説明

内視鏡の鉗子栓

【課題】鉗子口部分の大幅な変更をすることなく、簡単な構成にて処置具を固定でき、また処置具を所望の挿入位置で容易に固定できるようにする。
【解決手段】本体13に栓部14が着脱自在となり、弾性材料からなる鉗子栓12において、上記本体13に連結部21を介して、弾性ゴム材料の円柱状ブロック体からなるストッパ部材22を一体形成し、このストッパ部材22の外周から中心へ向けて切り欠き部(挟持部)24を形成する。このストッパ部材22は、その切り欠き部24で処置具16を挟みながら、嵌合凹部22aを円板状凸部14bに嵌め入れ、切り欠き部24の中央空間部24aに処置具16を配置する。これにより、処置具16を挿抜方向に動かないように固定することができる。上記ストッパ部材は、本体13に対し着脱自在となるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処置具を導入する鉗子口に取り付けられる内視鏡の鉗子栓、特にこの鉗子栓に通される処置具が動かないようにするための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
図6には、従来の内視鏡の構成が示されており、この内視鏡は、例えば固体撮像素子を備えた先端部1A、湾曲部1B、そして操作部1C等を有する。この操作部1Cには、鉗子栓を有する鉗子口(処置具挿通チャンネル導入口)3が設けられ、この鉗子口3から先端部1Aの先端面まで、処置具挿通チャンネル4が配設される。この処置具挿通チャンネル4には、被観察体内の流体物等を吸引するための吸引管5が接続されており、上記処置具挿通チャンネル4は吸引管としても機能するようになっている。また、上記操作部1Cには、湾曲操作ノブ6が設けられると共に、吸引ボタン7等が配置される。
【0003】
図7には、上記鉗子口部分の構成の一例が示されており、上述の鉗子口3に、弾性ゴム材質の鉗子栓8が取り付けられる。この鉗子栓8は、本体8aの上部に蓋体8bを着脱自在にする構成とされ、この本体8aの中心部に処置具を通すことのできる直線状の第1スリットSが形成され、上記蓋体8bの中心部にも同様の第2スリットSが形成されている。
【0004】
このような鉗子栓によれば、上記スリットS,Sを押し開けながら、処置具を処置具挿通チャンネル4内へ導入することができ、この処置具は内視鏡の先端部1Aから被観察体内へ導かれることにより、各種の処置が可能となる。また、処置具を抜いて取り外した時には、スリットS,Sが閉じることで、処置具挿通チャンネル4内の密閉性が維持され、上記吸引ボタン7の操作によって、処置具挿通チャンネル4を介した吸引が可能になる。
【0005】
そして、従来では、上記の鉗子栓を介して挿入される処置具を固定することが行われており、例えば下記特許文献1の内視鏡の処置具固定機構では、処置具挿通チャンネルの入口の処置具挿入口金の側壁部に、切り欠き孔を形成し、この切り欠き孔から内部へ向けてブレーキ部材を配置し、このブレーキ部材を処置具の側面に当接させることで、処置具を固定することができる。
【0006】
また、下記特許文献2の内視鏡鉗子口用アダプタでは、鉗子口に設けられた鉗子栓に、管状のアダプタ連結部材を着脱自在に設け、このアダプタ連結部材は、内部に配置された弾性の処置具一体部材を押圧部材で密着固定することで、処置具の移動を規制するように構成し、またこのアダプタ連結部材の先端側に、処置具位置変更部材を着脱自在に設け、これによって処置具の位置を段階的に調整するものが開示されている。
【特許文献1】特開2007−75405号公報
【特許文献2】特開2003−38427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の内視鏡の処置具固定機構では、ブレーキ部材を配置するために、切り欠き孔が形成された形状の処置具挿通管路を内視鏡の鉗子口部分に設ける必要があり、内視鏡の鉗子口部分を大幅に変更しなければならず、また構成が複雑になるというという問題がある。一方、上記特許文献2の内視鏡鉗子口用アダプタでは、構成が複雑であると共に、処置具位置変更部材を用いて処置具の挿入位置を段階的に調整することは可能であるが、所望の挿入位置への微調整ができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉗子口部分の大幅な変更をすることなく、簡単な構成にて処置具を固定することができ、また処置具位置変更部材を用いることなく、処置具を所望の挿入位置で容易に固定することが可能となる内視鏡の鉗子栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る内視鏡の鉗子栓は、処置具を通す挿通路が形成された本体、及びこの本体の挿通路入口に着脱自在となる栓部を有する内視鏡の鉗子栓において、上記本体に連結部を介して一体的に形成され、外周から中心へ向けた切り欠き部(挟持部)が形成された弾性材料のブロック状(塊状)体からなり、上記本体挿通路に通された処置具を上記切り欠き部により挟んで該処置具を固定するためのストッパ部材を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、上記ストッパ部材を上記本体又は該本体に装着の栓部に固定するために、凸部と凹部の結合形式の固定構造を設けたことを特徴とする。
請求項3の発明は、上記栓部を上記本体に固定するために、凸部と凹部の結合形式の固定構造を設けると共に、上記ストッパ部材に、上記固定構造の一方を設け、上記ストッパ部材を上記本体に固定できるようにしたことを特徴とする。
請求項4の発明は、上記本体の上部に形成した固定構造の一方を上記栓部の上部にも設け、上記本体と栓部の両方に対し上記ストッパ部材を選択的に固定できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の構成によれば、処置具は、蓋部を開けた状態の鉗子栓本体から又は蓋部を閉じた状態の蓋部から、鉗子口を介して処置具挿通チャンネル内へ挿入されるが、この処置具をストッパ部材の切り欠き部で挟み、このストッパ部材を本体又は蓋部の上部に当接して取り付ければ、処置具が少なくとも先端側へ移動しない固定状態にすることができる。
【0011】
請求項2,3の構成によれば、上記切り欠き部で処置具を挟みながら、例えばストッパ部材の下側中央部に設けられた凸部又は凹部を、本体又は栓部の上側中央部に設けられた凹部又は凸部に嵌合・係止することで、ストッパ部材が本体又は栓部の上側に固定されることになり、この結果、処置具が設定した挿入位置で(挿抜方向において)移動しない固定状態となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内視鏡の鉗子栓によれば、切り欠き部を形成した弾性材料のストッパ部材を鉗子栓本体に一体的に設けたので、内視鏡の鉗子口部分の大幅な変更、改造をすることなく、簡単な構成で、処置具を固定することができ、また、処置具位置変更部材を用いることなく、微調整が可能となり、処置具を所望の挿入位置で容易に固定することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1及び図2には、第1実施例に係る内視鏡の鉗子栓の構成が示されており、実施例の内視鏡は、図6で説明したものと同様となっている。図1に示されるように、鉗子口10に、鉗子栓12が取り付けられており、この鉗子栓12は、弾性ゴム材料からなり、円柱状の本体13とこの本体の上部に着脱自在に取り付けられる栓部(蓋部)14を有している。即ち、図2に示されるように、鉗子栓12の本体13の下部には、円柱状空間の上に直径が大きい円板状空間を重ねてなる嵌合凹部13aが設けられ、この嵌合凹部13aを鉗子口10の上部の円板状(フランジ状)凸部に嵌め入れることで、鉗子栓12が鉗子口10に取り付けられる。
【0014】
また、上記本体13の内部が処置具16の挿通路となるが、この挿通路に処置具16を密着状態で通すためのスリット17が設けられ、そのスリット17の上側に、円板状空間の上に逆円錐台形状空間を重ねてなる嵌合凹部13bが形成される。一方、栓部14は、本体13に、連結部(帯状体の曲げ部)18を介して一体に形成されており、この栓部14の内側に、上記嵌合凹部13bに嵌合する形状の円板状凸部(円錐台形の上に円板を重ねたものを下向きに形成したもの)14aが形成され、外側にも、円錐台形の上に該円錐台形上部よりも直径が大きい(外周が張り出す)円板を重ねてなる円板状凸部14bが形成される。この栓部14の凸部14a,14bの中央には、スリット19が形成されており、このスリット19は、通常では完全に閉じられて栓の役割をする一方、処置具16を通過させることができるものである。
【0015】
そして、第1実施例では、上記本体13に、帯状体の連結部21を介してストッパ部材22が設けられており、このストッパ部材22は、鉗子栓12と同じ弾性ゴム材料から円柱ブロック状に形成され、その下部に、上記栓部14の円板状凸部14bに嵌合する嵌合凹部22aが設けられる。即ち、この嵌合凹部22aは、円錐台形状空間の上に円板状空間を重ねた凹部となる。また、このストッパ部材22には、円柱の外周から中心へ向けて長手方向(処置具挿抜方向)全体にわたって切り欠いた(スリットを入れた)もので、中心部に処置具16の直径よりも小さな直径の円柱状中央空間部24aを有する切り欠き部(挟持部)24が形成されており、この切り欠き部24は、処置具16の外周に密着して該処置具16をしっかりと挟むことができるようになっている。上記中央空間24aは、必須のものではない。
【0016】
第1実施例は以上の構成からなり、この例では、栓部14を開けた状態で、本体13のスリット17を介して処置具16を挿入することもできると共に、図1(A),図2に示されるように、栓部14を閉じた状態で、スリット19、17を介して処置具16を鉗子口から処置具挿通チャンネル内へ挿入することができる。そして、処置具16が所望の挿入位置にセットされた後、図1(B)に示されるように、ストッパ部材22の切り欠き部24で処置具16を挟みながら、嵌合凹部22aを円板状凸部14bに嵌め入れ、切り欠き部24の中央空間部24aに処置具16を配置する。この結果、ストッパ部材22は処置具16をしっかりと挟持することができ、これによって、処置具16は挿抜方向に動かないように固定される。
【0017】
このように、通常は鉗子栓12だけに処置具16が挿通された状態で処置具16を操作し、処置具16を挿抜方向における所定位置で固定したいときには、処置具16を鉗子栓12から抜き取ることなく、処置具16の側方から切欠き部24を嵌め込むだけの操作で簡単に処置具16を固定することができる。
【0018】
なお、第1実施例では、円板状凸部14bと嵌合凹部22aによって、ストッパ部材22を固定するようにしたが、これらの固定構造を設けず、単にストッパ部材22を栓部14の上面に当接配置することで、処置具16の挿入方向(先端へ向かう一方向)の動きのみを停止することもできる。
【0019】
図3及び図4には、第2実施例に係る内視鏡の鉗子栓の構成が示されており、この第2実施例は、ストッパ部材を本体に着脱自在にしたものである。図3(A),図4に示されるように、鉗子栓26の本体13は第1実施例の場合と同様であり、スリット17、下部の嵌合凹部13aが設けられると共に、上部に、円板状空間の上に逆円錐台形状空間を重ねてなる嵌合凹部13bが形成される。一方、この本体13に対し連結部18を介して栓部27が一体形成され、この栓部27の内側に、上記嵌合凹部13bに嵌合する形状の円板状凸部27aが設けられると共に、この栓部27の凸部27aの中央に、スリット28が形成されている。なお、このスリット28は必須のものではない。
【0020】
そして、第2実施例では、上記本体13に帯状体の連結部21を介してストッパ部材30が設けられ、このストッパ部材30は、弾性ゴム材料からなる円柱ブロック状体の下部に、上記本体13の嵌合凹部13bに嵌合する円板状凸部30aが設けられる。この円板状凸部30aは、円板状凸部27aと同様に、逆円錐台形の下に該円錐台形下部よりも直径が大きい円板を重ねた形状とされる。また、このストッパ部材30には、円柱の外周から中心へ向けて縦方向で切り欠き、中心部に処置具16の直径よりも小さな直径の中央空間部31aを有する切り欠き部31が形成されている。
【0021】
第2実施例は以上の構成からなり、この例でも、栓部27を開けた状態、栓部27を閉じた状態の両方で、スリット17、28を介して処置具16を鉗子口から処置具挿通チャンネル内へ挿入することができる。そして、この第2実施例では、栓部27を開けた状態で、本体23に対し処置具16を挿入し、所望の位置にセットしたとき、図3(B)に示されるように、ストッパ部材30の切り欠き部31で処置具16を挟みながら、円板状凸部30aを嵌合凹部13bに嵌め入れ、切り欠き部31の中央空間部31aに処置具16を配置することで、ストッパ部材22が処置具16を挟持し、これによって、挿抜方向に動かないように処置具16がしっかりと固定される。
【0022】
図5には、第3実施例の構成が示されており、この第3実施例は、ストッパ部材を本体と栓部の両方に着脱自在となるようにしたものである。この第3実施例の鉗子栓32では、本体13に連結部18を介して一体形成された栓部33において、内側に第2実施例の場合と同様の円板状凸部33aが設けられ、かつ外側に本体13の嵌合凹部13bと同一形状の嵌合凹部33bが形成される。そして、連結部21を介して配置されるストッパ部材30は、第2実施例と同一のものであり、下部には、上記嵌合凹部13bと33bの両方に嵌合する円板状凸部30aが設けられている。
【0023】
このような第3実施例によれば、栓部33を閉めたときと開けたときの両方で、ストッパ部材30を使用できることになる。即ち、図5に示されるように、栓部33を閉めたときは、挿通路に通した処置具16に対し、円板状凸部30aを嵌合凹部33bに嵌め入れることにより、ストッパ部材30を栓部33に取り付け、処置具16の移動を規制することができる。一方、栓部33を開けたときは、円板状凸部30aを嵌合凹部13bに嵌め入れることにより、ストッパ部材30を本体13に取り付け、処置具16の移動を規制することができる。
【0024】
上記第3実施例は、第1実施例の栓部14とストッパ部材22において、凸と凹の形状を逆にしたものとなるが、第2実施例(図4)においても、嵌合する凹凸形状を逆にし、本体13の上部に円板状凸部を設け、栓部27の内側及びストッパ部材30の下部に、嵌合凹部を形成するように構成することもできる。
【0025】
また、上記各実施例では、ストッパ部材22,30を円柱状ブロック体としたが、このストッパ部材22,30として、角柱状、円球状等のブロック体を用いるようにしてもよい。更に、ストッパ部材の固定構造を鉗子栓の中央部に配置するようにしたが、処置具16の挿通路を含まない鉗子栓の外周側部とストッパ部材下部の外周側部に固定構造を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例に係る内視鏡の鉗子栓の構成を示し、図(A)はストッパ部材装着前の斜視図、図(B)はストッパ部材装着後の斜視図である。
【図2】第1実施例の鉗子栓の断面図である。
【図3】第2実施例の鉗子栓の構成を示し、図(A)はストッパ部材装着前の斜視図、図(B)はストッパ部材装着後の斜視図である。
【図4】第2実施例の鉗子栓の断面図である。
【図5】第3実施例の鉗子栓の構成を示す断面図である。
【図6】従来の内視鏡の構成を示す図である。
【図7】従来における内視鏡の鉗子栓の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
3,10…鉗子口、 8,12,26,32…鉗子栓、
8a,13…鉗子栓本体、 8b,14,27,33…栓部、
13a,13b,22a,33b…嵌合凹部、
14a,14b,27a,30a,33a…円板状凸部、
16…処置具、 22,30…ストッパ部材、
24,31…切り欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具を通す挿通路が形成された本体、及びこの本体の挿通路入口に着脱自在となる栓部を有する内視鏡の鉗子栓において、
上記本体に連結部を介して一体的に形成され、外周から中心へ向けた切り欠き部が形成された弾性材料のブロック状体からなり、上記本体挿通路に通された処置具を上記切り欠き部により挟んで該処置具を固定するためのストッパ部材を設けたことを特徴とする内視鏡の鉗子栓。
【請求項2】
上記ストッパ部材を上記本体又は該本体に装着の栓部に固定するために、凸部と凹部の結合形式の固定構造を設けたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡の鉗子栓。
【請求項3】
上記栓部を上記本体に固定するために、凸部と凹部の結合形式の固定構造を設けると共に、上記ストッパ部材に、上記固定構造の一方を設け、上記ストッパ部材を上記本体に固定できるようにしたことを特徴とする請求項2記載の内視鏡の鉗子栓。
【請求項4】
上記本体の上部に形成した固定構造の一方を上記栓部の上部にも設け、上記本体と栓部の両方に対し上記ストッパ部材を選択的に固定できるようにしたことを特徴とする請求項3記載の内視鏡の鉗子栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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