内視鏡用投光ユニット
【課題】青色光(励起光)及び蛍光を被検体に照射することによる色むらの発生を防ぐとともに、蛍光体での蛍光の発光効率の低下を抑制する。
【解決手段】中心波長445nmの第1青色レーザ光を、ライトガイド24aを介して蛍光体50に入射させる。蛍光体50では、入射した第1青色レーザ光のうちの一部が蛍光物質に吸収されて蛍光を発し、残りは蛍光物質に吸収されずにそのまま透過する。蛍光体50を出射した蛍光及び第1青色レーザ光は、広がり角拡大部51及び照明窓52を介して、被検体に照射される。広がり角拡大部51は、蛍光及び第1青色レーザ光をフィラー51aで散乱することにより、それぞれの光の広がり角を拡大する。この広がり角拡大部51には、屈折率が蛍光体50と照明窓52の屈折率の二乗平均値である有機材料が含有されているため、蛍光体50の出射面または照明窓52の入射面での蛍光及び第1青色レーザ光の反射が防止される。
【解決手段】中心波長445nmの第1青色レーザ光を、ライトガイド24aを介して蛍光体50に入射させる。蛍光体50では、入射した第1青色レーザ光のうちの一部が蛍光物質に吸収されて蛍光を発し、残りは蛍光物質に吸収されずにそのまま透過する。蛍光体50を出射した蛍光及び第1青色レーザ光は、広がり角拡大部51及び照明窓52を介して、被検体に照射される。広がり角拡大部51は、蛍光及び第1青色レーザ光をフィラー51aで散乱することにより、それぞれの光の広がり角を拡大する。この広がり角拡大部51には、屈折率が蛍光体50と照明窓52の屈折率の二乗平均値である有機材料が含有されているため、蛍光体50の出射面または照明窓52の入射面での蛍光及び第1青色レーザ光の反射が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の先端部に設けられ、被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用投光ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、内視鏡を用いた被検体内の診断及び治療が広く行われている。内視鏡は、被検体に挿入される挿入部を備えており、この挿入部の先端部に設けられた照明窓から被検体に向けて照明光が照射される。そして、照明光で照明された被検体を、挿入部の先端部に設けたCCDなどの撮像素子で撮像し、この撮像により得られた撮像信号に基づいて、モニタに内視鏡画像を表示する。
【0003】
被検体内の照明には、キセノンランプやハロゲンランプなどの白色光が用いられることが多いが、キセノンランプ等は、比較的大型であり、また消費電力も大きいといった問題がある。これに対して、特許文献1及び2では、青色LED(Light Emitting Diode)の青色光とこの青色光で蛍光体を励起することで発光する蛍光との合波によって白色光を生成している。このように、青色LED及び蛍光体を使って白色光を生成することで、キセノンランプ等に対して、小型化と省電力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−61685号公報
【特許文献2】特開2006−173498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、青色LED及び蛍光体を用いて白色光を生成した場合には、小型化と省電力化を図ることができる一方、蛍光体の光拡散特性は波長依存性を有しているため、蛍光体から出射する励起光である青色光の広がり角と、その青色光により励起される蛍光の広がり角との間に差が生じることがある。例えば、中心波長405nmの青色レーザ光と中心波長445nmの青色レーザ光で蛍光体から蛍光を発光させた場合には、図11に示すように、蛍光の広がり角が一番広く、中心波長405nmの青色レーザ光及び中心波長445nmの青色レーザ光の広がり角は蛍光よりも狭くなっている。このように広がり角に差がある状態で青色光及び蛍光を被検体に照射した場合には、被検体上で色むらが生じてしまう。色むらが生じた状態で撮像した画像では、正確な診断を行うことができないことがある。
【0006】
色むらの発生を防ぐ方法の一つとして、直進的に出射する青色光を散乱させるフィラーを蛍光体に混入させることが考えられる(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、一般的には、蛍光体へのフィラーの混入は、励起光である青色光を拡散する機能と、その青色光により蛍光体で励起される蛍光を放射する機能とを分離しにくくなるため、完全に色むらを無くすことは困難である。また、フィラーは、青色光を四方八方に散乱させるため、蛍光体内だけで散乱し、蛍光体から出射しない青色光が増えることになる。このような青色光の増加は、蛍光体での発光効率を低下させる要因となるとともに、蛍光体内部や蛍光体の出射端が発熱する要因となる。
【0007】
また、一般的には、蛍光体の長期安定性を確保するために、蛍光体とその蛍光体からの青色光及び蛍光を被検体に向けて出射する照明窓とを密封しているが、密封時には、蛍光体と照射窓との間に若干の隙間(空気層ともいう)が形成される。この空気層があることで、一部の青色光や蛍光は、照明窓の出射面から出射せず、照明窓の入射面で反射したり、また蛍光体の出射面で反射することがある。このような照明窓や蛍光体での反射は、蛍光の発光効率を低下させる要因となってしまう。
【0008】
この問題に対して、照明窓の入射面には反射防止膜(ARコート)を導入することで、照明窓の入射面での反射を防ぐことができる。しかしながら、蛍光体は製造工程上、出射面の平面性を確保することができないため、照明窓のような反射防止膜を導入することができない。そのため、蛍光体においては反射防止膜を使わずに、青色光や蛍光の反射を防ぐことが必要となる。
【0009】
本発明は、青色光とこの青色光で蛍光体から励起発光させた蛍光とを合波した白色光を被検体に照射する際に、異なる波長の青色光及び蛍光を被検体に照射することによる色むらの発生を防ぐとともに、蛍光体での蛍光の発光効率の低下を抑制することができる内視鏡用投光ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、内視鏡の先端部に設けられ、被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用投光ユニットにおいて、所定波長の光の一部を吸収して波長変換することにより蛍光を生成し、残りの光を透過することにより、前記所定波長の光と前記蛍光を含む照明光を出射する波長変換部材と、前記波長変換部材を出射した照明光を散乱させて前記照明光の広がり角を拡大する広がり角拡大部とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記広がり角拡大部は、透明な基材中に、前記照明光を散乱させる散乱部材を混入して形成されることが好ましい。前記波長変換部材と前記広がり角拡大部は別体で構成されていることが好ましい。前記波長変換部材には前記散乱部材は混入されていないことが好ましい。記波長変換部材と前記広がり角拡大部とは密着していることが好ましい。
【0012】
前記被検体に向けて照明光を照射する照明窓を有し、前記照明窓は、前記広がり角拡大部とは別体で構成され、前記照明光の出射方向に沿って、前記蛍光体、前記広がり角拡大部、前記照明窓の順に配列されていることが好ましい。前記照明窓と前記広がり角拡大部は密着していることが好ましい。
【0013】
前記広がり角拡大部の前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の中間の値であることが好ましい。前記基材の屈折率は、1.40〜2.0の範囲内であることが好ましい。前記波長変換部材の屈折率は、1.46〜2.0の範囲内であり、前記照明窓の屈折率は、1.40〜1.9の範囲内であり、前記基材の屈折率は、前記波長変換部材及び前記照明窓のそれぞれの屈折率の値の組み合わせに応じて、前記範囲の中から選択されることが好ましい。前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の二乗平均値であることが好ましい。
【0014】
前記基材は、例えばエポキシなどの有機材料であることが好ましい。前記基材は、例えばシリコンなどの無機材料であることが好ましい。
【0015】
前記被検体に向けて前記照明光を照射する照明窓を有し、前記照明窓は、前記広がり角拡大部と一体で構成されていることが好ましい。前記波長変換部材と前記照明窓は、互いに密着させた状態でアニール処理されていることが好ましい。前記アニール処理は70〜90℃、10〜30Hの環境下で行われることが好ましい。
【0016】
前記波長変換部材を保持するフェルールと、前記広がり角拡大部とを保持する金属製のスリーブを備えることが好ましい。前記波長変換部材及び前記広がり角拡大部は略円柱形状を有しており、前記広がり角拡大部の径は前記波長変換部材の径よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、波長変換部材を出射した後の照明光を散乱させることによって、照明光の広がり角を拡大しているので、波長変換部材内で照明光を散乱させた場合と比較して、照明光の色むらの発生をより確実に防止することができるとともに、波長変換部材での発光効率の低下を更に抑制することができる。
【0018】
また、広がり角拡大部と照明窓とを別体で構成した場合には、広がり角拡大部に、波長変換部材の屈折率と照明窓の屈折率の間の中間屈折率を有する基材を含有させることで、照明光は波長変換部材の出射面や照明窓の入射面などでの反射が防止される。これにより、波長変換部材や照明窓での照明光の損失を抑えることができる。また、波長変換部材と広がり角拡大部を密着させるとともに、広がり角拡大部と照明窓とも密着させることで、波長変換部材の出射面など各境界面での反射が防止される。これによっても、照明光の損失を抑えることができる。
【0019】
また、広がり角拡大部と照明窓とを一体で構成した場合には、波長変換部材と照明窓を密着させることで、照明光は波長変換部材の出射面や照明窓の入射面などでの反射が防止される。これにより、照明光の損失を抑えることができる。
【0020】
また、広がり角拡大部は金属製のスリーブで保持されていることから、そのスリーブに、広がり角拡大部内での照明光の散乱による発熱を逃がすことができる。また、広がり角拡大部の径を波長変換部材の径よりも大きくすることで、波長変換部材で生じた発熱を外部に逃がす効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の内視鏡システムに示す図である。
【図2】第1実施形態の電子内視鏡の先端部の断面を示す図である。
【図3】第1実施形態の電子内視鏡の先端部の先端面を示す図である。
【図4】蛍光体入射時の第1青色レーザ光の広がり角と光強度の関係を表すとともに、広がり角拡大部を出射した後の第1青色レーザ光及び蛍光の広がり角と光強度の関係を表す図である。
【図5A】励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合の色ムラ防止効果について説明するための図である。
【図5B】励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合の色ムラ防止効果について説明するための図である。
【図6A】励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合の発光効率の低下抑制効果について説明するための図である。
【図6B】励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合の発光効率の低下抑制効果について説明するための図である。
【図7】第1実施形態の第1投光ユニットの製造方法を説明するための図である。
【図8】第2実施形態の電子内視鏡の先端部の断面を示す図である。
【図9】第2実施形態の第1投光ユニットの製造方法を説明するための図である。
【図10】蛍光体入射時の第1及び第2青色レーザ光の広がり角と光強度の関係を表すとともに、広がり角拡大部を出射した後の蛍光、第1及び第2青色レーザ光の広がり角と光強度の関係を表す図である。
【図11】フィラーなどの散乱部材を使用しない場合における蛍光及び青色レーザ光(405nm、445nm)の広がり角と光強度の関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム2は、被検体を撮影する電子内視鏡10と、内視鏡画像を生成するプロセッサ装置12と、このプロセッサ装置12内に設けられ、被検体を照明する照明光を供給する光源装置13と、内視鏡画像を表示するモニタ14と、被検体内に送り込む水を貯留する送水タンク16とを備えている。
【0023】
電子内視鏡10は、患者の体腔内に挿入される挿入部20と、挿入部20の基端部分に連設され、医師や技師などの術者が手元で操作を行なう操作部22と、操作部22から延びるユニバーサルコード24とからなる。挿入部20は、先端から順に、先端部26、湾曲部27、及び可撓管部28で構成されている。先端部26は、硬質な樹脂材料で形成されている。可撓管部28は、細径かつ長尺な管状に形成されるとともに、可撓性を有しており、操作部22と湾曲部27とを接続する。
【0024】
湾曲部27は、操作部22に設けられた上下用操作ノブ30及び左右用操作ノブ31の回転操作に応じて上下左右に湾曲するように構成されている。上下用操作ノブ30を回転操作すると、湾曲部27が上下方向に湾曲し、左右用操作ノブ31を回転操作すると、湾曲部27が左右方向に湾曲する。
【0025】
ユニバーサルコード24には、プロセッサ装置12から供給される光及び空気の取り込みと、電源や各種の制御信号の伝送に用いられるコネクタ36とが設けられている。電子内視鏡10は、コネクタ36を介してプロセッサ装置12に着脱自在に接続される。
【0026】
光源装置13は、中心波長445nmの第1青色レーザ光を発する第1レーザ光源13aを備えている。第1レーザ光源13aから発せられる第1青色レーザ光は、ユニバーサルコード24内のライドガイド24a,24bを介して、電子内視鏡の先端部26まで導光される。導光された第1青色レーザ光は、一部が先端部26に設けられた蛍光体50で吸収されることにより緑色〜黄色の蛍光を励起発光させるとともに、蛍光体50(波長変換部材)で吸収されなかった光はそのまま蛍光体50を透過する。これにより、先端部26からは、第1青色レーザ光と蛍光が合波した白色光(照明光)が被検体に照射される。被検体からの戻り光は、被検体の像として電子内視鏡10内の撮像素子42(図3参照)により撮像される。なお、ライトガイド24a,24bは、光ファイバなどの導光部材で構成される。
【0027】
プロセッサ装置12は、電子内視鏡10の撮像により得られる撮像信号を、ユニバーサルコード24内の信号ケーブル24cを介して受信する。プロセッサ装置12では、受信した撮像信号に各種画像処理を施すことによって、画像データを生成する。この生成された画像データに基づいて、モニタ14に被検体の内視鏡画像が表示される。
【0028】
図2に示すように、電子内視鏡の先端部26には、被検体に向けて照明光を照射するための2灯の第1及び第2投光ユニット38,39と、観察窓40及び撮像レンズ41を介して受光した被検体の像を、CCDなどの撮像素子42で撮像する撮像ユニット43が設けられている。
【0029】
図3に示すように、第1及び第2投光ユニット38,39は、先端部26の先端面26aにおいて、撮像ユニット43に関して左右対称の位置に設けられている。なお、先端部26には、第1及び第2投光ユニット38,39、撮像ユニット43の他、スネアなどの処置具を露呈させる処置具出口46や観察窓40に向けて洗浄用の空気や水を吐出する送気送水ノズル48が設けられている。
【0030】
第1投光ユニットは、ライトガイド24aからの第1青色レーザ光で蛍光体50を励起させて蛍光体50から白色光を発するとともに、発せられた白色光の広がり角を広がり角拡大部51で拡げる。広がり角拡大部51を経た白色光は、石英ガラスやサファイヤガラスなどのガラス部材のうち生体適合性を有するもの(例えば「K-LaSFn17」(「http://www.sumita-opt.co.jp/data/glassdata.pdf」の120ページ参照))で形成された照明窓52を介して、被検体に照射される。なお、蛍光体はYAGやBAM(BaMgAl10O17)であることが好ましい。
【0031】
この第1及び第2投光ユニット38,39においては、照明窓52と広がり角拡大部51との間、及び広がり角拡大部51と蛍光体50との間は、それぞれ隙間無く接触している(密着している)ため、それらの間に空気層は存在しない。ここで、照明窓52と広がり角拡大部51との間、及び広がり角拡大部51と蛍光体50との間に空気層を挟んだ場合は、空気層を挟まない場合と比べて、光入射・反射面などの境界面の数を減らすことができる(空気層を挟んだ場合は境界面の数が「5」であるのに対し、空気層を挟まない場合は境界面の数が「3」となる)。そのため、各部材間を密着させて空気層を無くすことにより、境界面の数を減らすことができる。これにより、境界面での反射を防止することができるため、高い光強度を保持した状態で、第1青色レーザ光及び蛍光を被検体に照射することができる。
【0032】
蛍光体50は、一定の外径D1を持つ略円柱形状を有している。この蛍光体50には蛍光物質が混入されており、第1青色レーザ光のうち、一部がその蛍光物質に吸収されて緑色〜赤色の蛍光を発する一方、蛍光物質に吸収されなかった光は蛍光体50をそのまま透過する。このように蛍光物質から発せられた蛍光と第1青色レーザ光とが合波されて、蛍光体50から白色光が発せられる。
【0033】
広がり角拡大部51は、透明材料からなる基材51b(図4参照)に、蛍光及び第1青色レーザ光を散乱させる光散乱部材であるフィラー51aを混入させて形成した透光性部材である。基材51bとしては、例えば、樹脂などの有機材料が使用され、その屈折率が、蛍光体50の屈折率と照明窓52の屈折率の間の材料が使用される。
【0034】
この広がり角拡大部51は略円柱形状をしており、その外径D2は蛍光体50の外径D1よりも大きくなっている。そのため、蛍光体50から出射した光のうち、広がり角拡大部51に入射しない漏れ光が減るので、光損失を低減できる。また、蛍光体50の出射面全体が広がり角拡大部51と接触しているため、蛍光体50での発熱が広がり角拡大部51に伝達される。なお、蛍光体50の外径D1は例えば0.8mmであり、広がり角拡大部51の外径D2は例えば1.1mmであることが好ましい。
【0035】
図4に示すように、蛍光体50に入射する第1青色レーザ光は、光強度が大きい部分の広がり角は比較的狭くなっている。これに伴って、第1青色レーザ光によって蛍光体50で励起される蛍光の広がり角も狭くなる。そこで、蛍光体50から出射した第1青色レーザ光及び蛍光をフィラー51aで散乱させることによって、それぞれの光の広がり角を拡げる。このように第1青色レーザ光及び蛍光の両方の広がり角を拡げることで、それぞれの光が重なり合わない部分が無くなるため、色むらの発生を防止できる。
【0036】
なお、フィラーとしては、シリカ、石英などが好ましいが、光拡散機能を有するものであればこれに限定されない。また、有機材料としてはエポキシなどの樹脂であることが好ましいが、短波長の第1青色レーザ光の照射による劣化を考慮する場合には、有機材料に代えて、シリコンなどの無機材料を使用してもよい。
【0037】
蛍光体50には、広がり角拡大部51が含有するフィラー51aは混入されていない。このように、フィラー51aを、蛍光体50に混入させるのではなく、蛍光体50とは別体の広がり角拡大部51に混入することによって、励起光である第1青色レーザ光を拡散する励起光拡散機能と、その第1青色レーザ光により蛍光体50で励起される蛍光を放射する蛍光放射機能とを分離することができる。したがって、以下示すような理由から、フィラー51aを蛍光体50に混入させる場合(励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合)と比較して、色むらを防止できる効果と、発光効率の低下を抑制できる効果とを確実に得ることができる。
【0038】
色むらの防止効果については、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と分離した場合とで、以下のような違いがある。両機能を一体化した場合には、図5Aに示すように、蛍光体50内のフィラー51aによって拡散された第1青色レーザ光は、一部が蛍光体50から出射するものの、その他は蛍光体50内の蛍光物質50aで吸収されて蛍光の励起発光に消費される。これにより、第1青色レーザ光の拡散効果が小さくなるため、フィラー51aによる広がり角拡大効果は低下する。そして、この広がり角拡大効果の低下によって、色むら防止効果が小さくなる。
【0039】
これに対して、図5Bに示すように、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合には、蛍光体50を出射した後の第1青色レーザ光に対して、フィラー51aで拡散効果が付与される。この拡散効果が付与された第1青色レーザ光は、照明窓52を通してそのまま被検体に向けて照射されるため、上記のように、蛍光の励起発光に使用されることはない。そのため、フィラー51aによる拡散効果は、ほぼ100%広がり角拡大に使用される。したがって、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と比べて、確実に色むら防止効果を得ることができる。
【0040】
また、発光効率の低下抑制効果については、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と分離した場合とで、以下のような違いがある。両機能を一体化した場合には、図6Aに示すように、蛍光体50の蛍光物質50aに照射される光には、フィラー51aに衝突せずにそのまま蛍光物質50aに照射される第1青色レーザ光だけでなく、フィラー51aに衝突して散乱する第1青色レーザ光も含まれる。フィラー51aに衝突した第1青色レーザ光は、衝突によってエネルギーが減衰するため、その一部は、蛍光物質50aに照射されても蛍光の励起発光には寄与せず、かつ、蛍光体50からも出射しない損失光となる場合がある。損失光のエネルギーは熱に変換されて蛍光体50内で消失する。損失光が多いと、発光効率が低下するとともに、蛍光体50の発熱も大きくなる。
【0041】
これに対して、図6Bに示すように、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合には、蛍光体50にはフィラー51aが入っていないため、蛍光体50に進入した第1青色レーザ光において、フィラー51aによるエネルギーの減衰はない。したがって、第1青色レーザ光は、比較的高いエネルギーを保持した状態で蛍光体50の蛍光物質50aに照射されるため、蛍光の励起光率を向上させることができる。また、蛍光物質に50aに吸収されなかった第1青色レーザ光は、比較的高いエネルギーを保持しているため、ほとんどが蛍光体50から出射する。そのため、蛍光体50内において発熱のみ消費される損失光が低減される。
【0042】
また、蛍光体50を出射した後の第1青色レーザ光は、蛍光体50を通過することで、若干広がり角が拡大している。このように、蛍光体50自体にも広がり角拡大作用があるため、広がり角拡大部51におけるフィラー51aの混入率を、蛍光体50の広がり角拡大効果を差し引いて設定することができる。すなわち、第1青色レーザ光を、蛍光体50に直接入射させる場合と比較して、広がり角拡大部51におけるフィラー51aの混入率を下げることができる。混入率を下げた分だけ、広がり角拡大部51による広がり角拡大効果は減少するが、その減少分は、蛍光体50の広がり角拡大効果によって補償される。以上から、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合は、それら両機能を一体化した場合と比べて、発光効率や発熱抑制効果を高めることができる。
【0043】
なお、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合には、蛍光の発光効率と第1青色レーザ光の散乱効率とを分けて考えることができるため、蛍光体50における蛍光物質の混入率と、広がり角拡大部51におけるフィラー51aの混入率の設計がしやすい。というのは、蛍光体内にフィラーを混入させる場合には、蛍光体内における蛍光物質とフィラーの相互作用を考慮してそれぞれの混入率を決定しなければならないが、分離していれば、それぞれの混入率を独立に調整できるので、双方の混入率の最適な組み合わせの選択もしやすい。
【0044】
また、蛍光体50に対して、別体で構成される広がり角拡大部51を追加して、かつ、両者を密着させることで、蛍光体50単体の場合と比較して、広がり角拡大部51が追加された分、熱容量及び表面積が大きくなる。そのため、蛍光体50の発熱を広がり角拡大部51に逃がすことができるようになるため、放熱効果も向上する。
【0045】
また、蛍光体50とは別体の広がり角拡大部51にフィラー51aを設けていることで、このフィラー51aにより散乱する第1青色レーザ光は、大部分が照明窓52側に向かうものの、一部は蛍光体50に向かう戻り光となる。この戻り光は、蛍光体50に再入射して、再び蛍光の励起発光に使用される。これにより、蛍光の発光量を増加させることができるため、戻り光は有効的に利用される。これに対して、蛍光体50内にフィラー51aを設けた場合には、フィラー51aによって、第1青色レーザ光が照明窓52とは反対側(フェルール55側)に散乱すると、その散乱光の多くは、蛍光体50から出射して損失となってしまう。この場合には、散乱光は、上記戻り光のように、蛍光の励起発光に使用されることないため、有効的に利用されない。
【0046】
また、第1青色レーザ光は、蛍光体50、広がり角拡大部51、照明窓52、空気層の順に、蛍光は、広がり角拡大部51、照明窓52、空気層の順に、各媒質を透過する。上述したとおり、光を透過する媒質間の屈折率の差は小さいほど反射が少ないので、反射による光損失を減らすためには、屈折率が最小の空気層(屈折率:1.0)と接する照明窓52の屈折率nyを1.0に近づくように最も小さくし、かつ、蛍光体50の屈折率nx、広がり角拡大部51の屈折率nk、照明窓52の屈折率nyの順に、各媒質の屈折率を段階的に小さくしていくのが好ましい。そのため、広がり角拡大部51の基材51bの屈折率nkは、蛍光体50の屈折率nxと照明窓52の屈折率nyの中間の値に設定され、かつ、蛍光体50、広がり角拡大部51、照明窓52の順に各媒質の屈折率が小さくなるように(nx>nk>ny)、それぞれの材料が選択されている。これにより、第1青色レーザ光及び蛍光の光損失が低減されるので、被検体に照射される照明光は高い光強度が確保される。
【0047】
広がり角拡大部51の基材51bの屈折率nkの値は、1.40〜2.0の範囲(中間屈折率の範囲)であることが好ましい。一般的に使用される蛍光体50の材料の屈折率nxは、1.46〜2.0程度であり、照明窓52の屈折率nyは、1.40〜1.9程度であり、中間屈折率の範囲は、蛍光体50の屈折率nxの最大値と、照明窓52の屈折率nyの最小値によって規定したものである。広がり角拡大部51の基材51bの屈折率nkの値は、製品に使用する蛍光体50の屈折率nx及び照明窓52の屈折率nyのそれぞれの値の組み合わせに応じて、その中間の値となるように、上記中間屈折率の範囲の中から適宜選択される。なお、基材51bの材料として、無機材料を用いた場合であっても、無機材料の好ましい屈折率の範囲は上記の有機材料の場合と同じである。
【0048】
また、基材51bの屈折率nkは、蛍光体の屈折率nxと照明窓の屈折率nyの二乗平均値(nk=(0.5×(nx2+ny2))1/2)であることが好ましい。例えば、nxが1.46であり、nyが1.4である場合にはnkは1.43である。また、nyについては1.3〜1.4の間の値であることが好ましい。
【0049】
第1投光ユニット38では、ライトガイド24a、蛍光体50、広がり角拡大部51、及び照明窓52は、以下のように配置される。蛍光体50とライトガイド24aは、互いに光学的に接続された状態でフェルール55によって保持される。フェルール55は中空の円筒部材であり、軸方向に延びた貫通孔55aでライトガイド24aを保持する。また、フェルール55は、先端側に開口部を有する略円柱状または直方体状の先端収納部55b内で、蛍光体50を接着剤56によって固定している。
【0050】
また、フェルール55と照明窓52は金属製のスリーブ60により保持され、この金属製のスリーブ60においてフェルール55と照明窓52の間に広がり角拡大部51が設けられる。広がり角拡大部51では、第1青色レーザ光及び蛍光をフィラー51aで散乱させているため発熱が生ずるが、広がり角拡大部51は金属製のスリーブ60に直接的に接しているため、その発熱をスリーブ60に逃がすことができる。これにより、放熱効果を高めることができる。
【0051】
なお、第1投光ユニット38は以下のような方法により製造することが好ましい。まず、図7に示すように、照明窓52をスリーブ60の照明窓設置部60aに対して取り付けた上で、照明窓設置部60aの一部に形成される空間に、基材51bにフィラー51aを混入した有機材料を充填して、広がり角拡大部51を形成する。次に、先端収納部55bに蛍光体50を固定させたフェルール55を、スリーブ60のフェルール挿入孔60bに挿入する。フェルール55に固定された蛍光体50が広がり角拡大部51と当接する位置まで挿入されたら、有機材料及びフィラーを硬化させる処理を行う。この処理の完了により、照明窓52と蛍光体50の間に広がり角拡大部51が形成された第1投光ユニット38が完成する。この製造後の第1投光ユニット38においては、照明窓52と広がり角拡大部51との間、及び広がり角拡大部51と蛍光体50と間は、それぞれ隙間無く接触している密着した状態となっている。
【0052】
第2投光ユニット39は、第1投光ユニット38と同様の蛍光体50、広がり角拡大部51、照明窓52、フェルール55、及びスリーブ60を備えている。また、第2投光ユニット39の各部材の配置及び製造方法は第1投光ユニット38と同様である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0053】
図8に示すように、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101は、照明窓52に広がり角拡大機能を設けて、照明窓52と広がり角拡大部を一体にした例である。照明窓52は、照明窓52を形成するための透明材料を基材として、その基材中にフィラー52aを混入することで形成される。照明窓52と蛍光体50との間は密着される。それ以外については、第1実施形態と同様に実施する。ここで、密着とは、蛍光体50と照明窓52との間が隙間無く接触することをいう。なお、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101においても、放熱効果等の観点から、略円柱形状の照明窓52の外径D3は、蛍光体50の外径D1よりも大きくすることが好ましい。
【0054】
第1及び第2投光ユニット100,101のように、照明窓52にフィラー52aを混入した場合にも、蛍光体50からの第1青色レーザ光及び蛍光はフィラー52aで散乱するため、それぞれの光の広がり角を確実に拡げることができる。また、第1及び第2投光ユニット100,101においても、上記第1実施形態と同様に、フィラー51aを、蛍光体50に混入させるのではなく、蛍光体50とは別体の照明窓52に混入することによって、励起光拡散機能と蛍光放射機能とを分離することができる。この場合は、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と比較して、色むら防止効果、発光効率の低下抑制効果、発熱抑制効果など上記第1実施形態と同様の効果を確実に得ることができる。
【0055】
また、照明窓52は金属製のスリーブ60と直接的に接触しているため、フィラー52aによる第1青色レーザ光及び蛍光の散乱で発熱が生じたとしても、その熱をスリーブ60に逃がすことができる。
【0056】
また、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101では、蛍光体50と照明窓52とは密着しているため、それらの間に空気層はほとんど存在しない。そのため、第1青色レーザ光及び蛍光が蛍光体50の出射面で反射したり、また照明窓52の入射面で反射することが防止される。したがって、第1青色レーザ光及び蛍光は、蛍光体50や照明窓52で減衰することなく、ほぼ全てが被検体に照射される。
【0057】
なお、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101は、蛍光体50と照明窓52とを密着させるため、第1実施形態とは異なる方法で製造される。まず、図9に示すように、フィラー52aを混入させた照明窓52を、スリーブ60の照明窓設置部60aに取り付ける。次に、先端収納部55bに蛍光体を固定させたフェルール55を、スリーブ60のフェルール挿入孔60bに挿入する。その際、蛍光体50と照明窓52とが完全に接触するまで挿入する。ここで、接触とは、蛍光体50と照明窓52との間が隙間無く接触すること、すなわち密着することをいう。次に、スリーブ60をアニール装置110に入れ、アニール処理を行う。このアニール処理の完了により、蛍光体50と照明窓52とが密着した第1及び第2投光ユニット100,101が完成する。なお、アニール処理は、70〜90℃、10〜30Hの範囲内の所定条件下、例えば80℃、20Hの条件下で行うことが好ましい。
【0058】
なお、上記第1及び第2実施形態では、中心波長445nmの第1青色レーザ光のみで蛍光体を励起したが、この第1青色レーザ光に加えて、中心波長405nmの第2青色レーザ光で蛍光体を励起してもよい。その際、第2青色レーザ光は、第1青色レーザ光とともに蛍光体50に入射させる。
【0059】
このように第1及び第2青色レーザ光の2波長の光で蛍光体を励起する場合にも、図10に示すように、蛍光体50の入射時点では、第1及び第2青色レーザ光の広がり角及びそれら光で蛍光体50から励起される蛍光の広がり角も狭くなっているが、蛍光体50の出射後には、広がり角拡大部51でそれぞれ光の広がり角は拡げられるため、色むらが生じることはない。また、蛍光体50を励起する光を1種類追加したことで、広がり角拡大部51で散乱する光の量も多くなり発熱量が増加するが、その発熱は金属製のスリーブ60に十分に逃がすことができるため、放熱効果が落ちることは無い。
【0060】
また、図10の場合においても、上記第1実施形態と同様に、フィラー51aを、蛍光体50に混入させるのではなく、蛍光体50とは別体の広がり角拡大部51に混入することによって、励起光拡散機能と蛍光放射機能とを分離することができる。そのため、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と比較して、色むら防止効果、発光効率の低下抑制効果、発熱抑制効果など上記第1実施形態と同様の効果を確実に得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
38,39 第1及び第2投光ユニット
50 蛍光体
51 広がり角拡大部
51a,52a フィラー
52 照明窓
55 フェルール
60 スリーブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の先端部に設けられ、被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用投光ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、内視鏡を用いた被検体内の診断及び治療が広く行われている。内視鏡は、被検体に挿入される挿入部を備えており、この挿入部の先端部に設けられた照明窓から被検体に向けて照明光が照射される。そして、照明光で照明された被検体を、挿入部の先端部に設けたCCDなどの撮像素子で撮像し、この撮像により得られた撮像信号に基づいて、モニタに内視鏡画像を表示する。
【0003】
被検体内の照明には、キセノンランプやハロゲンランプなどの白色光が用いられることが多いが、キセノンランプ等は、比較的大型であり、また消費電力も大きいといった問題がある。これに対して、特許文献1及び2では、青色LED(Light Emitting Diode)の青色光とこの青色光で蛍光体を励起することで発光する蛍光との合波によって白色光を生成している。このように、青色LED及び蛍光体を使って白色光を生成することで、キセノンランプ等に対して、小型化と省電力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−61685号公報
【特許文献2】特開2006−173498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、青色LED及び蛍光体を用いて白色光を生成した場合には、小型化と省電力化を図ることができる一方、蛍光体の光拡散特性は波長依存性を有しているため、蛍光体から出射する励起光である青色光の広がり角と、その青色光により励起される蛍光の広がり角との間に差が生じることがある。例えば、中心波長405nmの青色レーザ光と中心波長445nmの青色レーザ光で蛍光体から蛍光を発光させた場合には、図11に示すように、蛍光の広がり角が一番広く、中心波長405nmの青色レーザ光及び中心波長445nmの青色レーザ光の広がり角は蛍光よりも狭くなっている。このように広がり角に差がある状態で青色光及び蛍光を被検体に照射した場合には、被検体上で色むらが生じてしまう。色むらが生じた状態で撮像した画像では、正確な診断を行うことができないことがある。
【0006】
色むらの発生を防ぐ方法の一つとして、直進的に出射する青色光を散乱させるフィラーを蛍光体に混入させることが考えられる(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、一般的には、蛍光体へのフィラーの混入は、励起光である青色光を拡散する機能と、その青色光により蛍光体で励起される蛍光を放射する機能とを分離しにくくなるため、完全に色むらを無くすことは困難である。また、フィラーは、青色光を四方八方に散乱させるため、蛍光体内だけで散乱し、蛍光体から出射しない青色光が増えることになる。このような青色光の増加は、蛍光体での発光効率を低下させる要因となるとともに、蛍光体内部や蛍光体の出射端が発熱する要因となる。
【0007】
また、一般的には、蛍光体の長期安定性を確保するために、蛍光体とその蛍光体からの青色光及び蛍光を被検体に向けて出射する照明窓とを密封しているが、密封時には、蛍光体と照射窓との間に若干の隙間(空気層ともいう)が形成される。この空気層があることで、一部の青色光や蛍光は、照明窓の出射面から出射せず、照明窓の入射面で反射したり、また蛍光体の出射面で反射することがある。このような照明窓や蛍光体での反射は、蛍光の発光効率を低下させる要因となってしまう。
【0008】
この問題に対して、照明窓の入射面には反射防止膜(ARコート)を導入することで、照明窓の入射面での反射を防ぐことができる。しかしながら、蛍光体は製造工程上、出射面の平面性を確保することができないため、照明窓のような反射防止膜を導入することができない。そのため、蛍光体においては反射防止膜を使わずに、青色光や蛍光の反射を防ぐことが必要となる。
【0009】
本発明は、青色光とこの青色光で蛍光体から励起発光させた蛍光とを合波した白色光を被検体に照射する際に、異なる波長の青色光及び蛍光を被検体に照射することによる色むらの発生を防ぐとともに、蛍光体での蛍光の発光効率の低下を抑制することができる内視鏡用投光ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、内視鏡の先端部に設けられ、被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用投光ユニットにおいて、所定波長の光の一部を吸収して波長変換することにより蛍光を生成し、残りの光を透過することにより、前記所定波長の光と前記蛍光を含む照明光を出射する波長変換部材と、前記波長変換部材を出射した照明光を散乱させて前記照明光の広がり角を拡大する広がり角拡大部とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記広がり角拡大部は、透明な基材中に、前記照明光を散乱させる散乱部材を混入して形成されることが好ましい。前記波長変換部材と前記広がり角拡大部は別体で構成されていることが好ましい。前記波長変換部材には前記散乱部材は混入されていないことが好ましい。記波長変換部材と前記広がり角拡大部とは密着していることが好ましい。
【0012】
前記被検体に向けて照明光を照射する照明窓を有し、前記照明窓は、前記広がり角拡大部とは別体で構成され、前記照明光の出射方向に沿って、前記蛍光体、前記広がり角拡大部、前記照明窓の順に配列されていることが好ましい。前記照明窓と前記広がり角拡大部は密着していることが好ましい。
【0013】
前記広がり角拡大部の前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の中間の値であることが好ましい。前記基材の屈折率は、1.40〜2.0の範囲内であることが好ましい。前記波長変換部材の屈折率は、1.46〜2.0の範囲内であり、前記照明窓の屈折率は、1.40〜1.9の範囲内であり、前記基材の屈折率は、前記波長変換部材及び前記照明窓のそれぞれの屈折率の値の組み合わせに応じて、前記範囲の中から選択されることが好ましい。前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の二乗平均値であることが好ましい。
【0014】
前記基材は、例えばエポキシなどの有機材料であることが好ましい。前記基材は、例えばシリコンなどの無機材料であることが好ましい。
【0015】
前記被検体に向けて前記照明光を照射する照明窓を有し、前記照明窓は、前記広がり角拡大部と一体で構成されていることが好ましい。前記波長変換部材と前記照明窓は、互いに密着させた状態でアニール処理されていることが好ましい。前記アニール処理は70〜90℃、10〜30Hの環境下で行われることが好ましい。
【0016】
前記波長変換部材を保持するフェルールと、前記広がり角拡大部とを保持する金属製のスリーブを備えることが好ましい。前記波長変換部材及び前記広がり角拡大部は略円柱形状を有しており、前記広がり角拡大部の径は前記波長変換部材の径よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、波長変換部材を出射した後の照明光を散乱させることによって、照明光の広がり角を拡大しているので、波長変換部材内で照明光を散乱させた場合と比較して、照明光の色むらの発生をより確実に防止することができるとともに、波長変換部材での発光効率の低下を更に抑制することができる。
【0018】
また、広がり角拡大部と照明窓とを別体で構成した場合には、広がり角拡大部に、波長変換部材の屈折率と照明窓の屈折率の間の中間屈折率を有する基材を含有させることで、照明光は波長変換部材の出射面や照明窓の入射面などでの反射が防止される。これにより、波長変換部材や照明窓での照明光の損失を抑えることができる。また、波長変換部材と広がり角拡大部を密着させるとともに、広がり角拡大部と照明窓とも密着させることで、波長変換部材の出射面など各境界面での反射が防止される。これによっても、照明光の損失を抑えることができる。
【0019】
また、広がり角拡大部と照明窓とを一体で構成した場合には、波長変換部材と照明窓を密着させることで、照明光は波長変換部材の出射面や照明窓の入射面などでの反射が防止される。これにより、照明光の損失を抑えることができる。
【0020】
また、広がり角拡大部は金属製のスリーブで保持されていることから、そのスリーブに、広がり角拡大部内での照明光の散乱による発熱を逃がすことができる。また、広がり角拡大部の径を波長変換部材の径よりも大きくすることで、波長変換部材で生じた発熱を外部に逃がす効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の内視鏡システムに示す図である。
【図2】第1実施形態の電子内視鏡の先端部の断面を示す図である。
【図3】第1実施形態の電子内視鏡の先端部の先端面を示す図である。
【図4】蛍光体入射時の第1青色レーザ光の広がり角と光強度の関係を表すとともに、広がり角拡大部を出射した後の第1青色レーザ光及び蛍光の広がり角と光強度の関係を表す図である。
【図5A】励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合の色ムラ防止効果について説明するための図である。
【図5B】励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合の色ムラ防止効果について説明するための図である。
【図6A】励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合の発光効率の低下抑制効果について説明するための図である。
【図6B】励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合の発光効率の低下抑制効果について説明するための図である。
【図7】第1実施形態の第1投光ユニットの製造方法を説明するための図である。
【図8】第2実施形態の電子内視鏡の先端部の断面を示す図である。
【図9】第2実施形態の第1投光ユニットの製造方法を説明するための図である。
【図10】蛍光体入射時の第1及び第2青色レーザ光の広がり角と光強度の関係を表すとともに、広がり角拡大部を出射した後の蛍光、第1及び第2青色レーザ光の広がり角と光強度の関係を表す図である。
【図11】フィラーなどの散乱部材を使用しない場合における蛍光及び青色レーザ光(405nm、445nm)の広がり角と光強度の関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム2は、被検体を撮影する電子内視鏡10と、内視鏡画像を生成するプロセッサ装置12と、このプロセッサ装置12内に設けられ、被検体を照明する照明光を供給する光源装置13と、内視鏡画像を表示するモニタ14と、被検体内に送り込む水を貯留する送水タンク16とを備えている。
【0023】
電子内視鏡10は、患者の体腔内に挿入される挿入部20と、挿入部20の基端部分に連設され、医師や技師などの術者が手元で操作を行なう操作部22と、操作部22から延びるユニバーサルコード24とからなる。挿入部20は、先端から順に、先端部26、湾曲部27、及び可撓管部28で構成されている。先端部26は、硬質な樹脂材料で形成されている。可撓管部28は、細径かつ長尺な管状に形成されるとともに、可撓性を有しており、操作部22と湾曲部27とを接続する。
【0024】
湾曲部27は、操作部22に設けられた上下用操作ノブ30及び左右用操作ノブ31の回転操作に応じて上下左右に湾曲するように構成されている。上下用操作ノブ30を回転操作すると、湾曲部27が上下方向に湾曲し、左右用操作ノブ31を回転操作すると、湾曲部27が左右方向に湾曲する。
【0025】
ユニバーサルコード24には、プロセッサ装置12から供給される光及び空気の取り込みと、電源や各種の制御信号の伝送に用いられるコネクタ36とが設けられている。電子内視鏡10は、コネクタ36を介してプロセッサ装置12に着脱自在に接続される。
【0026】
光源装置13は、中心波長445nmの第1青色レーザ光を発する第1レーザ光源13aを備えている。第1レーザ光源13aから発せられる第1青色レーザ光は、ユニバーサルコード24内のライドガイド24a,24bを介して、電子内視鏡の先端部26まで導光される。導光された第1青色レーザ光は、一部が先端部26に設けられた蛍光体50で吸収されることにより緑色〜黄色の蛍光を励起発光させるとともに、蛍光体50(波長変換部材)で吸収されなかった光はそのまま蛍光体50を透過する。これにより、先端部26からは、第1青色レーザ光と蛍光が合波した白色光(照明光)が被検体に照射される。被検体からの戻り光は、被検体の像として電子内視鏡10内の撮像素子42(図3参照)により撮像される。なお、ライトガイド24a,24bは、光ファイバなどの導光部材で構成される。
【0027】
プロセッサ装置12は、電子内視鏡10の撮像により得られる撮像信号を、ユニバーサルコード24内の信号ケーブル24cを介して受信する。プロセッサ装置12では、受信した撮像信号に各種画像処理を施すことによって、画像データを生成する。この生成された画像データに基づいて、モニタ14に被検体の内視鏡画像が表示される。
【0028】
図2に示すように、電子内視鏡の先端部26には、被検体に向けて照明光を照射するための2灯の第1及び第2投光ユニット38,39と、観察窓40及び撮像レンズ41を介して受光した被検体の像を、CCDなどの撮像素子42で撮像する撮像ユニット43が設けられている。
【0029】
図3に示すように、第1及び第2投光ユニット38,39は、先端部26の先端面26aにおいて、撮像ユニット43に関して左右対称の位置に設けられている。なお、先端部26には、第1及び第2投光ユニット38,39、撮像ユニット43の他、スネアなどの処置具を露呈させる処置具出口46や観察窓40に向けて洗浄用の空気や水を吐出する送気送水ノズル48が設けられている。
【0030】
第1投光ユニットは、ライトガイド24aからの第1青色レーザ光で蛍光体50を励起させて蛍光体50から白色光を発するとともに、発せられた白色光の広がり角を広がり角拡大部51で拡げる。広がり角拡大部51を経た白色光は、石英ガラスやサファイヤガラスなどのガラス部材のうち生体適合性を有するもの(例えば「K-LaSFn17」(「http://www.sumita-opt.co.jp/data/glassdata.pdf」の120ページ参照))で形成された照明窓52を介して、被検体に照射される。なお、蛍光体はYAGやBAM(BaMgAl10O17)であることが好ましい。
【0031】
この第1及び第2投光ユニット38,39においては、照明窓52と広がり角拡大部51との間、及び広がり角拡大部51と蛍光体50との間は、それぞれ隙間無く接触している(密着している)ため、それらの間に空気層は存在しない。ここで、照明窓52と広がり角拡大部51との間、及び広がり角拡大部51と蛍光体50との間に空気層を挟んだ場合は、空気層を挟まない場合と比べて、光入射・反射面などの境界面の数を減らすことができる(空気層を挟んだ場合は境界面の数が「5」であるのに対し、空気層を挟まない場合は境界面の数が「3」となる)。そのため、各部材間を密着させて空気層を無くすことにより、境界面の数を減らすことができる。これにより、境界面での反射を防止することができるため、高い光強度を保持した状態で、第1青色レーザ光及び蛍光を被検体に照射することができる。
【0032】
蛍光体50は、一定の外径D1を持つ略円柱形状を有している。この蛍光体50には蛍光物質が混入されており、第1青色レーザ光のうち、一部がその蛍光物質に吸収されて緑色〜赤色の蛍光を発する一方、蛍光物質に吸収されなかった光は蛍光体50をそのまま透過する。このように蛍光物質から発せられた蛍光と第1青色レーザ光とが合波されて、蛍光体50から白色光が発せられる。
【0033】
広がり角拡大部51は、透明材料からなる基材51b(図4参照)に、蛍光及び第1青色レーザ光を散乱させる光散乱部材であるフィラー51aを混入させて形成した透光性部材である。基材51bとしては、例えば、樹脂などの有機材料が使用され、その屈折率が、蛍光体50の屈折率と照明窓52の屈折率の間の材料が使用される。
【0034】
この広がり角拡大部51は略円柱形状をしており、その外径D2は蛍光体50の外径D1よりも大きくなっている。そのため、蛍光体50から出射した光のうち、広がり角拡大部51に入射しない漏れ光が減るので、光損失を低減できる。また、蛍光体50の出射面全体が広がり角拡大部51と接触しているため、蛍光体50での発熱が広がり角拡大部51に伝達される。なお、蛍光体50の外径D1は例えば0.8mmであり、広がり角拡大部51の外径D2は例えば1.1mmであることが好ましい。
【0035】
図4に示すように、蛍光体50に入射する第1青色レーザ光は、光強度が大きい部分の広がり角は比較的狭くなっている。これに伴って、第1青色レーザ光によって蛍光体50で励起される蛍光の広がり角も狭くなる。そこで、蛍光体50から出射した第1青色レーザ光及び蛍光をフィラー51aで散乱させることによって、それぞれの光の広がり角を拡げる。このように第1青色レーザ光及び蛍光の両方の広がり角を拡げることで、それぞれの光が重なり合わない部分が無くなるため、色むらの発生を防止できる。
【0036】
なお、フィラーとしては、シリカ、石英などが好ましいが、光拡散機能を有するものであればこれに限定されない。また、有機材料としてはエポキシなどの樹脂であることが好ましいが、短波長の第1青色レーザ光の照射による劣化を考慮する場合には、有機材料に代えて、シリコンなどの無機材料を使用してもよい。
【0037】
蛍光体50には、広がり角拡大部51が含有するフィラー51aは混入されていない。このように、フィラー51aを、蛍光体50に混入させるのではなく、蛍光体50とは別体の広がり角拡大部51に混入することによって、励起光である第1青色レーザ光を拡散する励起光拡散機能と、その第1青色レーザ光により蛍光体50で励起される蛍光を放射する蛍光放射機能とを分離することができる。したがって、以下示すような理由から、フィラー51aを蛍光体50に混入させる場合(励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合)と比較して、色むらを防止できる効果と、発光効率の低下を抑制できる効果とを確実に得ることができる。
【0038】
色むらの防止効果については、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と分離した場合とで、以下のような違いがある。両機能を一体化した場合には、図5Aに示すように、蛍光体50内のフィラー51aによって拡散された第1青色レーザ光は、一部が蛍光体50から出射するものの、その他は蛍光体50内の蛍光物質50aで吸収されて蛍光の励起発光に消費される。これにより、第1青色レーザ光の拡散効果が小さくなるため、フィラー51aによる広がり角拡大効果は低下する。そして、この広がり角拡大効果の低下によって、色むら防止効果が小さくなる。
【0039】
これに対して、図5Bに示すように、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合には、蛍光体50を出射した後の第1青色レーザ光に対して、フィラー51aで拡散効果が付与される。この拡散効果が付与された第1青色レーザ光は、照明窓52を通してそのまま被検体に向けて照射されるため、上記のように、蛍光の励起発光に使用されることはない。そのため、フィラー51aによる拡散効果は、ほぼ100%広がり角拡大に使用される。したがって、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と比べて、確実に色むら防止効果を得ることができる。
【0040】
また、発光効率の低下抑制効果については、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と分離した場合とで、以下のような違いがある。両機能を一体化した場合には、図6Aに示すように、蛍光体50の蛍光物質50aに照射される光には、フィラー51aに衝突せずにそのまま蛍光物質50aに照射される第1青色レーザ光だけでなく、フィラー51aに衝突して散乱する第1青色レーザ光も含まれる。フィラー51aに衝突した第1青色レーザ光は、衝突によってエネルギーが減衰するため、その一部は、蛍光物質50aに照射されても蛍光の励起発光には寄与せず、かつ、蛍光体50からも出射しない損失光となる場合がある。損失光のエネルギーは熱に変換されて蛍光体50内で消失する。損失光が多いと、発光効率が低下するとともに、蛍光体50の発熱も大きくなる。
【0041】
これに対して、図6Bに示すように、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合には、蛍光体50にはフィラー51aが入っていないため、蛍光体50に進入した第1青色レーザ光において、フィラー51aによるエネルギーの減衰はない。したがって、第1青色レーザ光は、比較的高いエネルギーを保持した状態で蛍光体50の蛍光物質50aに照射されるため、蛍光の励起光率を向上させることができる。また、蛍光物質に50aに吸収されなかった第1青色レーザ光は、比較的高いエネルギーを保持しているため、ほとんどが蛍光体50から出射する。そのため、蛍光体50内において発熱のみ消費される損失光が低減される。
【0042】
また、蛍光体50を出射した後の第1青色レーザ光は、蛍光体50を通過することで、若干広がり角が拡大している。このように、蛍光体50自体にも広がり角拡大作用があるため、広がり角拡大部51におけるフィラー51aの混入率を、蛍光体50の広がり角拡大効果を差し引いて設定することができる。すなわち、第1青色レーザ光を、蛍光体50に直接入射させる場合と比較して、広がり角拡大部51におけるフィラー51aの混入率を下げることができる。混入率を下げた分だけ、広がり角拡大部51による広がり角拡大効果は減少するが、その減少分は、蛍光体50の広がり角拡大効果によって補償される。以上から、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合は、それら両機能を一体化した場合と比べて、発光効率や発熱抑制効果を高めることができる。
【0043】
なお、励起光拡散機能と蛍光放射機能を分離した場合には、蛍光の発光効率と第1青色レーザ光の散乱効率とを分けて考えることができるため、蛍光体50における蛍光物質の混入率と、広がり角拡大部51におけるフィラー51aの混入率の設計がしやすい。というのは、蛍光体内にフィラーを混入させる場合には、蛍光体内における蛍光物質とフィラーの相互作用を考慮してそれぞれの混入率を決定しなければならないが、分離していれば、それぞれの混入率を独立に調整できるので、双方の混入率の最適な組み合わせの選択もしやすい。
【0044】
また、蛍光体50に対して、別体で構成される広がり角拡大部51を追加して、かつ、両者を密着させることで、蛍光体50単体の場合と比較して、広がり角拡大部51が追加された分、熱容量及び表面積が大きくなる。そのため、蛍光体50の発熱を広がり角拡大部51に逃がすことができるようになるため、放熱効果も向上する。
【0045】
また、蛍光体50とは別体の広がり角拡大部51にフィラー51aを設けていることで、このフィラー51aにより散乱する第1青色レーザ光は、大部分が照明窓52側に向かうものの、一部は蛍光体50に向かう戻り光となる。この戻り光は、蛍光体50に再入射して、再び蛍光の励起発光に使用される。これにより、蛍光の発光量を増加させることができるため、戻り光は有効的に利用される。これに対して、蛍光体50内にフィラー51aを設けた場合には、フィラー51aによって、第1青色レーザ光が照明窓52とは反対側(フェルール55側)に散乱すると、その散乱光の多くは、蛍光体50から出射して損失となってしまう。この場合には、散乱光は、上記戻り光のように、蛍光の励起発光に使用されることないため、有効的に利用されない。
【0046】
また、第1青色レーザ光は、蛍光体50、広がり角拡大部51、照明窓52、空気層の順に、蛍光は、広がり角拡大部51、照明窓52、空気層の順に、各媒質を透過する。上述したとおり、光を透過する媒質間の屈折率の差は小さいほど反射が少ないので、反射による光損失を減らすためには、屈折率が最小の空気層(屈折率:1.0)と接する照明窓52の屈折率nyを1.0に近づくように最も小さくし、かつ、蛍光体50の屈折率nx、広がり角拡大部51の屈折率nk、照明窓52の屈折率nyの順に、各媒質の屈折率を段階的に小さくしていくのが好ましい。そのため、広がり角拡大部51の基材51bの屈折率nkは、蛍光体50の屈折率nxと照明窓52の屈折率nyの中間の値に設定され、かつ、蛍光体50、広がり角拡大部51、照明窓52の順に各媒質の屈折率が小さくなるように(nx>nk>ny)、それぞれの材料が選択されている。これにより、第1青色レーザ光及び蛍光の光損失が低減されるので、被検体に照射される照明光は高い光強度が確保される。
【0047】
広がり角拡大部51の基材51bの屈折率nkの値は、1.40〜2.0の範囲(中間屈折率の範囲)であることが好ましい。一般的に使用される蛍光体50の材料の屈折率nxは、1.46〜2.0程度であり、照明窓52の屈折率nyは、1.40〜1.9程度であり、中間屈折率の範囲は、蛍光体50の屈折率nxの最大値と、照明窓52の屈折率nyの最小値によって規定したものである。広がり角拡大部51の基材51bの屈折率nkの値は、製品に使用する蛍光体50の屈折率nx及び照明窓52の屈折率nyのそれぞれの値の組み合わせに応じて、その中間の値となるように、上記中間屈折率の範囲の中から適宜選択される。なお、基材51bの材料として、無機材料を用いた場合であっても、無機材料の好ましい屈折率の範囲は上記の有機材料の場合と同じである。
【0048】
また、基材51bの屈折率nkは、蛍光体の屈折率nxと照明窓の屈折率nyの二乗平均値(nk=(0.5×(nx2+ny2))1/2)であることが好ましい。例えば、nxが1.46であり、nyが1.4である場合にはnkは1.43である。また、nyについては1.3〜1.4の間の値であることが好ましい。
【0049】
第1投光ユニット38では、ライトガイド24a、蛍光体50、広がり角拡大部51、及び照明窓52は、以下のように配置される。蛍光体50とライトガイド24aは、互いに光学的に接続された状態でフェルール55によって保持される。フェルール55は中空の円筒部材であり、軸方向に延びた貫通孔55aでライトガイド24aを保持する。また、フェルール55は、先端側に開口部を有する略円柱状または直方体状の先端収納部55b内で、蛍光体50を接着剤56によって固定している。
【0050】
また、フェルール55と照明窓52は金属製のスリーブ60により保持され、この金属製のスリーブ60においてフェルール55と照明窓52の間に広がり角拡大部51が設けられる。広がり角拡大部51では、第1青色レーザ光及び蛍光をフィラー51aで散乱させているため発熱が生ずるが、広がり角拡大部51は金属製のスリーブ60に直接的に接しているため、その発熱をスリーブ60に逃がすことができる。これにより、放熱効果を高めることができる。
【0051】
なお、第1投光ユニット38は以下のような方法により製造することが好ましい。まず、図7に示すように、照明窓52をスリーブ60の照明窓設置部60aに対して取り付けた上で、照明窓設置部60aの一部に形成される空間に、基材51bにフィラー51aを混入した有機材料を充填して、広がり角拡大部51を形成する。次に、先端収納部55bに蛍光体50を固定させたフェルール55を、スリーブ60のフェルール挿入孔60bに挿入する。フェルール55に固定された蛍光体50が広がり角拡大部51と当接する位置まで挿入されたら、有機材料及びフィラーを硬化させる処理を行う。この処理の完了により、照明窓52と蛍光体50の間に広がり角拡大部51が形成された第1投光ユニット38が完成する。この製造後の第1投光ユニット38においては、照明窓52と広がり角拡大部51との間、及び広がり角拡大部51と蛍光体50と間は、それぞれ隙間無く接触している密着した状態となっている。
【0052】
第2投光ユニット39は、第1投光ユニット38と同様の蛍光体50、広がり角拡大部51、照明窓52、フェルール55、及びスリーブ60を備えている。また、第2投光ユニット39の各部材の配置及び製造方法は第1投光ユニット38と同様である。そのため、詳細な説明は省略する。
【0053】
図8に示すように、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101は、照明窓52に広がり角拡大機能を設けて、照明窓52と広がり角拡大部を一体にした例である。照明窓52は、照明窓52を形成するための透明材料を基材として、その基材中にフィラー52aを混入することで形成される。照明窓52と蛍光体50との間は密着される。それ以外については、第1実施形態と同様に実施する。ここで、密着とは、蛍光体50と照明窓52との間が隙間無く接触することをいう。なお、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101においても、放熱効果等の観点から、略円柱形状の照明窓52の外径D3は、蛍光体50の外径D1よりも大きくすることが好ましい。
【0054】
第1及び第2投光ユニット100,101のように、照明窓52にフィラー52aを混入した場合にも、蛍光体50からの第1青色レーザ光及び蛍光はフィラー52aで散乱するため、それぞれの光の広がり角を確実に拡げることができる。また、第1及び第2投光ユニット100,101においても、上記第1実施形態と同様に、フィラー51aを、蛍光体50に混入させるのではなく、蛍光体50とは別体の照明窓52に混入することによって、励起光拡散機能と蛍光放射機能とを分離することができる。この場合は、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と比較して、色むら防止効果、発光効率の低下抑制効果、発熱抑制効果など上記第1実施形態と同様の効果を確実に得ることができる。
【0055】
また、照明窓52は金属製のスリーブ60と直接的に接触しているため、フィラー52aによる第1青色レーザ光及び蛍光の散乱で発熱が生じたとしても、その熱をスリーブ60に逃がすことができる。
【0056】
また、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101では、蛍光体50と照明窓52とは密着しているため、それらの間に空気層はほとんど存在しない。そのため、第1青色レーザ光及び蛍光が蛍光体50の出射面で反射したり、また照明窓52の入射面で反射することが防止される。したがって、第1青色レーザ光及び蛍光は、蛍光体50や照明窓52で減衰することなく、ほぼ全てが被検体に照射される。
【0057】
なお、第2実施形態の第1及び第2投光ユニット100,101は、蛍光体50と照明窓52とを密着させるため、第1実施形態とは異なる方法で製造される。まず、図9に示すように、フィラー52aを混入させた照明窓52を、スリーブ60の照明窓設置部60aに取り付ける。次に、先端収納部55bに蛍光体を固定させたフェルール55を、スリーブ60のフェルール挿入孔60bに挿入する。その際、蛍光体50と照明窓52とが完全に接触するまで挿入する。ここで、接触とは、蛍光体50と照明窓52との間が隙間無く接触すること、すなわち密着することをいう。次に、スリーブ60をアニール装置110に入れ、アニール処理を行う。このアニール処理の完了により、蛍光体50と照明窓52とが密着した第1及び第2投光ユニット100,101が完成する。なお、アニール処理は、70〜90℃、10〜30Hの範囲内の所定条件下、例えば80℃、20Hの条件下で行うことが好ましい。
【0058】
なお、上記第1及び第2実施形態では、中心波長445nmの第1青色レーザ光のみで蛍光体を励起したが、この第1青色レーザ光に加えて、中心波長405nmの第2青色レーザ光で蛍光体を励起してもよい。その際、第2青色レーザ光は、第1青色レーザ光とともに蛍光体50に入射させる。
【0059】
このように第1及び第2青色レーザ光の2波長の光で蛍光体を励起する場合にも、図10に示すように、蛍光体50の入射時点では、第1及び第2青色レーザ光の広がり角及びそれら光で蛍光体50から励起される蛍光の広がり角も狭くなっているが、蛍光体50の出射後には、広がり角拡大部51でそれぞれ光の広がり角は拡げられるため、色むらが生じることはない。また、蛍光体50を励起する光を1種類追加したことで、広がり角拡大部51で散乱する光の量も多くなり発熱量が増加するが、その発熱は金属製のスリーブ60に十分に逃がすことができるため、放熱効果が落ちることは無い。
【0060】
また、図10の場合においても、上記第1実施形態と同様に、フィラー51aを、蛍光体50に混入させるのではなく、蛍光体50とは別体の広がり角拡大部51に混入することによって、励起光拡散機能と蛍光放射機能とを分離することができる。そのため、励起光拡散機能と蛍光放射機能を一体化した場合と比較して、色むら防止効果、発光効率の低下抑制効果、発熱抑制効果など上記第1実施形態と同様の効果を確実に得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
38,39 第1及び第2投光ユニット
50 蛍光体
51 広がり角拡大部
51a,52a フィラー
52 照明窓
55 フェルール
60 スリーブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部に設けられ、被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用投光ユニットにおいて、
所定波長の光の一部を吸収して波長変換することにより蛍光を生成し、残りの光を透過することにより、前記所定波長の光と前記蛍光を含む照明光を出射する波長変換部材と、
前記波長変換部材を出射した照明光を散乱させて前記照明光の広がり角を拡大する広がり角拡大部とを備えることを特徴とする内視鏡用投光ユニット。
【請求項2】
前記広がり角拡大部は、透明な基材中に、前記照明光を散乱させる散乱部材を混入して形成されることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項3】
前記波長変換部材と前記広がり角拡大部は別体で構成されていることを特徴とする請求項2記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項4】
前記波長変換部材には前記散乱部材は混入されていないことを特徴とする請求項3記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項5】
前記波長変換部材と前記広がり角拡大部とは密着していることを特徴とする請求項3または4記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項6】
前記被検体に向けて照明光を照射する照明窓を有し、
前記照明窓は、前記広がり角拡大部とは別体で構成され、
前記照明光の出射方向に沿って、前記蛍光体、前記広がり角拡大部、前記照明窓の順に配列されていることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項7】
前記照明窓と前記広がり角拡大部は密着していることを特徴とする請求項6記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項8】
前記広がり角拡大部の前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の中間の値であることを特徴とする請求項7記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項9】
前記基材の屈折率は、1.40〜2.0の範囲内であることを特徴とする請求項8記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項10】
前記波長変換部材の屈折率は、1.46〜2.0の範囲内であり、前記照明窓の屈折率は、1.40〜1.9の範囲内であり、前記基材の屈折率は、前記波長変換部材及び前記照明窓のそれぞれの屈折率の値の組み合わせに応じて、前記範囲の中から選択されることを特徴とする請求項9記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項11】
前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の二乗平均値であることを特徴とする請求項7記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項12】
前記基材は有機材料であることを特徴とする請求項6ないし11いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項13】
前記基材はエポキシであることを特徴とする請求項12記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項14】
前記基材は無機材料であることを特徴とする請求項6ないし11いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項15】
前記基材はシリコンであることを特徴とする請求項14記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項16】
前記被検体に向けて前記照明光を照射する照明窓を有し、
前記照明窓は、前記広がり角拡大部と一体で構成されていることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項17】
前記波長変換部材と前記照明窓は、互いに密着させた状態でアニール処理されていることを特徴とする請求項16記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項18】
前記アニール処理は70〜90℃、10〜30Hの環境下で行われることを特徴とする請求項17記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項19】
前記波長変換部材を保持するフェルールと、前記広がり角拡大部とを保持する金属製のスリーブを備えることを特徴とする請求項1ないし18いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項20】
前記波長変換部材及び前記広がり角拡大部は略円柱形状を有しており、前記広がり角拡大部の径は前記波長変換部材の径よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし19いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項1】
内視鏡の先端部に設けられ、被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用投光ユニットにおいて、
所定波長の光の一部を吸収して波長変換することにより蛍光を生成し、残りの光を透過することにより、前記所定波長の光と前記蛍光を含む照明光を出射する波長変換部材と、
前記波長変換部材を出射した照明光を散乱させて前記照明光の広がり角を拡大する広がり角拡大部とを備えることを特徴とする内視鏡用投光ユニット。
【請求項2】
前記広がり角拡大部は、透明な基材中に、前記照明光を散乱させる散乱部材を混入して形成されることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項3】
前記波長変換部材と前記広がり角拡大部は別体で構成されていることを特徴とする請求項2記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項4】
前記波長変換部材には前記散乱部材は混入されていないことを特徴とする請求項3記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項5】
前記波長変換部材と前記広がり角拡大部とは密着していることを特徴とする請求項3または4記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項6】
前記被検体に向けて照明光を照射する照明窓を有し、
前記照明窓は、前記広がり角拡大部とは別体で構成され、
前記照明光の出射方向に沿って、前記蛍光体、前記広がり角拡大部、前記照明窓の順に配列されていることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項7】
前記照明窓と前記広がり角拡大部は密着していることを特徴とする請求項6記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項8】
前記広がり角拡大部の前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の中間の値であることを特徴とする請求項7記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項9】
前記基材の屈折率は、1.40〜2.0の範囲内であることを特徴とする請求項8記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項10】
前記波長変換部材の屈折率は、1.46〜2.0の範囲内であり、前記照明窓の屈折率は、1.40〜1.9の範囲内であり、前記基材の屈折率は、前記波長変換部材及び前記照明窓のそれぞれの屈折率の値の組み合わせに応じて、前記範囲の中から選択されることを特徴とする請求項9記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項11】
前記基材の屈折率は、前記波長変換部材の屈折率と前記照明窓の屈折率の二乗平均値であることを特徴とする請求項7記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項12】
前記基材は有機材料であることを特徴とする請求項6ないし11いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項13】
前記基材はエポキシであることを特徴とする請求項12記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項14】
前記基材は無機材料であることを特徴とする請求項6ないし11いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項15】
前記基材はシリコンであることを特徴とする請求項14記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項16】
前記被検体に向けて前記照明光を照射する照明窓を有し、
前記照明窓は、前記広がり角拡大部と一体で構成されていることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項17】
前記波長変換部材と前記照明窓は、互いに密着させた状態でアニール処理されていることを特徴とする請求項16記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項18】
前記アニール処理は70〜90℃、10〜30Hの環境下で行われることを特徴とする請求項17記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項19】
前記波長変換部材を保持するフェルールと、前記広がり角拡大部とを保持する金属製のスリーブを備えることを特徴とする請求項1ないし18いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【請求項20】
前記波長変換部材及び前記広がり角拡大部は略円柱形状を有しており、前記広がり角拡大部の径は前記波長変換部材の径よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし19いずれか1項記載の内視鏡用投光ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−232108(P2012−232108A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−71445(P2012−71445)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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