内燃機関の排気浄化装置
【目的】パティキュレートフィルタの異常の有無を判断するための、電気抵抗式の排出微
粒子センサを用いた新規な手法を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジンEの排気管2にシングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置1を設ける。マイクロ波電源3から発振されるマイクロ波の伝送路4との接続部より下流に、可変スリット14と可変反射板15間に形成される共振部5を配置して、DPF52を収容し、堆積するPMをマイクロ波加熱によって燃焼除去する。
粒子センサを用いた新規な手法を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジンEの排気管2にシングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置1を設ける。マイクロ波電源3から発振されるマイクロ波の伝送路4との接続部より下流に、可変スリット14と可変反射板15間に形成される共振部5を配置して、DPF52を収容し、堆積するPMをマイクロ波加熱によって燃焼除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内燃機関から排出される微粒子状物質をパティキュレートフィルタに捕集し、シングルモードによるマイクロ波加熱装置を用いて、微粒子状物質を加熱燃焼させることによりパティキュレートフィルタを再生する排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用ディーゼルエンジン等において、排出ガスに含まれる環境汚染物質、特に炭素微粒子(Soot)および可溶性有機成分(SOF)を主体とする微粒子状物質(Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、適宜DPFと称する)を設置することが行われている。DPFは、一般に、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に排出ガスを通過させてPMを捕捉する。
【0003】
DPFは、PM捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて負圧が増大し、PMのすり抜けが生じるおそれがある。このため、例えばDPFの前後差圧からPM捕集量を推定し、適切な時期に再生処理を行って捕集能力を回復させる必要がある。再生処理方法としては、例えば、電気ヒータやバーナーによる加熱、あるいはポスト噴射や排気絞り等による排気温度の上昇等が知られており、DPFをPMが着火可能な温度以上に昇温することによって、PMを燃焼除去している。
【0004】
一方、シングルモードのマイクロ波エネルギを用いた加熱装置を、排ガス等の流体加熱や触媒加熱に利用することが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。特許文献1には、セラミック担体にSiC系複合酸化物を含むマイクロ波吸収体を担持させて発熱体とし、これを直方体型空洞共振器内に収容して、単一モードのマイクロ波を照射し、マイクロ波吸収体を急速加熱するマイクロ波加熱装置が開示されている。セラミック担体を保持する加熱管は、排気管の一部をなしており、排気管が直方体型空洞共振器内を貫通する構成とすることで、セラミック担体およびその内部を通過する排気を加熱する。
【0005】
特許文献2には、排ガス流路の途中に、円筒形のマイクロ波空洞共振器を設けて、その内部にマイクロ波加熱触媒を配置し、空洞共振器とマイクロ波を伝送する導波経路を接続した排ガス浄化装置が開示されている。マイクロ波加熱触媒は、ハニカム体にマイクロ波吸収層をコーティングし、三元触媒を担持させたもので、通過する排気ガスを無害化する。また、特許文献3には、排ガスが通過する円筒形のマイクロ波共振空洞管を設け、この内部に排ガスが透過可能な触媒担持体を配置して、共振空洞管内の軸と垂直方向にマイクロ波導入アンテナを突出させた排ガス浄化装置が開示されている。触媒担持体は、排ガス浄化用の触媒を担持したハニカムケースで、ハニカムケースの内径や、共振空洞管の両端に位置する反射金網とアンテナの位置を選択することによって、空洞内に所定モードのマイクロ波を励起させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−140063号公報
【特許文献2】特開平7−127436号公報
【特許文献3】特開2000−104538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、このようなマイクロ波空洞共振器を、DPFの再生手段として利用することを検討した。しかしながら、マイクロ波の共振モードを起こすための要素として、共振器状態(インピーダンス)が所定の値になる必要があり、特許文献2、3のように排ガスが流通する条件下において、所定の共振状態を実現し維持することは難しい。このため、特許文献1の装置は、マイクロ波空洞共振器を、DPFが収容される排気管の一部のみを含む構成とし、排気管内の空間とは独立に設けている。
【0008】
図13(a)は、特許文献1の装置の概略構成図であり、直方体形状のマイクロ波空洞共振器101を貫通して、図の上下方向に排気管102が貫通し、マイクロ波空洞共振器101の内部となる部分に発熱体100が位置している。また、マイクロ波空洞共振器101は、マイクロ波の導入口103を可変とするとともに、スライド可能な可動短絡部材104を設けて、空洞の大きさを調整できるようにしている。発熱体100は、ハニカム構造のセラミック担体105内表面にマイクロ波吸収体を担持させて構成される。
【0009】
ところが、特許文献1の装置は、排気管102がマイクロ波空洞共振器100と直交しているためエネルギ集中領域が限られ、対象加熱領域が狭い。また、発熱体100内の排気流通方向と、マイクロ波の入射方向が直交しているため、発熱体100には、導入口103に近い側面から直交してマイクロ波が入ることになる。この場合、発熱体100の加熱分布が歪み、加熱ムラが生じることが予測される。これは、図13(b)に示すように、電界分布を、中心部の強度が高い周辺部へ向けて弱くなる均一分布となるように調整したとしても、発熱体100は、導入口103に近い側面が先に加熱されるために、電界が集中する中心部に次いで高い温度となり、反対側の側面の温度が低い、歪んだ温度分布となるからで、排ガス処理効果が小さくなるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パティキュレートフィルタに捕集した微粒子状物質を、シングルモードによるマイクロ波加熱装置を用いて効果的に加熱燃焼させ、パティキュレートフィルタを再生する排気浄化装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、
内燃機関の排気通路に排出される炭素微粒子を含む微粒子状物質を、シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置によって燃焼除去する排気浄化装置であって、
上記シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置は、
マイクロ波発生部と、
マイクロ波発生部から発振されるマイクロ波を上記排気通路内へ伝送するためのマイクロ波伝送部と、
上記排気通路内において、上記マイクロ波伝送部との接続部よりも下流側に設けられる定在波発生空間とを備え、
上記定在波発生空間は、一端側にマイクロ波ととともに排気を通過させる導入口を有し、他端側にマイクロ波を反射する反射板を排気流れ方向に対向するよう配置した構成であり、
上記定在波発生空間に、排気中の微粒子状物質が堆積する微粒子堆積部を設けて、堆積した微粒子状物質をマイクロ波エネルギにより加熱燃焼させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に記載の発明において、マイクロ波微粒子燃焼装置は、上記定在波発生空間内における微粒子状物質の加熱状態を調整する調整手段を備える。
【0013】
本発明の請求項3に記載の発明において、上記反射板は、排気流れ方向に対して位置変更が可能な可変機構を備える反射板である。
【0014】
本発明の請求項4に記載の発明において、上記導入口は、その開口面積を変更可能な可変機構を備えるスリットまたは絞り孔である。
【0015】
本発明の請求項5に記載の発明において、上記調整手段は、上記可変機構を制御することにより、上記定在波発生空間内の共振状態を調整する。
【0016】
本発明の請求項6に記載の発明において、上記微粒子堆積部は、上記定在波発生空間内における定在波の電界強度もしくは磁界強度が最大となる位置を含んだ場所に設けられる。
【0017】
本発明の請求項7に記載の発明において、上記微粒子堆積部は、パティキュレートフィルタである。
【0018】
本発明の請求項8に記載の発明において、上記微粒子堆積部は、静電式フィルタである。
【0019】
本発明の請求項9に記載の発明において、上記静電式フィルタは、上記定在波発生空間の内部に集塵電極を配置し、上記定在波発生空間内またはその上流に帯電電極を備える電気集塵式ユニットである。
【0020】
本発明の請求項10に記載の発明において、マイクロ波微粒子燃焼装置は、上記定在波発生空間より上流側の上記排気通路に、可溶性有機成分または炭化水素成分を捕集もしくは酸化により除去する除去部を備える。
【0021】
本発明の請求項11に記載の発明において、上記マイクロ波発生部に、使用周波数領域が100MHz〜10GHzであり、周波数ブレ±20MHz以下のマグネトロンもしくは半導体電源を用いる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に記載の発明は、シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置を、排気通路内に設けられる定在波発生空間にて構成し、マイクロ波反射板を排気流れと対向する方向に配置して、ガス流れ方向に複数の電界集中点を配置できるようにしたので、ガス流れ方向に反応領域を確保しやすい。また、微粒子堆積部に堆積した微粒子状物質をマイクロ波エネルギにより直接加熱するので、加熱ムラを生じることなく微粒子状物質を急速燃焼させることができる。よって、簡易な構成で、電力消費を抑制しながら、高い排ガス処理効果を実現する。
【0023】
本発明の請求項2に記載の発明は、マイクロ波加熱時に調整手段により定在波発生空間内の加熱状態を調整することにより、定在波発生空間内における共振状態を保持できるので、エネルギロスを抑制し、より効果的に微粒子を燃焼除去して排ガス処理効果を高めることができる。
【0024】
本発明の請求項3に記載の発明において、マイクロ波加熱時に可変機構により反射板の位置調整を行なうことで、共振状態を最適化し、マイクロ波による排ガス処理を効率よく行なうことができる。
【0025】
本発明の請求項4に記載の発明において、マイクロ波加熱時に可変機構により導入口となるスリットまたは絞り孔を調整することで、共振状態を最適化し、マイクロ波による排ガス処理を効率よく行なうことができる。
【0026】
本発明の請求項5に記載の発明において、調整手段により反射板やスリットまたは絞り孔の可変機構を制御して、容易に定在波発生空間の共振状態を調整することができる。
【0027】
本発明の請求項6に記載の発明において、微粒子堆積部を定在波発生空間内において、電界強度または磁界強度の大きな位置に配置する、マイクロ波エネルギを効率よく吸収させることができる。
【0028】
本発明の請求項7に記載の発明において、微粒子堆積部をパティキュレートフィルタを用いると、基材セラミックスはマイクロ波を透過させるので、堆積するパティキュレートに効率よくマイクロ波エネルギが吸収され、効果的である。
【0029】
本発明の請求項8に記載の発明において、微粒子堆積部は、静電式フィルタとすると、フィルタ基材が不要で簡易な構成にでき、微粒子堆積による圧力損失も増加しにくいので、有利である。
【0030】
本発明の請求項9に記載の発明において、静電式フィルタは、具体的には、定在波発生空間の内部に集塵電極と帯電電極を配置した電気集塵式ユニットとすることができる。集塵電極は、例えば定在波発生空間を形成する排気通路の側壁とすることができ、または定在波発生空間内に別途配置した電極部材でもよい。帯電電極を定在波発生空間の上流に配置してもよく、簡易な構成で効果的に排気処理ができる。
【0031】
本発明の請求項10に記載の発明において、定在波発生空間の上流に、除去部を設けて可溶性有機成分や炭化水素成分を予め除去することで、マイクロ波加熱により微粒子の除去効率を高めることができる。
【0032】
本発明の請求項11に記載の発明において、マイクロ波発生部として、所定の周波数領域にあり、周波数ブレの小さいマグネトロンもしくは半導体電源が好適に用いられ、共振状態の保持、調整が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態であり、ディーゼルエンジンの排気浄化装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態における排気浄化装置の共振部構成例を示し、(a)は円筒管形状の導波管、(b)は方形管形状の導波管とその内部の概略構造を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態におけるPM堆積部の構成例を示し、(a)は機械式フィルタであるDPF、(b)は静電式フィルタである電気集塵ユニットの概略断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第3、4実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図6】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第5、6実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の第7実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図8】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第8、9実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図であり、(c)は、静電式フィルタにおける電極構成例を示す図である。
【図9】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第10、11実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の第12実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図11】マイクロ波微粒子燃焼装置を用いた排気浄化処理のフローチャートである。
【図12】(a)、(b)、(c)は、フローチャートに基づく排気浄化処理のタイムチャートである。
【図13】従来のマイクロ波加熱装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明を内燃機関であるディーゼルエンジンに適用した排気浄化装置の概略構成を模式的に示す図であり、エンジン本体Eの排気通路2の途中に、排気浄化装置の主要部となるシングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置1が介設されている。マイクロ波微粒子燃焼装置1は、エンジン本体Eから排出される排ガス中の微粒子状物質(PM)を捕集し、燃焼処理するためのもので、排気通路2に接続される導波管11と、マイクロ波発生部であるマイクロ波電源3と、導波管11とマイクロ波電源3を接続するマイクロ波伝送部である伝送路4を備えている。PMは、主として炭素微粒子(Soot)と可溶性有機成分(SOF)を含む微粒子で、NOx、HCとともに排気通路2に排出される。
【0035】
導波管11には、図2(a)に示す円筒管形状、または図2(b)に示す方形管形状の金属管のいずれを用いることもできる。図1は、エンジン本体E側の端面が開放し、他端面が閉鎖される一端開放の方形管を用いた例を示しており、導波管11の開放端面には、マイクロ波反射壁12となる通気性の金属板が配設されて、内部に排ガスが流入可能となっている。導波管11は閉鎖端部に近い側面に、排気通路2が接続される開口を有し、該開口にマイクロ波反射壁13となる通気性の金属板が配設されている。これら通気性の金属板は、例えば、メッシュ板、パンチングメタル板であり、導波管11に伝送されたマイクロ波を反射して内部に閉じ込めることが可能であればよい。あるいはメタルハニカム体、セラミックハニカム体の表面に金属コーティングを施したものでもよい。これらハニカム体を用いた場合には、所望の触媒成分を担時させた触媒体を兼ねることもできる。
【0036】
導波管11の開放端面に近い側面には、伝送路4が接続される開口部41が設けられ、その下流側に、可変機構を備えた可変スリット14が設けられる。導波管11の閉鎖端部内には、上流側端面を可変反射板15とする可動部材16が収容され、その上流の可変スリット14との間に、定在波発生空間である共振部5を形成している。可変スリット14は、排気通路2の軸心に対して直交する方向に立設する2枚の金属メッシュ板によって構成され、金属板がスライドすることでスリット141幅を調整可能となっている。可変反射板15は、排気通路2の軸心に対して直交することで、排気流れ方向に対向するよう配置される。
【0037】
図2(a)に示す円筒管形状の導波管11の場合には、可変スリット14に代えて、可変翼機構を備えた可変絞り孔17を採用することができる。これらは、いずれも共振部5内に排ガスとともにマイクロ波を導入する導入口となる。可変翼機構は、複数枚の金属翼を略円形となるように重ねて中心に形成される絞り孔171の径を可変とするもので、例えば、電動モータもしくはクランク回転軸に結合される機械モータによって駆動される。このような可変機構は、可変スリット14の駆動、可変反射板15および可動部材16の駆動に用いることもでき、可変反射板15を前後方向(排ガス流れ方向)にスライドさせることにより、可変スリット14との間に形成される共振部5長さを調整することができる。これら可変機構は、調整手段となる図略の電子制御ユニットECUによって制御され、共振部5の共振状態を調整することができる。
【0038】
マイクロ波電源3としては、マグネトロン(図中Mg)と電源供給用の高電圧電源、もしくは半導体電源を使用することができる。使用周波数領域は、例えば、100MHz〜10GHzとし、好適には、周波数ブレ±20MHz以下の安定したマイクロ波発振が可能な電源を用いることが望ましい。周波数可変の半導体電源を用いた場合には、共振状態の調整に利用することができる。マイクロ波電源3で発生したマイクロ波を伝送する伝送路4には、通常、アイソレータ42が配設され、反射により伝送路4に戻されるマイクロ波からマイクロ波電源3を保護する。
【0039】
共振部5は、可変スリット14と可変反射板15によって特性づけられる公知のシングルモード空洞共振器を構成する。共振部5は、マイクロ波電源3の発振周波数に応じて、可変スリット14の幅、可変スリット14と可変反射板15の距離等を予め適合させることで、導波管11から伝送されるマイクロ波を共振させて、内部に所定の定在波パターンを発生させる。これにより、共振器5内にマイクロ波エネルギの集中する部位が、ガス流れ方向に複数形成されるので、定在波の電界強度もしくは磁界強度が最大となる位置を含むように、PM堆積部51を配設する。この部位を含んだ位置に、微粒子堆積部であるPM堆積部51を設けることで、堆積させたPMに直接マイクロ波エネルギを作用させて、効果的に加熱、燃焼させることができる。一般に、導波管11のサイズは、周波数によって決定され、例えば2.45GHzであれば、導波管11の直径φは60〜100mm程度が望ましいので、ガス流れ方向に電界集中点を配置し、排気量(ガス流速)によってこの集中点を増加させることで、反応領域を確保することができる。
【0040】
図3は、本発明において使用される微粒子堆積部51の構成例である。図3(a)は、機械式フィルタの一例であり、パティキュレートフィルタとしてのDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)52を、共振部5内に配置した概略図を示している。DPF52は、排ガス中のPMを捕集するため、多孔質の隔壁で区画される多数のセル521の端部に交互に栓詰め522を施したハニカム構造体として構成されている。多孔質ハニカム構造体の基材は、マイクロ波を透過するセラミックス材料、例えばコーディエライトが用いられ、絶縁性、耐熱衝撃性に優れる。DPF52は、外径が共振部5内径とほぼ同じであり、セル521内に形成される排気通路の方向が、排ガス流れ方向と一致するように配置される。
【0041】
排ガス中のPMは、DPF52の排ガス流れ方向の上流側に開口するセル521から内部に入り、隔壁523を通過しながら下流へ向かう間に細孔に捕集される。排ガスはセル521間を流通した後、排気流れ方向の下流側が開口するセル521から外部へ放出される。ここで、DPF52の表面に酸化触媒を担持させておくこともできる。このようにすると、マイクロ波微粒子燃焼装置1を作動させていない状態でも、定常的にPMを酸化反応により燃焼除去する効果がある。ただし、本発明では、誘電体であるPM中の炭素微粒子に、直接マイクロ波を作用させるので、従来のように、マイクロ波吸収材料をコーティングする必要はない。したがって、マイクロ波エネルギを効率よく利用してPMを燃焼除去することができ、省電力化が図られる。
【0042】
図3(b)は、静電式フィルタの一例である、電気集塵ユニット53を、共振部5内に配置した概略図を示している。電気集塵ユニット53は、共振部5内に配置される帯電電極531と集塵電極532とを有し、これら電極間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、PMを帯電・凝集させる。ここでは、帯電電極531は、共振部5の上流側において、共振部5を構成する導波管11の軸心に沿って配設された棒状電極であり、集塵電極532は、帯電電極531の周囲を取り巻く導波管11の管壁を接地してなる。この時、帯電したPMは、排気流れによって下流側へ移動しながら凝集し、集塵電極532に引き付けられて吸着保持される。この場合も、電気集塵ユニット53の構成部材に、マイクロ波吸収材料をコーティングする必要はない。また、電気集塵ユニット53は、共振部5の一部を利用して構成することができ、セラミックフィルタのように、PMの堆積により負圧が上昇することがないので有利である。堆積したPMは、マイクロ波微粒子燃焼装置1を作動させることにより、マイクロ波加熱を利用して燃焼除去することができる。あるいは酸化剤となるNOxを含む高温の排気が導入された場合に、NOxとの酸化反応により燃焼除去される。
【0043】
図4に本発明の排気浄化装置の第2実施形態を示す。本発明では、図4に概略構成を示すように、共振部5の前段に、排ガス中のPMに含まれる可溶性有機成分(SOF)、未燃焼の炭化水素成分(CH)の除去部である未燃分酸化部6を配置することもできる。具体的には、未燃分酸化部として公知の酸化触媒が好適に用いられる。可溶性有機成分(SOF)、炭化水素成分(CH)は、酸化触媒により比較的容易に酸化されるので、予め酸化反応により燃焼除去することで、後段の共振部5においてPM堆積部51に捕集されるPMが炭素微粒子(Soot)主体となり、燃焼制御が容易になる。また、未燃分の酸化により排ガス温度が上昇するので、PM堆積部51の加熱昇温を補助することができる。さらに、排ガス中に含まれるNOxを酸化してNO2とすることができるので、PMの酸化反応を促進する効果がある。未燃分を酸化により除去する以外に、捕集により除去する除去部を配置してもよい。
【0044】
また、未燃分酸化部6となる酸化触媒を、図1の第1実施形態の構成に適用し、マイクロ波微粒子燃焼装置1の上流端面に配置される反射壁12と兼用させることができる。この場合は、酸化触媒の基材をメタルハニカムとし、あるいは少なくとも反射壁12となるタン面をマイクロ波反射材料で構成するかコーティングすることによって、構成部材を増加させることなく、高い排気浄化性能が得られる。
【0045】
図5(a)、(b)に本発明の排気浄化装置の第3、4実施形態を示す。図1の第1実施形態では、マイクロ波微粒子燃焼装置1の下流端部となる通気性のマイクロ波反射壁13を、共振部5の後端部に配置される可変反射板15と別体としているが、図示するように、これらを一体化し両方の機能を有する可変反射部材18を設けることもできる。図5(a)において、可変反射部材18は、排ガス上流側の端面が可変反射板15として構成され、通気性を有する金属部材からなり、両端開放の導波管11の下流端部に配設されている。導波管11の下流端部は排気通路2と一体となっている。可変反射部材18は、例えば、パンチングメタル、メタル触媒等を用いることができる。これにより、マイクロ波微粒子燃焼装置1の構成を簡略にでき、メタル触媒を用いた場合には、PM捕集後の排気後処理を簡易に行うことができる。
【0046】
さらに、図5(b)に示すように、マイクロ波微粒子燃焼装置1の下流側において、排気通路2を拡径し、テーパ状の拡径部に可変反射部材18を配置すれば、排気の流れが良好になり、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0047】
図6(a)、(b)に本発明の排気浄化装置の第5、6実施形態を示す。本実施形態は、図3(b)に示した電気集塵ユニット53の具体的構成例であり、PMを帯電させる粒子帯電部54と帯電させたPMの凝集粒子を集塵捕集する粒子保持部55を別々に設けた2段PM捕集装置を構成している。図6(a)において、粒子帯電部54は集塵電極となる粒子保持部55の前段に、具体的には、マイクロ波微粒子燃焼装置1のマイクロ波反射壁12より上流側に設けられ、導波管11の軸心に沿って帯電電極541を配置している。帯電電極541は、導波管11の管壁を貫通する絶縁支持部542にて支持され、外部から高電圧が印加される。帯電したPMは、マイクロ波反射壁12、可変スリット14を通過して、PM加熱部となる共振部5内に入り、粒子保持部55に保持される。図6(b)のように、粒子帯電部54の上流にマイクロ波反射壁12を配置してもよい。
【0048】
ここで、共振部5内のPM保持部位は、電圧・電流値(クーロン力)と排ガス流速により決まるため、粒子帯電部54の電力をPM排出マップとエンジン状態(吸気、燃料噴射、EGR量等)に従い変化させる。これにより、共振部5内の電界または磁界の強い位置に粒子保持部55を形成し、PM加熱を効果的に行うことができる。場合によっては、所望の粒子保持部位に粒子帯電部54とは逆極性の電圧(低電圧)を印加し、粒子保持部55の選択と保持効果を高めることができる。本方式は、方形導波管、円筒導波管のいずれに対しても有効であり、帯電電極541は通常使用されるいずれの形状であってもよい。
【0049】
図7に本発明の排気浄化装置の第7実施形態を示す。本実施形態の電気集塵ユニット53は、マイクロ波微粒子燃焼装置1の共振部5内に帯電電極531を配置するとともに、共振部5内にPMを集塵する。この構成では、帯電電極531の設置がマイクロ波の伝播に与える影響を極力小さくする必要がある。円筒導波管11を用いた場合、例えば、共振部5内の定在波の電界強度は、図示するようになるので、帯電電極531を支持する2つの絶縁碍子532を、電界強度が弱い位置に立設する。2つの絶縁碍子532間には、導波管11の軸心に沿って帯電電極531が支持される。帯電電極531の両端は2つの絶縁碍子532の中心孔を通って外部に引き出され、高電圧電源に接続される。帯電電極531は、例えば、直径0.1mm〜5mmのワイヤあるいは棒状電極であり、円筒導波管11の直径Aは、例えば、40mm〜120mmの範囲とすることが望ましい。
【0050】
図8(a)、(b)は本発明の排気浄化装置の第8、9実施形態であり、方形導波管11を用いて、電気集塵ユニット53を構成した例を示す。方形導波管11の場合も、電界強度が弱い位置に、帯電電極531を支持する2つの絶縁碍子532を配置するのがよい。図8(a)は、例えば共振部5のモードがTE10モードの場合であり、方形導波管11の幅B、高さC(B>C)に対して、長手方向側面(図では手前側面)から絶縁碍子532を挿入し、帯電電極451を支持することが望ましい。あるいは図8(b)のように、方形導波管11の上面から絶縁碍子532を挿入することもできる。
【0051】
このように、共振部5に電気集塵ユニット53を形成する場合には、共振を起こすため、帯電電極451をマイクロ波伝播阻害が小さい場所(電界強度の弱い場所=磁界強度の強い場所)に配置することが望ましい。これにより、マイクロ波伝播への影響を抑えることができる。また、電極磨耗を防ぐため、電界強度の強い位置に絶縁碍子532(電極)を配置しないことが望ましい。絶縁碍子532の材質は、誘電率、導電率、透磁率の低い物質、例えば高純度アルミナ、高純度シリカ等を用いる。帯電電極531の材質は、磁性を持たない、耐久性の高い物質、例えば、オーステナイト系ステンレス等を用いることが望ましい。
【0052】
また、図8(c)に示すように、帯電電極531となるワイヤや棒が突起を有すると放電率を高める効果がある。例えば、帯電電極531の複数箇所から上下に突出する突起533や星型の突起534を設けることで、空間内に放電を均等に発生させることができる。あるいは、帯電電極531の中央部を1つの絶縁碍子532で支持する構成とし、帯電電極531の両端を露出させたり、両端にさらに星型の突起534を設けたりしてもよい。
【0053】
図9(a)、(b)は、本発明の第10、11実施形態であり、マイクロ波微粒子燃焼装置1を含む排気浄化装置の全体構成を示している。図9(a)のように、エンジンEの排気通路2を分岐させてPMの捕集手段を複数設置する処理システムがあり、本発明は、このようなシステムにも適用することができる。図中、排気通路2は、途中で2つの分岐通路21、22に分岐しており、それぞれに微粒子燃焼装置1の共振部5が形成されて、マイクロ波発生部および伝送部を含むマイクロ波ユニットUからマイクロ波が導入されるようになっている。共振部5は、上記各実施形態と同様の構成とすることができ、詳細構成の図示および説明は省略する。ここでは、PMの捕集手段としてPM堆積部であるDPF52を採用して、共振部5内に配置する。この時、例えば図示しない通路切替弁によって、2つの分岐通路21、22を開閉し、交互にDPF52によるPM捕集と、微粒子燃焼装置1によるPM燃焼を行うことができ、PM捕集と再生が効率よく実施できる。
【0054】
次に、本発明のマイクロ波微粒子燃焼装置1を用いて実施される、ディーゼルエンジンの排気浄化処理について具体的に説明する。図10は、本発明の第12実施形態であり、図1の排気浄化装置の基本構成に、各種モニタ用のセンサ等を追加配置した例である。図11は、マイクロ波微粒子燃焼装置1による排気浄化処理のフローチャートである。図10において、マイクロ波微粒子燃焼装置1には、共振部5の上流側および下流側の圧力が導入される差圧センサSPが設けられ、前後差圧からPM堆積部51のPM堆積量を算出可能となっている。また、共振部5の下流の排気通路2に燃焼排ガス中のHC、NOx等を検出するガスセンサSGを設け、共振部5またはその近傍に温度センサSTを設けたりすることができる。あるいは、共振部5の上流または下流にPMセンサ(図示略)を設けることもでき、これらの検出結果に基づいて、マイクロ波微粒子燃焼装置1のPM堆積状態、燃焼状態を推定する。
【0055】
温度測定手段STは、例えば、共振部5内のPM堆積部51またはその周辺部、あるいは排気通路2との接続部に配置される反射壁13の温度を測定する。共振部5内部に配置する場合は、電界強度の小さい場所を選択することが望ましい。温度測定手段STとして、サーミスタや熱電対を用いる場合は、直径1mm〜10mm以上の比較的太いセンサ棒を用い、マイクロ波波長の整数倍、整数割りの長さを避けるとよい。また、温度測定手段STの外側に、数100nm〜数μmの金属めっき(例えば、鋼鉄、ニッケル、金、銀、銅、黄銅、アルミ等)を行うと、マイクロ波に阻害されずに温度の測定が可能となる。
【0056】
マイクロ波電源3に接続する伝送路4には、マイクロ波の伝送方向を調整するアイソレータ42、サーキュレータ43が配設され、サーキュレータ43の前後に設置されるパワーメータ43により、出射、反射それぞれのマイクロ波電力を測定可能となっている。なお、図10に示した構成は一例であり、図示したセンサ等を全て設置する必要はない。
【0057】
図示しない電子制御ユニットECUは、これらセンサ等の出力に基づいて、マイクロ波微粒子燃焼装置1を制御する。図11のフローチャートは排気浄化処理の一例を示すもので、まず、ステップS100では、エンジンEから排気通路2に排出されるPMをPM堆積部51にて捕集する。この時、PM堆積部51が電気集塵ユニット53である場合は、帯電電極531に印加される電力を調整して所定のコロナ放電を生起させる。
【0058】
ステップS101では、PM堆積部51へのPMの堆積量を推定する。PMの堆積量を推定するためのモニタ手法としては、下記のいずれか1つもしくは複数を併用する。
1)差圧センサSPを用いてPM堆積部51の前後差圧をモニタし、予め調べた前後差圧とPM堆積量の関係を用いて推定する。
2)エンジンEの運転履歴と排出マップにより知られるPM排出量から堆積量を推定する。
3)排気通路2に排出されるPM量をPMセンサにより直接検出し、堆積量を推定する。
4)電気集塵ユニット53を用いる場合は、消費電流量(電力)にて推定することも可能である。
【0059】
ステップS102では、ステップS101で推定したPM堆積量が、予め設定した閾値以上であるか否かを判定する。肯定判定された場合は、ステップS103へ進み、PM酸化によるPM堆積部51の再生が必要と判断して、ステップS104以降の処理を行う。ステップS102が否定判定された場合は、S100へ戻り、PM堆積量が閾値以上となるまでPM堆積量の推定を繰り返す。
【0060】
ステップS104では、ステップS101で推定したPM堆積量、エンジン状態に応じて、共振部5の可動部(可変スリット14、可変反射板15)、周波数(周波数可変のマイクロ波電源3の場合)を決定する。例えば、PM堆積量と、エンジンEの運転状態(排気流量、温度、水分濃度、酸素濃度)に基づいて、予め実験等を行って作成した可変部位マップ、周波数マップを用い、スタート位置を決定する。場合によっては、エンジン燃焼をPM酸化モード(高酸素濃度、低排ガス流量、高排ガス温度)に変更することもできる。例えば、酸素濃度の増加にはEGRカットを、排ガス流量の低減には吸気絞りを採用する。
【0061】
共振状態の制御方法は、共振部5の可動部、周波数を変化させる他、連動させてエンジン運転状態を変える方法がある(吸気量、燃焼噴射量、EGR量、気筒休止等)。例えば、排気流量、温度、水分濃度、酸素濃度を変化させ、それ自体の持つ物性影響で共振器内のインピーダンスZ(L、R、C)を変化させる。また、エンジン運転状態(酸素量、ガス流量)が変わることでPMの酸化状態(発熱、放熱)が変化し、結果的にL、R、Cが変化し共振状態が変化する。したがって、本発明では、マイクロ波加熱がスタートした後、マイクロ波照射中においても、共振状態の変化に追従して各種調整を行い、共振状態を保持する。
【0062】
そこで、ステップS105では、ステップS104で決定したスタート位置となるように、可変スリット14、可変反射板15の可変機構を駆動し、周波数を調整する。次いで、ステップS106でマイクロ波電源3を作動させて、マイクロ波の照射を開始する。さらに、ステップS107以降で、マイクロ波加熱によるPM酸化の状態をモニタし、最適化する。
【0063】
ステップS107では、PM酸化値が閾値以下であるか否かを判定する。PM酸化値は、マイクロ波加熱が適切に行われていることを判断する指標となるもので、酸化が起こっている状態にある、共振状態にある、PM温度が高状態にある、のいずれかの状態にあることをモニタできる値であればよい。予め設定した閾値以下であれば、マイクロ波加熱(共振状態)を調整するためにステップS108へ進む。
【0064】
PMが加熱されている状態(共振の強さ)のモニタ手法としては、以下の手法がある。
1)差圧センサSPを用いてPM堆積部51の前後差圧をモニタする。PM酸化による前後差圧の変化を検出することができる。
2)マイクロ波伝送、反射の電圧、電流(電力値、定在波比)をモニタする。
例えば、伝送路4に設置したパワーメータ43、共振部5内空間に設置した電磁波吸収アンテナ、アイソレータ42の温度上昇、電気抵抗、電流変化等に基づいて、共振部5内への伝送電力、共振部5内の共振状態を検出することができる。
3)温度測定手段STを用いてPM堆積部51の温度をモニタする。
例えば、放射温度計、サーミスタ、熱電対などの温度測定手段STを、共振部5(PM堆積部51)に配置してモニタする、温度測定手段STを共振部5の後段に配置し酸化によるガス温度上昇をモニタする、共振部5の外壁面、あるいは共振部51壁面に温度測定手段STを埋め込み、温度をモニタすることで、PMの酸化熱によるPM堆積部51の温度上昇を検出することができる。
4)共振部5の後段に配置したガスセンサSGにより酸化初期や酸化中に生成するガス(HC、NOx)を検出する、あるいはPMセンサを配置し、燃え残って漏れ出てくるPMを検出することで、PM酸化の進行状態を検出することが可能である。
【0065】
ステップS107では、上記各種センサによりモニタされたPM酸化値が、予め設定した閾値(例えば、差圧が一定量、一定時間に減少した場合、伝送電力が一定量、一定時間投入された場合、温度が一定量、一定時間に上昇した場合等)を超えていれば、マイクロ波加熱中(共振状態が保持されている)と判断できる。そこで、ステップS107が肯定判定された場合は、ステップS109へ進んで現在の状態を保持したまま、続くステップS110へ進む。
【0066】
ステップS108では、周波数または可変反射板15を用いて共振状態を調整する。例えばマイクロ波電源3がマグネトロンの場合は、可変反射板15の位置を可変機構により調整して、共振部5の共振状態を最適化させる。同時に、共振部5内に導入される排ガスの酸素量調整(吸気量、EGR量の調整)を併用すると効果を高めることができる。
【0067】
次いで、ステップS110に進み、マイクロ波加熱の終了時期を判断するために、上記センサ等によりモニタされるPM酸化値から、所定の酸化終了閾値に達したか否かを判定する。酸化終了閾値に達していなければ、ステップS107へ戻り、以降のステップを繰り返す。酸化終了閾値は、例えば、差圧が一定以下に減少した場合、伝送電力の投入量が一定量を超えた場合、温度が一定以上に上昇した場合等、適宜設定することができる。ステップS110が肯定判定されると、ステップS111へ進んでマイクロ波の照射を終了する。
【0068】
図12は、本フローチャートに基づいてPM堆積部51に捕集したPMの酸化処理を行った場合のタイムチャートである。例えば、PM酸化値として、PM堆積部51の温度をモニタしている場合、図12(c)に示すように、理想的な状態でマイクロ波加熱が実施されていれば、ステップS106のマイクロ波照射と同時に、PM堆積部51の温度が急上昇する。これは、共振部5内に導入されたマイクロ波が直接PMに吸収されるためであり、従来のようにマイクロ波吸収材を使用しないのでエネルギロスが小さい。したがって、共振状態の調整をすることなく、ステップS109の現状保持を継続する。その後、PM堆積部51が一定温度以上(例えば、PM燃焼温度以上)となれば、エネルギ投入を停止しても燃焼は容易に継続するので、ステップS111でマイクロ波照射を終了する。PM堆積部51の温度は、PM燃焼により一定期間高い状態が続き、PMが除去されると急降下して再生が完了する。
【0069】
これに対して、図12(a)は、初期調整のずれにより、PM酸化値が低い(共振が起こっていない)場合であり、ステップS106でマイクロ波照射した後に、温度が十分上昇していない。そこで、ステップS107で可変反射板15(または周波数)を最適化する。この調整により、PM酸化値が正常となったら、その後は、図12(c)と同様の処理を行なう。図12(b)は、マイクロ波照射直後は、良好に温度上昇するものの、運転状態等の影響で共振部5内の状態が変化し、PM酸化値が低下した(共振が起こっていない)場合である。この場合は、ステップS109の現状保持を継続した後、ステップS107で可変反射板15(または周波数)を最適化し、再び温度を上昇させる。その後は、図12(c)と同様の処理を行なう。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明の微粒子燃焼装置を備える排気浄化装置は、自動車用ディーゼルエンジンから排出される微粒子状物質を捕集し、マイクロ波加熱により急速加熱して、速やかに燃焼除去することができる。また、ディーゼルエンジンに限らず、エンジンの排気通路に排出される微粒子状物質を捕集するシステムのいずれにも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0071】
E ディーゼルエンジン(内燃機関)
1 微粒子燃焼装置
11 微粒子燃焼装置
12、13 マイクロ波反射壁
14 可変スリット(導入口)
15 可変反射板(反射板)
16 可動部材
17 可変絞り孔(導入口)
2 排気通路
3 マイクロ波電源(マイクロ波発生部)
4 伝送路(マイクロ波伝送部)
41 開口部(接続部)
5 共振部(定在波発生空間)
51 PM堆積部
52 DPF(パティキュレートフィルタ)
53 電気集塵ユニット(静電式フィルタ)
6 未燃分酸化部(除去部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内燃機関から排出される微粒子状物質をパティキュレートフィルタに捕集し、シングルモードによるマイクロ波加熱装置を用いて、微粒子状物質を加熱燃焼させることによりパティキュレートフィルタを再生する排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用ディーゼルエンジン等において、排出ガスに含まれる環境汚染物質、特に炭素微粒子(Soot)および可溶性有機成分(SOF)を主体とする微粒子状物質(Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、適宜DPFと称する)を設置することが行われている。DPFは、一般に、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に排出ガスを通過させてPMを捕捉する。
【0003】
DPFは、PM捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて負圧が増大し、PMのすり抜けが生じるおそれがある。このため、例えばDPFの前後差圧からPM捕集量を推定し、適切な時期に再生処理を行って捕集能力を回復させる必要がある。再生処理方法としては、例えば、電気ヒータやバーナーによる加熱、あるいはポスト噴射や排気絞り等による排気温度の上昇等が知られており、DPFをPMが着火可能な温度以上に昇温することによって、PMを燃焼除去している。
【0004】
一方、シングルモードのマイクロ波エネルギを用いた加熱装置を、排ガス等の流体加熱や触媒加熱に利用することが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。特許文献1には、セラミック担体にSiC系複合酸化物を含むマイクロ波吸収体を担持させて発熱体とし、これを直方体型空洞共振器内に収容して、単一モードのマイクロ波を照射し、マイクロ波吸収体を急速加熱するマイクロ波加熱装置が開示されている。セラミック担体を保持する加熱管は、排気管の一部をなしており、排気管が直方体型空洞共振器内を貫通する構成とすることで、セラミック担体およびその内部を通過する排気を加熱する。
【0005】
特許文献2には、排ガス流路の途中に、円筒形のマイクロ波空洞共振器を設けて、その内部にマイクロ波加熱触媒を配置し、空洞共振器とマイクロ波を伝送する導波経路を接続した排ガス浄化装置が開示されている。マイクロ波加熱触媒は、ハニカム体にマイクロ波吸収層をコーティングし、三元触媒を担持させたもので、通過する排気ガスを無害化する。また、特許文献3には、排ガスが通過する円筒形のマイクロ波共振空洞管を設け、この内部に排ガスが透過可能な触媒担持体を配置して、共振空洞管内の軸と垂直方向にマイクロ波導入アンテナを突出させた排ガス浄化装置が開示されている。触媒担持体は、排ガス浄化用の触媒を担持したハニカムケースで、ハニカムケースの内径や、共振空洞管の両端に位置する反射金網とアンテナの位置を選択することによって、空洞内に所定モードのマイクロ波を励起させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−140063号公報
【特許文献2】特開平7−127436号公報
【特許文献3】特開2000−104538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、このようなマイクロ波空洞共振器を、DPFの再生手段として利用することを検討した。しかしながら、マイクロ波の共振モードを起こすための要素として、共振器状態(インピーダンス)が所定の値になる必要があり、特許文献2、3のように排ガスが流通する条件下において、所定の共振状態を実現し維持することは難しい。このため、特許文献1の装置は、マイクロ波空洞共振器を、DPFが収容される排気管の一部のみを含む構成とし、排気管内の空間とは独立に設けている。
【0008】
図13(a)は、特許文献1の装置の概略構成図であり、直方体形状のマイクロ波空洞共振器101を貫通して、図の上下方向に排気管102が貫通し、マイクロ波空洞共振器101の内部となる部分に発熱体100が位置している。また、マイクロ波空洞共振器101は、マイクロ波の導入口103を可変とするとともに、スライド可能な可動短絡部材104を設けて、空洞の大きさを調整できるようにしている。発熱体100は、ハニカム構造のセラミック担体105内表面にマイクロ波吸収体を担持させて構成される。
【0009】
ところが、特許文献1の装置は、排気管102がマイクロ波空洞共振器100と直交しているためエネルギ集中領域が限られ、対象加熱領域が狭い。また、発熱体100内の排気流通方向と、マイクロ波の入射方向が直交しているため、発熱体100には、導入口103に近い側面から直交してマイクロ波が入ることになる。この場合、発熱体100の加熱分布が歪み、加熱ムラが生じることが予測される。これは、図13(b)に示すように、電界分布を、中心部の強度が高い周辺部へ向けて弱くなる均一分布となるように調整したとしても、発熱体100は、導入口103に近い側面が先に加熱されるために、電界が集中する中心部に次いで高い温度となり、反対側の側面の温度が低い、歪んだ温度分布となるからで、排ガス処理効果が小さくなるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パティキュレートフィルタに捕集した微粒子状物質を、シングルモードによるマイクロ波加熱装置を用いて効果的に加熱燃焼させ、パティキュレートフィルタを再生する排気浄化装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、
内燃機関の排気通路に排出される炭素微粒子を含む微粒子状物質を、シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置によって燃焼除去する排気浄化装置であって、
上記シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置は、
マイクロ波発生部と、
マイクロ波発生部から発振されるマイクロ波を上記排気通路内へ伝送するためのマイクロ波伝送部と、
上記排気通路内において、上記マイクロ波伝送部との接続部よりも下流側に設けられる定在波発生空間とを備え、
上記定在波発生空間は、一端側にマイクロ波ととともに排気を通過させる導入口を有し、他端側にマイクロ波を反射する反射板を排気流れ方向に対向するよう配置した構成であり、
上記定在波発生空間に、排気中の微粒子状物質が堆積する微粒子堆積部を設けて、堆積した微粒子状物質をマイクロ波エネルギにより加熱燃焼させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に記載の発明において、マイクロ波微粒子燃焼装置は、上記定在波発生空間内における微粒子状物質の加熱状態を調整する調整手段を備える。
【0013】
本発明の請求項3に記載の発明において、上記反射板は、排気流れ方向に対して位置変更が可能な可変機構を備える反射板である。
【0014】
本発明の請求項4に記載の発明において、上記導入口は、その開口面積を変更可能な可変機構を備えるスリットまたは絞り孔である。
【0015】
本発明の請求項5に記載の発明において、上記調整手段は、上記可変機構を制御することにより、上記定在波発生空間内の共振状態を調整する。
【0016】
本発明の請求項6に記載の発明において、上記微粒子堆積部は、上記定在波発生空間内における定在波の電界強度もしくは磁界強度が最大となる位置を含んだ場所に設けられる。
【0017】
本発明の請求項7に記載の発明において、上記微粒子堆積部は、パティキュレートフィルタである。
【0018】
本発明の請求項8に記載の発明において、上記微粒子堆積部は、静電式フィルタである。
【0019】
本発明の請求項9に記載の発明において、上記静電式フィルタは、上記定在波発生空間の内部に集塵電極を配置し、上記定在波発生空間内またはその上流に帯電電極を備える電気集塵式ユニットである。
【0020】
本発明の請求項10に記載の発明において、マイクロ波微粒子燃焼装置は、上記定在波発生空間より上流側の上記排気通路に、可溶性有機成分または炭化水素成分を捕集もしくは酸化により除去する除去部を備える。
【0021】
本発明の請求項11に記載の発明において、上記マイクロ波発生部に、使用周波数領域が100MHz〜10GHzであり、周波数ブレ±20MHz以下のマグネトロンもしくは半導体電源を用いる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に記載の発明は、シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置を、排気通路内に設けられる定在波発生空間にて構成し、マイクロ波反射板を排気流れと対向する方向に配置して、ガス流れ方向に複数の電界集中点を配置できるようにしたので、ガス流れ方向に反応領域を確保しやすい。また、微粒子堆積部に堆積した微粒子状物質をマイクロ波エネルギにより直接加熱するので、加熱ムラを生じることなく微粒子状物質を急速燃焼させることができる。よって、簡易な構成で、電力消費を抑制しながら、高い排ガス処理効果を実現する。
【0023】
本発明の請求項2に記載の発明は、マイクロ波加熱時に調整手段により定在波発生空間内の加熱状態を調整することにより、定在波発生空間内における共振状態を保持できるので、エネルギロスを抑制し、より効果的に微粒子を燃焼除去して排ガス処理効果を高めることができる。
【0024】
本発明の請求項3に記載の発明において、マイクロ波加熱時に可変機構により反射板の位置調整を行なうことで、共振状態を最適化し、マイクロ波による排ガス処理を効率よく行なうことができる。
【0025】
本発明の請求項4に記載の発明において、マイクロ波加熱時に可変機構により導入口となるスリットまたは絞り孔を調整することで、共振状態を最適化し、マイクロ波による排ガス処理を効率よく行なうことができる。
【0026】
本発明の請求項5に記載の発明において、調整手段により反射板やスリットまたは絞り孔の可変機構を制御して、容易に定在波発生空間の共振状態を調整することができる。
【0027】
本発明の請求項6に記載の発明において、微粒子堆積部を定在波発生空間内において、電界強度または磁界強度の大きな位置に配置する、マイクロ波エネルギを効率よく吸収させることができる。
【0028】
本発明の請求項7に記載の発明において、微粒子堆積部をパティキュレートフィルタを用いると、基材セラミックスはマイクロ波を透過させるので、堆積するパティキュレートに効率よくマイクロ波エネルギが吸収され、効果的である。
【0029】
本発明の請求項8に記載の発明において、微粒子堆積部は、静電式フィルタとすると、フィルタ基材が不要で簡易な構成にでき、微粒子堆積による圧力損失も増加しにくいので、有利である。
【0030】
本発明の請求項9に記載の発明において、静電式フィルタは、具体的には、定在波発生空間の内部に集塵電極と帯電電極を配置した電気集塵式ユニットとすることができる。集塵電極は、例えば定在波発生空間を形成する排気通路の側壁とすることができ、または定在波発生空間内に別途配置した電極部材でもよい。帯電電極を定在波発生空間の上流に配置してもよく、簡易な構成で効果的に排気処理ができる。
【0031】
本発明の請求項10に記載の発明において、定在波発生空間の上流に、除去部を設けて可溶性有機成分や炭化水素成分を予め除去することで、マイクロ波加熱により微粒子の除去効率を高めることができる。
【0032】
本発明の請求項11に記載の発明において、マイクロ波発生部として、所定の周波数領域にあり、周波数ブレの小さいマグネトロンもしくは半導体電源が好適に用いられ、共振状態の保持、調整が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態であり、ディーゼルエンジンの排気浄化装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態における排気浄化装置の共振部構成例を示し、(a)は円筒管形状の導波管、(b)は方形管形状の導波管とその内部の概略構造を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態におけるPM堆積部の構成例を示し、(a)は機械式フィルタであるDPF、(b)は静電式フィルタである電気集塵ユニットの概略断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第3、4実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図6】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第5、6実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の第7実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図8】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第8、9実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図であり、(c)は、静電式フィルタにおける電極構成例を示す図である。
【図9】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第10、11実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の第12実施形態における排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図11】マイクロ波微粒子燃焼装置を用いた排気浄化処理のフローチャートである。
【図12】(a)、(b)、(c)は、フローチャートに基づく排気浄化処理のタイムチャートである。
【図13】従来のマイクロ波加熱装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明を内燃機関であるディーゼルエンジンに適用した排気浄化装置の概略構成を模式的に示す図であり、エンジン本体Eの排気通路2の途中に、排気浄化装置の主要部となるシングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置1が介設されている。マイクロ波微粒子燃焼装置1は、エンジン本体Eから排出される排ガス中の微粒子状物質(PM)を捕集し、燃焼処理するためのもので、排気通路2に接続される導波管11と、マイクロ波発生部であるマイクロ波電源3と、導波管11とマイクロ波電源3を接続するマイクロ波伝送部である伝送路4を備えている。PMは、主として炭素微粒子(Soot)と可溶性有機成分(SOF)を含む微粒子で、NOx、HCとともに排気通路2に排出される。
【0035】
導波管11には、図2(a)に示す円筒管形状、または図2(b)に示す方形管形状の金属管のいずれを用いることもできる。図1は、エンジン本体E側の端面が開放し、他端面が閉鎖される一端開放の方形管を用いた例を示しており、導波管11の開放端面には、マイクロ波反射壁12となる通気性の金属板が配設されて、内部に排ガスが流入可能となっている。導波管11は閉鎖端部に近い側面に、排気通路2が接続される開口を有し、該開口にマイクロ波反射壁13となる通気性の金属板が配設されている。これら通気性の金属板は、例えば、メッシュ板、パンチングメタル板であり、導波管11に伝送されたマイクロ波を反射して内部に閉じ込めることが可能であればよい。あるいはメタルハニカム体、セラミックハニカム体の表面に金属コーティングを施したものでもよい。これらハニカム体を用いた場合には、所望の触媒成分を担時させた触媒体を兼ねることもできる。
【0036】
導波管11の開放端面に近い側面には、伝送路4が接続される開口部41が設けられ、その下流側に、可変機構を備えた可変スリット14が設けられる。導波管11の閉鎖端部内には、上流側端面を可変反射板15とする可動部材16が収容され、その上流の可変スリット14との間に、定在波発生空間である共振部5を形成している。可変スリット14は、排気通路2の軸心に対して直交する方向に立設する2枚の金属メッシュ板によって構成され、金属板がスライドすることでスリット141幅を調整可能となっている。可変反射板15は、排気通路2の軸心に対して直交することで、排気流れ方向に対向するよう配置される。
【0037】
図2(a)に示す円筒管形状の導波管11の場合には、可変スリット14に代えて、可変翼機構を備えた可変絞り孔17を採用することができる。これらは、いずれも共振部5内に排ガスとともにマイクロ波を導入する導入口となる。可変翼機構は、複数枚の金属翼を略円形となるように重ねて中心に形成される絞り孔171の径を可変とするもので、例えば、電動モータもしくはクランク回転軸に結合される機械モータによって駆動される。このような可変機構は、可変スリット14の駆動、可変反射板15および可動部材16の駆動に用いることもでき、可変反射板15を前後方向(排ガス流れ方向)にスライドさせることにより、可変スリット14との間に形成される共振部5長さを調整することができる。これら可変機構は、調整手段となる図略の電子制御ユニットECUによって制御され、共振部5の共振状態を調整することができる。
【0038】
マイクロ波電源3としては、マグネトロン(図中Mg)と電源供給用の高電圧電源、もしくは半導体電源を使用することができる。使用周波数領域は、例えば、100MHz〜10GHzとし、好適には、周波数ブレ±20MHz以下の安定したマイクロ波発振が可能な電源を用いることが望ましい。周波数可変の半導体電源を用いた場合には、共振状態の調整に利用することができる。マイクロ波電源3で発生したマイクロ波を伝送する伝送路4には、通常、アイソレータ42が配設され、反射により伝送路4に戻されるマイクロ波からマイクロ波電源3を保護する。
【0039】
共振部5は、可変スリット14と可変反射板15によって特性づけられる公知のシングルモード空洞共振器を構成する。共振部5は、マイクロ波電源3の発振周波数に応じて、可変スリット14の幅、可変スリット14と可変反射板15の距離等を予め適合させることで、導波管11から伝送されるマイクロ波を共振させて、内部に所定の定在波パターンを発生させる。これにより、共振器5内にマイクロ波エネルギの集中する部位が、ガス流れ方向に複数形成されるので、定在波の電界強度もしくは磁界強度が最大となる位置を含むように、PM堆積部51を配設する。この部位を含んだ位置に、微粒子堆積部であるPM堆積部51を設けることで、堆積させたPMに直接マイクロ波エネルギを作用させて、効果的に加熱、燃焼させることができる。一般に、導波管11のサイズは、周波数によって決定され、例えば2.45GHzであれば、導波管11の直径φは60〜100mm程度が望ましいので、ガス流れ方向に電界集中点を配置し、排気量(ガス流速)によってこの集中点を増加させることで、反応領域を確保することができる。
【0040】
図3は、本発明において使用される微粒子堆積部51の構成例である。図3(a)は、機械式フィルタの一例であり、パティキュレートフィルタとしてのDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)52を、共振部5内に配置した概略図を示している。DPF52は、排ガス中のPMを捕集するため、多孔質の隔壁で区画される多数のセル521の端部に交互に栓詰め522を施したハニカム構造体として構成されている。多孔質ハニカム構造体の基材は、マイクロ波を透過するセラミックス材料、例えばコーディエライトが用いられ、絶縁性、耐熱衝撃性に優れる。DPF52は、外径が共振部5内径とほぼ同じであり、セル521内に形成される排気通路の方向が、排ガス流れ方向と一致するように配置される。
【0041】
排ガス中のPMは、DPF52の排ガス流れ方向の上流側に開口するセル521から内部に入り、隔壁523を通過しながら下流へ向かう間に細孔に捕集される。排ガスはセル521間を流通した後、排気流れ方向の下流側が開口するセル521から外部へ放出される。ここで、DPF52の表面に酸化触媒を担持させておくこともできる。このようにすると、マイクロ波微粒子燃焼装置1を作動させていない状態でも、定常的にPMを酸化反応により燃焼除去する効果がある。ただし、本発明では、誘電体であるPM中の炭素微粒子に、直接マイクロ波を作用させるので、従来のように、マイクロ波吸収材料をコーティングする必要はない。したがって、マイクロ波エネルギを効率よく利用してPMを燃焼除去することができ、省電力化が図られる。
【0042】
図3(b)は、静電式フィルタの一例である、電気集塵ユニット53を、共振部5内に配置した概略図を示している。電気集塵ユニット53は、共振部5内に配置される帯電電極531と集塵電極532とを有し、これら電極間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、PMを帯電・凝集させる。ここでは、帯電電極531は、共振部5の上流側において、共振部5を構成する導波管11の軸心に沿って配設された棒状電極であり、集塵電極532は、帯電電極531の周囲を取り巻く導波管11の管壁を接地してなる。この時、帯電したPMは、排気流れによって下流側へ移動しながら凝集し、集塵電極532に引き付けられて吸着保持される。この場合も、電気集塵ユニット53の構成部材に、マイクロ波吸収材料をコーティングする必要はない。また、電気集塵ユニット53は、共振部5の一部を利用して構成することができ、セラミックフィルタのように、PMの堆積により負圧が上昇することがないので有利である。堆積したPMは、マイクロ波微粒子燃焼装置1を作動させることにより、マイクロ波加熱を利用して燃焼除去することができる。あるいは酸化剤となるNOxを含む高温の排気が導入された場合に、NOxとの酸化反応により燃焼除去される。
【0043】
図4に本発明の排気浄化装置の第2実施形態を示す。本発明では、図4に概略構成を示すように、共振部5の前段に、排ガス中のPMに含まれる可溶性有機成分(SOF)、未燃焼の炭化水素成分(CH)の除去部である未燃分酸化部6を配置することもできる。具体的には、未燃分酸化部として公知の酸化触媒が好適に用いられる。可溶性有機成分(SOF)、炭化水素成分(CH)は、酸化触媒により比較的容易に酸化されるので、予め酸化反応により燃焼除去することで、後段の共振部5においてPM堆積部51に捕集されるPMが炭素微粒子(Soot)主体となり、燃焼制御が容易になる。また、未燃分の酸化により排ガス温度が上昇するので、PM堆積部51の加熱昇温を補助することができる。さらに、排ガス中に含まれるNOxを酸化してNO2とすることができるので、PMの酸化反応を促進する効果がある。未燃分を酸化により除去する以外に、捕集により除去する除去部を配置してもよい。
【0044】
また、未燃分酸化部6となる酸化触媒を、図1の第1実施形態の構成に適用し、マイクロ波微粒子燃焼装置1の上流端面に配置される反射壁12と兼用させることができる。この場合は、酸化触媒の基材をメタルハニカムとし、あるいは少なくとも反射壁12となるタン面をマイクロ波反射材料で構成するかコーティングすることによって、構成部材を増加させることなく、高い排気浄化性能が得られる。
【0045】
図5(a)、(b)に本発明の排気浄化装置の第3、4実施形態を示す。図1の第1実施形態では、マイクロ波微粒子燃焼装置1の下流端部となる通気性のマイクロ波反射壁13を、共振部5の後端部に配置される可変反射板15と別体としているが、図示するように、これらを一体化し両方の機能を有する可変反射部材18を設けることもできる。図5(a)において、可変反射部材18は、排ガス上流側の端面が可変反射板15として構成され、通気性を有する金属部材からなり、両端開放の導波管11の下流端部に配設されている。導波管11の下流端部は排気通路2と一体となっている。可変反射部材18は、例えば、パンチングメタル、メタル触媒等を用いることができる。これにより、マイクロ波微粒子燃焼装置1の構成を簡略にでき、メタル触媒を用いた場合には、PM捕集後の排気後処理を簡易に行うことができる。
【0046】
さらに、図5(b)に示すように、マイクロ波微粒子燃焼装置1の下流側において、排気通路2を拡径し、テーパ状の拡径部に可変反射部材18を配置すれば、排気の流れが良好になり、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0047】
図6(a)、(b)に本発明の排気浄化装置の第5、6実施形態を示す。本実施形態は、図3(b)に示した電気集塵ユニット53の具体的構成例であり、PMを帯電させる粒子帯電部54と帯電させたPMの凝集粒子を集塵捕集する粒子保持部55を別々に設けた2段PM捕集装置を構成している。図6(a)において、粒子帯電部54は集塵電極となる粒子保持部55の前段に、具体的には、マイクロ波微粒子燃焼装置1のマイクロ波反射壁12より上流側に設けられ、導波管11の軸心に沿って帯電電極541を配置している。帯電電極541は、導波管11の管壁を貫通する絶縁支持部542にて支持され、外部から高電圧が印加される。帯電したPMは、マイクロ波反射壁12、可変スリット14を通過して、PM加熱部となる共振部5内に入り、粒子保持部55に保持される。図6(b)のように、粒子帯電部54の上流にマイクロ波反射壁12を配置してもよい。
【0048】
ここで、共振部5内のPM保持部位は、電圧・電流値(クーロン力)と排ガス流速により決まるため、粒子帯電部54の電力をPM排出マップとエンジン状態(吸気、燃料噴射、EGR量等)に従い変化させる。これにより、共振部5内の電界または磁界の強い位置に粒子保持部55を形成し、PM加熱を効果的に行うことができる。場合によっては、所望の粒子保持部位に粒子帯電部54とは逆極性の電圧(低電圧)を印加し、粒子保持部55の選択と保持効果を高めることができる。本方式は、方形導波管、円筒導波管のいずれに対しても有効であり、帯電電極541は通常使用されるいずれの形状であってもよい。
【0049】
図7に本発明の排気浄化装置の第7実施形態を示す。本実施形態の電気集塵ユニット53は、マイクロ波微粒子燃焼装置1の共振部5内に帯電電極531を配置するとともに、共振部5内にPMを集塵する。この構成では、帯電電極531の設置がマイクロ波の伝播に与える影響を極力小さくする必要がある。円筒導波管11を用いた場合、例えば、共振部5内の定在波の電界強度は、図示するようになるので、帯電電極531を支持する2つの絶縁碍子532を、電界強度が弱い位置に立設する。2つの絶縁碍子532間には、導波管11の軸心に沿って帯電電極531が支持される。帯電電極531の両端は2つの絶縁碍子532の中心孔を通って外部に引き出され、高電圧電源に接続される。帯電電極531は、例えば、直径0.1mm〜5mmのワイヤあるいは棒状電極であり、円筒導波管11の直径Aは、例えば、40mm〜120mmの範囲とすることが望ましい。
【0050】
図8(a)、(b)は本発明の排気浄化装置の第8、9実施形態であり、方形導波管11を用いて、電気集塵ユニット53を構成した例を示す。方形導波管11の場合も、電界強度が弱い位置に、帯電電極531を支持する2つの絶縁碍子532を配置するのがよい。図8(a)は、例えば共振部5のモードがTE10モードの場合であり、方形導波管11の幅B、高さC(B>C)に対して、長手方向側面(図では手前側面)から絶縁碍子532を挿入し、帯電電極451を支持することが望ましい。あるいは図8(b)のように、方形導波管11の上面から絶縁碍子532を挿入することもできる。
【0051】
このように、共振部5に電気集塵ユニット53を形成する場合には、共振を起こすため、帯電電極451をマイクロ波伝播阻害が小さい場所(電界強度の弱い場所=磁界強度の強い場所)に配置することが望ましい。これにより、マイクロ波伝播への影響を抑えることができる。また、電極磨耗を防ぐため、電界強度の強い位置に絶縁碍子532(電極)を配置しないことが望ましい。絶縁碍子532の材質は、誘電率、導電率、透磁率の低い物質、例えば高純度アルミナ、高純度シリカ等を用いる。帯電電極531の材質は、磁性を持たない、耐久性の高い物質、例えば、オーステナイト系ステンレス等を用いることが望ましい。
【0052】
また、図8(c)に示すように、帯電電極531となるワイヤや棒が突起を有すると放電率を高める効果がある。例えば、帯電電極531の複数箇所から上下に突出する突起533や星型の突起534を設けることで、空間内に放電を均等に発生させることができる。あるいは、帯電電極531の中央部を1つの絶縁碍子532で支持する構成とし、帯電電極531の両端を露出させたり、両端にさらに星型の突起534を設けたりしてもよい。
【0053】
図9(a)、(b)は、本発明の第10、11実施形態であり、マイクロ波微粒子燃焼装置1を含む排気浄化装置の全体構成を示している。図9(a)のように、エンジンEの排気通路2を分岐させてPMの捕集手段を複数設置する処理システムがあり、本発明は、このようなシステムにも適用することができる。図中、排気通路2は、途中で2つの分岐通路21、22に分岐しており、それぞれに微粒子燃焼装置1の共振部5が形成されて、マイクロ波発生部および伝送部を含むマイクロ波ユニットUからマイクロ波が導入されるようになっている。共振部5は、上記各実施形態と同様の構成とすることができ、詳細構成の図示および説明は省略する。ここでは、PMの捕集手段としてPM堆積部であるDPF52を採用して、共振部5内に配置する。この時、例えば図示しない通路切替弁によって、2つの分岐通路21、22を開閉し、交互にDPF52によるPM捕集と、微粒子燃焼装置1によるPM燃焼を行うことができ、PM捕集と再生が効率よく実施できる。
【0054】
次に、本発明のマイクロ波微粒子燃焼装置1を用いて実施される、ディーゼルエンジンの排気浄化処理について具体的に説明する。図10は、本発明の第12実施形態であり、図1の排気浄化装置の基本構成に、各種モニタ用のセンサ等を追加配置した例である。図11は、マイクロ波微粒子燃焼装置1による排気浄化処理のフローチャートである。図10において、マイクロ波微粒子燃焼装置1には、共振部5の上流側および下流側の圧力が導入される差圧センサSPが設けられ、前後差圧からPM堆積部51のPM堆積量を算出可能となっている。また、共振部5の下流の排気通路2に燃焼排ガス中のHC、NOx等を検出するガスセンサSGを設け、共振部5またはその近傍に温度センサSTを設けたりすることができる。あるいは、共振部5の上流または下流にPMセンサ(図示略)を設けることもでき、これらの検出結果に基づいて、マイクロ波微粒子燃焼装置1のPM堆積状態、燃焼状態を推定する。
【0055】
温度測定手段STは、例えば、共振部5内のPM堆積部51またはその周辺部、あるいは排気通路2との接続部に配置される反射壁13の温度を測定する。共振部5内部に配置する場合は、電界強度の小さい場所を選択することが望ましい。温度測定手段STとして、サーミスタや熱電対を用いる場合は、直径1mm〜10mm以上の比較的太いセンサ棒を用い、マイクロ波波長の整数倍、整数割りの長さを避けるとよい。また、温度測定手段STの外側に、数100nm〜数μmの金属めっき(例えば、鋼鉄、ニッケル、金、銀、銅、黄銅、アルミ等)を行うと、マイクロ波に阻害されずに温度の測定が可能となる。
【0056】
マイクロ波電源3に接続する伝送路4には、マイクロ波の伝送方向を調整するアイソレータ42、サーキュレータ43が配設され、サーキュレータ43の前後に設置されるパワーメータ43により、出射、反射それぞれのマイクロ波電力を測定可能となっている。なお、図10に示した構成は一例であり、図示したセンサ等を全て設置する必要はない。
【0057】
図示しない電子制御ユニットECUは、これらセンサ等の出力に基づいて、マイクロ波微粒子燃焼装置1を制御する。図11のフローチャートは排気浄化処理の一例を示すもので、まず、ステップS100では、エンジンEから排気通路2に排出されるPMをPM堆積部51にて捕集する。この時、PM堆積部51が電気集塵ユニット53である場合は、帯電電極531に印加される電力を調整して所定のコロナ放電を生起させる。
【0058】
ステップS101では、PM堆積部51へのPMの堆積量を推定する。PMの堆積量を推定するためのモニタ手法としては、下記のいずれか1つもしくは複数を併用する。
1)差圧センサSPを用いてPM堆積部51の前後差圧をモニタし、予め調べた前後差圧とPM堆積量の関係を用いて推定する。
2)エンジンEの運転履歴と排出マップにより知られるPM排出量から堆積量を推定する。
3)排気通路2に排出されるPM量をPMセンサにより直接検出し、堆積量を推定する。
4)電気集塵ユニット53を用いる場合は、消費電流量(電力)にて推定することも可能である。
【0059】
ステップS102では、ステップS101で推定したPM堆積量が、予め設定した閾値以上であるか否かを判定する。肯定判定された場合は、ステップS103へ進み、PM酸化によるPM堆積部51の再生が必要と判断して、ステップS104以降の処理を行う。ステップS102が否定判定された場合は、S100へ戻り、PM堆積量が閾値以上となるまでPM堆積量の推定を繰り返す。
【0060】
ステップS104では、ステップS101で推定したPM堆積量、エンジン状態に応じて、共振部5の可動部(可変スリット14、可変反射板15)、周波数(周波数可変のマイクロ波電源3の場合)を決定する。例えば、PM堆積量と、エンジンEの運転状態(排気流量、温度、水分濃度、酸素濃度)に基づいて、予め実験等を行って作成した可変部位マップ、周波数マップを用い、スタート位置を決定する。場合によっては、エンジン燃焼をPM酸化モード(高酸素濃度、低排ガス流量、高排ガス温度)に変更することもできる。例えば、酸素濃度の増加にはEGRカットを、排ガス流量の低減には吸気絞りを採用する。
【0061】
共振状態の制御方法は、共振部5の可動部、周波数を変化させる他、連動させてエンジン運転状態を変える方法がある(吸気量、燃焼噴射量、EGR量、気筒休止等)。例えば、排気流量、温度、水分濃度、酸素濃度を変化させ、それ自体の持つ物性影響で共振器内のインピーダンスZ(L、R、C)を変化させる。また、エンジン運転状態(酸素量、ガス流量)が変わることでPMの酸化状態(発熱、放熱)が変化し、結果的にL、R、Cが変化し共振状態が変化する。したがって、本発明では、マイクロ波加熱がスタートした後、マイクロ波照射中においても、共振状態の変化に追従して各種調整を行い、共振状態を保持する。
【0062】
そこで、ステップS105では、ステップS104で決定したスタート位置となるように、可変スリット14、可変反射板15の可変機構を駆動し、周波数を調整する。次いで、ステップS106でマイクロ波電源3を作動させて、マイクロ波の照射を開始する。さらに、ステップS107以降で、マイクロ波加熱によるPM酸化の状態をモニタし、最適化する。
【0063】
ステップS107では、PM酸化値が閾値以下であるか否かを判定する。PM酸化値は、マイクロ波加熱が適切に行われていることを判断する指標となるもので、酸化が起こっている状態にある、共振状態にある、PM温度が高状態にある、のいずれかの状態にあることをモニタできる値であればよい。予め設定した閾値以下であれば、マイクロ波加熱(共振状態)を調整するためにステップS108へ進む。
【0064】
PMが加熱されている状態(共振の強さ)のモニタ手法としては、以下の手法がある。
1)差圧センサSPを用いてPM堆積部51の前後差圧をモニタする。PM酸化による前後差圧の変化を検出することができる。
2)マイクロ波伝送、反射の電圧、電流(電力値、定在波比)をモニタする。
例えば、伝送路4に設置したパワーメータ43、共振部5内空間に設置した電磁波吸収アンテナ、アイソレータ42の温度上昇、電気抵抗、電流変化等に基づいて、共振部5内への伝送電力、共振部5内の共振状態を検出することができる。
3)温度測定手段STを用いてPM堆積部51の温度をモニタする。
例えば、放射温度計、サーミスタ、熱電対などの温度測定手段STを、共振部5(PM堆積部51)に配置してモニタする、温度測定手段STを共振部5の後段に配置し酸化によるガス温度上昇をモニタする、共振部5の外壁面、あるいは共振部51壁面に温度測定手段STを埋め込み、温度をモニタすることで、PMの酸化熱によるPM堆積部51の温度上昇を検出することができる。
4)共振部5の後段に配置したガスセンサSGにより酸化初期や酸化中に生成するガス(HC、NOx)を検出する、あるいはPMセンサを配置し、燃え残って漏れ出てくるPMを検出することで、PM酸化の進行状態を検出することが可能である。
【0065】
ステップS107では、上記各種センサによりモニタされたPM酸化値が、予め設定した閾値(例えば、差圧が一定量、一定時間に減少した場合、伝送電力が一定量、一定時間投入された場合、温度が一定量、一定時間に上昇した場合等)を超えていれば、マイクロ波加熱中(共振状態が保持されている)と判断できる。そこで、ステップS107が肯定判定された場合は、ステップS109へ進んで現在の状態を保持したまま、続くステップS110へ進む。
【0066】
ステップS108では、周波数または可変反射板15を用いて共振状態を調整する。例えばマイクロ波電源3がマグネトロンの場合は、可変反射板15の位置を可変機構により調整して、共振部5の共振状態を最適化させる。同時に、共振部5内に導入される排ガスの酸素量調整(吸気量、EGR量の調整)を併用すると効果を高めることができる。
【0067】
次いで、ステップS110に進み、マイクロ波加熱の終了時期を判断するために、上記センサ等によりモニタされるPM酸化値から、所定の酸化終了閾値に達したか否かを判定する。酸化終了閾値に達していなければ、ステップS107へ戻り、以降のステップを繰り返す。酸化終了閾値は、例えば、差圧が一定以下に減少した場合、伝送電力の投入量が一定量を超えた場合、温度が一定以上に上昇した場合等、適宜設定することができる。ステップS110が肯定判定されると、ステップS111へ進んでマイクロ波の照射を終了する。
【0068】
図12は、本フローチャートに基づいてPM堆積部51に捕集したPMの酸化処理を行った場合のタイムチャートである。例えば、PM酸化値として、PM堆積部51の温度をモニタしている場合、図12(c)に示すように、理想的な状態でマイクロ波加熱が実施されていれば、ステップS106のマイクロ波照射と同時に、PM堆積部51の温度が急上昇する。これは、共振部5内に導入されたマイクロ波が直接PMに吸収されるためであり、従来のようにマイクロ波吸収材を使用しないのでエネルギロスが小さい。したがって、共振状態の調整をすることなく、ステップS109の現状保持を継続する。その後、PM堆積部51が一定温度以上(例えば、PM燃焼温度以上)となれば、エネルギ投入を停止しても燃焼は容易に継続するので、ステップS111でマイクロ波照射を終了する。PM堆積部51の温度は、PM燃焼により一定期間高い状態が続き、PMが除去されると急降下して再生が完了する。
【0069】
これに対して、図12(a)は、初期調整のずれにより、PM酸化値が低い(共振が起こっていない)場合であり、ステップS106でマイクロ波照射した後に、温度が十分上昇していない。そこで、ステップS107で可変反射板15(または周波数)を最適化する。この調整により、PM酸化値が正常となったら、その後は、図12(c)と同様の処理を行なう。図12(b)は、マイクロ波照射直後は、良好に温度上昇するものの、運転状態等の影響で共振部5内の状態が変化し、PM酸化値が低下した(共振が起こっていない)場合である。この場合は、ステップS109の現状保持を継続した後、ステップS107で可変反射板15(または周波数)を最適化し、再び温度を上昇させる。その後は、図12(c)と同様の処理を行なう。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明の微粒子燃焼装置を備える排気浄化装置は、自動車用ディーゼルエンジンから排出される微粒子状物質を捕集し、マイクロ波加熱により急速加熱して、速やかに燃焼除去することができる。また、ディーゼルエンジンに限らず、エンジンの排気通路に排出される微粒子状物質を捕集するシステムのいずれにも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0071】
E ディーゼルエンジン(内燃機関)
1 微粒子燃焼装置
11 微粒子燃焼装置
12、13 マイクロ波反射壁
14 可変スリット(導入口)
15 可変反射板(反射板)
16 可動部材
17 可変絞り孔(導入口)
2 排気通路
3 マイクロ波電源(マイクロ波発生部)
4 伝送路(マイクロ波伝送部)
41 開口部(接続部)
5 共振部(定在波発生空間)
51 PM堆積部
52 DPF(パティキュレートフィルタ)
53 電気集塵ユニット(静電式フィルタ)
6 未燃分酸化部(除去部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に排出される炭素微粒子を含む微粒子状物質を、シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置によって燃焼除去する排気浄化装置であって、
上記シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置は、
マイクロ波発生部と、
マイクロ波発生部から発振されるマイクロ波を上記排気通路内へ伝送するためのマイクロ波伝送部と、
上記排気通路内において、上記マイクロ波伝送部との接続部よりも下流側に設けられる定在波発生空間とを備え、
上記定在波発生空間は、一端側にマイクロ波ととともに排気を通過させる導入口を有し、他端側にマイクロ波を反射する反射板を排気流れ方向に対向するよう配置した構成であり、
上記定在波発生空間に、排気中の微粒子状物質が堆積する微粒子堆積部を設けて、堆積した微粒子状物質をマイクロ波エネルギにより加熱燃焼させることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
上記定在波発生空間内における微粒子状物質の加熱状態を調整する調整手段を備える請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
上記反射板は、排気流れ方向に対して位置変更が可能な可変機構を備える反射板である請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
上記導入口は、その開口面積を変更可能な可変機構を備えるスリットまたは絞り孔である請求項2または3記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
上記調整手段は、上記可変機構を制御することにより、上記定在波発生空間内の共振状態を調整する請求項3または4記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
上記微粒子堆積部は、上記定在波発生空間内における定在波の電界強度もしくは磁界強度が最大となる位置を含んだ場所に設けられる請求項1ないし5のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
上記微粒子堆積部は、パティキュレートフィルタである請求項1ないし6のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
上記微粒子堆積部は、静電式フィルタである請求項1ないし7のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
上記静電式フィルタは、上記定在波発生空間の内部に集塵電極を配置し、上記定在波発生空間内またはその上流に帯電電極を備える電気集塵式ユニットである請求項8記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
上記定在波発生空間より上流側の上記排気通路に、可溶性有機成分または炭化水素成分を捕集もしくは酸化により除去する除去部を備える請求項1ないし9のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
上記マイクロ波発生部に、使用周波数領域が100MHz〜10GHzであり、周波数ブレ±20MHz以下のマグネトロンもしくは半導体電源を用いる請求項1ないし10のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に排出される炭素微粒子を含む微粒子状物質を、シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置によって燃焼除去する排気浄化装置であって、
上記シングルモードのマイクロ波微粒子燃焼装置は、
マイクロ波発生部と、
マイクロ波発生部から発振されるマイクロ波を上記排気通路内へ伝送するためのマイクロ波伝送部と、
上記排気通路内において、上記マイクロ波伝送部との接続部よりも下流側に設けられる定在波発生空間とを備え、
上記定在波発生空間は、一端側にマイクロ波ととともに排気を通過させる導入口を有し、他端側にマイクロ波を反射する反射板を排気流れ方向に対向するよう配置した構成であり、
上記定在波発生空間に、排気中の微粒子状物質が堆積する微粒子堆積部を設けて、堆積した微粒子状物質をマイクロ波エネルギにより加熱燃焼させることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
上記定在波発生空間内における微粒子状物質の加熱状態を調整する調整手段を備える請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
上記反射板は、排気流れ方向に対して位置変更が可能な可変機構を備える反射板である請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
上記導入口は、その開口面積を変更可能な可変機構を備えるスリットまたは絞り孔である請求項2または3記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
上記調整手段は、上記可変機構を制御することにより、上記定在波発生空間内の共振状態を調整する請求項3または4記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
上記微粒子堆積部は、上記定在波発生空間内における定在波の電界強度もしくは磁界強度が最大となる位置を含んだ場所に設けられる請求項1ないし5のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
上記微粒子堆積部は、パティキュレートフィルタである請求項1ないし6のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
上記微粒子堆積部は、静電式フィルタである請求項1ないし7のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
上記静電式フィルタは、上記定在波発生空間の内部に集塵電極を配置し、上記定在波発生空間内またはその上流に帯電電極を備える電気集塵式ユニットである請求項8記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
上記定在波発生空間より上流側の上記排気通路に、可溶性有機成分または炭化水素成分を捕集もしくは酸化により除去する除去部を備える請求項1ないし9のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
上記マイクロ波発生部に、使用周波数領域が100MHz〜10GHzであり、周波数ブレ±20MHz以下のマグネトロンもしくは半導体電源を用いる請求項1ないし10のいずれか記載の内燃機関の排気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−252387(P2011−252387A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124470(P2010−124470)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]