説明

共通の電圧源に接続された複数の放電灯を点灯させるための電子回路

【課題】共通の電圧源に接続された複数の放電灯を点灯させるための電子回路において、放電灯の動作抵抗自体を制御する方法またはその方法を実施する電子回路を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子回路は、共通の電圧源(U〜)に接続された複数の放電灯(La)を点灯させるための電子回路であって、複数の放電灯(La)の間で所定の電流を分流するための電流平衡回路を備え、放電灯(La)の各々に、個々のランプ電流(IL)を、放電灯(La)の各々を通電する電流の設定値が放電灯(La)のインピーダンスの増大と共に単調に増大するように意図的に非対称化する少なくとも1つの非対称化モジュール(DBp, DBn)が配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の電圧供給源に接続された複数の放電灯を点灯させるための電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライトに用いられる光は、蛍光剤が塗布された冷陰極放電灯(CCFL)からなる複数の放電灯を一列に並べて点灯させて得ることが多い。ディスプレイの大きさに応じて、例えば最大で32灯の放電灯が、等距離かつ互いに平行に配列されて使用される。それらの冷陰極放電灯には、典型的には、数ミリアンペアの交流電流が、およそ1kVの交流電圧で30から60kHzの周波数で供給される。可能な限り均一な光を得るため、全ての放電灯に同じ強さの電流を供給しつつ点灯させることが望ましい。許容される電流のバラツキは、典型的には、±5%である。明白な技術的解決策は、各々の放電灯に対して、個別のメインブリッジと個別の高電圧トランスとを備えて電流調整される個別の高電圧供給手段を用いることである。しかし、コスト上の理由から、全ての放電灯に対して唯一の高出力メインブリッジと1個の共通の高電圧トランスしか必要としない解決策が好ましい。ところが、放電灯は、負性抵抗を有するため、複数の放電灯を単に並列に接続することはできず、電流を複数の放電灯に対称に分流する平衡回路を追加的に使用することが必要になる。電流を対称に分流するための最も簡単な手段としては、個々の放電灯に小型のコンデンサーを直列に接続するという手段がある。しかし、この手段によって電流を対称に分流するのでは、十分な品質を確保できないばかりか、トランスも、ランプ電圧よりも非常に高い電圧に対応できるよう構成しなければならない。
【0003】
高い性能を有する方法としては、特許文献1に開示されているように、電流を対称に分流するための複数のトランスを縦続接続または連鎖接続する方法がある。図1に、そのようにして接続された複数の放電灯の例を示す。全電流は、同一種の複数のトランスによって各放電灯に均一に分流される。この方法の欠点は、電流を対称に分流するために多数のトランスが必要であって、しかも、全てのトランスを少なくとも数百ボルトに対応できるように構成しなければならない点である。それゆえ、このような電流を対称に分流するための電流平衡トランスに代えて、半導体回路を用いる試みがなされた。従来のカレントミラー回路を用いた良好に機能する方法が、本発明者による公開前の米国特許出願US60/860,684に記載されている。図2に示すように、その方法では、各々の放電灯に、バイポーラトランジスタのコレクタ・エミッタ経路が直列に接続されている。その際、これらのトランジスタは、放電灯の動作抵抗の差を動的に補償し、それによって、全ての分流路に同一のランプ電流を流すことが可能となる。この方法の欠点は、電流を対称に分流させる働きをする電流平衡用トランジスタに、コレクタ・エミッタ経路の電圧降下に比例する電力損失が生じる点である。これによって、効率上の損失ばかりでなく、それに伴って、電流平衡用トランジスタに、より高い耐電圧が要求されるため、上述したような磁気的解決手段に対する半導体回路のコストメリットも低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/038828号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電流平衡回路は、複数の放電灯の様々に異なる動作抵抗を、個々の放電灯に直列接続された電流平衡用トランジスタによって補償するものであり、その際、これらのトランジスタは、動的抵抗として機能する。
本発明の課題は、放電灯の動作抵抗自体を制御する(均一化する)方法またはその方法を実施する電子回路を提供することである。それによって、残留抵抗差を調整する必要性が大幅に減少するとともに、電流平衡用トランジスタにおける電圧降下または電力損失も低減する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、上記課題は、請求項1に記載された特徴を有する電子回路によって解決される。その回路による放電灯の点灯方法は、別の独立請求項に記載されている。
【0007】
本発明の有利な実施態様及び好適な特徴は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明では、米国特許出願US60/860,684に記載された回路を基礎にする電流平衡回路が提供される。本発明による回路は、放電灯の動作抵抗の電流依存性及び温度依存性を利用しつつ、許容電流範囲内においてランプ電流を意図的に非対称化することで、放電灯の動作抵抗のバラツキを調整するものである。
【0009】
それによって、回路における全体の電力損失は減少し、より低コストの半導体部品を利用することができる。
【0010】
本発明では、各々の分流路に属する電流平衡用トランジスタのコレクタ・エミッタ経路に並列に接続された非対称化モジュールが提供される。この非対称化モジュールによって、放電灯を通電する個々のランプ電流は、個々の放電灯を通電する電流の設定値が放電灯のインピーダンスと共に(インピーダンスが増大するにつれて)単調に増大するように意図的に非対称化される。
【0011】
本発明は、好適には、電流平衡用の電子回路の一部であって、その電子回路によって、各々の放電灯を通電する交流電流は、正の半波と負の半波に分離され、その場合、正の半波は、npn−トランジスタのコレクタ・エミッタ経路及びエミッタ抵抗を介して電圧源に帰還され、負の半波は、pnp−トランジスタのコレクタ・エミッタ経路及びエミッタ抵抗を介して電圧源に帰還される。
全てのnpn−トランジスタのベース端子は互いに電気的に接続され、また、全てのpnp−トランジスタのベース端子は互いに電気的に接続されている。放電灯のランプ電流から引き出された、互いに接続されたトランジスタのための共通のベース電流は、1つの電位障壁を克服して流れなければならない。
このため、各々のトランジスタのベース端子とコレクタ端子の間に、電位障壁を生じさせる電子部品(例えば、ツェナーダイオード)又は回路部品を備えている。この回路部品は、一定以下の電圧では高いインピーダンスを示し、その電圧を越えると、低いインピーダンスを示す。
【0012】
電流平衡回路を構成するための他の態様では、全ての放電灯において、入力交流電圧の一方の半波を第1のダイオードDbpを介して放電灯及び第1のトランジスタQuに導通し、他方の半波を第2のダイオードDbnを介して放電灯及び第2のトランジスタQoに導通する。
全ての第1のトランジスタQuのベース端子は互いに電気的に接続され、また、全ての第2のトランジスタQoのベース端子は互いに電気的に接続されている。放電灯のランプ電流から引き出された、互いに接続されたトランジスタの共通のベース電流は、1つの電位障壁を克服して流れなければならない。
【0013】
上述した本発明に係る電子回路において、電流は、全ての放電灯、及び、少なくとも放電灯に直列接続されたトランジスタとトランジスタのエミッタ端子に接続されたエミッタ抵抗を備えた電流平衡回路に流れる。本発明によれば、トランジスタのエミッタ端子には、外部の補助電圧源からの付加電流が供給され、この付加電流は、電流平衡回路に属するトランジスタのコレクタ・エミッタ経路の電圧降下と共に(電圧降下が増大するにつれて)単調に増大する。
【0014】
付加電流を供給するため、好ましくは、電流平衡回路に属するトランジスタのコレクタ・エミッタ経路と並列に、2つの抵抗と、場合によっては、1つのダイオードからなる分圧器が接続されている。この分圧器は、トランジスタのコレクタ・エミッタ間電圧に比例するバイパス電流を発生させる。そのバイパス電流は、少なくとも1つの更なるトランジスタと第3の抵抗からなるカレントミラー回路に導通される。このカレントミラー回路によって、補助電圧源から付加電流が発生し、電流平衡回路に属するトランジスタのエミッタ端子に供給される。
【0015】
上述したそれぞれの放電灯は、好適には、交流電圧源から給電され、その場合、その交流電圧の正の半波と負の半波は、それぞれ個別に非対称化される。但し、直流電圧源を用いて放電灯に給電するようにしてもよい。
【0016】
また、本発明には、ランプ電流を意図的に非対称化させつつ共通の電圧源に接続された複数の放電灯を点灯させる方法も含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電子回路は、複数の放電灯、特に、冷陰極放電灯を、共通の電圧源で点灯させることを可能とする。この電子回路では、非対称化モジュールによりランプ電流を意図的に非対称化することによって、ランプ特性曲線における動作抵抗のバラツキが減少する。このように、放電灯の動作抵抗のバラツキを積極的に減少させることにより、電流平衡用の個々のトランジスタに要求される耐電圧及び電流平衡回路における電力損失が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電流平衡トランスを用いて共通の電圧源に接続された複数の放電灯を点灯させる、従来の技術による電流平衡回路を示す図である。
【図2】半導体回路を用いた本発明者による従来の電流平衡回路を示す。
【図3】個々の分流路を意図的に非対称化する回路を備えた本発明による電流平衡回路を示す図である。明瞭化のため、電位障壁を生じさせる個々の要素の図示は省略した。
【図4】2灯の放電灯の典型的な特性の例を示す図である。
【図5】非対称化モジュールを備えた電流平衡回路の構成例を示す図である。
【図6】非対称化モジュールを備えた電流平衡回路の構成例を示す図である。
【図7】簡素化された非対称化モジュールを備えた電流平衡回路の構成例を示す図である。
【図8】非対称化モジュールを備えた電流平衡回路であって、npn−トランジスタのみを使用した回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、エミッタ抵抗を備えて直列に接続されたトランジスタによってランプ電流を平衡化し、且つ、個々のトランジスタのベース電位が同一である全ての電流平衡回路に対して適用可能である。図2には、本発明による非対称化の方法を適用可能な回路の例が示されている。この回路には、1灯の放電灯La(分流路、ランプ枝路)毎に1つのnpn−トランジスタQbpと1つのpnp−トランジスタQbnが主要な構成要素として用いられている。各々のランプ枝路または分流路は、一般的に、次の部分回路、すなわち、放電灯Laに印加される交流電圧源U〜を正の半波と負の半波に分ける2つのダイオードDp及びDnを有している。交流電圧源U〜は、高電圧源(例えば、高電圧トランス)から供給される。正の半波はnpn−トランジスタQbpを通り、負の半波はpnp−トランジスタQbnを通る。正の半波と負の半波の両方は、トランジスタQbpとQbnに共通であるエミッタ抵抗Reを介して電圧源に帰還される。全てのランプ枝路のnpn−トランジスタQbpのベース端子は互いに接続されている(p−カレントミラー)。同様に、全てのランプ枝路のpnp−トランジスタQbnのベース端子も互いに接続されている(n-カレントミラー)。各々のnpn−トランジスタQbpのベース端子は、ツェナーダイオードZpによって、同じトランジスタのコレクタ端子に接続されている。各々のpnp−トランジスタQbnのベース端子は、ツェナーダイオードZnによって、同じトランジスタのコレクタ端子に接続されている。全てのツェナーダイオードZp及びZnの公称電圧は同一であり、典型的には、100Vから300Vの範囲内である。これらのツェナーダイオードZp、Znは、回路の機能上、重要な役割りを果たす。というのは、これによって、抵抗値が最大の分流路が分からなくても、あるいは、抵抗値が最大の分流路が回路の動作中に変わったとしても、回路の電流分流作用が働くからである。この回路は、次のように動作する。トランジスタQbpとQbnのコレクタ・エミッタ間の電圧降下がツェナーダイオードZpとZnのツェナー電圧を下回る限り、ベース電流が流れないことから、全てのトランジスタはブロックされている。ここで、電圧源U〜の共通の交流電圧の半波電圧が上昇すると、抵抗値が最も低い放電灯Laを有する分流路が最初にツェナー電圧に到達し、対応するツェナーダイオードZpまたはZnが導通して、対応するトランジスタQbpまたはQbnが始動する。全てのnpn−トランジスタQbpのベース端子及び全てのpnp−トランジスタQbnのベース端子は、それぞれ互いに接続されているため、最初に導電するツェナーダイオードを介して、互いに接続された全てのトランジスタQbpまたはQbnが始動され、それらのベース電流が流れ始める。このように、正の半波に対して1つ及び負の半波に対して1つの最初に導電するツェナーダイオードによって、ベース端子が互いに接続された全てのトランジスタが始動する。この時点では、抵抗値の高い他のランプ枝路におけるコレクタ電圧は、ツェナー電圧よりも僅かに低い。ベース電圧が同一であり(ベース端子は互いに直結されている)、エミッタ抵抗も同一であることにより、それぞれのベース端子が互いに接続されたトランジスタQbpまたはQbnのエミッタ電流は、全て同一である。いずれのトランジスタも飽和状態に移行しない限り、すなわち、いずれのトランジスタも完全にオン状態とならない限り、このことは、コレクタ電流、ひいてはランプ電流Iについても同様である。この場合、この回路によって、各々のランプ枝路におけるランプ電流Iの大きさは、同一に保たれる(平衡化される)。この回路は、分流路の何れか1つにおいてコレクタ電圧とエミッタ電圧の差がゼロに近づくと直ちに、電流を均一に分流する機能を失う。この状態は、ツェナー電圧レベルを低く設定すればするほど、又、ランプ特性のバラツキが大きければ大きいほど発生しやすくなる。ツェナー電圧レベルを十分高めに設定することで、電流の分流における信頼性が向上する。しかし、ツェナー電圧レベルを上げると、回路における電力損失も増大する。従って、回路設計の際に、動作パラメータ及び各放電灯の動作抵抗のバラツキに応じてツェナー電圧レベルを選択しなければならない。
【0020】
図3は、本発明による回路を概略的に示す図であり、この回路によって、個々の放電灯の動作抵抗のバラツキが調整可能となる。この回路は、図2に示す回路に対して、1つのランプ枝路毎に2つの非対称化モジュールDBp及びDBnが補完されてなるものである。電位障壁を生じさせる素子(例えば、ツェナーダイオード)によるベース電流の供給に関しては、図の明瞭化を目的として、図3への図示は省略する。非対称化モジュールDBp及びDBnは、各々の分流路に属するトランジスタQbp及びQbnのコレクタ・エミッタ経路と並列に接続されている。これらのトランジスタのためのベース電圧CSSは、例えば、図2に示すツェナーダイオードZpまたはZnによって発生する。
【0021】
図4に基づいて、本発明の基本的な技術思想を説明する。図4には、2灯の冷陰極放電灯の典型的な特性曲線の例が示されている。縦軸は電圧Vを表わし、横軸は電流Iを表わす。上側の特性曲線HILは、インピーダンスが高い放電灯の特性曲線、下側の特性曲線LILは、インピーダンスが低い放電灯の特性曲線である。ランプ電流Iが同じである場合、インピーダンスが高い方の放電灯(特性曲線HIL)には、dVだけ高い電圧が印加されている。図から分かるように、各々の放電灯において、放電灯動作抵抗R=V/Iは、ランプ電流Iの増大に伴って低下する。そして、インピーダンスが高い放電灯(特性曲線HIL)をいくらか高い電流I+dIで動作させると、その抵抗(またはインピーダンス)は低下する。それによって、両特性曲線の電圧差は、dVからdV'に減少する。
電圧差dVまたはdV'は、電流平衡用トランジスタQbp及びQbnのコレクタ・エミッタ経路に平衡化のための電圧として表れ、その箇所で、トランジスタに要求される耐電圧の確保及び平衡化の際の損失を減らす役目を担っている。インピーダンスが高い放電灯(特性曲線HIL)の動作点がIからI+dIに移動すると、平衡化のための電圧が低減するという直接的効果に加えて、インピーダンスが低い放電灯(特性曲線LIL)よりも大きな出力が得られる。それによって、インピーダンスが高い放電灯の温度が上昇し、放電灯の温度が上昇するとあらゆる動作点において放電灯の動作抵抗が減少するため、結果として、特性曲線がインピーダンスの低い放電灯の方向に推移する。全体として、上述したような電流の非対称化によって、放電灯の動作抵抗が均一化され、平衡化のための電圧が低減する。
【0022】
図5は、1つのランプ枝路における正の半波を例として、非対称化モジュールDBpの回路構成の実施形態を示す図である。点線で囲まれた回路部分DBpは、各々のトランジスタQbpのコレクタ・エミッタ経路と並列に接続されている。非対称化モジュールDBpは、インピーダンスが低い放電灯のランプ電流Iの設定値をより小さな値にするものである。その機能を説明すれば、次の通りである。エミッタ抵抗Reを流れる電流は、電流平衡用トランジスタQbpによって、抵抗Reにおける電圧降下が、トランジスタQbpのベース電位に対してベース・エミッタ間電圧(ダイオードのしきい電圧/およそ600mV)分だけ下回るように調整される。そして、抵抗R1及びR2、並びにダイオードDによって形成される分圧器によって、ランプ電流Iの一部I(例えば、5%)が電流平衡用トランジスタQbpをバイパスする(バイパス電流)。ここで、バイパス電流Iも、抵抗Reを介してアースに流れることから、電流平衡用トランジスタQbpの調整機能は、バイパス電流によって阻害されない。エミッタ端子に抵抗R3を備えるトランジスタQobは、バイパス電流Iのための増倍型カレントミラーを形成する。増倍計数は、基本的に、抵抗の比R2/R3によって与えられる。例えば、R2/R3=1の比を選択した場合、カレントミラーの作用によって、バイパス電流Iと同じ大きさの付加電流Iが抵抗R3を通じて流れる。この付加電流Iは、外部の補助電圧源Vpから引き出される。しかるに、電流平衡用トランジスタQbpが全電流を抵抗Reによって調整することから、ランプ電流Iは、カレントミラーを介して供給された電流Iに相当する分だけ減少する。そして、バイパス電流Iは、明らかに電流平衡用トランジスタQbpのエミッタ・コレクタ経路の電圧降下に比例する。ところが、この電圧降下は、放電灯Laのインピーダンスが他の分流路と比べて低いほど、大きくなる。これによって、放電灯のインピーダンスが低いほど、ランプ電流Iの設定値も減少する。これは、上述した所望の特性である。
【0023】
同じ機能を持つアナログ回路が、ランプ電流の負の半波を調整する電流平衡用pnp−トランジスタQbn用にも存在する。そのような回路が図6に示されている。図6の回路が図5の回路と異なる点は、電流が逆方向に流れる点である。
【0024】
本発明におけるカレントミラーの機能上、高い精度は必要ないため、多くの用途では、ダイオードDを省略してもよい。
ランプ電流の各々の半波に対して電流平衡用のnpn−トランジスタとpnp−トランジスタをそれぞれ使用する場合、図7に示すような、簡略化された回路を用いることができる。Qbp及びQbnは、それぞれ正の半波及び負の半波のための電流平衡用トランジスタである。非対称化モジュールは、抵抗R1及びR2によって形成された分圧器を含み、トランジスタQbpとQbnのコレクタ・エミッタ経路におけるバイパス電流Iは、この分圧器を通ってバイパスする。バイパス電流は、トランジスタQobp、Qobn及び2つの抵抗R3によって形成された2つのカレントミラー回路によって複製され、それぞれにミラー電流が発生する。それらのミラー電流は、抵抗Reを通って流出する。電流平衡用トランジスタは、全電流を抵抗Reによって調整するため、ランプ電流Iは、カレントミラーを介して給電された電流Iの分だけ減少する。
【0025】
本発明に係る回路において、電流平衡用としてnpn−トランジスタQbpのみを使用する場合、図8に示すような回路を使用することができる。図示するように、この回路においては、放電灯の両側に補助電圧源Vp、Vphpが必要とされる。
ランプ電流Iの調整は、入力交流電流の各半波に対して個別に実行される。ダイオードDbpとDbnは、入力交流電流の各半波を、放電灯Laを介して、それぞれ「担当の」トランジスタに導通する保護用ダイオードである。
【符号の説明】
【0026】
DBp,DBn:非対称化モジュール、Dp,Dn:ダイオード、I:ランプ電流、I:バイパス電流、I:付加電流、La:放電灯、Qbp:npn−トランジスタ、Qbn:pnp−トランジスタ、Qu:第1のトランジスタ、Qo:第2のトランジスタ、Qob,Qobp,Qobn,Qovp:トランジスタ、R1,R2,R3:抵抗、Re:エミッタ抵抗、U〜:電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の電圧源(U〜)に接続された複数の放電灯(La)を点灯させるための電子回路であって、
前記複数の放電灯(La)の間で所定の電流を分流するための電流平衡回路を備え、
前記放電灯(La)の各々に、個々のランプ電流(IL)を、前記放電灯(La)の各々を通電する電流の設定値が前記放電灯(La)のインピーダンスの増大と共に単調に増大するように意図的に非対称化する少なくとも1つの非対称化モジュール(DBp, DBn)が配されていることを特徴とする電子回路。
【請求項2】
前記電流平衡回路において、
(イ)前記放電灯(La)の各々を通電する交流電流(IL)が、ダイオード(Dp, Dn)によって正の半波と負の半波に分離され、
(ロ)前記正の半波が、npn−トランジスタ(Qbp)のコレクタ・エミッタ経路とエミッタ抵抗(Re)を介して前記電圧源に帰還され、
(ハ)前記負の半波が、pnp−トランジスタ(Qbn)のコレクタ・エミッタ経路とエミッタ抵抗(Re)を介して前記電圧源に帰還され、
(ニ)全ての前記npn−トランジスタ(Qbp)のベース端子が互いに電気的に接続され、
(ホ)全ての前記pnp−トランジスタ(Qbn)のベース端子が互いに電気的に接続され、
(ヘ)前記放電灯(La)のランプ電流から引き出された前記トランジスタ(Qbp; Qbn)のための共通のベース電流が、1つの電位障壁を克服して流れる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記電流平衡回路において、
(イ)前記放電灯(La)の各々について、入力交流電流の一方の半波が、第1のダイオード(Dbp)を介して前記放電灯(La)及び第1のトランジスタ(Qu)を導通し、他方の半波が、第2のダイオード(Dbn)を介して前記放電灯(La)及び第2のトランジスタ(Qo)を導通し、
(ロ)全ての前記第1のトランジスタ(Qu)のベース端子が互いに電気的に接続され、
(ハ)全ての前記第2のトランジスタ(Qo)のベース端子が互いに電気的に接続され、
(ニ)放電灯(La)のランプ電流から引き出された前記第1のトランジスタ(Qu)及び前記第2のトランジスタ(Qo)の共通のベース電流が、1つの電位障壁を克服して流れる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子回路。
【請求項4】
前記npn−トランジスタ(Qbp)、前記pnp−トランジスタ(Qbn)、前記第1のトランジスタ(Qu)、及び前記第2のトランジスタ(Qo)の各々は、ベース端子とコレクタ端子の間に、電位障壁を発生させるとともに特定の電圧よりも低い電圧ではインピーダンスが高く、前記特定の電圧よりも高い電圧ではインピーダンスが低くなる電子部品または回路部品を具備することを特徴とする請求項2又は3に記載の電子回路。
【請求項5】
前記放電灯(La)の各々を通電する電流(IL)が、該放電灯(La)に直列接続された少なくとも1つの前記トランジスタ(npn−トランジスタ(Qbp), pnp-トランジスタ(Qbn), 第2のトランジスタ(Qo), 第1のトランジスタ(Qu))と前記トランジスタのエミッタ端子に接続されたエミッタ抵抗(Re)を通電し、且つ、
前記トランジスタ(npn−トランジスタ(Qbp), pnp-トランジスタ(Qbn), 第2のトランジスタ(Qo), 第1のトランジスタ(Qu))のエミッタ端子に、補助電圧源からの付加電流(I3)が供給され、該付加電流(I3)は、前記トランジスタ(npn−トランジスタ(Qbp), pnp−トランジスタ(Qbn), 第2のトランジスタ(Qo), 第1のトランジスタ(Qu))のコレクタ・エミッタ経路の電圧降下と共に単調に増大することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の電子回路。
【請求項6】
前記トランジスタ(npn−トランジスタ(Qbp), pnp−トランジスタ(Qbn), 第2のトランジスタ(Qo), 第1のトランジスタ(Qu))のコレクタ・エミッタ経路と並列に、抵抗(R1, R2)からなるとともに前記トランジスタのコレクタ・エミッタ間電圧と比例するバイパス電流(I2)を発生させる分圧器が接続され、且つ、前記バイパス電流(I2)は、少なくとも1つのトランジスタ(Qob, Qobp, Qobn, 又はQovp)及び1つの抵抗(R3)からなるカレントミラー回路に導通され、該カレントミラー回路は、補助電圧源から付加電流(I3)を発生させ、前記付加電流(I3)を前記トランジスタ(Qob, Qobp, Qobn, 又はQovp)のエミッタ端子に供給することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の電子回路。
【請求項7】
前記放電灯(La)が、交流電圧源(U〜)から給電され、且つ、前記交流電圧の正の半波と負の半波は、それぞれ個別に非対称化されることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の電子回路。
【請求項8】
前記放電灯(La)が、直流電圧源から給電され、単一の極性にのみ対応する回路が構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子回路。
【請求項9】
共通の電圧源に接続された複数の放電灯(La)を、前記複数の放電灯(La)の間で所定の電流を分流するための電流平衡回路を用いて点灯させる方法であって、
前記放電灯(La)の各々に対して、個々のランプ電流(IL)を、前記放電灯(La)の各々を通電する電流の設定値が前記放電灯(La)のインピーダンスの増大と共に単調に増大するように意図的に非対称化する少なくとも1つの非対称化モジュール(DBp, Dbn)が用いられることを特徴とする、放電灯の点灯方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−176739(P2009−176739A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13057(P2009−13057)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】