説明

内視鏡外科手術用鉗子

【課題】
従来のストレート形状鉗子では、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉するため、術者の作業性が低下する。従来の挿入部に内挿されるロッドに使用される材料は鉄製であり、かつ、その形状は棒状である。挿入部の形状はロッドの形状に依存するために、挿入部の形状を湾曲させることができないという問題がある。
【解決手段】
延長部側をストレート形状では無くすことによって、従来のストレート形状鉗子のように、手術の際に隣り合う鉗子同士が干渉することが無くなる。干渉しないため、術者の作業性が低下することが無く、干渉させないようにするために、鉗子挿入口を複数設ける必要も無くなる。その結果、患者の身体への負担が軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡による外科手術において、生体組織の処理を行う際に使用される内視鏡外科手術用鉗子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外科手術の分野においては、従来からの開腹手術や開胸手術に代わって、患者への負担軽減及び術後の早期回復という利点から、侵襲の少ない内視鏡を用いた外科手術が行われるようになってきている。この内視鏡を用いた外科手術においては、生体組織の剥離や把持等の処理の際に、腹腔内に挿入される挿入部を備え、この先端に組織の剥離や把持等を行う一対の顎部材が設けられ、基端には一対の顎部材の開閉操作を行う操作ハンドルを備えたハンドル部を備えた内視鏡外科手術用鉗子が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
内視鏡外科手術は全身麻酔をした後に、腹壁等を切開して孔を開け、その切開した孔にトロッカー(鉗子等を体内にスムーズに挿入するための複数の筒状の穴を有する器具)を挿入し、トロッカーを通して腹腔鏡、鉗子などを挿入して手術を行うものである。
【0004】
従来の内視鏡外科手術用鉗子の形状はストレート形状であったため、かかるストレート形状の鉗子では、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉する。かかる干渉を回避するため、異なる箇所から鉗子を挿入する必要が生じる。このため3箇所から4箇所程度の孔が必要とされていた。切開により複数の孔を患者の身体に開けることは、患者の身体への負担を少なくするという観点からは、好ましくないのであるが、従来の内視鏡下手術用鉗子の挿入部の形状はストレート形状であるため、隣り合う鉗子の操作部が干渉することにより、術者の作業性が低下するのを回避するためには、複数の孔を開けることはやむを得なかった。
【0005】
一方、ストレート形状の内視鏡外科手術用鉗子しか無いため、複数のストレート形状の鉗子を使用している。前記複数のストレート形状の鉗子をトロッカーに通して、1か所から複数の鉗子を挿入される手術方法による手術がなされている。作業性の観点からは、鉗子相互の干渉を回避するために3〜4箇所程度の孔が必要であるにもかかわらず、ストレート形状の鉗子しか無いため、手術時の操作性を無視して無理矢理ストレート鉗子を使用しているという現状もある。
【0006】
さらに、首の周辺等のような腹部以外の箇所での内視鏡外科手術用鉗子による外科手術も行われている。このような部位ではヒトの頭部が近くにあることにより、腹部周辺のようなスペースが無い。延長部側がストレート形状では無いことによって、従来のストレート形状鉗子のように、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉するため、内視鏡外科手術用鉗子を相互に干渉させないようにするために、ストレート形状では無い内視鏡外科手術用鉗子が望まれる。
【0007】
作業性を低下させないようにするためには、すなわち、隣り合う鉗子の操作部を干渉させないようにするためには、鉗子挿入口を複数設ける必要があったのである。かかる挿入口は患者にとっては傷口となり、縫合箇所が増えることとなり、患者の身体への負担がその分大きくなることであり望ましいことではない。
【0008】
そこで、鉗子挿入口が1ヶ所であっても、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉しないようにするために、従来のストレート形状鉗子とは形状の異なる鉗子、例えば鉗子のガイドパイプ部が湾曲しているような内視鏡外科手術用鉗子が必要とされる。本明細書において湾曲とは弓なりに曲がっている部分を含んでいるということである。
【0009】
ところが従来のガイドパイプに内挿される、操作ハンドル部から駆動部への伝達機構であるロッドに使用される材料は鉄製であり、かつ、その形状はストレートな棒状である。ガイドパイプの形状はロッドの形状及び材質に依存するために、ガイドパイプ部の形状をフレキシブルに湾曲させることができないという問題点があった。かかる問題点について詳細に説明すると、従来の鉄製ロッドでは、湾曲したパイプ内において、回転させることができないだけではなく、往復させることもできない。すなわち、ガイドパイプ内で、回転運動と往復運動が出来るような柔軟性が無かった。かかる問題点により鉗子のガイドパイプ部が湾曲している内視鏡外科手術用鉗子は製造することができなかった。
【0010】
第2の問題として、手術中にガイドパイプに力が加わることにより、ガイドパイプの操作部側の基端が曲がった場合、基端ではわずかな角度で曲がっていたとしても、挿入部の先端では、回転させた結果、大きな位置ずれを生ずるような曲がりとなる。従来の鉗子はガイドパイプ部全体が回転する機構であったため、手術中にガイドパイプ部を回転させた場合、かかる回転に伴い、ガイドパイプ部の先端側では半径の大きな円を描くように動くため位置ずれが生じる。すなわち作業中に、ガイドパイプ部を回転させた場合にそれに応じてガイドパイプ部の先端側が円を描くように位置ズレが生じてしまうことは操作性の観点及び安全確実性の観点から問題となる。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、隣り合う鉗子同士が干渉しないため、術者の操作性が低下することが無い、内視鏡下手術用鉗子を提供することにある。さらに、作業中に駆動部を回転させた場合にも、位置ズレが生じることの無い内視鏡下手術用鉗子を提供することにある。さらに、ガイドパイプが途中で湾曲していたとしても、ハンドルと先端の位置関係が、従来のストレート鉗子と同様、同じ方向を向いているため、手術時の操作性及び取り扱いが容易である内視鏡外科手術用鉗子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、トロッカーよりも先端側に位置し体腔内に挿入される挿入部と、トロッカーよりも回転ハンドル側にある延長部とからなるガイドパイプ部と、前記ガイドパイプ部に内挿されるとともに、基端が前記開閉ハンドルに接続され、前記開閉ハンドルの操作量に応じて軸方向に移動する駆動伝達部材と、前記ガイドパイプ部の先端に開閉可能に軸支されており、生体組織を剥離及び把持するための第一顎部材及び第二顎部材と、前記駆動伝達部の移動に伴って前記第一顎部材と前記第二顎部材とをそれぞれ開閉駆動させる第一開閉リンクと第二開閉リンクとからなる駆動部と、前記ガイドパイプ部の基端に配設され、固定ハンドルと開閉ハンドルと、前記駆動伝達部材と連動して前記第一顎部材及び第二顎部材を軸方向に回転させるための回転操作部材とからなる操作部とを備える内視鏡外科手術用鉗子であって、
前記ガイドパイプ部の延長部がストレート形状で無いことを特徴とする内視鏡外科手術用鉗子とした。
【0013】
延長部側がストレート形状で無いことにより、従来のストレート形状鉗子のように、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉することが無くなる。鉗子が相互に干渉しないため、術者の作業性が低下することが無くなる。さらに鉗子を相互に干渉させないようにするために、鉗子挿入口を複数設ける必要も無くなる。その結果、患者の身体への負担が軽減される。
【0014】
さらに、延長部側がストレート形状では無いことによって、首周辺のようなスペースの無い部位においても従来のストレート形状鉗子のように、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉することを無くすことができる。その結果、従来、首周辺のようなスペースの無い部位では困難であった内視鏡外科手術用鉗子による手術を可能にすることができる。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、前記ガイドパイプ部の先端から前記パイプに沿って操作部側の方向に延長した直線と、ガイドパイプ部の基部から前記パイプに沿って先端側にひいた直線がほぼ平行となること、すなわち、挿入部の向きが、延長部の操作部側の向きと同じになるように挿入部が湾曲していることを特徴とする内視鏡外科手術用鉗子とした。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、前記駆動伝達部と前記回転操作部材が一体に又は連結されており、前記回転操作部材を回転させることにより、駆動部のみが回転することを特徴とする内視鏡外科手術用鉗子とした。
【0017】
駆動部のみ回転する機構を現状のストレート形状鉗子に採用することにより、鉗子シャフトとトロッカーとの接触を無くすことができる。また駆動部のみの回転であるため、手術中に力が加わることでガイドパイプ部の基端が多少曲がったとしても駆動部の回転により生ずる振れを小さくすることができる。その結果、繊細な操作も可能となる。今後、脳外科や心臓外科等の手術で使用される場合には、さらに繊細な操作が必要となるため、繊細な操作が可能となるということで利点がある。
【0018】
ここで駆動伝達部と回転操作部材は一体となっている。駆動伝達部と開閉ハンドルも連結されているが、図5に示すように、回転操作部材の回転により回転しない構造になっている。かかる構造により駆動伝達部材と連結された開閉ハンドルは回転しないようになっているのである。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明は、前記駆動伝達部が圧縮バネ又はフレキシブルシャフトであることを特徴とする内視鏡外科手術用鉗子とした。
【0020】
本明細書中で圧縮バネとは、圧縮荷重を受け、主にねじり弾性エネルギーを蓄えるコイルばねのことである。このばねの特徴は、コンパクトであり,ばねにおいてはエネルギー吸収効率が高いこと,摩擦が起こらない等がある。一般的な用途としては、自動車用懸架ばね,内燃偶関の弁ばね,クラッチ用ばね,計測機器用ばね、安全弁ばね等がある。
【0021】
また本明細書中においてフレキシブルシャフトとは、可撓自在な回転軸で、小動力、高回転を任意の方向に向きを変えて自由に伝達できるシャフトのことである。特殊硬鋼線を右巻き、左巻き交互に巻いた構成で、強度と耐久性を有し、トルク伝達に強く、摩擦に対する耐久性も有するものである。一般的な用途としては、フレキシブルグラインダー、スケーリングマチーン等がある。
【0022】
本発明により、開閉ハンドルと駆動伝達部が一体化され、剛性感、耐久性が増すとともに、操作部と駆動部の間、すなわちガイドパイプ部が複雑な形状であっても、スムーズな操作が可能となる。フレキシブルシャフトのような可撓性に富み、湾曲が容易な性質を有する素材を伝達機構である駆動伝達部に採用することにより、湾曲形状の内視鏡外科手術用鉗子の製造が可能となった。
【特許文献1】特開平2008−307270号公報
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来のストレート形状鉗子のように、手術の際に隣り合う鉗子の操作部の干渉により、術者の作業性が低下することが無い。すなわちガイドパイプ部の延長部を湾曲させることによって、手術の際に隣り合う鉗子同士が干渉することが無くなる。干渉しないため、術者の作業性が低下することが無く、干渉させないようにするために、鉗子挿入口を複数設ける必要も無くなる。その結果、患者の身体への負担を軽減することができる。
【0024】
さらに、首周辺のようなスペースの無い部位においても従来のストレート形状鉗子のように、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉することが無くすことができる。その結果、従来はスペースの無い部位では困難であった内視鏡鉗子による手術を可能にすることができる。
【0025】
さらに、ガイドパイプ部は回転せず、回転操作部材を回転させることで駆動シャフトが回転することにより駆動部のみが回転する機構となっている。このような機構のため、手術中にガイドパイプの基端側が曲がったとしても、駆動部を回転させた場合、かかる回転によりガイドパイプ部の先端側が円を描くように位置ズレが無くなる。もしくは、生ずる振れをより小さくすることができる。その結果、繊細な操作も可能となる。今後、脳外科や心臓外科等の手術で使用される場合には、さらに繊細な操作が必要となるため、繊細な操作が可能となるということで利点がある。また、先端部のみ回転する機構を現状のストレート形状鉗子に採用することにより、ガイドパイプ部とトロッカーとの摩擦を無くすことができる。
【0026】
さらに付け加えると、開閉ハンドルと駆動伝達部が一体化され、剛性感、耐久性が増すだけでなく、操作部と駆動部との間が複雑な経路であっても、スムーズな操作を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】湾曲鉗子の全体の構造を示した側面図である。
【図2】フレキシブルシャフト仕様の湾曲鉗子の先端構造図である。
【図3】湾曲鉗子の全体図である。(ハッチング部が連結した構造であることを示す)
【図4】トロッカーに挿入した湾曲鉗子の全体図である。
【図5】開閉ハンドル部と駆動シャフトの接合部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
本発明に係る湾曲内視鏡下手術用鉗子は、ガイドパイプ部と操作部と駆動部とからなる。ここでガイドパイプ部は挿入部と延長部と内挿された駆動伝達部とからなる。挿入部と延長部の区分けは、実際の手術時にトロッカーを通して手術を行うのであるが、挿入部はトロッカーよりも先の部分、すなわち患者の体内に挿入する部分を指し、延長部はトロッカーよりも操作部側の部分、すなわち患者の体外にある部分を指す。
【0030】
操作部はハンドル部と回転操作部材とからなる。ここでハンドル部は固定ハンドルと開閉ハンドルからなる。さらに、駆動部は第一顎部材及び第二顎部材と、プッシャーハウジングとプッシャーシャフト等を備える。
【0031】
ガイドパイプ部は、二重構造であって、細長棒状の湾曲したガイドパイプとガイドパイプの内部に挿入した駆動シャフトからなっている。ガイドパイプ部の挿入部は切開創からトロッカーを通して、腹腔内に挿入される部分である。挿入部の長さや外径等は、特に限定されるものではなく、内視鏡鉗子の用途に応じて設定することができる。また、挿入部の基端には、後述する操作部が配設される。
【0032】
ここで、駆動シャフトと回転操作ダイヤルと駆動部は一体となるように連結されているが、回転操作ダイヤルとガイドパイプ部のガイドパイプは連結されていない。これにより回転操作ダイヤルを回転させた際、ガイドパイプのガイドパイプは回転せず駆動シャフトのみが回転する。かかる構成により、駆動シャフトに接続された第一顎部材及び第二顎部材のみが、すなわち先端部のみが回転する機構となっている。
【0033】
ガイドパイプ部の延長部側がストレート形状では無いことによって、従来のストレート形状鉗子のように、手術の際に隣り合う鉗子の操作部が干渉することが無くなる。干渉しないため、術者の作業性が低下することが無く、干渉させないようにするために、鉗子挿入口を複数設ける必要も無くなる。その結果、患者の身体への負担が軽減される。
【0034】
回転操作ダイヤルを回すことにより、駆動部のみが回転し、駆動部以外の部分は回転しない構造になっている湾曲鉗子としたことにより、先端部のみが回転するため、先端部の回転により生ずる振れを小さくすることができる。その結果、繊細な操作も可能となる。今後、脳外科や心臓外科等の手術で使用される場合には、さらに繊細な操作が必要となるため、繊細な操作が可能となるということで利点がある。
【0035】
第一顎部材及び第二顎部材は、駆動シャフトと連結することで、駆動部に開閉可能に軸支される。第一顎部材及び第二顎部材は、操作ハンドルの操作に伴って拡開・閉塞し、腹腔内での生体組織の剥離や把持といった各種処置を行うための部分である。第一顎部材及び第二顎部材の形状や大きさ等は特に限定されるものではなく、例えば、剥離、把持、持針、剪刀等の内視鏡下手術用鉗子の用途に応じて設定することができる。
【0036】
駆動シャフトは、開閉のための開閉ハンドルから駆動部の第一顎部材及び第二顎部材への伝達部材としてガイドパイプ部の軸方向に自在に移動できるように、ガイドパイプ部に内挿される。駆動シャフトの基端は、操作部に設けられた操作ハンドルに接続され、先端には、第一開閉リンク及び第二開閉リンクを介して第一顎部材及び第二顎部材が接続される。
【0037】
駆動シャフトと開閉ハンドルは連結されている。ここで駆動シャフトの回転により、開閉ハンドルは回転しないような構造となっている(図5)。開閉ハンドルの軸方向の動きは駆動シャフトに伝達することができる。
【0038】
駆動伝達部に用いる素材の特徴としては、回転、往復運動が共に可能で、かつ柔軟性のあるものであれば良い。考えられうる素材として、例えば、金属製密着バネ、金属製フレキシブルシャフト、金属製フレキシブルチューブの他、シリコン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ベークライト(フェノール樹脂の商品名)等からなる高分子シャフト、高分子チューブ等がある。その他にも、ワイヤやチェーン、エンジニアリングプラスチック、カーボン、テフロン(登録商標)などでも良い。
【0039】
ハンドル部と回転操作ダイヤルは、内視鏡外科手術用鉗子を使用する際の操作部として機能するものである。このハンドル部には、第一顎部材及び第二顎部材の開閉操作を担う固定ハンドルと開閉ハンドルとが配設されている。開閉ハンドルには、駆動シャフトの基端が接続されており、この操作ハンドルの操作に伴って、駆動シャフト部材を軸方向に移動させることができる。操作部及び操作ハンドル、固定ハンドルの形状、機構等は特に限定されるものではなく、既存の内視鏡鉗子の操作部及び操作ハンドル、固定ハンドルの構成を採用することができる。
【0040】
尚、上述した駆動シャフトと開閉ハンドルとは、一体に形成してもよいし、着脱自在に形成してもよい。さらに、上述したガイドパイプ部と固定ハンドル部とは、一体に形成してもよいし、着脱自在に形成してもよい。また、ガイドパイプ部とハンドル部との間には、挿入部をハンドル部に対して回動自在にする回動手段が設けられる。
【0041】
さらに、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子を構成する各部材は、耐腐食性、耐薬品性を備えるとともに、加熱滅菌に耐え得るだけの温度耐久性を備える材質から形成することが好ましい。
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例】
【0042】
図1には、実施例に係る内視鏡外科手術用鉗子が示されている。ガイドパイプ14は、中空の金属性パイプである。ガイドパイプ部には駆動シャフト15(図2に記載)が内挿されており、駆動シャフト15は、ガイドパイプ部の軸方向に沿って自在に移動できるように配設されており、その基端は操作部の開閉ハンドル29に接続されている。ガイドパイプ部の先には、駆動シャフト15と連結した第一顎部材1及び第二顎部材2を含む駆動部が配設されている。開閉ハンドル29は、延長部の軸方向に沿って前後方向に回動自在に配設されており、この開閉ハンドル29を回動させることによって、駆動シャフトを移動させることができる。
【0043】
図2には、駆動部と挿入部の先端の拡大図(フレキシブルシャフト仕様)が示されている。駆動部の先端には、第一顎部材1と第二顎部材2とが、ヒンジピン3、とリングピン4、5により開閉自在に軸支されている。そして、第一顎部材1及び第二顎部材2と、駆動シャフトの先端との間には、第一開閉リンク6及び第二開閉リンク7が配設されている。第一開閉リンク6の一端及び第二開閉リンク7の一端は、それぞれ駆動シャフトの先端にリンクピンによって軸支されている。第一開閉リンク6の他端は、リンクピン8によって第一顎部材1の基端に軸支され、第二開閉リンク7の他端は、リンクピン9によって第二顎部材2の基端に軸支されている。
【0044】
開閉ハンドル29と回転ダイヤル26は、内視鏡外科手術用鉗子を使用する際の操作部として機能するものである。このハンドル部には、第一顎部材1及び第二顎部材2の開閉操作を担う固定ハンドルと開閉ハンドル29とが配設されている。開閉ハンドル29には、駆動シャフトの基端が接続されており、この開閉ハンドル29の操作に伴って、駆動シャフト部材を軸方向に移動させることができる。操作部及び開閉ハンドル、固定ハンドルの形状、機構等は特に限定されるものではなく、既存の内視鏡鉗子の操作部及び操作ハンドル、固定ハンドルの構成を採用することができる。
【0045】
図3は本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の全体図である。内部構造及び伝達機構が明確になるように、ハッチングによる部分とハッチングがなされない部分と区別できるように記載した。すなわち、ハッチングされた駆動部と駆動シャフトと開閉ハンドルが連結されており、かかる機構により、術者の操作部での開閉ハンドルと回転操作部材の動きを駆動部に伝達しているのである。
【0046】
伝達機構について、さらに述べると、回転ダイヤル26を回すことにより、駆動シャフト15と連結する駆動部のみが回転し、従来型の内視鏡外科手術用鉗子のように回転ダイヤルとガイドパイプは連結していないため、ガイドパイプ部は回転しない構造になっている。さらに駆動シャフトと開閉ハンドルとは図5に示すように、駆動シャフトの回転に対しては、カラ廻りして回転が伝達されないが、駆動シャフトの前後移動に対しては移動が伝達されるような構造となっている。
【0047】
図4に本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子をトロッカーに挿入した全体図を示した。
本明細書中では、ガイドパイプ部のトロッカーより先の部分が挿入部であり基端側が延長部であると定義する。
【符号の説明】
【0048】
1 第一鰐部材
2 第二鰐部材
3 ヒンジピンA
4 リンクピンA
5 リンクピンB
6 第一開閉リンク
7 第二開閉リンク
8 リンクピンC
9 リンクピンD
10 プッシャーハウジング
11 プッシャーシャフト
12 回転ハウジングA
13 回転ハウジングB
14 ガイドパイプ
15 駆動シャフト
16 ジョイントA
17 ジョイントB
18 洗浄ポート
19 圧縮バネ
20 洗浄ポートガイド
21 ポートガイドピンA
22 ポートガイドピンB
23 洗浄ポートキャップ
24 ブシュ
25 回転軸
26 回転ダイヤル
27 本体A
28 本体B
29 開閉ハンドル
30 ヒンジピンB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロッカーよりも先端側に位置し体腔内に挿入される挿入部と、トロッカーよりも回転ハンドル側にある延長部とからなるガイドパイプ部と
前記ガイドパイプ部に内挿されるとともに、基端が前記開閉ハンドルに接続され、前記開閉ハンドルの操作量に応じて軸方向に移動する駆動伝達部材と、
前記ガイドパイプ部の先端に開閉可能に軸支されており、生体組織を剥離及び把持するための第一顎部材及び第二顎部材と、前記駆動伝達部の移動に伴って前記第一顎部材と前記第二顎部材とをそれぞれ開閉駆動させる第一開閉リンクと第二開閉リンクとからなる駆動部と、
前記ガイドパイプ部の基端に配設され、固定ハンドルと開閉ハンドルと、前記駆動伝達部材と連動して前記第一顎部材及び第二顎部材を軸方向に回転させるための回転操作部材とからなる操作部とを備える内視鏡外科手術用鉗子であって、
前記ガイドパイプ部の延長部がストレート形状で無いことを特徴とする内視鏡外科手術用鉗子。
【請求項2】
前記ガイドパイプ部の延長部が湾曲していることを特徴とする請求項1記載の内視鏡外科手術用鉗子。
【請求項3】
前記ガイドパイプ部の先端から前記ガイドパイプに沿って操作部側の方向に延長した直線と、ガイドパイプ部の基部から前記ガイドパイプに沿って先端側にひいた直線が平行となること、すなわち、挿入部の向きが、延長部のハンドル部側の向きと同じになるように挿入部が湾曲していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡外科手術用鉗子。
【請求項4】
前記駆動伝達部材と前記回転操作部材が一体に又は連結されており、前記回転操作部材を回転させることにより、前記駆動部のみが回転することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の内視鏡外科手術用鉗子。
【請求項5】
前記駆動伝達部材が圧縮バネ又はフレキシブルシャフトであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の内視鏡外科手術用鉗子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−239975(P2011−239975A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115107(P2010−115107)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(390038209)足立工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】