説明

内服用体臭抑制剤

【課題】内服で即効性かつ持続性を有する体臭を抑制するための内服用体臭抑制剤の提供。
【解決手段】リモネン、シトロネラール、シトロネロール又はシトラールである非芳香族モノテルペン化合物からなる内服用体臭抑制剤。該非芳香族モノテルペン化合物としては、リモネン及びシトロネラールであることが好ましい。該内服用体臭抑制剤としては、さらに、ゲラニオール、リナロール又はバニリンを含有することが好ましい。該内服用体臭抑制剤は、医薬組成物、サプリメント又は飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内服で即効性かつ持続性を有する体臭を抑制するための剤及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
「体臭」は食生活、健康状態、年齢によって変化することが知られているため、生活習慣や健康のバロメータとして有用であるとも考えられる。しかし、多くの人にとって他人の体臭は、その匂いの強弱にも依存するが、一般に不快な臭いとして受け取られることが多い。その体臭が強いがゆえに現代社会における円滑な共同生活が妨げられることもある。
【0003】
フィチン酸(特許文献1参照)、藍藻類の藻体(特許文献2参照)、特定の生薬(特許文献3参照)、植物由来のポリフェノール(特許文献4参照)等を内服することにより体臭が抑制されることが知られている。
【0004】
外用投与としては、香気成分を含有する体臭発生抑制化粧料(特許文献5参照)、香料化合物を単糖類で配糖体にした人体表面用徐放性芳香組成物(特許文献6参照)、精油または精油成分からなるデオドラント剤(特許文献7参照)等を外用投与することにより体臭が抑制されることが知られている。
【0005】
しかし、リモネン、シトロネラール、シトロネロール又はシトラールのような非芳香族モノテルペン化合物を内服することによって体臭抑制作用が発現したという事実はこれまでに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−275522号公報
【特許文献2】特開平9−28356号公報
【特許文献3】特開2006−143711号公報
【特許文献4】特開2007−314472号公報
【特許文献5】特開平9−194339号公報
【特許文献6】特開2000−96078号公報
【特許文献7】特開2002−255774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、現代社会において、円滑かつ快適な社会生活の観点から、内服により優れた体臭の抑制効果を有する化合物を提供することが、有用であると考えて研究を開始した。すなわち、内服により優れた体臭の抑制効果を有する化合物の有用な用途としては、医薬品、サプリメント、飲食品等の有効成分としての利用が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、長年に渡り鋭意研究を続けた結果、非芳香族モノテルペン化合物が、内服により優れた体臭の抑制効果を有することを発見した。
【0009】
非芳香族モノテルペン化合物の中でも、
非環式化合物としては、ミルセン、オシメン、コスメン、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、イプスジエノール、シトラール(ネラール、ゲラニアール)、シトロネラール、ゲラニル酸等が知られている。
【0010】
環式化合物としては、メンタン、リモネン、フェランドレン、テルピノレン、テルピネン、シメン、メントール、プレゴール、ピペリトール、テルピネオール、カルベオール、チモール、アネトール、ジヒドロカルベオール、メントン、プレゴン、フェランドラール、カルボン、カルベノン、ピペリトン等が知られている。
【0011】
本発明者らは、数多く知られている非芳香族モノテルペン化合物の中でも、特に、リモネン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール及びリナロールについて、優れた効果を有することを発見し、更に詳細に、リモネン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール及びリナロールについて、内服した場合の体外発散特性を比較、検討した。
【0012】
その比較試験の結果、リモネン、シトロネラール、シトロネロール及びシトラールが、ゲラニオール及びリナロールと比較して、特に優れた即効性と持続性効果を併せ持つことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち本発明は、(1)リモネン、シトロネラール、シトロネロール又はシトラールである非芳香族モノテルペン化合物からなる内服用体臭抑制剤であり、好適には、
(2)非芳香族モノテルペン化合物がリモネン及びシトロネラールである(1)に記載の内服用体臭抑制剤、
(3)さらに、ゲラニオール、リナロール又はバニリンを含有する(1)又は(2)に記載の内服用体臭抑制剤、
(4)即効性かつ持続性を有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の内服用体臭抑制剤及び
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の内服用体臭抑制剤を有効成分として含有する医薬組成物、サプリメント又は飲食品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリモネン、シトロネラール、シトロネロール又はシトラールからなる内服用体臭抑制剤は、共同社会生活を円滑にするために有用である。また、本発明の体臭抑制剤は、即効性と持続性効果を併せ持つことから有用である。すなわち、内服により優れた体臭の抑制効果を有することから、医薬品、サプリメント、飲食品等の有効成分としての利用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】縦軸にピーク強度、横軸に経過日数をとり、各成分の消臭効果を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に使用されるリモネン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール、リナロール、バニリン等は指定食品添加物リストに収載されている。
【0017】
本発明において、リモネン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール、リナロール、バニリンの使用量は、例えば、食品添加物公定書に記載された経口摂取の安全量の範囲内であるが、本発明の効果を発揮するためには、通常、これらの化合物が、香料として使用されている量では足りず、その使用量は明確に区別できるものである。
【0018】
本発明において、リモネン、シトロネラール、シトロネロールまたはシトラールと、ゲラニオール、リナロールまたはバニリンとの配合比も、各成分が安全量の範囲内にあれば特に限定されない。
【0019】
リモネン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール、リナロール、バニリンの1回あたりの合計の服用又は摂取量は、年齢により異なるが、通常2mg〜3000mgであり、好適には、5mg〜1000mgこれを1日に、1〜3回服用又は摂取する(これに対して、通常、香料として用いる場合には、0.01mg〜1mgである)。
【0020】
本発明の剤を組成物として用いる場合、剤形が液剤又は半固形製剤の場合、1回量中に含有されるリモネン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール、リナロール、バニリンの合計の含有量は、通常0.5重量%〜30重量%であり、好適には、1重量%〜10重量%である(これに対して、通常、香料として用いる場合には、0.01重量%〜0.2重量%である)。
【0021】
本発明の剤を組成物として用いる場合、その具体的な形態(剤形)としては、固形製剤、半固形製剤または液剤であり、例えば、錠剤、咀嚼錠剤、顆粒剤、散剤(細粒を含む)、カプセル剤、液剤等を挙げることができる。
【0022】
本発明の剤を組成物として用いる場合、その製剤を製造するにあたっては、各剤形に適した医薬品添加物、その他の食品添加物、基材等を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0023】
例えば、本発明の剤を組成物として用いる場合、その剤形が錠剤の場合、賦形剤としては通常の製剤に用いられるものを、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等を、滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、タルク等を使用することができる。
【0024】
また、本発明の剤を組成物として用いる場合、その剤形が散剤及びカプセル剤の場合、賦形剤としては通常の製剤に用いられるものを、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等を使用することができる。
【0025】
その他、各形態(剤形)において、必要に応じ、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース等の崩壊剤、ポリソルベート等の界面活性剤、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸等の吸着剤、三二酸化鉄やカラメル等の着色剤、安息香酸ナトリウム等の安定剤、pH調節剤、香料、及びその他の添加物等を配合することができる。
【0026】
本発明の剤を組成物として用いる場合、その組成物の剤形が飲食品の場合でも、公知の製造技術により製造することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)錠剤
(1)成分
(表1)
1〜3錠中 (mg) (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
リモネン、シトロネラール、又は、
シトロネロール、シトラール 120 80
ゲラニオール、リナロール、又は、
バニリン − 40
タルク 30 30
ステアリン酸マグネシウム 10 10
ヒドロキシプロピルセルロース 5 5
結晶セルロース 250 250
トウモロコシ澱粉 150 150
乳糖 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。
【0029】
(実施例2)顆粒剤
(1)成分
(表2)
1包中 (mg) (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
リモネン、シトロネラール、又は、
シトロネロール、シトラール 120 80
ゲラニオール、リナロール、又は、
バニリン − 40
トウモロコシ澱粉 350 350
ヒドロキシプロピルセルロース 50 50
乳糖 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。
【0030】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
(表3)
1〜3カプセル中 (mg) (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
リモネン、シトロネラール、又は、
シトロネロール、シトラール 120 80
ゲラニオール、リナロール、又は、
バニリン − 40
トウモロコシ澱粉 350 350
ヒドロキシプロピルセルロース 50 50
乳糖 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。
(実施例4)液剤
(1)成分
(表4)
50mL中 (mg) (mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
リモネン、シトロネラール、又は、
シトロネロール、シトラール 120 80
ゲラニオール、リナロール、又は、
バニリン − 40
安息香酸ナトリウム 70 70
ポリビニルアルコール 60 60
白糖 900 900
精製水 残部 残部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「液剤」の項に準じて液剤を製造する。
(試験例)体臭抑制効果試験
(1)被験物質
リナロール、シトロネラール、リモネン、ゲラニオールはシグマーアルドリッチ製のものを購入して使用した。被験物質は、これらを各7.5μgずつ等量含むアロマミックスを作製して投与した。投与液量はいずれの場合も0.2mL/Kgとなるようにした。
(2)動物
BALB/c雄性マウスの6週齢を日本チャールズリバー(株)から購入し、温度20〜26℃、湿度30〜70%、照明時間7時〜19時に制御されたラット飼育室内でラット用ブラケットテーパーケージに5匹ずつ入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)および水フィルターを通した水道水を自由に摂取させて約1週間予備飼育した。試験開始日に肉眼で動物の健康状態を観察し良好なことを確認して体重を測定し無作為に1群5匹に群分けして用いた。
(3)方法
本発明者らによって、ヒト体表面の臭い(体臭)はマウス尿の分析により評価できることが明らかとなり(Osada K, et al, Proc.R. Soc. Lond. B270,2003 p.929-933)、さらに、ヒトの体臭を改善する物質をマウスに経口投与することによりマウス尿中の老臭物質は低下することも判った。
【0031】
これらの一連の研究より、マウス尿によるヒトの体臭抑制の評価が可能であり、また、マウス尿の分析はヘッドスペース固相マイクロ抽出法により行った。なお、本法が体臭成分分析に応用できることも知られている(長田,味と匂い学会誌,13(1), 2006 p.59-66)。
【0032】
試験開始日の午後4時から5時に被験物質を経口投与した。2日目以降は午後5時前後の1日1回経口投与した。
【0033】
体臭物質として尿を採取した。ヘッドスペース固層マイクロ抽出法により検体を採取し、水素イオン炎検出器−ガスクロマトグラフィーによる化学分析法にて分析した。
尿中の各成分は投与前値と投与後のピーク値を差し引くことによりピーク強度を求めた。
(4)試験結果
得られた結果を図1に示す。なお、値は1群5匹の平均値である。
【0034】
図1より、リモネン、シトロネラールには、ゲラニオールに比べて格段に優れた効果が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のリモネン、シトロネラール、シトロネロール又はシトラールからなる内服用体臭抑制剤は、共同社会生活を円滑にするために有用である。また、本発明の体臭抑制剤は、即効性と持続性効果を併せ持つことから有用である。すなわち、内服により優れた体臭の抑制効果を有することから、医薬品、サプリメント、飲食品等の有効成分としての利用が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモネン、シトロネラール、シトロネロール又はシトラールである非芳香族モノテルペン化合物からなる内服用体臭抑制剤。
【請求項2】
非芳香族モノテルペン化合物がリモネン及びシトロネラールである請求項1に記載の内服用体臭抑制剤。
【請求項3】
さらに、ゲラニオール、リナロール又はバニリンを含有する請求項1又は請求項2に記載の内服用体臭抑制剤。
【請求項4】
即効性かつ持続性を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の内服用体臭抑制剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内服用体臭抑制剤を含有する医薬組成物、サプリメント又は飲食品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−280573(P2009−280573A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101565(P2009−101565)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】