説明

共重合ポリカプロアミド樹脂組成物およびその製造方法

【課題】本発明は、白色異物の生成を極めて高水準に抑制した高品質の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物、およびこれを安定的に製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)(a1)ε-カプロラクタムおよび上記ε−カプロラクタムに対して0.1〜3モル%の(a2)下記式(I)
【化1】


(式中、MはNa原子またはK原子、RおよびR’は水素あるいはアルキル基を示し、互いに同一または異なっていてもよい。)で示される少なくとも1種のジカルボキシスルホネート化合物を
共重合してなるポリカプロアミド共重合体と、
(B)上記ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位に対して1〜100重量%のアニオン系界面活性剤とを含有してなる共重合ポリカプロアミド樹脂組成物およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリカプロアミド樹脂組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、塩基性染料に対し良好な染色性を有し、かつ重合中に異物の生成がなく、均質な共重合ポリカプロアミド樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリカプロアミド樹脂はその優れた特性を活かして衣料用繊維、産業用繊維に使用され、さらに、自動車分野、電気・電子分野などにおいて射出成形品として、また、食品包装用途を中心に押し出しフィルムとしても広く使用されている。これらポリカプロアミド樹脂の繊維、フィルム、成形品などを染色する場合、主として酸性染料あるいは分散染料が用いられている。しかし、これらの染料は塩基性染料に比べて色の鮮明性が今一つ不十分であり、塩基性染料に対して親和性のあるポリカプロアミド樹脂が要望されている。
【0003】
ポリカプロアミド樹脂の塩基性染料に対する親和性を増大させるため、従来より数多くの提案がなされている。例えば、特許文献1または2にはスルホネート基を有するモノまたはジカルボキシベンゼンをポリアミドに導入する方法が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に提案されている化合物を塩基性染料に充分親和性を有する程度までポリカプロアミド中に導入すると、該化合物がε−カプロラクタムの重合時の末端封鎖剤として作用するため、重合速度が遅くなり、かつ重合度が上がりにくくなるため、それから得られた繊維などの成形品の物理的、機械的性質が低下する欠点がある。一方、特許文献2に提案されている方法では、塩基性染料に親和性を有するポリカプロアミド繊維を得ることは可能である。しかし、この場合、ジカルボキシスルホネート化合物を用いてε−カプロラクタムを重合するに際し、重合中系内の水分が少なくなってくると、重合系内で白色の不溶物が生成し、不均一なナイロン6しか得られない欠点がある。
【0005】
本発明者らは、かかる白色不溶物の生成メカニズムについて鋭意検討した結果、ジカルボキシスルホネート化合物のNaあるいはKなどの金属イオンが、重合初期の水分が少なくなってくる過程において、他のジカルボキシスルホネート化合物のカルボキシル基と結合してカルボン酸金属塩になること、該カルボン酸金属塩はε−カプロラクタムやポリカプロアミドに難溶であり、これが白色不溶物の生成の原因であることがわかった。さらにこのような白色不溶物が生成する系から得られたポリカプロアミドを紡糸した場合、製糸操業性、特に糸切れや紡糸濾圧上昇が悪化することもわかった。
【0006】
かかる白色異物の生成を抑制する方法として、特許文献3や特許文献4が提案されている。
【0007】
特許文献3に記載の方法は、あらかじめε−カプロラクタムとスルホネート化合物を重合させて得た重合物と、ε−カプロラクタムとジアミン化合物を重合させて得た化合物とを混合し、さらに重合を完結させることを特徴とするものであるが、前述したカルボン酸の金属塩の生成はジアミンの存在有無にかかわらず起こるので、不溶性の白色異物の生成を避けることはできない。一方、特許文献4に記載の方法は、ジカルボキシベンゼンスルホネート化合物にジカルボキシベンゼンスルホン酸リチウムを用いることで不溶性の白色異物を抑制するものである。この方法では確かに異物抑制効果が認められるものの、該スルホネート化合物は大量生産されていないことから非常に高価であり、かつ入手が困難であった。
【0008】
これらの状況から、さらに特許文献5や特許文献6に記載の方法が提案された。
【0009】
特許文献5に記載の方法は、重合時にジカルボン酸とジアミンの塩、および/またはアミノカルボン酸を添加して、白色の不溶物であるカルボン酸の金属塩が生成するよりも重合反応の進行が優先するようにしたものである。また、特許文献6に記載の方法では、スルホネート化合物としてジカルボキシベンゼンスルホン酸金属塩のジエステルを用いることで不溶性の白色異物を抑制するものである。いずれの方法も異物抑制効果は認められるものの十分ではなく、特に工業的規模において何年にも渡って連続生産する場合には効果が不十分であった。さらに、ジカルボキシベンゼンスルホン酸金属塩のジエステルを用いた場合、重合反応中にエステル部分から脱離したアルコールがラクタムと副反応を起こしてアミンが発生することがあり、重合留出液から悪臭が発生する事例もあった。
【特許文献1】特公昭37−14646号公報
【特許文献2】特公昭37−14647号公報
【特許文献3】特公昭53−142499号公報
【特許文献4】特公昭57−98524号公報
【特許文献5】特開2001−200054号公報
【特許文献6】特開2002−265597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、ε−カプロラクタムとジカルボキシベンゼンスルホネート化合物を主原料とする共重合ポリカプロアミド樹脂の製造において、白色異物の生成を完全に抑制した高品質のポリマーを長期間安定的に製造することができる方法はこれまで知られていなかった。
【0011】
そこで本発明者らは前記した従来技術の問題点を解決し、組成物の白色異物の生成を極めて高水準に抑制した高品質の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物、およびこれを安定的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成から成る。
【0013】
1)(A)(a1)ε−カプロラクタム、および上記ε−カプロラクタムに対して0.1〜3モル%の(a2)下記式(I)
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、MはNa原子またはK原子、RおよびR’は水素あるいはアルキル基を示し、互いに同一または異なっていてもよい。)で示される少なくとも1種のジカルボキシスルホネート化合物を共重合してなるポリカプロアミド共重合体と、
(B)上記ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位に対して1〜100重量%のアニオン系界面活性剤とを含有してなる共重合ポリカプロアミド樹脂組成物。
2)ジカルボキシスルホネート化合物が3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする1)記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物。
3)アニオン系界面活性剤がナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩であることを特徴とする1)または2)に記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物。
4)(a1)ε−カプロラクタム、およびε−カプロラクタムに対して0.1〜3モル%の(a2)下記式(I)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、MはNa原子またはK原子、RおよびR’は水素あるいはアルキル基を示し、互いに同一または異なっていてもよい。)で示される少なくとも1種のジカルボキシスルホネート化合物とを共重合する際に、(B)上記ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位に対し1〜100重量%となる量のアニオン系界面活性剤を添加することを特徴とする共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法。
5)ジカルボキシスルホネート化合物が3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする4)記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法。
6)アニオン系界面活性剤がナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩であることを特徴とする4)または5)に記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物またはその製造方法を用いることにより、重合中にジカルボキシスルホネート化合物由来の白色異物の生成が極めて高水準に抑制されているので、得られた樹脂組成物を溶融紡糸してフィラメントにする場合、糸切れや紡糸パックの圧力上昇が小さく、長期間安定した連続操業が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明について以下に詳述する。
【0020】
本発明で用いる(A)ポリカプロアミド共重合体は、(a1)ε-カプロラクタム、(a2)特定のジカルボキシベンゼンスルホネート化合物、任意成分としてのジアミン化合物を共重合して得られるものである。
【0021】
本発明で用いられる(a2)ジカルボキシベンゼンスルホネート化合物は、上記式(I)で示される。式中、RおよびR’は水素あるいはアルキル基を示し、互いに同一または異なっていてもよい。アルキル基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、直鎖状であっても分岐していても良い。ベンゼン環状での−SOM基に対する−COORおよび−COOR’の位置は限定されるものではないが、好ましくはメタ位である。式中MはNa原子またはK原子である必要があり、好ましくはNa原子である。
【0022】
このようなジカルボキシベンゼンスルホネート化合物の具体例としては、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸カリウム、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸カリウム、およびこれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルなどが挙げられる。これらは単独で使用することが好ましいが、2種以上組み合わせて使用しても良い。以上の中で最も好適に使用されるのは、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0023】
このジカルボキシベンゼンスルホネート化合物は、ε−カプロラクタムに対して0.1〜3モル%の範囲で添加する必要があり、好ましくは0.1〜2モル%、さらに好ましくは0.1〜1モル%である。この範囲を下回ると塩基性染料に対する充分な染色効果が得られず、またこの範囲を上回ると得られる共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の強度など機械的性質が低下する。
【0024】
本発明では、任意成分としてジアミン化合物を併用することが可能である。ジアミン化合物は炭素数4〜20のジアミン化合物であることが好ましく、その具体例としては、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン(MDP)、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどが挙げられる。中でも、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、キシリレンジアミンが好ましく用いられる。
【0025】
ジアミン化合物の添加率は重合速度などを考慮して適宜決定すればよいが、前記ジカルボキシスルホネート化合物に対し0〜90モル%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0〜70モル%、さらに好ましくは0〜50モル%の範囲である。この範囲を上回ると、得られたポリマーのアミノ末端基量が多くなり、塩基性染料だけでなく酸性染料にも染まってしまう。
【0026】
一般にカーペット等を製造する際の染色方法として数種の異染性糸を1回の工程で染色する1浴多染化が行われる。この場合、酸性染料と塩基性染料が入った同浴で染色を行うため、塩基性染料だけでなく酸性染料にも染まってしまう場合、色の鮮明性が損なわれる問題がある。
【0027】
本発明では、(B)アニオン系界面活性剤を添加することが極めて重要である。本発明の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物は、(A)(a1)ε−カプロラクタム、(a2)ジカルボキシスルホネート化合物、および任意成分として併用されるジアミン化合物を共重合してなるポリカプロアミド共重合体および、(B)アニオン系界面活性剤を該ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位に対して1〜100重量%を含有させる必要がある。
【0028】
本発明の上記共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法としては、(a1)ε−カプロラクタム、(a2)ジカルボキシスルホネート化合物、および任意成分として併用されるジアミン化合物を重縮合する際に、(B)アニオン系界面活性剤を添加する方法が好ましく用いられる。
【0029】
驚くべきことに、このことにより白色の不溶解物が全く生成しなくなるか、極めて高度に抑制される。(B)アニオン系界面活性剤の添加率の範囲は(a2)ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位に対し、1〜100重量%、好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは1〜8重量%となる量である。添加率がこの範囲を下回ると、白色の不溶解物の生成が十分に抑制できない。この範囲を上回っても不溶解物生成抑制効果は変わらないが、該界面活性剤によるポリマーの着色や物性低下、重合時の発泡といった問題が顕在化するため好ましくない。なお、「ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位」とはジカルボン酸スルホネート化合物が共重合ポリカプロアミドの中で存在する単位を示し、下記式(II)で示される。
【0030】
【化3】

【0031】
本発明において(A)ポリカプロアミド共重合体を重合する際に(B)アニオン系界面活性剤を添加する場合には、添加するジカルボキシスルホネート化合物が全量共重合するものとみなしてそれから生成する単位として上記範囲となるような量を計算して添加量を決定すればよい。
【0032】
(B)アニオン系界面活性剤の具体例としては、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、ジアキルスルホこはく酸塩といったカルボン酸塩類、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリン、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩といったスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩といった硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩といったリン酸エステル塩類等が挙げられ、中でもスルホン酸塩類が好適に用いられ、特にβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩が好適に用いられる。
【0033】
本発明の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造するための反応装置としては特に制限はなく、通常用いられる装置であればどのような装置であってもかまわない。また、重合条件も通常のポリカプロアミドの重合条件でよい。
【0034】
本発明の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法で得られる樹脂組成物は、通常のポリカプロアミドの製造方法と同様に、重合反応装置からストランド状などで吐出して、一旦冷却/カッティングし、ペレット状にした後、熱水などで残存しているモノマーやオリゴマーを抽出除去した後、乾燥して水分を除去する。このペレットを通常の方法で紡糸し、フィラメントやステープルを得ることができる。また、上述のようにペレットにすることなく、重合終了後の溶融状態のポリマーをそのまま紡糸して、フィラメントやステープルにすることもできる。
【0035】
本発明の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で用途に応じてその他の添加剤を配合することができる。これら添加剤は、ポリカプロアミド共重合体の共重合時に添加、もしくは共重合ポリカプロアミド樹脂組成物と溶融混合することにより配合することができる。溶融混合する際には押出機を用いて溶融混合することもできる。さらにこれら添加剤を含むマスターチップをチップブレンドしたり、共重合ポリカプロアミド樹脂組成物のペレットと物理的に混合したりした後、紡糸、押出成形、射出成形などの成形に供することにより配合することもできる。
【0036】
このような添加剤の例としては、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(酸化チタン、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホン酸アミド等)、帯電防止剤(4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組合せ等)、充填剤(グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、繊維状、針状、板状充填剤等)、他の重合体(他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)を挙げることができる。
【0037】
かくして得られる本発明の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物は、白色異物の生成を極めて高水準に抑制した高品質の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物であるため、特に溶融紡糸、フィルム、あるいは精密成形品等異物が問題となる用途に特に有用である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。実施例中、硫酸相対粘度、黄化度(YI)および濾過圧力上昇度ΔPは次の方法により測定したものである。
【0039】
(1)硫酸相対粘度(ηr)
ペレットを粉砕し、JIS標準ふるい24メッシュは通過し、124メッシュ不通過の粉末を集め、該粉末約20gをメタノール200mlで3時間ソックスレイ抽出し、残分を乾燥後測定試料とした。98%硫酸中、試料0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行った。
【0040】
(2)色調
スガ試験機(株)製のカラーコンピューターを用いてペレットのYI値を測定した。
【0041】
(3)濾過圧力上昇度ΔP
溶融温度を自動制御できるメルターと溶融ポリマーを定量吐出できるポンプ(ギヤポンプ)を備えた試験紡糸機のペレット仕込口に被測定サンプルを投入し、溶融温度を276℃に設定し、吐出ポリマ量が4g/minになるようにギヤポンプ回転数を調整した。その後、交換可能なステンレス製焼結フィルター(目開き5μm、濾過面積3cm)を挿入した9ホール(φ2mm)の口金(280℃で予熱)をギヤポンプの下流側に装着し、ギヤポンプと口金フィルターの間の圧力を自動記録しながら2時間15分紡糸した。圧力記録開始から1時間15分経過した時点の圧力をP、さらに1時間経過した時点の圧力をPとし、PとPの差(P−P)を濾過圧力上昇度ΔP[MPa/hr]として求めた。
【0042】
実施例1
φ25mmのガラス製試験管にε−カプロラクタム(以降、LCと略す)20g、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(以降、CBSと略す)0.21g(対LC0.6モル%)、1,6−ジアミノヘキサン(以降HDと略す)0.049g(対CBS40モル%)、アニオン系界面活性剤としてβ‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王(株)製“デモールN”)0.006g(CBSから生成した単位に対し3重量%)および水2.7gを添加し、均一な溶液にした。このガラス試験管に窒素ガス導入管を付けた後、窒素ガスを少量流しながらアルミブロックヒーター中で190℃から240℃まで5℃/10分で昇温し、240℃で3時間保持した。重合後、試験管をアルミブロックヒーターから引き上げ、まだ溶融状態にあるポリマー中の白色異物の生成有無を肉眼で観察した。
【0043】
また、容量5リットルの重合反応装置にLC1,500g、CBS16.08g(対LC0.6モル%)、HD3.70g(対CBS40モル%)、“デモールN”3.70g(CBSから生成した単位に対し3重量%)および水280gを仕込み溶解させ、均一な溶液にした。重合反応装置内を窒素シールした後、反応装置の内圧が0.98MPaになるまで1時間で昇温させ、この圧力を維持したまま250℃まで昇温を続けた。250℃到達後、40分かけて大気圧になるまで放圧を行った。その後大気圧で、250℃で50分保持した後、ポリマーを吐出して冷却/カッティングし、ペレット状にした。このペレット中の未反応成分をペレットに対して20倍量の98℃の熱水で抽出し、真空乾燥機で乾燥した。得られたペレットのηrは2.59、YIは1.1であった。ペレット中に含まれる異物量を定量的に測定するため、ペレットを276℃で溶融し、目開き5μmのフィルターを通して口金から押し出し、そのときの濾過圧力上昇度ΔP[MPa/hr]の測定を行った。
【0044】
結果を表1に示す。
【0045】
実施例2〜8
CBS添加率、HDおよびアニオン系界面活性剤添加率を変更した以外は実施例1と同様にしてポリマーを得、白色沈殿の有無を確認し、濾過圧力上昇度ΔPを測定した。結果を表1に示す。
【0046】
比較例1
アニオン系界面活性剤を無添加とした以外は実施例1と同様にしてポリマーを得、白色沈殿の有無を確認し、濾過圧力上昇度ΔPを測定した。結果を表1に示す。
【0047】
比較例2〜4
CBS添加率、HDおよびアニオン系界面活性剤添加率を変更した以外は比較例1と同様にしてポリマーを得、白色沈殿の有無を確認し、濾過圧力上昇度ΔPを測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例9〜11
CBSの代わりに2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸カリウムおよびCBSのジメチルエステルを使用した以外は実施例1と同様にしてポリマーを得、白色沈殿の有無を確認し、濾過圧力上昇度ΔPを測定した。結果を表2に示す。
【0050】
比較例5〜7
アニオン系界面活性剤を無添加とした以外は実施例9〜11と同様にしてポリマーを得、白色沈殿の有無を確認し、濾過圧力上昇度ΔPを測定した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例12
“デモールN”のかわりに花王(株)製直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下DBSと略す)を使用した以外は実施例1と同様にしてポリマーを得、白色沈殿の有無を確認し、濾過圧力上昇度ΔPを測定した。結果を表3に示す。
【0053】
比較例8、9
デモールNのかわりにノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(三洋化成工業(株)製“ノニポール200”)を使用した以外は実施例1と同様にしてポリマーを得、白色沈殿の有無を確認し、濾過圧力上昇度ΔPを測定した。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)ε-カプロラクタム、および上記ε−カプロラクタムに対して0.1〜3モル%の(a2)下記式(I)
【化1】

(式中、MはNa原子またはK原子、RおよびR’は水素あるいはアルキル基を示し、互いに同一または異なっていてもよい。)で示される少なくとも1種のジカルボキシスルホネート化合物を共重合してなるポリカプロアミド共重合体と、
(B)上記ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位に対して1〜100重量%のアニオン系界面活性剤とを含有してなる共重合ポリカプロアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ジカルボキシスルホネート化合物が3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物。
【請求項3】
アニオン系界面活性剤がナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物。
【請求項4】
(a1)ε−カプロラクタムおよび、
上記ε−カプロラクタムに対して0.1〜3モル%の(a2)下記式(I)
【化2】

(式中、MはNa原子またはK原子、RおよびR’は水素あるいはアルキル基を示し、互いに同一または異なっていてもよい。)で示される少なくとも1種のジカルボキシスルホネート化合物とを共重合する際に、
(B)上記ジカルボキシスルホネート化合物から生成した単位に対し1〜100重量%となる量のアニオン系界面活性剤を添加することを特徴とする共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
ジカルボキシスルホネート化合物が3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項4記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
アニオン系界面活性剤がナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩であることを特徴とする請求項4または5に記載の共重合ポリカプロアミド樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−31322(P2008−31322A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207227(P2006−207227)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】