説明

内燃機関用点火コイル及びその製造方法

【課題】内燃機関用点火コイルの低圧端子を2部で構成して製造コスト等を抑える。
【解決手段】内燃機関用点火コイルにおける低圧端子30を、一端の接続部31aと、この接続部31aに続いて設けられ、垂直に曲げられた屈曲部31bと、この屈曲部31bに続いて設けられた直線状の直線部31cとからなる垂曲端子部31、および、一端に接続部32aを有し、イグナイタの下部を迂回させられ、さらにイグナイタの側面に沿って上方に伸びた先に他端32bを有する略コの字状の共用端子部32の2部構成とし、接続部31a、32aを介して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動車のエンジン等の点火プラグへ高電圧を供給する内燃機関用点火コイルに関し、端子の一部を共有化し、これをコネクタ部に様々な角度がある製品に共通して用いることで、材料歩留まりの向上、金型製作の削減等を可能にした内燃機関用点火コイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジン等の点火プラグへ高電圧を供給する内燃機関用点火コイルについては、下記特許文献1に提案のものを含め、いくつかの構成のものが知られている。
【0003】
図3および図4は、それぞれ従来の内燃機関用点火コイルの一例を説明する概略縦断面図であり、内燃機関用点火コイル10A、10Bでは、熱可塑性樹脂製の絶縁ケースの本体部11に鉄心−コイル組立体2が収容され、この鉄心−コイル組立体2の構成部品間を絶縁しながら固定する絶縁樹脂としてのエポキシ樹脂24が注入されるとともに、絶縁ケースのコネクタ部12内側の端子収容部12aに、外部のバッテリ等の電源やコントロールユニット等と一端3aにて電気的に接続する端子としての低圧端子3がインサート成型により収容され、低圧端子3の他端3bが、鉄心−コイル組立体2とともに絶縁ケースの本体部11に収容されるイグナイタ25と電気的に接続されている。また、絶縁ケース2の下部の高圧タワー部13には、エンジンのプラグに高電圧を供給する高圧端子4が取り付けられている。
【0004】
なお、鉄心−コイル組立体2は、一次コイル21と、この一次コイル21と同心状に巻回された二次コイル22と、一次コイル21内を挿通することにより一次コイル21および二次コイル22との間で磁気的に結合する鉄心23とで構成されている。また、二次コイル22と高圧端子4とは、高圧接続ピン26を介して電気的に接続されている。
【0005】
また、従来の内燃機関用点火コイルは、図3に示すような、絶縁ケースのコネクタ部12の角度が取り付け方向に対し垂直(すなわち、水平方向)であるもの、図4に示すような、絶縁ケースのコネクタ部12の角度が取り付け方向に対し傾斜しているものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3631707号公報
【0007】
ここで、従来の内燃機関用点火コイル10A、10Bに備えられている低圧端子3は、図3および図4に示すとおり、絶縁ケースのコネクタ部12の端子収容部12aに一端3aが収容され、他端3a側が、イグナイタ25の下部を迂回させられ、さらにイグナイタ25の側面に沿って上方に伸びる形態にてイグナイタ25の接続部に接続され、絶縁ケースの本体部11に収容されている。
【0008】
具体的には、図3に示した内燃機関用点火コイル10Aでは、コネクタ部12の角度が取り付け方向に対し垂直(すなわち、水平方向)であるので、これに沿って、低圧端子3の一端3a側が取り付け方向に対し垂直の形態にて端子収容部12aに収容され、他端3a側が、イグナイタ25の下部を迂回させられ、さらにイグナイタ25の側面に沿って上方に伸びる形態にてイグナイタ25の接続部に接続され、絶縁ケースの本体部11に収容されている。図4に示した内燃機関用点火コイル10Bでは、コネクタ部12の角度が取り付け方向に対し傾斜しているので、これに沿って低圧端子3の一端3a側の角度が取り付け方向に対し傾斜した形態にて端子収容部12aに収容され、他端3a側が、イグナイタ25の下部を迂回させられ、さらにイグナイタ25の側面に沿って上方に伸びる形態にてイグナイタ25の接続部に接続され、絶縁ケースの本体部11に収容されている。
【0009】
このように、従来の内燃機関用点火コイルでは、低圧端子2の他端3a側が、イグナイタ25の下部を迂回させられ、さらにイグナイタ25の側面に沿って上方に伸びる形態であって共通であるにもかかわらず、一端3a側の形態が異なるために、コネクタ部12の取り付け角度が異なる毎に、新たな低圧端子3の作製が必要となっている。このため、例えば、絶縁ケースの本体部11が共用できる場合にも、コネクタ部12の取り付け角度が異なる毎に、新たな絶縁ケース(コネクタ部)並びに低圧端子の金型を製作する必要が生じていて、内燃機関用点火コイルの成型までに要する時間、手間、コストのほか、材料歩留まりの低下等、様々な不都合が指摘されるに至っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の通り、従来の内燃機関用点火コイルでは、コネクタ部12の取り付け角度が異なる毎に、新たな絶縁ケースや低圧端子の金型を製作する必要があるという課題があり、内燃機関用点火コイルの成型までに要する時間、手間、コストのほか、材料歩留まりの低下等、様々な不都合につながるという問題を生じされている。また、コネクタ部に収容される低圧端子の一端側には部分メッキが必要となる場合も多く、さらに材料歩留まりが悪くなって製造コストの低減を困難にさせているという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、端子を2つに分けることで、端子の共有化を図り、この共有化した端子をコネクタ部に様々な角度がある製品に共用することで、材料歩留まりの向上、金型製作の削減等を可能にした内燃機関用点火コイル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、絶縁ケースに設けたコネクタ部内に、外部と電気的に接続する端子の一端が収容され、他端が前記絶縁ケースの本体部に収容されてインサート成型されてなる内燃機関用点火コイルにおいて、前記端子が、一端側端子部と他端側端子部との2部で構成され、接続部を介して接続されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記内燃機関用コイルの製造方法であって、前記一端側端子部と前記他端側端子部とを接続部を介して接続した後に、前記絶縁ケースをインサート成型することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、端子を、一端側端子部と他端側端子部との2部で構成し、接続部を介して接続させて内燃機関用点火コイルを構成しているので、絶縁ケースの本体部に収容される他端側端子部を共用可能な形態とし、一端側端子部のみをコネクタ部の取り付け角度に応じて作製すること、または、コネクタ部の取り付け角度に応じて接続部の接続面積を調節することで対応することを可能とするため、コネクタ部の取り付け角度が異なる毎に、新たな絶縁ケース並びに低圧端子の金型を製作する必要がなくなって、内燃機関用点火コイルの成型までに要する時間、手間、コストのほか、材料歩留まりの低下等、様々な不都合を解決することができる。さらに、端子に部分メッキが必要とされる製品に対して、2部で構成した端子のうちの一端側端子部のみに部分メッキを施せばよいので、さらに材料歩留まりが向上した内燃機関用点火コイルを提供することができる。
【0015】
また、本発明では、上記した効果を有する内燃機関用点火コイルを、一端側端子部と他端側端子部とを接続部を介して接続した後に絶縁ケースをインサート成型して製造するので、2部構成の端子の接続を確認した後に、インサート成型することができて、製品の信頼性を確保した上で内燃機関用点火コイルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る内燃機関用点火コイルにおける端子を説明する説明図であって、絶縁ケースのコネクタ部の角度が取り付け方向に対し垂直である場合に用いる端子の構成を説明する概略説明図である。
【図2】本発明に係る内燃機関用点火コイルにおける端子を説明する説明図であって、絶縁ケースのコネクタ部の角度が取り付け方向に対し傾斜している場合に用いる端子の構成を説明する概略説明図である。
【図3】従来の内燃機関用点火コイルの一例を示す概略縦断面図である。
【図4】従来の内燃機関用点火コイルのまた他の一例を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のいくつかの実施形態を図に基づいて説明する。なお、図3及び図4に示した内燃機関用点火コイルと同一または相当部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
(実施例1)
実施例1に係る内燃機関用点火コイルは、図1に示すような低圧端子30を備えて構成されている。その他の構成は、図3に示した内燃機関用点火コイルと同様の構成である。
【0019】
すなわち、実施例1に係る内燃機関用点火コイルにおける低圧端子30は、図1に示すように、絶縁ケースのコネクタ部12の角度が取り付け方向に対し垂直に設けられたものに収容され、一端の接続部31aと、この接続部31aに続いて設けられ、垂直に曲げられた屈曲部31bと、この屈曲部31bに続いて設けられた直線状の直線部31cとからなる一端側端子部としての垂曲端子部31、および、一端に接続部32aを有するとともに、イグナイタの下部を迂回させられ、さらにイグナイタの側面に沿って上方に伸びた先に他端32bを有する略コの字状の他端側端子部としての共用端子部32との2部品にて構成され、これらの接続部31a、32aを介して接続されて内燃機関用点火コイルが構成される。なお、接続部31a、32aを介して接続された低圧端子3は、絶縁ケースのコネクタ部12の端子収容部12aに垂曲端子部31の直線部31aが収容され、それ以外の屈曲部31b、接続部31aと、共用端子部32とは、絶縁ケースの本体部11に収容されるものである。
【0020】
ここで、実施例1に係る内燃機関用点火コイルの製造方法を簡単に説明すると、まず、垂曲端子部31と共用端子部32とを接続部31a、32aにて接続して低圧端子30を作製し、接続部31a、32aにて確実に接続されていることを確認した後、金型の所定の位置に載置して熱可塑性樹脂製の絶縁ケースをインサート成型する。その後、絶縁ケースの本体部11の所定の位置に鉄心−コイル組立体2、イグナイタ25等を収容するとともに、この本体部11内にエポキシ樹脂24を注入すれば、内燃機関用点火コイルを製造することができる。
【0021】
(実施例2)
また、実施例2に係る他の内燃機関用点火コイルは、図2に示すような低圧端子300を備えて構成されている。その他の構成は、図4に示した内燃機関用点火コイルと同様の構成である。
【0022】
すなわち、実施例2に係る内燃機関用点火コイルにおける低圧端子300は、図2に示すように、絶縁ケースのコネクタ部12の角度が取り付け方向に対し傾斜して設けられたものに収容され、一端の接続部33aと、この接続部33aに続いて設けられ、鈍角に曲げられた屈曲部33bと、この屈曲部33bに続いて設けられた直線状の直線部31cとからなる一端側端子部としての傾斜端子部33、および、上記実施例1と同一構成の共用端子部32との2部品にて構成され、これらの接続部33a、32aを介して接続されて内燃機関用点火コイルが構成される。なお、本実施例2においても、上記実施例1に相当するように、絶縁ケースの傾斜したコネクタ部12の端子収容部12aに傾斜端子部33の直線部33aが収容され、それ以外は絶縁ケースの本体部11に収容されるものである。
【0023】
実施例2に係る内燃機関用点火コイルの製造方法を簡単に説明すると、まず、傾斜端子部33と共用端子部32とを接続部33a、32aにて接続して低圧端子300を作製し、接続部33a、32aにて確実に接続されていることを確認した後、金型の所定の位置に載置して熱可塑性樹脂製の絶縁ケースをインサート成型する。その後、絶縁ケースの本体部11の所定の位置に鉄心−コイル組立体2、イグナイタ25等を収容するとともに、この本体部11内にエポキシ樹脂24を注入すれば、内燃機関用点火コイルを製造することができる。
【0024】
また、本実施例2では、接続部33a、32aにて確実に接続されていることを確認しつつ、接続部33a、32aでの接続面積等を調整することにより、または、傾斜端子部33の屈曲部33bの鈍角を適宜調整する、或いは、屈曲部33bの鈍角を適宜調整した傾斜端子部32を作製することにより、絶縁ケースにおけるコネクタ部12の取り付け方向に対する角度がどのような角度であっても、少なくとも共用端子部32を共用して内燃機関用点火コイルを製造することができる。
【0025】
上述の通り、実施例1に係る内燃機関用点火コイルと実施例2に係る内燃機関用点火コイルとでは、絶縁ケースの形状、特に、コネクタ部12の取り付け方向に対する角度が異なるにもかかわらず、少なくとも絶縁ケースの本体部11に収容される共用端子部32を共用して用いて構成することができるので、絶縁ケースの形状が異なるにもかからわず、実施例(製品)毎に、共用端子部32の金型を製作する必要をなくしている。特に、本実施例2では、傾斜端子部33と共用端子部32と接続部33aでの接続面積を調整することにより、または、傾斜端子部33の屈曲部33bの鈍角を適宜調整する、或いは、屈曲部33bの鈍角を適宜調整した傾斜端子部32を作製することにより、絶縁ケースのコネクタ部12の取り付け方向に対する角度がどのような角度であっても対応することができるので、新たな低圧端子の金型の製作を不要とした効果を大きくすることができる。
【0026】
さらに、低圧端子30、300が部分メッキが必要とされる製品に適用される場合にも、2部で構成した低圧端子30、300のうちの垂曲端子部31又は傾斜端子部33のみに部分メッキを施せばよいので、低圧端子30、300の材料歩留まりについても改善されるものとなる。
【0027】
したがって、本発明では、低圧端子30(300)を、垂曲端子部31(傾斜端子部33)と他端側端子部32との2部で構成し、接続部31a(33a)、32aを介して接続させて内燃機関用点火コイルを構成することにより、コネクタ部の取り付け角度が異なる毎に、新たな絶縁ケース並びに低圧端子の金型を製作する必要がなく、内燃機関用点火コイルの成型までに要する時間、手間、コストのほか、材料歩留まりの低下等、様々な不都合を解決することができる。さらに、低圧端子30、300が部分メッキが必要とされる製品に適用される場合にも、2部で構成した低圧端子30、300のうちの垂曲端子部31又は傾斜端子部33のみに部分メッキを施せばよく、低圧端子30、300の材料歩留まりについても改善することができる。
【0028】
さらに、本発明では、低圧端子30(300)の垂曲端子部31(傾斜端子部33)の接続部31a(33a)と、他端側端子部32の接続部32aとを確実に接続したことを確認した上で、絶縁ケースをインサート成型して製造するので、上記した効果を有し、信頼性も確保した内燃機関用点火コイルを製造することができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態を詳述したが、本発明は、上記一実施形態に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0030】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱しなければ、内燃機関用点火コイルの形状を変えることも可能である。また、本発明の内燃機関用点火コイルの各構成物品に使用する材質等は、公知または周知の素材を使用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10A・従来の内燃機関用点火コイル
10B・従来の内燃機関用点火コイル
11・・絶縁ケースの本体部
12・・絶縁ケースのコネクタ部
13・・高圧タワー部
2・・・鉄心−コイル組立体
21・・一次コイル
22・・二次コイル
23・・鉄心
24・・エポキシ樹脂(絶縁樹脂)
25・・イグナイタ
26・・高圧接続ピン
3・・・低圧端子(従来品)
3a・・一端
3b・・他端
30・・低圧端子(実施例1)
300・低圧端子(実施例2)
31・・垂曲端子部
31a・接続部
31b・屈曲部
31c・直線部
32・・共用端子部
32a・接続部
32b・他端
33・・傾斜端子部
33a・接続部
33b・屈曲部
33c・直線部
4・・・高圧端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ケースに設けたコネクタ部内に、外部と電気的に接続する端子の一端が収容され、他端が前記絶縁ケースの本体部に収容されてインサート成型されてなる内燃機関用点火コイルにおいて、
前記端子は、一端側端子部と他端側端子部との2部で構成され、接続部を介して接続される、
ことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用コイルの製造方法であって、
前記一端側端子部と前記他端側端子部とを接続部を介して接続した後に、前記絶縁ケースをインサート成型する、
ことを特徴とする内燃機関用点火コイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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