説明

内燃機関のEGRクーラ

【課題】EGRガス及び冷却水の流路抵抗の増大を抑制して、熱電素子の変換効率を向上できる内燃機関のEGRクーラを提供する。
【解決手段】断面四角形の筒状をなすようにEGRガス流路21を形成し、このEGRガス流路21の外側の4面にそれぞれ熱電素子23を配置すると共に、EGRガス流路21に沿った筒状をなす冷却水流路22によりEGRガス流路21を包み込んで内部に冷却水を流通させる。これにより、熱電素子23の高温端面23a及び低温端面23bの面積を十分に確保した上で、分流や合流による流路抵抗の増大を抑制ながらEGRガス及び冷却水を円滑に流通させ、熱電素子23への受熱及び放熱を効率よく行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関のEGR装置に設けられたEGRクーラに係り、詳しくはEGRガスが有する熱エネルギを電気エネルギに変換して回収する機能を有するEGRクーラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温の排ガスを排出する自動車などでは、排ガスが有する熱エネルギを電気エネルギに変換して回収し、これによりオルタネータの発電量を減少させて内燃機関の燃費低減を図るようにした発電装置が提案されている。この種の発電装置は内燃機関の排ガス流路上の何れかの箇所に設ける必要があり、例えばEGRクーラに設けられる。
周知のようにEGRクーラは、内燃機関の排気側から吸気側に排ガスをEGRガスとして環流させるEGR装置の構成部品であり、内部を流通する冷却水によりEGRガスを冷却する役割を果たしている。このようなEGRクーラに発電装置を設ける場合には、EGRガスと冷却水との間に熱電素子を介装し、この熱電素子のゼーベック効果により熱起電力を発生させて発電を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
当該特許文献1の技術では、EGRクーラのケーシング内に3層のEGRガス流路と4層の冷却水流路とを交互に重なるように配置し、各EGRガス流路と冷却水流路との間にそれぞれ熱電素子を介装して構成されている。内燃機関の運転時には、EGRガス流路内を流通するEGRガスにより熱電素子の高温端面が受熱する一方、冷却水流路内を流通する冷却水により熱電素子の低温端面が放熱する。このため、各熱電素子の高温端面と低温端面との間には温度差が生じ、この温度差を利用して各熱電素子が熱起電力を発生させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/026432号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたEGRクーラは、熱電素子による効率的な変換を実現できる構成とは言い難かった。
即ち、熱電素子の熱エネルギから電気エネルギへの変換効率は、熱電素子の配置、数、重量、或いはEGRクーラ内を流通するEGRガス及び冷却水の流路抵抗などの要件が複雑に関係し、これらの各要件をバランスよく満足させなければ良好な変換効率は実現できない。特許文献1のEGRクーラがEGRガス流路と冷却水流路とを多層構造としているのは、各熱電素子の高温端面と低温端面の面積、換言すればEGRガスと冷却水との熱交換に利用される面積を可能な限り広く確保することを重視した結果であるが、その反面、多層構造を採用したことによりEGRガス及び冷却水の流路抵抗が極端に増大している。
【0006】
具体的には、EGRクーラ内への流入時においてEGRガスは3方向に、冷却水は4方向に流通方向を変更しながら分流され、EGRクーラ内からの流出時においてEGRガスは3方向から、冷却水は4方向から流通方向を変更しながら合流する。これらの分流及び合流の際にEGRガス及び冷却水は大きな流路抵抗を生じて円滑な流通が困難になり、結果として、上記のようにEGRガスと冷却水との熱交換面積を確保しているにも拘わらず、熱電素子の変換効率は十分なものとは言い難かった。特にEGRガスに対する流通抵抗の増大は、熱電素子の変換効率への影響だけでなく、EGR機能の低下、ひいては内燃機関の性能や排ガス特性の悪化に繋がるものであることから、デメリットの方が大であると言わざるを得なかった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、EGRガス及び冷却水の流路抵抗の増大を抑制してこれによる弊害を未然に回避した上で、熱電素子の変換効率を向上することができる内燃機関のEGRクーラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、内燃機関の排ガスを排気側から吸気側にEGRガスとして環流させる内燃機関のEGR装置に設けられ、EGRガスを内部に流通させて冷却水との間で熱交換して冷却する内燃機関のEGRクーラにおいて、断面四角形の筒状をなして内部にEGRガスを流通させるEGRガス流路と、EGRガス流路の外側の4面にそれぞれ高温端面を密着させるように配置され、低温端面との間の温度差を利用して熱起電力を発生させる熱電素子と、EGRガス流路に沿った筒状をなしてEGRガス流路を包み込むように配置され、その内側と各熱電素子の低温端面との間に形成された空間内に冷却水を流通させる冷却水流路とを備えたものである。
請求項2の発明は、請求項1において、熱電素子が、EGRガスの流れ方向において複数に分割され、下流側の熱電素子に比較して上流側の熱電素子が高温端面と低温端面との温度差がより大のときに高い変換効率を発揮するように特性を設定されたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように請求項1の発明の内燃機関のEGRクーラによれば、断面四角形の筒状をなすようにEGRガス流路を形成し、このEGRガス流路の外側の4面にそれぞれ熱電素子を配置すると共に、EGRガス流路に沿った筒状をなす冷却水流路によりEGRガス流路を包み込んで内部に冷却水を流通させるようにした。
このようにEGRガス流路の4面に熱電素子を配置し、このEGRガス流路を包み込むように冷却水流路を配置していることから、EGRガスに対する高温端面の面積についても、冷却水に対する低温端面の面積についても十分に確保可能となる。また、特許文献1の技術のようにEGRガスや冷却水を分流及び合流させないため流路抵抗の増大を抑制でき、EGRガスや冷却水を円滑に流通させることにより熱電素子への受熱及び放熱が効率よく行われる。これらの要因により、各熱電素子の変換効率を大幅に向上することができる。
【0009】
一方、EGRガス流路と冷却水流路は共にEGRガスや冷却水の流通方向に沿った長い筒状をなすため、EGRガス流路を包み込むように冷却水流路を配置したときにEGRガス流路に対して冷却水流路をそれほど大型化する必要がなくなり、EGRクーラ全体をコンパクト化して車両への搭載性を向上することができる。さらに、EGRガスを円滑に流通させることにより正確なEGR制御が可能となり、ひいては内燃機関の性能や排ガス特性を向上することができる。
請求項2の発明の内燃機関のEGRクーラによれば、請求項1に加えて、熱電素子をEGRガスの流れ方向で複数に分割し、下流側の熱電素子に比較して上流側の熱電素子を温度差がより大のときに高い変換効率を発揮するように特性を設定した。EGRガスと冷却水との温度差はEGRガスの流れ方向の上流側から下流側に向けて次第に縮小するが、その温度差に対して常に最適な特性の熱電素子により発電が行われるため、熱電素子全体の変換効率を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態のEGRクーラを備えた内燃機関を示す全体構成図である。
【図2】EGRクーラを示す断面図である。
【図3】同じくEGRクーラを示す図2のIII−III線断面図である。
【図4】別例のEGRクーラを示す図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した内燃機関のEGRクーラの一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のEGRクーラを備えた内燃機関を示す全体構成図である。
内燃機関1は直列6気筒ディーゼル機関として構成されている。内燃機関1の各気筒には燃料噴射弁2が設けられ、各燃料噴射弁2は共通のコモンレール3から加圧燃料を供給され、機関の運転状態に応じたタイミングで開弁して各気筒の筒内に燃料を噴射する。
内燃機関1の吸気側には吸気マニホールド4が装着され、吸気マニホールド4に接続された吸気通路5には、上流側よりエアクリーナ6、ターボチャージャ7のコンプレッサ7a、インタクーラ8、アクチュエータ9aにより開閉駆動される吸気絞り弁9が設けられている。また、内燃機関1の排気側には排気マニホールド10が装着され、排気マニホールド10には上記コンプレッサ7aと同軸上に連結されたターボチャージャ7のタービン7bが接続されている。タービン7bには排気通路11が接続され、排気通路11には上流側からアクチュエータ12aにより開閉駆動される排気絞り弁12、排気浄化装置13、及び図示しない消音器が設けられている。
【0012】
排気マニホールド10と吸気マニホールド4とはEGR通路14を介して接続され、EGR通路14にはアクチュエータ15aにより開閉駆動されるEGR弁15、及びEGRクーラ16が設けられている。EGRクーラ16は水路17を介してラジエータ18と接続され、水路17に設けられた冷却水ポンプ19によりラジエータ18との間で冷却水を循環させるようになっている。なお、本実施形態では、ラジエータ18をエンジン冷却用のものと共用しているが、EGRクーラ専用のラジエータを備えるようにしてもよい。
内燃機関1の運転中においてエアクリーナ6を経て吸気通路5内に導入された吸気はターボチャージャ7のコンプレッサ7aにより加圧された後にインタクーラ8、吸気絞り弁9、吸気マニホールド4を経て各気筒に分配され、各気筒の吸気行程で筒内に導入される。筒内では所定のタイミングで燃料噴射弁2から燃料が噴射されて圧縮上死点近傍で着火・燃焼し、燃焼後の排ガスは排気マニホールド10を経てタービン7bを回転駆動した後に排気絞り弁12、排気浄化装置13、消音器を経て外部に排出される。
【0013】
上記吸気絞り弁9、排気絞り弁12、EGR弁15の各アクチュエータ9a,12a,15a、燃料噴射弁2などは図示しないECU(電子コントロールユニット)に接続され、センサ類からの検出情報に基づいてECUにより駆動制御される。例えばECUは機関回転速度や負荷に基づいて燃料噴射弁2の噴射量及び噴射時期を制御して内燃機関1を運転すると共に、アクチュエータ15aによりEGR弁15の開度を制御して排気側から吸気側に還流されるEGR量を調整する。
次に、上記したEGRクーラ16の構成について詳述する。
図2はEGRクーラ16を示す断面図、図3は同じくEGRクーラ16を示す図2のIII−III線断面図である。
【0014】
全体としてEGRクーラ16は、EGRガスが流通するEGRガス流路21の周囲を冷却水が流通する冷却水流路22により包み込んだ2重構造をなしている。
EGRガス流路21は金属製の板材により製作されて断面正方形の筒状をなしている。EGRガス流路21の上流端21aは漏斗状をなして排気側のEGR通路14に接続され、同じく下流端21bは漏斗状をなして吸気側のEGR通路14に接続され、排気側からのEGRガスがEGRガス流路21内を経て吸気側に流通するようになっている。
EGRガス流路21内はガス流れ方向と直交する縦横方向にメッシュ状に区画され、これによりEGRガス流路21内においてEGRガスはメッシュで区画された多数の細長い通路内をそれぞれ案内される。なお、メッシュ断面は流通方向の何れの箇所も同一である。上記のようにEGRガス流路21はメッシュ部分も含めて熱伝導の良好な金属製のため、EGRガス流路21の中心部を流通するEGRガスの熱も、上流端21aから下流端12bまで流通する過程で効率よくEGRガス流路21の外側に伝達される。
【0015】
ここで、EGRガス流路21内がメッシュ状に区画されていることから、EGRガスはEGRガス流路21の上流端で各細長い通路にそれぞれ分流し、各通路内を流通後に下流端で合流することになるが、これらの分流や合流ではEGRガスの流通方向が変わらないため、流路抵抗を増大させる要因にはならない。但し、EGRガス流路21の構成はこれに限ることはなく、例えば内部をメッシュ状に区画することなく1本の広い通路としてもよい。
EGRガス流路21の外側の4面には、それぞれ熱電素子23が配設されている。これらの熱電素子23は、その一側面である高温端面23aと他側面である低温端面23bとの間の温度差を利用してゼーベック効果により熱起電力を発生させる機能を奏し、高温端面23a側をEGRガス流路21の外側に密着させるように配設されている。
【0016】
EGRガス流路21の各面毎に、熱電素子23はEGRガスの流れ方向に沿って3枚列設されており(計12枚)、これらの熱電素子23によりEGRガス流路21の各面のほぼ全体が覆われている。ここで、各面毎の3枚の熱電素子23はEGRガスの流れ方向に応じて特性を異にし、各面の最も上流側の熱電素子23(図2の右側)は高温端面23aと低温端面23bとの温度差が大であるときに高い変換効率を発揮し、中流側の熱電素子23は高温端面23aと低温端面23bとの温度差が中であるときに高い変換効率を発揮し、最も下流側の熱電素子23(図2の左側)は高温端面23aと低温端面23bとの温度差が小であるときに高い変換効率を発揮するように設定されている。
但し、各熱電素子23の設定はこれに限ることはなく、例えば全て同一特性の熱電素子23を用いてもよいし、3枚に分割することなく2分割や4分割にしたり、或いは1枚の大きな熱電素子23を用いたりしてもよい(計4枚)。
【0017】
EGRガス流路21の周囲には、金属製の板材により製作された断面正方形の筒状をなす隔壁24が配設され、隔壁24の内面は各熱電素子23の低温端面23bに密着している。隔壁24の上流側及び下流側は内周側、即ちEGRガス流路21側に折曲されることにより各熱電素子23を内部に封止している。隔壁24を含むEGRガス流路21全体は、金属製の板材により製作された断面正方形状の筒状をなす冷却水流路22により包み込まれ、冷却水流路22の上流端及び下流端は蓋体22a,22bにより閉塞されている。
これにより冷却水流路22内、より詳しくは隔壁24の外側全体と冷却水流路22の内側全体との間には、図3に示すように断面四角環状をなす液密を保持された空間が形成され、この空間内に冷却水が貯留されている。冷却水流路22の上流端の一側及び下流端の一側にはそれぞれ上記した水路17が接続され、これらの水路17を介して内部の冷却水がラジエータ18との間で循環するようになっている。
なお、上記隔壁24は必ずしも必要ではなく、これを省略してもよい。この場合には、冷却水流路22内において各熱電素子23の低温端面23bが直接冷却水に晒されることになる。
【0018】
ここで、本実施形態では図2に矢印で示すように、冷却水流路22内での冷却水の流れ方向をEGRガス流路21内でのEGRガスの流れ方向と一致させている(右側より左側)。このため、EGRガス流路21の上流側ではEGRガスと冷却水との温度差が最も大となり、下流側ほど温度差が縮小することになる。但し、EGRガス及び冷却水の流れ方向はこれに限ることはなく、逆方向に流通させるようにしてもよい。
図示はしないが各熱電素子23は電圧調整器を介して車両に搭載されたバッテリに接続され、後述するようにゼーベック効果により発電した電力がバッテリに充電されたり、オルタネータからの発電電力と共に車両の各電気負荷に供給されたりするようになっている。
【0019】
そして、本実施形態では、EGRガス流路21の通路断面積が一般的なEGRクーラと略同一に設定され、且つ、その長さも一般的なEGRクーラと略同一に設定されており、結果として、EGRガス流路21の外寸は一般的なEGRクーラの外寸と略同一となっている。また、このEGRガス流路21の外側に熱電素子23が配置されているが、各熱電素子23は4面に密着しているため占有スペースをほとんど必要としない。
さらに、図2に示すようにEGRガスと冷却水とを互いに平行に流通させるべく、EGRガス流路21と冷却水流路22は共に流通方向に沿った長い筒状をなしている。このため、EGRガス流路21を包み込むように冷却水流路22を配置したときにEGRガス流路21に対して冷却水流路22をそれほど大型化する必要がなくなり、結果としてEGRクーラ16全体の外寸も一般的なEGRクーラからほとんど増加せずコンパクトなものとなっている。
【0020】
次に、以上のように構成された本実施形態の内燃機関のEGRクーラ16の作用を説明する。
内燃機関1の排ガスは、EGR弁15の開度に応じて排気マニホールド10からEGR通路14を経て吸気マニホールド4にEGRガスとして環流され、その際にEGRクーラ16のEGRガス流路21内を流通する。また、冷却水流路22内の冷却水は水路17を経てラジエータ18との間で循環している。このため、EGRガス流路21の4面に配置された各熱電素子23の高温端面23aは高温のEGRガスから受熱し、低温端面23bは低温の冷却水に放熱し、各熱電素子23は温度差を利用して熱起電力を発生させる。また、結果としてEGRガスの熱は熱電素子23を介して冷却水側に放熱されることになり、冷却後のEGRガスが内燃機関1の吸気側に環流される。
【0021】
そして、本実施形態では、EGRガス流路21の4面に熱電素子23を配置し、このEGRガス流路21を包み込むように冷却水流路22を配置していることから、EGRガスに対する高温端面23aの面積についても、冷却水に対する低温端面23bの面積についても十分に確保でき、広い面積をEGRガスと冷却水との熱交換に利用することができる。
また、上記のようにEGRガス流路21の通路断面積は一般的なEGRクーラと遜色なく十分に確保されており、且つ、特許文献1の技術のように上流端での分流や下流端でのEGRガスの合流に起因して流路抵抗が増大することもない。よって、EGRガス流路21内においてEGRガスは上流側から下流側へと円滑に流通し、EGRガスから各熱電素子23への受熱が効率よく行われる。
【0022】
冷却水流路22についても同様であり、冷却水は分流や合流することなく冷却水流路22内を流通することから流路抵抗は増大しない。よって、冷却水流路22内において冷却水は上流側から下流側へと円滑に流通し、各熱電素子23から冷却水への放熱が効率よく行われる。
結果としてEGRガス流路21の4面に配置された各熱電素子23は、高い効率をもって熱エネルギを電気エネルギに変換し、発電された電力を車両内で有効利用することにより燃費低減に大きく貢献することができる。
【0023】
特に本実施形態では、EGRガス流路21の流れ方向の位置に応じて熱電素子23の特性を異にしているため、一層効率的な変換を実現することができる。
即ち、EGRガス流路21内の上流側に流入したEGRガスと冷却水流路22内に流入した冷却水とは、熱電素子23を挟んで熱交換しながらそれぞれの流路21,22内を下流側へと流通し、その温度差は次第に縮小していく。一方、上流側の熱電素子23は大きな温度差に適した特性(温度差大で高効率)を有し、中流側の熱電素子23は中程度の温度差に適した特性を有し、下流側の熱電素子23は小さな温度差に適した特性を有する。このため上流側から下流側に向けて次第に縮小する温度差に対して、常に最適な特性の熱電素子23により発電が行われることになり、EGRガスが有する熱エネルギを無駄なく電気エネルギに変換でき、もって、熱電素子23全体の変換効率を一層向上することができる。
【0024】
一方、EGRガスや冷却水の流通抵抗が増大しないため、EGRガス流路21や冷却水流路22の断面積を必要以上に拡大する必要がなくなり、結果として上記のようにEGRクーラ16全体のコンパクト化を達成でき、車両へのEGRクーラ16の搭載性を向上することができる。
さらに、EGRガスに対する流路抵抗の増大はEGR環流量を制限する要因になるため、EGR弁15の開度に応じた正確なEGR制御が困難になってEGR機能の低下、ひいては内燃機関1の性能や排ガス特性の悪化に繋がる。本実施形態ではEGRガスの流路抵抗を低減することにより常に適切なEGR制御を実現でき、これらの不具合を未然に防止することができる。
【0025】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ディーゼル機関1のEGRクーラとして具体化したが、内燃機関の種別はこれに限定されるものではなく、例えばガソリン機関に適用してもよい。
また、EGRクーラ16の構造についても、上記実施形態に限るものではなく種々に変更可能である。例えば、上記実施形態では、図3に示すようにEGRガス流路21の外側全体を包み込む完全な環状断面をなすように冷却水流路22を形成したが、図4に示すように構成してもよい。この別例では、EGRガス流路21の外側4面に配置された各熱電素子23とそれぞれ対応するように4本の冷却水流路22を形成している。この場合であっても各熱電素子23の低温端面23bと冷却水との接触面積は図3と相違しないことから、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 内燃機関
16 EGRクーラ
21 EGRガス流路
22 冷却水流路
23 熱電素子
23a 高温端面
23b 低温端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを排気側から吸気側にEGRガスとして環流させる内燃機関のEGR装置に設けられ、該EGRガスを内部に流通させて冷却水との間で熱交換して冷却する内燃機関のEGRクーラにおいて、
断面四角形の筒状をなして内部に上記EGRガスを流通させるEGRガス流路と、
上記EGRガス流路の外側の4面にそれぞれ高温端面を密着させるように配置され、低温端面との間の温度差を利用して熱起電力を発生させる熱電素子と、
上記EGRガス流路に沿った筒状をなして該EGRガス流路を包み込むように配置され、その内側と上記各熱電素子の低温端面との間に形成された空間内に上記冷却水を流通させる冷却水流路と
を備えたことを特徴とする内燃機関のEGRクーラ。
【請求項2】
上記熱電素子は、上記EGRガスの流れ方向において複数に分割され、下流側の熱電素子に比較して上流側の熱電素子が上記高温端面と低温端面との温度差がより大のときに高い変換効率を発揮するように特性を設定されたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関のEGRクーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57579(P2012−57579A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203236(P2010−203236)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】