説明

内視鏡の処置具起上装置

【課題】操作ワイヤの張り具合を簡単な作業で容易に調整することができ、また再調整も容易な内視鏡の処置具起上装置を提供すること。
【解決手段】ワイヤテンション調整機構には、一方が操作ワイヤ6の基端に連結され他方が処置具起上片操作機構91に連結されて操作ワイヤ6の軸線方向に相対的にスライド可能に係合する一対のスライド係合部材11,12と、一対のスライド係合部材11,12を相対的にスライドできないように任意の位置関係に固定して一体的にスライドする状態にする固定ビス14とが設けられ、ガイドカバー16には、固定ビス14を螺動させた時に固定ビス14が通過する切り欠き17が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の処置具起上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の処置具起上装置は一般に、挿入部の先端部分に処置具起上片が可動に配置され、処置具起上片に連結された操作ワイヤを進退操作するための処置具起上片操作機構が、挿入部の基端に連結された操作部に配置された構成になっている。
【0003】
また、内視鏡を組み立てる際や繰り返しの使用により操作ワイヤに緩みが発生した場合等のために、処置具起上片操作機構に連結された操作ワイヤの張り具合を調整するためのワイヤテンション調整機構が操作部内に設けられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−115431、図4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明においては、操作ワイヤの張り具合を調整するためのワイヤテンション調整機構が、ネジ棒状の調節ネジ(41)と、その調節ネジ(41)が螺合する雌ネジが形成された連結棒(40)とにより形成され、調節ネジ(41)と連結棒(40)との螺合状態を変えることにより操作ワイヤの張り具合を調整することができるようになっている。
【0005】
しかし、調節ネジ(41)と連結棒(40)との螺合状態を変えるためには、連結棒(40)とその隣の部材とを連結しているビスを一旦取り外して連結棒(40)を単独で軸線回りに回転させ、それからビスを付け直して操作ワイヤの張り具合を見る作業を繰り返す必要があり、作業に手間がかかって非常に面倒であった。
【0006】
そこで本発明は、操作ワイヤの張り具合を簡単な作業で容易に調整することができ、また再調整も容易な内視鏡の処置具起上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の処置具起上装置は、基端側に操作部が連結された挿入部の先端部分に処置具起上片が可動に配置されて、処置具起上片に連結された操作ワイヤを進退操作するための処置具起上片操作機構が操作部に配置されると共に、処置具起上片操作機構に連結された操作ワイヤの張り具合を調整するためのワイヤテンション調整機構が、操作部内にガイドカバーに覆われて設けられた内視鏡の処置具起上装置において、ワイヤテンション調整機構には、一方が操作ワイヤの基端に連結され他方が処置具起上片操作機構に連結されて操作ワイヤの軸線方向に相対的にスライド可能に係合する一対のスライド係合部材と、一対のスライド係合部材を相対的にスライドできないように任意の位置関係に固定して一体的にスライドする状態にする固定ビスとが設けられ、ガイドカバーには、固定ビスを螺動させた時に固定ビスが通過する切り欠きが形成されているものである。
【0008】
なお、切り欠きがガイドカバーの縁部まで開口する状態に形成されていてもよく、固定ビスの頭部が切り欠きを通ってガイドカバーの外側に突出していてもよい。また、固定ビスが、操作ワイヤの軸線の延長線に対して平行な方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定ビスを緩めて、一対のスライド係合部材の係合状態を調整してから固定ビスを再び締め込むことで操作ワイヤの張り具合の調整が完了するので、操作ワイヤの張り具合を非常に簡単な作業で容易に調整することができ、固定ビスを螺動させた時に固定ビスが通過する切り欠きがガイドカバーに形成されていることにより、操作ワイヤの張り具合の再調整等もガイドカバー等を取り外さずに極めて簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
基端側に操作部が連結された挿入部の先端部分に処置具起上片が可動に配置されて、処置具起上片に連結された操作ワイヤを進退操作するための処置具起上片操作機構が操作部に配置されると共に、処置具起上片操作機構に連結された操作ワイヤの張り具合を調整するためのワイヤテンション調整機構が、操作部内にガイドカバーに覆われて設けられた内視鏡の処置具起上装置において、ワイヤテンション調整機構には、一方が操作ワイヤの基端に連結され他方が処置具起上片操作機構に連結されて操作ワイヤの軸線方向に相対的にスライド可能に係合する一対のスライド係合部材と、一対のスライド係合部材を相対的にスライドできないように任意の位置関係に固定して一体的にスライドする状態にする固定ビスとが設けられ、ガイドカバーには、固定ビスを螺動させた時に固定ビスが通過する切り欠きがガイドカバーの縁部まで開口する状態に形成されている。
【実施例】
【0011】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図6は内視鏡の全体構成を示しており、可撓性の挿入部1の基端には操作部2が連結され、遠隔操作により屈曲自在に挿入部1の先端部分に形成された湾曲部3の先端には、図示されていない観察窓等が配置された先端部本体4が連結されている。
【0012】
挿入部1内には図示されていない処置具挿通チャンネルが全長にわたって挿通配置されていて、そこに挿脱される処置具100の先端部分100aが先端部本体4の側面に形成された処置具突出口から突出する。
【0013】
また、処置具100の先端部分100aの突出方向を遠隔操作により変えるための処置具起上片5が先端部本体4内に揺動自在に(又はスライド自在に)配置され、処置具起上片5に先端が連結された操作ワイヤ6がガイドコイル7内に通されて、操作ワイヤ6の基端は操作部2内に引き出されている。
【0014】
操作部2には、湾曲部3を屈曲させる遠隔操作を行うための湾曲操作ノブ8や、処置具100の先端部分100aの向きを変えるために処置具起上片5を遠隔操作するための処置具起上片操作レバー9等が配置されている。
【0015】
この実施例の処置具起上片操作レバー9は、湾曲操作ノブ8と同軸の位置で回転操作されるように配置されていて、操作部2内には、処置具起上片操作レバー9の回転操作により進退駆動されるワイヤ駆動アーム91と操作ワイヤ6との間に、操作ワイヤ6の張り具合を調整するためのワイヤテンション調整機構10が介装配置されている。
【0016】
図7に示されるように、ワイヤテンション調整機構10には、操作ワイヤ6の基端が差し込まれて半田付け等により連結固着されたスライド係合軸11と、ワイヤ駆動アーム91の先端に連結ピン13により回動自在に連結されたスライド係合筒12とからなる一対のスライド係合部材が設けられて、スライド係合軸11とスライド係合筒12とが二本の固定ビス14により連結された状態になっている。92は、両端が、処置具起上片操作レバー9により回転駆動される回転円盤90とワイヤ駆動アーム91とに各々回転自在に連結された連結アームである。
【0017】
図1は、そのようなワイヤテンション調整機構10部分の平面図、図2は側面断面図(図1におけるII−II断面図)、図3はIII−III断面図であり、スライド係合筒12に形成された嵌合孔12a内にスライド係合軸11が軸線方向に進退自在に全長の半分程度嵌挿されている。
【0018】
そして、スライド係合筒12にスライド方向に対して垂直の向きに形成されたねじ孔にねじ込まれた固定ビス14により、スライド係合軸11とスライド係合筒12とが固定されて、図3に示されるようにコの字状の断面形状に形成されたガイド部材15にスライド係合筒12がスライド自在に係合している。固定ビス14は、操作ワイヤ6の軸線の延長線に対して平行の方向に間隔をあけて二本配置されている。
【0019】
ガイド部材15の開口面側は、ガイド部材15と向きが相違するコの字状の断面形状に形成されたガイドカバー16の一面によりカバーされて、スライド係合筒12が操作ワイヤ6の軸線の延長線方向にスムーズにスライドするようになっている。ガイド部材15とガイドカバー16は、操作部フレーム21に複数のビスで固定されている。
【0020】
スライド係合軸11の一定の範囲には、側面部分を平面状に切り削いで断面形状を略D字状に形成した部分が形成されていて、その平面部11aに固定ビス14の先端が当接するように組み付けられている。
【0021】
ガイドカバー16には、固定ビス14を螺動させた時に固定ビス14が通過する切り欠き17が、ガイドカバー16の縁部まで開口する状態に、操作ワイヤ6の軸線の延長線方向に細長く真っ直ぐに形成されていて、固定ビス14の頭部が切り欠き17を通ってガイドカバー16の外側に突出している。その結果、操作ワイヤ6が進退操作された時は固定ビス14が切り欠き17に沿って移動する。
【0022】
そのような構成により、スライド係合軸11とスライド係合筒12とは操作ワイヤ6の軸線の延長線方向に相対的にスライド可能に係合していて、固定ビス14を締め込むことにより、スライド係合軸11とスライド係合筒12とが相対的にスライドできないように一体的に固定されてスライドする状態になり、固定ビス14を緩めれば、スライド係合軸11とスライド係合筒12とを操作ワイヤ6の軸線の延長線方向に相対的にスライドさせて、操作ワイヤ6とワイヤ駆動アーム91との間の間隔を変化させることにより操作ワイヤ6の張り具合を調整することができる。
【0023】
したがって、図4に示されるように二本の固定ビス14を緩めてスライド係合筒12の嵌合孔12aに対するスライド係合軸11の差し込み深さを調整してから、図5に示されるように固定ビス14を締め込むことで操作ワイヤ6の張り具合の調整が完了し、操作ワイヤ6の張り具合を極めて簡単かつ容易に調整することができる。
【0024】
そして、操作ワイヤ6の張り具合の再調整が必要になった時は、固定ビス14を一旦緩めてスライド係合筒12の嵌合孔12aに対するスライド係合軸11の差し込み深さを再調整し、固定ビス14を再び締め込むことで操作ワイヤ6の張り具合の再調整を行うことができる。
【0025】
そのような再調整の際に、固定ビス14を緩めた際に、スライド係合軸11が操作ワイヤ6の捩じれ等により軸線周り方向に回転して、平面部11aの向きが変わって固定ビス14に対向しない状態になってしまっても、切り欠き17から工具を差し込んでスライド係合軸11を回転させることで平面部11aを固定ビス14に対向する状態に戻すことができるので、ガイドカバー16等を取り外すことなく操作ワイヤ6の張り具合の再調整を非常に容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例のワイヤテンション調整機構部分の平面図である。
【図2】本発明の実施例のワイヤテンション調整機構部分の側面断面図(図1におけるII−II断面図)である。
【図3】本発明の実施例のワイヤテンション調整機構部分の図1におけるIII−III断面図である。
【図4】本発明の実施例のワイヤテンション調整機構部分において操作ワイヤの張り具合を調整する動作を示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施例のワイヤテンション調整機構部分において操作ワイヤの張り具合を調整する動作を示す側面断面図である。
【図6】本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示す側面図である。
【図7】本発明の実施例のワイヤテンション調整機構部分の平面部分断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 挿入部
2 操作部
5 処置具起上片
6 操作ワイヤ
9 処置具起上片操作レバー(処置具起上片操作機構)
10 ワイヤテンション調整機構
11 スライド係合軸(スライド係合部材)
12 スライド係合筒(スライド係合部材)
14 固定ビス
16 ガイドカバー
17 切り欠き
91 ワイヤ駆動アーム(処置具起上片操作機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側に操作部が連結された挿入部の先端部分に処置具起上片が可動に配置されて、上記処置具起上片に連結された操作ワイヤを進退操作するための処置具起上片操作機構が上記操作部に配置されると共に、上記処置具起上片操作機構に連結された操作ワイヤの張り具合を調整するためのワイヤテンション調整機構が、上記操作部内にガイドカバーに覆われて設けられた内視鏡の処置具起上装置において、
上記ワイヤテンション調整機構には、一方が上記操作ワイヤの基端に連結され他方が上記処置具起上片操作機構に連結されて上記操作ワイヤの軸線方向に相対的にスライド可能に係合する一対のスライド係合部材と、上記一対のスライド係合部材を相対的にスライドできないように任意の位置関係に固定して一体的にスライドする状態にする固定ビスとが設けられ、
上記ガイドカバーには、上記固定ビスを螺動させた時に上記固定ビスが通過する切り欠きが形成されていることを特徴とする内視鏡の処置具起上装置。
【請求項2】
上記切り欠きが上記ガイドカバーの縁部まで開口する状態に形成されている請求項1記載の内視鏡の処置具起上装置。
【請求項3】
上記固定ビスの頭部が上記切り欠きを通って上記ガイドカバーの外側に突出している請求項1又は2記載の内視鏡の処置具起上装置。
【請求項4】
上記固定ビスが、上記操作ワイヤの軸線の延長線に対して平行な方向に間隔をあけて複数設けられている請求項1、2又は3記載の内視鏡の処置具起上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−48797(P2008−48797A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225998(P2006−225998)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】