説明

内視鏡用照明光学系

【課題】ライトガイドの出射端側に照明用レンズを備えてなる内視鏡用照明光学系において、光量の損失を抑えつつ、面取り面又はフィレット面の露出による照明ムラの発生を抑制する。
【解決手段】照明用レンズとして、ライトガイドの出射端から出射した光が入射する出射端側の面に出射端に当接する平面部分を有するとともに、入射した光が出射する出射端とは反対側の面の周縁部に砂目状の面取り面又はフィレット面を有するものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトガイドの出射端側に照明用レンズを備えてなる内視鏡用照明光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直接に観察しにくい構造物の内部を観察するために内視鏡が広く用いられている。内視鏡によって構造物の内部を観察するときは、照明光源からの光を光ファイバ束からなるライトガイドを介して構造物内に導いて被写体を照射することが行われている。
【0003】
このような内視鏡においては、広い視野の観察あるいは写真撮影をすることを必要とするため、観察光学系の視野の拡大と共に、照明光学系による照明野の拡大を図り、また視野内を均一に明るく照明することが望ましいとされている。
【0004】
これを実現するために、特許文献1には、内視鏡先端部に光出射レンズ系として、図3に示すような非球面レンズを設けることが提案されている。図3の非球面レンズ30は、ライトガイド13からの光が入射する入射面31が凸状に形成され、光軸Zに平行に入射する光線の高さをh(h=0〜h_max)、入射面31の光軸中心位置をd=0としたときの入射面の各点における光軸方向の深さをd=f(h)としたときに、f(h)のhの一階微分が0以上で、かつ二階微分が0となるhが0<h<h_maxに存在するものである。
【0005】
このような照明レンズには、図4に示すように、レンズの割れや欠けを防ぐため、光が出射する側の面32の周縁部に面取り面32bを形成することがある。この面取り面32bは、照明レンズ30を内視鏡に取り付ける際に、面取り面32bと先端部本体11aとの間に充填されるシリコン等の接着剤60によって完全に覆われ、外面には露出されないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−66588号公報
【特許文献2】特開2006−39043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、内視鏡には、使用の度に、各種の薬品を用いた洗浄消毒や滅菌等が施される。そのため、長期間使用しているうちに接着剤60が剥がれ落ち、面取り面32bが外面に露出される場合がある。
【0008】
面取り面32bが外面に露出されると、照明レンズ30においては、ライトガイド13から入射した光の一部が面取り面32bを通って射出されることとなる。しかし、面取り面32bは、ライトガイド13から入射した光に対し、出射面32aとは異なる屈折力(レンズパワー)を有するため、その面取り面32bを通って射出される光によって照明ムラが生じる。具体的には、図5に示すように、照明レンズ30のライトガイド13に当接する平面部分上のある位置から入射され、面取り面32bを通って射出された光線45と、同じ位置から入射され、出射面32aを通って射出された光線46とが交わり、その結果、被写体面に光線像が現れ、内視鏡による被写体の観察に支障をきたす。
【0009】
なお、特許文献2においては、照明レンズ30の入射面31の全領域を砂目状とすることにより、照明ムラを低減させることが提案されている。しかし、入射面31の全領域を砂目状にした場合には、光量の損失が大きくなり、内視鏡の視野が暗くなってしまう。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑み、光量の損失を抑えつつ、面取り面の露出による照明ムラの発生を抑制できる内視鏡用照明光学系を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明による内視鏡用照明光学系は、光源からの光を導くライトガイドの出射端側に照明用レンズを備えてなる内視鏡用照明光学系において、照明用レンズが、前記出射端から出射した光が入射する前記出射端側の面に前記出射端に当接する平面部分を有するとともに、入射した光が出射する前記出射端とは反対側の面の周縁部に砂目状の面取り面又はフィレット面を有するものであることを特徴とするものである。
【0012】
上記内視鏡用照明光学系において、砂目状の面取り面又はフィレット面は、表面粗さが5μm以上の面であってもよい。
【0013】
ここで、「表面粗さ」とは、その表面(対象面)からランダムに抜き取った各部分における中心線平均粗さRaの算術平均値をいう。なお、中心線平均粗さRaは、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を測定長さで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による内視鏡用照明光学系によれば、光源からの光を導くライトガイドの出射端側に照明用レンズを備えてなる内視鏡用照明光学系において、照明用レンズとして、前記出射端から出射した光が入射する前記出射端側の面に前記出射端に当接する平面部分を有するとともに、入射した光が出射する前記出射端とは反対側の面の周縁部に砂目状の面取り面又はフィレット面を有するものを使用するようにしたので、面取り面又はフィレット面が外面に露出されることにより入射した光の一部が面取り面又はフィレット面を通って射出される場合であっても、面取り面又はフィレット面を通って射出される光を拡散させ、上述したような照明ムラの発生を抑制することができる。また、照明レンズの入射面の全領域を砂目状とする上記従来の照明光学系に比べて光量の損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の内視鏡用照明光学系を用いた内視鏡の概略構成図
【図2】照明用レンズの光軸を通る断面を示す図
【図3】従来の内視鏡用照明光学系に使用される照明用レンズを示す図
【図4】照明用レンズが内視鏡に取り付けられた状態を示す図
【図5】面取り面の露出による照明ムラの発生を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の内視鏡用照明光学系を用いた内視鏡の概略構成を示す図である。この内視鏡10は、図1に示すように、体腔内に挿入される挿入部11と術者による各種操作が行われる操作部12とを有する。
【0017】
挿入部11内には、ファイバ束から成るライトガイド13およびケーブル14が挿通している。挿入部11の先端には、ライトガイド13の出射端13aと対向して照明用レンズ20が設けられていると共に、この照明用レンズ20に隣接して対物レンズ24が設けられている。不図示の光源部から発せられ、ライトガイド13の入射端に入射された照明光が、ライトガイド13を介して挿入部11の先端部まで導光され、照明用レンズ20を介して不図示の被写体の観察部位に向け照射されるように構成されている。
【0018】
一方、対物レンズ24と対向する挿入部11内の先端には、撮像手段としてのCCD(固体撮像素子)15が設けられている。このCCD15には、該CCD15を駆動するためのCCD駆動信号がケーブル14を介して入力されており、該CCD15は、このCCD駆動信号により駆動されるようになっている。
【0019】
照明光が照射された観察部位の像は、挿入部11の先端に設けられた対物レンズ24によりCCD15の結像面に結像され、CCD15により光学像が光電変換され、撮像信号として出力される。CCD15は不図示のアンプに接続されており、CCD15からの撮像信号が該アンプに入力され、アンプによって増幅された撮像信号が、ケーブル14を介して、不図示のビデオプロセッサ部に入力されるようになっている。
【0020】
図2は、照明用レンズ20の光軸を通る断面を示す図である。図2に示すように、照明用レンズ20は、全体として正のパワーを持つ非球面レンズである。照明用レンズ20の出射端13a側の面21(入射面)は、凸状に形成され、出射端13aに当接する平面部分21aを有する。また、この入射面21は、表面全体が研磨面である。
【0021】
また、光軸Zに平行に入射する光線の高さをh(h=0〜h_max)、入射面21の光軸中心位置をd=0としたときの入射面の各点における光軸方向の深さをd=f(h)としたときに、f(h)のhの一階微分が0以上で、かつ二階微分が0となるhが0<h<h_maxに存在するように形成されている。
【0022】
照明用レンズ20の入射した光が出射する、出射端13aとは反対側の面22は、周縁部を除く表面全体に研磨面である出射面22aを有するとともに、周縁部に砂目状の面取り面22bを有する。この面取り面22bは、C0.05〜0.3程度の面取り処理により形成された表面粗さRa=10μm程度の砂目状の面である。ここで、面取り面22bを砂目にするのは、研磨時における工具の番手を適宜選択することにより対応できる。
【0023】
上記構成により、本内視鏡によれば、光源からの光を導くライトガイド13の出射端側13aに照明用レンズ20を備えてなる内視鏡用照明光学系において、照明用レンズ20として、出射端13aから出射した光が入射する出射端側13aの面21に出射端13aに当接する平面部分を有するとともに、入射した光が出射する出射端13aとは反対側の面22の周縁部に砂目状の面取り面22bを有するものを使用するようにしたので、照明レンズ20の入射面の全領域を砂目状とする従来の照明光学系に比べて光量の損失を抑えつつ、面取り面の露出による照明ムラの発生を抑制することができた。
【0024】
なお、上記実施の形態では、面取り面22bが、C0.05〜0.3程度の面取り処理により形成された表面粗さRa=10μm程度の粗面である場合について例示しているが、その数値に限定されるものではない。面取りの量はレンズの外径に応じて適宜決定すればよい。また、表面粗さRaは所望する照明ムラの低減効果の程度に応じて適宜決定すればよい。たとえば、5μm以上の値にするとよい。
【0025】
また、上記実施の形態では、照明用レンズ20の入射した光が出射する面22の周縁部に砂目状の面取り面22bを有する場合について例示しているが、面取り面の代わりにフィレット面を有するようにしてもよい。
【0026】
また、本発明による照明用レンズ20は、上述した非球面レンズに限定されるものではなく、ライトガイド13の出射端13aから出射した光が入射する出射端13a側の面に出射端13aに当接する平面部分を有するとともに、入射した光が出射する出射端13aとは反対側の面の周縁部に砂目状の面取り面を有するものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、ライトガイド13の出射端13a側の面における平面部分以外の形状が球面からできているレンズであってもよい。また、正のパワーを持つレンズであってもよいし、負のパワーを持つレンズであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 内視鏡装置の内視鏡部
11 挿入部
12 操作部
13 ライトガイド
13a 出射端
14 ケーブル
15 CCD
20 照明用レンズ
21 入射面
21a 平面部分
22 反対側の面
22a 出射面
22b 面取り面
24 対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を導くライトガイドの出射端側に照明用レンズを備えてなる内視鏡用照明光学系において、
前記照明用レンズが、前記出射端から出射した光が入射する前記出射端側の面に前記出射端に当接する平面部分を有するとともに、前記入射した光が出射する前記出射端とは反対側の面の周縁部に砂目状の面取り面又はフィレット面を有するものであることを特徴とする内視鏡用照明光学系。
【請求項2】
前記砂目状の面取り面又はフィレット面が、表面粗さが5μm以上の面であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用照明光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159698(P2012−159698A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19463(P2011−19463)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】