説明

共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向フィルム

【課題】フィルムなどにしたときに含有する異物などの周辺に発生するフライスペックと呼ばれる欠陥が少ない共重合芳香族ポリエステルおよびそれを用いた二軸配向フィルムの提供。
【解決手段】5モル%以上80モル%未満の範囲の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分(ANA成分)、他の芳香族ジカルボン酸成分およびアルキレングリコール成分とからなり、ANA成分の質量を基準として、R−O(O)C−R−ORO−R−C(O)ORO−R−C(O)OR (上記式中の、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、Rは2,6−ナフタレンジイル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)で表される化合物A由来の成分の含有量が0.2質量%以下で、アルカリ金属の含有量が50ppm以下である共重合芳香族ポリエステルおよびそれからなる二軸配向フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合した共重合芳香族ポリエステルおよびそれを用いた二軸配向フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表されるポリエステルは優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、フィルムなどに幅広く使用されている。例えば、優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の高密度磁気記録媒体などでの寸法安定性、特に温度や湿度の変化に対する寸法安定性の要求はますます高くなってきており、さらなる特性の向上が求められている。
【0003】
そこで、特許文献1および2では、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合成分として用いることで、湿度膨張係数および温度膨張係数の小さいフィルムを得ることが提案されている。しかしながら、原料として用いる6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸およびそのエステル形成性誘導体は、従来からポリエステルの原料として用いられてきたテレフタル酸もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体に比べ、蒸留精製が困難で不溶性の異物を含みやすく、それらがフィルムとしたときに表面欠点などを形成するといった問題を抱えている。
【0004】
そこで、特許文献3では、工程の途中で金属繊維フィルターを通すことによって得られた不溶性の粗大異物低減することが提案されている。しかしながら、特許文献3の方法は、機械的に不溶性の粗大異物を取り除くだけであり、さらなるポリマーとしたときに含有する異物量の低減が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−189799号公報
【特許文献2】特開2008−189800号公報
【特許文献3】特開2009−144036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合していながらも、フィルムなどにしたときに含有する異物などによって生じる粗大突起が少ない共重合芳香族ポリエステルおよびそれを用いた二軸配向フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決しようと鋭意研究したところ、原料として用いる6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分に含まれる下記構造式(I)で示される化合物由来の成分とアルカリ金属化合物とを、原料段階で特定量以下に除去することによって、フィルムにしたときに極めて粗大突起の少ない共重合芳香族ポリエステルが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
かくして本発明によれば、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分およびテレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とアルキレングリコール成分とからなり、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の全芳香族ジカルボン酸成分中に占める割合が、5モル%以上80モル%未満である共重合芳香族ポリエステルであって、
6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の質量を基準として、下記式(I)
−O(O)C−R−ORO−R−C(O)ORO−R−C(O)OR (I)
(上記式(I)中の、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、Rは2,6−ナフタレンジイル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される化合物A由来の成分の含有量が0.2質量%以下で、かつアルカリ金属化合物の含有量が、アルカリ金属元素量で50ppm以下である共重合芳香族ポリエステルが提供される。 また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分であること、アルキレングリコール成分の90モル%以上が、エチレングリコール成分であることの少なくともいずれかを具備する共重合芳香族ポリエステルも提供される。
さらにまた、本発明によれば、上記本発明の共重合芳香族ポリエステルからなる二軸配向フィルムも提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、寸法安定性に優れる6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合した共重合芳香族ポリエステルに、さらに異物などによる欠点が少ないという特性を具備させることができ、その結果、特に粗大突起の低減などが強く要求される高密度記録用途などに適用可能な良質な二軸配向フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、共重合芳香族ポリエステルを形成する主たる芳香族ジカルボン成分としては、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分およびテレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分であることが、フィルムなどに成形したときに十分な機械的特性などを具備させるために必要である。
【0011】
本発明における、前述の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分としては、アルキレン基が炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などが挙げられる。これらの中でも本発明の効果の点からは、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が好ましく、特に6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が好ましい。
【0012】
また、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分は、機械的特性などの点からテレフタル酸成分、2、6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましく、特に2、6−ナフタレンジカルボン酸成分である。 本発明で用いられるアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール成分、トリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分などが挙げられ、機械的特性などの点からグリコール成分の90モル%以上はエチレングリコール成分であることが好ましく、さらに95〜100モル%がエチレングリコール成分であることが好ましい。
【0013】
ところで、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、前記6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の質量を基準としたとき、前記式(I)で表される化合物A由来の成分の含有量が0.2質量%以下で、かつアルカリ金属化合物の含有量が、アルカリ金属元素量で50ppm以下であることが必要である。例えば、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを例にとると、この化合物は、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを無水極性溶媒中で炭酸アルカリの存在下、ジクロロエタンやジブロモエタンのようなジハロエタンとを60〜150℃で反応させることで得ることができる。そして、反応終了後、これらを単純にろ過および洗浄しただけでは、得られる反応物中に、前記式(I)で表される化合物Aが副生物として数質量%含まれ、また反応に使用した炭酸アルカリなどに由来するアルカリ金属化合物が大量に残存する。そして、前記式(I)で表される化合物Aはポリエステル組成物の合成時に高融点の異物物を形成し、また残存アルカリ金属化合物は、共重合芳香族ポリエステルの重合およびその後のフィルムなどへの溶融成形の際に、粗大異物を形成することが判明した。
【0014】
そのような観点から、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の重量を基準としたときに、含有する前記式(I)で表される化合物A由来の成分の含有量が、0.1質量%以下、さらに0.08質量%以下であることが好ましい。また、同様な理由から、アルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属元素量で50ppm以下であることが必要で、好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0015】
ところで、前記化合物A由来の成分の含有量およびアルカリ金属化合物の含有量を、上記の範囲にする手段としては、例えば6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを加温状態で溶媒に溶解させ、冷却、再結晶後にろ過を行い、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを取り出す方法が挙げられる。溶媒としては沸点以下で6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを完全に溶解させるものを使用することが好ましく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルの種類により溶媒への溶解度が異なるため、それぞれに適した条件で行うことが好ましい。もちろん溶媒への溶解、再結晶作業を繰り返し行い、前述の化合物A由来の成分およびアルカリ金属化合物が、前述の範囲となるまで除去を繰り返せばよい。また、さらにより異物の少ない6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを得るために、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルを溶媒に溶解した状態でろ過を行い、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルに含まれる細かいゴミを除去することも好ましい。
【0016】
また本発明の特徴として、ポリエステルの酸成分の内、全酸成分のモル数を基準として、5〜80モル%の範囲で上記構造式(I)で示される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されていることである。6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合が下限未満では、湿度膨張係数の低減効果などが発現されがたい。一方、上限は成形性などの観点から80モル%以下が好ましく、さらに50モル%未満であることが好ましい。また、驚くべきことに、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分による湿度膨張係数の低減効果は、少量で非常に効率的に発現されることから、上限以上添加しても湿度膨張係数の観点からの効果は飽和状態になるともいえる。そのような観点から、好ましい6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の共重合量の上限は、45モル%以下、さらに40モル%以下、よりさらに35モル%以下、特に30モル%以下であり、他方下限は、5モル%以上、さらに7モル%以上、よりさらに10モル%以上、特に15モル%以上である。
【0017】
このような特定量の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合したポリエステルを用いることで、温度膨張係数と湿度膨張係数も小さい成形品、例えばフィルムなどを製造することができる。
【0018】
もちろん、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、
他の共重合成分をさらに共重合、例えば繰り返し単位のモル数に対して10モル%以下、
さらに5モル%以下の範囲で共重合していてもよい。具体的なさらなる共重合成分として
は、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸成分、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸成分、4,4’−ジフェニルジカルボン酸成分、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸成分、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸成分、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸成分、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸成分などの芳香族ジカルボン酸成分、ヘキサヒドロテレフタル酸成分、ヘキサヒドロイソフタル酸成分などの脂環式ジカルボン酸成分、コハク酸成分、グルタル酸成分、アジピン酸成分、ピメリン酸成分、スベリン酸成分、アゼライン酸成分、セバシン酸成分、ウンデカジカルボン酸成分、ドデカジカルボン酸成分などの脂肪族ジカルボン酸成分、イソプロピレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、ヘキサメチレングリコール成分、オクタメチレングリコール成分、ジエチレングリコール成分などのグリコール成分、グリコール酸成分、p−ヒドロキシ安息香酸成分、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸成分などのヒドロキシカルボン酸成分や、アルコキシカルボン酸成分、ステアリルアルコール成分、ベンジルアルコール成分、ステアリン酸成分、ベヘン酸成分、安息香酸成分、t−ブチル安息香酸成分、ベンゾイル安息香酸成分などの単官能成分、トリカルバリル酸成分、トリメリット酸成分、トリメシン酸成分、ピロメリット酸成分、ナフタレンテトラカルボン酸成分、トリメチロールエタン成分、トリメチロールプロパン成分、グリセロール成分、ペンタエリスリトール成分などが挙げられる。 また、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の熱可塑性ポリマー、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などを必要に応じて配合してポリエステル組成物としても良く、そのようなポリエステル組成物にすることは得られる成形品に更なる特性を付与しやすいことから好ましい。なお、他の熱可塑性ポリマーとしては、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルイミド、液晶性樹脂、さらには6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の共重合量が外れるポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【0019】
つぎに、本発明の共重合芳香族ポリエステルを得ることができる製造方法について、以下、詳述する。
第一反応のエステル交換反応又はエステル化反応は、前述の再結晶などによって、含有する化合物Aおよびアルカリ金属化合物が低減された6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはその低級アルキルエステルを用意し、アルキレングリコールと反応させればよい。なお、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはそれらの低級アルキルエステルとアルキレングリコールとの反応と、一緒に行なってもよいし別々に行なっても良い。好ましくは製造工程をより簡略化できることから、両方を一緒に行なうことが好ましい。また、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルは融点を持つため、溶融状態でフィルターでろ過を行った後で第一反応の反応器に添加しても良い。第一反応は、常圧下で行ってもよいが、0.05MPa〜0.5MPaの加圧下で行うことが反応速度をより速めやすいことから好ましい。また、第一反応の温度は、170℃〜270℃の範囲で行なうことが好ましい。反応圧力を上記範囲内とすることで反応の進行を進みやすくしつつ、ジアルキレングリコールに代表される副生物の発生を抑制できる。
【0020】
また、第一反応の反応速度をより早くするには、それ自体公知の触媒を用いることが好ましく、たとえばLi,Na,K,Mg,Ca,Mn、Co、Tiなどの金属成分を有する金属化合物が好ましく挙げられる。これらの中でも加圧下で行う場合は、反応の進みやすさの点からMnやTi化合物が好ましい。特にTi化合物は、さらに重縮合反応触媒としても使用でき、かつ触媒残渣の析出も少ないことから好ましい。本発明で用いるチタン化合物としては、触媒残渣の析出による不溶性粗大異物の発生を抑制する観点からポリエステル中に可溶な有機チタン化合物が好ましい。特に好ましいチタン化合物としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラフェノキシド、トリメリット酸チタンなどを好ましく例示できる。
【0021】
添加する触媒量は、第一反応中に存在する全酸成分のモル数を基準として、金属元素換算で、5〜100ミリモル%の範囲にあることが好ましく、さらに7〜70ミリモル%、特に10〜60ミリモル%の範囲にあることが反応速度を促進しつつ、触媒起因の粗大不溶性異物の生成を抑制でき、さらに得られる共重合芳香族ポリエステルの耐熱性を高度に維持できることから好ましい。なお、Li,Na、Kを有する金属化合物を使用する場合は、前述のアルカリ金属元素量となるように調整することが必要である。
【0022】
つぎに、第一反応で得られた前駆体を重縮合反応させる第二反応について説明する。
本発明では、得られる共重合芳香族ポリエステルに、高度の熱安定性を付与させる目的で、第二反応における重縮合反応の開始以前に、反応系にリン化合物からなる熱安定剤を添加することが好ましい。具体的なリン化合物としては、化合物中にリン元素を有するものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸アンモニウム、トリエチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテートなどを挙げることができ、これらのリン化合物は二種以上を併用してもよい。なお、リン化合物の添加時期は、第一反応が実質的に終了してから第二反応である重縮合反応初期の間に行なうことが好ましく、添加は一度に行ってもよいし、2回以上に分割して行ってもよい。触媒で使用したチタン化合物とリン化合物の量は、それぞれの元素量(リン:P、チタン:Ti)のモル比(P/Ti)は2以下、さらに1.5以下であることが、重縮合反応の反応性の点から好ましい。また、第一反応で得られたポリエステル前駆体を、第二反応を開始する前に、本発明のポリエステル中の異物低減のためにろ過を行っても良い。
【0023】
ところで、重縮合反応の温度は270℃〜300℃の範囲で行い、重縮合反応中の圧力は50Pa以下の減圧下で行うのが好ましい。重縮合反応中の圧力が上限より高いと重縮合反応に要する時間が長くなり且つ重合度の高い共重合芳香族ポリエステルを得ることが困難になる。重縮合触媒としては、それ自体公知のTi,Al,Sb,Geなどの金属化合物を好適に使用でき、それらの中でもエステル化反応時に添加されたチタン化合物を引き続き使用することが触媒残渣による粗大異物の発生を抑制できることから好ましい。
【0024】
また、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.3dl/gの範囲にあることが取扱い性や機械的特性などの点から好ましい。
【0025】
このようにして得られる本発明の共重合芳香族ポリエステルは、押出成形法、射出成形法、押出しブロー成形法、カレンダー成形法により、各種の成形品とすることができ、特に異物による欠点が少なく、環境変化などの寸法安定性に優れることから、二軸配向フィルムに好適に用いることができる。
【0026】
また、本発明の二軸配向フィルムは、上述の本発明の共重合芳香族ポリエステルを溶融状態で押出し、二軸方向に延伸することで製造でき、製膜方法などはそれ自体公知のものを採用することができる。本発明の二軸配向フィルムについては、前述の本発明の共重合芳香族ポリエステルおよびその製造方法で説明したことと、特に断らない限り同様なことが言える。なお、前述の通り、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合していることから、本発明の二軸配向フィルムは、同じヤング率のポリエチレン−2、6−ナフタレートからなる成形品と比べたとき、同等の温度膨張係数を維持しつつ、低い湿度膨張係数を有するなど、温湿度変化に対する優れた寸法安定性を発現し、しかも6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合することに基づくフライスペックなどの表面欠点の問題も、極めて低減されたものとなる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明における共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0028】
(1)6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルの純度
6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルをN−メチル−2−ピロリドンに溶解後、高速液体クロマトグラフ(島津製作所製 LC6A型)で溶媒(ジメチルホルムアミド/HO)を使用して測定した。
メインピーク面積を溶媒由来ピークを除いた全てのピーク面積の合計で除算して求めた。
【0029】
(2)原料中の化合物Aの含有量
6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルをN−メチル−2−ピロリドンに溶解後、高速液体クロマトグラフ(島津製作所製 LC6A型)で溶媒(ジメチルホルムアミド/HO)を使用して測定した。
含有量は化合物Aによるピーク面積を溶媒由来ピークを除いた全てのピーク面積の合計で除算して求めた。
化合物Aで表される不純物は6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルのメインピークの直後で現れた。なお、化合物Aの同定は、不純物濃縮後このピーク部分を分取し、H−NMR、13C−NMRにて測定を行った。
【0030】
(3)共重合芳香族ポリエステル樹脂中の化合物A由来の成分の含有量
試料に4重量倍のエチレングリコール、0.03重量倍の炭酸カリウムを入れ、ゲージ圧力0.5MPa、270℃で8時間解重合を行った。その後120℃、6kPaの減圧下で過剰なエチレングリコールを除去した。得られた解重合物に5重量倍のメタノール、0.03重量倍の炭酸カリウムを入れ、ゲージ圧力1.0MPa、140℃で8時間エステル交換処理を行った。冷却し、結晶化したものをメタノールにて洗浄、ろ過を行い、乾燥させえられた試料を(2)と同様の測定を行った。なおその際、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分由来以外のピーク面積は除いたピーク面積の合計で除算して求めた。
【0031】
(4)酸成分分の組成
試料60mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、150MHzの13C−NMR(日本電子株式会社製、JEOL A600)を用いて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を求めた。
【0032】
(5)含有アルカリ金属元素量 6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の低級アルキルエステルに濃硫酸を加えた後灰化し、0.28N塩酸に溶解して、原子吸光分析装置(HITACHI製 Z−2300)にて測定した。
共重合芳香族ポリエステル樹脂については、試料をO−クロロフェノールに溶解させた後に0.5Nの塩酸を加えた後に上澄み液を原子吸分析装置(HITACHI製 Z−2300)にて測定した。
そして(4)で測定した6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の値を使用し、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分に対する値に換算した。
【0033】
(6)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いて、35℃で測定して求めた。
【0034】
(7)粗大突起数(フライスペック)
得られた二軸配向フィルムの表面に蒸着によってアルミニウム層を形成し、光学顕微鏡を用いて微分干渉法により倍率200倍にて1cm×5cmの範囲を4カ所観察し、長径が5μm以上の大きさの突起をマーキングした。この突起を非接触三次元粗さ計(WYKO社製TOPO−3D)にて、測定倍率40倍、測定面積242μm×239μm(0.058mm)の条件にて測定、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得た。同粗さ測定計内臓のソフトによる表面解析により、ベースライン高さからの最高高さをもって突起高さとし、高さ100nm以上の突起を10cmあたりの個数で表す。
【0035】
[参考例1]
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸エチル 100重量部、炭酸カリウム 64重量部、ジブロモエタン 87重量部及びエタノール 350重量部を撹拌機及び還流冷却器を備えた反応器に仕込み、75℃にて15時間反応させた。反応物を冷却後、ろ過を行いイオン交換水にて3回リンス洗浄を行い、最後にメタノールで洗浄を行った。減圧乾燥後、上述の反応器にこの反応物 100重量部に対して、N−メチル−2−ピロリドン 150重量部を加え、125℃で溶解させた。冷却、再結晶化後、ろ過を行い、イオン交換水にて繰り返し洗浄を行い、最後にメタノールで洗浄を行い、減圧乾燥後、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルの白色結晶Aを得た。得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルの特性を表1に示す。
【0036】
[参考例2]
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチル 100重量部、炭酸カリウム 68重量部、ジブロモエタン 93重量部及びメタノール 350重量部を撹拌機及び還流冷却器を備えた反応器に仕込み、65℃にて25時間反応させた。反応物を冷却後、ろ過を行いイオン交換水にて3回リンス洗浄を行い、最後にメタノールで洗浄を行った。減圧乾燥後、上述の反応器にこの反応物 100重量部に対して、N−メチル−2−ピロリドン 1150重量部を加え、125℃で溶解させた。冷却、再結晶化後、ろ過を行い、イオン交換水にて繰り返し洗浄を行い、最後にメタノールで洗浄を行い、減圧乾燥後、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルの白色結晶Bを得た。得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルの特性を表1に示す。
【0037】
[参考例3]
参考例1において、N−メチル−2−ピロリドンの代わりにエタノールを使用し、75℃にて2時間洗浄を行った。冷却後、ろ過を行い、再びエタノール75℃での洗浄を実施し、合計3回実施した。冷却、ろ過後、イオン交換水にて繰り返し洗浄を行い、最後にメタノールで洗浄を行い、減圧乾燥後、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルの白色結晶Cを得た。得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルの特性を表1に示す。
【0038】
[参考例4]
参考例1において、N−メチル−2−ピロリドンによる溶解、再結晶処理を行わず、撹拌機付きの反応器中で常温のイオン交換水で3回洗浄を行い、減圧乾燥後、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルの白色結晶Dを得た。得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルの特性を表1に示す。
【0039】
[参考例5]
実施例1において、N−メチル−2−ピロリドンによる溶解、再結晶処理を行わず、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルの白色結晶Eを得た。得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルの特性を表1に示す。
【0040】
[参考例6]
実施例1において、N−メチル−2−ピロリドンによる溶解、再結晶処理を行わず、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルの白色結晶Fを得た。得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルの特性を表1に示す。
【0041】
[実施例1]
参考例1で得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチル32kg(69.9モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル7.3kg(30.0モル)、エチレングリコール18kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を9.2g(15ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.20MPaの圧力下で加熱して、反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.5g(20ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、共重合芳香族ポリエステル1を製造した。
【0042】
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル30kg(123.0モル)、エチレングリコール15kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を5.3g(7ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.1MPaの圧力下で加熱して、反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を240℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.1g(15ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、共重合芳香族ポリエステル2を製造した。
【0043】
このようにして得られたポリエステル1とポリエステル2を重量比1:1.6で混ぜた後、押し出し機に供給して300℃まで過熱して溶融状態とし、平均空孔径が3μmの金属不織布製のフィルターで濾過した後、ダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、150℃で横方向(幅方向)に延伸倍率6.0倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0044】
[実施例2]
参考例2で得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチル 30kg(69.8モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル 7.3kg(29.9モル)、エチレングリコール21kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を9.2g(15ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.20MPaの圧力下で加熱して、反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.5g(20ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、共重合芳香族ポリエステル3を製造した。
【0045】
このようにして得られたポリエステル3とポリエステル2を重量比1:1.6で混ぜた後、押し出し機に供給して300℃まで過熱して溶融状態とし、平均空孔径が3μmの金属不織布製の第二フィルターで濾過した後、ダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、150℃で横方向(幅方向)に延伸倍率6.0倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
参考例1で得られた6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチル32kg(69.9モル)、テレフタル酸ジメチル5.8kg(30.0モル)、エチレングリコール18kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を9.2g(15ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.20MPaの圧力下で加熱して、反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート4.5g(20ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、共重合芳香族ポリエステル4を製造した。
【0047】
テレフタル酸ジメチル30kg(154.6モル)、エチレングリコール19kgを攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)を4.7g(5ミリモル%)添加し、反応槽全体を窒素により0.08MPaの圧力下で加熱して、反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を235℃まで上げた。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルホスホノアセテート3.5g(10ミリモル%)を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、重合反応槽では250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、共重合芳香族ポリエステル5を製造した。
【0048】
このようにして得られたポリエステル4とポリエステル5を重量比1:0.6で混ぜた後、押し出し機に供給して290℃まで過熱して溶融状態とし、平均空孔径が3μmの金属不織布製のフィルターで濾過した後、ダイから溶融状態で回転中の温度40℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が110℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後210℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0049】
[実施例4]
実施例1のポリエステル1とポリエステル2を重量比1:3.5で混ぜた後、実施例1と同様に行い、厚さ5μmのに軸延伸フィルムを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0050】
[実施例5]
実施例1のポリエステル1とポリエステル2を重量比1:0.35で混ぜた後、押し出し機に供給して300℃まで過熱して溶融状態とし、平均空孔径が3μmの金属不織布製のフィルターで濾過した後、ダイから溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、145℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.2倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
参考例3で作製した6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルを使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
参考例4で作製した6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルを使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0053】
[比較例3]
参考例5で作製した6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジエチルを使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0054】
[比較例4]
参考例6で作製した6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルを使用したこと以外は実施例2と同様に行った。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0055】
[比較例5]
実施例1の共重合芳香族ポリエステル1の製造でリエチルホスホノアセテートを添加した後に酢酸カリウム28gを添加したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた共重合芳香族ポリエステルおよび二軸配向共重合芳香族ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1中の化合物Aは、実施例1、3、4、5については、RおよびRはそれぞれエチル基であり、実施例2、6については、RおよびRはそれぞれメチル基であり、どの場合もRはエチル基、Rは2,6−ナフタレンジイル基である。ENAは、6,6’−(エチレンジオキシ)−2−ナフトエ酸成分量、NDAは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分量、TAはテレフタル酸成分量、アルカリ金属はアルカリ金属元素量を示す。なお、化合物Aとアルカリ金属元素量は、ENA成分の重量を基準とした値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分およびテレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とアルキレングリコール成分とからなり、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の全芳香族ジカルボン酸成分中に占める割合が、5モル%以上80モル%未満である共重合芳香族ポリエステルであって、
6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の質量を基準として、下記式(I)で表される化合物A由来の成分の含有量が0.2質量%以下で、かつアルカリ金属化合物の含有量が、アルカリ金属元素量で50ppm以下であることを特徴とする共重合芳香族ポリエステル。
−O(O)C−R−ORO−R−C(O)ORO−R−C(O)OR (I)
(上記式(I)中の、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、Rは2,6−ナフタレンジイル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)
【請求項2】
6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
【請求項3】
アルキレングリコール成分の90モル%以上が、エチレングリコール成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の共重合芳香族ポリエステルからなる二軸配向フィルム。

【公開番号】特開2011−213816(P2011−213816A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81938(P2010−81938)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】