説明

内視鏡システム

【課題】信号伝送状態が変化した場合においても、1つの信号伝送系の場合よりも信号処理装置側においてより良好な映像信号が得られる内視鏡システムを提供する。
【解決手段】電子内視鏡2のCCD19による映像信号は、第1の選択回路27aで選択される第1の信号伝送系を構成する第1の信号送信部25又は第2の信号伝送系を構成する第2の信号送信部26から無線コネクタ部21を経て無線でビデオプロセッサ3の第1の信号受信部37又は第2の信号受信部38に伝送される。第1の信号受信部37及び第1の信号受信部38の出力信号は伝送状態検出部40に入力され、伝送状態検出部40は、伝送状態の検出を行い、検出結果により第1及び第2の信号伝送系の一方の信号伝送系の選択を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の撮像部に基づく映像信号を信号処理装置に無線で伝送する内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は各種の分野で広く用いられるようになった。内視鏡は、衛生管理上の観点から、消毒液・減菌液による液浸消毒・減菌処理が要求されるため、該滅菌等の処理時には防水加工して各電気部品を消毒液・減菌液から保護する必要がある。
また、最近においては、撮像部または撮像手段を内蔵した電子内視鏡と呼ばれる内視鏡も普及している。また、内視鏡(より具体的には光学式内視鏡)に、撮像部としてのテレビカメラ(TVカメラ)を装着したTVカメラ装着内視鏡も使用されることがある。
撮像部を備えた内視鏡の場合には、撮像部により撮像された撮像信号に基づく映像信号又は画像信号は、モニタに表示する標準的な映像信号に変換する信号処理を行う信号処理装置としてのビデオプロセッサに伝送される。そして、標準的な映像信号が入力されるモニタの表示面には、術者が観察する内視鏡画像が表示される。
【0003】
このように内視鏡の撮像部による映像信号をビデオプロセッサに伝送する必要がある。ここで、内視鏡とビデオプロセッサの間の信号線が有線で接続されている場合、内視鏡のビデオプロセッサとの電気接点部は、前記処理時には消毒液等にさらされることになるが、電気接点部の防水加工のためにコストが高くなってしまう。
この為、従来は、該電気接点部に防水膜を被せて前記滅菌処理等を行っている。また、電気接点部を防水加工することができたとしたとしても、電気接点部は酸化により腐食するため、より寿命を長くすることが難しい。
そこで、第1の従来例としての特開平10−155740号公報では、内視鏡の撮像部からビデオプロセッサの間の信号線の一部を、光伝送方式により無線化し、電気接点部を気密状態としたままで信号の伝送を可能とし、防水膜を付けることなく内視鏡を滅菌等の処理から保護する方式が開示されている。
また、第2の従来例としての特開2007−97767号公報では、信号の伝送に静電結合伝送方式を用いる手法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−155740号公報
【特許文献2】特開2007−97767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の第1の従来例に係る光伝送方式は、発光部又は受光部のレンズの曇りや水滴、液体による影響を受けやすい。
また、前述の第2の従来例に係る静電結合伝送方式は、外来ノイズの影響を受けやすい。
また、内視鏡を使用して内視鏡検査や処置を行う医療現場においては、電気メス等の装置が動作する為、通常の環境よりも高レベルのノイズが発生する場合や、液体等を完全に避けることも困難な状況になる場合が想定される。
このように内視鏡の使用状況等により信号伝送状態が変化した場合に対して、第1の従来例又は第2の従来例のようにいずれか1つの信号伝送系の場合よりも良好な映像信号が得られる機能を備えたものが実現できるとユーザにとって非常に使い易いものとなる。
【0005】
(発明の目的)
本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、信号伝送状態が変化した場合においても、1つの信号伝送系の場合よりも信号処理装置側においてより良好な映像信号が得られる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内視鏡システムは、撮像部を備えた内視鏡と、
前記撮像部からの出力に基づく映像信号を光を利用して無線で内視鏡外部の信号処理装置に伝送する第1の信号伝送系と、
前記映像信号を静電結合を利用して無線で前記信号処理装置に伝送する第2の信号伝送系と、
前記第1及び第2の信号伝送系のうちの一方の信号伝送系又は、該一方の信号伝送系により伝送される映像信号を選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1つの信号伝送系の場合よりも良好な映像信号が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子内視鏡システム1の概略構成を示す。
この電子内視鏡システム1は、人体内に挿入され、内視鏡検査に使用される電子内視鏡2と、この電子内視鏡2に内蔵された撮像部による画像信号に対する信号処理を行う信号処理装置としてのにビデオプロセッサ3と、ビデオプロセッサ3から出力される映像信号に対応した内視鏡画像を表示するモニタ4とを有する。
電子内視鏡2は、人体内に挿入される細長の挿入部6と、この挿入部6の基端に設けられた操作部7からなる電子内視鏡部8と、操作部7から延出されたユニバーサルコード9からなる接続コード部10とを備えている。
【0010】
また、挿入部6は、この挿入部6の先端に設けられた先端部11と、この先端部11の後端に設けられた湾曲自在の湾曲部12と、この湾曲部12の後端から操作部7の前端に至る長尺の可撓部13とからなる。
また、操作部7には、湾曲部12を湾曲操作する湾曲ノブ14が設けてあり、電子内視鏡2を使用するユーザとなる術者は、この操作部7を把持して、湾曲ノブ14を操作することにより、湾曲部12を湾曲することができる。
先端部11には、照明窓15と観察窓16とが設けられ、照明窓15には照明光を出射する例えばLED(図示せず)が取り付けられている。そして、挿入部6が人体内に挿入された場合、照明窓15から出射される照明光で人体内の観察対象部位を照明することができるようにしている。
【0011】
また、観察窓16には、図2に示すように撮像を行う撮像部17を構成する対物レンズ18が取り付けられており、照明光で照明された観察対象部位等の光学像をその結像位置に配置された撮像素子としての例えばCCD19に結像する。
図1に示すように操作部7から延出されたユニバーサルコード9の端部には、無線伝送用コネクタ(以下、単に無線コネクタと略記)21aが設けてあり、この無線コネクタ21aはビデオプロセッサ3の筐体表面に設けられた無線コネクタ受け21bに着脱自在に接続することができる。
この無線コネクタ21a及び無線コネクタ受け21bは、図2を参照して後述するように、電気接点を用いることなく、無線で信号の伝送を行う無線コネクタ部21を形成する。
【0012】
また、ビデオプロセッサ3内は、電子内視鏡2に内蔵された撮像部17のCCD19を駆動するための基本クロックとしてのクロック信号を生成すると共に、電子内視鏡2側から無線で送信される映像信号(本実施形態では変調された映像信号)を無線コネクタ部21を介して受信する。そして、ビデオプロセッサ3は、受信した変調された映像信号を復調しさらに標準的な映像信号に変換する信号処理を行い、モニタ4に出力する。標準的な映像信号が入力されるモニタ4の表示面には、撮像部17で撮像した画像が内視鏡画像として表示される。
次に図2を参照して本実施形態における信号伝送系に係る信号処理系の構成を説明する。図2は本実施形態における信号処理系の構成を示す。
図2に示すように本実施形態における電子内視鏡2は、撮像部17の他に、この撮像部17を構成するCCD19を駆動するCCD駆動回路23と、CCD19から出力されるCCD出力信号に対する信号処理を行い映像信号を生成する映像信号処理回路24とを有する。
【0013】
より具体的にはこの映像信号処理回路24は、CCD出力信号に対するCDS処理により生成したベースバンドのアナログの映像信号をA/D変換して2値化されたデジタルの映像信号に変換し、さらにパラレルシリアル変換回路によりシリアルのデジタル映像信号を生成する。
また、この電子内視鏡2は、映像信号処理回路24から出力される映像信号を無線で送信する第1及び第2の信号伝送系をそれぞれ構成する第1及び第2の信号送信部25、26を備えた映像信号伝送部27を備えている。
より具体的には第1の信号伝送系は、第1の信号送信部25と後述する第1の信号受信部37とにより構成される。また、第2の信号伝送系は、第2の信号送信部26と後述する第2の信号受信部38とにより構成される。
【0014】
また、この電子内視鏡2は、ビデオプロセッサ3のクロック信号送信部28から送信されるクロック信号を無線コネクタ部21を介して無線で受信するクロック信号受信部29を有する。
そして、このクロック信号受信部29により生成されたクロック信号を用いてCCD駆動回路23は、CCD駆動信号を生成し、CCD19を駆動する。
また、後述するようにビデオプロセッサ3に設けられたシステムコントローラ31は、指示信号をクロック信号に重畳して出力する。このクロック信号受信部29は、復調して指示信号を生成し、この指示信号は、映像信号伝送部27に設けられた第1の選択回路27aによる選択を制御する。
【0015】
この指示信号により、第1の選択回路27aは、第1及び第2の信号送信部25、26の一方を選択する。そして選択された第1の信号送信部25又は第2の信号送信部26を用いて映像信号が送信される。つまり、第1の選択回路27aは、第1又は第2の信号伝送系を選択する選択手段を形成する。
なお、本実施形態においては、後述する伝送状態検出部40の検出結果(測定結果)により選択手段を介して第1及び第2の両信号伝送系の一方を選択する例で説明するが、ユーザが手動で一方を選択するようにしても良い。
第1の信号送信部25は、第1の変調回路32aと、この第1の変調回路32aにより変調された映像信号を静電結合方式で伝送する第1の無線送信部に相当する第1の送信電極パッド33aとからなる。なお、第1の送信電極パッド33aは、無線コネクタ21a内に設けられている。
また、第2の信号送信部26は、第2の変調回路32bと、この第2の変調回路32bにより変調された映像信号を光伝送方式で伝送する第2の無線送信部に相当する第1の発光部33bとからなる。なお、第1の発光部33bは、無線コネクタ21a内に設けられている。
【0016】
また、ビデオプロセッサ3内に設けられた第3の信号送信部に相当するクロック信号送信部28は、例えばシステムコントローラ31内のクロック信号発生回路により生成されたクロック信号を変調する第3の変調回路32cと、この第3の変調回路32cにより変調されたクロック信号を光伝送方式で送信する第3の無線送信部に相当する第2の発光部33cとからなる。なお、第2の発光部33cは、無線コネクタ受け21b内に設けられている。
また、電子内視鏡2内に設けられた上記クロック信号受信部29は、無線コネクタ21a内に設けられた第2の受光部34cと、この第2の受光部34cによる受光した光信号を復調する第3の復調回路35cとからなる。この第3の復調回路35cは、復調したクロック信号をCCD駆動回路23に、指示信号を第1の選択回路27aにそれぞれ出力する。
【0017】
電子内視鏡2に設けられた映像信号伝送部27により無線で送信される映像信号は、ビデオプロセッサ3に設けられた映像信号受信部36により受信される。
この映像信号受信部36は、第1の信号送信部25により送信される映像信号を静電結合方式で受信する第1の信号受信部37と、第2の信号送信部26から送信される映像信号を光伝送方式で受信する第2の信号受信部38とを備える。
第1の信号受信部37は、無線コネクタ受け21b内に設けられた第1の受信電極パッド34aと、この第1の受信電極パッド34aにより静電結合で受信した映像信号を復調する第1の復調回路35aとからなる。この第1の復調回路35aは、復調した映像信号を第2の選択回路39を介してシステムコントローラ31に出力する。
【0018】
また、第2の信号受信部38は、無線コネクタ受け21b内に設けられた第1の受光部34bと、この第1の受光部34bにより光結合で受信した映像信号を復調する第2の復調回路35bとからなる。この第2の復調回路35bは、復調した映像信号を第2の選択回路39を介してシステムコントローラ31に出力する。
なお、無線コネクタ21aと無線コネクタ受け21bとが装着された装着状態においては、例えば図2に示すように、第1の発光部33bと第1の受光部34bとが対向すると共に、第2の発光部33cと第2の受光部34cとが対向する。
そして、第1の発光部33bから発光された光(信号)は、第1の受光部34bにて受光される。また、同様に第2の発光部33cから発光された光(信号)は、第2の受光部34cにて受光される。
【0019】
また、上記装着状態においては、第1の送信電極パッド33aと第1の受信電極パッド34aとが近接して対向する。そして、第1の送信電極パッド33aへの映像信号は、静電結合により無線で第1の受信電極パッド34aに伝送される。
また、本実施形態においては、このビデオプロセッサ3には、第1の復調回路35aから出力される映像信号と第2の復調回路35aから出力される映像信号とが入力される伝送状態検出部40が設けられている。
【0020】
この伝送状態検出部40は、入力される映像信号に基づき、電子内視鏡2に設けられた映像信号伝送部27から無線コネクタ部21を介して無線でビデオプロセッサ3に送信される映像信号の伝送状態を検出する。
【0021】
この伝送状態検出部40の検出信号は、システムコントローラ31に入力され、システムコントローラ31は、検出信号に応じて指示信号を電子内視鏡2側に送信する。
そして、この指示信号により、電子内視鏡2に設けられた映像信号伝送部27内の第1の選択回路27aの選択を制御する。この制御により、実際に映像信号を送信する信号送信系を第1の信号送信部25及び第2の信号送信部26から一方を選択する。
なお、術者等のユーザは、図示しない選択スイッチを操作することにより、システムコントローラ31を介して、映像信号を伝送する信号伝送系を切り替える指示信号を発生させ、手動で信号伝送系を切り替えることもできる。
【0022】
また、このシステムコントローラ31は、この電子内視鏡システム1の全体動作をコントロールする。
なお、電子内視鏡2は、電源として図示しないバッテリを内蔵している。このバッテリの代わりに無線コネクタ部21に例えば電磁結合コイルを介してビデオプロセッサ3側から供給される交流電力を整流等して直流の電源を生成する構成でも良い。
このような構成の本実施形態におけるCCD19による映像信号をビデオプロセッサ3のモニタ4の表示面に内視鏡画像として表示する動作は、以下のようになる。
システムコントローラ31で生成されたクロック信号は、クロック信号送信部28において変調後に光信号に変換されて送信される。この光信号は、クロック信号受信部29により受光されて光電変換された後、第3の復調回路35cで復調されてCCD駆動回路23に伝送される。
【0023】
CCD駆動回路23は、クロック信号を基にCCD19を駆動する駆動信号としての水平転送パルス、リセットパルス、垂直転送パルス等を生成し、CCD19を駆動する。 そしてCCD19により光電変換され、このCCD19の出力信号は、映像信号処理回路24においてCDS処理され、さらにA/D変換後にシリアルデータに変換された映像信号に変換される。
この映像信号は、電子内視鏡2の映像信号伝送部27から、無線コネクタ部21を経て無線でビデオプロセッサ3の映像信号受信部36に伝送され、さらにシステムコントローラ31に伝送される。このシステムコントローラ31は、伝送された映像信号に対する信号処理を行い、標準的な映像信号に変換してモニタ4に出力し、モニタ4の表示面には標準的な映像信号に対応する内視鏡画像が表示される。
【0024】
次に、伝送状態検出部40を用いて伝送状態を検出する動作の概略を説明する。
この伝送状態検出部40は、映像信号伝送部27から映像信号受信部36に信号伝送を行う場合、第1の信号伝送系としての第1の信号送信部25,第1の信号受信部37による伝送状態を検出する機能と、第2の信号伝送系としての第2の信号送信部26,第2の信号受信部38による伝送状態を検出する機能とを有する。
第1の信号送信部25と第1の信号受信部37に係る静電結合方式の伝送状態を検出する場合には、第1の信号送信部25の動作を停止し、第1の信号受信部37において、第1の受信電極パッド34aを介して外来ノイズを直接検出する。検出された外来ノイズは、伝送状態検出部40によりサンプリングされ、システムコントローラ31に伝えられる。
【0025】
第1の信号伝送系としての静電結合方式においては、信号伝送の最大の障害は外来ノイズであるため、システムコントローラ31は、外来ノイズのレベルに基づき静電結合方式の伝送状態を算出する。
また、第2の信号伝送系としての第2の信号送信部26及び第2の信号受信部38に係る光伝送の伝送状態を検出する場合、映像信号処理回路24は、CCD19による映像信号ではなく、予め用意されたテストデータを出力する。
このテストデータの出力信号は、第1の選択回路27a、第2の信号送信部26、第2の信号受信部38を介して伝送状態検出部40に到達する。
ここで伝送状態検出部40は、無線コネクタ部21を介して伝送されたテストデータのデータと、本来のテストデータのデータを比較し、伝送の誤り率(ビットエラーレート、以下、エラーレートと略記)を算出し、システムコントローラ31に伝える。
【0026】
また、第1の信号伝送系と第2の信号伝送系とから、より良好な信号伝送を選定する場合には、第1の信号伝送系においてもテストデータを用い、伝送状態検出部40はその場合のエラーレートを検出して、システムコントローラ31に出力する。
システムコントローラ31は、両信号伝送系におけるエラーレートが小さい方をより良好な信号伝送系であると判定し、より良好な信号伝送系を映像信号の信号伝送系として選択して使用する。
このように同じテストデータを用いたエラーレートの比較からより良好な信号伝送系を判定し、判定結果により映像信号の信号伝送系を選択しても良いが、伝送レベルが良好で無くなった場合に他方の信号伝送系を選択するように切り替えても良い。
この場合においても、1つの信号伝送系の場合よりもビデオプロセッサ3側は、より良好な映像信号を得ることができる。また、伝送状態検出部40を有しない構成の場合においても、手動で信号伝送系を選択することにより、1つの信号伝送系の場合よりもビデオプロセッサ3側は、より良好な映像信号を得ることができる。
上記の具体例においては、同じテストデータを用いたエラーレートの比較からより良好な信号伝送系を判定する場合を説明しているが、以下のように異なる方法で伝送状態の検出結果から推定によって、より良好な信号伝送系を判定するようにしても良い。
【0027】
第1の信号伝送系としての静電結合方式の信号伝送系の場合において、テストデータを用いたエラーレートの場合と、外来ノイズレベルとの関係のデータを予め蓄積し、その蓄積したデータに基づき、外来ノイズレベルから対応するエラーレートの場合に換算した伝送状態の検出結果の推定値をシステムコントローラ31が算出するようにしても良い。 そして、システムコントローラ31は、この推定値を用いることにより、第2の信号伝送系の場合とエラーレートを比較し、2つの信号伝送系からより良好な信号伝送系を判定するようにしても良い。
【0028】
そして、システムコントローラ31は、上記のように同じ条件で検出した伝送状態の検出結果或いは推定による検出結果からより良好な信号伝送系を実際の信号伝送系に設定するために、第1の選択回路27aに指示信号を出力すると共に、第2の選択回路39にも信号伝送系、つまり伝送系ルートの選択の指示を出す。
ここで、第1の選択回路27aへの指示信号は、クロック信号に重畳され、第3の復調回路35cで分離されて第1の選択回路27aへ伝送される。
尚、一般的にシリアルに変換された映像信号の周波数は非常に高い為、第1の発光部33bの光源にはレーザーを用いることが望ましいが、レーザー光は、光路の断面積が非常に狭く、光路を遮断する曇りや汚れによる影響を受け易い。
【0029】
これに対し、CCD19を駆動するクロック信号の周波数は、上記映像信号に比較すると遙かに低くできる為、第2の発光部33cの光源にはLED等の拡散光を用いることができ、曇り等の影響を殆ど受けることなく光伝送を実現することができる。
この為、本実施形態においては、クロック信号の伝送手段として、1つの信号伝送手段(光伝送手段)のみとしている。クロック信号の伝送手段として、映像信号の場合のように2つの信号伝送手段を形成しても良い。
次に、本実施形態の電子内視鏡システム1の動作について説明する。図3は、図1及び図2に示した電子内視鏡システム1における信号伝送の動作内容のフローチャートである。
【0030】
以下、電子内視鏡システム1の動作を図3のフローチャートを参照して説明する。電子内視鏡システム1の電源がONされると、最初のステップS1において伝送状態検出部40は、2つの信号伝送系による伝送状態としての信号レベル又はエラーレートを検出する。
具体的には、第1の信号送信部25と第1の信号受信部37に係る静電結合方式による信号伝送の場合と、第2の信号送信部26と第2の信号受信部38に係る光結合方式の信号伝送の場合における信号レベル(伝送状態)をそれぞれ第1の選択回路27aを切り替える等して検出する。
伝送状態の検出結果は、システムコントローラ31に送られる。そして、ステップS2に示すようにシステムコントローラ31は、2つの伝送状態を比較して、映像信号伝送手段として伝送状態が良好な方の信号伝送系を選択設定する。
【0031】
つまり、信号送信部及び信号受信部として実際に選択するものを第1の信号送信部25及び第1の信号受信部37と、第2の信号送信部26及び第2の信号受信部38から選択する。
そして、次のステップS3に示すようにCCD19による撮像に基づく映像信号を(ステップS2で選択した信号伝送系を用いて)電子内視鏡2からビデオプロセッサ3に送信する。
ビデオプロセッサ3に送信された映像信号は、ステップS4に示すようにシステムコントローラ31によりさらに信号処理されて標準的な映像信号に変換されてモニタ4に入力され、モニタ4の表示面には内視鏡画像が表示される。
【0032】
また、ステップS5に示すように(ビデオプロセッサ3に送信された映像信号は)伝送状態検出部40によりその映像信号における例えば1フレーム期間毎に、その時点で選択使用されている信号伝送系(現伝送方式)における伝送状態の良否が検出される。
この場合、例えば1フレーム期間には、映像データにテストデータが追加されており、復調されたこのテストデータから伝送状態検出部40は、エラーレートを検出する。そして、検出結果がシステムコントローラ31に出力される。なお、この場合、所定期間として1フレーム期間として説明したが、1フレーム期間に限定されるものでなく、2フレーム期間などでも良い。
次のステップS6に示すように、システムコントローラ31は、伝送状態が良いレベルであるか否かの判定を行う。システムコントローラ31は、例えばエラーレートが、予め設定された閾値以下となる伝送状態が良いレベルか否かの判定を行う。
【0033】
そして伝送状態が良いと判定した場合には、システムコントローラ31は、伝送方式を切り替えない。この場合には、そのままの伝送方式の状態でステップS3に示すように映像信号の送信が行われる。
なお、伝送状態の良否を検出する場合、上記のようにエラーレートが閾値以上であるか否かにより、伝送状態の良否の判定ができるが、信号送信部25,26のパワーレベルの変更した場合のエラーレートの変化から伝送状態のレベルを検出するようにしても良い。 具体的には、信号送信部25或いは26のパワーレベル(第1の信号伝送系では第1の送信電極パッド33aからの出力振幅レベル、第2の信号伝送系では第1の発光部33bの発光パワーのレベル)を徐々に下げながらテストデータを繰返し送信する。
【0034】
そして、その場合のエラーレートを測定し、伝送状態が変化する(具体的には、エラーレートが上昇する)時の信号送信部25,26のパワーレベルを得ることにより、そのレベルを伝送状態のレベルとして検出するようにしても良い。
また、第1の信号伝送系の場合には、上記テストデータの期間に、信号送信部25の送信を停止して、ノイズを検出することにより伝送状態の良否を検出するようにしても良い。このように伝送状態検出部40による伝送状態検出は、特定の伝送状態検出方法に限定されるものでなく、他の公知の手段、方法を採用しても良い。
一方、ステップS6においてシステムコントローラ31が、伝送状態が良くないレベルであると判定した場合には、ステップS7に示すように、伝送方式を切り替える。そして、この場合には切り替えられた伝送方式の状態でステップS3に示すように映像信号の送信が行われる。
【0035】
このように動作する第1の実施形態によれば、映像信号の伝送系を、光伝送方式と静電結合伝送方式のどちらにも切り替えることが可能となり、信号の伝送状況に応じて伝送状態が良好な伝送方式を選択使用できる。
従って、1つの信号伝送系の場合よりも、良好な映像信号を伝送する信号伝送系を選択することができ、良好な映像信号を得ることができる。
また、例えば電源をONして内視鏡検査を開始する前のように、2つの信号伝送系で信号伝送状態を比較し、より良好な方を信号伝送系に設定して使用することも可能になる。そして、この場合には最初に良好な映像信号が得られる初期設定状態で内視鏡検査を開始できることになり、内視鏡検査を行う際の操作性を向上することができる。
【0036】
また、例えば伝送状態検出部40を備えていない場合においても、ユーザが手動で両信号伝送系の一方を選択するようにしても良い。
つまり、ユーザによる選択操作により第1の選択回路27a、第2の選択回路39による選択の切り替えが可能な構成にし、ユーザによる選択操作で両信号伝送系の一方を選択できるようにしても良い。このような構成の場合においても、一つの信号伝送系の場合よりも良好な映像信号を得ることが可能になる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に図4を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。図4は、本発明の第2の実施形態の電子内視鏡システム1Bにおける信号伝送系に係る部分の構成を示す。
本実施形態の電子内視鏡システム1Bは、図2の電子内視鏡システム1において、映像信号伝送部27における第1の選択回路27aを有しない映像信号伝送部27Bが採用されている。
そして、映像信号処理回路24から出力されるシリアルの映像信号は、第1の信号送信部25と第2の信号送信部26とに入力される。
つまり、本実施形態は、常時、第1及び第2の信号伝送系により信号伝送を行い、ビデオプロセッサ3側において、モニタ4に内視鏡画像を表示する場合には、第2の選択回路39により一方の信号伝送系における第1の信号受信部37、又は38を選択する。
【0038】
つまり、本実施形態は、第1及び第2の信号伝送系におけるそれぞれ伝送される映像信号から一方の信号伝送系により伝送される一方の映像信号を(信号処理装置としての)ビデオプロセッサ3側で選択する構成にしている。
なお、第1の選択回路27aを設けていないので、クロック信号送信部28は、クロック信号のみを送信する。本実施形態においては、第1の実施形態における第1の選択回路27aの選択を切り替える手段が不要となる。その他は、第1の実施形態と同じ構成である。
本実施形態によれば、ビデオプロセッサ3側のみでの信号伝送系の選択に相当する映像信号の選択で済むため、指示信号の伝送が不要となり、制御がより簡単になると共に、構成も簡略化できる。
【0039】
そして、第1の実施形態における信号伝送系を選択する代わりに、本実施形態は、伝送される映像信号を選択する構成とすることにより、第1の実施形態と殆ど同様の効果を得ることができる。
具体的には、第2の選択回路39により2つの信号伝送系でそれぞれ伝送された2つの映像信号から1つの映像信号を選択できるので、1つの信号伝送系の場合よりも良好な映像信号を得ることができる。
また、伝送状態検出部40により、2つの信号伝送系における伝送状態の良否の検出や比較が簡単にができるので、良好に伝送される方の映像信号を選択することも可能となる。
この他に、本実施形態においては、常時第1及び第2の信号伝送系で信号伝送を行う構成であるため、両信号伝送系での伝送状態の比較を常時、行うことができる。
【0040】
そして、本実施形態では、より良好な方の信号伝送系による映像信号を得ることが常時可能となる効果もある。
なお、変形例として、ユーザからの指示により、一方の信号伝送系の動作を停止させることができるようにしても良い。
また、上述した電子内視鏡システム1或いは1Bにおいて、例えば、電気メス等のノイズを発生する装置と併用して動作させる場合においては、外来ノイズの影響を受けにくい第1の信号伝送系を選択し、それ以外の場合には、水滴やゴミ等の付着物の影響を受けにくい第2の信号伝送系を選択しても良い。
【0041】
このように選択することにより、外来ノイズや水滴等の外部の環境に影響されないで、良好な映像信号を伝送することができるようにしても良い。また、信号伝送系を選択するために、例えば電子内視鏡2に手押しボタン等を設けて手動で信号伝送系を選択することができる構成にしても良い。
或いは、伝送状態を検出(監視)し、伝送状態が変化するような状況に応じて、電子内視鏡システム1或いは1Bが自動で信号伝送系を選択するようにしても良い。また、手動と自動との両方からユーザが選択できるようにしても良い。
なお、上述した各実施形態を部分的に組み合わせる等して構成される実施形態等も本発明に属する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
撮像部を備えた内視鏡から信号処理装置に撮像された映像信号を伝送する信号伝送系として2つの信号伝送系を採用し、かつ一方の信号伝送系若しくは一方の信号伝送系による映像信号を選択できるようにして使用環境等が変化し、伝送状態が変化した場合においても、信号処理装置が良好な映像信号が得られるようにしている。そして、内視鏡検査を円滑に行い易い環境を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態の電子内視鏡システムの概略の構成図。
【図2】第1の実施形態の電子内視鏡システムにおける信号伝送系に係る部分の概略の構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態の電子内視鏡システムにおける信号伝送の動作内容を示すフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施形態の電子内視鏡システムにおける信号伝送系に係る部分の概略の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0044】
1…電子内視鏡システム、2…電子内視鏡、3…ビデオプロセッサ、4…モニタ、17…撮像部、19…CCD、21…無線コネクタ部、24…映像信号処理回路、25…第1の信号送信部、26…第2の信号送信部、27…映像信号伝送部、28…クロック信号送信部、29…クロック信号受信部、31…システムコントローラ、32a…第1の変調回路、32b…第2の変調回路、33a…第1の送信電極パッド、33b…第1の発光部、34a…第1の受信電極パッド、34b…第1の受光部、35a…第1の復調回路、35b…第2の復調回路、36…映像信号受信部、37…第1の信号受信部、38…第2の信号受信部、39…第2の選択回路、40…伝送状態検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部を備えた内視鏡と、
前記撮像部からの出力に基づく映像信号を光を利用して無線で内視鏡外部の信号処理装置に伝送する第1の信号伝送系と、
前記映像信号を静電結合を利用して無線で前記信号処理装置に伝送する第2の信号伝送系と、
前記第1及び第2の信号伝送系のうちの一方の信号伝送系又は、該一方の信号伝送系により伝送される映像信号を選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
さらに、前記第1及び第2の信号伝送系における前記映像信号の伝送状態を検出する伝送状態検出手段を有し、
前記伝送状態検出手段によって検出された伝送状態に基づいて、前記第1及び第2の信号伝送系における一方の信号伝送系、又は該一方の信号伝送系により伝送される一方の映像信号を選択するように前記選択手段の選択を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記選択手段は、前記第1及び第2の信号伝送系における伝送状態が良好な方の信号伝送系、又は伝送状態が良好な方の信号伝送系により伝送される一方の映像信号を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記第1又は第2の信号伝送系のうちの一方の信号伝送系で映像信号を伝送している状況において、伝送状態が所定のレベル以下と判定した時、他方の信号伝送系の伝送方式に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−56240(P2009−56240A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228269(P2007−228269)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】