説明

内視鏡の形状検出装置

【課題】内視鏡挿入部の形状を検出する装置を提供する。
【解決手段】RGB光とは異なる波長を有する特定光を発生させる光源と、走査用光ファイバを伝搬して該走査用光ファイバから出射される特定光を、観察対象物上を走査させることなく複数の受光用光ファイバに入射させる光学手段と、複数の受光用光ファイバの先端側から基端側にかけて、異なる受光用光ファイバの異なる位置に光損失部を複数箇所設けた光損失部群と、特定光を受光する受光部と、複数の受光用光ファイバが屈曲すると、受光部により検出される光損失部における光損失量に基づいて複数の受光用光ファイバの曲率を求める曲率演算手段と、曲率演算手段によって演算された複数の異なる位置における曲率の接線を順次結ぶことによって内視鏡挿入部の形状を算出する形状演算手段とを有することを特徴とする内視鏡挿入部の形状検出装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の形状検出装置に関連し、詳しくは、極細径の光ファイバの先端を共振させて出射した光により対象物を走査し画像情報を取得する走査型内視鏡において、対象物からの反射光を伝搬する受光用光ファイバの曲率を検出して内視鏡挿入部の形状を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医師が患者の体腔内を観察するときに使用する装置として一般的に電子内視鏡が知られている。従来の一般的な電子内視鏡の撮像素子には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などが用いられているが、これらの代替となるものとして特許文献1に開示される次世代の撮像システムが提案されている。この撮像システムでは、走査用光ファイバとレーザを用いて観察対象物を走査し、観察対象物のドット毎の色情報を得て画像化する。
【0003】
特許文献1には、このような撮像システムを用いた従来の走査型内視鏡における、内視鏡挿入部の先端部が示されている。円筒型の圧電素子に走査用光ファイバが挿入されて通されている。圧電素子には電極が設けられ、この電極によって圧電素子が駆動される。圧電素子は、固定材によって内視鏡挿入部のシース内に固定されているとともに、接着剤によって走査用光ファイバと接合されている。
【0004】
圧電素子は走査用光ファイバの先端を共振させ、これによって、走査用光ファイバの先端が螺旋状に走査され、かかる螺旋状の走査が所定の周期で繰り返される。このような周期で走査用光ファイバから出射された光は、光学レンズによって観察対象物に集光され、観察対象物上を上記の走査パターンで走査し、観察対象物からの反射光は、走査用光ファイバを中心として円環状に配置された複数の受光用光ファイバを伝搬してビデオプロセッサ内の受光部に到達する。なお、走査用光ファイバの先端の螺旋状の走査が所定周期で繰り返し実行され、これにより、フルカラー画像がモニタに表示される技術原理は、下記の特許文献1のみならず、特許文献2や非特許文献1などの技術文献などに記載されており、公の技術となっている。
【0005】
受光部に到達した光は光電変換され、光電変換された信号に画像処理が行われた後、モニタに出力される。術者は、このようにして得られた体腔内の映像をモニタ上で観察して検査や施術などを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,563,105号明細書
【特許文献2】米国特許第6,856,712号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SPIE会報、オプティカルエンジニアリング、2006年2月、第6083巻、シーベルその他「フルカラー走査型ファイバ内視鏡」 Seibel et al. “A full-color scanning fiber endoscope” Proceeding of SPIE, Vol. 6083, Optical Engineering, February, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の一般的な内視鏡では、患者の体腔内に内視鏡を挿入した後に内視鏡挿入部の形状を把握することができない。このため、術者は挿入した内視鏡の形状を勘に頼って推測せざるをえない。そのため、例えば大腸検査などを行う場合は、内視鏡の操作に熟練を要することがある。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、内視鏡において、既存の構成を大きく変更することなく内視鏡挿入部の形状検出を可能にする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明の一実施形態に係る内視鏡挿入部の形状検出装置は、圧電素子によって走査用光ファイバの先端が共振されて走査され、走査が所定の周期で繰り返され、所定の周期で走査用光ファイバから出射されるRGB光が、光学素子を介して観察対象物上を走査され、観察対象物から反射した反射光は、走査用光ファイバを中心として円環状に配置された複数の受光用光ファイバを伝搬して、ビデオプロセッサ内の第1の受光部に到達し、第1の受光部で光電変換された電気信号を画像処理し、モニタに出力するファイバ走査型内視鏡において、RGB光とは異なる波長を有する特定光を発生させる光源と、走査用光ファイバを伝搬して走査用光ファイバから出射される特定光を、観察対象物上を走査させることなく複数の受光用光ファイバに入射させる光学手段と、複数の受光用光ファイバのうち1つの受光用光ファイバの外周面と、1つの受光用光ファイバと所定の配置関係にある別の受光用光ファイバの外周面とに、特定光の光量を減少させる光損失部を少なくとも1つずつ走査用光ファイバの長手方向において互いに同位置に設けることによる一対の光損失部群を、複数の受光用光ファイバの先端側から基端側にかけて、異なる受光用光ファイバの異なる位置に設けた複数対の光損失部群と、複数の受光用光ファイバの基端側に設けられる、特定光を受光する第2の受光部と、複数の受光用光ファイバが屈曲すると、第2の受光部により検出される光損失部での光損失量に基づいて、一対の光損失部が設けられている複数の異なる位置における複数の受光用光ファイバの曲率を求める曲率演算手段と、曲率演算手段によって演算された複数の異なる位置における曲率の接線を順次結ぶことによって、屈曲時の内視鏡挿入部の形状を算出する形状演算手段とを有する。このような内視鏡挿入部の形状検出装置によれば、RGB光と形状検出用の特定光を同じ受光用光ファイバで伝搬することができるため、内視鏡挿入部の径を太くしたり装置を大型化したりすることなく、内視鏡挿入部の形状を把握するための構成を内視鏡に容易に組み込むことができる。
【0011】
好ましくは、光学手段は、光学素子の1つを形成し、頂点が走査用光ファイバの出射端面と対向して内視鏡挿入部の光軸上に位置する円錐形状の光学素子と、円環状の受光用光ファイバの前面に取り付けられる光透過部材に設けられた第1の面とからなり、円錐形状の光学素子の円錐面と第1の面には、RGB光を透過し特定光を反射する反射コートが施されている。さらに、第1の面は、光透過部材の内部に設けられた平面と、該平面と直交する光透過部材の外周に設けられた平面とからなる。
【0012】
さらに好ましくは、上記所定の配置関係は、内視鏡挿入部の光軸を中心として90度離れた位置関係である。また、特定光は赤外光である。そして、光損失部は、受光用光ファイバの外周面を研磨やエッチング、切り込みなどの加工方法で形成された欠損部であるか、あるいは、受光用光ファイバのクラッドの一部に光吸収物質や光透過物質を用いることで形成された欠損部である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内視鏡挿入部の形状検出装置によれば、患者の体腔内にある内視鏡挿入部の形状を把握することができるため、より正確な施術を行うとともに検査時間を短縮することができる。また、本発明の内視鏡挿入部の形状検出装置を用いれば、内視鏡検査医の研修を行う際に内視鏡挿入部の形状を把握しながら実施できるため、短時間でより一層効果的な研修を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明の実施形態における内視鏡挿入部の形状検出装置が設けられる内視鏡挿入部の先端部を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における内視鏡挿入部の形状検出装置のビデオプロセッサの構成を示すブロック図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明の実施形態における内視鏡挿入部の形状検出装置が設けられる内視鏡挿入部の概略断面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、本発明の実施形態における内視鏡挿入部の形状検出装置の一部を構成する受光用光ファイバ及びその光損失部を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態における内視鏡挿入部の形状検出装置の受光部の概略図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態において内視鏡挿入部の形状を検出する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態における内視鏡挿入部の形状検出装置について説明する。なお、複数の図にまたがって同じ部材を示す場合は同じ番号を付すこととする。また、以下の説明において、各部材の先端とはそれぞれ内視鏡挿入部の先端側の端部を意味し、各部材の基端とはそれぞれ内視鏡挿入部の基端側の端部を意味するものとする。
【0016】
図1(a)は、本実施形態の内視鏡挿入部の形状検出装置における内視鏡挿入部100の先端部を示す概略図である。また、図1(b)は、内視鏡挿入部100の先端部の対物光学系を示す拡大図である。図1(a)に示すように、内視鏡挿入部100の長手方向にZ軸を定め、内視鏡挿入部の先端側に向かう方向をZ軸の正の方向とする。そして、Z軸に垂直な平面をXY直交座標系の平面(XY平面)とする。紙面に垂直で奥に進む方向をX軸の正の方向、紙面上方向をY軸の正の方向とする。また、図2はその内視鏡挿入部の形状検出装置におけるビデオプロセッサ200の構成要素を示すブロック図である。光源部21には、赤(R),緑(G),青(B)及び赤外(IR)の各波長に対応する光を発振するレーザ光源(図示せず)が個別に設けられ、R,G,Bの各波長に対応する光は、ダイクロイックミラーなどで構成された光結合器(図示せず)によって結合されRGB光として、IR光はそのまま走査用光ファイバ12の光源側端面に入射する。なお、光源部21としては、可視から赤外にわたる広帯域なスーパーコンティニューム光を発振する単一の光源とすることもでき、また、レーザ光源に限らず、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いるなど、種々の光源とすることができる。
【0017】
走査用光ファイバ12は、ビデオプロセッサ200内の光源部21から発生されるRGB光及びIR光を導光し、対物レンズ群15に向けて出射する。走査用光ファイバ12の先端側の中途部は、圧電素子10及び電極11などから構成された円筒型あるいは箱型の圧電素子ユニットに挿し通されており、その中途部は、接着剤20によって圧電素子ユニットの先端と接着固定されている。圧電素子ユニットは固定材13によってシース14内に固定されている。電極11には電線11a〜11dが接続されており、各電線は、内視鏡挿入部100の基端に設けられたコネクタ27aまで延びている。内視鏡側のコネクタ27aとビデオプロセッサ側のコネクタ27bを接続したときに、各電線は、ビデオプロセッサ200の駆動部22内のX軸ドライバ(図示せず)又はY軸ドライバ(図示せず)に接続される。
【0018】
圧電素子10は走査用光ファイバ12の先端部を共振させる一対のアクチュエータからなる。アクチュエータは圧電アクチュエータである。X軸ドライバは、CPU26から送信される駆動制御信号に基づいて一方のアクチュエータに第1の交流電圧を印加する。また、Y軸ドライバは、CPU26から送信される駆動制御信号に基づいて他方のアクチュエータに第1の交流電圧と同一の周波数で位相が直交する第2の交流電圧を印加する。
【0019】
2つのアクチュエータは印加される第1及び第2の交流電圧に応じて振動し、走査用光ファイバ12の先端部のX軸方向及びY軸方向への共振運動を生じさせる。その結果、走査用光ファイバ12の出射端は、アクチュエータが発生させるX軸方向及びY軸方向への運動エネルギーの合成により、XY平面に近似する面(以後、「XY近似面」とする)上において内視鏡挿入部100の中心軸AXを中心とする所定半径の円の軌跡を描く。
【0020】
そして、走査用光ファイバ12の出射端が所定半径の円の軌跡を描いている状態で、アクチュエータへの交流電圧の印加が停止され、走査用光ファイバ12の先端部の共振が減衰する。この減衰により、出射端はXY近似面上において渦巻パターンの軌跡を描きながら中心軸AXに向かい、最終的に中心軸AX上で停止する。なお、アクチュエータへの交流電圧の印加が停止されてから出射端が中心軸AX上で停止するまでの期間を渦巻パターン期間と呼ぶ。出射端が中心軸AX上で停止した後、再びそれぞれのアクチュエータに交流電圧が印加され、出射端は上記所定半径の円の軌跡を描く状態になる。こうして走査用光ファイバ12の先端部は上記動作を繰り返す。
【0021】
RGB光は、走査用光ファイバ12から出射されて一旦発散するものの、対物レンズ群15により集光されて観察対象物上にスポットを形成する。なお、走査用光ファイバ12の出射端にはコリメートレンズ(図示せず)が取り付けられてもよい。この場合、RGB光は、出射端から平行光として出射されて対物レンズ群15を介して観察対象物上にスポットを形成する。スポットは、一枚の画像を得るために観察対象物上に渦巻パターンを描くように形成される。渦巻パターンの間隔は、走査用光ファイバ12の出射端の運動速度や各光源の変調周波数などに依存して決まる。
【0022】
走査用光ファイバ12の出射端が停止した状態から所定半径を有する円の軌跡を描く状態に達するまでにかかる時間、渦巻パターン期間の時間、渦巻パターンのXY近似面における走査用光ファイバ12の出射端の位置(又は観察対象物上におけるスポット形成位置)は、いずれも既知である。そのため、CPU26は、これらの既知の情報に基づいて、X軸ドライバ及びY軸ドライバに対するタイミング制御、つまり、各アクチュエータに対する交流電圧の印加と停止のタイミング制御と、渦巻パターン期間中における各レーザ光源の変調制御を、フレームレートに応じた周期で繰り返す。
【0023】
観察対象物で反射したRGB光は、光透過部材からなるレンズ保持部材16を透過して、走査用光ファイバ12を中心として円環状に配置された複数の受光用光ファイバ18に入射し、受光用光ファイバ18を伝搬してビデオプロセッサ200内の受光部23に到達する。なお、渦巻パターンにおけるスポットの位置は、位置検知フォトダイオードなどのセンサ(図示せず)を利用して確定することができ、スポットの位置と受光部で受光したRGB光を関連付けることで、スポットにおける画像を得ることができる。受光部23における反射光の処理については後述する。図3(a)及び(b)に示すように、複数の受光用光ファイバ18は、外被チューブ19によってシース14と挟まれるように被覆されている。
【0024】
対物レンズ群15は、本実施形態では、4枚の光学素子(光学レンズを含む)から構成され、先端側から2枚目の光学素子15aは、円錐形状であり、円錐形状の頂点は、走査用光ファイバ12の出射端面と対向してAX軸上に位置している。対物レンズ群15の一部を構成する光学素子15aと最先端の光学レンズ15bとは、RGB光やIR光を透過する光透過部材で形成された中空円筒形のレンズ保持部材16内にその光軸をAX軸に一致させて保持固定されており、レンズ保持部材16の一端面は、円周状に配置された受光用光ファイバ18の先端面を含んだ内視鏡挿入部100の最先端面に接着されている。また、残り2枚の光学レンズは、内視鏡挿入部100の最先端のシース14内に、その光軸をAX軸に一致させて保持固定されている。
【0025】
さらに、光学素子15aの円錐面17a、円錐面17aに続くXY平面と平行な面でレンズ保持部材16内に設けられた平行面17b、並びに平行面17bに連続しかつ平行面17bに直交するレンズ保持部材16の外周面17cには、RGB光を透過してIR光を反射するIR反射コート17が施されている。そして、IR反射コート17が施されたこれらの各面17a,17b,17cは、走査用光ファイバ12から出射されるIR光がいずれの角度から入射しても、IR光が受光用光ファイバ18の先端面に向けて反射するように設計されている。したがって、走査用光ファイバ12から出射されたIR光は、これらの反射面17a,17b,17cで反射して、受光用光ファイバ18の先端面に入射する。尚、本実施形態では、光学素子15aは、円錐形状の光学素子としているが、楕円体のY軸と平行な面で切断した立体形状でも良く、面17a(図1(a),(b)では放物線などの形状で描かれることになる。)をこのように形成してIR光を受光用光ファイバ18に導光するようにしてもよい。また、本実施形態では、上記各面17a,17b,17cにIR反射コート17を施した構成としているが、レンズ保持部材16に設けられる面17b,17cは、別個の又は一続きの曲面でもよい。また、IR反射コートの代わりに、RGB光を透過してIR光を反射するバンドパスフィルタやホットミラーをはじめとする種々の光学フィルタや光学ミラーを用いることもできる。
【0026】
次に、図2において、光源部21や駆動部22、DSP(Digital Signal Processor)24などの動作は、CPU26によって制御される。駆動部22は、内視鏡挿入部100の先端部に設けられている圧電素子10の電極11に印加する電圧を変化させて、圧電素子10の駆動を制御する。圧電素子10の駆動を制御することによって、走査用光ファイバ12の先端部の共振を制御することができる。走査用光ファイバ12から出射されて観察対象物にて反射したRGB光と、走査用光ファイバ12から出射されてIR光反射面17a,17b,17cで反射されたIR光は、共に受光用光ファイバ18の先端面に導かれ、受光用光ファイバ18を伝搬したRGB光及びIR光は、受光部23に入射する。受光部23は、検出したRGB各色の光及びIR光を個々に分離し(詳細については後述する。)分離された各光は、光電変換によって入射光量に応じたアナログ信号に変換し、DSP24に入力する。DSP24は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、このデジタル信号に基づいて画像情報を生成する。生成された画像情報は図示しないエンコーダなどを介してNTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)などの所定の規格に準拠する映像信号に変換されてモニタ25に出力される。これにより、観察対象物の映像や内視鏡挿入部100の形状画像がモニタ25に表示される。
【0027】
図3(a)は、内視鏡挿入部100の断面の概略を示す図である。簡略化のため、内視鏡挿入部100のシース14内部の構成を省略している。1つの受光用光ファイバ18X1には、その外周面上で、内視鏡挿入部100の中心軸AXと受光用光ファイバ18X1の中心とを結ぶ線上に光損失部41を設けるとともに、図4(a)に示すように、受光用光ファイバ18X1の軸方向には、光損失部41と同じ光学特性を有する光損失部42,43が順次等間隔で並んで設けられている。また、受光用光ファイバ18X1に対して、中心軸AXを中心として90度離れた位置にある他の受光用光ファイバ18Y1にも、受光用光ファイバ18X1に設けられた光損失部41,42,43と同じ位置に、同様な光損失部44,45,46が設けられており、図3(a)から分かるように、光損失部41,42,43と光損失部44,45,46は、中心軸AXに対して直交するY軸方向及びX軸方向にそれぞれ配置された形となる。なお、これらの光損失部は、たとえば、ファイバに研磨やエッチング、切り込みなど種々の加工方法によって欠損部を作成したり、クラッドの一部に光吸収物質や光透過物質を用いたりすることで形成されるものであり、受光用光ファイバ18によって導光されるIR光は、その一部が欠損部から漏洩したり、光吸収物質に吸収されたり、光透過物質を透過したりして、受光部23に到達する。
【0028】
図4(a)は、図3(a)における受光用光ファイバ18X1,18Y1,18X2,18Y2の光損失部を示す側面図である。図4(b)は、図4(a)のA−A,B−B,A’−A’,B’−B’各線に沿ってそれぞれ切断した断面を示す図である。ここで、1つの受光用光ファイバ18において、1個又は複数個(本実施形態においては、等間隔で3個)設けた光損失部を1つの群とみなし、これと中心軸AXを中心として90度離れた位置にある受光用光ファイバに設けられた同様な光損失部群を一対とする。そして、この位置におけるX軸方向及びY軸方向における受光用光ファイバの曲率を検出し、検出されたX軸方向及びY軸方向の曲率を合成することによって、一対の光損失部群が設けられた位置での受光用光ファイバの曲率が求められる。この一対の光損失部群は、受光用光ファイバの曲率を検出したい位置に設ける必要があるため、受光用光ファイバ18X1に隣接する受光用光ファイバ18x2と受光用光ファイバ18Y1に隣接する受光用光ファイバ18Y2にも、受光用光ファイバ18X1及び受光用光ファイバ18Y1と同様に、光損失部141〜146が設けられる。光損失部141〜146の位置は、図4(a)から明らかなように光損失部41〜46の位置と異なっている。そして、本実施形態においては、先端側から基端側に向けて、同様な一対の光損失部群が順次設けられていくことにより、長手方向においてそれぞれ異なる位置におけるX軸方向及びY軸方向の曲率を合成した受光用光ファイバの曲率を検出することができる。なお、光損失部は1つの受光用光ファイバ上に1個あれば曲率を検出することができるが、複数個の光損失部を設けることで曲率の検出精度を高めることができる。
【0029】
図4(a)に示す受光用光ファイバにおいては、光損失部41,44が設けられている側を先端側、光損失部43,46が設けられている側を基端側とする。また、便宜上、受光用光ファイバ18X1及び受光用光ファイバ18Y1の光損失部41〜46が設けられている位置をzn、光損失部141〜146が設けられている位置をzn−1とする。zn及びzn−1は、図6(a),(b)に示すzn及びzn−1に対応するものである。従って、図6(a)のz1からz3に示す位置にも、図示はしないが、同様な一対の光損失部群が設けられている。
【0030】
なお、光損失部41〜46は、ビデオプロセッサ200の受光部23側の端面から受光用光ファイバ18X1の光損失部41〜43までの各距離と、ビデオプロセッサ200の受光部23側の端面から受光用光ファイバ18Y1の光損失部44〜46までの各距離とがそれぞれ等しくなるように設ける。その他の一対の光損失部群における光損失部の関係も、同様である。
【0031】
ここで、受光用光ファイバ18X1における曲率の演算について説明する。光損失部群における光量の損失量と曲率とは比例関係にあり、所定の関数C=f(l)(Cは曲率;lは光量の損失量)を満たす。よって、受光用光ファイバ18X1における光量の損失量を検出することができれば、関数C=f(l)より光損失部41〜43からなる光損失部群におけるX軸方向における曲率が求められる。同様に、関数C=f(l)より光損失部44〜46からなる光損失部群におけるY軸方向における曲率が求められ、X軸方向における曲率とY軸方向における曲率を合成することにより、znの位置における受光用光ファイバの曲率を求めることができる。他の受光用光ファイバについても同様にして光損失部群における曲率が求められる。なお、同じ受光用光ファイバの別の位置には光損失部群を設けない。たとえば、受光用光ファイバ18X1には位置znに光損失部41〜43からなる光損失部群が設けられているため、受光用光ファイバ18X1の他の位置には光損失部群を設けない。1つの受光用光ファイバ上の複数の位置に光損失部群を設けると、受光部側では受光用光ファイバのどの位置でどの程度の光量の損失が発生しているかを把握することができなくなるからである。
【0032】
別の位置における内視鏡挿入部100の曲率を検出するには、図4(a)に示すように、たとえば、受光用光ファイバ18X1,18Y1とは別の1組の受光用光ファイバ18X2,18Y2において、所望の位置(ここでは位置zn−1)に光損失部141〜146からなる光損失部群を設ける。なお、図3(a)に示すように、受光用光ファイバ18X2と受光用光ファイバ18Y2の位置関係は、受光用光ファイバ18X1,18Y1の場合と同様に、内視鏡挿入部100の長手方向に垂直な平面において、内視鏡挿入部100の中心軸AXから見て、受光用光ファイバ18X2を設ける方向と受光用光ファイバ18Y2を設ける方向とが互いに90度直交するような関係にする。
【0033】
IR光は、後述する受光部23内の曲率検出用受光部53にて検出されて光量が測定される。なお、受光用光ファイバの曲率が0であるときのIR光の光量は既知であるため、この既知の光量と測定値とを比較することによって光量の損失量が求められる。そして、光量の損失量に基づいて受光用光ファイバ18の光損失部群が設けられている位置の曲率を演算することができる。内視鏡を曲げたときの受光用光ファイバ18の曲げによる光の放射損失量と光損失部での光損失量とでは、光損失部での光損失量の方が損失量のオーダーが大きいため、ファイバの曲率を求める際はファイバの曲げによる光の放射損失量は無視することができる。なお、光損失部には、バンドパスフィルタやコールドミラーをはじめとする種々の光学フィルタや光学ミラーを用いることもできる。
【0034】
このように、組になった受光用光ファイバの光損失部を用いて内視鏡挿入部100のさまざまな位置におけるX軸方向及びY軸方向の受光用光ファイバの曲率とその合成の曲率を検出すると、検出結果に基づいて内視鏡挿入部100の形状を把握することができる。図6(a)に内視鏡挿入部100の形状検出の概略図を示す。z1,z2,z3・・・zn−1,zn(nは自然数)は、それぞれ受光用光ファイバに光損失部群が設けられている位置を示し、内視鏡の基端側から先端側に向けて順にz1〜znが設けられている。また、位置znにおけるX方向及びY方向の曲率を合成した曲率をCXYnとする。図6(b)は、受光用光ファイバの曲率に基づく内視鏡挿入部の形状検出を模式的に示す図である。便宜上、図6(b)ではY方向の曲率のみに基づく形状検出を示すが、X方向とY方向それぞれの曲率を合成した曲率に基づく形状検出も図6(b)に示すものと概念上は変わらない。
【0035】
受光用光ファイバの基端から位置zk(kは自然数;1≦k≦n)までの距離dkは既知であり、位置zkにおける曲率Ckと距離dkとから位置zkにおける受光用光ファイバの曲げを規定する曲線が得られる。そして、この曲線の接線方向を受光用光ファイバの延伸方向とし、この延伸方向と平行な方向を内視鏡挿入部の延伸方向とみなして内視鏡挿入部の形状を検出する。このように各光損失部群における内視鏡挿入部の形状を検出して位置z1から順に位置znまで繋げることで内視鏡挿入部全体の形状を検出することができる。なお、受光用光ファイバの曲率検出や内視鏡挿入部の形状検出に必要なデータはCPU26が保持し、CPU26が上記の演算を行う。
【0036】
なお、図3(a)では、中心軸AXに対して直交する方向にある受光用光ファイバを組として光損失部群を設けているが、図3(b)に示すように、隣り合う受光用光ファイバ、例えば18X1’と18Y1’、を組として一方の受光用光ファイバ18Y1’にY軸方向を向く光損失部を、また他方の受光用光ファイバ18X1’にX軸方向を向く光損失部を設け、他の隣り合う受光用光ファイバの組18X2’と18Y2’、18X3’と18Y3’・・・においても同様に光損失部を設けても、上記説明と同様に受光用光ファイバの長手方向における各位置の曲率を求めることができる。さらに、ここでは2本1組の受光用光ファイバで内視鏡挿入部100の形状を検出しているが、3本以上の受光用光ファイバを1組として内視鏡挿入部100の形状を検出するように構成してもよい。また、受光用光ファイバを組にせず、各受光用光ファイバの任意の位置に上記のように光損失部を設け、各光損失部における光損失量、各光損失部の位置、中心軸AXから見た各光損失部の方向などから、受光用光ファイバの曲率を合成して内視鏡挿入部100の形状を検出するようにしてもよい。
【0037】
ここで、図5の概略図を参照しながら受光部23の詳細について説明する。受光用光ファイバ18の受光部側の端面51から受光部23に出射されたIR光は、RGB光を透過してIR光を反射する光学特性を有する光学素子52(例えば、ダイクロイックミラーやダイクロイックプリズムなど)によって反射され、曲率検出用受光部53へと導かれる。曲率検出用受光部53には、各受光用光ファイバに対応する受光素子がアレイ状に設けられており、受光素子は、対応する受光用光ファイバから出射されるIR光の光量情報に応じた電気信号を曲率信号として生成してDSP24に送る。DSP24は、受信した曲率信号に対して所定の処理を実行して内視鏡挿入部の形状に関する画像情報を生成する。この画像情報は、図示しないエンコーダなどを介してNTSCやPALなどの所定の規格に準拠した映像信号に変換されてモニタ25に出力される。これによって、検出された内視鏡挿入部の形状の映像がモニタ25に表示される。
【0038】
光学素子52の後段には、RGB光のB成分の光を反射するダイクロイックミラー55と、G成分の光を反射するダイクロイックミラー57が設けられている。観察対象物によって反射されたRGB光は、受光用光ファイバを伝搬して受光用光ファイバの受光部側の端面51から出射される。出射されたRGB光は、そのB成分の光がダイクロイックミラー55によって反射されてB成分検出用の光電子増倍管54に導かれる。同様に、G成分の光はダイクロイックミラー57によって反射されてG成分検出用の光電子増倍管56に導かれる。なお、R成分の光はダイクロイックミラー55,57によって反射されることなくR成分検出用の光電子増倍管58に進行する。
【0039】
各光電子増倍管で検出されたRGB各成分の光量情報は、DSP24に送られ、所定の処理が実行されて画像情報に変換される。画像情報は、図示しないエンコーダなどを介してNTSCやPALなどの所定の規格に準拠した映像信号に変換されてモニタ25に出力される。これによって、観察対象物の映像がモニタ25に表示される。
【0040】
ところで、図5ではB成分とG成分の光をダイクロイックミラー55,57によってそれぞれ反射しているが、RGB各成分の光を、対応する光電子増倍管に導くことができれば、ダイクロイックミラー55,57で反射させる光の成分は任意に決めることができる。また、光学素子52とダイクロイックミラー55,57の配置も任意に構成することができる。さらに、光電子増倍管の代わりにフォトダイオードやアバランシェフォトダイオードなどの受光素子を用いてRGB光の各成分を検出してもよい。また、各成分に専用の受光素子を用いずに、面順次の撮像方式を採用して単一の受光素子を用いてRGB成分を検出する構成にしてもよい。
【0041】
上記のような内視鏡挿入部の形状検出装置では、観察対象物の映像の生成に用いるRGB光を伝搬する受光用光ファイバによって、内視鏡挿入部の形状検出に用いる光も伝搬しており、従来の構成において新たに光ファイバを配設する必要がないため、内視鏡挿入部の径を太くすることなく内視鏡挿入部の形状を検出することができる。また、内視鏡挿入部の形状検出に用いる光は、観察対象物の画像生成に用いる光とは波長が異なるため、観察対象物の画像劣化などを引き起こすこともない。
【0042】
なお、上記実施形態の説明では、内視鏡挿入部の形状検出に用いる光をIR光としたが、観察対象物の画像生成に用いる光と波長が異なる光であればIR光に限らず種々の波長の光を用い、その光のみを損失又は減衰させる光損失部やその光のみを反射する光学素子によって本発明の内視鏡挿入部の形状検出装置を構成することもできる。また、走査用光ファイバの走査パターンは螺旋状であるとして説明したが、ラスタスキャン、ジグザグスキャン、リサージュスキャンなどの任意の走査経路を用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 圧電素子
11 電極
12 走査用光ファイバ
17 IR反射コート
18 受光用光ファイバ
21 光源部
25 モニタ
41〜46,141〜146 光損失部
52 光学素子
100 内視鏡挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子によって走査用光ファイバの先端が共振されて走査され、該走査が所定の周期で繰り返され、該所定の周期で該走査用光ファイバから出射されるRGB光が、光学素子を介して観察対象物上を走査され、該観察対象物から反射した反射光は、該走査用光ファイバを中心として円環状に配置された複数の受光用光ファイバを伝搬して、ビデオプロセッサ内の第1の受光部に到達し、該第1の受光部で光電変換された電気信号を画像処理し、モニタに出力するファイバ走査型内視鏡において、
前記RGB光とは異なる波長を有する特定光を発生させる光源と、
前記走査用光ファイバを伝搬して該走査用光ファイバから出射される前記特定光を、観察対象物上を走査させることなく前記複数の受光用光ファイバに入射させる光学手段と、
前記複数の受光用光ファイバのうち1つの受光用光ファイバの外周面と、該1つの受光用光ファイバと所定の配置関係にある別の受光用光ファイバの外周面とに、前記特定光の光量を減少させる光損失部を少なくとも1つずつ前記走査用光ファイバの長手方向において互いに同位置に設けることによる一対の光損失部群を、前記複数の受光用光ファイバの先端側から基端側にかけて、異なる受光用光ファイバの異なる位置に設けた複数対の光損失部群と、
前記複数の受光用光ファイバの基端側に設けられる、前記特定光を受光する第2の受光部と、
前記複数の受光用光ファイバが屈曲すると、前記第2の受光部により検出される前記光損失部での光損失量に基づいて、一対の光損失部が設けられている複数の異なる位置における前記複数の受光用光ファイバの曲率を求める曲率演算手段と、
前記曲率演算手段によって演算された複数の異なる位置における曲率の接線を順次結ぶことによって、屈曲時の内視鏡挿入部の形状を算出する形状演算手段と、を有する、
ことを特徴とする内視鏡挿入部の形状検出装置。
【請求項2】
前記光学手段は、
前記光学素子の1つを形成し、頂点が前記走査用光ファイバの出射端面と対向して前記内視鏡挿入部の光軸上に位置する円錐形状の光学素子と、
前記円環状の受光用光ファイバの前面に取り付けられる光透過部材に設けられた第1の面と、からなり、
前記円錐形状の光学素子の円錐面と前記第1の面には、前記RGB光を透過し前記特定光を反射する反射コートが施されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡挿入部の形状検出装置。
【請求項3】
前記第1の面は、前記光透過部材の内部に設けられた平面と、該平面と直交する前記光透過部材の外周に設けられた平面とからなることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡挿入部の形状検出装置。
【請求項4】
前記所定の配置関係は、内視鏡挿入部の光軸を中心として90度離れた位置関係であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の内視鏡挿入部の形状検出装置。
【請求項5】
前記特定光は赤外光であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内視鏡挿入部の形状検出装置。
【請求項6】
前記光損失部は、受光用光ファイバの外周面を研磨やエッチング、切り込みなどの加工方法で形成された欠損部であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の内視鏡挿入部の形状検出装置。
【請求項7】
前記光損失部は、受光用光ファイバのクラッドの一部に光吸収物質や光透過物質を用いることで形成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の内視鏡挿入部の形状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−217835(P2011−217835A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87828(P2010−87828)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】