説明

内研用砥石のドレッシング方法、及び内研用砥石のドレッシング装置

【課題】内研砥石用のドレッシング技術を改良して、ロータリドレッサのドレッシング力に因る内研砥石軸の撓みを防止し、高精度のドレッシング作業を可能ならしめる。
【解決手段】内研砥石1の外周面に対応する凹面7aを有する軸受ブロック7を設け、該凹面に沿わせて静圧軸受8を構成する。上記の静圧軸受に供給する圧力油9は、当該ドレッシング装置の研削液循環系統から分岐させた研削液を兼用することが望ましい。該静圧軸受8の内部圧力を圧力センサ11で検出して自動制御装置12に入力させる。該自動制御装置は圧力制御弁9a及びスライド駆動モータ6aを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内研砥石をドレッシングする方法、及び、上記の発明方法を容易に実施し得るドレッシング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内面研削盤の工具として用いられる内研用砥石は、内研砥石軸の先端に砥石車を固着した構造である。
上記の内研用砥石を用いて内面研削を行なう場合は、予めツルーイングしなければならない。
また、内面研削を行なったために該内研用砥石が損耗すると、研削作業の途中でドレッシングしなければならない。
【0003】
厳密に言うと、ツルーイングとは「砥石のマクロな形状を所望のとおりに整えること」であり、ドレッシングとは「損耗した砥石のミクロな表面状態を修正して、砥石の切れ味を復元させること」である。

しかし、当業界の慣習としてドレッシングとツルーイングとが混同されている。
本発明においてドレッシングとは、ツルーイングを含む意である。特にドレッサとは、「ツルーイングおよび/またはドレッシングを行ない得る機械装置」を意味するものとする。
【0004】
高精度のドレッシングができる簡単な装置として、特許文献1に挙げた特開2004−122251号公報「研削盤の砥石ドレッシング方法及び装置」が提案されている。
また、回転砥石の破損が無く安全な装置として、特許文献2に挙げた特開2002−273656号公報「砥石ドレッシング装置」が提案されている。
しかし、特に内研砥石を対象として高精度のドレッシングを追及する技術については、未だ特記すべき公知発明が無い。
【特許文献1】特開2004−122251号公報
【特許文献2】特開2002−273656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内研用砥石の特徴は、被加工物の孔の中へ挿入されるため、内研砥石軸が比較的に長いことである。
その上、特殊な内面研削においては、内研砥石軸と被加工物との干渉を避けるために内研砥石軸を細くしなければならない場合が少なくない。
内研砥石軸が比較的に細長い内研用砥石をドレッシング(ツルーイングを含む。以下同様)する場合、内研砥石軸がドレッシングの反力によって撓まされる。
内研砥石軸が撓むと、ドレッシング精度が悪くなる。ドレッシング精度が悪くなると、当然に内研精度が悪くなる。
【0006】
ここで留意すべきは、「内研砥石軸を撓ませようとする力が、ドレッシング条件によって変化する」ということである。とりわけ、ドレッサの切り込み速さによって大きく変わる。
すなわち、いま仮に、ドレッサの切り込み速さを遅くした場合について考えてみると、
切り込み速さを低下させるに従ってドレッシング反力が減少し、内研砥石軸の撓みは小さくなる。
切り込み速さ減少の極限状態として、ドレッサの切り込み動作を停止させれば、内研砥石軸の撓みがゼロになるであろうことは容易に推察できよう。しかし、切り込みを停止すればドレッシング作業が進捗しなくなる。
以上の考察から理解し得るように、比喩的に言えば、他の条件が一定ならば、『内研砥石軸の撓みは、ドレッシング作業能率と比例する』。
【0007】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、
ドレッシング作業の能率を低下させることなく内研砥石軸の撓みを防止し、しかもドレッシング精度を向上せしめ得る技術を提供するにある。
これを分析して考察すると、本発明の適用により、従来例のドレッシングに比較して、
イ.同じレベルのドレッシング作業能率で、ドレッシング精度を飛躍的に向上せしめることを期待することができ、
ロ.同じレベルのドレッシング精度で、ドレッシング作業の能率(ドレッシング切込み)を格段に向上せしめることも期待し得る。
ハ.これらを総合することにより、能率・精度ともに向上せしめることも期待することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明者らは、内研砥石をドレッシングする際の内研砥石軸の撓み状態について実験研究を行なった。
図3は上記実験の説明図である。
図3(A)は実験装置の模式的な斜視図である。説明の便宜上、直交3軸X−Y−Zを設定する。Z軸は垂直軸、Y,X軸は水平軸である。
【0009】
内研用砥石1は内研砥石軸2に固着され、内研砥石駆動部3に取り付けられてX軸方向に支承され、円弧矢印a方向に回転している。
ロータリドレッサ4はY軸方向にセットされている。
実験は、GC♯600のロータリドレッサ4を円弧矢印b方向に4700rpmで回転させたり、円弧矢印c方向に4700rpmで回転させたりしながら、1200rpmで回転しているCBN♯400の内研用砥石1に接触させてドレッシングをシミュレーションし、それぞれの状態を観察し、計測した。
【0010】
上記シミュレーション条件は、ロータリドレッサ4を速度Vfで往復させながら、1往復ごとにδずつ切り込んだ。
Vf=10ミリメートル/秒
δ=50マイクロメートル/サイクル
である。
図3(B)は、ロータリドレッサ4を円弧矢印b方向に回転させた場合のドレッシング抵抗力を3軸それぞれに分解して表示したグラフであり、図3(C)は同じく円弧矢印c方向に回転させた場合を表示している。横軸は時間、縦軸は力である。
【0011】
回転方向が円弧矢印b方向のときと、円弧矢印c方向のときとのそれぞれについて、計測されたドレッシング抵抗を次に示す。
イ.b方向のとき
X軸方向分力 Y軸方向分力 Z軸方向分力
0mN 735mN 441mN
ロ.c方向のとき
X軸方向分力 Y軸方向分力 Z軸方向分力
0mN 784mN 490mN
【0012】
ドレッシング抵抗力の方向は、b方向回転のとき、水平よりも上向きに31度。
c方向回転のとき、水平よりも下向きに32度であった。
上記二つの力の開き角が31+32=63度であり、すなわち開き角<<180度であるということは本発明の構成にとって重要な根拠の一つである。すなわち、この抵抗力を支承しようとする場合、180度の範囲を支承すれば、ドレッシング抵抗力が種々に変化しても安定な支承が可能であることを意味している。
【0013】
ドレッシング(ツルーイングを含む)条件が変化しても、抵抗の方向が+,−30度を超えないということは、本発明の構成にとって重要であるから、次のように確認試験を行なった。
図3(A)、(B)、及び(C)に代表的な抵抗角度グラフを三つ示す。これらの3例に共通してツルーイング条件は次の通りである。
【0014】
ロータリドレッサ……………………SG#80
ロータリドレッサ回転速度…………4700rpm
内研用砥石……………………………CBN#400(φ5)
内研用砥石回転速度…………………400〜1600rpm
切込み量………………………………1〜10μm
送り速度………………………………5〜20mm/s
【0015】
内研用砥石回転速度 Y軸方向抵抗 Z軸方向抵抗 角度
400rpm 796mN 368mN 25度
800rpm 735mN 368mN 27度
1200rpm 735mN 368mN 27度
1600rpm 735mN 368mN 27度
【0016】
送り速度 Y軸方向抵抗 Z軸方向抵抗 角度 5mm/s 551mN 245mN 24度
10mm/s 735mN 367mN 27度
15mm/s 796mN 368mN 25度
20mm/s 980mN 429mN 24度
【0017】
切込み量 Y軸方向抵抗 Z軸方向抵抗 角度
2.5μm 368mN 123mN 18度
5μm 735mN 368mN 27度
10μm 796mN 429mN 28度
【0018】
上述した実験研究によって明らかになった事項の一つに、(図3(A),(B)及び図4参照)「ドレッシング反力の方向がほぼ一定していること」が有る。
すなわち、先に段落番号0006で説明したように、内研砥石軸を撓ませようとする力(ドレッシング反力)はドレッシング条件によって大きく変わるが、その方向はほぼ一定である。
上述の知見に基づいて創作した本発明の基本的な原理を、その1実施形態に対応する図2を参照して略述すると次のとおりである。
【0019】
内研砥石1がロータリドレッサ4によってドレッシングされている。
上記内研砥石の被ドレッシング面を、静圧軸受8で支承する。
研削砥石である内研砥石の研削面を、直接的に軸受け面で支承しようとする着想は未だかって無かった。ここに本発明の新規性,進歩性が有る。
【0020】
上述の原理に基づく具体的な構成として請求項1の発明に係る内研用砥石のドレッシング方法は、
(図1参照)内研砥石軸(2)を把持して、該内研砥石軸に固着された内研砥石(1)を回転させながら、上記内研砥石の被ドレッシング面にロータリドレッサ(4)を接触させてドレッシングする方法において、
前記内研砥石がロータリドレッサから受けるドレッシング反力を、該ロータリドレッサに対向する静圧軸受(8)によって支承することにより、内研砥石軸の撓みを防止することを特徴とする。
【0021】
請求項2の発明に係る内研用砥石のドレッシング方法は、前記請求項1の発明方法の構成要件に加えて、
(図1及び図2参照)距離センサ(10)によって前記内研砥石軸(2)の位置を検出することにより、
若しくは、距離センサ(10)によって前記内研砥石(1)の位置を検出することによって、内研砥石軸の撓み量を算出し、
算出された撓み量が最小となるように前記静圧軸受の位置を制御し、及び/又は、該静圧軸受内の圧力を制御することを特徴とする、請求項1に記載した。
【0022】
請求項3の発明に係る内研用砥石のドレッシング方法は、前記請求項1発明方法の構成要件に加えて、
(図1参照)前記静圧軸受内の圧力を検出する圧力センサ(11)を設け、
上記圧力センサの検出値が所定値となるように静圧軸受の位置を制御し、
及び/又は、前記圧力センサの検出値が所定値となるように静圧軸受に供給する流体の圧力を制御することを特徴とする。
【0023】
請求項4の発明に係る内研用砥石のドレッシング方法は、前記請求項1ないし請求項3の発明方法の構成要件に加えて、
予め、曲率半径を異にする複数種類の静圧軸受(8)のそれぞれを設けられた複数種類の軸受ブロック(7)を準備しておき、
内研砥石の径寸法に応じて軸受ブロックを着脱交換することを特徴とする。
【0024】
請求項5の発明に係る内研用砥石のドレッシング装置の構成は、
(図1参照)内研砥石軸(2)を把持して、該内研砥石軸に固着された内研砥石(1)を回転させる手段と、上記内研砥石の被ドレッシング面にロータリドレッサ(4)を接触させる手段とを具備している内研用砥石ドレッシング装置において、
内研砥石に関してロータリドレッサと反対側付近に位置せしめて静圧軸受(8)が設けられていて、
該静圧軸受の軸受面が内研砥石の被ドレッシング面に対向し、又は内研砥石軸に対向していることを特徴とする。
【0025】
請求項6の発明に係る内研用砥石のドレッシング装置の構成は、前記請求項5の発明装置の構成要件に加えて、
(図1参照)前記静圧軸受の供給圧力を制御する圧力制御弁(9a)、及び該静圧軸受内の圧力を検出する圧力センサ(11)が設けられており、
かつ、前記圧力センサの検出信号を入力されて前記圧力制御弁を制御する自動制御装置(12)が設けられていることを特徴とする。
【0026】
請求項7の発明に係る内研用砥石のドレッシング装置の構成は、前記請求項5または請求項6の発明方法の構成要件に加えて、
(図1参照)前記静圧軸受(8)を設けられた軸受ブロック(7)がスライド(6)を介してベッド(5)に搭載されるとともに、
内研砥石または内研砥石軸の位置を検出する距離センサ(10)が、前記のベッド上に設置されており、
かつ、該距離センサの検出信号を入力されて前記のスライドを作動させる自動制御装置(12)が設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項8の発明に係る内研用砥石のドレッシング装置の構成は、前記請求項5ないし請求項7の発明装置の構成要件に加えて、
曲率半径を異にする複数種類の静圧軸受のそれぞれを設けられた複数種類の軸受ブロックが付属していて、
内研砥石の径寸法に応じて、軸受ブロックを着脱交換し得る構造であることを特徴とする。
【0028】
請求項9の発明に係る内研用砥石のドレッシング装置の構成は、前記請求項5ないし請求項7の発明装置の構成要件に加えて、
ドレッシング作業用の研削液が、前記静圧軸受(8)の作動流体として用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明方法は、静圧軸受を用いることによって、内研砥石の被ドレッシング面を支承することを可能ならしめた。
被ドレッシング面を支承することによって、ドレッシング反力と適正に釣り合い、内研砥石軸の撓みを防止することができる。
上述の作用効果から明らかなように本発明方法における静圧軸受は、直接的に内研砥石を位置決めしようとするのではなく、研削反力(すなわち内研砥石軸を撓ませようとする力)を相殺することを役目としている。
静圧軸受は、被支承物に対して金属接触しないから、該静圧軸受が内研砥石によって削られる恐れが無く、早期には損耗しない。
【0030】
請求項2の発明方法を適用すると、静圧軸受の位置、及び/又は、静圧軸受内の圧力を制御することにより、該静圧軸受の支承力を調節し、内研砥石軸の撓み量を最小ならしめることができる。
【0031】
請求項3の発明方法を適用すると、静圧軸受の内部圧力(例えば作動油の油圧)を検出して、その検出値が正常となるように静圧軸受の位置(内研砥石に対する相対的な位置)を制御し、及び/または静圧軸受に対する供給流体の圧力(例えば作動油の油圧)を制御することによって、該静圧軸受をして所期の作用を果たさせることができ、安定した状態でドレッシング作業を遂行することができる。
【0032】
請求項4の発明方法を適用すると、ドレッシング処理の対象である内研砥石の径寸法の大小に応じて適正な静圧軸受を用いることができる。
特に、同一の内研砥石であっても、内面研削作業とドレッシング処理とを繰り返している内に、その径寸法が次第に減少してくるので、径寸法の減少に対応して適正な静圧軸受を使用することができるという意味で、本請求項4に係る発明装置の実用的価値は多大である。
【0033】
請求項5の発明装置を適用すると、静圧軸受によって、内研砥石の被ドレッシング面を支承することによって、ドレッシング反力と支承力とが適正に釣り合い、内研砥石軸の撓みを防止することができる。
本発明装置における静圧軸受は、直接的に内研砥石を位置決めするのではなく、ドレッシング反力(すなわち内研砥石軸を撓ませようとする力)と釣り合って、これと相殺することを役目としている。
静圧軸受は、被支承物に対して流体膜(例えば作動油の油膜)を介して対向し、金属接触しないから、該静圧軸受が内研砥石によって研削を受けない。従って静圧軸受が早期に損耗する虞れは無い。
【0034】
請求項6に係る発明装置を、前記請求項5の発明装置に併せて適用すると、静圧軸受内の流体圧力が自動的に制御されて適正値を保ち、適正な厚さの流体膜(例えば作動油の油膜)が維持される。
このため、流体膜厚が過小で金属接触を生じたり、流体膜厚が過大なために却って内研砥石軸を歪ませたりする虞れが無く、安定した状態で高精度のドレッシング処理を行なうことができる。
【0035】
請求項7に係る発明装置を、前記請求項5又は請求項6の発明装置に併せて適用すると、静圧軸受を形成された軸受ブロックの位置が自動的に制御される。
これにより、内研砥石に対する静圧軸受の相対的な位置が適正に維持され、内研砥石軸の歪みが完全に防止される。
【0036】
請求項8に係る発明装置を、前記請求項5ないし請求項7の発明装置に併せて適用すると、同一のドレッシング装置を用いて、径寸法を異にする各種の内研砥石をドレッシングすることができる。
特に、同一の内研砥石が内面研削とドレッシング処理とを繰り返して径寸法が次第に減少したとき、迅速,容易に対応して適正な状態で内研砥石軸の撓みを防止することができる。
【0037】
請求項9に係る発明装置を、前記請求項5ないし請求項8の発明装置に併せて適用すると、ドレッシング用の研削液(クーラント)と静圧軸受油とが同質であるから、相互に混合しても何らの不具合を生じない。
このため、圧力流体の循環系統を簡素に構成することができる。構成が簡素であることにより、装置全体が小形軽量になって製作コストが低廉であるのみでなく、故障発生の確率が低く、メンイナンス性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は本発明装置の1実施形態を描いた模式図であり、図2は上記実施形態の要部を抽出して模式的に描いた外観斜視図である。
内研砥石1は内研砥石軸2に固着され、該内研砥石軸をチャックして支持されるとともに、図外の駆動機構によって軸心周りに回転せしめられている。
ロータリドレッサ4は広義の砥石車であって、内研砥石に接触してこれをドレッシングする。
ロータリドレッサには各種の型式が有るが、本発明においてはロータリドレッサの型式を問わない。
【0039】
符号7を付して示したのは軸受ブロックであって、内研砥石軸2の被ドレッシング面に対応する凹面7aが形成されており、該凹面に静圧軸受が設けられている。
前記の凹面7aは内研砥石1と接触することなく、微小なクリアランスを介して対向,離間している。
前記軸受ブロック7は、スライド6を介してベッド5上に搭載されている。6aは駆動モータであって、上記スライドを往復矢印e−fのように前後進させる。
【0040】
本実施形態においては、当該ドレッシング装置の研削液(クーラント)を圧力油9として用い、圧力制御弁9aを介して前記静圧軸受8に供給する。
このように構成すると、静圧軸受専用の流体ポンプを設ける必要が無く、研削液の循環系統から管路を分岐させて静圧軸受に送給することができるので、流体循環系統を簡素に構成することができる。
しかも、ドレッシング領域に注がれる研削液の温度と静圧軸受に満たされる圧力流体の温度とが等しくなるので、熱勾配を生じない。このため、熱歪みに因るドレッシング誤差を防止することができる。
【0041】
前記静圧軸受8の内部の圧力を検出する圧力センサ11が設けられ、その検出信号が自動制御装置12に入力される。
一方、内研砥石軸2に対向させて距離センサ10が設けられ、該内研砥石軸2の位置を検出している。この検出信号も、前記自動制御装置12に入力される。
前記距離センサ10は、軸受ブロック7に対して固着し、若しくはスライド6に搭載しても良く。又は、ベッド5に対して固定的に設置しても良い。
【0042】
本実施形態における距離センサ10は内研砥石軸2に対向/離間して、該内研砥石軸2の位置を検出している。
これと異なる実施形態として、距離センサ10を内研砥石1に対向,離間せしめることも考えられるが、静圧軸受8の軸受け面積を大きくとるためには、距離センサを内研砥石軸に対向させることが望ましい。
前記と異なる実施形態として、静圧軸受を内研砥石軸2に対向させて設置することも考えられる。この場合は、距離センサ10を内研砥石1に対向せしめて設置することが容易に可能となる。
【0043】
前記自動制御装置12は圧力センサ11の検出信号を入力されて、その値が所定値となるように圧力制御弁9aを制御する。
これにより、適正な厚さの油膜が維持されて内研砥石1の位置が高精度で規制され、高品質のドレッシングが行われる。
【0044】
前記自動制御装置12は、距離センサ10の検出信号を入力され、内研砥石軸2の撓み量を算出する。そして、この撓み量を最小ならしめるように駆動モータ6aを制御して、スライド6を前後進させる。
これにより、静圧軸受に凹面と内研砥石の外周面との間のクリアランス寸法が適正値に維持されて内研砥石1の位置が高精度で規制され、高品質のドレッシング仕上を可能ならしめる。
【0045】
図1に描かれている内研用砥石ドレッシング装置は、直径寸法Dの内研砥石をドレッシングするように構成したものであって、凹面7aの曲率半径はD/2よりも微小寸法αだけ大きく設定されている。
上記の微小寸法αは、静圧軸受8の油膜厚さ寸法とほぼ同じである。
次の理由によって、凹面7aの曲率半径の異なる複数個の軸受ブロック(図示省略)を準備しておく。ここに軸受ブロックの7凹面7aは静圧軸受の軸受け面と見做すことができる。
イ.各種寸法の内研砥石に対応して、その内研砥石軸の撓みを防止するため。
ロ.同一の内研砥石であっても、内周面研削作業とドレッシング処理とを繰り返すと、その径寸法が次第に減少するので、これに順応するため。
【0046】
上述のごとく、各種の軸受ブロックを準備するとともに、これらの軸受ブロックをスライド6に対して着脱交換し得るように構成しておく。
本実施形態においては、直径5.0mm(半径2.5mm)の内研砥石をドレッシングするために、曲率半径2.5mm,曲率半径2.3mm,曲率半径2.1mmの3種類の凹面を有する3種類の軸受ブロックを付属部品として備えてある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明装置の1実施形態を描いた模式図
【図2】上記実施形態の要部を抽出して描いた模式的な外観斜視図
【図3】(A)は研削作業における抵抗を測定している状態の斜視図、(B)及び(C)は測定結果を表す図表
【図4】ドレッシング作業における抵抗角度を表す図表
【符号の説明】
【0048】
1…内研砥石
2…内研砥石軸
4…ロータリドレッサ
5…ベッド
6…スライド
7…軸受ブロック
8…静圧軸受
10…距離センサ
11…圧力センサ
12…自動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内研砥石軸を把持して、該内研砥石軸に固着された内研砥石を回転させながら、上記内研砥石の被ドレッシング面にロータリドレッサを接触させてドレッシングする方法において、
前記内研砥石がロータリドレッサから受けるドレッシング反力を、該ロータリドレッサに対向する静圧軸受によって支承することにより、内研砥石軸の撓みを防止することを特徴とする、内研用砥石のドレッシング方法。
【請求項2】
距離センサによって前記内研砥石軸の位置を検出することにより、
若しくは、距離センサによって前記内研砥石の位置を検出することによって、
内研砥石軸の撓み量を算出し、
算出された撓み量が最小となるように前記静圧軸受の位置を制御し、及び/又は、該静圧軸受内の圧力を制御することを特徴とする、請求項1に記載した内研用砥石のドレッシング方法。
【請求項3】
前記静圧軸受内の流体圧力を検出する圧力センサを設け、
上記圧力センサの検出値が所定値となるように静圧軸受の位置を制御し、
及び/又は、前記圧力センサの検出値が所定値となるように、静圧軸受に供給する流体の圧力を制御することを特徴とする、請求項1に記載した内研用砥石のドレッシング方法。
【請求項4】
予め、曲率半径を異にする複数種類の静圧軸受のそれぞれを設けられた複数種類の軸受ブロックを準備しておき、
内研砥石の径寸法に応じて軸受ブロックを着脱交換することを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れかに記載した内研用砥石のドレッシング方法。
【請求項5】
内研砥石軸を把持して、該内研砥石軸に固着された内研砥石を回転させる手段と、上記内研砥石の被ドレッシング面にロータリドレッサを接触させる手段とを具備している内研用砥石ドレッシング装置において、
内研砥石に関してロータリドレッサと反対側付近に位置せしめて静圧軸受(8)が設けられていて、
該静圧軸受の軸受面が内研砥石の被ドレッシング面に対向し、又は内研砥石軸に対向していることを特徴とする、内研用砥石のドレッシング装置。
【請求項6】
前記静圧軸受に供給する流体の圧力を制御する圧力制御弁、及び該静圧軸受内の流体圧力を検出する圧力センサが設けられており、
かつ、前記圧力センサの検出信号を入力されて前記圧力制御弁を制御する自動制御装置を有していることを特徴とする、請求項5に記載した内研用砥石のドレッシング装置。
【請求項7】
前記静圧軸受を設けられた軸受ブロックがスライドを介してベッドに搭載されるとともに、
内研砥石または内研砥石軸の位置を検出する距離センサが、ベッド上に設置されており、
かつ、該距離センサの検出信号を入力されて前記のスライドを作動させる自動制御装置が設けられていることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載した内研用砥石のドレッシング装置。
【請求項8】
曲率半径を異にする複数種類の静圧軸受のそれぞれを設けられた複数種類の軸受ブロックが付属していて、
内研砥石の径寸法に応じて、軸受ブロックを着脱交換し得る構造であることを特徴とする、請求項5ないし請求項7の何れかに記載した内研用砥石のドレッシング装置。
【請求項9】
ドレッシング作業用の研削液が、前記静圧軸受の作動流体として用いられることを特徴とする、請求項5ないし請求項8の何れかに記載した内研用砥石のドレッシング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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