説明

共重合芳香族ポリエステルの製造方法

【課題】温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた新規な共重合芳香族ポリエステル樹脂を生産性良く、かつ簡便に製造できる製造方法の提供。
【解決手段】テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ならびにエチレングリコールを、エステル化反応させてポリエステルの前駆体を合成する工程、および
第1反応工程で得られたポリエステルの前駆体を重縮合反応させる工程とからなる共重合芳香族ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートに6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を共重合した新規な共重合芳香族ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタンジカルボキシレートは、優れた耐熱性、物理的特性および成形性などを有することから幅広く使用されてきている。しかしながら、このように優れたポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6ではあるものの、さらなる市場からの要求により高性能化が求められている。例えば、寸法安定性の点から温度膨張係数や湿度膨張係数の低減といった要求がある。
【0003】
湿度膨張係数の小さなポリエステルとしては、特許文献1〜4には6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸のエステル化合物であるジエチル6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートから得られる芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。該公報には、結晶性で融点が294℃のポリエチレン6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフタレートが具体的に提示されている。ただ、特許文献3の実施例の結果からも明らかな通り、湿度膨張係数は小さいものの、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートに比べ温度膨張係数が大きいという問題があった。
【0004】
そこで、本発明者らが検討したところ、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートに6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合させたところ、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートと同等の温度膨張係数を維持しつつ、湿度膨張係数を小さくできることを見出し、さらに6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸と、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸と、エチレングリコールとを一緒にエステル化反応させることで、簡便に且つ生産性良く、目的とする新規な共重合芳香族ポリエステルを生産できることを見出した。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−135428号公報
【特許文献2】特開昭60−221420号公報
【特許文献3】特開昭61−145724号公報
【特許文献4】特開平6−145323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた新規な共重合芳香族ポリエステル樹脂を生産性良く、かつ簡便に製造できる製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の目的は、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸、下記式
【化1】

で表わされる6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ならびにエチレングリコールを、エステル化反応させてポリエステルの前駆体を合成する工程、および
第1反応工程で得られたポリエステルの前駆体を重縮合反応させる工程とからなる共重合芳香族ポリエステルの製造方法によって達成される。
【0008】
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、エステル化反応が、触媒としてチタン化合物をチタン元素として 10〜150ミリモル%添加し、0.05〜0.5MPa加圧下で行うこと、および6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の割合が、全酸成分のモル数を基準として、5〜80モル%の範囲にあることの少なくともいずれか一つを具備する共重合芳香族ポリエステルの製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた新規な共重合芳香族ポリエステル樹脂を、エステル化反応と重縮合反応の2つ反応工程だけで効率よく生産できることから、別にエステル交換反応やエステル化反応させる工程を設ける必要がなく、さらに反応中に生成する水などの副生物も回収・分離が極めて容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の芳香族ポリエステルの製造方法は、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸とテレフタル酸もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとをエステル化反応させてポリエステルの前駆体を合成したのち重縮合反応させる製造方法である。したがって、本発明における共重合芳香族ポリエステルは、主たる酸成分が、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分と、テレフタル酸成分もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とであり、主たるグリコール成分がエチレングリコール成分である。
【0011】
本発明の特徴の一つは、前述の酸成分を、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルといったアルキルエステルの状態ではなく、ジカルボン酸の状態で用いることにある。これにより、ポリエステルの前駆体を製造する工程の反応は、エステル化反応に統一することができ、その結果生成する副生物も基本的に水だけにすることができる。一方、前述の酸成分のうち、少なくとも一つに、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどのアルキルエステルなどを用いると、エステル化反応とエステル交換反応とが併存することになる。そして、反応中に生成する副生物も水とメタノールなどが混在する形となり、それらの分離・精製といった工程に多大な労力が必要となる。
【0012】
また、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の共重合量は、全酸成分のモル数を基準として、5〜80モル%にあることが必要であり、さらには10〜35モル%または60〜75モル%とすることが好ましい。これにより、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸とエチレングリコールとをエステル化反応させるときの低い反応性による生産性の低下を、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとのエステル化反応により補いつつ、得られる共重合芳香族ポリエステルのもつ優れた特性などを向上させることができる。また、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合が下限未満では成形品としたときの寸法安定性などの向上効果が乏しい。他方、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合が上限を越えると、結晶性や融点が高すぎて、製膜などの工程での生産性が低下しやすい。好ましい6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合は、10モル%以上75モル%以下、さらに15モル%以上70モル%以下の範囲である。特に、成形性と寸法安定性の点からは、20モル%以上40モル%以下の範囲が好ましい。一方、高共重合量のものを作成すれば、共重合していないか共重合量の低いものと割合を変えて混練することで目的の共重合量のものを簡便に用意することができ、そのような観点から、好ましい6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合は、50モル%以上80モル%未満、さらに55モル%以上75モル%以下の範囲である。
【0013】
なお、本発明の共重合芳香族ポリエステルの製造方法では、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびエチレングリコール以外の他の共重合成分を、本発明の効果を損なわない範囲で用いても良い。共重合成分としては、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジカルボン酸成分、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール残基、ヘキサメチレングリコール残基、オクタメチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0014】
エステル化反応及び重縮合反応におけるエチレングリコールは、全酸成分に対し1.1〜6モル倍用いることが、反応速度や得られる共重合芳香族ポリエステルの物性などの特性の点から好ましい。より好ましいエチレングリコールの割合は、2〜5モル倍、さらに好ましくは3〜5モル倍である。
【0015】
ところで、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとのエステル化反応に比べ、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸とエチレングリコールのエステル化反応は、反応速度が遅くなりやすい。そこで、本発明では、エステル化反応の際に、チタン化合物をエステル化反応触媒として使用することが好ましい。本発明でエステル化反応触媒として用いるチタン化合物としては、ポリエステル中に可溶な有機チタン化合物が好ましい。特に得られるポリエステル組成物やそれを成形したフィルムに、優れた耐熱性を付与できることから、下記一般式(2)
Ti(OR)(OR)(OR)OR ・・・(2)
(式(I)中の、R、R、RおよびRは、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。)
で表されるチタン化合物、または、上記一般式(2)で表される化合物と下記一般式(3)
6−n(COOH) ・・・(3)
(式(II)中、nは2〜4の整数である。)
で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応生成物が好ましい。
【0016】
具体的な上記一般式(2)で表わされるチタン化合物としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラフェノキシドなどを好ましく例示できる。一方、上記一般式(2)のチタン化合物と反応させる上記一般式(3)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物を好ましく例示できる。
【0017】
なお、上記一般式(2)のチタン化合物と上記一般式(3)の芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させるには、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部を溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。
【0018】
添加するチタン化合物の量は、ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として、チタン元素換算で、10〜150ミリモル%の範囲、特に20〜100ミリモル%の範囲にあることが好ましい。該チタン化合物量が10ミリモル%より少ない場合、エステル化反応やさらにはその後の重縮合反応速度が遅くなりやすく、他の触媒をさらに併用する必要が出てくる。一方、該チタン化合物量が150ミリモル%を超える場合は、エステル化反応号の重縮合反応において熱分解反応が同時に進行しやすくなり、重合度を上げにくくなったり、得られた共重合芳香族ポリエステルの熱安定性が低下したりする。
【0019】
なお、チタン化合物を添加する場合の添加時期は、エステル化反応開始時から存在するように添加し、前述のとおり、引き続き重縮合反応触媒として使用することが好ましい。もちろん、重縮合反応速度をコントロールする目的で2回以上に分けて添加してもよい。また、チタン化合物、特に有機チタン化合物は反応系内で様々な形に変化するものであり、最終的に生成したポリエステル中には最初に添加したものとは異なった化合物で存在する可能性がある。
【0020】
また、エステル化反応はエステル化反応温度をエチレングリコールの沸点以上で行うことが好ましく、特に210〜270℃の温度で、0.05MPa〜0.5MPaの加圧下で行うことが好ましい。0.05MPaよりも低いとエステル化反応が十分に進行しにくくなりやすく、他方0.5MPaよりも高くしてもエステル化反応速度に大きな影響を与えなくなり、むしろジエチレングリコールなどの副生物が発生しやすくなる。
【0021】
エステル化反応の終了の目安はエステル化率が85%以上になった時点とするのが好ましい。エステル化率が85%よりも低い段階でエステル化反応を停止すると、エステル化反応終了後に異物除去のため行う濾過を行う場合、詰まりやすく、また次の重縮合反応に進行すると得られる共重合芳香族ポリエステル樹脂の重合度が低くなりやすい。
【0022】
なお、本発明におけるエステル化率(%)とは、下記式(1)で算出したものである。
エステル化率=(1−A/B)×100 ・・・(1)
(ここで、上記一般式(1)中のAはエステル化反応終了時のカルボキシル末端基量(当量/ton)、Bはエステル化反応で原料として仕込んだ全カルボキシル末端基量(当量/ton)を示す。)
【0023】
本発明では、得られるポリエステル組成物に、高度の熱安定性を付与させる目的で、リン化合物からなる熱安定剤を添加することが好ましい。熱安定剤として添加するリン化合物の量は、ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として、リン元素換算で添加したチタン化合物(チタン元素換算ミリモル%)の、0.5〜2.5倍量とすることが好ましい。リン化合物量が下限よりも少ないと得られるポリエステル組成物の熱安定性向上効果があまり発揮されず、他方、上限を超えるとポリマー重合度を効率良く上げることが困難となる。
【0024】
本発明で使用するリン化合物としては、化合物中にリン元素を有するものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、亜リン酸アルキルエステル及びそれらの誘導体などが挙げられる。さらに具体的には、リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸アンモニウム、トリエチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテートなどを挙げることができ、これらのリン化合物は二種以上を併用してもよい。なお、リン化合物の添加時期は、ポリエステルのエステル化終了時から重縮合反応初期の間であれば任意の段階で添加することができ、また添加は一度に行ってもよいし、2回以上に分割して行ってもよい。
【0025】
つぎに、重縮合反応について説明する。まず、重縮合温度は270℃〜300℃の範囲で行い、重縮合反応では通常50Pa以下の減圧下で行うのが好ましい。50Paより高いと重縮合反応に要する時間が長くなり且つ重合度の高い共重合芳香族ポリエステル樹脂を得ることが困難になる。重縮合反応触媒としては、それ自体公知のものを採用できるが、エステル化反応時に添加されたチタン化合物を引き続き使用することが特に好ましい。
【0026】
本発明で製造される共重合芳香族ポリエステル樹脂には、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤などを必要に応じて配合しても良い。以上、説明してきた本発明の製造方法を用いれば、生産性良く、また副生物の後処理を低減しながら芳香族ポリエステル樹脂を製造することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明における共重合芳香族ポリエステル樹脂の特性は、下記の方法で測定および評価した。
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いて35℃で測定して求めた。
(2)カルボキシル末端基濃度(当量/トン)
試料30mgをベンジルアルコール10ccに溶解した後、フェノールレッドを指示薬としてN/50NaOHaqで滴定して求めた。そして、下記式(1)に基づいて、エステル化率を算出した。
エステル化率=(1−A/B)×100 ・・・(1)
(ここで、上記一般式(1)中のAはエステル化反応終了時のカルボキシル末端基量(当量/ton)、Bはエステル化反応で原料として仕込んだ全カルボキシル末端基量(当量/ton)を示す。)
(3)融点(℃)
DSC(TA Instrumennts社製、商品名:DSC2020)により昇温速度10℃/minで測定した。
(4)副生物中のエチレングリコールおよびメタノールの濃度(wt%)
ガスクロマトグラフィー(日立製作所株式会社製、商品名G5000)によって測定した。
(5)副生物中の水濃度(wt%)
平沼産業株式会社製水分測定計(商品名:AQ-3C)にて測定した。
【0028】
[実施例1]
テレフタル酸100重量部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸60重量部、エチレングリコール44重量部を攪拌機、精留塔、冷却器を供えたエステル化反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、トリメリット酸チタンを0.039重量部添加し、反応槽全体を加熱して0.2MPaを印加し反応槽内部温度を230℃に昇温した。精留塔の塔頂温度は、140℃を超えたときに全還流となるようにし、140℃より低いときは還流比1に設定した。反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。副生液Aが8重量部発生していることを確認し、反応終了とした。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルフォスフェート0.010重量部を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。(副生液B)
【0029】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、ポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示す。また、副生物中の各成分の組成を表2に示す。なお、副生液A中の有機物濃度は低く、蒸留処理なしに活性汚泥の如き排水処理が可能なレベルであった。
【0030】
[実施例2]
ナフタレンジカルボン酸26重量部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸50重量部、エチレングリコール45重量部を攪拌機、精留塔、冷却器を供えたエステル化反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、トリメリット酸チタンを 0.029重量部添加し、反応槽全体を窒素により圧0.2MPaを印加し加熱して反応槽内部温度を230℃に昇温した。精留塔の塔頂温度は、140℃を超えたときに全還流となるようにし、140℃より低いときは還流比1に設定した。反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。副生液Aが9重量部発生していることを確認し、反応終了とした。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルフォスフェート0.007重量部を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。(副生液B)
【0031】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、ポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示す。また、副生物中の各成分の組成を表2に示す。なお、副生液A中の有機物濃度は低く、蒸留処理なしに活性汚泥の如き排水処理が可能なレベルであった。
【0032】
[実施例3]
ナフタレンジカルボン酸14重量部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸60重量部、エチレングリコール45重量部を攪拌機、精留塔、冷却器を供えたエステル化反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、トリメリット酸チタンを0.039重量部添加し、反応槽全体を窒素により圧0.2MPaを印加し加熱して反応槽内部温度を230℃に昇温した。精留塔の塔頂温度は、140℃を超えたときに全還流となるようにし、140℃より低いときは還流比1に設定した。反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。副生液Aが8重量部発生していることを確認し、反応終了とした。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルフォスフェート0.010重量部を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。(副生液B)
【0033】
その後は実施例2と同様にポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示す。また、副生物中の各成分の組成を表2に示す。なお、副生液A中の有機物濃度は低く、蒸留処理なしに活性汚泥の如き排水処理が可能なレベルであった。
【0034】
[実施例4]
ナフタレンジカルボン酸38重量部、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸30重量部、エチレングリコール40重量部を攪拌機、精留塔、冷却器を供えたエステル化反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、トリメリット酸チタンを0.024重量部添加し、反応槽全体を窒素により圧0.2MPaを印加し加熱して反応槽内部温度を230℃に昇温した。精留塔の塔頂温度は、140℃を超えたときに全還流となるようにし、140℃より低いときは還流比1に設定した。反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を250℃まで上げた。副生液Aが9重量部発生していることを確認し、反応終了とした。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、トリエチルフォスフェート0.006重量部を添加し、余剰のエチレングリコールを追い出した。(副生液B)
【0035】
その後は実施例2と同様にポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示す。また、副生物中の各成分の組成を表2に示す。なお、副生液A中の有機物濃度は低く、蒸留処理なしに活性汚泥の如き排水処理が可能なレベルであった。
【0036】
[比較例1]
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸 60重量部、ジメチルテレフタレート12重量部、エチレングリコール45重量部、を攪拌機、精留塔、冷却器を供えたエステル化反応槽に仕込み、150℃まで昇温した。その後、トリメリット酸チタンを0.039重量部添加し、反応槽全体を加熱して圧0.20MPaを印加し反応槽内部温度を230℃に昇温した。精留塔の塔頂温度は、200℃を超えたときに全還流となるようにし、200℃より低いときは還流比1に設定した。反応の進行に従い、圧力一定のまま内温を上げた。副生液Aが10重量部発生していることを確認し、反応終了とした。その時の反応槽の内温は255℃であった。その後、反応槽内の圧力を常圧にゆっくりと戻し、余剰のエチレングリコールを追い出した。(副生液B)
【0037】
得られた反応生成物を重合反応槽へと移送し、250℃からゆっくりと昇温しながら、また減圧させながら重縮合反応を行い、最終的に290℃、50Paで所定の重合度になるまで重縮合を行い、ポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示す。また、副生物中の各成分の組成を表2に示す。なお、副生液A中のメタノール濃度は高く、蒸留処理によりメタノールを除去してから排水処理を行う必要があった
【0038】
【表1】

【0039】
ここで、表1中のENAは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、TAはテレフタル酸、NDAは2,6−ナフタレンジカルボン酸、DMTはジメチルテレフタレートを意味し、触媒は触媒として用いた金属化合物の金属元素量を、全酸成分のモル数を基準として示したものである。また、表1中のエステル化反応物およびエステル化率は、エステル化反応とエステル交換反応の両方から換算した値である。
【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の製造方法で作られる共重合芳香族ポリエステル樹脂は、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形などの通常の溶融成形に供することができ、繊維、フィルム、三次元成形品、容器、ホース等に加工することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸、下記式で表わされる6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸ならびにエチレングリコールを、エステル化反応させてポリエステルの前駆体を合成する工程、および
第1反応工程で得られたポリエステルの前駆体を重縮合反応させる工程とからなることを特徴とする共重合芳香族ポリエステルの製造方法。
【化1】

【請求項2】
エステル化反応が、触媒としてチタン化合物をチタン元素として 10〜150ミリモル%添加し、0.05〜0.5MPa加圧下で行う請求項1記載の共重合芳香族ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸の割合が、全酸成分のモル数を基準として、5〜80モル%の範囲にある請求項1記載の共重合芳香族ポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2009−155528(P2009−155528A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336859(P2007−336859)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】