説明

内固定用締結システム

【課題】骨折固定システムを提供する。
【解決手段】骨折固定システムは、骨の近位表面を支えるように構成された骨プレートと、複数の細長い張力要素であって、各要素は骨プレートの開口および骨を通って近位表面から骨の遠位表面まで通るように寸法決めされている、複数の細長い張力要素と、を含む。各張力要素は、骨に係留されており、張力要素に取り付けられ、骨の遠位表面に係合するように構成された遠位アンカー、および、骨プレートと張力要素との間で係合可能な近位アンカーによって、張力が加えられた状態に維持される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、骨の内固定用のシステムに関し、より詳しくは、骨の骨折の固定に関する。
【0002】
〔背景技術〕
どのような骨折についても、整形外科専門医は、最初に骨折を整復しなければならず、次に、骨が治癒するにしたがって整復を維持するために、骨を適正に安定させ固定しなければならない。これらの過程のそれぞれは、骨が多発性骨折を起こしていた場合、あるいは、骨が単純な横骨折ではない骨折を起こしていた場合、複雑になる。この種類の骨折は、通常、骨片を整復し維持するためにある種の形態の内固定を必要とする。骨片を整復するためのある従来のアプローチは、骨折部位で骨の一部を覆って広がる骨プレートを用いる。ある外科的アプローチでは、整形外科医は、複数のねじ締結具(screw fastener)を固定プレートの孔を通して下側の骨にねじ込むことによって、固定プレートを骨に取り付けながら、骨を挟んで適用された専用クランプを用いることがある。
【0003】
一般的に、ねじ締結具は、骨折が適正に治癒するように、骨プレートを健康な骨に緊密に保持するのに有効である。しかし、より健康ではない(例えば、骨減少症の)骨では、ねじのねじ山は、骨および骨プレートを適正に整合させて一体に保持するための、骨内の適切な足がかり(purchase)を見出せないことがある。これは、骨折の癒着不能を結果としてもたらし、その骨折の癒着不能は、矯正するためのより侵襲的な再建手術(revision surgery)を必要とすることがある。
【0004】
ねじ締結具に関する別の課題は、すべてのねじの間での不十分な負荷分散、および/または、大きな周期的負荷から生ずる応力集中に起因する骨プレートおよび骨の境界の近くでの、ねじの随時の破損である。
【0005】
内固定に対するねじ締結具を用いたアプローチのさらなる欠点は、膨大な種類のねじの寸法が、患者の解剖学的構造の違いおよび骨折の種類を受け入れるために各外科手術で利用できるようにされなければならないことである。膨大な在庫のねじの寸法を維持することは、適切な寸法の、ドリル、ガイド、ドライバー、および、固定具、と共に、コストを要するものとなりえる。また、不適切な寸法のねじが手術中に選択される可能性もある。
【0006】
ねじ締結具に頼らない固定アプローチが開発されてきた。例えば、セルクラージュシステム(cerclage system)は、骨折した骨片を一体に保持するために骨の周りに固定される1本以上のケーブルを用いる。このケーブルの構造は、ケーブルの係留を補助するためのプレートを含んでいることがある。しかし、セルクラージュシステムは、骨の周縁部全体に沿ったアクセスを必要とし、そのため、外科医が骨を取り囲む軟組織を切断する必要がある。もう一つの課題は、セルクラージュケーブルが骨膜に対して大きなライン圧力を加えることがあり、そのライン圧力は骨を傷つけて治癒を妨げることがある。
【0007】
したがって、骨減少症の骨での安定した構造を提供し、かつ、低侵襲の外科処置に適応させることが可能な骨折固定システム(fracture fixation system)が必要とされている。外科処置の間に必要な締結具および関連する器具の在庫を減らす骨折固定システムも必要とされている。適用中に骨折の整復を改善し維持するのを補助し、植え込み後の破損を防止し従来の骨ねじに比べて適用するための技術の影響をより受けにくい締結具を組み込んだ、骨折固定システムが、さらに必要とされている。
【0008】
〔発明の概要〕
上記の必要性に対処するために、本発明は、骨折固定システムを提供し、そのシステムは、骨の近位表面を支えるように構成された骨プレート、を含み、その骨プレートは、骨プレートを貫通する複数の開口(openings)を画定している。複数の細長い張力要素(tension elements)が設けられており、各張力要素は、骨プレートの開口の1つを通過し、骨の近位表面から遠位表面まで骨を通過するように寸法決めされている。遠位アンカーが、各張力要素に取り付けられており、張力要素が骨を通過すると、骨の遠位表面と係合するように構成されている。近位アンカーが、近位アンカーと遠位アンカーとの間で張力要素の張力を維持するように、骨プレートと各張力要素との間で係合することが可能である。張力要素は、編まれた金属製ケーブル、または同様の細長い要素であってよい。
【0009】
ある実施形態では、近位アンカーは、ティンナーマンワッシャー(Tinnerman washer)である。この実施形態では、骨プレートは、複数の開口の少なくともいくつかの周囲に凹部を画定している。ティンナーマンワッシャーは、この凹部内に受容されるように寸法決めされ、張力要素への張力を維持するために、ワッシャーを通過する張力要素と係合するように構成されている。
【0010】
別の実施形態では、近位アンカーは、骨プレートと多軸の境界をなす(a polyaxial interface with)ように構成されている。この特徴によって、張力要素が骨プレートに対して所定の範囲の角度で配置され、外科医が骨折の複数の骨片(multiple bone fracture fragments)を整復する能力を最適化する。これらの実施形態では、開口の少なくともいくつかは、球形の壁を画定し、開口内に配置された固定ブッシング(locking bushing)を含む。固定ブッシングは、球形の壁との相補的な係合のための球形の外側面を有し、雌ねじ山を備えたボア(internally threaded bore)をさらに含む。近位アンカーは、近位アンカーを通して張力要素を受容するための中心ボアと、ねじ山を備えたヘッドと、を含む。近位アンカーのヘッド、および、固定ブッシングは、テーパ状のねじ山を備えた境界を画定し、ヘッドが固定ブッシング内に螺合されると、固定ブッシングが球形の壁内に拡張するようになっている。
【0011】
ある態様では、遠位アンカーは、形状記憶コンポーネントを有し、その形状記憶コンポーネントは、骨プレートの開口を通り骨の近位表面から遠位表面まで骨を通過するように寸法決めされた第1の形状を有している。形状記憶コンポーネントは、骨の遠位表面と係合するための第2の形状記憶の形状(second shape memory configuration)を有する。ある実施形態では、遠位アンカーは、少なくとも2つの突起(prong)を含み、2つの突起は、第1の形状で、細長い張力要素とほぼ整合し、第2の形状記憶の形状で、細長い張力要素から外向きに延びる。突起は、ばね要素であってよく、または、形状記憶金属で形成されていてよい。
【0012】
別の実施形態では、遠位アンカーは、骨の遠位表面を支えるように寸法決めされた、一定形状のコンポーネント(fixed shape component)である。したがって、遠位アンカーは、円板、または、略球形の要素であってよい。具体的な実施形態では、遠位アンカーは、球形の要素をその中に受容するための凹部を備えたワッシャーをも含んでいてよい。
【0013】
本発明は、骨折の固定のための方法を企図しており、この方法は、骨の近位表面に骨プレートを配置する過程を含み、骨プレートは、骨プレートを貫通する複数の開口を含み、少なくとも2つの細長い張力要素を骨プレートの開口を通し、かつ、骨の遠位表面まで骨を通過して通す。各張力要素は、骨の遠位表面に係留され、次に、張力が加えられた状態に置かれる。張力要素の近位端部は、次に、張力要素に張力を加えた状態を維持しながら、骨プレートに係留される。各張力要素を骨に通すのを容易にするために、適正に配向された通路を形成するために、Kワイヤ(K-wire)が用いられてよく、シースが、張力要素を運ぶのを補助するために用いられてよく、いくつかの場合では、遠位アンカーを骨に通して運ぶのを補助するために用いられてよい。
【0014】
本発明の骨折固定システムの一つの重要な利点は、本発明のシステムが、そうでなければラグねじを支持することが不可能な柔らかい骨減少症の骨に用いるのに十分適していることである。同時に、張力要素は、最適な骨折の整復のための遅延効果(lag effect)を提供する。
【0015】
もう一つの利点は、張力要素およびアンカーが「1つの寸法ですべてに適合する(one size fits all)」ものとして提供されてよいことである。言い換えれば、一度、張力要素に張力が加えられて係留されると、どのような過剰な材料も除去される。張力要素の必要な寸法は、植え込みの前に決定されなくてもよい。張力要素は、さまざまな寸法の要素を必要とせずに、骨を貫通して直接通過するように、または、骨の長い間隔にわたって通過するように、構成されていてよい。
【0016】
本発明の一つの重要な目的は、多発性骨折の骨片(multiple fracture fragments)を整復するのに用いるために特に十分に適した骨折固定システムを提供することである。もう一つの目的は、健康な骨、または健康ではない骨にも同じように良好に用いることができる固定システムを提供することである。本発明のその他の目的および利点は、添付の図面と共に以下の記載を考慮することで、明らかになるであろう。
【0017】
〔好ましい実施形態の説明〕
本発明の原理の理解を促進する目的で、図面に示され、以下に記載される、本明細書に記載されている実施形態が、以降に参照される。記載されている実施形態によって本発明の範囲を限定することは意図されていないことを理解されたい。本発明が、例示された実施形態に対する代替物および変更を含み、本発明が関係する分野の当業者に普通に想到する本発明の原理の別の応用をも含む、こともさらに理解されたい。
【0018】
本発明は、図1に示された骨Bの骨折Fのような骨の骨折を整復し、固定するシステムを企図している。本発明のシステムは、正確な整復、および、骨が治癒する際の整復を維持するための確実な固定、を必要とする、複数の骨片を伴う骨折に特に適している。ある実施形態に基づけば、骨プレート10は、従来の方法で、骨に配置される。骨プレートは、一連の凹部(図2)を組み込んださまざまな公知の形状であってよい。ある実施形態では、骨ねじ12が骨プレート10の一方の端部を骨折Fから離れて係留するために用いられてよい。これらの骨ねじは、生存可能な骨に固定構造(fixation arrangement)を係留するのを補助し、別の固定要素が骨に導入される際に、骨プレートを保持するのを補助してもよい。
【0019】
本発明に基づけば、固定システム20が、骨プレート10と共に作用して骨Bの骨折Fを整復するように構成された、複数の張力要素22を含んでいることが、企図される。この張力要素は、図2に示されているように、骨プレート10の凹部14および開口14aを通って、骨に形成されたボア18を通って延びるように構成されている。張力要素22は、したがって、骨Bの近位表面Pから対向する遠位表面Dまでにわたるように寸法決めされている。張力要素22の遠位端部には、遠位アンカー24が設けられており、遠位アンカー24は、張力が張力要素22に加えられると、骨の遠位表面Dで皮質骨Cに係留されるように構成されたさまざまな形状であってよい。近位アンカー26は、張力要素の近位端部を骨の近位表面Pで骨プレートと係合させ、張力要素22の張力を保持するように構成されている。
【0020】
張力要素22は、細長い柔軟な要素であり、張力をかけられた状態に引っ張られて、張力要素の両端(opposite ends)で係留されることが可能である。ある種のいくつかの実施形態では、張力要素は、編まれた金属ケーブル、モノフィラメントもしくは編まれた糸、または、生体適合性のワイヤ、であってよい。固定システム20が最初に据え付けられると、張力要素22は、骨Bおよびプレート10を越えて突出する余剰部分(excess portion)28を含んでいる。一度近位アンカー26が固定されると、余剰部分28は、切断されてよく、可能な限り骨Bの近位表面Pに近いことが好ましい切断端29が残される。張力要素は、張力要素の個々の材料に適した器具を用いて切断されてよい。
【0021】
図1および図2に示された実施形態では、近位アンカー26は、ティンナーマンワッシャーのような、グリッピングワッシャー(gripping washer)である。当分野で知られているように、ティンナーマンワッシャーは、中心開口26bを有する円錐形の中心部分26aを含んでいる。本発明に基づけば、中心開口26bは、張力要素22の有効径(effective diameter)よりもわずかに小さい有効径を有している。図2に示されているように、近位アンカーすなわちワッシャー26は、円錐形の中心部分26aを骨プレート10から外向きに突出させた状態で、骨プレート10の凹部14内に配置されている。このような配向で、近位アンカー26は、張力の向きTと逆向きのどのような引っ張る力も張力要素を開口26a内に入り込ませることになり、かつ、円錐形の中心部分26aを圧縮しようとすることになるので、張力要素22の張力を保持することができる。凹部14の壁は、ワッシャー26が平らになるのを防止し、ワッシャー26が遠位アンカー24と近位アンカー26との間で張力要素22の張力を維持するように作用することになる。
【0022】
代替の近位アンカー30が、図3および図4に示されている。このアンカーは、米国特許第5,954,722号(以下、「722号特許」と言う)に開示された多軸固定プレートと同様の骨プレート10’と共に用いるのに特に適応しており、この米国特許の開示内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。この固定プレートは、複数の貫通孔14’を含み、この貫通孔14’内では、貫通孔14’の壁は略球形である。722号特許に開示されたブッシングと同様の固定ブッシング16が、貫通孔14’の球形の壁に嵌るように構成されていて、ブッシング16が、骨プレート10’に対して所定の範囲内で角度付けられた配向(a range of angular orientation)を呈することができる。ブッシング16には、雌ねじ山(internal thread)17が設けられている。722号特許に開示されているように、固定ブッシングは、骨ねじのテーパ状のねじ山が設けられたヘッドを受容するように構成されていて、ヘッドが雌ねじのねじ山17に螺合されると、ブッシング16が貫通孔14’の球形の表面内に外向きに拡張して、固定骨プレートに対して、ブッシング16が、したがって、骨ねじが、その特定の角度付けられた配向で、固定される。
【0023】
この実施形態の近位アンカー30は、ねじ山が設けられていないシャンク32を含み、シャンク32は、プレート10’を通って、骨Bの骨ボア18内に延在するように構成されている。ある具体的な実施形態では、シャンク32は、骨Bの近位表面Pの近くで皮質骨C内にプレス嵌めの係合を形成するようにテーパ状になっていてよい。近位アンカー30は、テーパ状のヘッド34をさらに含み、ヘッド34は、固定ブッシング16の雌ねじ山17と係合するための雄ねじ山36を帯びている。722号特許の骨ねじと同様に、近位アンカー30のテーパ状のヘッド34は、ヘッドがブッシングに螺合されると、ブッシングを拡張し、それによって、ブッシングをプレート10’の貫通孔14’の球形の壁内で固定する。したがって、722号特許の骨ねじを用いるのと同様に、近位アンカー30は、アンカーが骨プレート10’に対して所定の範囲内で角度付けられた配向を呈することができるようにする、多軸の能力(polyaxial capability)を組み込んでいる。この多軸の能力によって、張力要素22は、張力要素が引っ張られ、係留されると、骨プレートに対して同等の範囲内の角度を呈するように、アンカー30を通過できるようになる。したがって、多軸の能力が、困難な骨片を整復しある期間にわたってその整復を保持するための外科医の技量を高めることが分かる。
【0024】
図4に見られるように、近位アンカー30は、中心ボア40を画定していて、中心ボア40を通して、張力要素22が、図22に示すように、延在している。張力要素へクランプ締め効果(clamping effect)を提供するために、アンカー30は、中心ボア40を通過する十字溝38の配列をさらに画定している。ヘッド部34が固定ハウジング16に螺合されると、十字溝38は、中心ボア40の有効径を減少させ、それによって、張力要素の周囲を圧縮する。前述されたティンナーマンワッシャー26を用いるのと同様に、張力要素22へ加えられるいずれの引張力も、近位アンカー30のヘッド34をブッシング16内により深く引き込むことになり、この引き込みが、張力要素の周囲の十字溝と中心ボアをさらに閉じる効果を有する。したがって、近位アンカーのヘッド部34は、2つの固定機能、すなわち、第1の、プレートに対してアンカーを角度付けられた配向で固定する機能、および、第2の、張力要素をアンカー内で固定する機能、を達成する。
【0025】
ある具体的な実施形態では、ヘッド部34は、ヘッド部の近位面に駆動ラグ42を画定している。図5に示された器具50のような駆動器具が、その駆動ラグと係合し、近位アンカーを回転できるようにする。駆動器具50は、近位アンカーのラグ42と緊密に係合するように構成された駆動溝54を伴う管状の形状(cannulated)52に形成されている。器具50の管状の形状に形成された態様によって、器具が近位アンカーを骨プレート10’内に駆動するために使用できるようになると同時に、張力要素の余剰部分28を依然として張力要素に張力を加えるために用いることができる。
【0026】
本発明の固定システム20の使用方法では、骨プレート10,10’が骨Bに配置されて、プレートの開口14a,14’が骨折Fの骨片を整復するのに最適に配向される。骨プレートの一方の端部は図1に示されているようなねじ12のような締結具を用いて骨Bに係留されてよい。次に、ドリルガイドが、骨プレートの開口を覆って取り付けられ、整形外科ドリルが、骨Bを通って遠位表面Dから外に出る骨ボア18を形成するために用いられる。Kワイヤが、骨ドリルを誘導するために最初に挿入されてよい。骨ボア18は、好ましくは、張力要素22の有効径よりわずかに大きく寸法決めされている。近位アンカー30を用いる固定システムの実施形態では、より大きい直径の骨ボア18が、図3に示されているように、近位アンカーのシャンク32による係合のために近位皮質骨Cに形成されてよい。
【0027】
一度骨ボア18が形成されると、張力要素22は、遠位アンカー24が骨の遠位表面Dから外に出るまで、骨プレートの開口および骨ボア内を通される。ある種の実施形態では、導入シース(図示されていない)が、張力要素の通過を容易にするために、最初に骨ボア18内に配置されてよい。遠位アンカー24が配置された状態で、近位アンカー26または近位アンカー30は、張力要素の近位端部を覆って螺合される。張力要素22の余剰部分28を引っ張ることによって、張力が張力要素に加えられてよい。その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,595,994号(以下、「994号特許」と言う)に開示された装置のようなケーブル張力装置(cable tensioning device)は、張力要素22と係合し、張力要素を近位アンカーによって固定できるような様式で張力要素に張力を加えるように構成されていてよい。あるアプローチでは、994号特許に開示された装置の作用端部(working end)は、張力要素すなわちケーブルが張力の向きT(図2)に引っ張られると、近位アンカーすなわちティンナーマンワッシャー26を支えることができる。別の実施形態では、994号特許のケーブル張力装置の作用端部は、アンカー30(図4)の近位面を支えるように変形されてよい。さらに、張力装置の作用端部は、駆動器具50(図5)を組み込むように変形されてよい。この別の実施形態では、適切な張力が要素22に加えられると、近位アンカー30は、この構造体を固定するために固定ワッシャー16に締め付けられてよい。
【0028】
遠位アンカー24は、張力が張力要素22に加えられて維持されると、骨Bの遠位表面Dと係合するように構成されている。ある具体的な実施形態では、遠位アンカーはウイング25(図2)を含んでいてよく、ウイング25は、遠位端部が遠位表面Dで骨ボア18から外に一度出ると、外向きに旋回する。ウイングは、張力要素の遠位先端内に配置されたねじりばねによって外向きに推進されてよい。
【0029】
図6a〜図7bに示された代替の実施形態では、遠位アンカーは形状記憶技術を組み込んでいる。この実施形態では、張力要素60は、突起64を含み、この突起64は、図6bに示されている拡張した配向64’に動くための形状記憶を表す。この形状記憶の特徴は、張力要素60の遠位端部を予め曲げ、突起が図6bに示された位置へ向けて外向きに跳ねるようにすることによって、提供されてよい。張力要素をプレート10/10’および骨ボア18を通して挿入するために、張力要素60は、導入シース62内に通されて、シースおよび張力要素が骨プレートおよび骨ボア内を通される際に突起がシース内に維持されるようにする。一度、突起64が骨の遠位表面Dに配置されると、シースは後退させられてよく、それによって、突起がその係留のための形状を呈することができるようになる。この形状記憶の特徴の一つの利点は、張力要素が遠位アンカーを移動させることによって除去されることであり、遠位アンカーの移動による張力要素の除去は、シース62が突起に接触するまで、シース62を張力要素に沿って再び延ばし、突起をシース内に引き込むことによって、有益に達成できる。
【0030】
張力要素60、より具体的には、形状記憶突起64は、張力要素60に張力が加えられている場合に、張力要素の係留能力を増強するように構成されていてよい。より詳しくは、図7aに示されているように、張力要素60は、本体66がプレートおよび骨を通過して延びた状態で、そして、突起64が最初の伸張した配向(extended orientation)にある状態で、最初に配置されてよい。この最初の配向は、拘束されていない状態に置かれた場合の形状記憶突起の自由な状態に名目上対応する。本体66に張力が加えられると、突起は、突起の最初の配向から距離Sだけ平らになる。この張力が加えられた形状で、突起64は、本体66内の張力を最初の張力T1(図7a)から張力T2へ増加するばねとして作用する。この張力要素60の特性は、張力要素に加えられる張力の量を制御しかつ過剰な張力が加わることを防止するために用いられてよい。例えば、突起の「平坦さ(flatness)」は、張力の表示を提供するために測定されてよい。過剰に張力が加えられると、突起64が反転し、骨ボア内に移動し始め、したがって、張力要素60に加えられる張力を廃棄する効果を有する、ことが意図されていてよい。
【0031】
ある具体的な実施形態では、突起64は、医療等級(medical grade)のばね鋼のような、ばね材料で形成されていてよい。別の実施形態では、突起は、ニチノール(NITINOL:商標)のような形状記憶金属で形成されていてよい。当分野で知られているように、形状記憶金属は、予め決められた温度で形状が変化し、この予め決められた温度は、典型的には、体温に近い。
【0032】
図6a〜図6bに示された実施形態では、張力要素60は、一対の両側の突起64を含んでいる。図8a〜図8bに示されたもう一つの具体的な実施形態では、管状の張力要素70が、細長い本体74から延出する2つ以上の突起72を含んでいてよい。複数の突起72は、好ましくは、前述の突起64と同様の形状記憶特性を表す。図9に示されたさらにもう一つの実施形態では、張力要素80は、遠位部分84を終端とする細長い本体86を含んでいる。湾曲要素(curl element)82は、遠位端部が骨Bの遠位表面Dに隣接すると、遠位部分84から分離する。湾曲要素82は、通常の負荷が加えられていない曲率半径を有していてよく、その半径は張力が本体86に加えられた場合に低減される。半径が減少するにつれて、湾曲要素82は、より大きな抵抗力を発揮し、それによって、前述された張力要素60と同様に、張力を増加する。
【0033】
本発明の別の実施形態では、遠位アンカーは、固定されたコンポーネントを組み込んでいてよい。例えば、図10aに示されているように、張力要素22は、円板24を終端としている。図10bに示された代替の実施形態では、張力要素22は、丸い要素24’を終端としていてよい。丸い要素24’は、所定の曲率半径R1と、隣接する組織の外傷を最小限にするために骨を取り囲む軟組織と接触する表面でのより大きい曲率半径R2と、を有している。より小さい半径R1は、骨と遠位アンカーとの間に配置されたワッシャー27の相補的な形状の凹部27a内に配置されるように構成されている。このワッシャー/アンカーの境界は、可変の角度付けられた配向を可能にし、同時に、骨の遠位表面での均一な負荷分担を確実にする。さらにもう一つの具体的な実施形態では、遠位アンカーは、図11aに示されているように、張力要素90の本体94の端部に固定された球形のボール92を構成していてよい。
【0034】
図10a、図10b、および、図11a、に示された実施形態の一つの共通した特質は、遠位アンカーが、実質的に、硬質で、プレートの開口14/14’、または、骨の開口18、を通過できないことである。したがって、図6a〜図9の形状記憶アンカーと異なり、遠位アンカー24,24’,および92を備えた張力要素は、骨Bの近位表面Pから挿入できない。本発明の別の実施形態は、すべて低侵襲手術で用いるための、近位表面Pで骨プレートと嵌め合わせるために、遠位表面Dを通してこれらの張力要素を導入するためのシステムおよび方法を企図している。
【0035】
この実施形態では、交換器具100が、骨ボアを通した張力要素90の近位端部96の逆向きの動きを容易にするために用いられる。図12、図13a、および、図13b、に示されているように、器具100は、そこを通してボア104を画定するバレル102を含み、そのボア104は、張力要素90の細長い本体94を受容するように寸法決めされている。バレル102は、バレルの近位部分付近に設けられた側面開口106と、遠位部分に設けられた遠位側面開口108と、を画定している。遠位側面開口108は、近位側面開口106からオフセットしているが、これら2つの側面開口は接続溝110を介して連続している。器具100は、バレル102に結合されたハンドル112をさらに含み、ハンドル112は交換器具を以下に記載するように操作するために用いられる。図13bに最も良く示されているように、2つの側面開口106および108は、好ましくは、180度離れている。
【0036】
交換器具は、図14〜図19に示されている一連の過程で用いられる。第1の過程では、骨プレート10’は、骨折部位Fに隣接した骨Bに合うように形状が与えられる。前述したように、骨プレート10’は、骨折部位から離れて配置された骨ねじ12によって係留されてよい。ガイド150が、所望の固定位置(fixation location)に整合した骨プレートの開口14’内に配置される。固定のパターンは骨片の放射線画像に基づいて予め計画されていてよいことが、適正に評価される。図14に示されているように、第1の張力要素が、骨Bの骨頭のところで複数の骨折を通して導入されてよい。ガイド150は、Kワイヤ152を受容するように寸法決めされている。Kワイヤは、ドリル154に機能的に結合されており、ドリル154はKワイヤをプレート10’に対して所望の角度で骨を通して打ち込むために用いられる。形状記憶の特徴を用いる前述の実施形態では、遠位アンカーが骨を通して運ばれるように、骨ボア18を形成することが必要である。図14〜図19の実施形態では、遠位アンカーが骨の遠位表面Dから挿入されるので、最初に骨ボアを形成する必要はない。
【0037】
Kワイヤ152は、骨を穿通するように構成された鋭利な先端153を有している。細いゲージ(標準の太さ)のスタイレットのような、その他の同様な装置が用いられてもよい。代替のアプローチでは、別個のドリルバイトが、骨を通して狭いボアを形成するために用いられてよく、Kワイヤ、スタイレット、または、同様な細長い要素がボアを通して前進される。この代替のアプローチでは、穿孔されたボアは、好ましくは、Kワイヤまたはスタイレットの直径よりも小さい直径を有する。
【0038】
一度Kワイヤが遠位表面を通って骨から外に出ると、交換器具100がKワイヤ152の遠位先端を覆って配置されると、Kワイヤが図16の詳細な図に示されているように、中心ボア102を通って延びるようになる。張力要素90の近位端部96は、次に、器具100の遠位端部からボア102内に挿入される。図11bに示されているように、近位端部96は、円錐形の凹部(conical recess)98を画定している。この凹部は、図16に示されているように、Kワイヤのテーパ状の先端153を受け入れるように構成されている。したがって、交換器具100は、張力要素90の細長い本体94を骨Bの遠位側面でKワイヤ152と整合させるための機構を提供していることを理解されたい。
【0039】
Kワイヤおよび張力要素が交換器具内に結合された状態で、交換器具のバレル102は、骨の遠位表面Dに接触するように、または、遠位表面Dの少なくとも直近に、動かされることが好ましい。張力要素90の本体94は、次に、図15に示されているように、骨Bに向かって、逆の方向に押される。張力要素が骨に向かって移動するにつれて、近位端部96はKワイヤ152を骨の外に押し出す。一度Kワイヤ/張力要素の境界が骨Bに到達すると、交換器具100はもはやその境界を維持するために必要ではないことを理解されたい。したがって、交換器具は、図17の矢印の向きに交換器具を接続溝110を中心にして本質的に旋回させるように、交換器具を回すことによって、容易に取り外されてよい。器具が旋回すると、張力要素の細長い本体部分94は側面溝(side slots)106,108を通って中心ボア104から自動的に外に出て、本体94の一部のみが接続溝110内に残される。交換器具100は、次に、接続溝110をスライドさせることによって、張力要素から完全に取り外される。
【0040】
交換器具が取り外された状態で、Kワイヤを挿入することによって骨に形成されたボアが、張力要素90を骨の近位表面Pへ向けて誘導する役割を果たす。最終的には、Kワイヤの先端153が近位表面Pから骨の外に出て、Kワイヤが取り外されてよい。次に、張力要素は、遠位アンカー92が骨の遠位表面Dと接触するまで、骨を通してさらに前進される。
【0041】
交換器具が最初に、そして、骨の中のボアが続いて、張力要素90を整合した状態に維持することを補助することを理解されたい。交換器具の中心ボア104、および、骨ボアは、張力要素の本体94の直径よりもわずかに大きい直径を有しており、本体は、張力要素が骨内におよび骨を通して逆方向に動かされる場合に、撓む(flex)か、または、曲がる(buckle)ことがないようにされている。したがって、張力要素が横方向の柔軟性を表す場合でも、張力要素は依然として前述したように骨の中を前進されることが可能である。
【0042】
この時点で、張力要素90は、骨折を整復し、張力要素を骨プレートに固定するために、近位アンカーを受容するために利用可能である。図1〜図2に示されたアンカー26の場合では、ティンナーマンワッシャーが、前述したように、張力要素の露出された部分の周りに螺合されて締め付けられてよい。図3〜図4に示されたアンカー30に対しては、プロセスの次の過程は、図18に示されているように、管状の形状のドリル(cannulated drill)160を、張力要素を覆って前進する過程を含む。管状の形状のドリルは、骨ボア18を、近位アンカー30のシャンク32を受容するのに十分な深さまで、形成してよい。この深さは、シャンク32の長さに応じて変化し得る。いくつかの場合では、シャンクは、骨を通して遠位表面の皮質骨まで延びるであろうし、一方、典型的な場合では、シャンクは骨内に部分的に突出するのみであろう。張力が張力要素の本体94上で維持された状態で、近位アンカー30は、図19に示されているように、器具50を用いて骨内に打ち込まれ、プレート10’の固定ブッシング16内に打ち込まれる。このプロセスが、図20に示されているように、骨プレート10’の複数の位置で、繰り返される。各張力要素での張力は、骨へのプレートの圧力を均一にするために、あるいは、プレートの位置を調節するために、たとえ他の張力要素がその構造体(プレートおよび張力要素)に加えられている間でも、プロセスを通して調節されてよい。一度、外科医が、張力、および、すべての張力要素の配向に満足すると、過剰な張力要素の材料が除去されることができる。
【0043】
張力要素22は、好ましくは、編まれた金属製ケーブル、または、患者の体内への植え込みに適した同様の医療等級の材料、である。好ましい実施形態では、張力要素は、張力が加えられた状態で有意に伸長する(elongate)ことはない。張力を加えるプロセスは、張力要素は負荷が加えられたときにわずかに伸びるので、反復的であることが期待される。ゲージがケーブルの張力を検証するために用いられてよい。代替の実施形態では、張力要素は、シリコーンゴムコード(silicone rubber cord)のような、より弾性の材料で形成されていてよく、または、較正された剛性を備えたばね要素を組み込んでいてよい。
【0044】
例示された実施形態では、単一の張力要素が、骨プレート10/10’の各開口位置に提供されている。代替的に、複数の張力要素が、共通のプレート凹部14または開口14’で係留されていてよい。各張力要素は、骨プレートに対して、異なる角度で、配備されていてよい。
【0045】
張力要素、および、遠位アンカーは、治療された骨折の種類に応じた所定の範囲の寸法で提供されていてよい。例えば、張力要素は、約1mm〜約3mmまでの範囲内の有効径と、約100mm〜約200mmまでの範囲内の長さと、を有していてよい。遠位アンカー24,24’,および、92は、約4mm〜約6mmまでの範囲内の有効径を有していてよい。
【0046】
近位アンカーの寸法は、その骨プレートに近位アンカーが固定される骨プレートの寸法によってある程度決定される。例えば、ティンナーマンワッシャー26の直径、または、近位アンカー30のねじ山が設けられたテーパ状のヘッド部34の直径は、それぞれ、凹部14の内径、および、固定ブッシング16の内径によって決定される。近位アンカーの高さは、周囲の組織への外傷を最小限にするために、近位アンカーが骨プレートの露出された面の外側に突出しないように、設定されていることが好ましい。
【0047】
ある種の実施形態では、遠位アンカーは、張力要素と一体化されていてよい。別の実施形態では、遠位アンカーは、圧接(crimping)、または、溶接のような公知の方法によって、張力要素に永久的に取り付けられていてよい。しかし、張力要素と遠位アンカーとの間の取り付けは、張力要素に加えられる張力に耐えるように十分な強度であることが期待される。
【0048】
本発明が、図面および前述の記載で詳細に例示および記載されたが、同例示および同記載は、本質的に例示的であり、限定的ではないとみなされなければならない。好ましい実施形態のみが提示されたこと、ならびに、本発明の精神に含まれるすべての変更、変形、および、さらなる応用が保護されることが望まれることを、理解されたい。
【0049】
例えば、近位アンカー30は、固定ブッシングを用いて、骨プレートと近位アンカーとの間でのテーパ状のねじ山による係合を企図している。代替的に、骨プレート10’(図3)の開口14’は、モールステーパー(Morse taper)のように、テーパ状になっていてよい。ねじ山36は、近位アンカー30(図3〜図4)のヘッド部では省略されており、ヘッド部34が滑らかなテーパ状のコンポーネントであり、同時に、十字溝38を維持していてもよい。近位アンカーを固定ブッシングに螺合する代わりに、テーパ状のヘッド部が、骨プレートの嵌め合うテーパ状の開口にプレス嵌めされ、同時に張力要素22が張力が加えられた状態に維持されてよい。この代替の実施形態では、駆動ラグ42もまた省略されてよい。駆動器具50は、管状の衝撃ドライバー(cannulated impact driver)に置き換えられてよい。多軸または可変の角度の能力を維持するために、固定ブッシングは、変形された近位アンカーのテーパ状のヘッド部とのプレス嵌めによる係合のための相補的な嵌め合う角度(complementary mating angle)を組み込んでいてよい。その場合、プレートの開口14’は、プレートに対する所与の範囲内の角度でのブッシングの球形の外側面との嵌め合わせのための開口14’の球形の内側面を維持していてよい。
【0050】
〔実施の態様〕
この発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
(1)骨折固定システムにおいて、
骨の近位表面を支えるように構成された骨プレートであって、前記骨プレートは、このプレートを通過する複数の開口を画定する、骨プレートと、
細長い張力要素であって、前記細長い張力要素は、前記複数の開口を通り、かつ、前記骨の前記近位表面から遠位表面まで前記骨を通るように、寸法決めされている、細長い張力要素と、
遠位アンカーであって、前記張力要素に取り付けられており、前記張力要素が前記骨に通されると、前記骨の前記遠位表面に係合するように構成されている、遠位アンカーと、
近位アンカーであって、前記近位アンカーと前記遠位アンカーとの間の前記張力要素の張力を維持するために、前記骨プレートと前記張力要素との間で係合可能である、近位アンカーと、
を含む、骨折固定システム。
(2)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーが、中心開口であって、この開口を通る前記張力要素に係合するように寸法決めされた中心開口、を含む、骨折固定システム。
(3)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記骨プレートが、前記複数の開口のうちの少なくともいくつかの開口周りの凹部を画定し、
前記近位アンカーが、前記凹部内に受容されるように寸法決めされている、
骨折固定システム。
(4)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーが、ティンナーマンワッシャーである、骨折固定システム。
(5)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記張力要素が、金属製ケーブルである、骨折固定システム。
(6)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、
形状記憶コンポーネントであって、 前記複数の開口の1つを通り、かつ、前記骨の前記近位表面から前記遠位表面まで前記骨を通るように、寸法決めされた、第1の形状と、
前記骨の前記遠位表面に係合するための、第2の形状記憶の形状と、
を備える、形状記憶コンポーネント、
を有する、骨折固定システム。
(7)実施態様(6)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、少なくとも2つの突起を含み、
前記少なくとも2つの突起が、前記第1の形状で前記細長い張力要素とほぼ整合し、前記第2の形状記憶の形状で前記細長い張力要素から外向きに延びている、
骨折固定システム。
(8)実施態様(7)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記突起が、ばね要素である、骨折固定システム。
(9)実施態様(6)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記形状記憶コンポーネントが、前記第2の形状記憶の形状のときに湾曲した形状になるように構成された細片(strip)である、骨折固定システム。
(10)実施態様(6)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、形状記憶金属で形成されている、骨折固定システム。
【0051】
(11)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、円板である、骨折固定システム。
(12)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、略球形の要素である、骨折固定システム。
(13)実施態様(12)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、ワッシャーであって、このワッシャーの中に前記ほぼ球形の要素を受容するための凹部を備えた、ワッシャー、を含む、骨折固定システム。
(14)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、

シースであって、前記遠位アンカーと、前記張力要素の少なくとも一部とを収容するように寸法決めされた、シース、
をさらに含み、
前記シースが、前記骨の中に挿入されるように構成されている、
骨折固定システム。
(15)実施態様(1)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーが、前記骨プレートと多軸の境界をなすように構成されている、骨折固定システム。
(16)実施態様(15)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーは、前記近位アンカーが前記骨プレートと係合した場合に、前記骨の中に延在可能なシャンクを含む、骨折固定システム。
(17)実施態様(15)に記載の骨折固定システムにおいて、
前記複数の開口のうちの少なくともいくつかの開口は、球形の壁を画定し、かつ、前記開口内に配置された固定ブッシングを含み、
前記固定ブッシングは、前記球形の壁と相補的な係合のための球形の外側面を有し、
前記固定ブッシングは、雌ねじ山が設けられたボアをさらに含み、
前記近位アンカーは、
中心ボアであって、このボアを通して前記張力要素を受容するための、中心ボアと、
ねじ山が設けられたヘッド部と、
を含み、
前記近位アンカーの前記ヘッド部および前記固定ブッシングが、テーパ状のねじ山が設けられた境界を画定し、これにより、前記ブッシングは、前記ヘッド部が前記ブッシングに螺合されると、前記球形の壁に向けて拡張する、
骨折固定システム。
(18)骨折の固定のための方法において、
骨プレートを骨の近位表面に配置する過程であって、前記骨プレートは、この骨プレートを通る複数の開口を有する、過程と、
少なくとも2つの細長い張力要素を、前記複数の開口の少なくとも1つに通し、かつ、前記骨の遠位表面まで前記骨の中を通す過程と、
前記遠位表面で前記少なくとも2つの張力要素を係留する過程と、
前記少なくとも2つの張力要素に張力を加える過程と、
前記張力要素の前記張力を維持しながら、前記張力要素を前記骨プレートに係留する過程と、
を含む、骨折の固定のための方法。
(19)実施態様(18)に記載の骨折の固定のための方法において、
前記複数の開口のうちの対応する1つの開口を通る少なくとも1つの骨ねじを用いて、前記骨プレートを前記骨に固定する過程、
をさらに含む、骨折の固定のための方法。
(20)実施態様(18)に記載の骨折の固定のための方法において、
前記張力要素を前記骨に通す前に、Kワイヤを前記開口および前記骨に打ち込む過程、
をさらに含む、骨折の固定のための方法。
【0052】
(21)実施態様(18)に記載の骨折の固定のための方法において、
前記張力要素の少なくとも1つが、前記張力要素の遠位端部に取り付けられた遠位アンカーを含み、
前記張力要素を前記骨に通す前記過程が、
前記遠位アンカーと、前記張力要素の少なくとも一部と、をシース内に配置する過程と、
前記遠位アンカーが前記骨の前記遠位表面に達するまで、前記シースを前記骨プレートの前記開口および前記骨に通す過程と、
を含む、骨折の固定のための方法。
(22)骨折の固定のための方法において、
骨プレートを骨の近位表面に配置する過程であって、前記骨プレートは、このプレートを通る複数の開口を含む、過程と、
少なくとも1つの細長い張力要素を、前記複数の開口の少なくとも1つに通し、かつ、前記骨の遠位表面まで前記骨の中を通す過程と、
前記少なくとも1つの張力要素を前記遠位表面に係留する過程と、
前記少なくとも1つの張力要素に張力を加える過程と、
前記張力要素の前記張力を維持しながら、前記張力要素を、前記骨プレートと多軸の境界をなすように、前記骨プレートに係留する過程と、
を含む、骨折の固定のための方法。
(23)実施態様(22)に記載の骨折の固定のための方法において、
前記張力要素を前記骨プレートに係留する前記過程が、前記骨プレートと多軸の係合をするように構成された部分、およびシャンクを有する、多軸のアンカー部材を用いて達成され、
前記係留する過程が、前記アンカー部材の前記シャンクを前記骨プレートの下の前記骨の中に打ち込む過程、をさらに含む、
骨折の固定のための方法。
(24)実施態様(22)に記載の骨折の固定のための方法において、
前記複数の開口のうちの対応する1つの開口を通る少なくとも1つの骨ねじを用いて前記骨プレートを前記骨に固定する過程、
をさらに含む、骨折の固定のための方法。
(25)実施態様(22)に記載の骨折の固定のための方法において、
前記張力要素の少なくとも1つが、前記張力要素の遠位端部に取り付けられた遠位アンカーを含み、
前記張力要素を前記骨に通す前記過程が、
前記遠位アンカー、および、前記張力要素の少なくとも一部をシース内に配置する過程と、
前記遠位アンカーが前記骨の前記遠位表面に達するまで、前記シースを前記骨プレートの前記開口および前記骨に通す過程と、
を含む、骨折の固定のための方法。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のある実施形態に基づく骨折固定システムの側面斜視図である。
【図2】図1に示された骨折固定システムの拡大側断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態に基づく骨折固定システムの拡大側断面図である。
【図4】図3に示された骨折固定システムで用いられた近位アンカーの拡大斜視図である。
【図5】図4に示された近位アンカーを駆動するための駆動器具の作用端部の拡大斜視部分図である。
【図6a】遠位端部が拡張していない状態で示された、本発明のある実施形態に基づく、図1に示された骨折固定システムで用いるための遠位アンカーの側面図である。
【図6b】遠位端部が拡張した状態で示された、本発明のある実施形態に基づく、図1に示された骨折固定システムで用いるための遠位アンカーの側面図である。
【図7a】遠位アンカーが拡張した状態で示された骨の中の遠位アンカーを示す、図6a、および、図6b、に示された遠位アンカーの部分側断面図である。
【図7b】遠位アンカーが張力がかけられた状態で示された骨の中の遠位アンカーを示す、図6a、および、図6b、に示された遠位アンカーの部分側断面図である。
【図8a】本発明の別の実施形態に基づく、図1に示された骨折固定システムで用いるための遠位アンカーの部分側断面図である。
【図8b】本発明の別の実施形態に基づく、図1に示された骨折固定システムで用いるための遠位アンカーの底面図である。
【図9】本発明のさらに別の実施形態に基づく、図1に示された骨折固定システムで用いるための遠位アンカーの側面斜視図である。
【図10a】図1に示された骨折固定システムで用いるための遠位アンカーの追加の遠位アンカーの側面図である。
【図10b】図1に示された骨折固定システムで用いるための遠位アンカーの追加の遠位アンカーの側面図である。
【図11a】本発明のある実施形態に基づく、図1に示された骨折固定システムで用いるための張力要素および遠位アンカーの側面図である。
【図11b】図11aに示された張力要素の近位端部の拡大部分断面図である。
【図12】図1に示された固定システムを骨に固定するための外科処置で用いるための交換器具の斜視図である。
【図13a】図12に示された交換器具の側面図である。
【図13b】図12に示された交換器具の端面図である。
【図14】本発明のある実施形態に基づく、骨折した骨を整復し固定するための図1に示された固定システムを固定するための方法の第1の過程を表す図である。
【図15】骨折した骨を整復し固定するための固定システムを固定するための方法の別の過程を表す図である。
【図16】図15の領域Aとして示された、張力要素とKワイヤとの間の境界の拡大部分断面図である。
【図17】本発明のある実施形態に基づく、図1に示された固定システムを固定するための方法の後続の過程を表す図である。
【図18】本発明のある実施形態に基づく、図1に示された固定システムを固定するための方法の後続の過程を表す図である。
【図19】本発明のある実施形態に基づく、図1に示された固定システムを固定するための方法の後続の過程を表す図である。
【図20】本発明のある実施形態に基づく、図1に示された固定システムを固定するための方法の後続の過程を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折固定システムにおいて、
骨の近位表面を支えるように構成された骨プレートであって、前記骨プレートは、このプレートを通過する複数の開口を画定する、骨プレートと、
細長い張力要素であって、前記細長い張力要素は、前記複数の開口を通り、かつ、前記骨の前記近位表面から遠位表面まで前記骨を通るように、寸法決めされている、細長い張力要素と、
遠位アンカーであって、前記張力要素に取り付けられており、前記張力要素が前記骨に通されると、前記骨の前記遠位表面に係合するように構成されている、遠位アンカーと、
近位アンカーであって、前記近位アンカーと前記遠位アンカーとの間の前記張力要素の張力を維持するために、前記骨プレートと前記張力要素との間で係合可能である、近位アンカーと、
を含む、骨折固定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーが、中心開口であって、この開口を通る前記張力要素に係合するように寸法決めされた中心開口、を含む、骨折固定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記骨プレートが、前記複数の開口のうちの少なくともいくつかの開口周りの凹部を画定し、
前記近位アンカーが、前記凹部内に受容されるように寸法決めされている、
骨折固定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーが、ティンナーマンワッシャーである、骨折固定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記張力要素が、金属製ケーブルである、骨折固定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、
形状記憶コンポーネントであって、
前記複数の開口の1つを通り、かつ、前記骨の前記近位表面から前記遠位表面まで前記骨を通るように、寸法決めされた、第1の形状と、
前記骨の前記遠位表面に係合するための、第2の形状記憶の形状と、
を備える、形状記憶コンポーネント、
を有する、骨折固定システム。
【請求項7】
請求項6に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、少なくとも2つの突起を含み、
前記少なくとも2つの突起が、前記第1の形状で前記細長い張力要素とほぼ整合し、前記第2の形状記憶の形状で前記細長い張力要素から外向きに延びている、
骨折固定システム。
【請求項8】
請求項7に記載の骨折固定システムにおいて、
前記突起が、ばね要素である、骨折固定システム。
【請求項9】
請求項6に記載の骨折固定システムにおいて、
前記形状記憶コンポーネントが、前記第2の形状記憶の形状のときに湾曲した形状になるように構成された細片である、骨折固定システム。
【請求項10】
請求項6に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、形状記憶金属で形成されている、骨折固定システム。
【請求項11】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、円板である、骨折固定システム。
【請求項12】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、略球形の要素である、骨折固定システム。
【請求項13】
請求項12に記載の骨折固定システムにおいて、
前記遠位アンカーが、ワッシャーであって、このワッシャーの中に前記ほぼ球形の要素を受容するための凹部を備えた、ワッシャー、を含む、骨折固定システム。
【請求項14】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
シースであって、前記遠位アンカーと、前記張力要素の少なくとも一部とを収容するように寸法決めされた、シース、
をさらに含み、
前記シースが、前記骨の中に挿入されるように構成されている、
骨折固定システム。
【請求項15】
請求項1に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーが、前記骨プレートと多軸の境界をなすように構成されている、骨折固定システム。
【請求項16】
請求項15に記載の骨折固定システムにおいて、
前記近位アンカーは、前記近位アンカーが前記骨プレートと係合した場合に、前記骨の中に延在可能なシャンクを含む、骨折固定システム。
【請求項17】
請求項15に記載の骨折固定システムにおいて、
前記複数の開口のうちの少なくともいくつかの開口は、球形の壁を画定し、かつ、前記開口内に配置された固定ブッシングを含み、
前記固定ブッシングは、前記球形の壁と相補的な係合のための球形の外側面を有し、
前記固定ブッシングは、雌ねじ山が設けられたボアをさらに含み、
前記近位アンカーは、
中心ボアであって、このボアを通して前記張力要素を受容するための、中心ボアと、
ねじ山が設けられたヘッド部と、
を含み、
前記近位アンカーの前記ヘッド部および前記固定ブッシングが、テーパ状のねじ山が設けられた境界を画定し、これにより、前記ブッシングは、前記ヘッド部が前記ブッシングに螺合されると、前記球形の壁に向けて拡張する、
骨折固定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−252929(P2007−252929A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−77334(P2007−77334)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】