説明

内視鏡の送気送水操作弁

【課題】傘状シール部材のパーティングラインの仕上げ加工を精密に行わなくてもシール漏れが発生せず、傘状シール部材を低コストで組み込むことができる内視鏡の送気送水操作弁を提供すること。
【解決手段】傘状シール部材28が金型成形により形成されていて、その金型成形時に傘状シール部材28に形成されるパーティングライン28Pが、傘状シール部材28の最大外径部28Dより内側位置に形成されている。傘状シール部材28は逆止弁であってもよいが、Oリング等の代わりに用いられるシール部材であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の送気送水操作弁に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の送気送水操作弁は一般に、複数の配管が接続されたシリンダ体に軸線方向に進退自在にピストン体が嵌挿されていて、そのピストン体を軸線方向に移動させる操作を行うことにより、複数の配管の間の連通接続状態が変わるように構成されている。
【0003】
そして、送気管路において先端側からの空気の逆流が発生しないように、弾力性のある部材により傘状に形成された傘状逆止弁がピストン体の外周部に取り付けられて、その傘状逆止弁の最大外径部が全周にわたってシリンダ体の内周面に密接するように構成されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−261512
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、そのような従来の傘状逆止弁90を示しており、合成ゴム又はシリコンゴム等の材料により金型成形で形成された傘状逆止弁90には、パーティングライン91が最大外径部に全周にわたって形成されている。パーティングライン91は金型の分割位置(いわゆる型割り面)にできるものなので、金型分割のし易さ等の製造上の理由から最大外径部に形成されるのが普通のことである。
【0005】
しかし、図8に示されるように、傘状逆止弁90は最大外径部がシリンダ体92の内周面に全周にわたって密接することによりその部分をシールする機能を発揮するものなので、その位置にあるパーティングライン91は、ひだ状の突起等が全く残らないように精密に手で仕上げ加工を行う必要がある。
【0006】
そのため、従来はパーティングライン91の仕上げ作業に大きな工数がかかってコスト高の原因になると同時に、仕上げ加工に少しでも完全でない部分があるとその部分のシール性が不完全になってしまう場合があった。そのような事情は、逆止弁に限らず傘状シール部材全般について同じである。
【0007】
本発明は、傘状シール部材のパーティングラインの仕上げ加工を精密に行わなくてもシール漏れが発生せず、傘状シール部材を低コストで組み込むことができる内視鏡の送気送水操作弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の送気送水操作弁は、複数の配管が接続されたシリンダ体に軸線方向に進退自在にピストン体が嵌挿されて、ピストン体を軸線方向に移動させる操作を行うことにより、複数の配管の間の連通接続状態が変わるように構成された内視鏡の送気送水操作弁であって、弾力性のある部材により傘状に形成された傘状シール部材がピストン体の外周部に設けられて、傘状シール部材の最大外径部が全周にわたってシリンダ体の内周面に密接してその部分をシールするように構成された内視鏡の送気送水操作弁において、傘状シール部材が金型成形により形成されていて、その金型成形時に傘状シール部材に形成されるパーティングラインが、傘状シール部材の最大外径部より内側位置に形成されているものである。
【0009】
なお、傘状シール部材の最大外径部がアール面取り状のアール面に形成されているとよく、傘状シール部材が逆止弁あるいはその他のシール部材であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、傘状シール部材が金型成形により形成されていて、その金型成形時に傘状シール部材に形成されるパーティングラインが、傘状シール部材の最大外径部より内側位置に形成されていることにより、傘状シール部材のパーティングラインの仕上げ加工を精密に行わなくてもシール漏れが発生せず、傘状シール部材を低コストで組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
複数の配管が接続されたシリンダ体に軸線方向に進退自在にピストン体が嵌挿されて、ピストン体を軸線方向に移動させる操作を行うことにより、複数の配管の間の連通接続状態が変わるように構成された内視鏡の送気送水操作弁であって、弾力性のある部材により傘状に形成された傘状シール部材がピストン体の外周部に設けられて、傘状シール部材の最大外径部が全周にわたってシリンダ体の内周面に密接してその部分をシールするように構成された内視鏡の送気送水操作弁において、傘状シール部材が金型成形により形成されていて、その金型成形時に傘状シール部材に形成されるパーティングラインが、傘状シール部材の最大外径部より内側位置に形成されている。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は内視鏡に内蔵された配管の構成を示しており、1は可撓性の挿入部、2は、図示されていない観察窓等が配置されて挿入部1の先端に連結された先端部本体、3は、挿入部1の基端に連結された操作部である。
【0013】
先端部本体2の先端面には、送気ノズル4と送水ノズル5が各々観察窓の表面に向けて配置されると共に、吸引口兼処置具突出口6が前方に向けて開口配置されている。なお、送気ノズル4と送水ノズル5が一つにまとめられていても差し支えない。
【0014】
挿入部1内には、送気ノズル4に連通する送気管7と、送水ノズル5に連通する送水管8と、吸引口兼処置具突出口6に連通する処置具挿通チャンネル9とが、いずれも四フッ化エチレン樹脂チューブ等により形成されて並列に挿通配置されている。
【0015】
操作部3には、処置具挿通チャンネル9を通じての吸引操作を行うための吸引操作弁10と、送気ノズル4及び送水ノズル5を通じての送気操作と送水操作を行うための送気送水操作弁20とが並んで配置されている。11と12は、送気送水操作弁20に接続された給気管と給水管、13は、吸引操作弁10に接続された吸引管である。
【0016】
図4は送気送水操作弁20を示しており、送気送水操作弁20は、操作部3内に固定的に配置されたシリンダ体21にピストン体22が軸線方向に進退自在に嵌挿された公知の構成のものであり、ピストン体22を操作部3外から操作して、待機状態と、送気状態と、送水状態とを切り換えることができる。
【0017】
シリンダ体21は、操作部3の外面に開口する状態に固定ナット23で固定されており、ピストン体22の突端部には操作ボタン24が取り付けられている。25は、ピストン体22を外方に突出させる方向に付勢するコイルスプリングである。
【0018】
シリンダ体21の側面部には、給気管11、給水管12、送気管7及び送水管8が軸線方向に位置を相違させて開口接続されている。30は、光源装置等に内蔵された送気ポンプ31で内部が加圧される外部送水タンクであり、その水中に給水管12の基端が開口し、給気管11の基端が上部空間に開口している。そのような構成は何れも公知のものである。
【0019】
ピストン体22の外周部には、給気管11、給水管12、送気管7及び送水管8の各接続開口どうしの間をシールするための複数のOリング26が装着されている。27は、ピストン体22の外周部に形成された水路溝である。
【0020】
28は、送気管7側からシリンダ体21内に空気が逆流しないようにピストン体22の外周部に装着された傘状逆止弁(傘状シール部材)である。傘状逆止弁28は、弾力性のある例えば合成ゴムやシリコンゴム等の材料により金型成形により形成され、傘状の最大外径部がシリンダ体21の内径より少し大きな径に形成されて、最大外径部が全周にわたってシリンダ体21の内周面に密接する状態に弾性変形して配置されている。
【0021】
傘状逆止弁28は、その傘の下にあたる位置(図4において上方位置)に送気管7の接続開口が位置するように配置されている。その結果、シリンダ体21内の圧力が送気管7内より高いときは、その圧力に押されて傘状逆止弁28がシリンダ体21の内周面から離れてシリンダ体21内から送気管7内に送気が行われ、逆に送気管7内の圧力がシリンダ体21内より高いときは、傘状逆止弁28がシリンダ体21の内周面に押し付けられてその部分がシールされた逆止状態になる。
【0022】
ピストン体22には、その突端に取り付けられている操作ボタン24も含めて軸線位置に通気孔29が真っ直ぐに貫通形成されており、その通気孔29を介して外気とシリンダ体21内とが連通している。
【0023】
そのような構成により、図4の左半部に図示される待機状態においては、給水管12はOリング26で封鎖されていて、給気管11からシリンダ体21内に送り込まれた空気が通気孔29を通って外気に放出される。
【0024】
その状態においては、傘状逆止弁28がシリンダ体21の内周面に弾力的に押し付けられていることにより、シリンダ体21内から送気管7への送気は行われず、また、前述の傘状逆止弁28の逆止機能により送気管7側からシリンダ体21内に空気が逆流することもない。
【0025】
そして、操作ボタン24に指先を当てつけて通気孔29を塞ぐと、シリンダ体21内で逃げ場を失った空気が傘状逆止弁28を押し開いて送気管7内に送り込まれる送気状態になり、送気ノズル4から空気が噴出する。
【0026】
さらに、図4の右半部に示されるように、操作ボタン24を押し込み操作してピストン体22をシリンダ体21内に押し込むと(通気孔29は指先で塞がれている)、給水管12と送水管8とが連通して送水管8内に水が送り込まれる送水状態になり、送水ノズル5から水が噴出する。給気管11はOリング26と指先で塞がれている。
【0027】
図1は、そのような送気送水操作弁20に用いられている傘状逆止弁28を単体で示しており、傘状逆止弁28は、ピストン体22に装着される円筒状部28Aとシリンダ体21の内周面に密接する傘状部28Bとが金型成形で一体に形成されている。
【0028】
そして、金型成形時に傘状部28Bに形成されるパーティングライン28Pは、傘状部28Bの最大外径部28Dより軸線に近い側に寄った内側位置に形成され、最大外径部28Dは滑らかなアール面取り状のアール面に形成されている。
【0029】
したがって、図2に示されるように、シリンダ体21内ではパーティングライン28Pがシリンダ体21の内周面に接触せず、滑らかな最大外径部28Dがシリンダ体21の内周面に全周にわたって密接するので、パーティングライン28Pに対して組み込み前に精密な仕上げ加工等を行わなくても、シリンダ体21の内周面との間にシール漏れ等が発生しない。
【0030】
図5と図6は、上述のような傘状逆止弁28を製造するための金型51〜53の分割構造を二つ例示しており、51は雌型、52は雄型、53は丸棒状のピンである。なお、二つの例共に、成形後には最大外径部28D部分を内側寄りに弾性変形させながら傘状部28Bを雌型51から抜き出すことが必要とされる。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば本発明を、Oリング26の代わりに用いられる傘状シール部材等に適用しても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例の傘状逆止弁の断面図である。
【図2】本発明の実施例の傘状逆止弁がシリンダ体内に配置された状態の断面図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の配管構成図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の送気送水操作弁の断面図である。
【図5】本発明の実施例の傘状逆止弁を製造するための金型分割構造の第1の例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例の傘状逆止弁を製造するための金型分割構造の第2の例を示す断面図である。
【図7】従来の傘状逆止弁の断面図である。
【図8】従来の傘状逆止弁がシリンダ体内に配置された状態の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
7 送気管(配管)
8 送水管(配管)
11 給気管(配管)
12 給水管(配管)
21 シリンダ体
22 ピストン体
28 傘状逆止弁(傘状シール部材)
28B 傘状部
28D 最大外径部
28P パーティングライン
29 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配管が接続されたシリンダ体に軸線方向に進退自在にピストン体が嵌挿されて、上記ピストン体を軸線方向に移動させる操作を行うことにより、上記複数の配管の間の連通接続状態が変わるように構成された内視鏡の送気送水操作弁であって、弾力性のある部材により傘状に形成された傘状シール部材が上記ピストン体の外周部に設けられて、上記傘状シール部材の最大外径部が全周にわたって上記シリンダ体の内周面に密接してその部分をシールするように構成された内視鏡の送気送水操作弁において、
上記傘状シール部材が金型成形により形成されていて、その金型成形時に上記傘状シール部材に形成されるパーティングラインが、上記傘状シール部材の最大外径部より内側位置に形成されていることを特徴とする内視鏡の送気送水操作弁。
【請求項2】
上記傘状シール部材の最大外径部がアール面取り状のアール面に形成されている請求項1記載の内視鏡の送気送水操作弁。
【請求項3】
上記傘状シール部材が逆止弁である請求項1又は2記載の内視鏡の送気送水操作弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−48796(P2008−48796A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225997(P2006−225997)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】