説明

内燃機関の制御装置

【課題】この発明は、排気バルブのポンプアップを防止し、バルブの駆動を円滑に行うことを目的とする。
【解決手段】排気マニホールド22の分岐通路24には、排気制御弁32及び弁アクチュエータ34をそれぞれ設ける。ECU80は、エンジン10の排気圧と、排気バルブ54が閉弁している気筒(対象気筒)の筒内圧とを検出し、排気圧から筒内圧を減算した値を当該気筒の指標として算出する。そして、この指標がポンプアップを誘発または促進し易い所定値以上となった場合には、対象気筒の弁アクチュエータ34を駆動して排気制御弁32を閉弁する。これにより、他気筒の排気圧が対象気筒の排気バルブ54に対して開弁方向に作用するのを抑制し、ポンプアップを確実に解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に、排気マニホールドの分岐部にそれぞれバイパス通路を設けた内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1(特開2007−56848号公報)に開示されているように、排気マニホールドの分岐部(ブランチ)にそれぞれバイパス通路を設けた内燃機関の制御装置が知られている。従来技術では、排気マニホールドの個々の分岐部にそれぞれバイパス通路を接続し、各バイパス通路の下流側を排気マニホールドの合流部よりも下流側に接続する構成としている。
【0003】
また、各バイパス通路には、排気マニホールドの分岐部とバイパス通路との間を開,閉する電磁式の開閉弁をそれぞれ設けている。そして、従来技術では、何れかの気筒でラッシュアジャスタのポンプアップ等により排気バルブが不完全開弁状態となった場合に、各気筒の開閉弁を開弁し、排気マニホールド内の排気圧をバイパス通路から逃がす構成としている。これにより、従来技術では、不完全開弁状態となった排気バルブに対して、他の気筒の排気圧が作用するのを抑制し、ポンプアップを解消するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−56848号公報
【特許文献2】特開平10−89108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術では、何れかの気筒で排気バルブが不完全開弁状態となった場合に、排気マニホールド内の排気圧をバイパス通路から逃がすことで、ポンプアップを解消するようにしている。しかしながら、従来技術の制御を実施しても、排気マニホールドの合流部で排気圧の反射波が生じ、この反射波が不完全開弁状態となった排気バルブに作用するので、ポンプアップを完全に解消するのが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、排気バルブが不完全開弁状態となっても、ポンプアップを確実に解消することができ、バルブの駆動を円滑に行うことが可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、内燃機関の複数気筒にそれぞれ接続されて各気筒の排気ガスを個別に排出する複数の分岐通路を有し、これらの分岐通路が下流側で合流した排気通路と、
前記各気筒の分岐通路にそれぞれ設けられ、前記各分岐通路を個別に開,閉することが可能な複数の排気制御弁と、
個々の気筒で排気バルブが閉弁しているときに、排気圧に対応するパラメータを当該気筒の指標として気筒毎に取得する指標取得手段と、
何れかの気筒において、前記指標がポンプアップを誘発または促進し易い所定値以上となった場合に、前記排気制御弁を閉弁する弁制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、個々の気筒で前記排気バルブの閉弁中に筒内圧を検出する筒内圧検出手段を備え、前記指標取得手段は、前記排気圧から前記筒内圧を減算した差分を前記指標として算出する構成としている。
【0009】
第3の発明は、コンプレッサにより吸入空気を過給する過給機と、
前記コンプレッサの下流側で吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、を備え、
前記指標算出手段は、前記排気圧から前記吸気圧を減算した差分を前記指標として算出する構成としている。
【0010】
第4の発明によると、前記弁制御手段は、任意の気筒である対象気筒の排気制御弁を、当該対象気筒の排気バルブと一緒に開弁させ、当該対象気筒の次に排気行程を迎える次気筒の排気バルブが最大開度となるときに閉弁させる構成としている。
【0011】
第5の発明によると、前記弁制御手段は、前記対象気筒の排気制御弁を、前記次気筒以降に排気行程を迎える各気筒の排気バルブが開弁する毎に開弁させ、当該排気バルブが最大開度となる毎に閉弁させる構成としている。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、他気筒の排気圧が所定値以上となった場合には、この排気圧が対象気筒の排気バルブに対して開弁方向に作用するので、対象気筒でポンプアップが生じ易い。そこで、この場合には、対象気筒の排気制御弁を閉弁し、他気筒の排気圧が対象気筒の排気バルブに作用するのを抑制することができる。即ち、排気制御弁により他気筒の排気圧を遮断することができるので、排気通路中で排気圧の反射波が生じたり、排気バルブが不完全開弁状態となった場合でも、ポンプアップを確実に解消することができ、バルブの駆動を円滑に行うことができる。
【0013】
第2の発明によれば、対象気筒の排気バルブには、他気筒の排気圧が開弁方向に作用すると共に、自気筒の筒内圧が閉弁方向に作用する。従って、排気圧から筒内圧を減算することにより、ポンプアップの要因となる開弁方向の圧力だけを指標として取得することができ、ポンプアップの発生し易さをより正確に判定することができる。
【0014】
第3の発明によれば、対象気筒の排気バルブには、他気筒の排気圧が開弁方向に作用すると共に、吸気圧が閉弁方向に作用する。特に、過給機が作動している場合に、対象気筒の排気バルブには、過給機により過給された吸気圧(過給圧)が閉弁方向に作用する。従って、排気圧から吸気圧を減算することにより、ポンプアップの要因となる開弁方向の圧力だけを指標として取得することができ、ポンプアップの発生し易さをより正確に判定することができる。
【0015】
第4の発明によれば、まず、個々の気筒(対象気筒)の排気行程では、排気バルブと共に排気制御弁を開弁させることができ、排気を円滑に行うことができる。また、次気筒の排気バルブの開度が最大開度となるタイミング、即ち、次気筒で発生する排気圧が増加するタイミングで対象気筒の排気制御弁を閉弁することができる。このため、対象気筒の排気バルブにサージングが残っていたとしても、この排気バルブに対して、次気筒で発生した排気圧が作用するのを回避することができる。従って、任意の気筒の排気バルブに対して、自らのサージングと次気筒の排気圧とが相乗的に作用するのを防止することができ、ポンプアップをより安定的に抑制することができる。
【0016】
第5の発明によれば、他の各気筒から対象気筒に作用する排気圧の状態に応じて、排気制御弁を的確なタイミングで開,閉させることができ、その開閉タイミングを小まめに設定することができる。これにより、排気通路内の圧力変化に対して応答性よく対応することができ、排気制御弁の制御をより高精度に行うことができる。また、排気制御弁として、例えば常閉の弁機構を用いた場合には、通電を小まめに停止することができるので、その消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。
【図2】エンジンの1気筒を破断して示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。
【図4】本実施の形態2において、排気バルブ及び排気制御弁の開閉タイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本実施の形態3において、排気バルブ及び排気制御弁の開閉タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
以下、図1乃至図3を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図である。この図に示すように、本実施の形態のシステムは、内燃機関として、例えばL型の4気筒エンジンからなるエンジン10を備えている。エンジン10は、各気筒に吸入空気を吸込む吸気通路12を備えており、吸気通路12の下流側は、複数の通路に分岐して各気筒の吸気ポート44(後述の図2)に接続された吸気マニホールド14により構成されている。また、吸気通路12には、吸入空気量を調整する電子制御式のスロットルバルブ16と、吸入空気を冷却するインタークーラ18とが設けられている。
【0019】
また、エンジン10は、各気筒の排気ガスを排出する排気通路20を備えており、排気通路20の上流側は、排気マニホールド22により構成されている。排気マニホールド22は、上流側が複数の分岐通路24に分岐して形成され、これらの分岐通路24は、後述する各気筒の排気ポート46にそれぞれ接続されている。排気マニホールド22の下流側には、各分岐通路24が合流した合流部26が設けられている。また、排気通路20の下流側には、排気ガスを浄化する触媒28が設けられている。一方、吸気通路12と排気通路20との間には、公知の過給機(ターボチャージャ)30が設けられている。過給機30は、排気通路20に設けられたタービンと、吸気通路12に設けられたコンプレッサとを有している。そして、過給機30は、タービンが排気圧を受けてコンプレッサを駆動し、コンプレッサにより吸入空気を過給する。
【0020】
また、エンジン10は、排気マニホールド22の各分岐通路24を個別に開,閉する複数の排気制御弁32と、各排気制御弁32を個別に駆動する弁アクチュエータ34とを備えている。排気制御弁32は、例えばバタフライ弁等により構成され、各分岐通路24にそれぞれ配置されている。個々の気筒の排気制御弁32は、少なくとも当該気筒の排気行程では開弁するように構成されている。また、弁アクチュエータ34は、排気制御弁32を全開位置及び全閉位置に駆動するもので、排気制御弁32及び弁アクチュエータ34を弁システムは、例えばエンジンの1サイクル中に複数回の開閉動作が可能な高速作動型のシステムにより構成されている。
【0021】
次に、図2を参照して、各気筒の構造について説明する。図2は、エンジンの1気筒を破断して示す断面図である。この図に示すように、エンジン10の各気筒は、ピストン40により形成された燃焼室42と、燃焼室42に開口する吸気ポート44及び排気ポート46とを備えている。また、各気筒は、吸気ポート44に燃料を噴射する燃料噴射弁48と、混合気に点火する点火プラグ50と、吸気ポート44を燃焼室42内(筒内)に対して開,閉する吸気バルブ52と、排気ポート46を筒内に対して開,閉する排気バルブ54とを備えている吸気バルブ52と排気バルブ54とは、エンジンによりクランクシャフト及びカムシャフトを介して駆動され、各気筒で吸気行程、爆発・膨張行程及び排気行程が順次到来するときに、これらの行程に対して所定のタイミングで開,閉する。
【0022】
次に、図1及び図2を参照して、システムの制御系統について説明する。本実施の形態のシステムは、後述のセンサ60〜70を含むセンサ系統と、エンジン10の運転制御を行うECU(Engine Control Unit)80とを備えている。まず、センサ系統について説明すると、クランク角センサ60は、クランクシャフトの回転に同期した信号を出力し、カム角センサ62は、カムシャフトの回転に同期した信号を出力し、エアフローセンサ64は、吸入空気量を検出するものである。
【0023】
筒内圧センサ66は、各気筒の筒内圧を個別に検出するもので、各気筒にそれぞれ設けられている(1個のみ図示)。吸気圧センサ68は、過給機30のコンプレッサの下流側で吸気圧(過給圧)を検出する。また、排気圧センサ70は、エンジンの排気圧を検出するもので、例えば排気マニホールド22の合流部26に配置されている。センサ系統には、この他にもエンジンや車両の運転に必要な各種のセンサが含まれている。なお、筒内圧センサ66及び吸気圧センサ68は、それぞれ、本実施の形態の筒内圧検出手段及び吸気圧検出手段を構成している。
【0024】
ECU80は、図2に示すように、演算処理装置(CPU)82と、ROM、RAM等を含む記憶回路84と、入力ポート86と、出力ポート88とを備えている。入力ポート86には、上記センサ系統の各センサがA/D変換回路等を介して接続されている。出力ポート88には、スロットルバルブ16、弁アクチュエータ34、燃料噴射弁48、点火プラグ50等を含む各種のアクチュエータが接続されている。
【0025】
そして、ECU80は、センサ系統により検出したエンジンの運転情報に基いて各アクチュエータを駆動し、運転制御を行う。具体的には、クランク角センサ60の出力に基いてエンジン回転数とクランク角とを検出し、エアフローセンサ64により吸入空気量を検出する。また、エンジン回転数と吸入空気量とに基いて機関負荷を算出し、吸入空気量、機関負荷等に基いて燃料噴射量を算出すると共に、クランク角に基いて燃料噴射時期及び点火時期を決定する。そして、燃料噴射時期が到来した時点で燃料噴射弁48を駆動し、点火時期が到来した時点で点火プラグ50を駆動する。これにより、各気筒の燃焼室42内で混合気を燃焼させ、エンジンを運転することができる。
【0026】
[実施の形態1の特徴]
個々の気筒において、排気バルブ54は、基本的に排気カムシャフトの回転角(排気カムのプロフィール)に応じて開,閉する。しかし、エンジンの運転状態や他気筒の排気圧、バルブ駆動系統の経時変化等の影響によっては、本来閉弁すべき期間(カムのベース円期間)でも、排気バルブ54が僅かに開弁することがある。具体例を挙げると、例えば排気ブレーキの動作時や背圧脈動の発生時、エンジンの高回転時等には、所謂バルブジャンプやバルブサージングが発生し、ベース円期間中でも排気バルブが開弁する場合がある。
【0027】
そして、排気バルブがベース円期間中に開弁すると、排気バルブのステムエンドとロッカーアームとの間に隙間が生じ、この隙間を埋めるためにラッシュアジャスタのプランジャスプリングが伸張する。この結果、プランジャ及びプッシュロッドが押し上げられ、圧力室の膨張(減圧)が生じる。これにより、チェックバルブが開弁し、リザーバ室から圧力室にオイルが流入するので、ラッシュアジャスタは、プランジャが押し上げられて余分に伸張した状態となり、所謂ポンプアップが発生する。
【0028】
このように、ポンプアップが生じると、ラッシュアジャスタは、余分に伸張した位置で排気バルブの新たな閉弁位置として機能するので、排気バルブは、カムのベース円期間中でも半開きの状態となり、作動不良となる。エンジンの運転中には、上述したようにポンプアップが発生し易い状況の気筒において、他気筒の排気圧が排気バルブに対して開弁方向に作用すると、ポンプアップが誘発または促進される。
【0029】
そこで、本実施の形態では、個々の気筒において、以下の指標(1)〜(3)に基いてポンプアップが生じ易いか否かを判定し、ポンプアップが生じ易いと判断された気筒では、当該気筒の排気制御弁32を閉弁する構成としている。なお、本実施の形態では、例えば3つの指標(1)〜(3)を用いる場合を例示したが、本発明は、これら全ての指標に基いて排気制御弁32を制御する必要はない。即ち、指標(1)〜(3)のうち、何れか1つまたは2つに基いて制御を実行する構成としてもよい。
【0030】
(1)排気圧
ECU80は、個々の気筒で排気バルブ54が閉弁しているとき、即ち、当該気筒の排気カムのベース円期間中に、排気圧センサ70により排気圧を指標として検出する。この検出処理は気筒毎にそれぞれ実行されるもので、検出された排気圧(指標)は、個々の気筒において、当該気筒を除いた他気筒の排気圧に対応している。そして、何れかの気筒(対象気筒)において、前記指標がポンプアップを誘発または促進し易い所定値以上となった場合には、対象気筒の弁アクチュエータ34を駆動して排気制御弁32を閉弁する。なお、前記所定値は、実機での計測や理論計算等により予め決定される。
【0031】
他気筒の排気圧が前記所定値以上となった場合には、この排気圧が対象気筒の排気バルブ54に対して開弁方向に作用するので、対象気筒でポンプアップが生じ易い。そこで、この場合には、対象気筒の排気制御弁32を閉弁し、他気筒の排気圧が対象気筒の排気バルブ54に作用するのを抑制する。この結果、他気筒の排気圧によりポンプアップが生じるのを防止することができる。
【0032】
(2)排気圧から筒内圧を減算した差分
ECU80は、個々の気筒で排気バルブ54が閉弁しているときに、排気圧センサ70により排気圧を検出し、筒内圧センサ66により当該気筒の筒内圧を検出する。続いて、前記排気圧から前記筒内圧を減算した差分を個々の気筒の指標として算出する。そして、何れかの気筒(対象気筒)において、前記指標がポンプアップを誘発または促進し易い所定値以上となった場合には、対象気筒の排気制御弁32を閉弁する。
【0033】
対象気筒の排気バルブ54には、他気筒の排気圧が開弁方向に作用すると共に、自気筒の筒内圧が閉弁方向に作用する。従って、排気圧から筒内圧を減算することにより、ポンプアップの要因となる開弁方向の圧力だけを指標として取得することができ、ポンプアップの発生し易さをより正確に判定することができる。
【0034】
(3)排気圧から吸気圧を減算した差分
ECU80は、個々の気筒で排気バルブ54が閉弁しているときに、排気圧センサ70により排気圧を検出し、吸気圧センサ68により吸気圧を検出する。そして、前記排気圧から前記吸気圧を減算した差分を個々の気筒の指標として算出し、何れかの気筒(対象気筒)で前記指標がポンプアップを誘発または促進し易い所定値以上となった場合には、対象気筒の排気制御弁32を閉弁する。
【0035】
過給機30が作動している場合に、対象気筒の排気バルブ54には、過給機30により過給された吸気圧(過給圧)が閉弁方向に作用する。従って、排気圧から吸気圧を減算することにより、ポンプアップの要因となる開弁方向の圧力だけを指標として取得することができ、ポンプアップの発生し易さをより正確に判定することができる。
【0036】
各気筒の排気制御弁32は、上述のように指標(1)〜(3)を用いた判定条件に基いて、1サイクル中に複数回(例えば4気筒エンジンであれば、1サイクル中に3回)開,閉駆動される。また、何れの気筒においても、排気制御弁32は、当該気筒の排気バルブ54が開弁しているときに開弁し、筒内から排出される排気ガスを排気通路20に流出させる。なお、前記所定値は、指標(1)〜(3)の何れを用いるかによって、それぞれ異なる値に設定してもよい。
【0037】
上記構成によれば、各気筒の排気バルブ54が他気筒の排気圧により開弁しそうな場合には、排気制御弁32により他気筒の排気圧を遮断することができる。従って、排気マニホールド22の合流部26で排気圧の反射波が生じたり、排気バルブ54が不完全開弁状態となった場合でも、ポンプアップを確実に解消することができ、バルブの駆動を円滑に行うことができる。
【0038】
[実施の形態1を実現するための具体的な処理]
次に、図3を参照して、上述した制御を実現するための具体的な処理について説明する。図3は、本発明の実施の形態1において、ECUにより実行される制御のフローチャートである。この図に示すルーチンは、エンジンの運転中に繰返し実行されるものとし、各気筒の点火は、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒の順に行われるものとする。また、図3は、上記指標(2)についての処理を例示したものである。
【0039】
図3に示すルーチンでは、まず、ステップ100において、例えば#1気筒の排気カムの回転位置がベース円期間内であるか否か、即ち、#1気筒の排気バルブ54が閉弁中であるか否かを判定し、この判定が成立するまで待機する。次に、ステップ102では、排気圧センサ70により検出した排気圧を読込み、ステップ104では、筒内圧センサ66により検出した#1気筒の筒内圧を読込む。また、ステップ106では、前記排気圧から筒内圧を減算することにより#1気筒の指標を算出し、この指標が前記所定値以上であるか否かを判定する。
【0040】
そして、ステップ106の判定が成立した場合には、ステップ108において、#1気筒の排気制御弁32を閉弁する。一方、ステップ106の判定が不成立の場合には、ステップ110において、排気制御弁32を開弁状態に保持する。次に、ステップ112では、#3気筒に対して、上記ステップ100〜110と同様の処理を実行する。簡単に述べると、排気圧から#3気筒の筒内圧を減算することにより#3気筒の指標を算出し、この指標が前記所定値以上である場合に、#3気筒の排気制御弁32を閉弁する。次に、ステップ114,116では、#4気筒及び#2気筒に対しても、上記ステップ100〜110と同様の処理を実行する。
【0041】
なお、前記実施の形態1では、図3中のステップ106が請求項1,2における指標取得手段の具体例を示し、ステップ108が弁制御手段の具体例を示している。
【0042】
実施の形態2.
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1とほぼ同様の構成及び制御において、個々の気筒における排気制御弁の閉弁タイミングを次気筒の排気バルブの開度に応じて設定したことを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0043】
[実施の形態2の特徴]
図4は、本実施の形態2において、排気バルブ及び排気制御弁の開閉タイミングを示すタイミングチャートである。この図において、細い曲線は、各気筒の排気バルブ54のリフトカーブを示し、太い矩形状の直線は、各気筒の排気制御弁32の開閉状態を示している。本実施の形態では、任意の気筒である対象気筒の排気制御弁32を、当該対象気筒の排気バルブ54と一緒に開弁させ、当該対象気筒の次に排気行程を迎える次気筒の排気バルブ54が最大開度となるときに閉弁させる構成としている。この開閉処理は、例えば#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒の順番で、各気筒の排気制御弁32に対して順次実行される。
【0044】
具体例を挙げると、例えば#1気筒を対象気筒とした場合に、#1気筒の排気制御弁32は、#1気筒の排気バルブ54が開弁するとき(またはその直前)に開弁される。そして、この排気制御弁32は、次気筒である#3気筒の排気バルブ54が最大開度(最大リフト量)となるまで開弁状態に保持され、その後に閉弁される。また、#3気筒の排気制御弁32も同様に、#3気筒の排気バルブ54と一緒に開弁され、#4気筒の排気バルブ54が最大開度となるときに閉弁される。
【0045】
上記制御によれば、まず、個々の気筒(対象気筒)の排気行程では、排気バルブ54と共に排気制御弁32を開弁させることができ、排気を円滑に行うことができる。また、対象気筒の排気バルブ54にサージングが残っていたとしても、この排気バルブ54に対して、次気筒で発生した排気圧が作用するのを回避することができる。即ち、#1気筒と#3気筒を例に挙げて述べると、例えば#3気筒で発生する排気圧は、当該気筒の排気バルブ54の開度が最大開度となってから特に増加する傾向がある。これに対し、#1気筒の排気制御弁32は、#3気筒の排気バルブ54の開度が最大開度に達した時点で閉弁されるので、次気筒(#3気筒)の大きな排気圧が#1気筒の排気バルブに作用するのを防止することができる。
【0046】
上述の作用効果は、図4に示すように、#3,#4,#2気筒についても同様に得られるものである。従って、本実施の形態によれば、任意の気筒の排気バルブ54に対して、自らのサージングと次気筒の排気圧とが相乗的に作用するのを防止することができ、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果に加えて、ポンプアップをより安定的に抑制することができる。なお、前記実施の形態2では、図4に示すタイミングチャートが請求項4における弁制御手段の具体例を示している。
【0047】
実施の形態3.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態2の制御に加えて、個々の気筒の排気制御弁の開閉タイミングを、次気筒だけでなく、それ以降の気筒の排気バルブの作動状態によっても設定することを特徴としている。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0048】
[実施の形態3の特徴]
図5は、本実施の形態3において、排気バルブ及び排気制御弁の開閉タイミングを示すタイミングチャートである。図中の曲線及び直線については、実施の形態2(図4)と同様であるので、その説明を省略する。本実施の形態では、まず、実施の形態2と同様に、任意の気筒である対象気筒の排気制御弁32を、当該対象気筒の排気バルブ54と一緒に開弁させ、次気筒の排気バルブ54が最大開度となるときに閉弁させる。さらに、本実施の形態では、対象気筒の排気制御弁32を、次気筒以降に排気行程を迎える各気筒の排気バルブ54が開弁する毎に開弁させ、当該排気バルブ54が最大開度となる毎に閉弁させる構成としている。この開閉処理は、実施の形態2と同様に、各気筒の排気制御弁32に対して順次実行される。
【0049】
具体例を挙げると、例えば#1気筒を対象気筒とした場合に、#1気筒の排気制御弁32は、#1気筒の排気バルブ54と一緒に開弁され、#3気筒の排気バルブ54が最大開度となるときに閉弁される。次に、#1気筒の排気制御弁32は、#4気筒の排気バルブ54と一緒に開弁され、この排気バルブ54が最大開度となるときに閉弁される。さらに、#1気筒の排気制御弁32は、#2気筒の排気バルブ54と一緒に開弁され、この排気バルブ54が最大開度となるときに閉弁される。このように、各気筒の排気制御弁32は、エンジンの1サイクル中に複数回(例えば4気筒エンジンであれば、1サイクル中に3回)開,閉駆動される。
【0050】
上記制御によれば、実施の形態2の作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。即ち、他の各気筒から対象気筒に作用する排気圧の状態に応じて、排気制御弁32を的確なタイミングで開,閉させることができ、その開閉タイミングを小まめに設定することができる。これにより、排気通路20内の圧力変化に対して応答性よく対応することができ、排気制御弁32の制御をより高精度に行うことができる。また、排気制御弁32として、例えば弁アクチュエータ34に通電することで開弁する常閉の弁機構を用いた場合には、通電を小まめに停止することができるので、弁アクチュエータ34の消費電力を低減することができる。
【0051】
なお、前記実施の形態3では、図5に示すタイミングチャートが請求項5における弁制御手段の具体例を示している。また、前記実施の形態1〜3では、それぞれ個別の構成を例示したが、本発明は、これらの実施形態を組み合わせた構成も含むものである。即ち、本発明では、例えば実施の形態1,2を組み合わせたり、実施の形態1,3を組み合わせる構成としてもよい。
【0052】
また、実施の形態では、図1に示すように、過給機30を搭載したシステムを例示した。しかし、本発明はこれに限らず、過給機を搭載していない内燃機関にも適用することができる。また、本発明は、スーパーチャージャ等を含む機械式の過給機を搭載した内燃機関に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 エンジン
12 吸気通路
14 吸気マニホールド
16 スロットルバルブ
18 インタークーラ
20 排気通路
22 排気マニホールド
24 分岐通路
26 合流部
28 触媒
30 過給機
32 排気制御弁
34 弁アクチュエータ
40 ピストン
42 燃焼室
44 吸気ポート
46 排気ポート
48 燃料噴射弁
50 点火プラグ
52 吸気バルブ
54 排気バルブ
60 クランク角センサ
62 カム角センサ
64 エアフローセンサ
66 筒内圧センサ(筒内圧検出手段)
68 吸気圧センサ(吸気圧検出手段)
70 排気圧センサ
80 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の複数気筒にそれぞれ接続されて各気筒の排気ガスを個別に排出する複数の分岐通路を有し、これらの分岐通路が下流側で合流した排気通路と、
前記各気筒の分岐通路にそれぞれ設けられ、前記各分岐通路を個別に開,閉することが可能な複数の排気制御弁と、
個々の気筒で排気バルブが閉弁しているときに、排気圧に対応するパラメータを当該気筒の指標として気筒毎に取得する指標取得手段と、
何れかの気筒において、前記指標がポンプアップを誘発または促進し易い所定値以上となった場合に、前記排気制御弁を閉弁する弁制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
個々の気筒で前記排気バルブの閉弁中に筒内圧を検出する筒内圧検出手段を備え、
前記指標取得手段は、前記排気圧から前記筒内圧を減算した差分を前記指標として算出する構成としてなる請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
コンプレッサにより吸入空気を過給する過給機と、
前記コンプレッサの下流側で吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、を備え、
前記指標算出手段は、前記排気圧から前記吸気圧を減算した差分を前記指標として算出する構成としてなる請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記弁制御手段は、任意の気筒である対象気筒の排気制御弁を、当該対象気筒の排気バルブと一緒に開弁させ、当該対象気筒の次に排気行程を迎える次気筒の排気バルブが最大開度となるときに閉弁させる構成としてなる請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記弁制御手段は、前記対象気筒の排気制御弁を、前記次気筒以降に排気行程を迎える各気筒の排気バルブが開弁する毎に開弁させ、当該排気バルブが最大開度となる毎に閉弁させる構成としてなる請求項4に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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