説明

内容物移送装置および化学処理システム

【課題】種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる内容物移送装置および化学処理システムを提供する。
【解決手段】 実質的に連続して水平方向に配置された複数の部材1,1,・・・と、部材1,1,・・・を互いに独立して上下方向に駆動する駆動手段2と、を備える。複数の部材1を独立して駆動しているため、ローラを用いる場合と同様の動作の他、より滑らかな脈動動作により内容物を移送することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形に伴う内容物の移送により化学処理を行わせる化学処理用カートリッジに外力を加える内容物移送装置および当該化学処理用カートリッジを用いた化学処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外力を加えた際の変形によって内容物を移送することで化学処理を行わせる化学処理用カートリッジが開発されている。このカートリッジは、内部に化学処理のための空間を作り込むとともに、外力を加えた際の変形によって空間内で内容物を移送することで、所定の化学処理を行わせるものである。このカートリッジによれば、カートリッジの構造自体により化学処理のためのプロトコルを規定することができるとともに、密閉状態が保たれるため、所望のプロトコルを個人差なく安全に実行できる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−37368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のカートリッジを用いることにより、複雑な手順を効率的に実行することができる。とくに、複数のローラを組み合わせるなど、個々のカートリッジに適合した装置を用いることにより、複雑な移送の手順を少ないパスで実現することができる。しかし、カートリッジのプロトコルやアプリケーションが異なれば、同一の装置を使用できず、カートリッジに応じた装置をそれぞれ用意する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる内容物移送装置および化学処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内容物移送装置は、変形に伴う内容物の移送により化学処理を行わせる化学処理用カートリッジに外力を加える内容物移送装置において、実質的に連続して配置され、前記化学処理用カートリッジに押し当て可能とされた複数の部材と、前記部材を互いに独立して駆動して前記化学処理用カートリッジに押し当てる駆動手段と、を備えることを特徴とする。
この内容物移送装置によれば、実質的に連続して配置された複数の部材を互いに独立して駆動するので、種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる。
【0007】
前記部材の前記化学処理用カートリッジに対する接触面の前記内容物の移送方向における幅は前記化学処理用カートリッジに形成された当該方向におけるウェルの幅よりも小さくてもよい。
【0008】
前記部材を予め定められた手順で駆動するように前記駆動手段を制御する制御手段を備えてもよい。
【0009】
前記部材の前記化学処理用カートリッジに対する接触面の形状は円または多角形であってもよい。
【0010】
前記部材の前記化学処理用カートリッジに対する接触面の形状は、接触面が稠密に配置される形状とされてもよい。
【0011】
前記部材は、個別に前記化学処理用カートリッジを加熱または加振可能とされてもよい。
【0012】
本発明の化学処理システムは、変形に伴う内容物の移送により化学処理を行わせる化学処理用カートリッジを用いた化学処理システムにおいて、実質的に連続して配置され、前記化学処理用カートリッジに押し当て可能とされた複数の部材と、前記部材を互いに独立して駆動して前記化学処理用カートリッジに押し当てる駆動手段と、を具備する内容物移送装置を備えることを特徴とする。
この化学処理システムによれば、実質的に連続して配置された複数の部材を互いに独立して駆動する内容物移送装置を用いるので、種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内容物移送装置によれば、実質的に連続して配置された複数の部材を互いに独立して駆動するので、種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる。
【0014】
本発明の化学処理システムによれば、実質的に連続して配置された複数の部材を互いに独立して駆動する内容物移送装置を用いるので、種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図6を参照して、本発明による内容物移送装置の実施形態について説明する。
【0016】
図1(a)および図1(b)は、一実施形態の内容物移送装置の構成を示す正面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施形態の内容物移送装置は、実質的に連続して水平方向に配置された複数の部材1,1,・・・と、部材1,1,・・・を互いに独立して上下方向に駆動する駆動手段2と、を備える。
【0018】
図1(b)に示すように、駆動手段2は任意の部材1を独立して駆動可能であり、例えば、図1(b)に示すように、隣り合う部材1の接触面1Aを少しずつ上下方向にずらすことで、任意の曲面形状を形成することもできる。
【0019】
図2(a)は、部材1の接触面1Aの形状例を示す図であり、図1(a)のII−II線方向から見た平面図である。図2(a)に示すように、接触面1Aは円形状であり、各部材1が水平面上に互いに密着して配置されている。密着された部材間の摺動抵抗を低下させるために、フッ素樹脂等により部材を形成してもよい。接触面1Aの直径はカートリッジのウェル33a、ウェル33bの径よりも小さくされ、これにより内容物を滑らかに移送することを可能としている。接触面1Aの大きさおよび形状は、少なくともウェルあるいは流路のサイズとの関係で、内容物の移送が可能となる範囲に選択される。
【0020】
なお、図2(a)の例では、カートリッジのウェル33aおよびウェル33bが流路34により接続された構造例が示されている。
【0021】
図2(b)および図2(c)は、それぞれ部材の接触面の別形状を示す平面図である。
【0022】
図2(b)では、六角形形状の接触面1Bが六方稠密構造をとる例を示している。この場合には、部材間の隙間がなくなり、より確実な内容物の移送が可能となる。図2(c)では、部材の接触面1Cの面積をより小さくした例を示しており、この場合、より滑らかな内容物の移送が可能となり、より微細な構造のカートリッジに対応できる。その他、部材の接触面を三角形、四角形などにしてもよく、これらの場合にも稠密構造とすることができる。
【0023】
図3は、内容物移送装置の構成を示す部分拡大図である。
【0024】
図3に示すように、部材1はそれぞれ支持基板21により摺動可能に支持され、ワイヤ22を介してアクチュエータ23の移動子に接続されている。支持基板21、ワイヤ22およびアクチュエータ23は、駆動手段を構成する。なお、隣接する部材1どうしが互いに摺動可能に支持し合う構成とし、部材1を仕切る構造の支持基板21を省略してもよい。
【0025】
アクチュエータ23を動作させると、ワイヤ22が軸方向に移動し、これにより部材1が垂直方向に移動する。なお、図3では、ワイヤ22およびアクチュエータ23を1組のみ表示しているが、すべての部材1に対して、同様にワイヤ22およびアクチュエータ23が設けられている。これにより、各部材1が独立して駆動される。
【0026】
図3に示すように、アクチュエータ23,23,・・・には、制御装置5が接続されており、アクチュエータ23,23,・・・は、制御装置5からの指令に従って所定のタイミングで動作する。制御装置5には予め部材1,1,・・・の駆動手順、すなわち内容物の移送手順を定めるデータが与えられ、制御装置5はこのデータに従ってアクチュエータ23,23,・・・に上記指令を与える。
【0027】
図4(a)〜図4(c)は、化学処理用カートリッジの内容物を移送する動作を示す正面図である。図4(a)〜図4(c)に示すように、カートリッジ3は基材31および弾性部材32を重ね合わせて構成され、弾性部材32の窪みによりウェル33cおよびウェル33dが形成される。なお、ウェル33cおよびウェル33dの間には、流路(不図示)が形成されている。
【0028】
図4(a)〜図4(c)に示す例では、図4(a)〜図4(c)の順に移送状況を時系列に示しており、カートリッジ3に押し当てる部材1,1,・・・を順次、左から右方向に移していくことで、接触面1Aによりカートリッジ3の弾性部材32を変形させ、ウェル33c内の液体35をウェル33dに向けて右方向に移送している。
【0029】
本実施形態の内容物移送装置では、複数の部材1を独立して駆動しているため、ローラを用いる場合と同様の動作の他、より滑らかな脈動動作により内容物を移送することもできる。
【0030】
以上のように、本実施形態の内容物移送装置によれば、部材1,1,・・・の駆動手順は、制御装置5に与えるデータにより任意に設定できるため、任意のプロトコルやアプリケーションに対応でき、異なるカートリッジに対して共通の機構を使用できる。
【0031】
図5(a)は、ロータリー型のアクチュエータを用いる例を示す図である。この場合には、アクチュエータ24の回転子の回転を、ワイヤ25を介して回転部材11に伝達している。回転部材11は支持部材21Aと螺合しており、回転部材11の回転は上下方向の移動に変換される。回転部材11の先端には接触部材12が回動可能に取り付けられ、接触部材12はカートリッジ3に対して回動しない状態で押し当てられる。
【0032】
図5(b)は、別のアクチュエータを用いた例を示す図である。この例では、個々の部材13をピエゾ素子または静電アクチュエータをアクチュエータ26として駆動する場合を示している。
【0033】
図5(c)は、圧力により部材を駆動する例を示す図である。この例では、部材14を支持部材27により摺動可能に支持し、支持部材27の内部に与える水圧、油圧、空気圧等の圧力により部材14を下方に駆動している。部材14には抜け止めのための嵌合部14aが形成され、図5(d)に示すように、嵌合部14aが支持部材27に当接することで部材14の移動範囲が制限される。
【0034】
上記実施形態では、カートリッジに対して片側(上側)から部材を押し当てる例を示したが、図6(a)に示すように、カートリッジ3の上下にカートリッジを押し込むための機構を設けてもよい。この場合には、カートリッジ3の上下で上記の機構(図1)を上下反転して設け、同時に部材1を駆動することで、カートリッジ3の内容物を移送する。
【0035】
上記実施形態では、部材1を水平面内に2次元的に設けることで、内容物を平面内の任意の方向に移送することが可能である。これに対し、1次元的(直線方向)に内容物を移送すれば足りる場合には、図6(b)に示すように、接触面が細長い矩形状の部材15を一方向に並べてもよい。この場合には、左右方向への移送のみが可能となるが、部材15の数は大幅に減少するため、装置を容易に構成できる。
【0036】
カートリッジを押し込むと同時に、カートリッジに熱を加えるようにしてもよい。例えば、図3に示すように、部材1を介してカートリッジを加熱する熱源6を部材1ごとに設け温度調整してもよい。また、熱伝導性のワイヤ22を介して部材1に熱を伝えてもよい。ワイヤ22を光透過性の材質で形成し、ワイヤ22を介して赤外線を照射することで、個々の部材1の部位を選択的に加熱することもできる。また、支持基板21全体を加熱することによりカートリッジ全面を加熱可能としてもよい。
【0037】
カートリッジを押し込むと同時に、振動を加えることもできる。この場合、例えば、図3において、部材1をアクチュエータ23により縦方向に振動させることで、カートリッジの対応する部位に振動を与えることができる。振動を与えるためのアクチュエータ、例えば、ピエゾ素子や静電アクチュエータを部材1の近傍に別途設けてもよい。
【0038】
以上説明したように、本発明の内容物移送装置によれば、実質的に連続して配置された複数の部材を互いに独立して駆動するので、種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる。また、本発明の化学処理システムによれば、実質的に連続して配置された複数の部材を互いに独立して駆動する内容物移送装置を用いるので、種々の化学処理用カートリッジに対して汎用的に適用できる。
【0039】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、変形に伴う内容物の移送により化学処理を行わせる化学処理用カートリッジに外力を加える内容物移送装置および当該化学処理用カートリッジを用いた化学処理システムに対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態の内容物移送装置の構成を示す図であり、(a)および(b)は、内容物移送装置の構成を示す正面図である。
【図2】部材の接触面の形状例を示す図であり、(a)は円形状の接触面を示す平面図、(b)および(c)は、六角形形状の接触面を示す平面図。
【図3】内容物移送装置の構成を示す部分拡大図。
【図4】化学処理用カートリッジの内容物を移送する動作を示す図であり、(a)〜(c)は移送状況を時系列で示す正面図。
【図5】種々の駆動方式を示す図であり、(a)は、ロータリー型のアクチュエータを用いる例を示す図、(b)は、別のアクチュエータを用いた例を示す図、(c)は、圧力により部材を駆動する例を示す図。
【図6】カートリッジの上下にカートリッジを押し込むための機構を設けた例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1 部材
1A 接触面
2 駆動手段
21 支持部材(駆動手段)
22 ワイヤ(駆動手段)
23 アクチュエータ(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形に伴う内容物の移送により化学処理を行わせる化学処理用カートリッジに外力を加える内容物移送装置において、
実質的に連続して配置され、前記化学処理用カートリッジに押し当て可能とされた複数の部材と、
前記部材を互いに独立して駆動して前記化学処理用カートリッジに押し当てる駆動手段と、
を備えることを特徴とする内容物移送装置。
【請求項2】
前記部材の前記化学処理用カートリッジに対する接触面の前記内容物の移送方向における幅は前記化学処理用カートリッジに形成された当該方向におけるウェルの幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の内容物移送装置。
【請求項3】
前記部材を予め定められた手順で駆動するように前記駆動手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の内容物移送装置。
【請求項4】
前記部材の前記化学処理用カートリッジに対する接触面の形状は円または多角形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内容物移送装置。
【請求項5】
前記部材の前記化学処理用カートリッジに対する接触面の形状は、接触面が稠密に配置される形状とされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか項に記載の内容物移送装置。
【請求項6】
前記部材は、個別に前記化学処理用カートリッジを加熱または加振可能とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内容物移送装置。
【請求項7】
変形に伴う内容物の移送により化学処理を行わせる化学処理用カートリッジを用いた化学処理システムにおいて、
実質的に連続して配置され、前記化学処理用カートリッジに押し当て可能とされた複数の部材と、前記部材を互いに独立して駆動して前記化学処理用カートリッジに押し当てる駆動手段と、を具備する内容物移送装置を備えることを特徴とする化学処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−272645(P2008−272645A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117984(P2007−117984)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】