は従来の手順によって一本鎖又は二本鎖の形態で作製されてよい。二本鎖の形態で作製する場合、連結分子および/又はその断片は、最終的に修飾するか、又はエキソヌクレアーゼによって消化して、一本鎖の連結分子および/又はその断片とする。また、核酸連結分子は、M13といった従来の一本鎖ファージベクターを用いて一本鎖の形態でクローニングされてよい。断片を酵素的又は化学的に連結して、連結分子を形成してもよい。酵素的にアセンブリする場合、個々の断片は、T4 DNA又はRNAリガーゼといったリガーゼによってライゲートしてよい。化学的架橋によって調製する場合、個体断片は、連結部位を提供する官能基を有するように誘導体化された一又は複数の核酸によって合成してもよいし、又は、このような部位を提供するように断片を合成した後に断片を誘導体化してもよい。
【0135】
また、本開示内容の連結分子は、分岐型構造で設計され、構築されてよい。分岐型連結分子は、5'末端、3'末端又はこれらの組合せである、少なくとも3つの末端を有するという点で、線形連結分子と区別される。分岐型核酸分子の調製方法は、1992年6月23日発行の米国特許第5124246号、8−13および18−25の段落に示されており、これは分岐型の多量体調製の説明のために出典明記によってここに援用される。更に、1996年12月3日発行の米国特許第5580731号は、現在開示された分岐型連結分子の合成に使われうるN−4修飾ピリミジンヌクレオチドの説明のために出典明記によってここに援用される。
【0136】
また、分岐型連結分子は、デンドリマー的なオリゴヌクレオチドの形態で調製されてよい。例として、Shchepinov et al. (1997) Nucleic Acids Research 25(22): 4447-4454を参照のこと。ここでは、著者は複数の保護した一次水酸基を有する分岐型ホスホラミダイトを利用して従来のモノマー的なオリゴヌクレオチドの上にデンドリマーの頭部の合成を記述する。また、デンドリマーオリゴヌクレオチドの他の種類とその調製を記載しているShchepinov et al. (1999) Nucleic Acids Research 27(15): 3035-3041も参照のこと。これらの参考文献は、デンドリマーオリゴヌクレオチドとその調製の説明のために、出典明記によってここに援用される。
【0137】
更に、分岐型連結分子は、アビジン/ストレプトアビジンとビオチン化核酸の組合せを使用して調製されてよい。例えば、個々のアビジン/ストレプトアビジン分子は、アビジン/ストレプトアビジン− ビオチン相互作用により、4つのビオチン化された核酸に連結されてよい。この種の連結分子は、4つのビオチン化核酸のうちの1つが対象の核酸標的分子の異なる領域に特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含み、その一方で、残りの3つのビオチン化核酸が反応ペアの第一メンバーで機能化された核酸を含むように、調製されてよい。
【0138】
また、核酸連結分子は、コンジュゲート、ライゲーション又はポリメリゼーションといった化学的又は酵素的な技術を使用して調製してよい。これらの化学的又は酵素的な技術は、線形および様々な分岐型の形態で複数の部位を形成するために応用してよい。
【0139】
図8−12は、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(又はそのアナログ)標的特異的結合部分と、反応ペアの複数の第一メンバーとを含む様々な「分岐型」および「星型」連結分子の合成スキームを示す。これらの連結分子は、ODN(又はそのアナログ)での直接合成によっても二工程合成方法によってでも調製され得、この二工程合成方法では、ビオチン分子を含む分岐型又は星型の部分は修飾したODN(又はそのアナログ)から別々に調製され、2つの成分はその後コンジュゲートされて、標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む連結分子が形成される。
【0140】
図8は、分岐型部分が固形支持体に結合したODN上へ直接合成される分岐型連結分子の調製についての直接合成スキームを示す。分岐型連結分子は、様々な公知の固形支持体又はインサイツ合成方法によって合成されてよい。
【0141】
図9は、反応ペアの複数の第一メンバーを含む分岐型部分の合成を示す。図10に示すように、この分岐型部分は、その後、ODNにコンジュゲートされ、連結分子を形成する。様々な官能基およびコンジュゲート化学、例えばクリック化学、チオおよびマレイミド、チオおよびブロモ−アルキル、アルデヒドおよびヒドラジンないしヒドラジド、アミンおよびNHSエステル、ジスルフィド結合形成、ディールスアルダー反応などはこのコンジュゲートを促すために有用である。これらの反応の官能基は図10に示したXおよびZである。
【0142】
また、連結分子は、反応ペアの複数の第一メンバーを含むデンドリマー(樹状)又は星状のオリゴマーに修飾したODNをコンジュゲートさせることによって合成されてもよい。図11および12は共に、反応ペアの複数の第一メンバーによりデンドリマー又は星状のオリゴマーを合成ないし修飾した後、修飾したオリゴヌクレオチドとコンジュゲートする二工程方法を示す。XおよびZは、例えばクリック化学、チオおよびマレイミド、チオおよびブロモ−アルキル、アルデヒドおよびヒドロジンないしヒドロジド、アミンおよびNHSエステル、ジスルフィド結合形成、ディールスアルダー反応などを用いたコンジュゲートに適切である官能基を表す。
【0143】
抗体連結分子
タンパク質標的に関して、修飾された抗体を連結分子として使用することができる。これらの連結分子は、複数の結合部位を形成して、比較的大きな実体、例えば磁性粒子を含む基質に対する結合効率および強度を増強するために使用することができる。
【0144】
対象となる抗体連結分子の一例は、標的タンパク質に特異的な一以上の標的特異的結合部分を含み、かつ、反応ペアの一以上の第一メンバーを含む、抗体連結分子である。
【0145】
開示された連結分子が複数の標的特異的結合部分を含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の標的特異的結合部分を含むことができる。
【0146】
開示された連結分子が反応ペアの複数の第一メンバーを含む場合、この複数とは、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の反応ペアの第一メンバーを含むことができる。
【0147】
別の例としては、複数の抗体連結分子が開示されており、ここで複数の抗体連結分子の各抗体連結分子が反応ペアの第一メンバーと標的特異的結合部分とを含み、標的特異的結合部分が、複数の抗体連結分子の別のメンバーとは、標的タンパク質の異なる領域に適切な条件下で結合する。このような連結分子によって形成される結合複合体の例示を図2Bおよび3に示す。
【0148】
複数の連結分子を利用する場合、反応ペアのメンバーを介して連結分子が基質に結合する位置によって、標的分子に対する連結分子のポジショニングが標的分子との結合前に著しい影響を受けることがないように、基質と接触させる前に複数の連結分子を標的分子(または標的分子を含むと思われる試料)に接触させてもよい。
【0149】
抗体連結分子の標的特異的結合部分は、タンパク質標的分子のエピトープに特異的に結合することができる、抗体の結合ドメインまたはそのフラグメント、例えばFv領域、を含むことができる。
【0150】
例として、複数の連結分子を利用する場合、複数の抗体連結分子の各メンバーがタンパク質標的分子の異なる領域に結合することができるように、連結分子の標的特異的結合部分によって結合されたエピトープがオーバーラップしないものである。
【0151】
別の抗体連結分子の例では、特異的結合対のメンバーが、ウシ血清アルブミンまたはデンドリマーのようなキャリアーに結合されてもよい。次いで、キャリアーが、標的分子の領域に特異的な抗体に結合されうる。この増幅サイクルを一回以上適用して、所望とするレベルの結合増強をもたらす連結分子を製造することができる。
【0152】
対象の特異的な結合ペアは、例えば、特異的抗体に認識されるポリペプチドおよび種々のハプテン(例えば、フルオレセンまたはジゴキシゲン)、結合レセプターに対するリガンド、ストレプトアビジンまたはアビジンに対するビオチン、並びに、相補的配列とのハイブリダイゼーションのためのオリゴヌクレオチドを含む。
【0153】
特定の実施態様では、開示された方法及び組成物において利用された連結分子は、タンパク質の翻訳後修飾の間にタンパク質に付加された部分と結合又は反応する。例えば、ある実施態様では、開示された連結分子は、翻訳後修飾の間にタンパク質に付加されたグリコシル基又は糖質と結合又は反応する。別の実施態様では、開示された方法及び組成物において利用された連結分子は、タンパク質の翻訳後修飾の間にタンパク質に付加された部分と結合又は反応しない。例えば、ある実施態様では、開示された連結分子は、翻訳後修飾の間にタンパク質に付加されたグリコシル基又は糖質と結合又は反応しない。
【0154】
抗体連結分子の調製
ここに開示される抗体連結分子の調製に利用できる種々の技術が知られている。例えば、抗体の調製及び標識化の一般的な方法については、Harlow, E. & Lane, D. 1998. Antibodies: A Laboratory Manual. New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。
【0155】
さらに、ポリペプチドに特異的な結合ペアメンバーおよび反応ペアメンバーを導入する方法が当該技術分野において知られている。抗体をビオチンで標識化する方法については、Harlow, E. & Lane, D. 1998. Antibodies: A Laboratory Manual. New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。ポリペプチドにアジド/アルキン結合ペアメンバーを取り込むことについては、Wang, Q. et al. (2003) J. Am. Chem. Soc. 125: 3192-3193を参照(参照としてここに含める)。タンパク質修飾およびコンジュゲートのより一般的な方法については、Greg T. Hermanson Bioconjugate Techniques, published by Academic Press 1996を参照。
【0156】
抗体結合に適した条件についても、当該技術分野において周知である。例えば、Harlow and Lane (Using Antibodies: A Laboratory Manual, CSHL Press, 1999); Harlow et al. (Antibodies: A Laboratory Manual, First Edition (1988) Cold spring Harbor, N.Y. Harlow, Sambrook and Ausubel, supra); Sambrook, et al, (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (2001) Cold Spring Harbor, N.Y.); およびAusubel, et al, (Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, 1995)を参照。
【0157】
標識プローブ
ここに記載した一部の実施態様では、対象の標的分子に検出可能な標識を非共有結合的に結合させるために標識プローブが利用される。標識プローブは、検出可能な標識に結合した分子であり、ここで前記分子は適切な条件下で標的分子と接触させたときに標的分子に特異的かつ少なくとも非共有結合的に結合することができる。標識プローブが核酸配列含む場合、プローブは典型的には約10から約80塩基の長さである。例えば、粒子標識にコンジュゲートした核酸分子は、約10から約20、約20から約30、約30から約40、約40から約50、約50から約60、約60から約70、または約70から約80ヌクレオチドの長さである。より典型的には、粒子標識にコンジュゲートした核酸分子は、約10から約60ヌクレオチドの長さであり、さらに典型的には約10から約45ヌクレオチドの長さである。
【0158】
検出可能な標識
開示した方法および組成物と関連して利用されうる当分野で公知の様々な検出可能な標識がある。これらには、例えば放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、発色団、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素インヒビター、金属イオン、磁性粒子、特定の結合対のメンバーなどが含まれる。
【0159】
検出可能な標識は、微粒子又はナノ粒子といった粒子の形態であってよい。磁性粒子が本明細書において開示する方法および/又は組成物に利用される場合、磁性粒子は、例えば、磁気ナノ粒子又は微粒子であってもよい。磁性粒子には、例えば、磁気ビーズ又は、強磁性体、フェリ磁性体、常磁性体、又はスーパー常磁性体といった磁性体から造られた他の小さい物体が含まれる。ある実施態様では、磁性粒子は、およそ10ナノメートルからおよそ100マイクロメートルの直径を有する酸化鉄(Fe2O3および/又はFe3O4)を含む。磁気ナノ粒子は、例えばベルギッシュグラートバハ、ドイツのミルテニーバイオテク社から入手可能である。典型的にはおよそ5からおよそ500ナノメートルの直径の、コートされた単一ドメイン酸化鉄粒子から造られた相対的に小さい粒子がある。また、磁性粒子は、ポリスチレンといった高分子マトリックスに包埋された磁気ナノ粒子から造られてよい。およそ0.2〜およそ5マイクロメートルの直径を有する典型的に滑らかで一般に球状である。この種の粒子は、カリフォルニア州カールズバッドのインヴィトロジェン社から入手可能である。磁性粒子の他の例には、Baselt et al. (1998) Biosensors & Bioelectronics 13: 731-739、Edelstein et al. (2000) Biosensors & Bioelectronics 14: 805-813、Miller et al. (2001) J. of Magnetism and Magnetic Materials 225: 138-144、Graham et al. (2002) J. Appl. Phys. 91: 7786-7788、Ferreira et al. (2003) J. Appl. Phys. 93, pp. 7281-7286および米国公開特許2005/0100930(2005年5月12日公開)によって記述されるものが含まれる。
【0160】
一態様では、およそ10ナノメートル〜およそ1000ナノメートルの平均直径を有する磁性粒子、例えばおよそ100ナノメートル〜およそ900ナノメートル、およそ200ナノメートル〜およそ800ナノメートル、およそ300ナノメートル〜およそ700ナノメートル、およそ400ナノメートル〜およそ600ナノメートル又はおよそ500ナノメートルの平均直径を有する磁性粒子が、開示した方法および組成物に利用される。
【0161】
結合複合体を強化および/又は安定させる架橋結合
結合複合体の強度および/又は安定性は、架橋結合および強い共有結合の導入によって増加しうる。これらの技術はここに記載する連結部分と組み合わせてもしくは単独で用いて、強力で安定した標的分子−基質結合複合体、例えば、標的分子−検出可能な標識複合体及び/又は標的分子-バイオチップ表面結合複合体、を提供することができる。
【0162】
例えば、単一の標的分子−基質結合複合体に見られる2以上の結合実体間の結合相互作用は、一又は複数の架橋剤の導入により強化および/又は安定化されうる。この種の架橋は「複合体内架橋結合」として記載されうる。ある実施態様では、この「複合体内架橋結合」は分子内複合体内への共有結合の導入を伴う。例えば、検出可能な標識を含む基質と接触する前に一又は複数の連結分子によりバイオチップ表面に結合した標的を安定させることが望ましい。ある実施態様では、検出可能な標識が一又は複数の連結分子によって標的分子に結合した後に、結合複合体をさらに安定化することが望ましい。
【0163】
また、開示内容は、「複合体間架橋結合」を導入するために架橋剤を使用することを考慮する。例えば、一実施態様では、単一の複合体は、式A−B−C−Dによって表され得、ここでAは複数の標的固定化プローブを含むバイオチップ表面、Bは標的分子、Cは一又は複数の連結分子、Dは検出可能な標識である。この単一の複合体は、架橋剤の導入により基質表面に存在する一又は複数の他の複合体に連結してもよい。
【0164】
共有結合の導入による架橋結合
架橋剤は、結合複合体のメンバー間および/又は複合体間での共有結合の形成を容易にするために導入されてよい。共有結合は、通常300〜400kJ/molの範囲である。これらの結合は、レセプターとそのリガンドとの間、タンパク質とタンパク質との間、又は複数のハイブリダイズした二本鎖核酸間の非共有結合相互作用より何倍も強い。
【0165】
例として、図2および4のそれぞれは、開示された結合複合体において付加的な共有結合を導入するための架橋剤の使用に関する例示的な実施態様を示す。これらの実施例では、反応ペアのメンバーが、連結分子と検出可能な標識との間に共有結合を形成するだけでなく、連結分子とバイオチップ表面上に存在する反応ペアのメンバーとの間に共有結合を形成するためにも利用される。
【0166】
図2および4は特定の連結分子の実施態様に関する架橋を示すものであるが、このような架橋は、ここに開示されたあらゆる連結分子の実施態様を含む複合体に適用できると解すべきである。
【0167】
結合対相互作用を形成する様々な共有結合は、Cu触媒アジド/アルキン[3+2]付加環化「クリック化学」、アジド/DIFO(ジフッ化シクロオクチン)Cuフリークリック化学、アジド/ホスフィン「シュタウディンガー反応」、アジド/トリアリールホスフィン「修飾シュタウディンガー反応」、および触媒されたオレフィンクロスメタセシスを含め、当分野で公知である。これらの結合対反応は、共有結合を導入するために利用して、(標的)−(連結分子)−(基質)結合複合体のメンバー間の相互作用を安定化および/又は強化する。当業者は、これらの反応のいくつか、例えばCu触媒アジド/アルキン[3+2]付加環化が結合対相互作用を触媒するために触媒剤の添加が必要であるのに対して、アジド/DIFO反応のような他のものはその必要がないことは理解するであろう。
【0168】
図5は、架橋剤の導入によりハイブリダイズした核酸鎖間に共有結合が形成される例示的な実施態様を示す。ハイブリダイズした核酸の鎖間、核酸とタンパク質との間、および異なるタンパク質分子間を架橋結合させるために用いられる当分野で有用な様々な試薬がある。異なる長さの架橋剤および官能基の組合せは、市販されている。
【0169】
例えば、光化学付加により共有結合核酸付加物を形成する光変異原性化合物の種類であるソラレンが利用されてよい。一次反応は、DNAのチミジンの5,6二重結合とソラレンの4',5'ないしは3,4何れかの二重結合との間でのシクロブタン環形成である。4',5'二重結合での反応によりフラン-側単一付加物が作製される。これは、対する鎖上に隣接するピリミジンを有する部位でさらに反応し、鎖間架橋が造られる。Spielmann et al. (1995) Proc. Natl. Acad. ScL USA Vol. 92, pp. 2345-2349。また、8-メトキシソラレンからのペプチド核酸(PNA)を含むソラレンの合成を記載している、Okamoto et al. (2001) Org. Lett. Mar 22;3(6): 925-7を参照のこと。鎖端にソラレン単位を含有するPNAは、相補的なDNAを有する安定した二体鎖を形成する。更なる機能性を有するソラレンも合成されている。例えば、Saffran et al. (1988) Nucleic Acids Research;16(l5): 7221-31は、ビオチン化したソラレン(BPsor)の合成を記述する。BPsorはDNAと光反応して鎖間架橋結合を形成する一方で、その後ストレプトアビジン分子と反応することができる付着したビオチンの形態で更なる結合機能性を提供する。
【0170】
また、ハイブリダイズした核酸分子の架橋結合は、米国特許第6800768号(2004年10月5日に発行)に記載されるように実施されてよい。この特許文献では、非ヌクレオシド光活性クマリン誘導体が核酸に組み込まれて架橋を促している。
【0171】
あるいは、特定の架橋結合条件の必要性に合うように架橋剤を設定し、合成してもよい。
【0172】
Pendergrast et al. (1992) Proc. Natl Acad. ScL USA Vol. 89, pp.10287-10291に記載されるように、光架橋結合は、また、タンパク質と核酸との間の結合相互作用を安定させるために利用されてよい。具体的には、Pedergrast et al.は、部位特異的突然変異とその後のシステイン特異的化学修飾からなる二工程手順によってタンパク質内の単一のアミノ酸で光反応性架橋剤を組み込む。まず、部位特異的突然変異を用いて、対象の位置に特定の溶媒へのアクセス可能なシステイン残基を導入する。それから、結果として生じたタンパク質を、システイン特異的異種二機能化光反応性架橋剤、例えば4-アジドフェナシル臭化物にて誘導体化する。定められた条件下で、特定の溶媒へのアクセス可能なシステイン残基を有するタンパク質と4-アジドフェナシル臭化物とが反応して、システイン残基の完全かつ非常に選択的な誘導体化が生じ、[(4-アジドフェナシル)-Cys]タンパク質形態のコンジュゲートが得られる。それから、タンパク質−DNA複合体を形成し、タンパク質−DNA複合体をUV照射して架橋結合を導入する。
【0173】
架橋剤は、異なる独立した試薬として応用されてよい。あるいは、架橋結合官能基は、連結分子、標的固定化プローブ、基質などに直接コンジュゲートしてよい。官能基は、所望の時に適用される光、pH変化又は特定の化学物質といった投入による命令で活性化されうる。さらに、本明細書に開示される結合部分および/又は連結分子は、選択する架橋剤の適用に適するように設計されうる。例えば、核酸を含む標的特異的結合部分へのタンパク質又は他の化学物質実体のコンジュゲートにより、架橋剤の選択性が拡がり、本来は核酸に適用できないものも適用可能となる。
【0174】
相補的核酸の導入
ハイブリダイズした一組の鎖の間の結合強度は抗体−抗原結合対のような多くの非共有結合対の結合強度を超えるように設計できるので、相補的核酸配列を導入して、結合複合体間の結合の強度を上げることができる。例えば、選択された配列を有する核酸を、抗体連結分子のような連結分子にコンジュゲートすることができる。二以上の連結分子にコンジュゲートした配列に相補的な核酸領域を含む分子を、複合体間及び/又は複合体内の架橋結合の形成に利用することができる。このような核酸は、適切にハイブリダイゼーションさせるために好適な長さに設計してよい。これは、所望の長さのリンカー切片を架橋核酸に挿入することによって達成されうる。リンカー切片は、ヌクレオチドおよびポリエチレングリコールといったポリマーを含む任意の好適な物質を含みうる。
【0175】
複数の複合体内結合相互作用部位を有する標的分子−基質複合体の作製方法
本明細書中に記載する連結分子は、複数の複合体内結合相互作用部位を有する標的−基質複合体を作製するように設計された方法において使用される。これらの方法は、例えば試料中における特定の標的分子の有無を決定するために設計されたアッセイと組み合わせて使用されうる。また、開示した方法を用いて、特定の試料中における特定の標的分子の量を量的に決定することができる。一般に、本明細書中に記載する方法は、本明細書中に記載する、標的分子、一又は複数の機能化基質および一又は複数の連結分子を含有すると思われる試料を反応混合物に混合することを含む。
【0176】
一実施態様では、この方法は、2つの異なる種類の基質を利用する。第一の種類はバイオチップ表面を含み、第二の種類は検出可能な標識であるか又は検出可能な標識を含むように修飾されている。標的分子を含むと思われる試料は、本明細書中に記載する一又は複数の連結分子と反応混合物中で組合わす。十分な時間をおいて、連結分子を(存在する場合には)標的分子に結合させた後、反応混合物を、本明細書中に記載のバイオチップ表面を含む基質と接触させる。バイオチップ表面は、一又は複数の標的固定化プローブによって機能化されてよい。標的固定化プローブを利用する場合、(標的分子)−(連結分子)複合体は標的固定化プローブによって直接結合されていてよい。ついで、反応混合物を、第二種類の基質、すなわち検出可能な標識と接触させることができる。検出可能な標識に存在する反応ペアのメンバーにより、標的分子に結合した一又は複数の連結分子への結合が可能になる。この様式で、標的分子と検出可能な標識を含む固定された複合体が形成される。ついで、検出可能な標識の存在および/又は量は、例えばバイオチップに組み込まれる磁気センサーの使用により、当分野で公知の様々な方法に従って検出されうる。
【0177】
ある実施態様では、一又は複数の上記の結合工程の後に一又は複数の洗浄工程を行い、非特異的に結合した分子を除去する。
【0178】
いくつかの実施態様は標的固定化プローブを利用してバイオチップ表面上の標的分子を固定しているが、バイオチップ表面に結合した一又は複数の反応ペアのメンバーと組み合わせて一又は複数の連結分子を使用して、バイオチップ表面上の標的分子も固定されうることを注記する。よって、ある実施態様では、開示された方法により結合複合体が形成される。この複合体では、バイオチップ表面上の反応ペアのメンバーに結合する一以上の連結分子により標的分子はバイオチップ表面に結合しており、そして、検出可能な標識上の反応ペアのメンバーに結合する一以上の連結分子によって検出可能な標識は標的分子に結合している。
【0179】
標的分子と基質との間に共有結合相互作用を導入して検出可能な共有結合複合体を生成する
架橋剤、例えばソラレン、及び/又は反応ペアのメンバー、例えばアジド/アルキン[3+2]付加環化「クリック化学」を用いた共有結合の導入を使用して、標的分子と基質との間の結合相互作用の強度を増強させることができる。これらの技術を、単独またはここに記載されている連結分子と組み合わせて使用して、検出可能な標識、標的分子、およびバイオチップ基質を含む安定化された結合複合体を製造することができる。
【0180】
例えば、クリック化学を全体的または部分的に利用して、標的分子の粒子ベース検出を増強するために強固な共有結合構造を形成することができる。図5は、標的核酸配列を捕捉および標識するための磁性粒子によって例示される、標的固定化プローブ、連結分子、および検出可能な標識を使用した結合複合体の形成を説明するものである。図5は核酸標的分子を含む複合体の形成を図示するものであるが、一般的な方法工程は他の標的、例えばタンパク質標的、に等しく適用できる点に注意すべきである。二種類の構造の共有的「固定化」が示されている。これらの種類の共有結合的「固定化」は単独でも組み合わせても使用することができる。
【0181】
図5に示される例示的な実施態様では、核酸標的分子がバイオチップ表面の標的固定化プローブとハイブリダイズし、次いで、連結分子とハイブリダイズする。連結分子は、Xで示される反応ペアの第一メンバー、例えばクリック化学官能基と、標的分子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列とを含む。洗浄工程を行って、標的と特異的にハイブリダイズしなかった連結分子を取り除くことができる。この構造体を、反応ペアの第一メンバーと反応することができる反応ペアの第二メンバー(Yで示す)で機能化された磁性粒子とインキュベートして、バイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体の共有結合的「固定化」を完成させることができる。例えばアジド/アルキン[3+2]付加環化において、反応ペアのメンバーの反応が触媒の添加を必要とする場合には、適切な触媒(例えばCuイオン)が配合される。あるいは、アジド/DIFO反応のような反応を利用して、触媒を追加することなく、磁性粒子と連結分子とを共有結合的に連結させてもよい。得られた共有結合複合体は、例えば磁気トンネル接合(MTJ)センサのような適切な磁性センサを用いて検出することができる。図5に説明するように、得られた非共有結合的構造体は核酸−架橋剤、例えばソラレンを用いて架橋することができる。Pierce Biotechnology, Inc.およびFisher Scientific Internationalから商業的に入手可能なものなど、多くの架橋剤が、タンパク質及び核酸の両方の技術分野において知られている。追加の架橋剤をカスタム合成することができる。図5は、この工程を、反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間に共有結合を形成する前に行うものとして示しているが、この工程は、例えば、反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間に共有結合を形成した後のように、工程中の適切なときに行うことができる。
【0182】
図6は、磁性粒子がYで示される反応ペアのメンバーで機能化されている実施態様を示す。図6に示される特定の例では、核酸標的分子がPCRを用いて増幅される。反応混合物において、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、反応ペアの第一メンバーを導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される反応ペアの第一メンバーを含むように修飾された一以上の塩基を有する。
【0183】
アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。また、標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバー(Yで示される)を含むように修飾することができる。ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、反応ペアの第二メンバーで機能化された磁性粒子とインキュベートすることができ、ここでインキュベーションは反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間の共有結合の形成に適した条件下で行われる。例えば、反応ペアの第一及び第二メンバーがクリック化学官能基である場合には、インキュベーションはCuイオン触媒の存在下で行ってもよい。
【0184】
修飾された標的分子に対する標的固定化プローブのハイブリダイゼーションによって形成された非共有結合的構造体は、ソラレンなどの核酸架橋剤を用いて架橋することができる。この工程は、例えば、反応ペアの第一メンバーと第二メンバーとの間に共有結合を形成する前又は後に、工程中の適切なときに行うことができる。
【0185】
さらなる実施態様を図7に説明する。対象の標的が核酸である場合、核酸標的分子をPCRを用いて増幅することができる。反応混合物中に、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、例えばクリック化学官能基などの反応ペアの第一メンバーを導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される反応ペアの第一メンバーを含むように修飾された一以上の塩基を有する。次いで、アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバー(Yで示される)を含むように修飾される。ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、標識化プローブで機能化された磁性粒子とインキュベートすることができる。標的が核酸である場合には、標識化プローブは、アンプリコンの配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。また標識化プローブは、適切な条件下でアンプリコンにおける反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる反応ペアの第二メンバーを含む。標識化プローブとアンプリコンとのハイブリダイゼーションは、非共有結合核酸結合複合体を完成させる。反応条件が触媒の使用を必要とする場合、触媒がバイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を共有結合的に「固定」するために配合され、かくして検出可能な共有結合複合体が形成される。得られた共有結合複合体は磁性センサを用いて検出することができる。ソラレンまたは別の適切な核酸架橋剤を、この方法に関連して使用し、さらなる共有結合を導入して、検出可能な共有結合複合体をさらに安定化できることも考慮される。
【0186】
先に記載したように、核酸をクリック化学アジド/アルキン結合ペアメンバーで修飾する方法は当該分野で公知である。例えば、5−エチニル−2’−デオキシウリジン(EdU)の導入、およびCu−触媒[3+2]付加環化反応を介した蛍光アジドによるその後の検出について記述するSalic and Mitchison (2008) PNAS 105 (7): 2415-2420を参照(参照としてここに含める)。また、クリック化学官能基で修飾されたヌクレオチド構築ブロックの合成について記述した2008年5月に公開されたWO 2008/052775も参照(参照としてここに含める)。これらの方法は、検出可能な共有結合複合体を形成するためにここに記載した方法と関連して利用可能である。
【実施例】
【0187】
実施例1:反応ペアの第一メンバーを含む分岐型またはデンドリマー型分子の合成と標的結合部分としてオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)とのコンジュゲート
上記のように、図8−12は、オリゴデオキシヌクレオチド(ODN) 標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む様々な「分岐型」および「星型」連結分子の合成スキームを示す。
【0188】
2つの例示的な合成方法を以下の予測的な実施例に記載する。この方法はいずれも、所望のスペーシングおよび化学を生産するために異なるサイズおよび官能基の固形表面合成のために単量体を適応するなどといった、変更を有する固相オリゴヌクレオチド合成化学スキームを使用する。1つの方法は、図8に示すように、核酸標的に結合するためのオリゴヌクレオチド配列と個体支持体上の全体としての第一の反応ペアのメンバーを有する分岐型部分とを合成することである。あるいは、図9および10に示すように、分岐型部分と標的結合部分を別々に合成し、それからコンジュゲートして全分子を形成する。
【0189】
両方法では、固形支持体上にクリーバブルな保護基DMT(ジメトキシトリチル)を有する制御細孔ガラス(CPG)を用いて、固相合成を始める。酸溶液にてDMT基を取り除いた後、この方法が全連結分子を直接合成することである場合、オリゴ核酸合成を最初に行い、図8に示すように分岐型部分の合成を始める前に標的結合オリゴヌクレオチドの伸長を生成する。この方法が2つの部分を別々に合成してそれらをコンジュゲートする場合、図9および10に示すように、固形表面上での分岐型または星型部分の合成は固形支持体上ですぐに始めることができる。
【0190】
「Y」型の二官能性リンカーのユニットは、ホスホラミダイト合成化学を用いて固形支持体上にカップリングする。図9に示すように、「Y」型の二官能性リンカーは、その2つの対称アームの末端に、DMTなどの保護基Xによって覆われた2つの官能基を有する。DMT基は酸性溶液を使用して非ブロック化されてよく、「Y」型の二官能性リンカーの他方のユニットは組み込まれてよい。所望の数の「Y」型二官能性リンカーのユニットを骨格に組み込んだ後に、DMT基を酸性溶液を用いて非ブロック化することができる。DMTのような保護基を除去した後、露出した水酸基を選択したいくつかの官能基を形成するために修飾することができる。例えば、アルキニル官能基を、5’−ヘキシニルホスホラミダイトを用いて、これらの末端水酸基に導入することができる。合成が終わったとき、全分岐型リンカー分子を、強力なアルカリ性溶液を使用してCPG固形支持体から切断してよい。最終的な化合物を用いて、MTJバイオセンサー上に標的分子および検出可能な磁性粒子を含む複合体を生産することができる。
【0191】
実施例2:デンドリマー分子上の反応ペアの複数の第一メンバーの合成と、標的結合部分としてのオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)とのコンジュゲート
デンドリマーを利用した連結分子合成スキームの予測的実施例は以下のとおりである。
【0192】
デンドロンにシスタミンコアおよび末端アミノ基を有する様々な生成物(サイズ)のポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーは、デンドリティックナノテクノロジー社から市販されている(Dendritic Nanotechnologies, Inc., 2625 Denison Drive. Mount Pleasant, MI 48858)。シグマ−アルドリッヒ社又はサーモフィッシャーサイエンティフィックのピアスバイオテクノロジー社から市販されている様々な修飾又は架橋試薬を用いて、末端アミノ基は、共有結合を形成する反応ペアのメンバーを加えるように容易に誘導体化できる。例えば、末端アミノ基は、EDCのようなカルボジイミド試薬によって活性化されたヘキシン酸を用いた反応により、アルキニル基に変換することができる。末端アミノ基は、コハク酸無水物でアミノ基を最初に修飾することによりアジド基に変換することができる。得られた末端カルボキシル基は、EDCによって活性化され、シグマ−アルドリッヒ社から入手できる1−アミノ−11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカンとコンジュゲートすることができる。
【0193】
反応ペアの複数の第一メンバーが形成される末端アミノ基の修飾の前あるいは後に、シスタミンコアを有するデンドリマーを、様々な標的特異的結合部分のコンジュゲートが可能な特定の部位を提供するスルフヒドリル基に還元されてよい。タンパク質、ペプチドまたは核酸標的特異的結合部分への遊離スルファヒドリル基による機能化樹状分子のコンジュゲートには、通常、スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラートといったヘテロ二官能性架橋リンカーの使用が必要である。場合によって、コンジュゲートは、十分なスペーシングを提供し立体障害を最小にするスペーサーにより媒介されてよい。
【0194】
このようにして、標的特異的結合部分および反応ペアの複数の第一メンバーを含む連結分子を合成することができる。
【0195】
実施例3:分岐型連結分子の「二工程」合成スキーム
分岐型連結分子を合成するために、固形支持体にホスホラミダイト化学を利用した以下の予測的合成スキームを実施することができる。
【0196】
図13に示すように、クリーバブル単量体(1)によって誘導体化した制御細孔ガラスビーズ(CPG)を、固形支持体として用いて合成を始める。酸性溶液にて保護基DMT(ジメトキシトリチル)を取り除いた後に、水酸基を露出させる。「Y」型の二官能性単量体のユニット(2)を、ホスホラミダイト化学を用いて単量体(1)にカップリングさせる。非対称性ダブラーホスホラミダイトと称する「Y」型二官能性単量体(2)は、各々の末端に、酸性易動性基であるDMTと塩基性易動性基であるFMOCの2つの異なる保護基を有する。DMT基は酸性溶液を使用して再び取り除き、その後、「Y」型二官能性単量体の他方のユニット(2)を組み込んで、分岐型実体の主鎖を伸長する。
【0197】
「Y」型二官能性単量体の複数のユニットは、同じホスホラミダイト化学を繰り返して組み込むことができる。FMOC保護基は、カップリング反応を複数回繰り返している間安定である。「Y」型二官能性単量体の所望の数のユニットが主鎖に取り込まれた後に、FMOC保護基は、弱アルカリ性溶液、例えば1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)を含むアセトニトリルを用いて還元し、分岐の末端上に水酸基を露出させる。様々な官能基Xは、異なるホスホラミダイト修飾体(114)を使用して水酸基上に導入することができる。例えば、官能基Xは、アルキン、アジドまたは他の好適な反応ペアメンバーであってよい。
【0198】
ホスホラミダイト修飾体を官能基と接着させた後に、分岐型実体を有するCPG固形支持体(115)を濃縮した水酸化アンモニウムにて処理して、保護基を取り除き、分岐型実体を固形支持体から切断する。トリチル疎水性基を含む所望の長さの分岐型生成物は、HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)を用いて粗混合物から単離することができる。その後、トリチル基は、精製した生成物を酸にて処理して取り除く。ジスルフィド結合は、DTTといった還元剤を用いて還元し、分岐型リンカー(116)の末端にチオ基を生成させる。分岐型リンカー(116)は、標的分子、例えばオリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、糖質、脂質などに対する親和性を有する生体分子とコンジュゲートさせるために用いてよい。
【0199】
様々な生体分子とコンジュゲートするための、分岐型実体の側鎖上にアミノ官能基を導入する方法を、図14に示す。
【0200】
上記のホスホラミダイト合成化学を使用して、「Y」型二官能性単量体のユニット(2)を選択した数だけ組み込み、固形支持体上に分岐型実体(3)を形成させる。FMOC保護基は、弱アルカリ性溶液、例えばDBUを含むアセトニトリルによって取り除くことができる。露出した水酸基に、5'-アミノ修飾体C6-TFA(グレン研究所から入手)といったアミノ修飾体ホスホラミダイト単量体(117)をカップリングさせ、分子(118A)を生成することができる。それから、分岐型実体を脱保護し、濃縮した水酸化アンモニウムにて処理して固形支持体から切断する。
【0201】
HPLC精製の後、その側鎖(118B)上にアミノ基を有する分岐型実体は更なるコンジュゲートに用いることができる。多くの修飾および架橋結合試薬が使われてよい。図15に示すように、N-ヒドロキシスクシミド(NHS)エステルを一端に、そして反応ペアの第一メンバー(W)を他方の末端に有する連結試薬(119)を用いることができる。リンカー類(119)は市販されているか、特別に合成することもできる。糖質、ペプチド、タンパク質、DNA、RNAなどの多くの生体分子は、化学的に修飾してもよいし、リンカーとコンジュゲートさせて、分岐型実体(118B)上のアミノ基と反応させるためにNHSエステル基を導入してよい。
【0202】
(118B)の側鎖を(119)にて修飾することによって(120)を形成させた後、(120)のジスルフィド結合を、DTTのような還元剤を適用して、(121)の遊離チオ基に変換してよい。次いで、マレイミド機能化生体分子(122)例えばオリゴヌクレオチドを、(121)上のチオとコンジュゲートさせてよい。
【0203】
実施例4:分岐型連結分子の「直接」合成スキーム
図16に記載の他の方法は、固相上のオリゴヌクレオチドの5'末端の分岐型リンカーを合成し修飾することである。多くの官能基および分子は、分岐型リンカーの側鎖に連結してよい。
【0204】
オリゴヌクレオチドは、ホスホラミダイト合成化学を用いて固形支持体に合成してよい。場合によって、化学的スペーサーは、ホスホラミダイトを持つスペーサーにてオリゴヌクレオチドの末端に組み込んでよい。次いで、分岐型実体は、存在する場合にはオリゴヌクレオチド上に又はスペーサー上に直接合成してよい。オリゴヌクレオチド又はスペーサーからDMT保護基を取り除いた後に、「Y」型の二官能性単量体(2)のユニットを、ホスホラミダイト合成化学を用いて露出した水酸基にカップリングさせる。「Y」型二官能性単量体(2)は、各々の末端に、酸性易動性基であるDMTと塩基性易動性基であるFMOCの2つの異なる保護基を有する。DMT基は酸性溶液を使用して脱ブロックし、その後、「Y」型二官能性単量体の他方のユニット(2)を組み込んで、分岐主鎖を伸長する。この工程を繰り返すことによって、「Y」型二官能性単量体の既定数を、(221)から分岐型構造に組み込むことができる。
【0205】
分岐型実体の側鎖上のFMOC保護基を、弱酸性溶液、例えばDBUを含むアセトニトリルを用いて除去し、多くの官能基を形成させるか又は生体分子とコンジュゲートさせるように修飾できる水酸基を露出させる。これらの修飾は、適切なホスホラミダイト修飾体(222)を使用して導入してもよい。修飾に使用される官能基および分子には、例えば、アルキン、アジド、または反応ペアの他の適切な第一メンバーが含まれる。
【0206】
側鎖上に複数の官能基又は分子を持つ合成したオリゴヌクレオチドおよび分岐型リンカー(223)を脱保護し、濃縮した水酸化アンモニウムによって固形支持体から切断する。アンモニアは蒸発によって除去する。トリチル疎水基を含有する所望の分岐型リンカー生成物は、HPLCを用いて粗混合物から単離する。トリチル基は酸にて処理することによって切断し、n−ブタノール抽出によって取り除かれうる。側鎖上に複数の官能基又は分子を持つ純オリゴヌクレオチドおよび分岐型リンカー(224)は、核酸標的分子とMTJバイオセンサー上の磁性粒子との架橋結合を含むがこれに限定されず多くの用途に利用することができる。
【0207】
実施例5:核酸標的分子、バイオチップ表面、および磁性粒子を含む検出可能な共有結合複合体を製造するための共有結合相互作用の導入
以下の予測的な実施例では、クリック化学を用いて、核酸標的分子の粒子ベース検出を増強するために、強力な共有結合的に連結した構造体を形成する。図5は、標的核酸配列を捕捉および標識するための、標的固定化プローブ、連結分子、および磁性粒子を用いた結合複合体の形成を示す。
【0208】
核酸標的分子をバイオチップ表面上の標的固定化プローブとハイブリダイズさせ、その後、連結分子のハイブリダイゼーションを行う。連結分子は、Xで示される第一のクリック化学官能基と、標的分子と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列とを含む。洗浄工程を行って、標的に特異的にハイブリダイズしていない連結分子を取り除くことができる。得られた非共有結合的構造体を、例えばソラレンのような核酸架橋剤を用いて架橋することができる。
【0209】
ソラレン架橋に引き続いて、この構造体を、第一のクリック化学官能基と反応することができる第二のクリック化学官能基(Yで示す)で機能化された磁性粒子とインキュベートして、バイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体の共有結合的「固定化」を完成させることができる。
【0210】
例えばアジド/アルキン[3+2]付加環化において、クリック化学官能基の反応が触媒の添加を必要とする場合には、適切な触媒(例えばCuイオン)が配合される。あるいは、アジド/DIFO反応のような反応を利用して、Cuイオン触媒を追加することなく、磁性粒子と連結分子とを共有結合的に連結させてもよい。得られた共有結合複合体は、磁気トンネル接合(MTJ)センサを用いて検出することができる。
【0211】
さらなる例では、磁性粒子がYで示されるクリック化学官能基で機能化されている。図6に示されるように、核酸標的分子がPCRを用いて増幅される。反応混合物において、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、第一のクリック化学官能基を導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される第一のクリック化学官能基を含むように修飾された一以上の塩基を有する。アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。また、標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる第二のクリック化学官能基(Yで示される)を含むように修飾することができる。
【0212】
ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、第二のクリック化学官能基で機能化された磁性粒子とインキュベートすることができ、ここでインキュベーションは第一のクリック化学官能基と第二のクリック化学官能基との間の共有結合の形成に適した条件下で行われる。例えば、インキュベーションはCuイオン触媒の存在下で行われるように設計することができる。
【0213】
任意に、ソラレンまたは他の適切な核酸架橋剤を用いて、複合体の非共有結合的に結合したメンバー間に共有結合を導入し、これによって検出可能な共有結合複合体をさらに安定化させることができる。
【0214】
さらなる例を図7に説明する。最初の工程において、核酸標的分子がPCRを用いて増幅される。反応混合物中に、一以上の標準的なデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)が、第一のクリック化学官能基を導入するように修飾されたdNTPで置き換えられる。その結果、アンプリコンは、Xで示される第一のクリック化学官能基を含むように修飾された一以上の塩基を有する。次いで、アンプリコンは、バイオチップの表面の標的固定化プローブにハイブリダイズすることができる。標的固定化プローブは、適切な条件下でアンプリコンに存在する第一のクリック化学官能基と共有結合を形成することができる第二のクリック化学官能基(Yで示される)を含むように修飾される。
【0215】
ハイブリダイゼーションを介して形成される非共有結合的構造体は、標識化プローブで機能化された磁性粒子とインキュベートすることができる。標識化プローブは、アンプリコンの配列と特異的にハイブリダイズすることができる核酸配列を含む。また標識化プローブは、適切な条件下でアンプリコンにおける反応ペアの第一メンバーと共有結合を形成することができる第二のクリック化学官能基をも含む。標識化プローブとアンプリコンとのハイブリダイゼーションは、非共有結合的核酸結合複合体を完成させる。共有結合形成反応がCu触媒の添加を必要とする場合には、そのような触媒が添加される。
【0216】
得られた共有結合は、バイオチップ表面と磁性粒子との間の核酸検出構造体を「固定」し、それによって検出可能な共有結合複合体を形成する。得られた共有結合複合体はMTJセンサのような磁性センサを用いて検出することができる。
【0217】
任意に、ソラレンまたは別の適切な核酸架橋剤を使用し、複合体の非共有結合的に結合したメンバー間に共有結合を導入して、検出可能な共有結合複合体をさらに安定化できる。
【0218】
例示的な共有結合形成条件は以下の通りである:銅(I)触媒の存在下では、1,3−付加環化がアルキン基とアジド基との間で起こり、トリアゾール結合−共有結合的連結を形成する。典型的なクリック化学反応条件は、0.1mM 硫酸銅および銅(II)を活性のある銅(I)種に還元する1mMの還元剤(例えば、アスコルビン酸ナトリウムまたはトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP))を含む、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4−0.1%Tweenあるいは第三級ブタノール−水混合物である。トリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン(TBTA)のような銅(I)安定化リガンドも、反応効率および反応速度を増強するために、通常はCu(I)種の2−5倍モル過剰量で、使用することができる。適切かつ生体分子非共有結合複合体に適合するものであれば、クリック化学反応は活性Cu(I)種の供給源としてヨウ化銅(I)を用いてアセトニトリルまたはジメチルホルムアミドのような極性溶媒中で効率的に行われる。
【0219】
本発明を特別な実施態様を参照しながら説明したが、当業者は、様々な変更がなされること、本発明の精神および権利範囲を逸脱しない範囲で均等物と置き換えられることは理解するであろう。さらに、特定の状況、物質、組成物、方法、工程を本発明の対象物、精神および権利範囲に合わせるために多くの変更がなされうる。このような変更のすべては本明細書に添付した特許請求の範囲の権利範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体を生成する方法であって、
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含むと思われる試料と、
連結分子と
を反応混合物中において混合することを含み、
このとき、前記連結分子が、
存在する前記標的分子に特異的に結合する標的特異的結合部分であって、該連結分子が標的特異的結合部分を複数含むとき、その標的特異的結合部分のそれぞれが、存在する前記標的分子の異なる領域に特異的に結合する、一又は複数の標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの一以上の第二メンバーと
を含み、
このとき、前記の混合が、前記連結分子が存在する前記標的分子に特異的に結合するために十分な反応条件下にあり、かつ、
前記反応混合物を前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件にさらすことを含み、
ここで、前記標的分子が前記試料中に存在する場合には、前記連結分子が前記標的分子に特異的に結合し、前記反応ペアの一以上の前記複数の第一メンバーと前記一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、方法。
【請求項2】
連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が前記反応ペアの複数の第二メンバーを含み、かつ、連結分子が前記反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の前記標的特異的結合部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複合体の有無を検出することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記複合体の形成を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記基質が検出可能な標識である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含み、ここで前記バイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含み、前記混合が存在する前記標的分子が前記複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行われ、ここで、前記標的分子が前記試料中に存在する場合、前記複数の標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子は前記連結分子に特異的に結合し、かつ、前記連結分子は前記反応ペアの一以上の前記複数の第一メンバーと前記一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが、前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、かつ、前記連結分子が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の有無を検出することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記核酸標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の形成を生じる、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
複数の複合体が形成され、このとき前記複数の複合体の各メンバーがバイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、および検出可能な標識を含んでおり、かつ、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により前記複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項21】
標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体を生成する方法であって、
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含むと思われる試料と、
複数の連結分子と
を反応混合物中において混合することを含み、
このとき、前記複数の連結分子の各メンバーが独立して一以上のコピー数で存在し、各メンバーが、
存在する前記標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの第二メンバーと
を含み、
このとき、前記の混合が、前記複数の連結分子が存在する前記標的分子に特異的に結合するために十分な反応条件下にあり、かつ、
前記反応混合物を前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件にさらすことを含み、
ここで、前記標的分子が試料中に存在する場合に、前記複数の連結分子が前記標的分子の複数の異なる領域に特異的に結合し、前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記複数の連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、方法。
【請求項22】
前記複合体の有無を検出することを更に含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記複合体の形成が生じる、請求項21記載の方法。
【請求項24】
複数の複合体が形成され、その複数の複合体の各メンバーがバイオチップ表面、複数の連結分子、標的分子および検出可能な標識を含み、かつ、反応混合物中に架橋剤を添加して、前記複数の複合体の少なくとも二つを一以上の共有結合を介して連結することをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記基質が検出可能な標識である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含み、ここで前記バイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含み、前記混合が存在する前記標的分子が前記複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行われ、ここで、前記標的分子が前記試料中に存在する場合、前記複数の標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子は前記複数の連結分子に特異的に結合し、かつ、前記複数の連結分子は前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが、前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、かつ、一以上の前記複数の連結分子が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の有無を検出することをさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記核酸標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の形成をもたらす、請求項28記載の方法。
【請求項32】
複数の複合体が形成され、前記複数の複合体の各メンバーがバイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含んでおり、かつ、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により前記複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む、請求項28記載の方法。
【請求項33】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項35】
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含有すると思われる試料と、
連結分子と
を含む反応混合物であって、
ここで前記連結分子が、
存在する前記標的分子に特異的に結合する標的特異的結合部分であって、連結分子が複数の標的特異的結合部分を含むとき、存在する前記標的分子の異なる領域にそれぞれが特異的に結合する一以上の標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの一以上の第二メンバーと
を含み、
前記標的分子が試料中に存在するとき、前記連結分子が前記標的分子と特異的に結合し、前記反応ペアの前記複数の第一メンバーの一以上と前記反応ペアの前記一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、反応混合物。
【請求項36】
連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が前記反応ペアの複数の第二メンバーを含み、かつ、連結分子が前記反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の前記標的特異的結合部分を含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項37】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項38】
前記基質が検出可能な標識である、請求項35記載の反応混合物。
【請求項39】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項38記載の反応混合物。
【請求項40】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項41】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項42】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項43】
前記反応混合物がバイオチップ表面を含む基質を更に含み、このバイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含むものであり、前記標的分子が前記試料中に存在するとき、前記標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子が前記連結分子に特異的に結合し、前記連結分子が、前記反応ペアの前記複数の第一メンバーの一以上と一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項38記載の反応混合物。
【請求項44】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、前記連結分子が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項43記載の反応混合物。
【請求項45】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項43記載の反応混合物。
【請求項46】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項43記載の反応混合物。
【請求項47】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項43記載の反応混合物。
【請求項48】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項43記載の反応混合物。
【請求項49】
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含むと思われる試料と、
複数の連結分子と
を含む反応混合物であって、
このとき、前記複数の連結分子の各メンバーが独立して一以上のコピー数で存在し、各メンバーが、
存在する前記核酸標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの第二メンバーと
を含み、
前記標的分子が試料中に存在するとき、前記複数の連結分子が前記標的分子の複数の異なる領域に特異的に結合し、前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記複数の連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、反応混合物。
【請求項50】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項49記載の反応混合物。
【請求項51】
前記基質が検出可能な標識である、請求項49記載の反応混合物。
【請求項52】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項51記載の反応混合物。
【請求項53】
前記反応混合物がバイオチップ表面を含む基質を更に含み、このバイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含むものであり、前記標的分子が前記試料中に存在するとき、前記複数の標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子が前記複数の連結分子に特異的に結合し、前記複数の連結分子が、前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項51記載の反応混合物。
【請求項54】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、前記複数の連結分子の一以上が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項53記載の反応混合物。
【請求項55】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項53記載の反応混合物。
【請求項56】
反応ペアの複数の第一メンバーを含む磁性粒子と、
連結分子と
を含むキットであって、
前記連結分子が、
存在する標的分子に特異的に結合する標的特異的結合部分であって、該連結分子が標的特異的結合部分を複数含むとき、存在する前記標的分子の異なる領域にそれぞれが特異的に結合する一又は複数の標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの一以上の第二メンバーと
を含む、キット。
【請求項57】
連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が前記反応ペアの複数の第二メンバーを含み、かつ、連結分子が前記反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の前記標的特異的結合部分を含む、請求項56記載のキット。
【請求項58】
バイオチップ表面を含む基質をさらに含み、ここで前記バイオチップ表面は、存在する前記標的分子と特異的に結合する複数の標的固定化プローブを含む、請求項56記載のキット。
【請求項59】
検出可能な共有結合複合体を形成する方法であって、
標的分子を含むと思われる試料を、反応ペアの複数の第一メンバーを含む修飾された標的分子を含む反応混合物を生成するのに十分な条件にさらし、
前記反応混合物を標的固定化プローブと接触させ、このとき、当該接触は、存在する前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件下で行われ、かつ、前記標的固定化プローブは前記反応ペアの第二メンバーを含んでおり、
前記反応混合物を磁性粒子と接触させ、このとき、当該磁性粒子は前記反応ペアの第二メンバーを含んでおり、
前記反応混合物を前記反応ペアの第一および第二メンバー間で共有結合を形成するのに適した条件にさらし、このとき、前記標的分子が試料中に存在する場合には、前記修飾された標的分子を含む検出可能な共有結合複合体が形成される、
ことを含む、方法。
【請求項60】
前記標的分子が核酸標的分子であり、存在する前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む前記非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される、請求項59記載の方法。
【請求項61】
磁性粒子が標識プローブを含み、磁性粒子に含まれる前記反応ペアの第二メンバーが前記標識プローブの成分である、請求項59記載の方法。
【請求項62】
前記標識プローブが前記修飾された標的分子と非共有結合複合体を形成することができ、前記反応混合物を一以上の共有結合の形成に適した条件にさらす前に、前記反応混合物を、前記磁性粒子、前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件にさらし、前記修飾された標的分子が前記反応混合物中に存在する場合に、前記磁性粒子、前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が形成される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記標的分子は核酸標的分子であり、前記磁性粒子、前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む前記非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される、請求項61記載の方法。
【請求項64】
前記検出可能な共有結合複合体の存在、不存在および/または量を検出することをさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項65】
前記共有結合形成反応ペアがアジド/アルキン反応ペアであり、前記共有結合の形成に適した条件が、前記反応混合物をCuイオン触媒と接触させることを含む、請求項59記載の方法。
【請求項66】
前記反応混合物を核酸架橋試薬と接触させることをさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項1】
標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体を生成する方法であって、
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含むと思われる試料と、
連結分子と
を反応混合物中において混合することを含み、
このとき、前記連結分子が、
存在する前記標的分子に特異的に結合する標的特異的結合部分であって、該連結分子が標的特異的結合部分を複数含むとき、その標的特異的結合部分のそれぞれが、存在する前記標的分子の異なる領域に特異的に結合する、一又は複数の標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの一以上の第二メンバーと
を含み、
このとき、前記の混合が、前記連結分子が存在する前記標的分子に特異的に結合するために十分な反応条件下にあり、かつ、
前記反応混合物を前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件にさらすことを含み、
ここで、前記標的分子が前記試料中に存在する場合には、前記連結分子が前記標的分子に特異的に結合し、前記反応ペアの一以上の前記複数の第一メンバーと前記一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、方法。
【請求項2】
連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が前記反応ペアの複数の第二メンバーを含み、かつ、連結分子が前記反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の前記標的特異的結合部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複合体の有無を検出することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記複合体の形成を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記基質が検出可能な標識である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含み、ここで前記バイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含み、前記混合が存在する前記標的分子が前記複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行われ、ここで、前記標的分子が前記試料中に存在する場合、前記複数の標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子は前記連結分子に特異的に結合し、かつ、前記連結分子は前記反応ペアの一以上の前記複数の第一メンバーと前記一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが、前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、かつ、前記連結分子が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の有無を検出することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記核酸標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の形成を生じる、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
複数の複合体が形成され、このとき前記複数の複合体の各メンバーがバイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、および検出可能な標識を含んでおり、かつ、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により前記複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項21】
標的分子、連結分子および基質を含む共有結合複合体を生成する方法であって、
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含むと思われる試料と、
複数の連結分子と
を反応混合物中において混合することを含み、
このとき、前記複数の連結分子の各メンバーが独立して一以上のコピー数で存在し、各メンバーが、
存在する前記標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの第二メンバーと
を含み、
このとき、前記の混合が、前記複数の連結分子が存在する前記標的分子に特異的に結合するために十分な反応条件下にあり、かつ、
前記反応混合物を前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの間に共有結合を形成するのに適した条件にさらすことを含み、
ここで、前記標的分子が試料中に存在する場合に、前記複数の連結分子が前記標的分子の複数の異なる領域に特異的に結合し、前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記複数の連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、方法。
【請求項22】
前記複合体の有無を検出することを更に含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記複合体の形成が生じる、請求項21記載の方法。
【請求項24】
複数の複合体が形成され、その複数の複合体の各メンバーがバイオチップ表面、複数の連結分子、標的分子および検出可能な標識を含み、かつ、反応混合物中に架橋剤を添加して、前記複数の複合体の少なくとも二つを一以上の共有結合を介して連結することをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記基質が検出可能な標識である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記反応混合物中にバイオチップ表面を含む基質を導入することをさらに含み、ここで前記バイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含み、前記混合が存在する前記標的分子が前記複数の標的固定化プローブの一つに特異的に結合するのに十分な反応条件下で行われ、ここで、前記標的分子が前記試料中に存在する場合、前記複数の標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子は前記複数の連結分子に特異的に結合し、かつ、前記複数の連結分子は前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが、前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、かつ、一以上の前記複数の連結分子が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の有無を検出することをさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記核酸標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の形成をもたらす、請求項28記載の方法。
【請求項32】
複数の複合体が形成され、前記複数の複合体の各メンバーがバイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、標的分子、複数の連結分子および検出可能な標識を含んでおり、かつ、反応混合物に架橋剤を添加し、一又は複数の共有結合により前記複数の複合体の少なくとも2を連結させることを更に含む、請求項28記載の方法。
【請求項33】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む前記複合体の少なくとも二つのメンバーを架橋することをさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項35】
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含有すると思われる試料と、
連結分子と
を含む反応混合物であって、
ここで前記連結分子が、
存在する前記標的分子に特異的に結合する標的特異的結合部分であって、連結分子が複数の標的特異的結合部分を含むとき、存在する前記標的分子の異なる領域にそれぞれが特異的に結合する一以上の標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの一以上の第二メンバーと
を含み、
前記標的分子が試料中に存在するとき、前記連結分子が前記標的分子と特異的に結合し、前記反応ペアの前記複数の第一メンバーの一以上と前記反応ペアの前記一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、反応混合物。
【請求項36】
連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が前記反応ペアの複数の第二メンバーを含み、かつ、連結分子が前記反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の前記標的特異的結合部分を含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項37】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項38】
前記基質が検出可能な標識である、請求項35記載の反応混合物。
【請求項39】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項38記載の反応混合物。
【請求項40】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項41】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項42】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項35記載の反応混合物。
【請求項43】
前記反応混合物がバイオチップ表面を含む基質を更に含み、このバイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含むものであり、前記標的分子が前記試料中に存在するとき、前記標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子が前記連結分子に特異的に結合し、前記連結分子が、前記反応ペアの前記複数の第一メンバーの一以上と一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項38記載の反応混合物。
【請求項44】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、前記連結分子が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項43記載の反応混合物。
【請求項45】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項43記載の反応混合物。
【請求項46】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの前記第二メンバーの一つとを含む、請求項43記載の反応混合物。
【請求項47】
前記連結分子が、一つの前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項43記載の反応混合物。
【請求項48】
前記連結分子が、複数の前記標的特異的結合部分と、前記反応ペアの複数の前記第二メンバーとを含む、請求項43記載の反応混合物。
【請求項49】
反応ペアの複数の第一メンバーを含む基質と、
標的分子を含むと思われる試料と、
複数の連結分子と
を含む反応混合物であって、
このとき、前記複数の連結分子の各メンバーが独立して一以上のコピー数で存在し、各メンバーが、
存在する前記核酸標的分子の異なる領域に特異的に結合する標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの第二メンバーと
を含み、
前記標的分子が試料中に存在するとき、前記複数の連結分子が前記標的分子の複数の異なる領域に特異的に結合し、前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記標的分子、前記複数の連結分子および前記基質を含む複合体が形成される、反応混合物。
【請求項50】
前記基質がバイオチップ表面を含む、請求項49記載の反応混合物。
【請求項51】
前記基質が検出可能な標識である、請求項49記載の反応混合物。
【請求項52】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項51記載の反応混合物。
【請求項53】
前記反応混合物がバイオチップ表面を含む基質を更に含み、このバイオチップ表面が複数の標的固定化プローブを含むものであり、前記標的分子が前記試料中に存在するとき、前記複数の標的固定化プローブの一つが前記標的分子に特異的に結合し、前記標的分子が前記複数の連結分子に特異的に結合し、前記複数の連結分子が、前記反応ペアの第一メンバーと前記反応ペアの第二メンバーとの反応を介して複数の共有結合を形成し、それによって前記バイオチップ表面、前記複数の標的固定化プローブの一つ、前記標的分子、前記複数の連結分子および前記検出可能な標識を含む複合体が形成される、請求項51記載の反応混合物。
【請求項54】
前記複数の標的固定化プローブのそれぞれが前記反応ペアの一以上の第一メンバーを含み、前記複数の連結分子の一以上が前記反応ペアの一以上の第一メンバーと前記反応ペアの一以上の第二メンバーとの反応を介して一以上の前記複数の標的固定化プローブと一以上の共有結合を形成する、請求項53記載の反応混合物。
【請求項55】
前記検出可能な標識が磁性粒子である、請求項53記載の反応混合物。
【請求項56】
反応ペアの複数の第一メンバーを含む磁性粒子と、
連結分子と
を含むキットであって、
前記連結分子が、
存在する標的分子に特異的に結合する標的特異的結合部分であって、該連結分子が標的特異的結合部分を複数含むとき、存在する前記標的分子の異なる領域にそれぞれが特異的に結合する一又は複数の標的特異的結合部分と、
前記反応ペアの一以上の第二メンバーと
を含む、キット。
【請求項57】
連結分子が単一の標的特異的結合部分を含む場合に、連結分子が前記反応ペアの複数の第二メンバーを含み、かつ、連結分子が前記反応ペアの単一の第二メンバーを含む場合に、連結分子が複数の前記標的特異的結合部分を含む、請求項56記載のキット。
【請求項58】
バイオチップ表面を含む基質をさらに含み、ここで前記バイオチップ表面は、存在する前記標的分子と特異的に結合する複数の標的固定化プローブを含む、請求項56記載のキット。
【請求項59】
検出可能な共有結合複合体を形成する方法であって、
標的分子を含むと思われる試料を、反応ペアの複数の第一メンバーを含む修飾された標的分子を含む反応混合物を生成するのに十分な条件にさらし、
前記反応混合物を標的固定化プローブと接触させ、このとき、当該接触は、存在する前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件下で行われ、かつ、前記標的固定化プローブは前記反応ペアの第二メンバーを含んでおり、
前記反応混合物を磁性粒子と接触させ、このとき、当該磁性粒子は前記反応ペアの第二メンバーを含んでおり、
前記反応混合物を前記反応ペアの第一および第二メンバー間で共有結合を形成するのに適した条件にさらし、このとき、前記標的分子が試料中に存在する場合には、前記修飾された標的分子を含む検出可能な共有結合複合体が形成される、
ことを含む、方法。
【請求項60】
前記標的分子が核酸標的分子であり、存在する前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む前記非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される、請求項59記載の方法。
【請求項61】
磁性粒子が標識プローブを含み、磁性粒子に含まれる前記反応ペアの第二メンバーが前記標識プローブの成分である、請求項59記載の方法。
【請求項62】
前記標識プローブが前記修飾された標的分子と非共有結合複合体を形成することができ、前記反応混合物を一以上の共有結合の形成に適した条件にさらす前に、前記反応混合物を、前記磁性粒子、前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む非共有結合複合体の形成に適した条件にさらし、前記修飾された標的分子が前記反応混合物中に存在する場合に、前記磁性粒子、前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む非共有結合複合体が形成される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記標的分子は核酸標的分子であり、前記磁性粒子、前記修飾された標的分子および前記標的固定化プローブを含む前記非共有結合複合体が特異的ハイブリダイゼーション反応の結果として形成される、請求項61記載の方法。
【請求項64】
前記検出可能な共有結合複合体の存在、不存在および/または量を検出することをさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項65】
前記共有結合形成反応ペアがアジド/アルキン反応ペアであり、前記共有結合の形成に適した条件が、前記反応混合物をCuイオン触媒と接触させることを含む、請求項59記載の方法。
【請求項66】
前記反応混合物を核酸架橋試薬と接触させることをさらに含む、請求項59記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−509063(P2012−509063A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536392(P2011−536392)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/063280
【国際公開番号】WO2010/056579
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(508097571)マジック・テクノロジーズ・インク (3)
【氏名又は名称原語表記】MAGIC TECHNOLOGIES INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/063280
【国際公開番号】WO2010/056579
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(508097571)マジック・テクノロジーズ・インク (3)
【氏名又は名称原語表記】MAGIC TECHNOLOGIES INC.
【Fターム(参考)】
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