説明

共重合性界面活性剤(2)

【課題】エマルション重合用の共重合性乳化剤として適当な化合物を提供する。
【解決手段】オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合において、特定のポリエーテル樹脂の片末端に特定のマレイン酸金属塩を付加した化合物から選択されるマレイン酸エステルを共重合性乳化剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー部門に属し、特定構造のマレイン酸エステルのエマルション重合における乳化剤としての使用、および、特定の共重合性乳化剤を使用するエマルション重合によるポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルション重合は、低水溶性のオレフィン系不飽和モノマーを水中で乳化剤を用いて乳化し、例えば過硫酸カリウムまたは酸化還元開始剤などのような水溶性開始剤を用いて重合させる特定の重合方法である。ここで、アニオン性および/または非イオン性界面活性剤は重要な成分である。それらは、水溶液中でのミセル構造を経てエマルション重合工程を確保する。
【0003】
共重合性乳化剤は、増大するポリマー鎖に完全にまたは部分的に組み込まれ、その結果、例えば最終的な応用製品において遊離乳化剤分子の移動を減少させるため、産業上大きな需要がある。共重合性乳化剤は、モノマーと従来の乳化剤の中間に位置する。この位置づけにおいて、それらの反応性については共重合性乳化剤を使用するモノマーに合わせるべきであり、逆に得られるポリマーの特性を変えてはならない。同時に、反応性基が存在する結果としてそれらの乳化特性を失ってはならない。特定の特性のこの組み合わせに基づいて、新規の共重合性乳化剤に対して産業上大きな需要が存在する。
【0004】
独国特許公開公報DE−A−10340081は、式:HOOC−CH=CH−COO−(BO)(PO)(EO)〔式中、Rは、8〜24個の炭素原子を
有するアルキル基またはアルキルフェノール基であり、BOはブチレンオキシド単位であり、POはプロピレンオキシド単位であり、EOはエチレンオキシド単位であり、数x、yおよびzは、互いに独立して0または1〜50の数である。ただし、数x、yおよびzの少なくとも1つが0以外であり、部分的にまたは完全に中和したかたちで存在するカルボキシル基、および、シスまたはトランス配置をとるC=C二重結合もあり得る。〕で示される共重合界面活性剤を記載する。
【0005】
Schoonbrood等によるMacromolecules、1997年(30)、第6024-6033頁の表1(第6025頁上)は、エマルション重合において乳化剤として使用するための、NaOSCOCOCH=CHCOOC1429(NaOSO−CO−COCH=CHCOOC1429のかたちでも表記できる)を有するアニオン界面活性剤「M14」を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10340081号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Schoonbrood等、Macromolecules、1997年(30)、第6024-6033頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、単独または他の化合物との混合で、エマルション重合用の共重合性乳化剤として適当な化合物を提供することである。
【0009】
エマルション重合のための乳化剤としてのそれらの使用において、これらの化合物は、特に、低いレベルの凝塊形成のみが存在するという効果を有しているべきである。さらに、水性調製物におけるこれらの共重合性乳化剤は注入可能(pourable)でありポンプ輸送可能(pumpable)であるべきである。
【0010】
最後に、エマルション重合における乳化剤としてのそれらの使用を通じて、類似する非共重合性乳化剤により調製されたラテックスと比較して、電解質安定性、アルカリ耐性および/または粘性に関する改善された特性を示すラテックスを得ることができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1に、本発明は、 オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合における、一般式(I)および(II)の化合物から選択されるマレイン酸エステルの共重合性乳化剤としての使用を提供する。
【化1】

〔式中、Aは、3〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、XおよびZは、互いに独立して、水素またはメチル基であり、Mは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、NHまたはアミン基であり、nおよびpは、互いに独立して、0〜40の範囲の数である。〕
エマルション重合の過程においては、化合物(I)および(II)を個々にまたは互いに混合して使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈EOおよび/またはPO単位〉
化合物(I)および(II)は、構造要素:
【化2】

を含む。式中、上述したとおり、以下のように定義される。
XおよびZは、互いに独立して、水素またはメチル基であり、
nおよびpは、互いに独立して、0〜40の範囲の数である。
【0013】
使用される式注釈が、前記の構造要素がそれぞれエチレンオキシド(EO)またはプロピレンオキシド(PO)に由来するという事実を表すことを意図する点に留意されたい。すなわち、インデックスm、nおよびpが0以外である場合には、これらの単位は、合成的観点から、EOまたはPOの付加、あるいはエチレングリコールまたはプロピレングリコール(n、p=1の場合)、若しくは、EOおよび/またはPOの重付加、あるいはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、あるいは対応する混合EO−POコポリマー(n、pが2以上の場合)に由来する。
【0014】
さらに、これらの各構造要素が、(互いに独立して)EO単位のみおよびPO単位のみのいずれでも構成され得ること、あるいはEO単位とPO単位をランダムにまたはブロックで分布する混合形態で含み得ることを明確に留意されたい。この結果として、上述の構造要素に対して使用される定式の表現は、上述した可能性に対する省略表記を表し、それらは当業者にとって明らかである。
【0015】
したがって、例えば、X=Hおよびn=5は、当該構造要素が、−(O−CH−CH−)−部分に相当する5個の連結したEO単位を含むことを意味し、;逆に、X=CHおよびn=5は、該構造要素が、−(O−CH−CH(CH))−部分に相当する連結したPO単位を含み、かつ(当業者が認識するように)構造要素内のメチル基の配置は、各PO単位に二通りあり得る、すなわち−(O−CH−CH(CH))−または−(OCH(CH)−CH)−であり得ることを意味する。
【0016】
本発明において、式(I)および(II)は、上述した構造要素内で(論理的観点から各インデックスが少なくとも2の値を有することを前提とする)EO単位およびPO単位が同時に存在し得るよう理解されるべきである。したがって、「XおよびZは、互いに独立して、水素またはメチル基であり」の中の表現「互いに独立して」は、上述した異なる構造要素を表すだけでなく、同一の構造要素内にも適用される。
【0017】
上述したことによれば、例えば、式(I)が、構造要素−(EO/PO)−および−(EO/PO)−が上述したようにEOまたはPO単位のみを含むか、または両単位の混合を含み、各PO単位が配置−(O−CH−CH(CH))−または−(O−CH(CH)−CH)−で存在し得る
【化3】

のような異なる表記で表現され得ることは明らかである。
【0018】
〈基M〉
上述したように、Mは以下の定義を有していてよい:水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、−NHまたはアミン基。
Mは、「単離した」基ではないが、−COOMの一部であるため、Mの定義により、基−COOMが遊離カルボキシレート基(M=Hは基−COOHを生じる)またはその塩(Mが水素でない場合、Mは別の定義を有する)のいずれかであることは当業者にとって明らかなことである。
基−COOMは、部分的または完全に中和したかたちで存在してよい。カルボキシレート基−COOHは、例えば、アルカリ金属またはアルカリ金属水和物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムなど)、またはアミン(アンモニアまたはエタノールアミン)により中和し得る。化合物(I)および(II)の塩形態は、良好な水溶性で有名である。
【0019】
〈化合物(I)および(II)〉
アルキル基Aは、3〜40個、好ましくは10〜20個、より好ましくは12〜18個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状、飽和または不飽和アルキル基を含んでなる。特に好ましくは以下のアルキル基Aが挙げられる:ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、セチル(C16)、ステアリル(C18)、オレイル(オレフィン系不飽和C18)、およびイソトリデシル。
【0020】
1つの実施態様において、アルコキシル化度nおよびpは、それぞれ互いに独立して0〜30の範囲、とりわけ0〜20、とりわけ0〜10、とりわけ0〜20、とりわけ3〜10の範囲である。
【0021】
式(I)の化合物は、例えば、ギ酸および過酸化水素を用いて市販のα−オレフィンにエポキシ化を施し、その後、得られた中間体1のエポキシ環を水またはエチレングリコールを用いて開環し、必要な場合に、得られた中間体2をアルコキシル化(エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドによる反応)することにより得られ得る。その後、得られたジオールを無水マレイン酸と反応させ、マレイン酸モノマーを生成し、必要に応じて中和する。
【0022】
〈化合物(I)および(II)の使用〉
本発明に使用する化合物(I)および(II)は、他の異なるオレフィン系不飽和モノマーとともに容易にかつ完全に重合化することができ、気泡のない均質なエマルションの調製を促進する。
【0023】
〈ポリマーの製造方法〉
さらに、本発明は、上述した化合物(I)および(II)を共重合性乳化剤として用いたオレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合によるポリマーの製造方法を提供する。
【0024】
化合物(I)および(II)を(特に塩形態で)使用する本発明の方法の特徴は、特に剪断安定性および電解質安定性ならびに低凝固分を有するポリマーが得られることである。
本発明の1つの実施態様は、同様に、特に耐水性および温度変動に対する安定性により区別され、フィルム中で認識し得る乳化剤の移動がないラテックスを製造する。
さらに、本発明の方法の他の有利点は、実質的に気泡がなく、確実に揮発性有機化合物の形成を防止することである。ポリマーへの乳化剤(I)および(II)の組み込みが実質的に定量的であるため、それらの使用は、生物分解性に関するいかなる問題をも引き起こさない。さらにオレフィン系不飽和エステル(I)および(II)は、実質的に単独重合の傾向を示さない。
【0025】
エマルション重合における乳化剤としての化合物(I)および(II)の使用により、類似の非共重合性乳化剤により生成したラテックスと比べて、それらの電解質安定性、アルカリ耐性または粘性に関して改善された特性を示すラテックスを得ることができることが見出された。(I)および(II)と非イオン性およびアニオン性の典型的な界面活性剤との組み合わせを用いてもよく、同様に特性の有益なプロフィルを示す。
【0026】
本発明のラテックスは、例えば塗装業において使用し得る。本発明のラテックスにより製造されるコーティングが、従来のコーティングに比べて高い腐食防止性を有していることが見出された。
【0027】
さらに、一般式(I)および(II)の化合物を乳化剤として使用して調製したラテックスは、従来の乳化剤を使用して調製したラテックスに比べて、特に改善された凍結/解凍安定性を有することが見出された。
【0028】
〈モノマー〉
本発明に使用される一般式(I)および(II)のオレフィン系不飽和エステルは、全ての工業的に重要な、実質的に不溶性のモノマーの、特に(メタ)アクリル酸化合物、スチレン化合物およびビニル化合物のエマルション重合において乳化剤として適当である。
【0029】
これらのモノマーの典型的な例は、ビニル芳香族、例えばスチレン、ジビニルベンゼンまたはビニルトルエン、重合性オレフィンおよびジオレフィン、例えばプロペン、ブタジエンまたはイソプレン、アクリル酸またはメタクリル酸と、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルコール、とりわけ1〜8個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、特に好ましくは、それらのメチルエステル、エチルエステルおよびブチルエステル、2〜12個の炭素原子を有する酸のビニルエステル、とりわけ、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、およびラウリン酸ビニル、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどである。
【0030】
アクリル酸またはメタクリル酸の付加の有無にかかわらず、アクリル酸アルキル、アクリル酸スチレン、ベオバ(VeoVa)化合物またはそれらの混合物から選択されるモノマーが本発明において特に好ましい。
【0031】
該モノマーは、本発明に使用する共重合性乳化剤(I)および(II)の存在下、上記リストの他の化合物と、単独重合または共重合し得る。また、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1〜8個の炭素原子を有するマレイン酸および/またはフマル酸のモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸および/またはイタコン酸のような、本発明の化合物(I)および(II)とは異なり、本質的に部分的または完全に水溶性である50重量%までの他のモノマーを含む共重合を行うことも可能である。
【0032】
1つの実施態様において、本発明の方法に使用されるモノマーは、アクリル酸スチレン/ブチル、酢酸ビニル/アクリル酸ブチルまたはスチレン/ブタジエンの組み合わせである。
【0033】
〈共乳化剤〉
さらに、本発明に使用する化合物(I)および(II)を、既知の非イオン性および/またはアニオン共乳化剤と組み合わせて使用することもできる。この使用は、例えば、剪断力、温度効果、および電解質に関して増強した安定性を有する分散体を導く。この場合、共乳化剤は、使用するモノマー全体に基づき、0.5〜5重量%、好ましくは1〜3重量%の量で添加する。この場合、共乳化剤を共重合の開始時に乳化剤とともに投入することが可能であり、または、重合中に共乳化剤を測り入れることも可能である。別のバージョンは(単独または組み合わせで)共乳化剤を使用し、重合中にプレエマルションの計量をするプレエマルションの調製を構想する。また、本発明のアクリル酸および/またはメタクリル酸エステルを使用して得られた分散体を後安定化するために、前記分散体に共乳化剤を加えることもできる。
【0034】
本発明に使用される化合物(I)および(II)を、保護コロイドとともに使用することもできる。この種類の保護コロイドの典型例は、完全にまたは部分的に加水分解された酢酸ビニルのホモポリマーおよび/またはコポリマー、例えば、部分的加水分解酢酸ポリビニル、または完全に加水分解された酢酸ビニルおよびビニルエーテルのコポリマーである。好ましいコポリマーは、ポリビニルエーテルのエーテル部分に1〜4個の炭素原子を有する。他の保護コロイドは、多糖に由来していてもよい。特に適当なものは、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースまたはセルロース混合エーテルのようなセルロースエーテルを有している。また、ポリアミドも適当であり、アクリル酸、アクリロニトリルまたはアクリル酸エステルとのその共重合体も適当である。ナフタリンスルホン酸およびホルムアルデヒド、または他の水溶性ホルムアルデヒド樹脂、とりわけ、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の縮合生成物を、同様に使用し得る。最後に、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、および天然デンプンおよびヒドロキシエチルデンプンのような置換デンプン誘導体は、好適な保護コロイドである。
【0035】
〈エマルション重合〉
1つの実施態様において、モノマーの合計に基づいて0.1〜25重量%の量で乳化剤(I)および(II)をエマルション重合に使用する。
【0036】
化合物(I)および(II)を使用する該方法の第1段階で一般的に調製される水性分散体は、実際には、水、あるいは、水と水溶性有機溶媒の混合物中に15〜75重量%の重合モノマー(乾燥残留物)を含有する。20〜60重量%の範囲の乾燥残留物が好ましい;しかしながら、特殊用途に対しては15重量%未満の乾燥残留物を含む水性分散体も調製し得る。エマルション重合の前記方法においては、他の一般的な重合化助剤、とりわけ、例えば、過硫酸カリウムまたはアンモニウムあるいは過酸化水素などの無機過酸化合物のような開始剤、さらに、エマルション重合にも使用し得る有機過酸化合物または有機アゾ化合物を使用することができる。開始剤は、一般的な量、すなわち、0.05〜2重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の量で使用する。他の適当な助剤は、緩衝物質、例えば、炭酸水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムであり、それらを2重量%までの量で使用し得る。ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩のような反応促進剤も使用し得る。さらに、エマルション重合で使用される一般的な分子量調整剤、例えばブテノール、または他の有機チオ化合物、例えばメルカプトエタノール、チオグリコール酸、オクチルメルカプタンまたはtert−ドデシルメルカプタンなどを使用することもできる。重合工程を実施するために、例えば、初期充填における全反応性物質の完全な組み込み、モノマー供給、エマルション供給のような、エマルション重合において一般的に使用される種々の方法が考えられる。このために、一般的にいえば、重合媒体の温度は40〜100℃の範囲、とりわけ50〜90℃の範囲に維持される。低pHレベルでのエマルション重合も本発明の化合物により可能であるが、維持されるpHは、3〜9の範囲であることが適当である。エマルション重合のための前記の可能な変法は、攪拌機および温度測定装置の備わった冷却および加温可能な容器(例えば攪拌圧力容器)で適切に実施される。同様に、コイル管リアクター(またはループ型リアクターともいう)を使用することもできる。重合が終了した後、ポリマー分散体を適当に冷却し、篩装置を介してリアクターから取り除く。反応生成物が固形生成物として単離される場合、該ポリマー生成物を適当に沈殿または噴霧乾燥させる。しかしながら、好ましくは、重合において得られた分散体をそのまま、塗料、接着剤、紙加工スリップ剤、および他のコーティング材のバインダーとして使用する。本発明に使用する化合物(I)および(II)を用いたエマルション重合方法の他の条件は、従来法における当業者により、特定の要求に対して自由に選択または適合され得る。
【実施例】
【0037】
〈使用した乳化剤〉
C12マレイン酸塩:
これは、本発明の式(I)および(II)で示される物質である。以下のように調製した:
フラスコ中で98g(1モル)の無水マレイン酸を溶解し、4.4gの炭酸ナトリウムと混合した。90℃で、攪拌しながら系に窒素を通し、618.18g(1モル)の1,2−ジヒドロキシドデカン−10EO(10モルのエチレンオキシドと1モルの1,2−ジヒドロキシドデカンとの付加物)を加えた。エステル化反応を、酸価を確認することで観察した。反応終了後、生成物を水酸化ナトリウム溶液を用いて中和し、固形分30%まで調製した。
SUS 87:
これは、Cognis製の市販品「Disponil SUS 87」である。
【0038】
〈使用した試験方法〉
調製したエマルションを、以下のパラメーターにより特徴付けた:
【0039】
乾燥残留物は、以下のように測定した:
5gのエマルションをSatorius 709301乾燥残留物装置に投入し、一定重量になるまで乾燥させた。結果を、乾燥残留物(重量%)で記載する。これは下記の表におけるデータの意味である。
【0040】
調製したエマルションの粘度は、ブルックフィールド法(20rpm、スピンドル1、エマルションはそのままの状態で使用)により測定した。下記表中の粘度に対する数値は、単位mPasで示される。
【0041】
調製したエマルションのpHは、pH電極を用いて、DIN19268により電気化学的に測定した。
【0042】
調製したエマルションの平均粒子径は、Coulter Nano−Sizerを用いて測定した。下記表中の粒子径に対する数値は、単位nm(ナノメメートル)により記載される。
【0043】
調製したエマルションの凝固分は、80μmのフィルターを通して濾過した後、重量測定法により測定した(湿潤凝固)。
これにより測定した凝固分を、エマルションの固形分に対する凝固分%として記載する。ここで、エマルションの固形分は、使用したモノマーの量を意味する。
凝固分は、エマルション重合により調製されたエマルションの品質を評価するために、当業者にとって重要な変数である。
【0044】
調製したエマルションの電解質安定性は、このエマルション(10g)のサンプルを、それぞれ10mlの6個の異なる電解質溶液で処理し、凝固形成を調べることにより測定した。電解質溶液は、1%および10%のNaCl、CaClおよびAlClの各溶液であった。記載したデータは、凝固形成しなかった最も強い電解質溶液である。
【0045】
アルカリ耐性は、エマルションから乾燥ポリマーフィルムを調製し、それをNaOH溶液(4%)中に保管することにより測定した。24時間後と48時間後に、フィルムの白化を調べ、スケール0(変化なし)〜5(完全に白化)に等級分けした。
【0046】
〈ラテックスの調製〉
実施例1(本発明)
反応容器に、377.20gの蒸留水、1.24gの酢酸ナトリウム、0.12gの硫酸鉄アンモニウム六水和物、8.34gのビニルスルホン酸ナトリウム、および0.19gの二亜硫酸ナトリウムを投入した。反応混合物を窒素で洗い流し、55℃まで加熱し、開始剤溶液1(1.01gの過硫酸ナトリウムと12.14gの蒸留水からなる)と混合した。その後の3時間に、379.28gの酢酸ビニルと126.43gのVeoVa10のモノマー混合物と、62.71gの蒸留水中の10.11gのC12マレイン酸塩からなる乳化剤溶液の計量添加を別々に行った。
その後温度を85℃まで上げ、開始剤溶液2(0.51gの過硫酸ナトリウムと12.14gの蒸留水からなる)を加え、1時間、後重合を行った。反応終了後、得られたラテックスを濾過し、水酸化アンモニウム溶液で中和し、pH7〜8に調整した。
【0047】
実施例2(比較例)
C12マレイン酸塩を同量のSUS87に置き換えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0048】
〈試験結果〉
調製したラテックスについて、より詳細に特徴付けた。結果は表1から明らかである。
【0049】
【表1】

【0050】
〈凍結/解凍安定性の測定〉
実施例3(本発明)
実施例1の本発明のエマルションを23℃から−5℃まで16時間にわたり冷却し、−5℃の温度に達した時点で再び23℃まで8時間にわたり加温した。その後、該エマルションの均質性を調べた。このサイクルを全5回行い、各サイクルにおける最低温度をさらに5℃下げた。すなわち、第2サイクルでは−10℃まで冷却を行い、第3サイクルでは−15℃まで冷却を行うなどした。実施例1による本発明のエマルションは、第5サイクルの後も均質であった。すなわち、無傷のエマルションであった。
【0051】
実施例4(比較例)
実施例3の方法を、実施例2の比較ラテックスに適用した。この場合には、該エマルションが第1サイクルのすぐ後に相分離を示すことがわかった。形成された凝塊は再分散性ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合における、一般式(I)および(II):
【化1】

〔式中、Aは、3〜40個の炭素原子を有するアルキル基であり、XおよびZは、互いに独立して、水素またはメチル基であり、Mは、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、−NHまたはアミン基であり、nおよびpは、互いに独立して、0〜40の範囲の数である〕
の化合物から選択されるマレイン酸エステルの共重合性乳化剤としての使用。
【請求項2】
アルコキシル化度nおよびpが3〜10の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項3】
Aが、12〜18個の炭素原子を有するアルキル基である請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたマレイン酸エステル(I)および(II)を共重合性乳化剤として使用する、オレフィン系不飽和モノマーのエマルション重合によるポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2011−6684(P2011−6684A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−144587(P2010−144587)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】