説明

内燃機関用ピストン

内燃機関用のピストン(10)は、ピストン基部から比較的離れた低いレベル(12)及びピストン基部により近接する一定のより高いレベル(16)にある少なくとも1つの流入部及び少なくとも1つの流出部(14)の地域内にのみ配置される少なくとも1つの冷却通路(24)を含み、冷却通路は、低いレベル(12)に配置される地域と高いレベル(16)に配置される地域との間の急勾配の傾斜部(19)を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関(エンジン)用のピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の分野では、ピストンの十分な冷却がもたらされなければならない。更に、エンジン、特に、ディーゼルエンジンの特別な出力は継続的に増大し、それは益々高いピストン温度を招いている。これは寿命及び強度の両方に影響を及ぼす。故に、特に、例えば、ピストンの燃焼ボウル縁部及び最上部リング溝のような重要な場所で、効果的な冷却がもたらされなければならない。
【0003】
【特許文献1】JP2002−221086 特許文献1から明らかなことは、ピストンピンボスの領域内の冷却通路がピストンピンボスの方向に下げられているピストンである。
【0004】
【特許文献2】WO2003/098022 特許文献2は、冷却通路が入口から出口に下方レベルの方向に連続的に延びるピストンに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎を形成する目的は、特に重要な地域の冷却に関して改良された内燃機関用のピストンを創成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は請求項1に記載されるようなピストンによって解決される。
【0007】
請求項1によれば、このピストンは、少なくとも1つの冷却通路を含み、冷却通路は、少なくとも1つの流入部及び少なくとも1つの流出部の地域においてのみ、ピストンヘッドから比較的更に離れるより低いレベルに配置され、冷却通路は、その他の部分では、ピストンヘッドに比較的より近接する一定のより高いレベルに配置される。比較的「高い」レベルでの構成の故に、例えば、ボウル縁部及び最上部リング溝のような重要な場所に特に近接するその進行の大部分に亘って冷却通路を構成し得る。具体的には、この重要な場所を特に効率的に冷却し得るよう、冷却通路をほぼ完全にリングキャリアのレベルに配置し得る。これはピストンの回転軸の方向に当接する燃焼ボウルの領域にも同様に当て嵌まる。また、この点に関して、ここでも特に良好な冷却効果を達成し得るよう、本発明に従ったピストン内の冷却通路をほぼ完全に燃焼ボウルのレベルに形成し得る。
【0008】
同時に、本発明に従ったピストンにおいて流入部及び流出部での要求を特に十分に考慮し得る。これらの地域では、好適な流入及び流出を保証するために、冷却通路の断面が、その進行の残部に比べて僅かに拡大されることが有利である。少なくとも1つの流入部及び少なくとも1つの流出部において、冷却通路が下方レベル、即ち、ピストンヘッドから更に離れるレベルに配置される点で、このようにして拡大される流入部及び流出部を本発明に従ったピストン内に特に容易に形成し得る。これらのゾーンでは、従って、強度を妥協せずに冷却通路の断面拡大をもたらし得るよう、冷却通路は最上部リング溝と燃焼ボウルとの間の領域から僅かに下げられる。強度要求を満足し続けるために、最上部リング溝及び燃焼ボウルの両方に関して十分な材料の厚みを維持し得る。
【0009】
冷却通路が流入部及び少なくとも1つの流出部の地域においてのみ下方レベルに配置され、その他の部分は実質的に同じより高いレベルにあるという事実の故に、実質的に全周に亘って、最上部リング溝及び燃焼ボウルにある重要な地域の特に効率的な冷却を保証し得る。冷却通路は更なる流入部及び流出部を含み得ることが付記される。具体的には、ピストンロッドとピストンピンとの間を潤滑するために、好ましくは、その進行に亘って、比較的小さい断面を備える1つ又はそれよりも多くの流出部を提供し得る。しかしながら、冷却通路は必ずしもこれらの領域において下方レベルにある必要はない。何故ならば、ここでは拡大は不要だからである。
【0010】
本発明に従ったピストンの好適実施態様は、更なる請求項に記載される。
【0011】
より高いレベルでの冷却通路の配置に関しては、第1の試みとして、このレベルにある冷却通路の下方縁部が最上部リング溝用のリングキャリアの下方縁部と実質的に同じ高さであることが好適であることが証明された。これによって、言及された重要な地域の特に良好な冷却を達成し得る。
【0012】
及された下方レベルが約3〜5mm、特に、3.5〜4mm、特に好ましくは、約3.8mm、言及されたより高いレベルより下に配置されるならば、これは同様に当て嵌まり、且つ、流入部及び流出部の領域における冷却通路の所望の断面拡大を更に可能にする。
【0013】
冷却能力のために全体的に必要ではないが、上記に概説された状況に鑑み、冷却通の断面が、冷却通路の残部に比べて、少なくとも1つの流入部及び/又は流出部の領域において拡大されるのが好ましい。
【0014】
低いレベルからより高いレベル又はその逆の移行に関しては、例えば、斜めの傾斜部とより高い又はより低いレベルとの間に屈曲部又は段部を備える徐々に傾斜した傾斜部が提供される。
【0015】
より高いレベルへの傾斜移行部を含む、下方レベルに配置される冷却通路のそれらの地域は、それぞれ、約50〜70°、特に、約60〜65°の角度を取り得る。
【0016】
冷却通路の断面設計が概ね楕円形であり、楕円の長軸がピストンの回転軸の方向に概ね延びるのが現在のところ好適である。しかしながら、楕円の長軸はピストンの回転軸に対して僅かに傾斜してもよい。この傾斜に関して現在のところ好適であるのは、約7°の角度及び/又は上方側に向かって方向付けられる傾斜である。概ね楕円形の設計の故に、最上部リング溝と燃焼ボウルとの「間」の領域の効果的な冷却を保証することができ、同時に所要の材料厚みを維持し得る。傾斜は、燃焼ボウルの典型的な設計の観点で、この効果を支持する。
【0017】
最後に、流入部及び流出部が互いに正反対であるのが現在のところ更に好ましい。ここでも現在のところ更に好適なピストンの回転軸に対する対称性の故に、ピストンを如何なる向きにも組み込み得るし、流入部又は流出部として如何なる開口をも使用し得る。
【0018】
一例によって図面中に示される実施態様の実例を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従ったピストンの製造に使用される塩コアを示す斜視図である。
【図2】図1に示される塩コアの一部を示す切欠き側面図である。
【図3】本発明に従ったピストンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先ず第1に、図1に示されているのは、本発明に従ったピストンを製造するために使用される塩(salt)コア20の斜視図である。図示の実施態様において、塩コアは、後述の冷却通路の場合と同様に、冷却通路の残部に比べそれらの断面がより広く且つ流入部及び流出部として後に使用される2つの正反対の地域を含む。図1に破線及び点線を用いて既に表示されているように、流入部及び流出部14の領域内の冷却通路は、冷却通路の残部よりも低いレベルにある。流入部及び流出部14の近傍並びに流入部及び流出部14の両側において、より高いレベルにある冷却通路の地域は、それぞれ、傾斜部18を介してより高いレベル16からより低いレベル12に通っている。前記実施態様における断面の拡幅は、回転軸22の方向に起こることが、流入部及び流出部に関して、図1において追加的に明らかである(図2を参照)。
【0021】
更に、図2は、2つのレベル12及び16、並びに、図示の流入部及び流出部14の領域における傾斜部18を再び示している。冷却通路の断面は、流入部及び流出部にある拡幅地域を除き(傾斜部18は含む)、大部分が同じままであることが、特に留意されなければならない。冷却通路の図示の実施態様において、その断面は、概して楕円形であり、長軸はピストンの回転軸22と概して平行であり、或いは、どんな場合でも、ピストンの回転軸22に対して鋭角である。図示の実施態様において、例えば、約7°の角度αが、ピストンの回転軸22と、冷却通路の断面を形成する楕円の長軸との間に形成されている。
【0022】
本発明に従った手段の故に、冷却通路24をリングキャリア26及び燃焼ボウル28のレベルに好適な方法で如何に配置し得るかが、図3から追加的に明らかである。ピストン10の回転軸22の方向におけるその楕円形状の故に、冷却通路24は、リングキャリア26と燃焼ボウル28との間の領域内に適合し、低過ぎる材料厚さの故に強度を妥協せずに、これらの重要ゾーンを特に効率的な方法で冷却し得る。図示の実施態様において、冷却通路24は、そのより低い縁部に関して、リングキャリア26の下方縁部のレベルに概ね配置され、燃焼ボウル28の底部の僅か上にさえ概ね配置されることが、図3から特に明らかである。図2との組み合わせから明らかであるように、リングキャリア26と燃焼ボウル28との間の材料厚みを妥協せずに、流入部及び流出部にある地域を図3に従った設計においても拡大し得る。何故ならば、冷却通路24は、これらの領域において、下方レベル12に下げられているからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの冷却通路を含み、該冷却通路は、少なくとも1つの流入部及び少なくとも1つの流出部の地域においてのみ、ピストンヘッドから比較的更に離れるより低いレベルに配置され、前記冷却通路は、その他の部分では、前記ピストンヘッドにより近接する一定のより高いレベルに配置され、前記冷却通路は、前記より低いレベルに配置される領域と前記より高いレベルに配置される領域との間に傾斜した傾斜部を含む、内燃機関用のピストン。
【請求項2】
そのより高いレベルで、前記冷却通路は、そのより低い縁部がリングキャリアの下方縁部と実質的に同じレベルに配置されることを特徴とする、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
前記より低いレベルは、前記より高いレベルの約3〜5mm、特に、約3.5〜4mm、好ましくは、約3.8mm、下に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のピストン。
【請求項4】
少なくとも1つの流入部及び/又は流出部の地域において、前記冷却通路の断面は、前記冷却通路の進行の残部と比べて拡大されることを特徴とする、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のピストン。
【請求項5】
前記より低いレベルに配置される前記冷却通路の前記地域は、前記より高いレベルへの移行部を含めて、約50〜70°、特に、約60〜65°の角度を取ることを特徴とする、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のピストン。
【請求項6】
前記冷却通路は、実質的に当該ピストンの回転軸の方向に延びる長軸を備える楕円形の断面を有することを特徴とする、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のピストン。
【請求項7】
断面においてより長い前記冷却通路の軸は、当該ピストンの前記回転軸に対して約5〜10°、特に、約7°、外向きに傾斜することを特徴とする、請求項6に記載のピストン。
【請求項8】
前記流入部及び流出部は、互いに正反対であることを特徴とする、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載のピストン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−524958(P2011−524958A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514009(P2011−514009)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057349
【国際公開番号】WO2009/153237
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510330840)フェデラル−モグル ニュルンベルク ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】