説明

内視鏡の鉗子栓

【課題】蓋体を、通常の取り付け動作で鉗子栓本体にスムーズかつ確実に取り付けることができて、体内汚液噴出等が発生するおそれのない内視鏡の鉗子栓を提供すること。
【解決手段】蓋体12の内方突起23部分が弾性変形して鉗子栓本体11の外周部に沿ってスライドする際に、鉗子栓本体11の外周部と蓋体12の環状壁22とで囲まれた空間Aと外部とを連通させて空間A内の空気を外部に排出させる通気溝27を、鉗子栓本体11の外周部に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処置具挿通チャンネルを通じて体内汚液等が内視鏡外に噴出しないように処置具挿通チャンネルの入口部分を弾力的にシールするための内視鏡の鉗子栓に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の鉗子栓は一般に、例えば図9に示されるように、基部が内視鏡の処置具挿通チャンネルの入口口金(図示せず)に取り付けられる筒状の鉗子栓本体91と、その鉗子栓本体91の突端入口部に着脱自在に取り付けられる蓋体92とが共に弾力性のある部材により形成されて、処置具挿通チャンネルに挿通される処置具によって押し開かれるスリット93又は小孔94が形成された閉鎖膜95,96が、蓋体92と鉗子栓本体91とに設けられている。
【0003】
そして、蓋体92を鉗子栓本体91に係止させるために、鉗子栓本体91の外周部に円周溝99が形成されて、鉗子栓本体91の周囲を囲む状態に蓋体92側から突設された環状壁97の先端内周部分に、円周溝99に対して係脱自在な環状の内方突起98が全周に突出形成されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−218732
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような内視鏡の鉗子栓において、図10に示されるように鉗子栓本体91から取り外された状態の蓋体92を鉗子栓本体91に取り付ける際には、図11に示されるように、蓋体92の内方突起98部分を、鉗子栓本体91の外周部に沿わせた状態で円周溝99に向かってスライドさせていく。
【0005】
しかし、図12に示されるように、さらに蓋体92を鉗子栓本体91に被さる状態にスライドさせていくと、内方突起98が円周溝99に係合する状態になる前に、鉗子栓本体91の外径の大きい部分で内方突起98部分が押し広げられた状態に弾性変形し、その後、鉗子栓本体91の外周部と蓋体92の環状壁97とで囲まれる空間Aが圧縮された状態になる。
【0006】
そのため、図13に示されるように、内方突起98が円周溝99に係合する前に、環状壁97がその内側の空間A内の圧力で外側に膨らんでしまって、蓋体92を上方から鉗子栓本体91に一杯まで押し付けても内方突起98が円周溝99に係合しない場合があった。
【0007】
そして、内方突起98が円周溝99に係合しない状態で鉗子栓が使用されると、体内から処置具挿通チャンネル内に入り込んでくる体内汚液の水撃作用等で鉗子栓が吹き飛ばされて、汚液が周囲に飛散してしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、蓋体を、通常の取り付け動作で鉗子栓本体にスムーズかつ確実に取り付けることができて、体内汚液噴出等が発生するおそれのない内視鏡の鉗子栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の鉗子栓は、基部が内視鏡の処置具挿通チャンネルの入口部分に取り付けられる筒状の鉗子栓本体と、鉗子栓本体の突端入口部に着脱自在に取り付けられる蓋体とが共に弾力性のある部材により形成されて、処置具挿通チャンネルに挿通される処置具により押し開かれる閉鎖膜が鉗子栓本体と蓋体とに設けられた内視鏡の鉗子栓であって、鉗子栓本体の外周部に円周溝が形成されて、鉗子栓本体の周囲を囲む状態に蓋体側から突設された環状壁の先端部分に円周溝に対して係脱自在な環状の内方突起が突出形成され、蓋体の内方突起部分が、鉗子栓本体の外周部に沿って弾性変形して押し広げられた状態でスライドしてから円周溝に係合するように構成された内視鏡の鉗子栓において、蓋体の内方突起部分が弾性変形して鉗子栓本体の外周部に沿ってスライドする際に、鉗子栓本体の外周部と蓋体の環状壁とで囲まれた空間と外部とを連通させて空間内の空気を外部に排出させる通気溝を、鉗子栓本体の外周部に形成したものである。
【0010】
なお、通気溝が円周溝に連通する状態に形成されていてもよく、通気溝が、鉗子栓本体の外周部に、一つ又は周方向に互いの間隔をあけて複数形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓋体の内方突起部分が弾性変形して鉗子栓本体の外周部に沿ってスライドする際に、鉗子栓本体の外周部と蓋体の環状壁とで囲まれた空間と外部とを連通させて空間内の空気を外部に排出させる通気溝を、鉗子栓本体の外周部に形成したことにより、蓋体を、通常の取り付け動作で鉗子栓本体にスムーズかつ確実に取り付けることができて、体内汚液噴出等が発生するおそれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
基部が内視鏡の処置具挿通チャンネルの入口部分に取り付けられる筒状の鉗子栓本体と、鉗子栓本体の突端入口部に着脱自在に取り付けられる蓋体とが共に弾力性のある部材により形成されて、処置具挿通チャンネルに挿通される処置具により押し開かれる閉鎖膜が鉗子栓本体と蓋体とに設けられた内視鏡の鉗子栓であって、鉗子栓本体の外周部に円周溝が形成されて、鉗子栓本体の周囲を囲む状態に蓋体側から突設された環状壁の先端部分に円周溝に対して係脱自在な環状の内方突起が突出形成され、蓋体の内方突起部分が、鉗子栓本体の外周部に沿って弾性変形して押し広げられた状態でスライドしてから円周溝に係合するように構成された内視鏡の鉗子栓において、蓋体の内方突起部分が弾性変形して鉗子栓本体の外周部に沿ってスライドする際に、鉗子栓本体の外周部と蓋体の環状壁とで囲まれた空間と外部とを連通させて空間内の空気を外部に排出させる通気溝を、鉗子栓本体の外周部に形成する。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図4において、1は、可撓性を有する内視鏡の挿入部、2は、挿入部1の基端に連結された操作部である。
【0014】
挿入部1内には、図示されていない処置具を挿通するための処置具挿通チャンネル3が全長にわたって挿通配置されていて、操作部2の下端部に配置された処置具挿通チャンネル3の入口開口部には、処置具挿通チャンネル3を通って逆流する体内汚液等が外方に吹き出さないようにするための鉗子栓10が着脱自在に取り付けられている。12と14は、後述する蓋体と連結帯状部材である。
【0015】
図1は鉗子栓10を示している。鉗子栓10は、処置具挿通チャンネルの入口口金(図示せず)に着脱自在に取り付けられる筒状に形成された鉗子栓本体11と、鉗子栓本体11の突端側入口部15に着脱自在な蓋体12とを有していて、全体が弾力性のあるゴム材等によって構成されている。
【0016】
鉗子栓本体11の内面の基端寄りの部分には、処置具挿通チャンネルの入口口金に対して係脱自在な小径部13が形成されており、小径部13を弾性変形させて、入口口金を締め付ける状態に取り付け及び取り外すことができる。
【0017】
蓋体12が鉗子栓本体11から取り外された状態を図示する図2にも示されるように、蓋体12は、弾力性のあるゴム材により蓋体12と一体に形成された連結帯状部材14で鉗子栓本体11の基部と連結されていて、鉗子栓本体11から取り外されてもその近くにぶら下げられた状態になるようになっている。
【0018】
鉗子栓本体11内と蓋体12には、各々閉鎖膜16,17が形成されていて、鉗子栓本体11内の閉鎖膜16には、処置具挿通チャンネル3に挿通される処置具により押し開かれる小孔18が形成され、蓋体12の閉鎖膜17には、処置具挿通チャンネル3に挿通される処置具により押し開かれるスリット19が形成されている。
【0019】
したがって、蓋体12が鉗子栓本体11に取り付けられて処置具が使用されない図1に示される状態では、蓋体12に形成されたスリット19により、処置具挿通チャンネル内から体内汚液等が噴出しないように封止される。
【0020】
そして、図示されていない処置具が処置具挿通チャンネル3に挿脱される際には、小孔18とスリット19により処置具の外周部との間がシールされ、注射器で処置具挿通チャンネル3内に薬液等を送り込む場合には、蓋体12を外して小孔18を薬液通路にすることができる。
【0021】
鉗子栓本体11の基端寄りの位置の外周部には円周溝21が全周にわたり形成されていて、その鉗子栓本体11の突端側入口部15寄りの部分の周囲を囲む状態に、蓋体12側から環状壁22が突出形成されている。
【0022】
また、円周溝21に全周にわたり係合させることができる環状の内方突起23が環状壁22の先端部分の内周部の全周から内方に向けて突出形成されていて、内方突起23は、鉗子栓本体11の外周部に沿わせてスライドさせることにより、円周溝21に係脱させることができる。
【0023】
鉗子栓本体11の外周部は、蓋体12を取り付ける際に環状壁22がスムーズに鉗子栓本体11に被さって行くように、突端部寄りの部分に突端部側から径が次第に小さくなる逆テーパ面25が形成されて、中間部分に突端部より径の大きな大径部26が形成され、その大径部26の基部側に隣接して円周溝21が形成されている。したがって、蓋体12の内方突起23部分は、太径部26を乗り越える際に押し広げられた状態に弾性変形し、その状態でスライドしてから円周溝21に係合する。
【0024】
そのような鉗子栓本体11の大径部26の外周部には、蓋体12の内方突起23部分が弾性変形してスライドさせる際に、鉗子栓本体11の外周部と蓋体12の環状壁22とで囲まれた空間A(図6参照)と外部とを連通させて空間A内の空気を外部に排出させる通気溝27が形成されている。
【0025】
鉗子栓本体11から蓋体12が取り外された状態の外観図である図3に示されるように、通気溝27は例えば90°間隔に大径部26の4箇所に形成されている。ただし、少なくとも一つ形成されていればよい。
【0026】
このように構成された内視鏡の鉗子栓は、図5から図6に変化の状態が示されるように、蓋体12を鉗子栓本体11に被さる状態にスライドさせていくと、内方突起23が大径部26に接した図6に示される状態から内方突起23が円周溝21に係合する状態になる間に、鉗子栓本体11の外周部と蓋体12の環状壁22とで囲まれた空間Aが圧縮された状態になる。
【0027】
しかし、その空間A内の空気は、圧縮されると通気溝27を通って円周溝21から外部に速やかに外部に排出される。したがって本発明の内視鏡の鉗子栓においては、図7及び図8に示されるように、蓋体12の内方突起23が鉗子栓本体11の円周溝21に正しく係合する状態に、蓋体12を鉗子栓本体11にスムーズかつ確実に取り付けることができ、鉗子栓10の不確実な取り付けに起因する処置具挿通チャンネル内からの体内汚液噴出等を防止することができる。なお、図5〜図7においては連結帯状部材14の図示が省略されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の鉗子栓の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の鉗子栓の蓋体が鉗子栓本体から取り外された状態の側面断面図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の鉗子栓の蓋体が鉗子栓本体から取り外された状態の外観斜視図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例の内視鏡の鉗子栓の蓋体を鉗子栓本体に取り付ける際の動作を示す側面断面図である。
【図6】本発明の実施例の内視鏡の鉗子栓の蓋体を鉗子栓本体に取り付ける際の動作を示す側面断面図である。
【図7】本発明の実施例の内視鏡の鉗子栓の蓋体が鉗子栓本体に取り付けられた状態の側面断面図である。
【図8】本発明の実施例の内視鏡の鉗子栓の蓋体が鉗子栓本体に取り付けられた状態の外観斜視図である。
【図9】従来の内視鏡の鉗子栓の側面断面図である。
【図10】従来の内視鏡の鉗子栓の蓋体が鉗子栓本体から取り外された状態の側面断面図である。
【図11】従来の内視鏡の鉗子栓の蓋体を鉗子栓本体に取り付ける際の動作を示す側面断面図である。
【図12】従来の内視鏡の鉗子栓の蓋体を鉗子栓本体に取り付ける際の動作を示す側面断面図である。
【図13】従来の内視鏡の鉗子栓の蓋体を鉗子栓本体に取り付ける際の動作を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0029】
3 処置具挿通チャンネル
10 鉗子栓
11 鉗子栓本体
12 蓋体
16 閉鎖膜
17 閉鎖膜
18 小孔
19 スリット
21 円周溝
22 環状壁
23 内方突起
25 逆テーパ面
26 大径部
27 通気溝
A 空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部が内視鏡の処置具挿通チャンネルの入口部分に取り付けられる筒状の鉗子栓本体と、上記鉗子栓本体の突端入口部に着脱自在に取り付けられる蓋体とが共に弾力性のある部材により形成されて、上記処置具挿通チャンネルに挿通される処置具により押し開かれる閉鎖膜が上記鉗子栓本体と上記蓋体とに設けられた内視鏡の鉗子栓であって、上記鉗子栓本体の外周部に円周溝が形成されて、上記鉗子栓本体の周囲を囲む状態に上記蓋体側から突設された環状壁の先端部分に上記円周溝に対して係脱自在な環状の内方突起が突出形成され、上記蓋体の内方突起部分が、上記鉗子栓本体の外周部に沿って弾性変形して押し広げられた状態でスライドしてから上記円周溝に係合するように構成された内視鏡の鉗子栓において、
上記蓋体の内方突起部分が弾性変形して上記鉗子栓本体の外周部に沿ってスライドする際に、上記鉗子栓本体の外周部と上記蓋体の環状壁とで囲まれた空間と外部とを連通させて上記空間内の空気を外部に排出させる通気溝を、上記鉗子栓本体の外周部に形成したことを特徴とする内視鏡の鉗子栓。
【請求項2】
上記通気溝が上記円周溝に連通する状態に形成されている請求項1記載の内視鏡の鉗子栓。
【請求項3】
上記通気溝が、上記鉗子栓本体の外周部に、一つ又は周方向に互いの間隔をあけて複数形成されている請求項1又は2記載の内視鏡の鉗子栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−113915(P2008−113915A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301048(P2006−301048)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】