説明

内燃機関用吸気装置

【課題】吸入空気量の低下を抑制することができる内燃機関用吸気装置を提供する。
【解決手段】サージタンク4から内燃機関Aの燃焼室7に空気を供給する吸気流路12と、排ガス分配ヘッダ13から燃焼室7に排ガスを供給する排ガス流路14とを有し、排ガス流路14の流路中心線(Y−Y1,X1−Z)に沿う排ガス流路長Laを、吸気流路12の流路中心線(X−Z)に沿う吸気流路長Lbの75%以上、かつ、125%以下に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージタンクから内燃機関の燃焼室に空気を供給する吸気流路と、排ガス分配ヘッダから前記燃焼室に排ガスを供給する排ガス流路とを有する内燃機関用吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記内燃機関用吸気装置は、排ガスとしての内燃機関の駆動により生じた排気ガスやブローバイガス、或いは、エバポガス(燃料の蒸発ガス)を燃焼用の空気に混ぜて燃焼室で燃焼させるために、吸気流路と排ガス流路とを有している。
特許文献1には、排ガスとしての排気ガスを排ガス分配ヘッダとしてのEGRサージタンクから燃焼室に供給する第1排ガス流路と、排ガスとしてのブローバイガスを排ガス分配ヘッダとしてのシリンダヘッドカバー内部から燃焼室に供給する第2排ガス流路と、排ガスとしてのエバポガスを図示しない排ガス分配ヘッダから燃焼室に供給する第3排ガス流路とを有する従来の内燃機関用吸気装置が開示されている。
第1〜第3排ガス流路の夫々の下流側排ガス流路部分は、吸気流路の下流側吸気流路部分と共通の共通流路で構成してある。
第1〜第3排ガス流路のうちの共通流路よりも上流側の上流側排ガス流路部分の夫々は、EGRサージタンクやシリンダヘッドカバーなどの位置に応じて適宜に配設されている。
すなわち、各排ガス流路の流路中心線に沿う排ガス流路長と、吸気流路の流路中心線に沿う吸気流路長との関係は考慮されておらず、各排ガス流路長は、EGRサージタンクやシリンダヘッドカバーなどの位置に応じた適宜の長さに設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−103082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、慣性過給効果が損なわれて燃焼室への吸入空気量が低下し易く、エンジン出力が低下するおそれがある。
つまり、吸気流路における空気の脈動タイミングと排ガス流路における排ガスの脈動タイミングとが互いにずれると、吸気流路における空気が密になる圧力波と排ガス流路における排ガスが疎になる圧力波とが互いに重なって吸気圧力が低下し易く、その結果、吸入空気量が低下し易い。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、燃焼室への空気の吸入量を適切に維持することができる内燃機関用吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による内燃機関用吸気装置の第1特徴構成は、サージタンクから内燃機関の燃焼室に空気を供給する吸気流路と、排ガス分配ヘッダから前記燃焼室に排ガスを供給する排ガス流路とを有し、前記排ガス流路の流路中心線に沿う排ガス流路長を、前記吸気流路の流路中心線に沿う吸気流路長の75%以上、かつ、125%以下に設定してある点にある。
【0006】
本構成の内燃機関用吸気装置は、排ガス流路の流路中心線に沿う排ガス流路長を、吸気流路の流路中心線に沿う吸気流路長の75%以上、かつ、125%以下に設定してある。
このため、吸気流路における空気の脈動タイミングと、排ガス流路における排ガスの脈動タイミングとがずれにくくなり、吸気流路における空気が密になる圧力波と排ガス流路における排ガスが密になる圧力波とを重ね易い。
したがって、本構成の内燃機関用吸気装置であれば、燃焼室への空気の吸入量を適切に維持して吸入空気量の低下を抑制することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記排ガス流路の下流側排ガス流路部分と、前記吸気流路の下流側吸気流路部分とを共通流路で構成し、前記排ガス流路のうちの前記共通流路よりも上流側の上流側排ガス流路部分の流路中心線に沿う上流側排ガス流路長Lcと流路径Dとの比Lc/Dを3以上に設定してある点にある。
【0008】
本構成であれば、排ガスと燃焼用の空気とを共通流路において混合して燃焼室に供給することができる。
また、上流側排ガス流路長Lcと流路径Dとの比Lc/Dを3以上に設定してあるので、上流側排ガス流路部分から吸気流路(共通流路)に合流させる排ガスの流れを確実に形成でき、排ガスと燃焼用の空気との混合気の流れを安定させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記上流側排ガス流路部分と、前記吸気流路のうちの前記共通流路よりも上流側の上流側吸気流路部分とを互いに平行に並設してある点にある。
【0010】
本構成であれば、排ガス流路長を、吸気流路長の所定割合の長さに設定し易い。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記上流側排ガス流路部分と前記共通流路とを、前記上流側排ガス流路部分の流路中心線が、前記吸気流路の流路中心線に対して90°以下の角度で交差するように互いに接続してある点にある。
【0012】
本構成であれば、排ガスが上流側吸気流路部分に逆流しないように、上流側排ガス流路部分を吸気流路の途中箇所に接続し易い。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記上流側排ガス流路部分と前記上流側吸気流路部分とを、共通の流路壁で区画して並設してある点にある。
【0014】
本構成であれば、上流側排ガス流路部分と上流側吸気流路部分とをコンパクトに配設することができる。
また、排ガスが排気ガスやブローバイガスである場合に、その排ガスが有する熱を共通の流路壁を介して上流側吸気流路部分の空気に伝導させて、燃焼用の空気を予熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】内燃機関用吸気装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、複数のシリンダ1を備えたガソリンエンジン(内燃機関の一例)Aに装備された本発明による内燃機関用吸気装置Bを示す。
【0017】
エンジンAは、複数のシリンダ1を形成してある金属製シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に連結された金属製シリンダヘッド3とを備えている。
シリンダヘッド3には、樹脂製サージタンク4に連通された樹脂製インテークマニホールド5が連結されている。シリンダヘッド3と各シリンダ1に内装されたピストン6との間に燃焼室7が形成されている。
尚、図1では、一つのシリンダ1に対応する部分のみを示している。
【0018】
シリンダヘッド3は、各燃焼室7に連通する複数のシリンダ側吸気流路8と、各シリンダ側吸気流路8の出口側を開閉する複数の吸気バルブ9と、各燃焼室7に連通する複数の排気流路10と、各排気流路10の入口側を開閉する複数の排気バルブ11とを備えている。
【0019】
内燃機関用吸気装置Bは、サージタンク4からインテークマニホールド5を介して各燃焼室7に空気を分配供給するために、サージタンク4から燃焼室7に至る断面形状が全長に亘って円形の複数の吸気流路12と、排ガスとしての、エンジンAの駆動に伴って生じた排気ガスを排ガス分配ヘッダ(EGRチャンバ)13から各燃焼室7に分配供給するために、排ガス分配ヘッダ13から燃焼室7に至る断面形状が全長に亘って円形の複数の排ガス流路14とを有している。
【0020】
インテークマニホールド5は、各シリンダ側吸気流路8に連通接続される複数のインテークマニホールド側吸気流路(以下、インマニ側吸気流路という)15と、各インマニ側吸気流路15に設けられた空気流制御弁(バタフライ弁)16とを備えている。
したがって、内燃機関用吸気装置Bは、インマニ側吸気流路15とシリンダ側吸気流路8とによって一連に形成された吸気流路12を有している。
【0021】
排ガス流路14は、インマニ側吸気流路15のうちの空気流制御弁16よりも下流側の途中箇所に上方側から連通する上流側排ガス流路部分17と、その下流側の下流側排ガス流路部分18とを有し、上流側排ガス流路部分17を吸気流路12の途中箇所に連通接続してある。
【0022】
したがって、下流側排ガス流路部分18と、吸気流路12のうちの上流側排ガス流路部分17が連通する箇所よりも下流側の下流側吸気流路部分19とが共通流路20で構成されている。
また、上流側排ガス流路部分17は、排ガス流路14のうちの共通流路20よりも上流側の部分で構成され、上流側吸気流路部分21は、吸気流路12のうちの共通流路20よりも上流側の部分で構成されている。
【0023】
インテークマニホールド5及びサージタンク4は、シリンダヘッド3に対する接続フランジ22と半割形状の下側吸気流路壁部分23と半割形状の下側サージタンク壁部分24とを一体に備えた樹脂製の下部ボデイ25と、半割形状の上側吸気流路壁部分26と半割形状の上側サージタンク壁部分27とを一体に備えた樹脂製の上部ボデイ28とを例えば振動溶着等で互いに接合して構成されている。
【0024】
上流側排ガス流路部分17及び排ガス分配ヘッダ13は、上部ボデイ28の上面側に振動溶着等によって接合される樹脂製の排ガス流路形成ボデイ29を設けて、上部ボデイ28と排ガス流路形成ボデイ29との間に形成されている。
【0025】
したがって、図2に示すように、例えば断面形状が円形の上流側排ガス流路部分17と、断面形状が円形の上流側吸気流路部分21とが、上部ボデイ28で構成される共通の流路壁30で区画して、互いに平行に並設されている。
【0026】
上流側排ガス流路部分17と共通流路20は、上流側排ガス流路部分17の流路中心線(Y−Y2)が、吸気流路12の流路中心線(X−Z)に対して90°以下の角度θで交差するように互いに接続してある。
【0027】
図1に示すように、排ガス流路14の流路中心線(Y−Y1及びX1−Z)に沿う排ガス流路長(Y−Y1に沿う長さLa1と、X1−Zに沿う長さLa2との合計長さ)Laを、吸気流路12の流路中心線(X−Z)に沿う吸気流路長Lbの75%以上、かつ、125%以下に設定してある。具体的には、本実施形態では排ガス流路長Laを吸気流路長Lb(420mm)と略同じ長さ(略100%)に設定してある。
Y1は、上流側排ガス流路部分17の流路中心線が、当該上流側排ガス流路部分17の吸気流路12への出口開口と交差する箇所である。
Y2は、上流側排ガス流路部分17の流路中心線の延長線が、吸気流路12の流路中心線(X−Z)と交わる箇所である。
X1は、Y1を通る線分が吸気流路12の流路中心線(X−Z)と直角に交わる箇所である。
【0028】
また、図1に示すように、上流側排ガス流路部分17の流路中心線(Y−Y1)とその延長線(Y1−Y2)に沿う上流側排ガス流路長Lcと流路径Dとの比Lc/Dを3以上に設定してある。具体的には、本実施形態では約44(Lc=310mm,D=7mm)に設定してある。
【0029】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による内燃機関用吸気装置は、吸気流路と排ガス流路とを全長に亘って各別に有していてもよい。
2.本発明による内燃機関用吸気装置は、排ガスとしてのブローバイガスを燃焼室に供給する排ガス流路を有していてもよい。
3.本発明による内燃機関用吸気装置は、排ガスとしてのエバポガスを燃焼室に供給する排ガス流路を有していてもよい。
4.本発明による内燃機関用吸気装置は、上流側排ガス流路部分が、上流側吸気流路部分を形成する配管とは別の配管で独立に形成されていてもよい。
5.本発明による内燃機関用吸気装置は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのレシプロエンジンの他に、ロータリーエンジンに装備されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
4 サージタンク
7 燃焼室
12 吸気流路
13 排ガス分配ヘッダ
14 排ガス流路
17 上流側排ガス流路部分
18 下流側排ガス流路部分
19 下流側吸気流路部分
20 共通流路
21 上流側吸気流路部分
30 共通の流路壁
A 内燃機関
D 流路径
La 排ガス流路長
Lb 吸気流路長
Lc 上流側排ガス流路長
X−Z 吸気流路の流路中心線
Y−Y1,X1−Z 排ガス流路の流路中心線
Y−Y1 上流側排ガス流路部分の流路中心線
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サージタンクから内燃機関の燃焼室に空気を供給する吸気流路と、
排ガス分配ヘッダから前記燃焼室に排ガスを供給する排ガス流路とを有し、
前記排ガス流路の流路中心線に沿う排ガス流路長を、前記吸気流路の流路中心線に沿う吸気流路長の75%以上、かつ、125%以下に設定してある内燃機関用吸気装置。
【請求項2】
前記排ガス流路の下流側排ガス流路部分と、前記吸気流路の下流側吸気流路部分とを共通流路で構成し、
前記排ガス流路のうちの前記共通流路よりも上流側の上流側排ガス流路部分の流路中心線に沿う上流側排ガス流路長Lcと流路径Dとの比Lc/Dを3以上に設定してある請求項1記載の内燃機関用吸気装置。
【請求項3】
前記上流側排ガス流路部分と、前記吸気流路のうちの前記共通流路よりも上流側の上流側吸気流路部分とを互いに平行に並設してある請求項2記載の内燃機関用吸気装置。
【請求項4】
前記上流側排ガス流路部分と前記共通流路とを、前記上流側排ガス流路部分の流路中心線が、前記吸気流路の流路中心線に対して90°以下の角度で交差するように互いに接続してある請求項2又は3記載の内燃機関用吸気装置。
【請求項5】
前記上流側排ガス流路部分と前記上流側吸気流路部分とを、共通の流路壁で区画して並設してある請求項3記載の内燃機関用吸気装置。

【図1】
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【図2】
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