説明

内燃機関の燃料装置

【課題】本発明は、内燃機関の燃料装置に関し、燃料中に生成した有機酸による悪影響を抑制することを目的とする。
【解決手段】酸化劣化により有機酸を生成し得る成分を含む燃料で運転可能な内燃機関10のための燃料装置であって、有機酸と反応して有機酸塩を生成し得る物質を酸除去剤として収納した酸除去剤充填筒28と、燃料タンク16に貯留された燃料を酸除去剤充填筒28に送る燃料供給手段と、酸除去剤と燃料中の有機酸とが反応することによって生成した有機酸塩を濾過により除去する濾過部29と、を備える。酸除去剤充填筒28の酸除去剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体または化合物であって、有機酸との反応により燃料に不溶性の有機酸塩を生成するものであり、例えばCa(カルシウム)が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスから生産される成分を含んだバイオ燃料が自動車用エンジンの燃料として用いられている。特開2009−13884号公報に開示されているように、バイオマスから生産された燃料成分は酸化し易く、酸化によりカルボン酸等の有機酸を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−13884号公報
【特許文献2】特開2002−138871号公報
【特許文献3】特開2006−137360号公報
【特許文献4】特開2004−339504号公報
【特許文献5】特開2009−191165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料中に有機酸が生成すると、その有機酸により、燃料系の金属部品の腐食やゴム部品の膨潤を招いたり、金属部品から溶出した金属が燃料フィルタを詰まらせたり、燃料インジェクタにデポジットが堆積したりするなどの悪影響を生ずるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、燃料中に生成した有機酸による悪影響を抑制することのできる内燃機関の燃料装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の燃料装置であって、
酸化劣化により有機酸を生成し得る成分を含む燃料で運転可能な内燃機関のための燃料装置であって、
前記有機酸と反応して有機酸塩を生成し得る物質を酸除去剤として収納した酸除去剤収納部と、
前記内燃機関の燃料タンクに貯留された燃料を前記酸除去剤収納部に送る燃料供給手段と、
前記酸除去剤と前記燃料中の有機酸とが反応することによって生成した有機酸塩を濾過により除去する濾過部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記酸除去剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体または化合物であって、前記有機酸との反応により前記燃料に不溶性の有機酸塩を生成するものであることを特徴とする。
【0008】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記濾過部を通過した燃料を前記燃料タンクに戻す流路を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第4の発明は、第3の発明において、
前記濾過部を通過した燃料を前記流路を通して前記燃料タンクに戻すことにより燃料を循環させて前記有機酸を除去する場合に、前記濾過部の圧力損失を検出する圧力損失検出手段と、
前記圧力損失検出手段により検出される圧力損失の増加傾向が止まったと判断された場合に前記有機酸の除去が完了したと判定する手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第5の発明は、第1または第2の発明において、
燃料供給手段は、燃料タンク内の燃料を内燃機関側に送るための燃料ポンプを用いて、燃料タンク内の燃料を酸除去剤収納部に供給するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、
前記燃料タンク内の燃料の酸化劣化を判定する判定手段と、
前記燃料タンク内の燃料が酸化劣化していると判定された場合に、前記燃料供給手段により燃料を前記酸除去剤収納部に送る手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、第7の発明は、第6の発明において、
前記燃料タンクに設置され、燃料に含まれる酸素原子の量と相関する指標値を検出する酸素含有量検出手段を備え、
前記判定手段は、前記酸素含有量検出手段により検出された指標値の、給油時からの増加量が所定値を超えた場合に、前記燃料タンク内の燃料が酸化劣化していると判定することを特徴とする。
【0013】
また、第8の発明は、第6の発明において、
前記燃料タンクにバイオ燃料が給油されたことを検知する給油検知手段を備え、
前記判定手段は、バイオ燃料の給油が検知された時から所定期間が経過した場合に、前記燃料タンク内の燃料が酸化劣化していると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、燃料成分の酸化劣化により生成した有機酸を確実に除去することができる。このため、燃料系部品の劣化やデポジットの堆積など、有機酸による悪影響を回避することができる。
【0015】
第2の発明によれば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体または化合物であって、有機酸との反応により燃料に不溶性の有機酸塩を生成するものを酸除去剤として用いることにより、燃料中の有機酸をより確実に除去することができる。
【0016】
第3の発明によれば、濾過部を通過して有機酸が除去された燃料を燃料タンクに戻すことができるので、燃料タンク内から有機酸を排除することができる。
【0017】
第4の発明によれば、濾過部の圧力損失の変化に基づいて、有機酸の除去の完了を精度良く判定することができる。
【0018】
第5の発明によれば、既存の燃料ポンプを用いて燃料を酸除去剤収納部に供給することができるので、専用のポンプが不要となり、軽量化やコスト低減が図れる。
【0019】
第6の発明によれば、必要な場合にのみ燃料を酸除去剤収納部に送ることができるので、有機酸の除去に要するエネルギーを節減することができる。
【0020】
第7の発明によれば、燃料タンク内の燃料の酸化劣化を精度良く判定することができる。
【0021】
第8の発明によれば、燃料タンク内の燃料の酸化劣化を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2のシステム構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0024】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは、車両に搭載される内燃機関10と、燃料タンク16と、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)50とを備えている。本実施形態の内燃機関10は、ディーゼルエンジンである。この内燃機関10は、バイオマスから生産されるバイオマス由来成分(本実施形態では、脂肪酸メチルエステルとする)を化石燃料(本実施形態では、軽油とする)に混合した燃料(以下「バイオ燃料」という)で運転可能になっている。脂肪酸メチルエステルは、例えば菜種、廃食油等のバイオマスから生産することができる。
【0025】
内燃機関10の各気筒12には、筒内に燃料を噴射するための燃料インジェクタ14が設けられている。内燃機関10が使用するバイオ燃料は、燃料タンク16に貯留されている。燃料タンク16に貯留された燃料は、燃料フィルタ17を通って燃料ポンプ18に送られ、燃料ポンプ18により加圧されて、コモンレール20内に貯留される。各気筒の燃料インジェクタ14は、燃料パイプ21によりコモンレール20に接続されている。コモンレール20内の燃料は、燃料パイプ21を通って、各気筒12の燃料インジェクタ14に送られる。
【0026】
燃料インジェクタ14には、燃料リターンパイプ22が更に接続されている。燃料インジェクタ14で噴射されなかった燃料は、燃料リターンパイプ22を通って、燃料タンク16に戻る。また、コモンレール20も、減圧弁23を介して、燃料リターンパイプ22に接続されている。コモンレール20内で余剰となった燃料は、減圧弁23を通って燃料リターンパイプ22に送られ、燃料タンク16に戻る。
【0027】
燃料タンク16には、燃料中のバイオマス由来成分の濃度(以下、「バイオ成分濃度」と称する)を検出することのできる燃料性状センサ24(酸素含有量検出手段)が設置されている。燃料性状センサ24は、燃料タンク16に貯留された燃料の誘電率あるいは吸光度などの物理量(指標値)を検出するセンサで構成されている。化石燃料が炭化水素で構成されているのに対し、バイオマス由来成分は酸素原子を含む化合物で構成されている。このため、バイオ成分濃度が高くなるほど、バイオ燃料の酸素原子含有量は多くなる。そして、バイオ燃料の酸素原子含有量は、バイオ燃料の誘電率や吸光度などの物理量と相関することが知られている。よって、燃料性状センサ24によってバイオ燃料の誘電率あるいは吸光度などを検出することにより、燃料タンク16に貯留されたバイオ燃料のバイオ成分濃度を検出することができる。
【0028】
バイオマス由来成分は、不飽和結合(二重結合)を含んでいるなどの理由から、酸化劣化し易いという性質がある。例えば脂肪酸メチルエステルの場合、この酸化劣化の反応は、次式で表される。
【0029】
【化1】

【0030】
上記(1)式に示すように、バイオマス由来成分が酸化すると、カルボン酸等の有機酸(以下、「カルボン酸」で代表する)が生成される。このようにして燃料中にカルボン酸が生成すると、燃料系の金属部品(燃料インジェクタ14、燃料パイプ等)の腐食やゴム部品の膨潤を招いたり、金属部品から溶出した金属が燃料フィルタ17を詰まらせたり、燃料インジェクタ14にデポジットが堆積したりするなどの悪影響を生ずるおそれがある。
【0031】
本実施形態のシステムは、上記のような悪影響を回避するため、燃料中のカルボン酸を除去するための酸除去装置25を備えている。図1に示すように、酸除去装置25は、燃料タンク16内から燃料を汲み上げ、その燃料をまた燃料タンク16へ戻す循環流路26を備えている。循環流路26の途中には、ポンプ27と、酸除去剤充填筒28(酸除去剤収納部)と、濾過部29とが上流側からこの順で配置されている。
【0032】
カルボン酸は、金属と反応することにより、カルボン酸塩(有機酸塩)を生成する。金属元素を記号Mで表すと、カルボン酸と金属Mと反応は、自然数nを用いて、次式で表すことができる。
【0033】
【化2】

【0034】
酸除去剤充填筒28には、カルボン酸と上記(2)式の反応をすることにより、燃料に不溶性のカルボン酸塩を生成する金属Mの単体または化合物からなる物質が酸除去剤として収納されている。酸除去剤は、例えばペレット状などの固体の状態で酸除去剤充填筒28に収納されている。
【0035】
ポンプ27が作動して燃料タンク16内の燃料が循環流路26を通って酸除去剤充填筒28に送られると、燃料に含まれるカルボン酸の影響によって酸除去剤から金属Mが溶け出す。溶け出した金属Mは、カルボン酸と反応して、不溶性のカルボン酸塩を生成する。生成したカルボン酸塩は、燃料とともに濾過部29に流れる。濾過部29内には、カルボン酸塩を濾過して除去することのできる除去フィルタが設置されている。カルボン酸塩は、燃料に不溶性であるので、濾過部29の除去フィルタによって濾別されて除去される。このため、カルボン酸塩を含まない燃料のみが燃料タンク16に戻される。このように、酸除去装置25のポンプ27を作動させて燃料を循環流路26に循環させることにより、燃料タンク16内の燃料からカルボン酸を効率良く除去することができる。このため、カルボン酸による上述したような悪影響が生ずることを回避することができる。
【0036】
酸除去剤の金属Mとしては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましい。これらは、イオン化傾向が大きいので、容易に溶出して、燃料中のカルボン酸と効率良く反応するからである。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の中でも、容易且つ安価に入手できるなどの点で、Ca(カルシウム)が酸除去剤の金属Mとして特に好適である。この場合、酸除去剤としては、単体の金属カルシウムでも、例えば炭酸カルシウムのようなカルシウム化合物でも、どちらでもよい。
【0037】
濾過部29の除去フィルタの種類は、特に限定されないが、例えばメンブレンフィルタ等を用いることが好ましい。孔径は0.2μm程度が好ましい。
【0038】
酸除去装置25を作動させるとポンプ27が電力を消費するので、燃費節減の観点からは、燃料タンク16内の燃料に含まれるカルボン酸の量が許容値を超えた場合にのみ、酸除去装置25を作動させることが望ましい。そこで、本実施形態では、燃料タンク16内の燃料の酸化劣化判定を行い、燃料が酸化劣化していると判定された場合に、酸除去装置25を作動させることとした。
【0039】
図2および図3は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図2に示すルーチンによれば、まず、燃料タンク16への給油があったかどうかが判定される(ステップ100)。給油の有無を検知する方法は、特に限定されないが、例えば、燃料タンク16の油量計(図示せず)で検出される油量の増加、あるいは燃料タンク16の注入口のキャップの開閉を検知するセンサ(図示せず)などによって検知すればよい。
【0040】
上記ステップ100で、燃料タンク16への給油があったと判定された場合には、その給油後における燃料性状センサ24の検出値が初期酸素濃度Cとして記憶される(ステップ102)。前述したように、燃料性状センサ24は、バイオ燃料の酸素原子含有量と相関する物理量を検出している。バイオ燃料中のバイオマス由来成分の酸化劣化が進行するほど、その酸化反応により空気中の酸素原子が燃料中に取り込まれるので、バイオ燃料の酸素原子含有量が増加していく。このため、燃料性状センサ24の検出値を給油時の値と比較することにより、酸化劣化の進行度合い、すなわちカルボン酸の生成量を判定することができる。
【0041】
上述した図2に示すルーチンによって給油直後の初期酸素濃度Cが検出されると、次回の給油によって初期酸素濃度Cが更新されるまで、図3に示すルーチンが定期的に実行される。図3に示すルーチンによれば、まず、現在の燃料性状センサ24の検出値Cと、初期酸素濃度Cとの差(C−C)が所定の判定値Cより大きいかどうかが判定される(ステップ110)。(C−C)がC以下であった場合には、燃料タンク16内の燃料に含まれるカルボン酸の量は許容範囲内であると判断できる。この場合には、本ルーチンの処理がここで終了される。
【0042】
これに対し、上記ステップ110で、(C−C)がCを超えていた場合には、燃料タンク16内の燃料に含まれるカルボン酸の量が許容範囲を超えたと判断できる。そこで、この場合には、カルボン酸を除去するべく、酸除去装置25のポンプ27が作動される(ステップ112)。これにより、循環流路26に燃料が循環し、酸除去剤充填筒28および濾過部29によって燃料中のカルボン酸が除去されていく。燃料中のカルボン酸が除去されていくと、燃料の酸素原子含有量が減少するので、燃料性状センサ24の検出値Cも低下していく。ステップ114では、(C−C)がC未満になったかどうかが判定される。(C−C)がC未満に低下していれば、燃料タンク16内の燃料に含まれるカルボン酸の量は許容範囲内まで低下したと判断できる。そこで、(C−C)がC未満であると判定された場合には、カルボン酸の除去が完了したと判断し、酸除去装置25のポンプ27が停止される(ステップ116)。
【0043】
なお、酸除去装置25を作動させる場合は、これを内燃機関10の停止中(車両の停止中)に行うようにしてもよい。
【0044】
また、カルボン酸の除去が完了したかどうかを判定する方法、すなわち酸除去装置25の作動を停止すべきタイミングを判定する方法は、上記の例に限定されるものではない。例えば、酸除去装置25を一定時間作動した時点でカルボン酸の除去が完了したと判定してもよい。あるいは、次のようにして判定してもよい。濾過部29内の除去フィルタにカルボン酸塩が堆積していくと、燃料の通過抵抗が増大するので、濾過部29の圧力損失が増加していく。図1に示すように、濾過部29の上流側と下流側とにそれぞれ圧力センサ30,31を設けることにより、濾過部29の圧力損失を検出することができる。燃料タンク16内のカルボン酸が除去されれば、酸除去剤充填筒28に燃料が供給されても、もはやカルボン酸塩が生成されないので、濾過部29の圧力損失がそれ以上増加することはない。そこで、酸除去装置25の作動中に濾過部29の圧力損失の変化を圧力センサ30,31により検出し、この圧力損失の増加傾向が止まったと判断された時点で、カルボン酸の除去が完了したと判定して、酸除去装置25の作動を停止するようにしてもよい。
【0045】
また、燃料タンク16内の燃料が酸化劣化したかどうかを判定する方法、すなわち酸除去装置25を作動すべきタイミングを判定する方法は、上記の例に限定されるものではない。例えば、燃料タンク16にバイオ燃料が給油されたことを燃料性状センサ24の検出値あるいはユーザーの操作などによって検知し、その給油時から所定期間(例えば20日間)が経過した場合に、燃料タンク16内の燃料が酸化劣化したと判定して、酸除去装置25を作動させるようにしてもよい。
【0046】
また、燃料事情の悪い地域あるいは国では、初めから酸化劣化したバイオ燃料が燃料タンク16に給油されることも考えられる。そのような場合には、バイオ燃料を給油した後にユーザーが手動で酸除去装置25の作動を開始できるようなスイッチを設ける構成にしてもよい。あるいは、給油直後に自動的に酸除去装置25を作動させるようにしてもよい。給油したバイオ燃料が初めから酸化劣化しており、カルボン酸が含まれていた場合には、酸除去装置25の作動中、カルボン酸が除去されていくことによって、燃料性状センサ24の検出値が低下していく。そこで、給油直後に自動的に酸除去装置25の作動を開始した後、燃料性状センサ24の検出値の変化を分析し、燃料性状センサ24の検出値が低下していった場合には、給油したバイオ燃料が酸化劣化していたものと判断できる。この場合には、燃料性状センサ24の検出値の低下が止まるまで、酸除去装置25の作動を続けるようにすればよい。一方、給油直後に自動的に酸除去装置25の作動を開始した後に、燃料性状センサ24の検出値が変化しない場合には、給油したバイオ燃料が酸化劣化していないと判断し、酸除去装置25の作動を停止すればよい。
【0047】
実施の形態2.
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。
【0048】
図4は、本発明の実施の形態2のシステム構成を説明するための図である。図4に示すように、本実施形態のシステムでは、燃料タンク16と燃料ポンプ18とを結ぶ第1流路33の途中に三方弁34が設置されている。三方弁34からは、燃料タンク16へ向かって第2流路35が分岐している。この第2流路35の途中に、酸除去剤充填筒28と濾過部29とが配置されている。
【0049】
三方弁34は、第1流路33を燃料ポンプ18に連通させる状態と、第2流路35を燃料ポンプ18に連通させる状態とに切り換え可能になっている。燃料タンク16内の燃料が酸化劣化していると判定された場合、すなわち燃料にカルボン酸が含まれている場合には、第2流路35を燃料ポンプ18に連通させる状態にする。この状態では、燃料タンク16内の燃料は、酸除去剤充填筒28および濾過部29を通って燃料ポンプ18により汲み上げられ、そのまま内燃機関10側(コモンレール20)へ送られる。これにより、酸除去剤充填筒28および濾過部29にてカルボン酸を除去した燃料を内燃機関10側へ送ることができるので、カルボン酸による部品腐食やデポジット堆積などの悪影響を回避することができる。
【0050】
一方、燃料タンク16内の燃料にカルボン酸が含まれていないと判定された場合には、第1流路33を燃料ポンプ18に連通させる状態に三方弁34を切り換える。これにより、燃料タンク16内の燃料は、酸除去剤充填筒28および濾過部29を通らずに、第1流路33の燃料フィルタ17を通って、内燃機関10側へ送られる。
【0051】
本実施形態では、実施の形態1におけるポンプ27のような専用のポンプが不要となるので、装置構成を簡素化でき、軽量化やコスト低減が図れる。
【符号の説明】
【0052】
10 内燃機関
12 気筒
14 燃料インジェクタ
20 コモンレール
24 燃料性状センサ
25 酸除去装置
26 循環流路
27 ポンプ
28 酸除去剤充填筒
29 濾過部
30,31 圧力センサ
33 第1流路
34 三方弁
35 第2流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化劣化により有機酸を生成し得る成分を含む燃料で運転可能な内燃機関のための燃料装置であって、
前記有機酸と反応して有機酸塩を生成し得る物質を酸除去剤として収納した酸除去剤収納部と、
前記内燃機関の燃料タンクに貯留された燃料を前記酸除去剤収納部に送る燃料供給手段と、
前記酸除去剤と前記燃料中の有機酸とが反応することによって生成した有機酸塩を濾過により除去する濾過部と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料装置。
【請求項2】
前記酸除去剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体または化合物であって、前記有機酸との反応により前記燃料に不溶性の有機酸塩を生成するものであることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料装置。
【請求項3】
前記濾過部を通過した燃料を前記燃料タンクに戻す流路を備えることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の燃料装置。
【請求項4】
前記濾過部を通過した燃料を前記流路を通して前記燃料タンクに戻すことにより燃料を循環させて前記有機酸を除去する場合に、前記濾過部の圧力損失を検出する圧力損失検出手段と、
前記圧力損失検出手段により検出される圧力損失の増加傾向が止まったと判断された場合に前記有機酸の除去が完了したと判定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項3記載の内燃機関の燃料装置。
【請求項5】
前記燃料供給手段は、前記燃料タンク内の燃料を前記内燃機関側に送るための燃料ポンプを用いて、前記燃料タンク内の燃料を前記酸除去剤収納部に供給するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の燃料装置。
【請求項6】
前記燃料タンク内の燃料の酸化劣化を判定する判定手段と、
前記燃料タンク内の燃料が酸化劣化していると判定された場合に、前記燃料供給手段により燃料を前記酸除去剤収納部に送る手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の燃料装置。
【請求項7】
前記燃料タンクに設置され、燃料に含まれる酸素原子の量と相関する指標値を検出する酸素含有量検出手段を備え、
前記判定手段は、前記酸素含有量検出手段により検出された指標値の、給油時からの増加量が所定値を超えた場合に、前記燃料タンク内の燃料が酸化劣化していると判定することを特徴とする請求項6記載の内燃機関の燃料装置。
【請求項8】
前記燃料タンクにバイオ燃料が給油されたことを検知する給油検知手段を備え、
前記判定手段は、バイオ燃料の給油が検知された時から所定期間が経過した場合に、前記燃料タンク内の燃料が酸化劣化していると判定することを特徴とする請求項6記載の内燃機関の燃料装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−149403(P2011−149403A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13461(P2010−13461)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】