説明

内気循環型温調装置

【課題】 本発明の課題は、水循環型の温調装置に内在する問題を解決しかつペルチェ素子(熱交換本体)の欠点である低い熱交換効率/不均一な温調効果を改善した座席用温調装置を提供することである。
【解決手段】 本発明の課題は、座席の内部に収納される座席用温調装置であって、第1熱交換部位と第2熱交換部位との間に熱交換本体を設けた熱交換体と、前記座席の表面域に少なくとも一部が直接または間接的に当接する内気循環ダクトであって、前記第1熱交換部位を当該ダクト内に配置した内気循環ダクトと、前記第2熱交換部位を内部に配置した排気用ダクトとを備えていることを特徴とする温調装置によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、ペルチェ素子のようなコンパクトな熱交換本体を用い、座席の内部に収納させた内気循環型温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ペルチェ素子を用いた座席用の温調装置が知られている〔例えば、以下の特許文献1および2、参照〕。ペルチェ素子は、p型半導体とn型半導体とを並列に配列して熱交換本体(熱電素子)を構成し、この熱交換本体の両面に吸熱部位と放熱部位(ヒートシンク)を備えており、低電圧の直流電流を通電することによって、各部位において吸熱と放熱を生じさせるものである。このようなペルチェ素子は、蒸発熱を利用した非半導体方式の熱交換器に比し、小型であり、操作が容易であるなどの利点を有するが、熱交換の効率が劣るという、欠点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−125801号公報
【特許文献2】特開平第11−225857号公報
【0004】
特許文献1に開示の技術では、座席の座部冷却に関し、ペルチェ素子で熱交換した冷却空気を、単に、座部の背後から冷却されるべき座部表面域に供給し、この座部表面域から座部表面域上方に放出している。この非循環方式は、常に座席外部から空気を取り込んで熱交換を行っている為、ペルチェ素子の本質的な欠点である熱交換効率の悪さの改善が不可能であるだけでなく、座部の背後から座部の最先端部分に達するまでに冷却空気が暖められてしまうため、座部表面域の温調効果(冷却効果)の不均一化の問題を併有している。
他方、特許文献2に開示の技術によれば、ペルチェ素子を用いると共に、熱媒体として水を用い、これを再循環させて再循環熱媒体と座席の間で熱交換を行っているため、熱交換効率や温調効果・不均一化の問題は、ある程度改善されている。しかしながら、この特許文献2の技術は、熱媒体として水を用いているため、装置重量の増加の欠点や、水によるサビ発生の欠点や、水循環ダクト用材料の選択に制限が課せられる欠点や、水漏れの欠点など、実用上、問題が非常に多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術の問題点を解決しうるような座席用温調装置を提供することである。すなわち、本発明の課題は、水循環型の温調装置に内在する問題を解決しかつペルチェ素子(熱交換本体)の欠点である低い熱交換効率/不均一な温調効果を改善した座席用温調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、既知の発明で採用されている水媒体に代えて、空気媒体を採用すると共に、ペルチェ素子(熱交換本体)によって熱交換された空気媒体を温調装置内で循環させることによって、前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づき、本発明が完成するに至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明は、座席の内部に収納される座席用温調装置であって、
第1熱交換部位と第2熱交換部位との間に熱交換本体を設けた熱交換体と、
前記座席の表面域に少なくとも一部が直接または間接的に当接する内気循環ダクトであって、前記第1熱交換部位を当該ダクト内に配置した内気循環ダクトと、
前記第2熱交換部位を内部に配置した排気用ダクトとを備え、
前記内気循環ダクト内の空気を、前記第1熱交換部位に供給し、熱交換した空気を前記内気循環ダクト内を循環させると共に、当該温調装置の外部から前記排気用ダクト内に吸入した空気を前記第2熱交換部位に供給し、熱交換した空気を当該排気用ダクトから排出させるように構成されていることを特徴とする温調装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、熱交換体は、ペルチェ素子であることが好適である。また、本発明によれば、座席は、車椅子の座部であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明の構成要件、特に、熱媒体として空気媒体を採用することによって、従来技術としての水循環型・温調装置が併有する欠点(装置重量の増加の欠点、水によるサビ発生の欠点、水循環ダクト用材料の選択に制限が課せられる欠点、水漏れの欠点など)を、全て、解決できるという、技術的効果を奏することができる。さらに、本発明によれば、媒体として選択した空気を、熱交換体(ペルチェ素子+ヒートシンク)に供給して、熱交換した空気を内気循環ダクト内を循環させているため、再循環させずに熱交換空気を単に座席に供給する場合に比し、熱交換効率を著しく改善できかつ均一な温調効果を達成できるという技術的効果を奏することができたのである。すなわち、効率良く熱交換された空気は、直接または間接的に座席表面域と接触して、それらの間で熱交換が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の座席用温調装置11を座席1内に組み込んだ座席1を示す、斜視図であり、この図1に示すように、本発明の座席用温調装置11は、座席1の内部に収納される。
本発明では、座席とは、表面域5aを有する背もたれ部2、および表面域5bを有する座部3の他に、ヒトが座席に着座した際に、接触しうる全ての部分、例えば、ひじ掛け部(図示せず)などを意味する。また、当然に、脚部を有する座部も、本発明の座席に包含される。さらに、本発明の座席なる用語には、通常は背もたれ部を有するソファとして使用され、この背もたれ部を水平形態にすることによってベットと使用されるようなソファベッドが包含される。したがって、本発明の座席なる用語には、最も広義には、病院や家庭内で使用されるベットが包含される。
なお、図1に示した座席1は、ソファである。また、温調装置11は、少なくともその一部が座席1の内部に収納されていればよく、使用上、外観上不適当でない限り、座席1の外部に突出してもよい。
【0011】
本発明の座席用温調装置は、図2〜図5に示すように、少なくとも次の構成要素を有することができる。
(A)第1熱交換部位と第2熱交換部位との間に熱交換本体を設けた熱交換体
(B)前記座席の表面域に少なくとも一部が直接または間接的に当接する内気循環ダクトであって、前記第1熱交換部位を当該ダクト内に配置した内気循環ダクト
(C)前記第2熱交換部位を内部に配置した排気用ダクト
(D)前記内気循環ダクト内の空気を、前記第1熱交換部位に供給し、熱交換した空気を前記内気循環ダクト内を循環させると共に、当該温調装置の外部から前記排気用ダクト内に吸入した空気を前記第2熱交換部位に供給し、熱交換した空気を当該排気用ダクトから排出させるように構成されていること
【0012】
(A)第1熱交換部位13と第2熱交換部位15との間に熱交換本体14を設けた熱交換体12
熱交換本体(熱電素子)14は、ペルチェ素子であることが好適である。通常、ペルチェ素子は、2枚のセラミック製の薄い平板の間に、p型半導体とn型半導体とを並列に配列して形成され、一般に、平板の寸法約 30 mm×30 mm ×3.4 mm〜寸法約 50 mm×50 mm×4.1 mmである。また、ペルチェ素子の性能は、通常38.5〜 118 Wを有することが好適である。第1熱交換部位13および熱交換部位15は、ヒートシンクであることが好適である。このようなヒートシンクは、高い伝熱係数を有する金属、例えば銅、(アルマイト処理)アルミニウム、炭素などから製造することができる。なお、第1熱交換部位13および第2熱交換部位15は、平板状熱交換本体14の垂直方向の高さに関し、同じ寸法でなくともよく、好適には第1熱交換部位13の高さは、第2熱交換部位15の高さの約1/3である。
熱交換本体14は、電流の流れる方向の切り替えによって、第1熱交換部位側で吸熱させると同時に第2熱交換部位側で発熱させるか、または第1熱交換部位側で発熱させると同時に第2熱交換部位側で吸熱させることができる。前者の場合、座席表面域5を冷却でき、後者の場合、座席表面域5を加温することができる。
【0013】
(B)座席1の表面域5に少なくとも一部が直接または間接的に当接する内気循環ダクト16であって、第1熱交換部位13を当該ダクト16内に配置した内気循環ダクト16
内気循環ダクト16は、その少なくとも一部が座席1の表面域5と直接当接することができる。この場合、座席表面域5によって、内気循環ダクト16は、部分的に覆われる。他方、内気循環ダクト16は、その少なくとも一部が座席1の表面域5と間接的に当接することができる。この場合、内気循環ダクト16の一部は、所定の部材(例えば、図2の保持部材22)を介して座席表面域5と当接しており、そのような部材によって内気循環ダクト16は、部分的に覆われる。
なお、表面域5は、空気遮断性の材料を用いることが好適である。本発明の座席用温調装置11は、従来技術に比し熱交換効率を大幅に改善した結果、かかる表面域5は、伝熱性の大きさに拘わらず、いずれの材料(例えば、金属、プラスチック、セラミック、木材、繊維、皮革等)であっても、座席の温調(冷却/加温)効果を奏することができる。
内気循環ダクト16は、その内部に第1熱交換部位13を備えている(図2、参照)。好適には、人体が接触する表面域5部分(図2の座部3では、ヒトが着座する表面域5b部分)から離間して温調装置11の内部に向かう方向(以下、「表面域離間方向」)に沿って順に、第1熱交換部位13、熱交換本体14および第2熱交換部位15を配置することができるが、これらを、人体が接触する表面域5部分に沿って(例えば、当該表面域5と平行な状態で)配置することもでき、これに対応して、第1熱交換部位13が内気循環ダクト16の内部に配置できるよう、内気循環ダクト16の配置を変更させることができる。なお、内気循環ダクト16は、空気遮断性で断熱性の材料から製造することが好適であり、例えば、エンジニアリングプラスチック(例えば、ポリプロピレン/ポリエチレンコポリマー)を用いることができる。
【0014】
(C)第2熱交換部位15を内部に配置した排気用ダクト17
この排気用ダクト17は、断熱性で空気遮断性の材料から製造されることが好適である。第2熱交換部位15は、前記第1熱交換部位13と同様に、ヒートシンクであることが好適である。
【0015】
(D)内気循環ダクト16内の空気を、第1熱交換部位13に供給し、熱交換した空気を内気循環ダクト16内を循環させると共に、温調装置11の外部から排気用ダクト14内に吸入した空気を第2熱交換部位15に供給し、熱交換した空気を排気用ダクト14から排出させるように構成されていること
本発明の温調装置11は、例えばファンによって、少なくとも内気循環ダクト内の空気を第1熱交換部位13に供給し、第1熱交換部位13で熱交換された空気を再循環させることによって、単に座席表面域に供給する従来技術に比し、熱交換の効率を著しく改善することができ、かつ均一な温調効果を達成することができる。熱交換された空気は、直接または間接的に座席表面域5と接触して、それらの間で熱交換が行われ、その結果、座席表面域5を冷却/加温させることができる。
他方、第2熱交換部位15で熱交換された空気を排気用ダクト14から系外に強制的に排出させることによって、前記第1熱交換部位13での熱交換を促進させることができる。例えば、第1熱交換部位13を吸熱状態にして表面域5を冷却する場合、第2熱交換部位15は、発熱するため、排気ダクト17内の空気は、高温になって、第1熱交換部位13による冷却作用を阻害する恐れがある。このため、高温の空気を系外に強制的に排出させることによって、前記第1熱交換部位13での熱交換を促進させることができるのである。
【0016】
好適な実施形態
次に、添付の図2〜図4を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明するが、本発明は、この実施形態に制限されるものではない。
図2は、図1に示した本発明の座部用温調装置11を線A-A’に沿って切欠した垂直断面図であり、図3は、図2に示した本発明の座部用温調装置11から、表面域5bを取り除いて上方から見た平面図であり、図4は、図2に示した本発明の座部用温調装置11から、表面域5b/保持部材22/シール部材21を取り除いて上方から見た平面図である。
まず、図2について説明する。図中、図面の表面側は、座部前方に相当し、図中裏面側は、座部後方に相当する。また、図中、図面の右側は、座部前方から見て右側に相当し、図面の左側は、座部前方から見て左側に相当する。
図2に示すように、表面域離間方向に沿って、順に、ヒトの人体が接触する座部表面域5b部分と、保持部材22と、断熱性部材23と、骨格部材25とが設けられ、また、熱交換体12の第1熱交換部位13を内部に配置した内気循環ダクト16と、熱交換体12の第2熱交換部位15を内部に配置した排気ダクト17とが設けられ、さらに、上記した座部表面域5b部分は、図中 右側と左側とに延在し、本発明の座部用温調装置11を覆っており、このような右側と左側に延在する座部表面域5b部分の装置内側には、骨格部材25が当接している。これら各部材は、好適には接着剤で相互に結合させることができる。
【0017】
排気ダクト17
排気ダクト17は、その全体が外壁36によって形成されており、更に詳しくは、図中左側端部内にファン6を設け、ファン6から表面域離間方向に、このファン6によって温調装置11の系外から空気を吸入しうるような、吸入口18を設けている。また、ファン6から温調装置11内方に第2熱交換体部位15を設け、図中右側端部に排出口19を設けている。なお、ファンとして、シロッコファン、ターボファンを用いることができるが、シロッコファンの使用が好適である。なおまた、外壁36は、断熱性で空気遮断性の材料で形成されることが好適である。このような材料として、前記したようなエンジニアリングプラスチックを例示でき、ポリプロピレンポリエチレンコポリマーが好適である。
【0018】
熱交換体12
熱交換体12では、前記したように、第2熱交換部位15を排気ダクト17内に配置させると共に、第1熱交換部位13を内気循環ダクト16内に配置させ、これら熱交換部位の間に熱交換本体(ペルチェ素子)14を挿入するように構成される。このペルチェ素子14は、外壁36によって包囲されている。
【0019】
内気循環ダクト16
まず、排気ダクト17に沿って形成されている、内気循環ダクト16aを含む内気循環ダクト16の一部について説明する。この内気循環ダクト16の一部は、ヒトが着座する座部表面域5b部分(以下、単に、表面域5b着座部分)から離間した位置において、存在し、好適には、この表面域5b着座部分と平行状態で形成され、当該ダクト16内において、第1熱交換部位13を配置しており、また、ファン6を、図中左側端部において当該ダクト16の空気を吸引して第1熱交換体13に供給しうるように設けている。この部分の内気循環ダクト16は、好適には断熱性で空気遮断性の外壁36から形成することができる。
さらに、内気循環ダクト16内のファン6から、表面域5b着座部分に近接する方向(以下、「表面域近接方向」という。)(好適には表面域5b着座部分に対し垂直方向)に当該ファン6と連通するように、内気循環ダクト16を内気循環ダクト16eまで延在させている。同様に、第1熱交換部位13の図中右側に位置する図中右側端部から、表面域近接方向(好適には表面域5b着座部分に対し垂直方向)に当該図中右側端部と連通するように、内気循環ダクト16を内気循環ダクト16bまで延在させている。この部分の内気循環ダクト16は、前記と同様に、好適には断熱性で空気遮断性の外壁36から形成することができる。
最後に、内気循環ダクト16b〜16eを含む内気循環ダクト16の他の部分について、説明する。この内気循環ダクト16の他の部分は、図4および図2に示すように、表面域5b着座部分から近接した位置において、当該座部表面域5b部分に沿って形成されている。この内気循環ダクト16の他の部分は、好適には、表面域5b着座部分と平行状態で、断熱性部材23を掘削して形成されている(図4、参照)。孔形態の内気循環ダクト16bは、座部後方から座部前方(図2の裏面側から図2の表面側)に溝形態で延在し、図4に示すように、ジャバラ状に、溝形態の内気循環ダクト16cおよび内気循環ダクトdを介して延在し、最後に、座部前方から座部後方(図2の表面側から図2の裏面側)に孔形態の内気循環ダクト16eまで延在する。この内気循環ダクト16の他の部分は、以下に説明するようなシール部材21/保持部材22/断熱性部材23から形成することができる。
したがって、前記したように、図2に示した内気循環ダクト16は、表面域5b着座部分と略平行な2本のダクト部分(座部表面域・近接ダクト部分および座部表面域・離間ダクト部分)と、これら2本のダクト部分を相互に連結する表面域5b着座部分と略垂直な2本のダクト部分から構成され、座部表面域・近接ダクト部分を除き、ダクト本体36から形成される。他方、座部表面域・近接ダクト部分は、断熱性部材23と、シール部材21aと、保持部材22と、座部表面域5とから形成することができる。
【0020】
シール部材21/保持部材22/断熱性部材23/ホール24/骨格部材25
表面域5b着座部分に対し、その表面域離間方向に保持部材22を当接させ、この保持部材22は、多数のホール24を有する(図3、参照)。同様に、保持部材22に対し、表面域離間方向に断熱性部材23を当接させ、この断熱性部材23には、前記したように、孔形態の内気循環ダクト16bと、溝形態の内気循環ダクト16cと、溝形態の内気循環ダクト16dと、孔形態の内気循環ダクト16eとを形成している(図4、参照)。また、断熱性部材23に設けた孔形態の内気循環ダクト16bおよび16eと、保持部材22との間に、各々シール部材21aおよび21bを設けている。なお、シール部材21の寸法は、好適には内気循環ダクト16bおよび16eの径方向断面積よりも大きな寸法を有する。
保持部材22に形成した各ホール24(ホール24’も含む)は、断熱性部材23に形成された溝形態/孔形態の内気循環ダクト16b〜16eと整合するように形成され(図2〜図4、参照)、例えば、図2に示すように、ホール24dと内気循環ダクト16dとは連通している。その結果、内気循環ダクト16b〜16e内の熱交換済み空気は、各ホール24を通って表面域5a着座部分と効果的に熱交換でき、これにより表面域5a着座部分を効果的に冷却/加温することができる。なお、ホール24の径方向断面は、いずれの形態であってもよい。
ホール24は、2つの群に分けられ、座部後方領域の3つのホール24’からなる群と、3つのホール24’以外の図中中央一点鎖線の両側に位置する各々7つのホールからなる群とに分類される。前者の群は、座部に着座するヒトの臀部に対応し、後者の群は、このようなヒトの大腿部に対応する。このように、多数のホールを設け、かつホールを、着座するヒトが座部に接触する部位に適切に対応させて設けることにより、均一な熱交換(冷却/加温)を促進することができる。
またシール部材21は、孔形態の内気循環ダクト16bおよび16eに対応する位置に設けることによって、これらの孔を補強し、これにより、ヒトが座部に着座した際に、座部が変形することを防止することができる。さらに、シール部材21aが断熱性を有すれば、第1熱交換部位13から熱風/冷風を内気循環ダクト16bに供給した際に、保持部材22の熱変形を防止できると共に、座席表面域5bの部分的な極度の温度上昇/温度低下を防止することができる。
また、断熱性部材23は、断熱性の他に、弾力性を有することが好適であり、骨格部材25は、保持作用の他に、断熱性を有することが好適である。
【0021】
本発明の座席用温調装置11の作用
本発明の座席用温調装置11は、次のようにして作用することができる。
まず、制御部(図示せず)によって、熱交換体(ペルチェ素子)12を作動させると共に、ファン6を作動させる。図2に示すように、排気ダクト17のファン6の作動によって、系外の空気を、吸引して第2熱交換部位(ヒートシンク)に供給し、熱交換した空気を排気ダクト17の系外に排気させると同時に、内気循環ダクト16のファン6の作動によって内気循環ダクト16内の空気は、次のように流動する。
内気循環ダクト16内の空気は、ダクト16aを介して、第1熱交換部位13に達し、ここで熱交換し、次いで熱交換した空気は、内気循環ダクト16内を上昇して、ダクト16bに達し(以上、図2、参照)、次いで、図4に示すように、内気循環ダクト16b〜16e内を流動し、この流動の間に、ダクト16内の空気と、表面域5b着座部分とが熱交換し、これにより、表面域5b着座部分を冷却/加温することができる。その後、熱交換した空気は、ダクト16eからファン6に流動して、再度、内気循環ダクト16内を循環することができる。
好適な態様では、内気循環ダクト16b〜16eを形成する断熱性部材23は、断熱性を示す一方保持部材22が伝熱性を示すため、これらダクト内の空気は、部材23に実質的に伝熱せずに、保持部材22に実質的に全ての熱を伝熱させ、これにより、保持部材22に伝熱された熱を実質的に全て表面域5b着座部分に伝熱させることができる。これにより、熱交換の効率改善を促進することができる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1:座部の加温
図2〜図4に示した座部用温調装置11を用い、ペルチェ素子14の第1熱交換部位13側を発熱させ、空気熱媒体を内気循環ダクト内で循環させた。なお、座部表面域5bとしてポリエステル製シートを用い、保持部材22としてポリウレタンフォームを用い、断熱性部材23として同様にポリウレタンフォームを用い、シール部材21としてポリエチレンテレフタレート製シートを用い、骨格部材25として鉄製フレームを用い、外壁36としてポリプロピレンポリエチレンコポリマー製シートを用い、熱交換本体14としてペルチェ素子〔TEC1-12708、有限会社日本テクモ、寸法40 mm×40 mm×3.4 mm〕を用い、ファン6としてシロッコファン〔DC遠心ブロアE1540H12B7AZ-00、日本サーボ(株)〕を用いた。
室温18.0℃で、ペルチェ素子(6 V×2 A)を作動させ、一定の風量(シロッコファン、6 V)で実験した。時間の経過と共に、熱電対を用いて、座部表面域の臀部(図3のP1)の温度を測定した。経過時間1分、5分および10分における、座部表面域の温度を以下の表1にまとめた。
また、経過時間1分後での座部表面域・大腿部最先端部(図3のP2)の温度を測定し、その結果を、経過時間1分後の座部表面域の臀部(図3のP1)の温度と共に表2に示した。
【0023】
実施例2:座部の冷却
実施例1と同様な装置および同様な方法を用いて実験した。
ただし、ペルチェ素子14の第1熱交換部位13側の発熱に代えて、第1熱交換部位13側を吸熱させ、また、実施例1の測定部分である臀部(図3のP1)に代えて、大腿部最先端(図3のP2)を測定し、また、室内温度は、38.0℃である
得られた結果を、実施例1と同様に、表1に示した。
また、経過時間1分後での座部表面域の臀部(図3のP1)の温度を測定し、その結果を、経過時間1分後の座部表面域・大腿部最先端部(図3のP2)の温度と共に表2に示した。
【0024】
比較例1:座部の加温
実施例1と同様な装置および同様な方法を用いて実験した。
ただし、内気循環ダクトを用いずに、空気を、循環させずに単に、座部表面域に放出させるような構成を用いた。
得られた結果を、実施例1と同様に、表1および表2に示した。
【0025】
比較例2:座部の冷却
実施例2と同様な装置および同様な方法を用いて実験した。
ただし、内気循環ダクトを用いずに、空気を、循環させずに単に、座部表面域に放出させるような構成を用いた。
得られた結果を、実施例2と同様に、表1および表2に示した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
評価
表1から明らかなように、いずれの経過時間でも、本発明の内気循環型温調装置は、従来技術(非循環型温調装置)に比し、加温/冷却能力に優れており、熱交換効率の改善が証明された。さらに、表2から明らかなように、加温/冷却するいずれの場合も、本発明の内気循環型装置は、非循環型温調装置に比し、温度の均一化に優れており、均一な温調効果の改善が証明された。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の座席用温調装置は、車両用の座席(例えば、車椅子の座席、乗用車の座席など)、ソファ、ソファベッド、ベッドなどに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の座席用温調装置11を座席内に組み込んだ座席を示す、斜視図
【図2】図1に示した本発明の座部用温調装置11を線A-A’に沿って切欠した垂直断面図
【図3】図2に示した本発明の座部用温調装置11から、表面域5bを取り除いて上方から見た平面図
【図4】図2に示した本発明の座部用温調装置11から、表面域5b/シール部材21/保持部材22を取り除いて上方から見た平面図
【符号の説明】
【0031】
1:座席、2:背もたれ部、3:座部、5:表面域、6:ファン、11:座席用温調装置、12:熱交換体、13:第1熱交換部位、14:熱交換本体、15:第2熱交換部位、16:内気循環ダクト、17:排気ダクト、18:吸入口、19:排出口、21:シール部材、22:保持部材、23:断熱性部材、24:ホール、25:骨格部材、36:外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の内部に収納される座席用温調装置であって、
第1熱交換部位と第2熱交換部位との間に熱交換本体を設けた熱交換体と、
前記座席の表面域に少なくとも一部が直接または間接的に当接する内気循環ダクトであって、前記第1熱交換部位を当該ダクト内に配置した内気循環ダクトと、
前記第2熱交換部位を内部に配置した排気用ダクトとを備え、
前記内気循環ダクト内の空気を、前記第1熱交換部位に供給し、熱交換した空気を前記内気循環ダクト内を循環させると共に、当該温調装置の外部から前記排気用ダクト内に吸入した空気を前記第2熱交換部位に供給し、熱交換した空気を当該排気用ダクトから排出させるように構成されていることを特徴とする温調装置。
【請求項2】
前記熱交換体は、ペルチェ素子である請求項1記載の温調装置。
【請求項3】
前記座席は、車椅子の座部である請求項1記載の温調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−15852(P2006−15852A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195225(P2004−195225)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(593122789)ユーテック株式会社 (118)
【Fターム(参考)】